以下、本発明の旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械を適用した実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の旋回駆動制御装置を含む建設機械を示す側面図である。
この建設機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
「全体構成」
図2は、実施の形態1の旋回駆動制御装置を含む建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、実施の形態1の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、電動発電機12には、インバータ18を介してバッテリ19が接続されており、また、バッテリ19には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1の建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このような実施の形態1の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型の建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。アイドリング運転時の機関回転数は1000rpmであり、最高許容機関回転数は2000rpmである。機関回転数は、エンジン11の負荷の度合いに応じて1000rpmから2000rpmの間で変化する。なお、エンジン11の出力軸には機関回転数を検出するための回転数検出部11Aが取り付けられている。回転数検出部11Aによって検出される機関回転数は、コントローラ30に入力される。
電動発電機12は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が力行運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が回生運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と回生運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
インバータ18は、電動発電機12の力行運転に必要な電力をバッテリ19から電動発電機12に供給するとともに、電動発電機12の回生運転によって発電された電力をバッテリ19に充電するために電動発電機12とバッテリ19との間に設けられたインバータである。
バッテリ19は、インバータ18とインバータ20との間に配設されている。これにより、電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が力行運転を行っている際には、力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、少なくともどちらか一方が回生運転を行っている際には、回生運転によって発生した回生電力を電気エネルギーとして蓄積するための電源である。
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21とバッテリ19との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力業を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力をバッテリ19へ充電する。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
なお、バッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(力行運転又は回生運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、バケット6、及びエンジン11を操作するための操作装置であり、レバー26A及び26B、ペダル26C、スロットルボリューム26Dを含む。レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、上部旋回体3の運転席近傍に設けられる。レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。また、スロットルボリューム26Dは、運転席の操作パネルに配設され、エンジン11の機関回転数を調節するためのボリュームスイッチである。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
また、操作装置26は、信号線26Eを介してコントローラ30に接続されている。スロットルボリューム26Dを操作することにより、操作量を表す電気信号が信号線26Eを介してコントローラ30に伝達され、エンジン11の回転数を調節できるように構成されている。
圧力センサ29では、レバー26Aの操作による、油圧ライン28内の油圧の変化が圧力センサ29で検出される。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、レバー26Aの操作方向(右旋回又は左旋回)と操作量を表す信号であり、コントローラ30に入力される。
「コントローラ30」
コントローラ30は、実施の形態1の建設機械の駆動制御を行う制御装置であり、速度指令変換部31、駆動制御装置32、及び旋回駆動制御装置40を含む。このコントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、速度指令変換部31、駆動制御装置32、及び旋回駆動制御装置40は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより、
実現される装置である。
速度指令変換部31は、圧力センサ29から入力される信号を速度指令に変換する演算処理部である。これにより、レバー26Aの操作量は、旋回用電動機21を回転駆動させるための速度指令(rad/s)に変換される。この速度指令は、駆動制御装置32及び旋回駆動制御装置40に入力される。なお、この速度指令変換部31で用いる変換特性については、図3を用いて説明する。
駆動制御装置32は、エンジン11の運転制御、電動発電機12の運転制御(力行運転又は回生運転の切り替え)、及び、バッテリ19の充放電制御を行うための制御装置である。この駆動制御装置32は、信号線26Eを介して伝達されるスロットルボリューム26D
の操作量を表す電気信号に基づき、エンジン11の回転数を調節する。また、エンジン11の負荷の状態とバッテリ19の充電状態に応じて、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替える。駆動制御装置32は、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替えることにより、インバータ18を介してバッテリ19の充放電制御を行う。
「操作量/速度指令の変換特性」
図3は、実施の形態1の建設機械の速度指令変換部31において操作レバー26Aの操作量を速度指令(上部旋回体3を旋回させるために旋回用電動機21を回転させるための速度指令)に変換する変換特性を示す図である。この変換特性の横軸はレバー26Aの操作量を表し、最大の操作量を100%とした百分率で示す。また、この変換特性の縦軸は速度指令値を表し、最大の速度指令値を100%とした百分率で示す。
この変換特性は、操作レバー26Aの操作量に応じて、不感帯領域、零速度指令領域(右旋回用及び左旋回用)、右方向旋回駆動領域、及び左方向旋回駆動領域の5つの領域に区分される。
ここで、実施の形態1の建設機械の制御系では、旋回用電動機21の回転軸21aが反時計回りに回転する回転方向を「正転」と称し、正転方向の駆動を表す制御量に正の符号を付す。一方、旋回用電動機21の回転軸21aが時計回りに回転する回転方向を「逆転」と称し、逆転方向の駆動を表す制御量に負の符号を付す。正転は、上部旋回体3の右方向への旋回に対応し、逆転は、上部旋回体の左方向への旋回に対応する。
「不感帯領域」
不感帯領域は、レバー26Aの中立点付近に設けられる操作量が±10%未満の領域である。この不感帯領域では、速度指令変換部31から速度指令は出力されず、旋回駆動制御装置40による旋回用電動機21の駆動制御は行われない。また、不感帯領域では、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21が機械的に停止された状態となる。
従って、レバー26Aの操作量が不感帯領域内にある間は、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21が機械的に停止され、これにより、上部旋回体3が機械的に停止された状態となる。
「零速度指令領域」
零速度指令領域は、レバー26Aの操作方向における不感帯領域の両外側に設けられる操作量が10%以上20%未満と"−10%"以下"−20%"未満の領域である。この零速度指令領域は、不感帯領域における上部旋回体3の停止状態と、左右方向の旋回駆動領域における旋回状態とを切り替える際に操作性を良くするために設けられる緩衝領域である。
操作レバー26Aの操作量がこの零速度指令領域の範囲内にあるときは、速度指令変換部31から零速度指令が出力され、メカニカルブレーキ23は解除された状態となる。
ここで、零速度指令とは、上部旋回体3の旋回速度を零にするために、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を零にするための速度指令であり、後述するPI(Proportional Integral)制御では、回転軸21Aの回転速度を零に近づけるための目標値として用いられる。
なお、メカニカルブレーキ23の制動(オン)/解除(オフ)の切り替えは、不感帯領域と零速度指令領域の境界においてコントローラ30内の旋回駆動制御装置40によって行われる。
従って、レバー26Aの操作量が零速度指令領域内にある間は、メカニカルブレーキ23は解除され、零速度指令により、旋回用電動機21の回転軸21Aは停止状態に保持される。これにより、上部旋回体3は旋回駆動されずに停止状態に保持される。
「右方向旋回駆動領域」
右方向旋回駆動領域は、操作レバー26Aの操作量が20%以上の領域であり、上部旋回体3を右方向に旋回させるための速度指令が速度指令変換部31から出力される領域である。この領域内では、レバー26Aの操作量とエンジン11の機関回転数とに応じて速度指令値が変化するように設定されている。
レバー26Aの操作量に対しては、操作量が20%から80%まで増大すると、これに応じて速度指令値が絶対値で増大し、操作量が80%以上になると、速度指令値をある一定値に制限されるように設定されている。ここで、操作量が80%以上の場合に速度指令値をある一定値に制限するのは、安全性を確保するためである。
また、エンジン11の機関回転数に対しては、レバー26Aの操作量が一定の場合でも、機関回転数が1000rpmから2000rpmに上昇するにつれて、速度指令値が増大するように設定されている。
図3には、代表的な特性として機関回転数が1000rpm、1500rpm、及び2000rpmの場合の3つの変換特性を示す。
例えば、機関回転数が1000rpmで一定である場合は、レバー26Aの操作量が20%から80%まで増大すると、これに応じて速度指令値が0%から50%まで線形的に増大し、操作量が80%以上では、速度指令値は50%に制限される。
また、1500rpmで一定である場合は、レバー26Aの操作量が20%から80%まで増大すると、これに応じて速度指令値が0%から75%まで線形的に増大し、操作量が80%以上では、速度指令値は75%に制限される。
また、2000rpmで一定である場合は、レバー26Aの操作量が20%から80%まで増大すると、これに応じて速度指令値が0%から100%まで線形的に増大し、操作量が80%以上では、速度指令値は100%に制限される。
なお、ここには代表的な特性として機関回転数が1000rpm、1500rpm、2000rpmの場合の3つの特性を示すが、実際には、1000rpmから2000rpmの間で50rpm毎に変換特性が設けられており、機関回転数に応じた特性が選択される。
以上のようなエンジン11の機関回転数に応じた変換特性の設定(選択処理)は、後述する旋回駆動制御装置40の主制御部60によって行われる。
この速度指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が右方向に旋回駆動される。
「左方向旋回駆動領域」
左方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を左方向に旋回させるための速度指令が速度指令変換部31から出力される領域である。
この左方向旋回駆動領域における変換特性は、右方向旋回駆動領域における変換特性を原点に対して点対称とした特性を有しており、レバー26Aの操作量が左旋回方向において"−20%"から"−80%"まで増大する間は、速度指令値が絶対値で増大され、操作量が"−80%"以上になると、速度指令値は"−100%"の値に制限される。また、エンジン11の機関回転数の上昇に応じて速度指令値が絶対値で増大するように設定されている。増大の割合は、右方向旋回駆動領域における変換特性と同一であり、その説明を省略する。
この領域内では、レバー26Aの操作量の増大に応じて速度指令変換部31から出力される速度指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が左方向に旋回駆動される。
「旋回駆動制御装置40」
図4は、実施の形態1の旋回駆動制御装置40の構成を示す制御ブロック図である。
旋回駆動制御装置40は、インバータ20を介して旋回用電動機21の駆動制御を行うための制御装置であり、旋回用電動機21を駆動するための駆動指令を生成する駆動指令生成部50、及び主制御部60を含む。なお、回転数検出部11Aによって検出されるエンジン11の機関回転数は、主制御部60に入力される。
駆動指令生成部50には、レバー26Aの操作量に応じて速度指令変換部31から出力される速度指令が入力され、この駆動指令生成部50は速度指令に基づき駆動指令を生成する。駆動指令生成部50から出力される駆動指令はインバータ20に入力され、このインバータ20によって旋回用電動機21がPWM制御信号により交流駆動される。
主制御部60は、旋回駆動制御装置40の制御処理に必要な周辺処理を行う制御部であり、実施の形態1では、特に、回転数検出部11Aによって検出されるエンジン11の機関回転数に応じて、速度指令変換部31で用いる変換特性を設定する処理を行う。具体的な処理内容については、関連箇所においてその都度説明する。
なお、旋回駆動制御装置40は、操作レバー26Aの操作量に応じて、旋回用電動機21を駆動制御する際に、力行運転と回生運転の切り替え制御を行うと共に、インバータ20を介してバッテリ19の充放電制御を行う。
「駆動指令生成部50」
駆動指令生成部50は、減算器51、PI制御部52、トルク制限部53、トルク制限部54、減算器55、PI制御部56、電流変換部57、及び旋回動作検出部58を含む。この駆動指令生成部50の減算器51には、レバー26Aの操作量に応じた旋回駆動用の速度指令(rad/s)が入力される。
減算器51は、レバー26Aの操作量に応じた速度指令の値(以下、速度指令値)から、旋回動作検出部58によって検出される旋回用電動機21の回転速度(rad/s)を減算して偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部52において、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるためのPI制御に用いられる。
PI制御部52は、減算器51から入力される偏差に基づき、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるように(すなわち、この偏差を小さくするように)PI制御を行い、そのために必要なトルク電流指令を演算する。生成されたトルク電流指令は、トルク制限部53に入力される。
トルク制限部53は、レバー26Aの操作量に応じてトルク電流指令の値(以下、トルク電流指令値)を制限する処理を行う。ここで、トルク制限とは、トルク制限部53に入力されるトルク電流指令値を、トルク制限特性によって許容される値(許容値)以下に制限して出力することをいう。
トルク制限部53は、図5に示すように、制限によって許容されるトルク電流指令値(許容値)の絶対値がレバー26Aの操作量の増大に応じて緩やかに増大するトルク制限特性を用いて、PI制御部52から入力されるトルク電流指令値を制限する。このようなトルク電流指令値の制限は、PI制御部52によって演算されるトルク電流指令値が急激に増大すると制御性が悪化するため、これを抑制するために行われる。
なお、この制限特性は、横軸及び縦軸共に絶対値で表してあるため、左旋回を表す場合の制御量は、レバー26Aの操作量(横軸)及び許容値(縦軸)の両方とも、絶対値に換算されてトルク制限が行われる。また、図5の特性におけるレバー26Aの操作量が0%から20%の間は、図3に示す不感帯領域と零速度指令領域に相当する。
この制限特性は、レバー26Aの操作量の増大に伴ってトルク電流指令値を絶対値で緩やかに増大させる特性を有し、上部旋回体3を左方向及び右方向の双方向に旋回させるためのトルク電流指令値を制限するための特性を有するものである。制限特性を表すデータは、主制御部60の内部メモリに格納されており、主制御部60のCPUによって読み出され、トルク制限部53に入力される。
トルク制限部54は、トルク制限部53から入力されるトルク電流指令によって生じるトルクが旋回用電動機21の許容最大トルク値以下となるように、トルク制限部53から入力されるトルク電流指令値を制限する。このトルク電流指令値の制限は、トルク制限部53と同様に、上部旋回体3の左方向及び右方向の双方向の回転に対して行われる。
ここで、トルク制限部54でトルク電流指令値を制限するためのトルク制限特性は、このトルク制限部54によってトルク電流指令値が制限されても、バケット6が積み上げられた土砂等に触れて旋回用電動機21の負荷が大きい状態において、旋回用電動機21の回転軸21Aを回転駆動させることができる駆動トルクを発生させるためのトルク電流指令を出力できるように設定されている。なお、トルク電流指令値を制限するための特性を表すデータは、主制御部60の内部メモリに格納されており、主制御部60のCPUによって読み出され、トルク制限部54に入力される。
減算器55は、トルク制限部54から入力されるトルク電流指令値から、電流変換部57の出力値を減算して得る偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部56及び電流変換部57を含むフィードバックループにおいて、電流変換部57から出力される旋回用電動機21の駆動トルクを、トルク制限部54を介して入力されるトルク電流指令値(目標値)によって表されるトルクに近づけるためのPI制御に用いられる。
PI制御部56は、減算器55から入力される偏差に基づき、この偏差を小さくするようにPI制御を行い、インバータ20に送る最終的な駆動指令となるトルク電流指令を生成する。インバータ20は、PI制御部56から入力されるトルク電流指令に基づき、旋回用電動機21をPWM駆動する。
電流変換部57は、旋回用電動機21のモータ電流を検出し、これをトルク電流指令に相当する値に変換し、減算器55に入力する。
旋回動作検出部58は、レゾルバ22によって検出される旋回用電動機21の回転位置の変化(すなわち上部旋回体3の旋回)を検出するとともに、回転位置の時間的な変化から旋回用電動機21の回転速度を微分演算によって導出する。導出された回転速度を表すデータは、減算器51及び主制御部60に入力される。
このような構成の駆動指令生成部50において、速度指令変換部31から入力される速度指令に基づき、旋回用電動機21を駆動するためのトルク電流指令が生成され、上部旋回体3が所望の位置まで旋回される。
「旋回動作」
実施の形態1の旋回駆動制御装置による建設機械の上部旋回体3の旋回動作は、次のようになる。ここでは、説明を分かりやすくするために、エンジン11の機関回転数が1500rpmで運転されていることとする。
運転者によって操作レバー26Aが右旋回方向に操作されて行くと、不感帯領域を越えて零速度指令領域に切り替わる際に、メカニカルブレーキ23が解除されるとともに、速度指令変換部31から出力される零速度指令が駆動指令生成部50に入力される。零速度指令が入力されると、旋回用電動機21の回転軸21Aが回転して旋回動作検出部58から回転速度を表すデータが出力されて減算器51から回転速度の偏差が出力されても、この回転速度の偏差を零にするように旋回用電動機21が駆動制御され、回転軸21Aが停止状態に保持される。
さらに、レバー26Aが操作されることにより、速度指令特性が零速度指令領域を越えて右方向旋回駆動領域に切り替わると、速度指令変換部31から出力される速度指令に基づくトルク電流指令が駆動指令生成部50から出力される。これにより、速度指令変換部31から出力される速度指令を目標値とした駆動制御が行われ、旋回用電動機21の回転軸21Aが駆動されて上部旋回体3が右方向に旋回する。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が1000rpmに低下されると、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(1000rpm)を表すデータに基づいて変換特性を設定するための演算を行い、速度指令変換部31における変換特性を1000rpmの変換特性に設定する。
これにより、速度指令変換部31から出力される速度指令値が2/3(=50%/75%の比率)に低減され、旋回用電動機21の回転速度が低下される。
このため、エンジン11の機関回転数が1000rpmに低下することによって下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が低下しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も低下するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇された場合は、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(2000rpm)を表すデータに基づいて速度指令変換部31における変換特性を2000rpmの変換特性に設定する。
これにより、速度指令変換部31から出力される速度指令値が4/3(=100%/75%の比率)に増大され、旋回用電動機21の回転速度が上昇される。
このため、エンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇して下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が上昇しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も上昇するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
なお、ここでは、エンジン11が1500rpmで回転されている場合に、機関回転数が1000rpmに低下、又は2000rpmに上昇された場合における旋回用電動機21の操作性を変更する場合について説明したが、上述のように、速度指令変換部31における変換特性は、エンジン11の機関回転数の50rpm毎に変更される。このため、旋回用電動機21の操作性は、エンジン11の機関回転数の微妙な変化に合わせて変更される。このように、エンジン11の機関回転数の微妙な変化にも対応して旋回用電動機21の操作性が変更されることにより、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことができる。
なお、上部旋回体3が右方向に旋回している状態でレバー26Aの操作量を減じて行き、速度指令特性が右方向旋回駆動領域から零速度指令領域に切り替わると、零速度指令によって旋回用電動機21の回転軸21Aが停止状態に保持される。
さらに、レバー26Aの操作量を減じて行き、速度指令特性が零速度指令領域から不感帯領域に切り替わると、メカニカルブレーキ23が掛かるとともに、速度指令変換部31から駆動指令は出力されなくなり、駆動指令生成部50は駆動制御を行わなくなる。これにより、旋回用電動機21の回転軸21Aは機械的に停止された状態となる。以上の一連の動作は、左方向の旋回動作においても同様であるため、その説明は省略する。
以上のように、実施の形態1の旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械によれば、運転者によってエンジン11の機関回転数が上昇又は低下されても、これに合わせて速度指令変換部31の変換特性を変更することによって旋回用電動機21の操作性を変更するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことのできる旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械を提供することができる。
以上では、旋回用電動機21がインバータ20によってPWM駆動される交流モータであり、その回転速度を検出するために、レゾルバ22及び旋回動作検出部58を用いる形態について説明したが、旋回用電動機21は直流モータであってもよい。この場合は、インバータ20、レゾルバ22及び旋回動作検出部58が不要となり、回転速度としては直流モータのタコジェネレータで検出される値を用いればよい。
また、以上では、トルク電流指令の演算にPI制御を用いる形態について説明したが、これに代えて、ロバスト制御、適応制御、比例制御、積分制御等を用いてもよい。
また、以上では、ハイブリッド型の建設機械を用いて説明したが、旋回機構が電動化されている建設機械であれば、実施の形態1の旋回駆動装置の適用対象は、バイブリッド型に限定されるものではない。
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2の旋回駆動制御装置40の構成を示す制御ブロック図である。この旋回駆動制御装置40は、トルク制限部53Bを追加した点が実施の形態1の旋回駆動制御装置40と異なる。なお、トルク制限部53Aは、実施の形態1のトルク制限部53と同一である。
また、実施の形態2では、速度指令変換部31で用いる変換特性が図7に示すようにエンジン11の機関回転数に関係なく1つの特性で表される点が実施の形態1と異なる。このため、図4に示す実施の形態1のように主制御部60が速度指令変換部31を制御するようには構成されていない。
その他の構成は実施の形態1の旋回駆動制御装置40と同一であるため、その説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図8は、トルク制限部53A及び53Bで用いるトルク制限特性を示す図であり、(a)はトルク制限部53Aのトルク制限特性を示し、(b)はトルク制限部53Bのトルク制限特性を示す。トルク制限部53A及び53Bに入力されるトルク電流指令値は、これらのトルク制限特性によって許容される値(許容値)以下に制限されて出力される。なお、図8(a)に示す特性は、図5に示す実施の形態1のトルク制限特性と同一である。
トルク制限部53Bのトルク制限特性は、主制御部60によって設定される。主制御部60は、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で高い領域において、旋回用電動機21の出力を制限するために、定出力運転を行うようにトルク電流指令値を制限するためのトルク制限特性を設定する。これは、回転速度が絶対値で高い運転領域で回転速度を上昇させるためには、回転速度が低いときほど大きな駆動トルクは必要ないからである。
また、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力されるエンジン11の機関回転数に応じて、トルク制限特性を変更する。これは、エンジン11の機関回転数によって動作速度が変化する油圧駆動系の操作性に合わせて、旋回用電動機21の操作性を変更するためである。
主制御部60は、エンジン11の機関回転数に応じて、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で高い領域において、旋回用電動機21の出力を制限するための定出力運転を行うようにトルク制限部53Bのトルク制限特性を設定することにより、トルク制限部53Aから入力されるトルク電流指令値を制限し、その絶対値を低下させる。
このようなトルク制限部53Bによって制限されるトルク電流指令値は、トルク制限部54に入力され、減算器55を経てPI制御部56に入力される。PI制御部56は、トルク制限部53Bによって値が制限されたトルク電流指令値に基づいて、旋回用電動機21を駆動するための最終的なトルク電流指令値を演算する。実施の形態2では、エンジン11の機関回転数に応じて、トルク制限部53Bのトルク制限特性が変更されるため、エンジン11の機関回転数に応じて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)を変更することができる。
図8(b)には、代表的な特性として機関回転数が1000rpm、1500rpm、及び2000rpmの場合の3つのトルク制限特性を示すが、エンジン11の機関回転数が1000rpmの場合は、定出力曲線aを用いることにより、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の40%以下になるように、旋回用電動機21の回転速度に応じてトルク電流値を制限する。なお、定出力曲線aは、旋回速度(横軸)が40%でトルク電流指令(縦軸)が100%の点と、旋回速度(横軸)が100%でトルク電流指令(縦軸)が40%の点とを結ぶ定出力曲線である。
また、エンジン11の機関回転数が1500rpmの場合は、定出力曲線bを用いることにより、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の60%以下になるように、旋回用電動機21の回転速度に応じてトルク電流値を制限する。ここで、定出力曲線bは、旋回速度(横軸)が60%でトルク電流指令(縦軸)が100%の点と、旋回速度(横軸)が100%でトルク電流指令(縦軸)が60%の点とを結ぶ定出力曲線である。
また、エンジン11の機関回転数が2000rpmの場合は、定出力曲線cを用いることにより、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の80%以下になるように、旋回用電動機21の回転速度に応じてトルク電流値を制限する。ここで、定出力曲線cは、旋回速度(横軸)が80%でトルク電流指令(縦軸)が100%の点と、旋回速度(横軸)が100%でトルク電流指令(縦軸)が80%の点とを結ぶ定出力曲線である。
なお、ここには代表的な特性として機関回転数が1000rpm、1500rpm、2000rpmの場合の3つの特性を示すが、実際には、1000rpmから2000rpmの間で50rpm毎に変換特性が設けられており、機関回転数に応じた特性が選択される。
「旋回動作」
実施の形態2の旋回駆動制御装置による建設機械の上部旋回体3の旋回動作は、次のようになる。ここでは、説明を分かりやすくするために、エンジン11の機関回転数が1500rpmで運転されていることとする。なお、操作レバー26Aの操作量が不感帯領域及び零速度指令領域にある場合の動作は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
運転者によって操作レバー26Aが右旋回方向に操作されて行き、速度指令特性が零速度指令領域を越えて右方向旋回駆動領域に切り替わると、速度指令変換部31から出力される速度指令に基づくトルク電流指令が駆動指令生成部50から出力される。これにより、速度指令変換部31から出力される速度指令を目標値とした駆動制御が行われ、旋回用電動機21の回転軸21Aが駆動されて上部旋回体3が右方向に旋回する。
エンジン11の機関回転数が1500rpmで運転されているときは、トルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の60%以下になるように出力制限を行う特性に設定されている。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が1000rpmに低下されると、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(1000rpm)を表すデータに基づいてトルク制限特性を変更するための演算を行い、トルク制限部53Bのトルク制限特性を1000rpmのトルク制限特性に設定する。
エンジン11の機関回転数が1000rpmのときのトルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の40%以下になるように出力制限を行う特性であるため、トルク制限部53Aからトルク制限部53Bに入力されるトルク電流指令値が低減され、旋回用電動機21の回転速度が低下される。
このため、エンジン11の機関回転数が1000rpmに低下することによって下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が低下しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も低下するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇された場合は、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(2000rpm)を表すデータに基づいてトルク制限特性を変更するための演算を行い、トルク制限部53Bのトルク制限特性を2000rpmのトルク制限特性に設定する。
エンジン11の機関回転数が2000rpmのときのトルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の80%以下になるように出力制限を行う特性であるため、トルク制限部53Aからトルク制限部53Bに入力されるトルク電流指令値は、機関回転数が1500rpmのときよりは増大され、旋回用電動機21の回転速度が上昇される。
このため、エンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇して下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が上昇しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も上昇するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
なお、ここでは、エンジン11が1500rpmで回転されている場合に、機関回転数が1000rpmに低下、又は2000rpmに上昇された場合における旋回用電動機21の操作性を変更する場合について説明したが、上述のように、トルク制限部53Bのトルク制限特性は、エンジン11の機関回転数の50rpm毎に変更される。このため、旋回用電動機21の操作性は、エンジン11の機関回転数の微妙な変化に合わせて変更される。このように、エンジン11の機関回転数の微妙な変化にも対応して旋回用電動機21の操作性が変更されることにより、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことができる。
以上の動作は、左方向の旋回動作においても同様であるため、その説明は省略する。
以上のように、実施の形態2の旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械によれば、運転者によってエンジン11の機関回転数が上昇又は低下されても、これに合わせて旋回用電動機21の操作性を変更するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことのできる旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械を提供することができる。
[実施の形態3]
図9は、実施の形態3の旋回駆動制御装置40を示す制御ブロック図である。実施の形態3は、実施の形態1と実施の形態2を組み合わせたものであり、速度指令変換部31の変換特性は、実施の形態1と同様に、エンジン11の機関回転数が1000rpmから2000rpmに上昇するに伴い、速度指令値が絶対値で増大するように設定されている。
なお、速度指令変換部31の変換特性の設定(演算処理)は、旋回駆動制御装置40の主制御部60によって行われる。
また、実施の形態3の旋回駆動制御装置40は、実施の形態2と同様に、トルク制限部53Aとトルク制限部54との間に、トルク制限部53Bを有する。ただし、実施の形態3のトルク制限部53Bのトルク制限特性は、速度指令変換部31の変換特性がエンジン11の機関回転数によって変更されることに伴い、実施の形態2におけるトルク制限特性(図8(b)参照)とは異なる部分がある。
その他の構成は実施の形態1の旋回駆動制御装置40と同一であるため、その説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図10は、実施の形態3のトルク制限部53Bで用いるトルク制限特性を示す図である。
実施の形態3のトルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で高い領域において、旋回用電動機21の出力を制限するために定出力運転を行うための定出力曲線a3、b3、及びcを有する。定出力曲線cは、実施の形態2における定出力曲線c(図8(b)参照)と同一であるが、定出力曲線a3及びb3は、実施の形態における定出力曲線a及びbの一部である。
実施の形態3では、図3に示すように、エンジン11の機関回転数によって速度指令値が制限されているため、これに合わせて、トルク制限特性は、エンジン11の機関回転数が1000rpm及び1500rpmの場合は、回転速度が50%及び75%より大きい領域ではトルク電流値を零にするように設定されている。
ここで、定出力曲線a3は、旋回速度(横軸)が40%でトルク電流指令(縦軸)が100%の点と、旋回速度(横軸)が50%でトルク電流指令(縦軸)が80%の点とを結ぶ定出力曲線であり、定出力曲線b3は、旋回速度(横軸)が60%でトルク電流指令(縦軸)が100%の点と、旋回速度(横軸)が75%でトルク電流指令(縦軸)が80%の点とを結ぶ定出力曲線である。
なお、ここには代表的な特性として機関回転数が1000rpm、1500rpm、2000rpmの場合の3つの特性を示すが、実際には、1000rpmから2000rpmの間で50rpm毎に変換特性が設けられており、機関回転数に応じた特性が選択される。
また、トルク制限部53Bのトルク制限特性の変更は、実施の形態2と同様に主制御部60によって行われる。
実施の形態3では、主制御部60は、エンジン11の機関回転数に応じて、速度指令変換部31の変換特性を変更するとともに、旋回用電動機21の回転速度が絶対値で高い領域において、エンジン11の機関回転数に応じて、旋回用電動機21の出力を制限するために定出力運転を行うようにトルク制限部53Bのトルク制限特性を設定する。このように、速度指令変換部31の変換特性とトルク制限部53Bのトルク制限特性とを変更することにより、トルク電流指令値の絶対値を低下させ、旋回用電動機21の出力制限を行う。
このようなトルク制限部53Bによって制限されるトルク電流指令値は、トルク制限部54に入力され、減算器55を経てPI制御部56に入力される。PI制御部56は、トルク制限部53Bによって値が制限されたトルク電流指令値に基づいて、旋回用電動機21を駆動するための最終的なトルク電流指令値を演算する。実施の形態3では、エンジン11の機関回転数に応じて、速度指令変換部31の変換特性と、トルク制限部53Bのトルク制限特性とがともに変更されるため、エンジン11の機関回転数に応じて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)を変更することができる。
「旋回動作」
実施の形態3の旋回駆動制御装置による建設機械の上部旋回体3の旋回動作は、次のようになる。ここでは、説明を分かりやすくするために、エンジン11の機関回転数が1500rpmで運転されていることとする。なお、操作レバー26Aの操作量が不感帯領域及び零速度指令領域にある場合の動作は実施の形態1及び2と同様であるため、その説明を省略する。
運転者によって操作レバー26Aが右旋回方向に操作されて行き、速度指令特性が零速度指令領域を越えて右方向旋回駆動領域に切り替わると、速度指令変換部31から出力される速度指令に基づくトルク電流指令が駆動指令生成部50から出力される。これにより、速度指令変換部31から出力される速度指令を目標値とした駆動制御が行われ、旋回用電動機21の回転軸21Aが駆動されて上部旋回体3が右方向に旋回する。
エンジン11の機関回転数が1500rpmで運転されているときは、速度指令変換部31の変換特性は、速度指令値が75%に制限されるように設定されるとともに、トルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の60%以下になるように出力制限を行う特性に設定されている。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が1000rpmに低下されると、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(1000rpm)を表すデータに基づいて速度指令変換部31の変換特性とトルク制限部53Bのトルク制限特性とを変更するための演算を行い、速度指令変換部31の変換特性とトルク制限部53Bのトルク制限特性とが1000rpmの特性に設定される。
エンジン11の機関回転数が1000rpmのときは、速度指令変換部31の変換特性は、速度指令値が50%に制限されるように設定されるとともに、トルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の40%以下になるように出力制限を行う特性に設定されるため、速度指令変換部31から出力される速度指令値が低減されるとともに、トルク制限部53Aからトルク制限部53Bに入力されるトルク電流指令値が低減され、旋回用電動機21の回転速度が低下される。特に、実施の形態3では、エンジン11の機関回転数が1000rpmのときは、旋回用電動機21の回転速度は、50%以下に制限される。
このため、エンジン11の機関回転数が1000rpmに低下することによって下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が低下しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も低下するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
また、スロットルボリューム26Dが調整されてエンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇された場合は、主制御部60は、回転数検出部11Aから入力される機関回転数(2000rpm)を表すデータに基づいて速度指令変換部31の変換特性とトルク制限部53Bのトルク制限特性とを変更するための演算処理を行い、これらの特性を2000rpmの特性に設定する。
エンジン11の機関回転数が2000rpmのときは、速度指令変換部31の変換特性は、速度指令値が100%に制限されるように設定されるとともに、トルク制限部53Bのトルク制限特性は、旋回用電動機21の出力が連続定格出力の80%以下になるように出力制限を行う特性に設定される。このため、トルク制限部53Aからトルク制限部53Bに入力されるトルク電流指令値は、機関回転数が1500rpmのときよりは増大され、旋回用電動機21の回転速度が上昇される。
このように、エンジン11の機関回転数が2000rpmに上昇して下部走行体1、ブーム4、アーム5、又はバケット6の動作速度が上昇しても、これに合わせて旋回用電動機21の動作速度(回転速度)も上昇するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを良好に保つことができる。
なお、ここでは、エンジン11が1500rpmで回転されている場合に、機関回転数が1000rpmに低下、又は2000rpmに上昇された場合における旋回用電動機21の操作性を変更する場合について説明したが、速度指令変換部31の変換特性及びトルク制限部53Bのトルク制限特性は、エンジン11の機関回転数の50rpm毎に変更される。このため、旋回用電動機21の操作性は、エンジン11の機関回転数の微妙な変化に合わせて変更される。このように、エンジン11の機関回転数の微妙な変化にも対応して旋回用電動機21の操作性が変更されることにより、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことができる。
以上の動作は、左方向の旋回動作においても同様であるため、その説明は省略する。
以上のように、実施の形態3の旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械によれば、運転者によってエンジン11の機関回転数が上昇又は低下されても、これに合わせて旋回用電動機21の操作性を変更するので、油圧駆動される作業要素の操作性と、電動駆動される上部旋回体3の操作性とのバランスを常に良好に保つことのできる旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械を提供することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態の旋回駆動制御装置及びこれを含む建設機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。