JP5073698B2 - 溶融金属の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶融金属(特に、溶鋼)の連続鋳造方法に関する。
図3に示すように、溶融金属の連続鋳造において、精錬が完了した溶融金属80は、取鍋と呼ばれる容器81から、タンディッシュと呼ばれる中間容器82を経由し、連続鋳造用ノズル83により鋳型84内へ注入される。
そして、鋳型84による一次冷却で凝固シェル85を形成し、引き続き、鋳型84の下方に配置された支持セグメント86に敷設した冷却ノズルからの散水による二次冷却で凝固を促進して、連続的に鋳片87を製造している。なお、図3中の番号88は、鋳片87を下流側へ引抜くピンチロールである。
鋳型84においては、溶融金属80のメニスカス表面に粉末状の潤滑剤パウダー89が添加され、潤滑剤パウダー89の溶融金属接触面側が溶融する。そして、この溶融状態のパウダー(以下、溶融パウダーという)90が、所定の条件で振動する鋳型84の内壁面と、一定速度で引抜かれる凝固シェル85との間に形成される流路91内に、溶融パウダー90の静圧による自然落下(自重によりメニスカス表面に働く力での流入)と、鋳型84の内壁面と凝固シェル85との相互作用により、流入して消費される。
この溶融パウダー90の流路91への流入量(消費量)は、鋳型84の内壁面と凝固シェル85の間の潤滑に影響を及ぼすため、連続鋳造で製造された鋳片87の表面性状を支配する重要な因子である。
このため、流路91の幅(即ち、鋳型84の内壁面と凝固シェル85との間に形成されるパウダーフィルムの厚みに相当)が減少すれば、流路91内への溶融パウダー90の流入量が減少するため、以下の問題が発生する。
鋳型84の内壁面の表面温度の上昇や、鋳型84の内壁面と凝固シェル85との間の摩擦抵抗の上昇を招くため、鋳片87の表面が割れたり、また凝固シェル85が鋳型84の内壁面に焼付いて鋳片87の引抜きができなくなる。更に、このような状況下で、鋳片87を鋳型84から無理に引抜くと、凝固シェル85が破れ、未凝固状態の溶融金属が少量漏れ出す現象(ブリード)や、大量に漏れ出す現象(ブレークアウト)が発生する。
そこで、表面性状の優れた鋳片を、生産に支障をきたすことなく安定に鋳造するため、これまで、流路への溶融パウダーの流入量(消費量)を増大させる方法や、流入量を減少しにくくする方法が、種々提案されてきた。
例えば、特許文献1には、予め溶解してガラス状とした所要組成のCaO−BaO−SiO−F系組成物基材に、アルカリ金属・アルカリ土類金属の炭酸塩を2〜15重量%、アルカリ金属・アルカリ土類金属の弗化物を2〜30重量%、及び炭素を0.2〜10重量%混合し、必要に応じ、Fe、Mn、及びNiの各金属酸化物の少なくとも1種以上を、内枠量で2〜10重量%混合した複合配合物よりなり、凝固温度が900℃以下で、1300℃における粘度が3ポアズ以下である連続鋳造用モールドパウダーが記載されている。
また、特許文献2には、パウダーの1300℃におけるイニシャル粘性η(poise)、イニシャル表面張力τ(dyn/cm)、パウダー巻き込み性指数P、及び1ストランド単位時間あたりの鋳造量W(トン/時間)が、所定の条件を満足するように鋳造することで、パウダー系内質欠陥のない連鋳々片を製造する方法が記載されている。
そして、特許文献3には、連続鋳造において、鋳型の側壁に埋設した電磁コイルに、交流電流をパルス状に供給して、パウダーの供給を円滑に行うパウダーの供給方法が記載されている。
また、特許文献4には、溶鋼のメニスカス位置から鋳造方向に少なくとも10cmの範囲に、周波数30〜200Hz、磁束密度1000ガウス以上の交流磁場を形成して、鋳型中心軸に向かう電磁気圧を溶融プールに作用させると共に、粘度0.5〜2.0ポアズ(1300℃で)、融点900〜1200℃に調整した連鋳パウダーを使用して、鋼鋳片を連続鋳造する方法が記載されている。
更に、特許文献5には、鋳型内の溶鋼に電磁力を印加し、メニスカス形状を変化させながら行う連続鋳造方法において、パウダーの粘度を16〜200ポアズ、磁束密度の最大値を300〜5000ガウスにして、鋼鋳片を連続鋳造する方法が記載されている。
特開昭60−72653号公報 特開昭62−238053号公報 特開昭64−83348号公報 特開平4−319056号公報 特許第4091777号公報
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1、2では、溶融パウダーの粘度を調整することで、鋳型の内壁面と凝固シェルとの相互作用を通じて、溶融パウダーの流入性に影響を与えている。しかし、大断面スラブ(例えば、スラブの幅方向の内幅が800mm以上、かつ厚み方向の内幅が150mm以上の鋳型で鋳造される断面積が大きなスラブ)を鋳造する場合、溶融パウダー層が極端に薄くなる局所的な部位においては、溶融パウダーの静圧が小さくなり、溶融パウダーの粘度を変化させても、溶融パウダーの流入部位が制限される。このため、流路への溶融パウダーの流入量の低減を防止することができず、鋳片の表面性状が劣化したり、また操業に支障をきたしたりする場合がある。
また、特許文献3〜5では、鋳型の内壁面と凝固シェルとの間への溶融パウダーの流入が促進されるため、鋳片の表面性状を改善できる。しかし、溶融パウダーの流入量が増加するため、メニスカス上面を覆う溶融パウダー層の厚みが薄くなる。特に、大断面スラブを鋳造する場合、溶融パウダー層が極端に薄くなる局所的な部位において、溶融パウダーの静圧が小さくなり、溶融パウダーの流入部位が制限される。その結果、流路への溶融パウダーの流入量が低減し、鋳片欠陥が発生したり、操業に支障をきたしたりする場合がある。
以上のことから、前記従来の方法では、大断面スラブの鋳造において、鋳片欠陥の発生を防止する点では、有効に作用しなかった。
また、大断面スラブの鋳造において、電磁力により、鋳型の内壁面と凝固シェルとの間に形成される溶融パウダーの流路を拡大する技術を適用すると、メニスカスの形状(表面形状)が時間的に変動し、また、メニスカスの形状が波立って不均一になり、局部的に溶融パウダー層が極端に薄くなる部位が発生する。この現象が継続すると、溶融パウダー層が薄くなった部位において、溶融パウダー層による静圧が小さくなり、溶融パウダーの流入部位が制限されるため、流路への溶融パウダーの流入量が低減して、鋳片欠陥が発生したり、また操業に支障をきたしたりする場合がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、断面積が大きなスラブを鋳造するに際し、鋳型の内壁面と凝固シェルとの間の潤滑を改善し、表面性状の優れたスラブを安定に鋳造可能な溶融金属の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る溶融金属の連続鋳造方法は、鋳造するスラブの幅方向の内幅が800mm以上、かつ厚み方向の内幅が150mm以上の鋳型を取り囲むように配置、又は該鋳型内に埋設されたソレノイド式電磁コイルに、周波数が30Hz以上300Hz以下を満たす交流電流を通電し、前記鋳型内の溶融金属に、メニスカス位置から鋳造方向に少なくとも400mmまでの範囲に形成される磁束密度の最大値が300ガウス以上5000ガウス以下を満たす電磁力を印加しながら鋳造を行う溶融金属の連続鋳造方法において、
前記電磁力の印加時に、溶融金属のメニスカス上面を覆う溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保しながら連続鋳造を行う。
本発明に係る溶融金属の連続鋳造方法において、溶融金属の鋳造速度を1.2m/分以上にしてもよい。
本発明に係る溶融金属の連続鋳造方法は、電磁力の印加時に、溶融金属のメニスカス上面を覆う溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保しながら連続鋳造を行うので、溶融パウダー層の静圧を増大させることができる。これにより、溶融パウダー層が局所的に極端に薄くなる部位が発生する条件下においても、鋳型の内壁面と凝固シェルとの間への溶融パウダーの流入量を増加させることができ、スラブの表面性状を改善でき、操業を安定にできる。
また、溶融金属の鋳造速度を1.2m/分以上にする場合は、スラブの表面性状の改善効果と、操業を安定化できる効果が、より顕著に現れる。
これは、溶融金属の鋳造速度を1.2m/分以上にした場合、1.2m/分未満の場合と比較して、メニスカスの形状変化が大きくなるため、スラブの表面性状と操業性が悪化し易いことによる。
(A)は電磁力の非印加時における小断面スラブを製造する鋳型の側断面図、(B)は電磁力の印加時における小断面スラブを製造する鋳型の側断面図、(C)は電磁力の非印加時における大断面スラブを製造する鋳型の側断面図、(D)は電磁力の印加時における大断面スラブを製造する鋳型の側断面図である。 溶鋼の鋳造速度と溶融パウダー層の最小厚みが操業性と品質に与える影響を示す説明図である。 連続鋳造方法の説明図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係る溶融金属の連続鋳造方法を想到するに至った経緯について説明した後、溶融金属の連続鋳造方法について説明する。
最初に、鋳造するスラブの幅方向の内幅が800mm以上、かつ厚み方向の内幅が150mm以上を満足しない鋳型を使用して、断面積が小さなスラブ(以下、小断面スラブともいう)を連続鋳造する場合について説明する。なお、ここでは、小断面スラブを鋳造する鋳型とは、鋳造するスラブの幅方向の内幅が800mm未満、又は厚み方向の内幅が150mm未満である空間部を有する鋳型を指す。この空間部は、鋳型の内壁面で形成される。
図1(A)、(B)に示すように、鋳型10に設けられたソレノイド式電磁コイル(図示しない)に、周波数fが30Hz以上300Hz以下を満たす交流電流を通電し、鋳型10内の溶鋼(溶融金属の一例)11に、メニスカス位置12から鋳造方向に少なくとも400mmまでの範囲に形成される磁束密度の最大値Bmaxが300ガウス以上5000ガウス以下を満たす電磁力を印加しながら鋳造を行う。
このとき、電磁力により、図1(A)に示す溶鋼11のメニスカスの平坦形状が、図1(B)に示すように、鋳型10の幅方向中央部が上に凸の形状に変化する。なお、溶鋼のメニスカスには、10〜20mm程度の高低差が生じる。
また、電磁力により、溶鋼11のメニスカス近傍において、形成される凝固シェルが電磁力により鋳型10の内壁面から遠ざかり、鋳型10の内壁面と凝固シェルとの間に形成される溶融パウダー13の流路、即ち図3に示す流路91の幅(パウダーフィルムの厚みに相当)が拡大する。このため、溶融パウダー13の静圧による自然落下(自重によりメニスカス表面に働く力での流入)と、鋳型10の内壁面と凝固シェルとの相互作用により、流路91への溶融パウダー13の流入が促進される。
このように、流路91への溶融パウダー13の流入が促進した結果、メニスカス表面の溶融パウダー13層の厚みが若干減少し、溶融パウダー13層の静圧も減少するが、上記した流路拡大の影響が大きいため、溶融パウダー13の流入は阻害されない。従って、鋳片の表面性状が改善し、操業が安定になる(操業に支障をきたすブリードやブレークアウトの頻度が減少する)。
また、電磁力の印加と非印加を、短周期で繰返すパターンを用いると、電磁力によって誘起される溶鋼流動を抑制することができ、鋳片の表面性状と操業性が更に改善する。
ここで、周波数fが30Hz未満の場合、発生する電磁力が小さ過ぎて、溶鋼のメニスカスの形状変化が小さくなり、凝固シェルが鋳型の内壁面から遠ざからないため、鋳片の表面性状と操業性が改善されない。
一方、周波数fが300Hzを超える場合、長辺と短辺からなる通常の一体型の組立て鋳型では、電磁力が鋳型で遮断されて溶鋼に印加されない。このため、溶鋼のメニスカスの形状変化が小さくなり、凝固シェルが鋳型の内壁面から遠ざからず、鋳片の表面性状と操業性が改善されない。
このため、周波数fを30Hz以上300Hz以下としたが、下限を50Hz、上限を250Hzとするのがよい。
また、溶鋼のメニスカスから少なくとも400mm以内に形成される磁束密度の最大値Bmaxが300ガウス未満の場合、電磁力が小さ過ぎて、溶鋼のメニスカスの形状変化が小さくなり、凝固シェルが鋳型の内壁面から遠ざからないため、鋳片の表面性状と操業性が改善されない。
一方、磁束密度の最大値Bmaxが5000ガウスを超える場合、電磁力が大き過ぎて、溶鋼のメニスカスの幅方向中央部の形状が、上に凸の形状に過大に変化し、また、電磁力によって誘起される溶鋼流速が過大となる。このため、メニスカスの形状が時間的に変動し、また、その形状が波立って不均一になり、凝固シェルと鋳型壁面との間の溶融パウダーが流入する流路の幅、つまり、パウダーフィルムの厚みが時間的に変動し、また、その厚みが鋳型の内壁面の周方向全体的に渡って不均一な部分が生じる。その結果、溶融パウダーの流入量が局所的に低減して、鋳片の表面性状と操業性が改善されない。
このため、磁束密度の最大値Bmaxを300ガウス以上5000ガウス以下としたが、下限を700ガウス、上限を3000ガウスとするのがよい。
しかしながら、鋳造試験の結果、図1(C)、(D)に示すように、電磁力を印加しても、鋳造するスラブ(鋳片の一例)の幅方向の内幅が800mm以上(上限は、例えば、2500mm程度)、かつ厚み方向の内幅が150mm以上(上限は、例えば、700mm程度)の鋳型15を用いて、断面積が大きなスラブ(以下、大断面スラブともいう)を連続鋳造した場合、スラブの表面性状が悪化し、操業が不安定になることが分かった。ここでは、大断面スラブを鋳造する鋳型とは、鋳造するスラブの幅方向の内幅が800mm以上、かつ厚み方向の内幅が150mm以上である空間部を有する鋳型を指す。なお、上記した空間部の断面積が、120000mm(=800mm×150mm)を超えて大きくなればなるほど、操業が不安定になる。
なお、この現象は、ソレノイド式電磁コイルが、鋳型を取り囲むように配置された場合、また鋳型内に埋設された場合のいずれについても、同様に起こる。
そこで、鋳造試験とメニスカス表面の溶融パウダー層の厚みの実測に基づいた検討を行うことで、以下の知見を得た。
図1(C)に示すように、大断面スラブを鋳造する鋳型15を用いた連続鋳造において、鋳型15に設けられたソレノイド式電磁コイルに、周波数fが30Hz以上300Hz以下を満たす交流電流を通電し、鋳型15内の溶鋼(溶融金属の一例)16に、メニスカス17位置から鋳造方向に少なくとも400mmまでの範囲に形成される磁束密度の最大値Bmaxが300ガウス以上5000ガウス以下を満たす電磁力を印加した場合、メニスカス17表面の面積も大きくなるため、メニスカスの形状が時間的に変動し、また、空間的に不均一になり易く、更に、共振現象が起こる場合もある。このため、電磁力の作用と相まって、図1(C)に示すメニスカス17には、図1(D)に示すように、局所的に15〜25mm程度の高低差が生じる。また、図3に示す流路91が広がり、この流路91への溶融パウダー90の流入が促進した結果、溶融パウダー90の層厚が減少し易い。
そのため、局所的に盛り上がったメニスカス部において、溶融パウダー18層の最小厚みTが極端に薄くなり、溶融パウダー18層の最小厚みが0mm(即ち、溶鋼16が粉末状のパウダーや大気と接触する状態)、又は溶融パウダー18層の最小厚みが0mmを超え7mm未満になることがある。
これにより、当該部位における鋳型15の内壁面と凝固シェルとの間の流路への、溶融パウダー18の静圧による自然落下が阻害され、鋳片の表面性状が悪化し、操業が不安定になることが分かった。
そこで、意図的に、溶融パウダー18層の最小厚みTを変化させた鋳造試験を行った結果、本発明の一実施の形態に係る溶鋼金属の連続鋳造方法に着想した。
即ち、本発明の一実施の形態に係る溶鋼金属の連続鋳造方法は、電磁力の印加時に、溶鋼のメニスカス上面を覆う溶融パウダー層の最小厚みTを7mm以上確保しながら連続鋳造を行う方法である。
これにより、大断面スラブを鋳造する鋳型を用いた連続鋳造において、前記した電磁力を印加した場合でも、溶融パウダー層の静圧の増大により、溶融パウダーの流路への流入量の低減を防止して、鋳片の表面性状を改善でき、操業が安定になることが分かった。
なお、溶融パウダー層は、その厚みが厚くなるに伴って、静圧が増大する効果が得られるため特に限定していないが、最も厚いところTBでも、80mm以下にすることが望ましい。これは、電磁力が印加されていない条件での鋳造中においては、通常、鋳型の上端から溶鋼のメニスカス位置までの距離が80〜150mm程度であり、溶融パウダー層が厚くなり過ぎて、パウダーが鋳型上端から流出する等の操業性の悪化が起こることによる。
このように、溶融パウダーがメニスカス上面を覆う方法としては、最小厚みTが7mm以上を確保できるならば、いずれの方法を用いてもよいが、例えば、以下の方法がある。
(1)粉末状のパウダー中の高融点成分や低融点成分の比率、又は低融点成分の粒度を調整し、粘度と凝固温度を変えることなく、その滓化速度(溶融速度)を従来よりも1〜3倍程度上昇させる方法。
(2)粉末状のパウダー中の炭素量を上げて発熱性を高め、その滓化速度を上昇させる方法。
(3)粉末状のパウダーの直上にヒータ等の熱源を設置して、その滓化速度を上昇させる方法。
(4)メニスカス上面への粉末状のパウダーの投入量を増加させる方法。
また、溶融パウダー層の最小厚みの測定は、例えば、幅200mm、厚み1mmの鉄板を、鋳型上方から、粉末パウダー、溶融パウダー、及び溶鋼に差込み、1秒程度浸漬した後に引上げ、鉄板に付着した溶融スラグの厚みを評価することにより行う(図3参照)。
なお、本実施の形態では、この方法を採用しているが、他の測定方法を用いてもよい。
例えば、直径1mmの鋼線を複数本、鋳型上部から、粉末パウダー、溶融パウダー、及び溶鋼に差込み、1秒程度浸漬した後に引上げ、鋼線に付着した溶融スラグの厚みを評価することにより行うこともできる。
また、2本の耐被覆電極を、鋳型上方から、粉末パウダー、溶融パウダー、及び溶鋼に浸漬させ、電極間の抵抗の変化から測定してもよい。
更に、溶融パウダー層の最小厚みTが7mm未満の条件において、溶鋼の鋳造速度が1.2m/分未満の場合に比べて、溶鋼の鋳造速度を1.2m/分以上まで上昇させた場合は、鋳片の表面性状と操業性が極端に悪化することが分かった。
つまり、溶融パウダー層の最小厚みTを7mm以上確保することによる鋳片の表面性状と操業性の改善代は、溶鋼の鋳造速度が1.2m/分未満の場合に比べて、1.2m/分以上にした場合の方が大きいことが分かった。なお、溶鋼の鋳造速度が速くなるに伴って、本発明による溶融パウダー層の厚みの効果が顕著に現れるため、上限値については規定していないが、現状では、溶鋼の鋳造速度を2.4m/分にして行った場合もある。
上記したように、溶鋼の鋳造速度が上昇するに伴い、鋳片の表面性状と操業性の改善代が大きくなるのは、溶鋼の鋳造速度が大きい方が、溶鋼のメニスカス高さの変動幅が大きく、また溶融パウダーの流路への流入量が変動し易いことによる。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、各種寸法の鋳型(400mm×100mm、800mm×100mm、800mm×150mm、1200mm×250mm、1000mm×400mm)を用い、低炭素アルミキルド鋼(液相線温度:1535℃、タンディッシュ内での温度:1565℃)を、0.6〜1.7m/分の鋳造速度で鋳造した結果について説明する。
なお、鋳造に使用した鋳型には、高さ100mmの電磁コイルが、そのコイル上端位置を溶鋼のメニスカス位置とし、鋳型を20ターン取囲んだ状態で配置されている。
また、使用した連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)は、その下端部の両側に1個ずつ(合計2個)の溶鋼吐出孔が設けられ、その軸心を、水平方向に対して下向きに35度傾斜させたものである。
上記した鋳型を使用して、スラブを鋳造するに際しては、鋳型に設けられたソレノイド式電磁コイルに、周波数fが60Hzの交流電流を通電し、メニスカス位置から鋳造方向に少なくとも400mmまでの範囲に形成される磁束密度の最大値Bmaxを1500ガウスとし、電磁力の印加パターンを、0.05秒の印加と0.05秒の非印加の繰返しとした。なお、鋳型の振幅(オシレーション)は、基準位置に対して±2〜6mm(振幅距離:4〜12mm)、振動数を90〜300サイクル/分とした。
また、粉末状のパウダーには、C−Ca−SiO−Al系に、NaOを1.5〜8質量%添加し、粘度を4ポアズ(1300℃)に調整したものを使用して、メニスカス上面を覆う溶融パウダー層の最小厚みを、0mm、又は0mmを超え22mm以下の間で変化させ、鋳造作業の操業性と製造したスラブの品質について評価した。
この試験条件と試験結果を、表1、表2に示す。
Figure 0005073698
Figure 0005073698
なお、表1、表2に示す操業性の評価は、スラブ5mあたりに検出されたブリードの個数が0.1個未満の場合を「○」、0.1個以上0.5個未満の場合を「△」、0.5個以上の場合を「×」とした。
また、品質の評価は、製造したスラブを熱間圧延した後に酸洗し、冷間圧延して厚みが0.9mmの鋼板を製造し、この鋼板の単位長さあたりの疵(ヘゲ、スリバー)の個数を、参照例と比較して行った。このとき、参照例の疵の個数を1とし、0.2未満の場合を「○」、0.2以上0.5以下の場合を「△」、0.5より大きい場合を「×」とした。
なお、参照例は、寸法:1200mm×250mmの鋳型を使用し、鋳造速度1.6m/分、溶融パウダー層の最小厚みを25mmにして、電磁力を印可することなく鋳造を行った結果である。
表1の参考例1〜5は、鋳型の一方側の内幅寸法が150mm未満の鋳型であり、大断面スラブを製造する鋳型でなく、前記したような課題が発生しなかった。なお、寸法:800mm×150mmの鋳型の断面積を1とすると、参考例1、2の断面積は0.33(=40000/120000)、参考例3〜5の断面積は0.67(=80000/120000)である。
このため、参考例1〜5については、操業性の評価が「○」であり、特に参考例3〜5については、鋳片品質の評価も「○」であった。なお、参考例1、2については、圧延をしていないため、品質の評価は行っていない。
一方、表1に示す寸法:800mm×150mmの鋳型は、大断面スラブを鋳造する鋳型であるが、実施例1〜9に示すように、溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保することで、操業性と品質のいずれの評価も「○」であった。
しかし、比較例1〜9は、溶融パウダー層の最小厚みが7mm未満であったため、操業性と品質の評価はいずれも「△」又は「×」であった。
ここで、溶鋼の鋳造速度の影響について、比較例1、2、5、6、9と、実施例1〜3、6、7を用いて比較した結果を、図2を参照しながら説明する。
図2から明らかなように、溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上(7mm)にする(実施例1〜3、6、7)ことで、操業性と品質の評価はいずれも「○」であった。しかし、溶融パウダー層の最小厚みが7mm未満(6mm)の場合、溶鋼の鋳造速度が1.2m/分未満で遅ければ(比較例1、2)、操業性と品質の評価はいずれも不合格ではあったが「△」であった。
従って、溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上にする場合については、溶鋼の鋳造速度を1.2m/分以上とすることで、操業性と品質の改善効果を更に高めることができる。
また、表2に示す寸法:1200mm×250mmの鋳型は、大断面スラブを鋳造する鋳型であるが、実施例10〜14に示すように、溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保することで、操業性と品質のいずれの評価も「○」であった。
一方、比較例10〜13は、溶融パウダー層の最小厚みが7mm未満であったため、操業性と品質の評価はいずれも「×」であった。
なお、寸法:800mm×150mmの鋳型の断面積を1とすると、実施例10〜14と比較例10〜13の各断面積は、2.5(=300000/120000)である。
そして、表2に示す寸法:1000mm×400mmの鋳型は、大断面スラブを鋳造する鋳型であるが、実施例15〜17に示すように、溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保することで、操業性の評価は「○」であった。
一方、比較例14は、溶融パウダー層の最小厚みが7mm未満であったため、操業性の評価は「×」であった。
ここでは、参考例1、2と同様、圧延をしていないため、品質の評価は行っていない。
なお、寸法:800mm×150mmの鋳型の断面積を1とすると、実施例15〜17と比較例14の各断面積は、3.33(=400000/120000)である。
以上のことから、本発明の溶鋼金属の連続鋳造方法を使用することで、断面積が大きなスラブを鋳造するに際し、鋳型の内壁面と凝固シェルとの間の潤滑を改善し、表面性状の優れたスラブを安定に鋳造できることを確認できた。
なお、前記した従来技術にもあるように、溶融パウダーの粘度も、鋳型の内壁面と凝固シェルとの相互作用を通じて、溶融パウダーの流入性に影響を与える。そこで、鋳造試験において、溶融パウダーの粘度のみを変更した条件についても検討したが、大断面スラブを鋳造する鋳型を用いて電磁力を印加した場合、鋳片の表面性状と操業性を改善できなかった。
これは、溶融パウダー層が極端に薄くなった局所的な部位においては、溶融パウダーの粘度を変化させても、溶融パウダーの流入量の低減を防止することができないためだと考えられる。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の溶融金属の連続鋳造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、溶融金属として溶鋼を使用した場合について説明したが、ソレノイド式電磁コイルが設けられた鋳型を使用して連続鋳造を行う溶融金属であれば、これに限定されない。
10:鋳型、11:溶鋼(溶融金属)、12:メニスカス位置、13:溶融パウダー、15:鋳型、16:溶鋼(溶融金属)、17:メニスカス、18:溶融パウダー

Claims (2)

  1. 鋳造するスラブの幅方向の内幅が800mm以上、かつ厚み方向の内幅が150mm以上の鋳型を取り囲むように配置、又は該鋳型内に埋設されたソレノイド式電磁コイルに、周波数が30Hz以上300Hz以下を満たす交流電流を通電し、前記鋳型内の溶融金属に、メニスカス位置から鋳造方向に少なくとも400mmまでの範囲に形成される磁束密度の最大値が300ガウス以上5000ガウス以下を満たす電磁力を印加しながら鋳造を行う溶融金属の連続鋳造方法において、
    前記電磁力の印加時に、溶融金属のメニスカス上面を覆う溶融パウダー層の最小厚みを7mm以上確保しながら連続鋳造を行うことを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
  2. 請求項1記載の溶融金属の連続鋳造方法において、溶融金属の鋳造速度を1.2m/分以上にすることを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
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