近年、比較的低廉なパーソナルコンピュータやワードプロセッサ等のOA機器が広く普及しており、これら機器で作成された情報を出力する記録装置等の様々な出力装置が提供されている。中でも記録装置は普及しており、該装置の高速化技術、高画質化技術が急速に開発されている。
また、これら記録装置の中でも、インクジェット記録方法を用いたシリアルプリンタは、低コストで高速記録ないしは高画質な画像記録を実現するものとして着目されている。
このようなシリアルプリンタにおいて、高速記録を行う技術としては、例えば双方向記録方法があり、また高画質な画像を記録する技術としては例えばマルチパス記録方法などがある。
記録速度を高速化する方法として、記録素子数を多くした記録ヘッドを用いて記録を行う方法も考えられるが、これは記録ヘッドの大型化を招く。記録ヘッドを大型化せずに記録速度を高速化する方法として、前述したように記録ヘッドの往走査、復走査の両方で記録を行う双方向記録は有効な方法の一つである。
記録装置では通常、給紙・排紙等の時間があるため単純な比例関係にはならないが、双方向記録は往走査だけで記録を行う片方向記録に比べて、約2倍の記録速度を得ることができる。
例えば、記録密度が360dpiで主走査方向とは異なる方向(例えば記録媒体の送り方向である副走査方向)に64個の吐出口を配列した記録ヘッドを用い、A4サイズの記録媒体を縦向きにして記録を行う場合、記録媒体全体に画像を完成させるには、記録ヘッドを約60回記録走査させる必要がある。ここで、片方向記録では当該記録走査がすべて所定の走査開始位置から一方向への移動時にのみ行われ、かつ走査終了位置から走査開始位置へ復帰するための逆方向への非記録走査を伴うので、前述の条件で記録媒体全体に画像を完成させるには約60回の往復走査が必要となる。これに対し双方向記録では、往復走査の両方で記録を行うので、約2分の1の30回の往復記録走査で画像を完成させることができる。このように、双方向記録では記録に要する時間が大幅に削減されるので、記録速度の向上をはかることができる。
次に、高画質化技術の一例として、マルチパス記録方法について説明する。複数の記録素子を有する記録ヘッドを用いて記録を行う場合、記録される画像の品位は記録ヘッド単体の性能に依存するところが大きい。例えばインクジェット記録ヘッドの場合、インク吐出口の形状や、電気熱変換体即ち吐出ヒータなどインク吐出に利用されるエネルギーを発生するための素子のバラツキ等、記録ヘッド製造工程で生じる僅かな違いが、各吐出口から吐出されるインクの吐出量や吐出方向の向きに影響を及ぼし、最終的に形成される画像の濃度ムラとして画像品位を低下させる原因となりうる。
図10および図11を用いてその具体例を説明する。図10(A)において、901は記録ヘッドであり、簡単のため8個のノズル(本明細書では、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする)902によって構成されているものとする。903はノズル902から、例えば滴として吐出されたインクである。インク903は、通常、図10(A)のように各吐出口からほぼ均一な吐出量で、かつ揃った方向にインクが吐出されるのが理想である。もし、このような吐出が行われれば、図10(B)に示したように記録媒体上にドットの大きさが均一なインクドットが着弾し、図10(C)に示すように全体的にも濃度ムラの無い一様な画像が得られるのである。
しかし、実際には記録ヘッド901は先にも述べたように個々のノズルにバラツキがあり、そのまま記録を行ってしまうと、図11(A)に示したように各ノズルより吐出されるインク滴の大きさおよび向きにばらつきが生じ、記録媒体上に図11(B)に示すように着弾する。同図によれば、ヘッド主走査方向で、周期的にエリアファクタが100%に満たない白紙の部分が存在したり、また逆に必要以上にドットが重なり合った状態や、あるいは中央に見られるような白筋が発生したりする。この様な状態で着弾されたドットの集まりはノズル並び方向に対し、図11(C)に示した濃度分布となり、その結果、人間の目でこれらの現象が濃度ムラとして認識される。
そこでこの濃度ムラ対策としてマルチパス記録方法が考案されている。図12および図13によりその方法を説明する。
図10および図11で示したものと同様の領域に対して記録を完成させるために記録ヘッド901を図12(A)に示すように3回スキャンさせる。図中縦方向に8画素の半分である4画素を単位とする領域は2パスで完成する。この場合記録ヘッドの8ノズルは、図中上半分の4ノズルと、下半分の4ノズルとのグループに分けられ、1ノズルが1回のスキャンで形成するドットは、画像データをある所定の画像データ配列に従って約半分に間引いたものである。そして2回目のスキャン時に残りの半分の画像データへドットを埋め込み、4画素単位の領域を完成させて行く。
このようなマルチパス記録方法を用いると、図11(A)で示した記録ヘッド901を使用しても、各ノズルのばらつきによる記録画像への影響が半減されるので、記録された画像は図12(B)のようになり、図11(B)に見るような黒スジや白スジが余り目立たなくなる。従って濃度ムラも図12(C)に示すように図11(C)の場合と比べ、かなり緩和される。
このようなマルチパス記録を行う際、1スキャン目と2スキャン目とでは、画像データをある決まった配列すなわちマスクに従い、互いに埋め合わせる形で分割する。通常この画像データ配列すなわち間引きパターンは、図13(A)に示すように、縦横1画素毎に、互い違いになるものを用いるのが最も一般的である。単位記録領域(ここでは4画素単位)においては互い違いにドットを形成する1スキャン目と、1スキャン目とは逆のパターンでドットを形成する2スキャン目とによって記録が完成されるものである。また、通常各走査間の記録媒体の移動量、すなわち副走査量は一定に設定されており、図12および図13の場合には、4ノズル分ずつ均等に移動させている。
かかるマルチパス記録方法は、濃度ムラやスジが視覚的に認識されやすい、ベタ部など、記録デューティの比較的高い記録に特に有効である。しかし記録デューティの比較的低いテキストや罫線などの記録においては、そもそも前述したバラツキによる濃度ムラやスジを認識しづらいためマルチパス記録を実施するメリットが少ない。このため、テキストや罫線の記録の際には、高速化を優先しマルチパス記録を実施しない形態も考えられる。
ドットマトリクスプリント方法における高画質化技術の他の例として、ドット着弾位置を調整するレジストレーション調整(以下「レジ調整」ともいう)技術がある。レジ調整とは、記録媒体上のドットが形成される位置を記録ヘッドの駆動タイミングをずらすなどして調整する調整方法である。
ノズルより吐出されたインク滴は、個々のノズルの吐出特性バラツキだけでなく、平均的なヘッド吐出特性要因や本体メカ要因により狙った位置からずれて着弾することがある。例えば、ヘッドノズルから記録媒体までの距離(紙間)は、製造バラツキにより個々の記録装置本体で微妙に異なる。紙間が異なれば、ノズルから吐出されたインク滴が記録媒体に着弾する時間が異なるため、双方向記録における着弾位置ズレの原因となる。ヘッドの製造バラツキによる吐出速度の違いも同様の現象を招く。
図14は着弾位置のずれの例を示したものである。
図14(a)に示すように、往走査と復走査で記録媒体上の同じ位置で着弾するのが理想であるが、ノズルと記録媒体との間が広い場合は図14(b)のように双方の交点よりも下に記録媒体があるため、着弾点がずれる。逆にノズルと記録媒体との間が狭い場合は図14(c)のように双方の交点よりも手前に記録媒体があるために、着弾点がずれる。
また、吐出速度が速い場合は、図14(d)に示すように、双方が交わる前に着弾してしまう。一方、吐出速度が遅い場合は、図14(e)に示すように、双方が交わった後で着弾してしまう。このように、往復記録で双方の着弾位置がずれるには様々な要因がある。
また、複数列からなるノズルで画像を形成する場合、各ノズル列間の平均的な吐出特性の違い(吐出方向、吐出速度)により着弾位置がずれることも考えられる。このような着弾位置のずれは画像品位劣化の原因となるため、高画質化のためにはレジ調整は必須の技術となっている。
ところで、レジ調整は一般的に以下のように行われる。
例えば往復記録における、往走査と復走査の着弾位置合わせにおいては、往走査と副走査とでそれぞれプリントタイミングを調整する目的で、往復走査での相対的なプリント位置条件を変えながら記録媒体上に罫線等を記録する。それを検査者が自ら目視し、最も位置の合っていると思われる条件、つまり罫線等がずれることなく記録されている条件を選び出して、直接記録装置にキー操作等で入力して設定するか、もしくはホストコンピュータを操作することによりアプリケーションを介して着弾位置条件を記録装置に設定する。
また、複数ノズル列を有する記録ヘッドで記録を行う場合は、複数のノズル間での相対的な記録位置条件を変えながら、記録媒体上にそれぞれのノズル列で罫線等を記録する。それを前述同様にユーザが記録位置の合っている最適な条件を選び、相対的な記録位置条件を変え、それぞれのノズル列毎に、前述と同様の手段で記録装置に記録位置の条件を設定する。
このようなレジ調整は、上述のマルチパス記録、非マルチパス記録など記録モードによって、微妙に調整量が異なってくる。したがって、レジ調整(記録位置ずれ調整)を記録モードが変更されるごとに補正する処理を実行させるようにした構成も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、近年、インクジェット記録装置の高画質化を目的としてインクドットの高精細化、すなわちインク滴の小液滴化が図られている。したがって、従来の大きなドットでは目立たなかったわずかな着弾位置のずれ等が、ドットが小さくなったために目立ってしまうなどの問題がある。したがって、記録ヘッドがインクを吐出する挙動において、上記レジ調整に加えて、以下に説明する事象に対しても考慮しなければならないという問題がある。
第1の事象として、主滴とサテライトの着弾位置が往走査時と復走査時とで異なることが挙げられる。
図15は、記録ヘッドの構造および吐出されたインク滴を示す模式図である。
例えば、バブルジェット(R)方式でインクを吐出する構造の記録ヘッドの場合、ヒータ1401からの熱エネルギーによってインク中に気泡を発生させ、その気泡の生成圧力に伴って吐出口1402近傍のインク滴を所定量吐出する。しかしながら、吐出されたインク滴がノズルから分離する液液分離が不安定であることから、主滴1403に続いてサテライト1404と呼ばれるインク滴が噴出される。サテライト1404は、吐出される液滴の後端部が分離して形成されるものであり、主滴1403と比較し体積が小さく吐出速度も遅い。なお、このサテライト1404はインクの吐出方式がバブルジェット(R)方式に限らず、他のピエゾ方式などでも発生するものである。
図16に示すように、主滴とサテライトは同一方向に飛翔するものの、記録ヘッドは主走査方向に移動しながら記録を行うため、主滴とサテライトの吐出速度の違いから、記録媒体上の異なる位置に着弾する。主滴とサテライトの着弾位置ずれの距離Lは、主滴吐出速度V、サテライト吐出速度v、紙間D、記録ヘッド走査速度Vpから以下のように表すことが出来る。
L=Vp×(D/v) − Vp×(D/V)
このように、記録媒体上には、主滴によるドット1501及びサテライト1502によるドットが形成されるが、主滴ドットに対しサテライトドットが十分に小さければ、記録に寄与するのは主滴のみとみなしサテライトの影響は無視することが可能である。
しかしながら、上述したように、インク滴の小液滴化によって、主滴ドットは小さくなるとサテライトの影響は無視することができなくなってくる。すなわち、サテライトの体積は、ノズル形状などで決まる吐出特性と密接に関連し、主滴の小液滴化とともに小さくなるというものではないので、主滴ドットが小さくなるほど、サテライトドットと主滴ドットとの大きさの差が小さくなる傾向にある。具体的には、吐出された液滴の前端部が主滴となり、後端部の分離した部分がサテライトドットとなるため、吐出口の特性やインクの特性、具体的には粘性や表面張力がサテライトドットのサイズに影響する。従って、主滴のサイズを小滴化したとしても、その小滴化に比例してサテライトドットのサイズが小さくなるとはいえない。結果として、小滴化によりサテライトドットの影響が相対的に大きくなり、サテライトをも考慮した画像形成技術が重要になってきている。
例えば、縦方向(副走査方向)の罫線を印字する場合を例に挙げる。ここでは、600DPIピッチで並んだ304本のノズルを有するヘッドを用いて説明する。
双方向で記録を実施した場合、主滴ドットに対するサテライトドットの位置関係は、往方向走査と復方向走査で反対になる。
図17(A)は非マルチパス記録で双方向記録をした場合の主滴ドットとサテライトドットの位置を示す模式図である。図17(B)は主滴ドットとサテライトドットの部分で一走査分を拡大した模式図である。
1パス記録すなわち非マルチパス記録を行ったとすると、304ノズル幅分(約13mm)で往走査と復走査が切り替わるために、約13mm幅でサテライトドットの位置が反転した記録結果となる。
図17(C)はこのとき記録された罫線のライン濃度を示す。例えば、主滴吐出速度V=15m/s、サテライト吐出速度=10m/s、紙間D=1.6mm、走査速度Vp=25Inch/sとするとズレ量Lは、約0.03mmとなる。人の視覚特性の分解能が低いことから、実質的には、図17(D)で模式的に表したライン濃度として認識される。往方向走査と復方向走査とでは、ライン濃度は図17(E)で示すように反転したものとなる。両者の濃度の重なり部分は少ない。したがって記録結果はノズル幅単位で罫線がガタガタにつながることになる。往走査と復走査で記録した罫線を滑らかにつなぐためには、図18(A)で示す位置にレジ調整し、往走査ドットと復走査ドットのライン濃度の重なりを最大にする必要がある。
一方、マルチパス記録を行った場合には、近傍の画素で往方向記録と復方向記録が均等に混在するため、サテライトドットは主滴ドットを挟んだ左右にほぼ均等に形成される(図19(A)参照)。そして、視覚特性の分解能が低いことから、実質的には図19(B)で示す濃度として認識される。このため、罫線を滑らかに記録するためには、主滴ドットが同一カラムになるようにレジ調整をする必要がある。
以上説明したように、サテライトドットの影響が無視できない場合においては、マルチパス記録と非マルチパス記録において最適のレジ調整値が異なるという問題が発生する。更に、主滴ドットとサテライトドットのずれの距離Lは、記録ヘッドの移動速度に比例して大きくなる。したがって高速化のため記録ヘッドを速く移動させる形態においては、主滴ドットとサテライトドットとの距離Lが大きくなり、サテライトドットが目立ってしまい、更に深刻なものとなる。
次に、第2の事象として、インクを吐出する間隔を異ならせた複数の駆動モード(例えば1200dpiモードと600dpiモードなど)がある場合、そのうちの一つの駆動モードでのインク吐出タイミングで合わせたレジ調整では、他の駆動モードで記録した場合、往走査でのドット着弾位置と復走査でのドット着弾位置がわずかにずれてしまい、そのずれが、ドットが小径であるために目立つということが挙げられる。
従来、複数のノズルを配列した記録ヘッドを駆動してインクを吐出する際に、駆動に必要な電源容量を抑えるために、ノズル群を複数のブロックに分割してブロック単位で同時に駆動して吐出するブロック分割駆動の手法が一般的に知られている。
このブロック分割駆動において、記録データに従い、ノズルからインクを吐出する場合の各ノズルの吐出タイミングを図20〜22に示す。図20に示すように、例えば304ノズルを有するヘッドのノズルを複数ブロック(この場合19ブロック)に分割し、各ブロック内のノズルの吐出順序を図21に示すように規定し、図22に示すパルスタイミングにより吐出を実施する。すなわち、あるタイミングですべてのブロックの吐出順序1に対応するノズルからインクの吐出を行い、ずれ時間dだけタイミングをずらして、すべてのブロックの吐出順序2のノズルの吐出を実施する。同様に、吐出順序3〜16のノズルについても、順次タイミングをずらして吐出を行わせる。
このブロック分割駆動の制御を行うことにより、同時吐出数を減らすことが出来るため、全ノズルを同時に駆動する場合と比較して、瞬間的に過大な電流が発生することを抑制することが可能となる。
しかし、上記方法では、ブロック内のノズルごとに吐出タイミングが異なるため、着弾位置がノズルごとに微妙に異なる。すなわち、CR速度が15inch/sec、ずれ時間dが3.5μsecの条件において、ノズル列に平行な罫線を記録しようとした場合、実際には、図23に示すように、1/1200inch(約21μm幅だけ広がった罫線が記録される。この現象は、画像品位の劣化を招くことがあるため、図23に示す広がりの幅wを狭くするため、駆動タイミングのずれdを可能な限り小さくすることが望ましい。
通常、インクジェットプリンタでは、ヒータ上の膜沸騰による発泡やピエゾ素子の振動などにより、ノズル内のインクに圧力をかけインクを吐出する方式が採用されている。圧力はノズル前方(インク吐出方向)だけでなく、ノズル後方、すなわち液室内にも伝播する。液室に伝播した圧力は、周辺のノズルにも伝播する。結果として、吐出を行ったノズル近傍に存在するノズルのインクが振動する。インクが振動した状態で圧力を加えると、ノズル内の状態が不安定なため、正常な吐出がなされない場合がある。このため、吐出後には、振動が収まったと考えられるタイミングだけ休止した後に、吐出を行う必要がある。なお、同時吐出数が少ない場合は、周辺ノズルへ伝播する圧力が小さいため、このノズル内で生じるインクの振動は比較的短時間で収まる。
マルチパス印字において、1スキャンあたりの吐出数は、通常、パス数(所定領域の画像を完成させるのに必要なスキャン数)の増加とともに少なくなる。すなわち、パス数の多い記録では、同時吐出数が相対的に少なくなるため、上記圧力伝播による弊害がほとんどなくなり、駆動タイミングのずれdを小さくすることが出来る。反面、パス数の少ない記録では、同時吐出数が相対的に多くなるため、上記の弊害が発生し、駆動タイミングのずれdを大きくしなくてはならない。このため、パス数の異なる複数の記録モードを持つプリンタにおいては、パス数に応じて、駆動タイミングのずれdの異なる複数の駆動モードを用いて、記録を行うものがある。
しかし、駆動モードにより、ドット広がりの幅wが異なるため、往復記録において、駆動モードが異なるにもかかわらず同じ往復レジ値を用いて記録を行った場合、着弾位置がずれる問題が発生する。これについて図を参照し説明する。
図24(A)、24(B)は、チェッカーパターン状のマスクを用いて2パス印字を行ったとき、駆動モードの違いにより、双方向印字時に着弾位置がずれる現象を説明するために、紙面上のドット配置を模式的に表した図である。図24(A)は、ドット広がりの幅wを1200dpi幅(1/1200インチ)に抑えるために駆動タイミングのずれdを3.5μsecに設定した駆動モードであり(1200dpi駆動モードと呼ぶ)、左側に1スキャン目/2スキャン目の吐出におけるドット配置、右側に記録後における紙面上のドット配置を示す。なお、1スキャン目と2スキャン目で走査方向が反転しているため、2スキャン目、すなわち復方向印字では、ブロック内の吐出順序を反転させている。
図24(B)は、ドットの広がりの幅wを600dpi幅(1/600インチ)に抑えるために駆動タイミングのずれdを7.0μsecに設定して駆動モードであり(600dpi駆動モードと呼ぶ)、左側に1スキャン目/2スキャン目の吐出におけるドット配置、右側に記録後における紙面上のドットは位置を示す。
どちらの印字でも往復レジ値は、1200dpi駆動モード時に、着弾位置が最適になるように調整されている。
それぞれの駆動モードにおいて、往復印字に対応するため、往方向印字スキャンと復方向印字スキャンで、ブロック内の吐出順番が反転している。
図24(B)から分かるように、1200dpi駆動時に着弾が最適になるように設定された往復レジ値で600dpi駆動記録を行うと、ドットの広がり幅が1200dpi駆動時と異なるため、着弾位置が最適位置からずれる。
この着弾ずれは、インクが着弾してメディア上に形成するドット径が大きい場合には、ずれの影響は相対的に少なく、画像品位の劣化は認識されないレベルのものであった。しかし、インク滴の小滴化が進み、ドット径が小さくなったため、着弾ずれの影響が無視できないほど大きなものになってきている。
以上説明したように、吐出されるインク滴の微小化に伴って記録されるドットの径が小さくなったため、ブロック分割駆動のような駆動のモードによっては、往走査と復走査でのドットの着弾位置のずれの影響が大きくなり、画像品位の劣化が目立ってしまう、という問題が生じている。
本発明は、記録ヘッドを駆動するモードが異なる場合においても画像品位の劣化を抑えて高品位の画像を記録できるインクジェット記録装置、および記録位置調整方法を提供することを目的とする。
本発明の記録位置調整方法は、インクを吐出するためのノズルを複数配列した記録ヘッドを前記ノズルの配列方向とは異なる所定方向に往復走査させて、記録媒体上に前記インクのドットを記録するインクジェット記録装置における記録位置調整方法であって、前記記録媒体上の所定領域に前記記録ヘッドを1回走査させて記録を完成する1パス記録と、所定領域に前記記録ヘッドを前記所定の速度で複数回走査させて記録を完成するマルチパス記録とのそれぞれにおける、前記記録ヘッドの往走査におけるインクの吐出タイミングに対する相対的な復走査におけるインクの吐出タイミングを決定する決定工程と、前記1パス記録により、前記決定工程により決定されたタイミングに基づいて記録を行う記録工程と、を有し、前記決定工程は、前記往走査で吐出されるインクの主滴ドットと復走査で吐出されるインクの主滴ドットとが同一のカラムに配置されるように前記マルチパス記録におけるインクの吐出タイミングを決定し、往走査で吐出されるインクの主滴ドットの記録位置に対して、前記往走査で吐出されるインクの主滴ドットと同一カラムに配置されるべき復走査で吐出されるインクの主滴ドットの記録位置が前記往走査の方向にずれるように、前記1パス記録での前記復走査のインクの吐出タイミングを決定することを特徴とする。
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出するためのノズルを複数配列した記録ヘッドを前記ノズルの配列方向とは異なる所定方向に往復走査させて、記録媒体上に前記インクのドットを記録するインクジェット記録装置であって、前記記録媒体上の所定領域に前記記録ヘッドを1回走査させて記録を完成する1パス記録と、所定領域に前記記録ヘッドを前記所定の速度で複数回走査させて記録を完成するマルチパス記録とのそれぞれにおける、前記記録ヘッドの往走査におけるインクの吐出タイミングに対する相対的な復走査におけるインクの吐出タイミングを決定する決定手段と、前記1パス記録により、前記決定工程により決定されたタイミングに基づいて記録を行う記録手段と、を有し、前記決定手段は、前記往走査で吐出されるインクの主滴ドットと復走査で吐出されるインクの主滴ドットとが同一のカラムに配置されるように前記マルチパス記録におけるインクの吐出タイミングを決定し、往走査で吐出されるインクの主滴ドットの記録位置に対して、前記往走査で吐出されるインクの主滴ドットと同一カラムに配置されるべき復走査で吐出されるインクの主滴ドットの記録位置が前記往走査の方向にずれるように、前記1パス記録での前記復走査のインクの吐出タイミングを決定することを特徴とする。
以上の構成によれば、往走査ドットと復走査ドットのライン濃度の重なりを大きくし、往走査と復走査で記録した罫線を滑らかにつなぐことが可能となり、高品位の画像を記録することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
(全体構成)
図1は、本発明を適用可能なインクジェットプリンタの概観斜視図であり、図においてはそのフロントカバーを取り外して装置内部を露出させた状態を示している。
1000は交換式のヘッドカートリッジ、2はそのインクジェットカートリッジを着脱自在に保持するキャリッジユニットである。3はインクジェットカートリッジ1000をキャリッジユニット2に固定するためのホルダであり、インクジェットカートリッジ1000をキャリッジユニット2内に装着してからカートリッジ固定レバー4を操作すると、これに連動してインクジェットカートリッジ1000をキャリッジユニット2に圧接する。また、当該圧接によってインクジェットカートリッジ1000の位置決めが行われると同時に、キャリッジユニット2に設けられた所要の信号伝達用の電気接点とインクジェットカートリッジ1側の電気接点とのコンタクトが行われる。5は電気信号をキャリッジユニット2に伝えるためのフレキシブルケーブルである。
6はキャリッジユニット2を主走査方向に往復移動させるための駆動源をなすキャリッジモータ、7は当該駆動力をキャリッジユニット2に伝達するキャリッジベルトである。8は主走査方向に延在してキャリッジユニット2の支持を行うとともにその移動を案内するガイドシャフトである。9はキャリッジユニット2に取り付けられた透過型のフォトカプラ、10はキャリッジホームポジション付近に設けられた遮光板であり、キャリッジユニット2がホームポジションに至ったときに遮光板10がフォトカプラ9の光軸を遮ることにより、キャリッジホームポジションの検出が行われる。12はインクジェットヘッドの前面をキャップするキャップ部材やこのキャップ内を吸引する吸引手段、さらにはヘッド前面のワイピングを行う部材などの回復系を含むホームポジションユニットである。
13は記録媒体を排出するための排出ローラであり、不図示の拍車状ローラと協動して記録媒体を挟み込み、これを装置外へと排出する。14はラインフィードユニットであり、記録媒体を副操作方向へ所定量搬送する。
(ヘッド構成)
図2は本実施形態で用いたヘッドカートリッジ1000の詳細を示す斜視図である。
15はBk(ブラック)インクを貯溜する交換可能なインクタンク、16はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色剤のインクを貯溜する交換可能なインクタンクである。17はインクカートリッジ1と連結してインクを供給する部分となるインクタンク16のインク供給口、18は同様にインクタンク15のインク供給口である。インク供給口17、18は、供給管20に連結されて記録ヘッド21にインクを供給するように構成されている。19は前述のフレキシブルケーブル5と接続され、記録データに基づく信号を記録ヘッド21に伝える様に構成されている電気コンタクトである。
また、記録ヘッド21の前面に図示されている4つの線は各々、インクを吐出するインク吐出ノズルのノズル列であり、各ノズル列から、Bk(ブラック)インク、C(シアン)インク、M(マゼンタ)インク、Y(イエロー)インクが吐出される。
なお、本実施形態は四色のインクを吐出するものとしているが、本発明はこれに限らず、淡シアン、淡マゼンタなど他の色のインクも吐出するものであってもよい。
図3は記録ヘッド21の概略構成を示す模式的断面図である。
5102、5104、5106、及び5108は吐出用のインクを受容する共通液室で、ヒータボード4001、4002を半導体プロセスで形成された面の裏面を異方性エッチングで形成したものであり、各吐出用ヒータ群に対応した液路群のそれぞれに連通し、かつ異なる色のインクの混合が生じないよう分離或いは区画されている。5102、5104、5106、5108は、順にブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクに対応する。5003、5005は吐出用ヒータ群の構成要素であり、吐出口5004、吐出口5006乃至これらに連通する液路に対応し、共通液室5102の両側に配置される吐出ヒータ部である。このように各インクを吐出するノズルは、2列のノズルから構成されている。本実施形態では、同図正面から向かって左側のノズル列5004を偶ノズル、右側のノズル5006を奇ノズルと呼称する。なお、他の吐出用ヒータ群も同様の構成をもつので、その説明は省略する。
5101、5103、5105、5107はベースプレート4000に形成され、共通液室5102、5104、5106、及び5108と共に共通液室を構成する。5001及び5002はインク流路およびノズルを形成したオリフィスプレートで、通常、耐熱性の樹脂で形成されている。また、Pは記録媒体である。
インク吐出の様子をブラックインクの場合を例にして説明する。インクは吐出口5004付近まで充填されており、インクを吐出する際は、吐出用ヒータ5003に電気信号が送られる。吐出用ヒータ5003は所定時間発熱し、ヒータ付近のインク中に瞬間的に気泡を発生させる。そして、この気泡の生成圧力に伴い、吐出口5004から所定量のインクが滴として吐出される。なお、本実施形態はインク吐出の方法でこのようなバブルジェット(R)方式を用いているが、本発明はこれに限らず、ピエゾ方式などであってもよい。
(電気構成)
図4は、インクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態のインクジェット記録装置はホストコンピュータと接続されており、ホストコンピュータから入力される画像データに従い、記録動作を行う。
400は、インクジェット記録装置全体を制御するCPUである。CPU400は、メモリとして、ROM401とランダムメモリ(RAM)402とを具えている。そして、メインバスライン405を介して各駆動部へ駆動指令を送る。さらにメインバスライン405には、ホストコンピュータからの画像データなどを入力する画像入力部403が接続している。これにより入力された画像データは、画像信号処理部404によって、記録ヘッドの各ノズルに対応した吐出信号に変換される。さらに、記録装置に設けられた操作ボタンなどの操作は操作部406を介して、CPU400へ送られる。
操作部406に入力された操作信号やホストコンピュータから送られてきた各種指令に従い、CPU400は各駆動部の制御回路に対して、駆動指令を送る。制御回路には次のものがある。回復系制御回路407は、ブレード409、キャップ410、吸引ポンプ411といった回復処理を行う部材の動力源となる回復系モータ408の駆動を制御する。ヘッド駆動制御回路415は、記録ヘッド413のヒータの駆動制御を行う。キャリッジ駆動制御回路416はキャリッジの主走査方向への走査を制御する。紙送り制御回路417は、搬送ローラなどの紙送り関係の駆動部材の駆動を制御する。
なお、本実施形態では、画像データをホストコンピュータから入力するものとしたが、インクジェット記録装置側で作成するものであってもよい。また、画像信号処理部404でノズルごとに吐出信号に変換するものとしたが、これに限らず、ホストコンピュータ側でノズルごとの吐出信号に加工されたものを入力する形態であってもよい。
(レジストレーション調整)
次にこのような構成のインクジェット記録装置における、レジストレーション調整について説明する。本実施形態では、まず、レジストレーション基準値を決定し、さらに記録モードの違いに応じて、モードが切り替わるごとに基準値から微調整を行い、常に最適なレジ調値で記録を行うことができるようにする。まず、レジストレーション基準値の決定について説明する。
図5はレジストレーション調整を示すフローチャートである。
ユーザーがホストコンピュータを操作することによりレジ調整が選択されると(ステップ501)、ホストコンピュータより記録装置へレジ調整パターン印字指令が送信される。このレジ調整パターン印字指令を受けた記録装置は、吸引、ワイピング、予備吐など必要な回復動作を実施したのち、レジ調整パターンを印字する(ステップ502)。
図6はレジ調整パターンを示す図である。
パターンには、6個の調整項目が印字され、A〜Fの順にブラック偶奇レジ、シアン偶奇レジ、マゼンタ偶奇レジ、ブラック双方向レジ、シアン双方向レジ、ブラック・カラー列間レジを調整するパターンである。各調整項目は、吐出タイミングの異なる11個の調整パッチから構成される。
A〜Cまでの偶奇レジは、偶ノズルと奇ノズルの吐出方向/吐出速度の違いからなる着弾位置ズレを補正するものであり、往方向走査のみでかつ非マルチパス記録される。11個のパッチは、偶ノズルを吐出してから奇ノズルを吐出までの吐出タイミングが異なり、偶ノズルと奇ノズルの吐出方向/吐出速度が全く同一だった場合に、同じカラムに着弾する吐出タイミングを「0」パッチとして印字する。更に、「0」パッチを基準として奇ノズルの着弾位置が1200DPI単位で±1〜5画素ずれるパッチを「0」パッチの上下に印字する。ここで、奇ノズルの吐出タイミングを遅くする方向をプラス、早くする方向をマイナスとする。すなわち、プラス方向にずらすと偶ノズルのドットに対する奇ノズルドットの形成位置は、プリントヘッド走査方向側にずれることになる。各パッチは、50%デューティの均一なパターンである。
DからEまでの双方向レジは、往方向走査と復方向走査の着弾位置ズレを補正するものであり、偶ノズルのみを使用して記録される。パッチは、25%デューティの均一なパターンであり、偶ノズルのみを使用して双方向でマルチパス記録される。11個のパッチは、復方向走査の吐出タイミングが異なり、吐出速度=15m/s、紙間=1.6mmである場合に、往方向走査の記録ドットと復方向走査の記録ドットと同じカラムに着弾するタイミングを「0」パッチとして印字する。更に、「0」パッチを基準として復方向走査の記録ドットが1200DPI単位で±1〜5画素ずれるパッチを「0」パッチの上下に印字する。ここで、復方向走査の吐出タイミングを遅くする方向をプラス、早くする方向をマイナスとする。
Fのブラック・カラー列間レジは、BKノズルとカラーノズル間の着弾位置ズレを補正するものであり、偶ノズルのみを使用して片方向でマルチパス記録される。パッチは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローが同じデューティで、トータル25%デューティになる均一なパターンである。11個のパッチは、ブラックノズルを吐出してからカラーノズルを吐出するまでの吐出タイミングが異なり、ブラックノズルとカラーノズルの吐出方向/吐出速度が全く同一だった場合に、記録ドットが同じカラムに配置されるタイミングを「0」パッチとして印字する。更に、「0」パッチを基準としてカラーノズルの着弾位置が1200DPI単位で±1〜5画素ずれるパッチを「0」パッチの上下に印字する。
ユーザーは、記録されたレジ調整パターンを目視し、各調整項目について最も均一でノイズの少ないパッチを選択する(ステップ503)。そして、選択したパッチのパターン番号をホストコンピュータから入力する(ステップ504)。入力された値は、レジ調基準値としてホストコンピュータから記録装置本体へ送信され(ステップ505)、記録装置内の不揮発性メモリに記憶される(ステップ506)。この際、イエロー偶奇レジはマゼンタ偶奇レジと同じ値、マゼンタ双方向レジとイエロー双方向レジはシアン双方向レジと同じ値が設定される。
このようにして決定されたレジ調基準値は、実際の記録動作において、選択された記録モードに応じて次のような微調整がなされる。
インクジェット記録装置は、ユーザの要求に対応するべく、複数の記録モードを有している。そして、記録モードに応じて、記録動作が異なるので、選択された記録モードによっては、レジ調基準値からさらなる微調整が必要な場合もある。本実施例では、記録モードに応じて、記録方式を片方向記録、双方向記録、マルチパス記録に切り替える形態における記録動作を説明する。具体的には、記録方式の違いによって、サテライトドットの着弾位置が異なることにから発生する濃度むらを防止するためのレジ値の微調整方法について説明する。
(記録動作)
本実施形態のインクジェット記録装置は、ユーザが求める記録画像の画像品位に応じて、次の3つの記録モードが設けられている。記録に要する時間は長くても高画質な画像を求める場合は「きれい」モードを、多少画質は低下しても記録に要する時間を短くすることを求める場合は「はやい」モードを、標準的な画質および記録速度を求める場合は「標準」モードをユーザが選択するようになっている。この選択操作はホストコンピュータ上で行われてもよいし、インクジェット記録装置本体に設けられた操作ボタンから行われてもよい。
インクジェット記録装置は、記録方式として、片方向記録、双方向記録、マルチパス記録の三種類を使い分ける。また、同じ記録方式で記録を行っても記録媒体の種類に応じて記録結果が異なるため、記録媒体の種類と記録モードとの組み合わせによって、記録方式が決定される。そこで、ユーザは前記記録モードの他に記録媒体の種類も選択し入力する。
ユーザから入力された記録モード及び記録媒体の種類に応じて、CPUは記録方式を決定する。決定は次に示す表に従って行われる。
図7は、記録モードと記録媒体の組み合わせによる記録方式を定めた表図である。
このように、記録媒体が普通紙の場合は、「きれい」モードが選択されると双方向記録でかつ4パスのマルチパス記録方式が用いられる。一方、同じ普通紙でも「はやい」モードが選択されると、双方向記録ではあるがマルチパス記録ではなく、1パス記録で行われる。
ここで、前述のレジ調整は、偶ノズルと奇ノズルとの吐出方向/吐出速度の違いからなる着弾位置ズレの補正および、往方向走査と復方向走査の着弾位置ズレの補正は考慮されている。しかしながら、課題で述べたような主滴ドットとサテライトドットの着弾位置が往方向走査と復方向走査で反対になることによるライン濃度のむらは補正することができない。そこで、このようなサテライトドットによる濃度むらが目立つ「双方向記録かつ非マルチパス記録」モードの場合はサテライトドットの着弾位置を考慮した微調整がさらに必要となる。
そこで、本実施形態では、以下に示す処理ルーチンによって、各記録モードに応じたレジ調整およびレジ調整値の微調整を行う。
図8は、記録動作開始から終了までのレジ調値の微調整を行う処理を示すフローチャートである。
記録指令がホストコンピュータから入力されると(ステップ801)、同時に入力される記録モードおよび記録媒体の種類を受信し(ステップ802)、予め定められた関係から記録方式を決定する。この記録方式がまず、双方向記録か片方向記録かを判断し(ステップ803)、片方向記録である場合は次の処理を行う。
(片方向記録)
片方向記録の場合はほとんどのサテライトドットの着弾位置は主滴ドットの一方側となるので、サテライトドットの着弾位置に関するレジ調整値の微調整は必要ない。そこで、不揮発性メモリに記憶されているレジ調基準値のみに従って記録を行う。具体的には以下の処理を実行する。
まず、予め記録装置内の不揮発性メモリに記憶されたレジ調基準値を読み込む(ステップ804)。但し、片方向記録であるため、使用するレジ調基準値は、偶奇レジ及びブラック・カラー列間レジのみであり双方向レジは使用しない。
レジ調パターンで設定されたレジ調基準値はサテライトの影響が含まれるものであるが、片方向印字の場合は、主滴ドットとサテライトドットの位置関係は常に同一であるため、マルチパス記録/非マルチパス記録のどちらであっても、レジ調基準値の値を補正なしに使用することが出来る。したがって、「片方向記録かつマルチパス記録」となった記録方式であっても、レジ調値の微調整はせずに先にステップ804で読み込んだレジ調基準値に基づいて記録動作を開始する。
ホストコンピュータから送られてきた記録データを受信し(ステップ805)、この記録データに基づいて作成された吐出信号に従って記録動作を行う(ステップ806)そして、全ての記録データを受信し記録し終えたら(ステップ807)、記録結果を排紙して(ステップ808)、記録動作を終了する。
一方、ステップ803で双方向記録である場合は次の処理を行う。
(双方向記録)
双方向記録では、サテライトドットは、往方向記録と復方向記録とで主滴ドットに対して互い違いに着弾することになる。したがって、レジ調基準値に従う調整のほかに、サテライトドットの着弾位置を考慮した微調整がさらに必要となる。しかしながら、マルチパス記録の場合はサテライトドットの着弾位置による濃度むらは目立ちにくいので、この微調整を行う必要はない。一方、非マルチパス記録の場合はサテライトドットの着弾位置による濃度むらが目立つので、この微調整を行う必要がある。そこで、本実施形態では、「双方向記録かつマルチパス記録」モードと「双方向記録かつ非マルチパス記録」モードとで、処理を異ならせる。具体的には以下のルーチンで処理を実行する。
予め、記録装置内に記憶された偶奇レジ、双方向レジ、ブラック・カラー列間レジのレジ調基準値を読み込む(ステップ809)。次にマルチパス記録か否かを判断する(ステップ810)。
ここで、レジ調パターンで設定された双方向レジのレジ調基準値は、マルチパスで記録されたものであるため、マルチパス記録の場合には、読み込んだレジ調基準値をそのまま使用すればよい。片方向記録と同様に記録データを読み取り(ステップ811)、レジ調基準値で記録を実施する(ステップ812)。全ての記録データを記録し終わったら(ステップ813)、記録結果を排紙して(ステップ814)、記録動作を終了する。
一方、非マルチパス記録の場合には、サテライトドットと主滴ドットの位置関係が異なるため補正が必要である。本実施形態の場合には、非マルチパス記録ではマルチパス記録のレジ調基準値に「+1」の補正を実施すると、すなわち復方向で形成されるドットの着弾位置を1200DPIで1画素プラス方向へ移動させると良好な結果が得られることが実験的にわかっている。そこで、レジ調基準値に「+1」の補正値を加算する(ステップ815)。そして、記録データを受信して(ステップ816)、補正されたレジ調値で記録を実施する(ステップ817)。全ての記録データを記録し終えたら(ステップ818)、記録結果を排紙して(ステップ819)、記録動作を終了する。
なお、補正値は、主滴ドットとサテライトドットのドットサイズ比や濃度比、主滴ドットとサテライトドットのズレ量Lなどで異なるため、適用する形態に合わせて最適化することが望ましい。
以上、説明したように、マルチパス記録と非マルチパス記録において異なる双方向レジ調整値を用いて記録を行うことで、サテライトドットによる画像劣化のない記録結果を得ることができる。
本実施形態では、レジ調パターンの双方向レジ調整パッチをマルチパス記録してレジ調整を行い、マルチパス記録の際にはレジ調整値をそのまま用い、非マルチパス記録の際にはレジ調値に補正を加える形態としている。しかし、レジ調パターンの双方向レジ調整パッチを非マルチパス記録して、マルチパス記録の際に補正を加え、非マルチパス記録の際にはレジ調値をそのまま用いる形態であってもよい。
また、何らかの記録方法で印字されたレジ調整パターンにより調整された値に対して、マルチパス記録、非マルチパス記録のどちらを実施する際にも、レジ調整値に補正を実施して記録を行う形態であってもよい。この場合は、マルチパス記録、非マルチパス記録で異なる値の補正を加えることになる。
更には、レジ調整パターンに、マルチパス記録、非マルチパス記録の双方で調整パッチを記録し、それぞれに対しレジ調整を実施する形態であっても構わない。
本実施形態では、レジ調整パターンを印字しユーザーにレジ調整をさせる手段を用いて説明したが、既知の自動レジ調整手段などを利用しても効果を損なうことは無い。
また、主滴ドットとサテライトドットのずれ量Lは、記録ヘッドの走査速度に比例するため、複数の走査速度を有する記録装置においては、走査速度ごとに補正値を設定することが望ましい。
実施例1では、記録方式の違いによって、サテライトドットの着弾位置が異なることによる濃度むらを防ぐ目的のレジ値微調整を説明した。しかしながら、画像劣化はサテライトドットによるものだけでなく、往走査と復走査でのドットの着弾位置のわずかなずれによっても発生する。これは、所定の記録ヘッドの駆動モードにあわせて設定されていたレジ値が、別の駆動モードではあわないことから起きるものである。そこで、本実施例では、記録ヘッドの駆動モードに応じてレジ値を微調整する記録動作について説明する。
全体構成、ヘッド構成、電気構成、およびレジストレーション調整、の各項目については、先に説明した実施例1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
(記録動作)
本実施例のインクジェット記録装置は、ユーザが求める記録画像の画像品位に応じて、次の3つの記録モードが設けられている。記録に要する時間は長くても高画質な画像を求める場合は「きれい」モードを、多少画質は低下しても記録に要する時間を短くすることを求める場合は「はやい」モードを、標準的な画質および記録速度を求める場合は「標準」モードをユーザが選択するようになっている。この選択操作はホストコンピュータ上で行われても良いし、インクジェット記録装置本体に設けられた操作ボタンから行われてもよい。
インクジェット記録装置は、記録方式として、3パス記録、4パス記録、6パス記録、8パス記録の四種類を使い分ける。ここで、4パス記録、6パス記録、8パス記録においては、1200dpi駆動モードにより記録を行う。3パス記録においては、他のモードと比較し、1スキャンあたりの吐出数が多いため、600dpi駆動モードにより記録を行う。
また、同じ記録方式で記録を行っても記録媒体の種類に応じて記録結果が異なるため、記録媒体の種類と記録モードとの組み合わせによって、記録方式が決定される。そこで、ユーザは前記記録モードの他に記録媒体の種類も選択し入力する。
ユーザから入力された記録モード及び記録媒体の種類に応じて、CPUは記録方式を決定する。決定は、表1に従って行われる。
図9は、記録動作開始から終了までのレジ調値を微調整を行う処理を示すフローチャートである。
記録指令がホストコンピュータから入力されると(ステップ9001)、同時に入力される記録モード及び記録媒体の種類を受信し(ステップ9002)、あらかじめ定められた関係からパス数、駆動モードなどの記録方式を決定する(ステップ9003)。記録モードが、600dpi駆動モードか、1200dpi駆動モードかを判断し(ステップ9004)、600dpi駆動モードである場合は、次の処理を行う。
予め、記録装置内に記憶された偶奇レジ、双方向レジ、ブラック・カラー列間レジのレジ調基準値を読み込む(ステップ9005)。ここで、レジ調パターンで設定された双方向レジのレジ調基準値は、600dpi駆動モードで記録されたものであるため、600dpi駆動モードで記録する場合は、読み込んだレジ調基準値をそのまま使用すればよい。
順次、記録データを読み取り、レジ調基準値で記録を実施する(ステップ9006)。
すべての記録データを記録し終わったら(ステップ9007)、記録結果を排紙して(ステップ9008)、記録動作を終了する(ステップ9014)。
一方、1200dpi駆動モードの場合には、ドットの広がり幅が異なるため、補正が必要である。本実施系の場合、600dpi駆動モードと1200dpi駆動モードのドットの広がり幅の差は1200dpi単位で「+1」であるため、レジ調基準値に「+1」の補正を実施すると、すなわち復方向で形成されるドットの着弾位置を1200dpi単位で1画素プラス方向へ移動させると良好な結果が得られる。そこで、レジ調基準値に「+1」の補正値を加算する(ステップ9009)。そして、記録データを受信して(ステップ9010)、補正されたレジ調値で記録を実施する(ステップ9011)。すべての記録データを記録し終えたら(ステップ9012)、記録結果を排紙して(ステップ9013)、記録動作を終了する(ステップ9014)。
以上、説明したように、異なる駆動モードにおいて異なる双方向レジ調整値を用いて記録を行うことで、駆動モードの違いによる着弾位置の違いを補正し、画像劣化のない記録結果を得ることが出来る。
本実施例では、レジ調パターンを600dpi駆動モードで印字し、600dpi駆動モードで記録する場合は、レジ調値をそのまま使用し、1200dpi駆動モードで記録する際にはレジ調値に補正を加える形態としている。しかし、1200dpi駆動モードでレジ調パターンを印字し、1200dpi駆動モードで記録する場合は、レジ調値をそのまま使用し、600dpi駆動モードで記録する際にレジ調値に補正を加える形態であってもよい。
なお、実施例2で挙げた記録モードはすべてマルチパス記録を行うものとしているが、本発明はこれに限らず、マルチパス記録と非マルチパス記録とが混在するものであってもよい。さらに、実施例1のレジストレーション微調整と組み合わせたものであってもよい。
以上のとおり、本発明を用いることにより、前記駆動タイミング調整値決定工程は、前記紙送り動作における前記移動ピッチが前記記録ヘッドのノズルの配列のピッチよりも短い場合と、それ以外の場合とで、前記調整値を異ならせるので、前記双方向切記録において、前記移動ピッチが前記記録ヘッドのノズルの配列のピッチよりも短い場合と、それ以外の場合のいずれの場合においても、適切な位置に記録が成されることとなる。したがって、双方向記録モード、マルチパス記録モード、非マルチパス記録モードと複数の記録モードを有するインクジェット記録装置において、いずれも記録モードにおいても記録品位の劣化のない記録結果を得ることができる。
また、吐出するインク滴が小径化し、サテライト滴が相対的に目立つようになっても、常にサテライト滴の着弾位置に応じた補正を行うことができるので、サテライト滴による画像劣化を低減することができる。
さらに、記録ヘッドの駆動モードが複数ある場合においても、常に選択された駆動モードに応じて、往走査時のドットの着弾位置に対する復走査時のドットの着弾位置を合わせる補正を行うことができる。