JP5062729B2 - 潜熱蓄熱材組成物およびその製法 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の潜熱蓄熱材組成物は、融解〜凝固サイクルを繰り返すと比重の大きい成分が沈殿して2相に分離するという相分離が発生する問題があった。融解〜凝固、すなわち蓄熱〜放熱の繰り返しにより相分離が発生すると、蓄熱量が減少したり、極端な場合は蓄熱しなくなるばかりか、過冷却現象が大きくなり、所定の温度で凝固しなくなる問題が発生する。
またベントナイトはその性質上イオン交換能が大きいため共融状態下で高温におかれると凝集して安定した粘性をなくし機能をなくす問題があり、ケイソウ土やカオリンは可塑性に優れるがチクソトロピー性に欠けるので、添加量を増大する必要がある問題があった。
またセピオライトやアタパルジャイトなどの無機繊維を用いても、蓄熱〜放熱サイクルを繰り返すと2相分離が発生したり、冷却した際に結晶化せず過冷却現象が発生する問題があった。
本発明の第2の目的は、そのような潜熱蓄熱材組成物を容易に製造できる方法を提供することである。
融解〜凝固サイクルテスト:
(1)常温で凝固させた試料を試験管に封入し、恒温室内に入れ、常温より高いが凝固状態を維持できる所定の温度T1に10分間保持する。
(2)温度T1の凝固した試料を、融解温度以上の所定の温度T2に20分かけて昇温して融解する。
(3)融解した試料を温度T2に10分間保持する。
(4)そして、温度T2の融解した試料を20分かけて温度T1まで降温して凝固させる。
(5)前記(1)〜(4)を1サイクル(60分)として繰り返す。
融解〜凝固サイクルテスト:
(1)常温で凝固させた試料を試験管に封入し、恒温室内に入れ、常温より高いが凝固状態を維持できる所定の温度T1に10分間保持する。
(2)温度T1の凝固した試料を、融解温度以上の所定の温度T2に20分かけて昇温して融解する。
(3)融解した試料を温度T2に10分間保持する。
(4)そして、温度T2の融解した試料を20分かけて温度T1まで降温して凝固させる。
(5)前記(1)〜(4)を1サイクル(60分)として繰り返す。
前記の融解〜凝固サイクルテストを長時間行っても相分離したり過冷却現象が発生するのを確実に抑制し、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができるというさらなる顕著な効果を奏する。
長繊維状パリゴルスカイトを必須成分として配合し、前記長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されず維持されて含まれているので、融解〜凝固サイクルを長時間繰り返しても相分離したり過冷却現象が発生せず安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができ、耐久性および信頼性が高い安価な潜熱蓄熱材組成物を効率良く容易に製造できるという顕著な効果を奏する。
図1は本発明で用いる長繊維状パリゴルスカイトを含む本発明の潜熱蓄熱材組成物の偏光顕微鏡写真(倍率100倍)である。
図2は、図1に示した本発明で用いる長繊維状パリゴルスカイトを湿式解綿粉砕加工法により加熱解綿粉砕した長繊維状パリゴルスカイトを含む本発明の潜熱蓄熱材組成物の偏光顕微鏡写真(倍率100倍)である。
図3は、比較例4で用いた短繊維状セピオライトを含む比較のための潜熱蓄熱材組成物の偏光顕微鏡写真(倍率100倍)である。
例えば、酢酸ナトリウム3水塩などは、融解潜熱が大きいことおとび融点が約60℃前後であることなどから、深夜電力利用や廃熱利用による暖房用などに有用である上、入手が容易で安価であり、本発明において好ましく使用できる。
これらは比較的少量の添加で融点調整できる上、入手が容易で安価であり、本発明において好ましく使用できる。
これらの融点調整剤の中でも、硝酸アンモニウム、塩化アンモウニウム、尿素は、融点調整効果が大きく、入手も容易で安価であり本発明において好ましく使用できる。
これらは比較的少量の添加で過冷却を防止できる上、入手が容易であり、本発明において好ましく使用できる。
これらの過冷却防止剤は使用する潜熱蓄熱物質に対応して選定して使用することが好ましく、例えば潜熱蓄熱物質が酢酸ナトリウム3水塩の場合は、ピロリン酸ナトリウム10水塩、チオ硫酸ナトリウム5水塩や硫酸ナトリウム10水塩の場合は、四ホウ酸ナトリウム10水塩などである。
しかし潜熱蓄熱物質55〜95質量%、融点調整剤1〜40質量%、過冷却防止剤0.1〜10質量%および長繊維状パリゴルスカイト0.1〜10質量%の範囲で配合すると、相分離したり過冷却現象が発生するのを確実に抑制でき、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができるので好ましい。
図4を用いて、本発明の潜熱蓄熱材組成物の製法の1例について説明する。工程(1)で潜熱蓄熱物質を主成分とし、長繊維状パリゴルスカイトを必須成分として配合し、必要に応じて融点調整剤および/または過冷却防止剤を配合して前記の融解〜凝固サイクルテストを長時間行っても相分離しないように制御して、すなわち、長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されず維持されるように制御して本発明の潜熱蓄熱材組成物を製造するが、好ましくは、潜熱蓄熱物質と融点調整剤と長繊維状パリゴルスカイトを所定量常温で攪拌・混合した後、加熱して攪拌・混合しつつ溶融させる。
そして溶融状態を維持する程度の温度に維持しながら過冷却防止剤粉末を所定量攪拌・混合し、そして溶融状態の本発明の潜熱蓄熱材組成物を調製し、溶融状態の本発明の潜熱蓄熱材組成物を所定の形態(例えば、床暖房に適した形態)の容器に注入・充填・封入して製品とする。
そして工程(2)で溶融状態を維持しつつ長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されないような条件下で湿式解綿粉砕加工法により加熱解綿粉砕して本発明の潜熱蓄熱材組成物を調製し、溶融状態の本発明の潜熱蓄熱材組成物を所定の形態(例えば、床暖房に適した形態)の容器に注入・充填・封入して製品とする。
雰囲気は特に限定されず、大気中で行うこともできる。
湿式解綿粉砕時間は例えば約数秒〜10分程度であり、剪断力は間隙の大きさによって制御するが、長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されずに解綿粉砕されて、図2に示したように、図1に示した長繊維状物1が、単長繊維状物2になるような時間および剪断力を選定して決めることが肝要である。
図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10は、ホッパー1、上部固定砥石2、この上部固定砥石2に間隙5隔てて対面させて回転軸7によって駆動される下部回転砥石3、装置温度を制御するためのジャケット4、製品流出口6などを備えている。
間隙5が小さ過ぎると(例えば200μm未満)長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊される恐れがあり、逆に間隙5が大き過ぎると(例えば400μmを超える)剪断力が小さ過ぎて、図1に示した長繊維状物1が、図2に示した単長繊維状物2まで解綿粉砕されない恐れがある。したがって、湿式解綿粉砕加工装置10を用いる場合は、間隙5は200μm〜400μmで加熱解綿粉砕するのが好ましい。
(実施例1)
潜熱蓄熱物質として酢酸ナトリウム3水塩70質量部を用い、融点調整剤として尿素24質量部を用い、両者を常温で攪拌・混合し、そして長繊維状パリゴルスカイト(商品名:ポレイシイPF−A、昭和KDE(株)製)5質量部を添加して常温で攪拌・混合した後、60℃以上に加熱して攪拌・混合しつつ溶融させた。そして60℃未満で溶融状態を維持する程度の温度に維持しながら過冷却防止剤粉末としてピロリン酸ナトリウム12水塩1質量部を攪拌・混合して本発明の潜熱蓄熱材組成物100質量部を調製した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1中の◎は3試料ともに相分離の発生がなかったことを示し、△は3試料の内1本でも相分離の発生があったことを示し、×は3試料の3本全部に相分離の発生があったことを示す。
表1から、720サイクル後も3試料ともに相分離の発生がなかったことが判る。
なお、1日1サイクルの融解〜凝固(相変化)が行われるとし、1シーズン120日(4ケ月)とすると、6年以上相分離の発生がなく、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができることになる。
(1)55℃に加熱して溶融させた試料9mlを3本の試験管(ポリプロピレン製試験管)にそれぞれ封入し、常温で凝固させ、30℃にセットした恒温室内に入れ、30℃(温度T1)に10分間保持する。
(2)30℃(温度T1)の凝固した試料を、55℃(温度T2)に20分かけて昇温して融解する。
(3)融解した試料を55℃(温度T2)に10分間保持する。
(4)そして、55℃(温度T2)の融解した試料を20分かけて30℃(温度T1)まで降温して凝固させる。
(5)前記(1)〜(4)を1サイクル(60分)として繰り返す。
実施例1で調製した本発明の潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の本発明の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を400μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、実施例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、1200サイクル後も3試料ともに相分離の発生がなかったことが判る。
1日1サイクルの融解〜凝固(相変化)が行われるとし、1シーズン120日(4ケ月)とすると、10年以上相分離の発生がなく、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができることになる。
実施例1で調製した本発明の潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の本発明の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を200μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、実施例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、1200サイクル後も3試料ともに相分離の発生がなかったことが判る。
1日1サイクルの融解〜凝固(相変化)が行われるとし、1シーズン120日(4ケ月)とすると、10年以上相分離の発生がなく、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができることになる。
潜熱蓄熱物質として酢酸ナトリウム3水塩70質量部を用い、融点調整剤として尿素24質量部を用い、両者を常温で攪拌・混合し、そして有機ベントナイト5質量部を添加して常温で攪拌・混合した後、60℃以上に加熱して攪拌・混合しつつ溶融させた。そして60℃未満で溶融状態を維持する程度の温度に維持しながら過冷却防止剤粉末としてピロリン酸ナトリウム12水塩1質量部を攪拌・混合して比較のための潜熱蓄熱材組成物100質量部を調製した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、調製した直後に既に相分離の発生があったことが判る。
比較例1で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を400μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、調製した直後に既に相分離の発生があったことが判る。
比較例1で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を200μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、調製した直後に既に相分離の発生があったことが判る。
潜熱蓄熱物質として酢酸ナトリウム3水塩70質量部を用い、融点調整剤として尿素24質量部を用い、両者を常温で攪拌・混合し、そして短繊維状セピオライト(商品名:ミルコンS−15、昭和KDE(株)製)5質量部を添加して常温で攪拌・混合した後、60℃以上に加熱して攪拌・混合しつつ溶融させた。そして60℃未満で溶融状態を維持する程度の温度に維持しながら過冷却防止剤粉末としてピロリン酸ナトリウム12水塩1質量部を攪拌・混合して比較のための潜熱蓄熱材組成物100質量部を調製した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から96サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
比較例4で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を400μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、120サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
比較例4で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を200μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、144サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
潜熱蓄熱物質として酢酸ナトリウム3水塩70質量部を用い、融点調整剤として尿素24質量部を用い、両者を常温で攪拌・混合し、そして長繊維状セピオライト(商品名:ミルコンSS−2、昭和KDE(株)製)5質量部を添加して常温で攪拌・混合した後、60℃以上に加熱して攪拌・混合しつつ溶融させた。そして60℃未満で溶融状態を維持する程度の温度に維持しながら過冷却防止剤粉末としてピロリン酸ナトリウム12水塩1質量部を攪拌・混合して比較のための潜熱蓄熱材組成物100質量部を調製した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から96サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
比較例7で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を400μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、120サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
比較例7で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物が溶融状態を維持したまま、図5に示した湿式解綿粉砕加工装置10(T.K.マイコロイダーCM−S、プライミクス(株)、回転数3600rpm、砥石サイズ(径)100インチ、滞留時間30秒)を用いて加熱解綿粉砕した。
ジャッケト4中に60℃の水を循環させて湿式解綿粉砕加工装置10を加熱した。そしてホッパー1より溶融状態の潜熱蓄熱材組成物を供給し、上部固定砥石2と下部回転砥石3の間隙5を200μmにセットして通過させ、5秒間で加熱解綿粉砕した以外は、比較例1と同様にして、前記の融解〜凝固サイクルテストを行って相分離の発生の有無を観察した。
融解〜凝固サイクルテストの結果を表1に示す。
表1から、120サイクル後に3試料ともに相分離の発生があったことが判る。
比較例4〜6の比較のための潜熱蓄熱材組成物の製造直後の試料および相分離の発生があった時点の試料について凝固点(℃)および融解潜熱(cal/g)を測定した結果を表2に示す。
なお凝固点(℃)および融解潜熱(cal/g)の測定はJIS K0065(化学製品の凝固点温度測定法)に準じて行った。
図6において、Aは潜熱蓄熱材組成物、Bは冷水、Cはステンレス製魔法ビン、Dはステンレス製断熱容器、Eはかきまぜ棒、Fは蓋、Gは潜熱蓄熱材組成物の温度測定用の温度計、Hは冷水の温度測定用の温度計を示す。
温度測定器は、AM−8010K(分解能0.1℃、K熱電対)、アンリツ計器(株)製データコレクターを使用した。
潜熱蓄熱材組成物(A)の温度が45.0℃まで冷却された時点で、かきまぜ棒Eで水槽C内をかきまぜ、35.0℃まで温度下降したらかきまぜを止める。 冷水Bと潜熱蓄熱材組成物(A)の温度変化が10分以上表れなかった時点で測定を終了する。
Q=[(W-W')(T2-T1)・Cw]-[Cpl・S・(T0-T3)]-[Cps・S・(T3-T2)]/S 式(1)
各試料の製造直後のQ1と融解〜凝固サイクルテスト後の試料のQ2(相分離の発生があった試料は相分離の発生があった時点の試料のQ2)を測定した。
W’:PPチューブ容器の水当量
CW:水比熱(cal/g・℃)
Cpl:潜熱蓄熱材組成物(A)の液体比熱(cal/g・℃)
Cps:潜熱蓄熱材組成物(A)の固体比熱(cal/g・℃)
T0:潜熱蓄熱材組成物(A)の初期温度(50.0℃)
T1:ステンレス製魔法ビンC内の冷水初期温度(4±0.5℃)
T2:ステンレス製魔法ビンC内の冷水最終温度(℃)
T3:潜熱蓄熱材組成物(A)の凝固点温度(℃)
図8は、比較例4で調製した比較のための潜熱蓄熱材組成物の製造直後の試料Jおよび融解〜凝固サイクルテスト後(96サイクル)の試料K(沈降部分および上澄部分)を用いて、下記の測定法で測定した温度(融解〜凝固)と時間との関係を示すグラフである。
55℃に加熱して溶融させた試料9mlを試験管(ポリプロピレン製試験管)に入れ、常温に放置して凝固させ、その際の試料の温度を測定し記録する。
そして実施例1〜3の本発明の潜熱蓄熱材組成物の中から代表サンプルとして選択した実施例1で調製した本発明の潜熱蓄熱材組成物は、図7に示したように製造直後の試料Xおよび融解〜凝固サイクルテスト後(720サイクル)の試料Yのいずれも融解状態から凝固が始まると徐々に潜熱が良好に発生し、全体として大きな融解潜熱が得られることが判る。
比較例4〜9の比較のための潜熱蓄熱材組成物は融解〜凝固サイクルを繰り返すと短時間で相分離し、過冷却現象が発生するので、安定して蓄熱〜放熱を繰り返すことができず、実用的に使用できない。
X線回折測定は下記の条件で行った。
装置:Rint2100(リガク社製)
測定条件:
管球 Cu
管電圧=40kv
電流=40mA
カウンターモノクロメータ:全自動モノクロメータ
スリット:発散1deg、散乱1deg、受光0.3mm
測定範囲:2θ=3〜70°
スキャンスピード:4°/min
スキャンステップ:0.02°
200 単長繊維状物
300 凝集物
1 ホッパー1
2 上部固定砥石
3 下部回転砥石
4 ジャケット
5 間隙
6 製品流出口
7 回転軸
10 湿式解綿粉砕加工装置10
Claims (3)
- 潜熱蓄熱物質を主成分とし、100μm以上の長さの長繊維状パリゴルスカイトを必須成分として配合し、必要に応じて融点調整剤および/または過冷却防止剤を配合した、前記長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されず維持されて含まれている潜熱蓄熱材組成物であって、下記の融解〜凝固サイクルテストを長時間行っても相分離しないことを特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
融解〜凝固サイクルテスト:
(1)常温で凝固させた試料を試験管に封入し、恒温室内に入れ、常温より高いが凝固状態を維持できる所定の温度T1に10分間保持する。
(2)温度T1の凝固した試料を、融解温度以上の所定の温度T2に20分かけて昇温して融解する。
(3)融解した試料を温度T2に10分間保持する。
(4)そして、温度T2の融解した試料を20分かけて温度T1まで降温して凝固させる。
(5)前記(1)〜(4)を1サイクル(60分)として繰り返す。 - 潜熱蓄熱物質55〜95質量%、融点調整剤1〜40質量%、過冷却防止剤0.1〜10質量%および長繊維状パリゴルスカイト0.1〜10質量%を配合したことを特徴とする請求項1記載の潜熱蓄熱材組成物。
- 潜熱蓄熱物質を主成分とし、100μm以上の長さの長繊維状パリゴルスカイトを必須成分として配合し、必要に応じて融点調整剤および/または過冷却防止剤を配合した潜熱蓄熱材組成物であって、前記長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されず維持されて含まれているように制御して、下記の融解〜凝固サイクルテストを長時間行っても相分離しないように製造するかあるいは、前記組成物を50〜90℃で加熱溶融混合した後、湿式解綿粉砕加工法により、前記長繊維状パリゴルスカイトの長繊維状形態および結晶構造が破壊されず維持されるように上部砥石と下部砥石の間隙を制御して通過させて剪断力により加熱解綿粉砕して、下記の融解〜凝固サイクルテストを長時間行っても相分離しないように製造することを特徴とする潜熱蓄熱材組成物の製法。
融解〜凝固サイクルテスト:
(1)常温で凝固させた試料を試験管に封入し、恒温室内に入れ、常温より高いが凝固状態を維持できる所定の温度T1に10分間保持する。
(2)温度T1の凝固した試料を、融解温度以上の所定の温度T2に20分かけて昇温して融解する。
(3)融解した試料を温度T2に10分間保持する。
(4)そして、温度T2の融解した試料を20分かけて温度T1まで降温して凝固させる。
(5)前記(1)〜(4)を1サイクル(60分)として繰り返す。
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