JP5061649B2 - 脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板 - Google Patents

脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物に使用される脆性き裂伝播停止特性に優れた、厚さ50mm以上の厚鋼板に関する。
船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、建築・土木構造物等の大型構造物においては、脆性破壊に伴う事故が経済や環境に及ぼす影響が大きいため、安全性の向上が常に求められている。
したがって、この様な構造物に使用される鋼材に対しては、低温靭性が要求されることが多く、最近では、不慮の事故等で構造物にき裂が発生した場合においても破壊に至ることを防止する観点から、低温における脆性き裂伝播停止特性が要求されている。
一般に、鋼板のアレスト性は高強度あるいは厚肉材ほど劣化する傾向がある。このため、コンテナ船やバルクキャリアーなどの船舶においてはその構造上、船体外板に高強度の厚肉材を使用される場合が多く、船舶の安全性確保の点から材料に対する脆性き裂伝播停止特性の要求も一段と高度化している。
鋼材の脆性き裂伝播停止特性を向上させる手段として、従来からNi含有量を増加させる方法が知られており、液化天然ガス(LNG)の貯槽タンクにおいては、9%Ni鋼が商業規模で使用されている。しかし、Ni量の増加はコストの大幅な上昇を余儀なくさせるため、LNG貯槽タンク以外の用途には適用が難しい。
一方、LNGのような極低温まで至らない、船舶やラインパイプに使用される鋼板の板厚が50mm以下の比較的薄手の鋼材に対しては、TMCP法により細粒化を図り、低温靭性を向上させて、優れた脆性き裂伝播停止特性を付与することができる。
さらに、制御圧延において、変態したフェライトに圧下を加えて集合組織を発達させることにより、脆性き裂伝播停止特性の向上を図る方法も知られている。これは、鋼材の破壊面上にセパレーションを板厚方向と平行な方向に生ぜしめ、脆性き裂先端の応力を緩和させることにより、脆性破壊に対する抵抗を高める方法である。
例えば、特許文献1では、制御圧延により(110)面X線強度比を2以上とし、かつ円相当径20μm以上の粗大粒を10%以下とすることにより、耐脆性破壊特性を向上させている。しかし、鋼材の板厚の増加に伴いアレスト性能は低下しており、特に板厚50mmを超えるような厚肉材において所定の耐脆性破壊特性が得られるかどうかは不明である。
一方、近年、合金コストを上昇させることなく、鋼材の表層部の組織を超微細化する技術が、脆性き裂伝播停止特性を向上させる手段として提案されている。例えば、特許文献2では、脆性き裂が伝播する際に、鋼材表層部に発生するシアリップ(塑性変形領域)が脆性き裂伝播停止特性の向上に効果があることに着目し、シアリップ部分の結晶粒を微細化させて、伝播する脆性き裂が有する伝播エネルギーを吸収させる方法が開示されている。
この製造方法としては、熱間圧延後の制御冷却により表層部分をAr3変態点以下に冷却し、その後制御冷却を停止して表層部分を変態点以上に復熱させる工程を1回以上繰り返して行い、この間に鋼材に圧下を加えることにより、繰り返し変態させ又は加工再結晶させて、表層部分に超微細なフェライト組織又はベイナイト組織を生成させるものである。
さらに、特許文献3では、フェライト−パーライトを主体のミクロ組織とする鋼材において脆性き裂伝播停止特性を向上させるには、両表面部は円相当粒径:5μm以下、アスペクト比:2以上のフェライト粒を有するフェライト組織を50%以上有する層で構成し、フェライト粒径のバラツキを抑えることが重要であることが開示されている。
このバラツキを抑える方法として仕上げ圧延中の1パス当りの最大圧下率を12%以下にすることで局所的な再結晶現象が抑制されるとしている。しかし、これらの開示された発明は、鋼材表層部のみを一旦冷却した後に復熱させ、かつ復熱中に加工を加えることによって、脆性き裂伝播停止特性に効果のある組織を得るものであり、実生産規模では制御が容易ではないと考えられるプロセスである。また、板厚が50mmを超える厚肉材での記載もないため、厚肉材への適用は不明である。
このような問題を解決する方法として、特許文献4において、フェライト結晶粒の微細化のみならずフェライト結晶粒内に形成されるサブグレインに着目しTMCP法の延長技術が提供されている。
具体的には、板厚30〜40mmにおいて、鋼板表層の冷却および復熱などの複雑な温度制御を必要とせずに、(a)微細なフェライト結晶粒を確保する圧延条件、(b)鋼材板厚の5%以上の部分に微細フェライト組織を生成する圧延条件、(c)微細フェライトに集合組織を発達させるとともに加工(圧延)により導入した転位を熱的エネルギーにより再配置しサブグレインを形成させる圧延条件、(d)形成した微細なフェライト結晶粒と微細なサブグレイン粒の粗大化を抑制する冷却条件、によって脆性き裂伝播停止特性を向上させる方法を提供している。
しかし、この発明では、板厚50mm超えの厚肉材での記載がなく、板厚50mm超えの厚肉材において所定の脆性き裂伝播停止特性が得られるかどうか不明である。
特許3548349号公報 特開平4−141517号公報 特開2002−256375号公報 特許第3467767号公報
一方、最近の6,000TEUを越える大型コンテナ船では鋼板の板厚は50mm以上となっている。脆性き裂伝播停止特性の向上のためには、前述のように細粒化による母材靭性の向上、鋼材の表層部のシアリップ生成、板厚内部に圧延面での(100)面の集合組織の発達による応力付加方向とき裂伝播方向に角度のずれ生成等が有効であることが知られている。
しかしながら、最近の6,000TEUを越える大型コンテナ船で用いられるような板厚50mm以上の厚鋼板では、細粒化による母材靭性の向上が難しくなること、鋼材表層部のシアリップが板厚全体に占める割合が小さくなること等から、十分な脆性き裂伝播停止効果が得にくくなる。
そこで、本発明は、板厚50mm以上の厚鋼板において、万一脆性破壊が発生した場合でも、大規模破壊に至る前に脆性き裂を停止させるのに適した鋼板を提供することを目的とする。なお、この技術は、板厚が50mm未満であっても効果を有する。
本発明者らは、上記課題の達成に向けて鋭意研究を重ねた結果、板厚内の位置(例えば、板厚中央部と板厚1/4部、等)によって脆性き裂の伝播方向を相違させた場合、板厚全体でのき裂伝播抵抗が著しく増加し、優れた脆性き裂伝播停止性能を得ることが可能であることを見出した。
さらに、このような優れた脆性き裂伝播停止性能を得るために適切な集合組織の状態お
よび鋼板の成分範囲を見出した。本発明は上記知見を基に更に検討を加えてなされたもの
で、すなわち、本発明は、
(1)脆性き裂伝播方向が一定方向となる層状の領域を板厚断面方向に複数有する厚鋼板であって、隣接する層状の領域の脆性き裂伝播方向の差が30°以上であることを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
(2)脆性き裂伝播方向が一定方向となる層状の領域が、3層以上であることを特徴とする(1)記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
(3)圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上の層状の領域と、圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の層状の領域を板厚方向に交互にn層(但し、nは3以上の奇数)重ねた構造を特徴とする(1)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
(4)nが3で、板厚中央部を含む層状の領域の、板厚における圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上であることを特徴とする(3)記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
(5)鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下,S:0.01%以下、N:0.0060%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる(1)〜(4)のいずれかに記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
(6)鋼組成が、上記成分に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:、0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴とする(5)に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
本発明によれば鋼板の圧延方向もしくは圧延方向に直角方向に板厚全体にわたり脆性き裂が伝播する場合において、優れた脆性き裂伝播停止性能を備えた板厚50mm以上の厚鋼板が得られ、産業上極めて有用である。
本発明は、脆性き裂伝播方向が一定方向となる層状の領域を板厚断面方向に複数有し、隣接する層状の領域間で脆性き裂伝播方向が異なることを特徴とする。以下に本発明の限定理由について説明する。
本発明に係る厚鋼板は、板厚方向の隣接する層状の領域間で異なる脆性き裂伝播方向を有する。
鋼板の圧延方向もしくは圧延方向に直角方向に板厚全体にわたり脆性き裂が伝播する場合、例えば、板厚中央部と板厚1/4部でき裂の伝播方向が異なると、付加応力のうちき裂伝播に作用する方向の成分が小さくなる効果に加え、板厚全体に脆性き裂が伝播するために板厚中央部と板厚1/4部で異なる方向に生じたき裂が連結する必要があり、同一方向、すなわち同一面上をき裂が伝播する場合に較べき裂伝播の抵抗が著しく大きくなる。
き裂伝播方向の差が30°未満であれば比較的き裂伝播抵抗の増大効果が小さいため、き裂伝播方向の差は30°以上とすることが好ましい。尚、板厚中央部と板厚3/4部でも同じことであるが、ここでは板厚中央部と板厚1/4部で説明する。
板厚中央部と板厚1/4部での亀裂伝播方向の相違は後述する圧延組織の差によるもので、板厚中央部や、板厚1/4部での亀裂伝播方向は当該位置を中心に、特定の圧延組織が形成されている層状の領域内では一定であり、本発明に係る厚鋼板は、隣接する層状の領域間で異なる脆性き裂伝播方向を有するものである。
また、層状の領域は板厚方向に3層以上重なった構造とする。板厚全体の脆性き裂伝播方向がほぼ同じである場合は従来鋼と変わらず、また脆性き裂伝播方向の差が30°以上の部分が板厚方向に2層の場合には、板厚各部で生じたき裂の連結に必要な抵抗が小さい。
従って、本発明に係る厚鋼板は、層状の領域が、板厚方向に3層以上重なった構造で、隣接する層状の領域間の、脆性き裂伝播方向の差が30°以上とすることが好ましい。
尚、板厚中央部を含む層状の領域と、隣接する、板厚1/4部を含む層状の領域との間で、脆性き裂伝播方向の差が30°以上となる場合、圧延組織は板厚中央部における圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上、かつ板厚1/4部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上であった。
本発明は板厚中央部と板厚1/4部のき裂伝播方向に十分な差が生じれば良く、板厚中央部における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上、板厚1/4部における圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上としても良い。
尚、圧延材の圧延組織は、板厚中央部を中心に上下対象の組織となるので、本発明に係る厚鋼板の板厚方向断面組織は、板厚中央部を含む層状の領域に対して、上下方向に層状の領域が同数形成された、板厚方向にn層(但し、nは3以上の奇数)の層状の領域を有する。
板厚中央部を含む層状の領域を挟んで対向する層状の領域、例えば、板厚1/4部と板厚3/4部は同じ脆性亀裂伝播停止特性を有する。
また、本発明の層状の領域とは、当該領域内の圧延組織、脆性亀裂伝播方向が一定の、圧延方向、圧延直角方向に層状に形成される領域で、例えば、板厚中央部を含む層状の領域の場合、当該領域内では、圧延面の(110)面X線強度比が1.5以上で、脆性亀裂伝播方向は一定方向である。
厚鋼板としての良好な特性と、優れた脆性き裂伝播停止特性を得るために、好ましい化学成分は以下の様である。
C:0.03〜0.20%
Cは鋼の強度を向上する元素であり、本発明では、所望の強度を確保するためには0.03%以上の含有を必要とするが、0.20%を超えると、溶接性が劣化するばかりか靭性にも悪影響がある。このため、Cは、0.03〜0.20%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.15%である。
Si:0.03〜0.5%
Siは脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.03%未満の含有量ではその効果がない。一方、0.5%を越えると鋼の表面性状を損なうばかりか靭性が極端に劣化する。従ってその添加量を0.03〜0.5%とする。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、強化元素として添加する。0.5%より少ないとその効果が十分でなく、2.0%を超えると溶接性が劣化し、鋼材コストも上昇するため、0.5〜2.0%とする。
Al:0.005〜0.08%
Alは、脱酸剤として作用し、このためには0.005%以上の含有を必要とするが、0.08%を超えて含有すると、靭性を低下させるとともに、溶接した場合に、溶接金属部の靭性を低下させる。このため、Alは、0.005〜0.08%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.02〜0.05%である。
P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.0060%以下
P,S、Nは、鋼中の不可避不純物であるが、Pは0.03%を超え、Sは0.01%を超え、Nは0.0060%を超えると靭性が劣化するため、それぞれ、0.03%以下、0.02%以下、0.0060%以下が望ましい。
本発明においては、以上の元素に加え、母材の強度を高め、あるいは靭性を向上させるために、以下の元素を添加してもよい。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、NbCとしてフェライト変態時あるいは再加熱時に析出し、高強度化に寄与する。また、オーステナイト域の圧延において未再結晶域を拡大させる効果をもち、フェライトの細粒化に寄与するので、靭性の改善にも有効である。その効果を得るためには0.005%以上の添加が必要であるが0.05%を超えて添加すると、粗大なNbCが析出し逆に、靭性の低下を招くのでその上限は0.05%とするのが好ましい。
Ti:0.005〜0.03%、
Tiは微量の添加により、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化して母材靭性を向上させる効果を有する。その効果は0.005%以上の添加によって得られるが、0.03%を超える含有は、母材および溶接熱影響部の靭性を低下させるので、Tiは、0.005〜0.03%の範囲にするのが好ましい。
Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.5%
Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:、0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下
Cu,Ni、Cr、Mo、V、Bはいずれも鋼の焼入れ性を高める元素である。圧延後の強度アップに直接寄与するとともに、靭性、高温強度、あるいは耐候性などの機能向上のために添加するが、過度の添加は靭性や溶接性を劣化させるため、それぞれ上限を0.5%、1.0%、0.5%、0.5%、0.1%、0.003%とする。
一方、Cu,Ni、Cr、Moは添加量が0.01%未満であるとその効果が現れないため、0.01%以上の添加とする。また、Vは0.001%未満であるとその効果が現れないため、0.001%以上の添加とする。
Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下
Ca,REMは溶接熱影響部の組織は微細化し靭性を向上させる、添加しても本発明の効果が損なわれることはないので必要に応じて添加してもよい。しかし、過度に添加すると、粗大な介在物を形成し母材の靭性を劣化させるので、添加量の上限をそれぞれ0.005%、0.01%とする。
本発明鋼を得るための製造条件については特に限定しないが、例えば、3層の場合、上記成分系の鋼素材を900〜1200℃の温度に加熱し、板厚中央部がAr点以上の温度で累積圧下率30%以上、Ar点以下Ar点―60℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行った後、2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却することによって、脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板を得ることができる。
ここで、鋼素材の加熱温度を900〜1200℃としたのは、加熱温度が900℃以下であると圧延能率が低下し、加熱温度が1200℃以上であるとオーステナイト粒が粗大化し、靭性の低下を招くためである。
また、板厚中央部がAr点以上の温度で累積圧下率30%以上、Ar点以下Ar点―60℃以上の温度域において累積圧下率30%以上の圧延を行うのは、所望の集合組織を得るためである。
この圧延を行うことにより、板厚中央部における圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上で、かつ板厚1/4における圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の集合組織を得ることができる。
なお、上の条件はAr点―60℃以下の圧延を行うことを制限するものではなく、圧延温度が規定の温度域より低下しても規定する温度域で30%以上の圧下がおこなわれていればよい。
さらに、圧延が終了した鋼板を2℃/s以上の冷却速度にて600℃以下まで冷却するのは、2相域圧延によって導入された加工集合組織が再結晶するのを防ぐためである。
尚、板厚50mm未満では本発明の鋼板を適用しなくても脆性き裂の伝播を停止させることが可能であるので本発明は対象を板厚50mm以上の厚鋼板とする。いうまでもなく、本発明を適用する鋼板は、板厚50mm未満であっても優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する。
表1に示す各組成の鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で厚さ280mmの鋼素材(スラブ)とした(鋼No.A〜I)。これらの鋼素材を用いて板厚50〜70mmの鋼板に熱間圧延し、板No.1〜30の供試鋼を得た。
Figure 0005061649
これらの厚鋼板について、板厚の1/4部よりΦ14のJIS14A号試験片を採取し、引張試験を行い、降伏点(YS)、引張強さ(TS)を測定した。また、板厚の1/4t部よりJIS4号衝撃試験片を採取し、シャルピー試験を行って、破面遷移温度(vTrs)を求めた。
また、鋼板の集合組織を評価するため、所定の位置における圧延面での(100)面X線強度比および(110)面X線強度比を測定した。ここで、面強度比とはランダム方位標準サンプルとの指定方位面のX線強度比である。
さらに、これらの厚鋼板の板厚方向の脆性き裂伝播停止特性を評価するため、図1に示す温度勾配型ESSO試験を行い、−10℃における脆性き裂伝播停止靭性Kcaを求めた。
なお、以下の温度勾配型ESSO試験結果において、従来より脆性き裂の伝播を停止可能とされているKca値が6000N/mm3/2以上の場合に優れた脆性き裂伝播停止特性を有するとした。
表2に鋼板の引張試験結果、シャルピー破面遷移温度、および温度勾配型ESSO試験時の板厚内位置によるき裂伝播方向の角度の差、および−10℃におけるKca値を示す。き裂伝播方向の角度の差が本発明の範囲内の鋼板では、良好なKca値を示した。
Figure 0005061649
表3に鋼板の引張試験結果、シャルピー破面遷移温度、板厚中央部の(100)面X線強度比、板厚1/4部の(110)X線強度比、および温度勾配型ESSO試験時の板厚中央部および1/4部のき裂伝播方向の角度の差、および−10℃におけるKca値を示す。
X線強度比およびき裂伝播方向の角度の差が本発明の範囲内の鋼板では、良好なKca値を示した。
Figure 0005061649
表4に鋼板の引張試験結果、シャルピー破面遷移温度、板厚中央部の(110)面X線強度比、板厚1/4部の(100)X線強度比、および温度勾配型ESSO試験時の板厚中央部および1/4部のき裂伝播方向の角度の差、および−10℃におけるKca値を示す。
X線強度比およびき裂伝播方向の角度の差が本発明の範囲内の鋼板では、良好なKca値を示した。
Figure 0005061649
表5に鋼板の引張試験結果、シャルピー破面遷移温度、(110)面および(100)面のX線強度比ならびにそれぞれの強度比を示す位置、および温度勾配型ESSO試験時のき裂伝播方向の角度の差、および−10℃におけるKca値を示す。
X線強度比およびき裂伝播方向の角度の差が本発明の範囲内の鋼板では、良好なKca値を示した。
本発明鋼は、板厚中央部を含み、板厚中央部での圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上の層状の領域を板厚中央部とし、その上下に、板厚1/4部(板厚3/4部)を含み、当該位置での圧延面での(110)面X線強度比が1.5以上の層状の領域を有する、当該領域内では、板厚方向に脆性亀裂伝播方向が一定で、隣接する層状領域間では脆性亀裂伝播方向が相違する、3層を重ねた構造のものである。
Figure 0005061649
温度勾配型ESSO試験を説明する図。

Claims (6)

  1. 脆性き裂伝播方向が一定方向となる層状の領域を板厚断面方向に複数有する厚鋼板であって、隣接する層状の領域の脆性き裂伝播方向の差が30°以上であることを特徴とする脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
  2. 脆性き裂伝播方向が一定方向となる層状の領域が、3層以上であることを特徴とする請
    求項1記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
  3. 圧延面での(100)面X線強度比が2.0以上の層状の領域と、圧延面での(110
    )面X線強度比が1.5以上の層状の領域を板厚方向に交互にn層(但し、nは3以上の
    奇数)重ねた構造を特徴とする請求項1に記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50
    mm以上の厚鋼板。
  4. nが3で、板厚中央部を含む層状の領域の、板厚における圧延面での(100)面X線
    強度比が2.0以上であることを特徴とする請求項3記載の脆性き裂伝播停止特性に優れ
    た厚さ50mm以上の厚鋼板。
  5. 鋼組成が、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.03〜0.5%、Mn:0
    .5〜2.0%、Al:0.005〜0.08%、P:0.03%以下,S:0.01%
    以下、N:0.0060%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる請求
    項1〜4のいずれかに記載の脆性き裂伝播停止特性に優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
  6. 鋼組成が、上記成分に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005〜0.05%、Ti
    :0.005〜0.03%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜1.0%、C
    r:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、V:0.001〜0.1%、B:
    、0.003%以下、Ca:0.005%以下、REM:0.01%以下のいずれか1種
    、または2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の脆性き裂伝播停止特性に
    優れた厚さ50mm以上の厚鋼板。
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