JP5041279B2 - 細菌細胞壁骨格成分を含有する製剤 - Google Patents
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Description
前記水中油型エマルション製剤は、細菌-CWSを油中に分散したペースト状の組成物に、界面活性剤を含む水を加えてエマルション化することにより調製することができる(非特許文献3、4及び5を参照)。しかし、一般に細菌-CWSを含有する水中油型エマルション製剤は不安定であり、現在、臨床現場では、使用時に少量の水中油型エマルション製剤を用時調製している。しかし、常に一定の製剤を手作業で調製することは難しく、また用時調製では事実上医薬品としての実用化は不可能である。
そこで、水中油型エマルション製剤を凍結乾燥して凍結乾燥製剤とし、使用時に分散溶媒を加えて水中油型エマルション製剤を再調製させる方法が検討され、いくつかの凍結乾燥製剤に関する報告がなされた(特許文献1及び2を参照)。
細菌−CWSを含む凍結乾燥製剤を医薬品として供給するためには、(1)医薬品として求められる長期保存安定性を有すること、(2)凍結乾燥製剤に注射用蒸留水等の分散溶媒を添加して得られるエマルションが、凍結乾燥前の水中油型エマルションと実質的に同等であること等が重要である。しかしながら、これまでに知られていた凍結乾燥製剤は、高温条件等の苛酷な条件下で有効成分である細菌−CWSの含量が低下する現象が認められるなどの問題点があった。
以上のことから、更に保存安定性が優れた細菌−CWSの凍結乾燥製剤が求められていた。
一方、トコフェロール等の抗酸化剤は、酸化を受けやすい物質を含む薬剤や化粧品の液剤を安定化する目的等で汎用されている。しかしながら、細菌-CWSの分解を抑制する作用については全く知られていなかった。
前記凍結乾燥製剤は、前述の特許文献1及び2に記載された方法を用いて調製することができることがわかっている。すなわち、(1)有機溶媒を用いて細菌−CWS及びスクワラン等の油との混合油状物を調製し、(2)界面活性剤としてポリソルベート類を配合し、(3)賦形剤としてマンニトールを配合し、(4)(前記 3)を水中で乳化させることによって、均一性に富む水中油型エマルションを製造することができ、当該水中油型エマルションを凍結乾燥させることによって凍結乾燥製剤を得ることができる。
ところが、当該凍結乾燥製剤について、医薬品として要求される長期保存安定性を調べたところ、細菌−CWSの構造が一部分解し、構成成分の一種であるミコール酸が遊離することが判明した。また、長期間保存安定性試験に供した凍結乾燥製剤に水を添加して再懸濁(すなわち復水)して得られる水中油型エマルションのpHが酸性側に変化していることがわかった。これらの知見から、細菌−CWSを有効成分として含有する医薬組成物を医薬品として開発するためには、保存安定性を改良する必要があることが判明した。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、抗酸化剤を添加することによって、細菌−CWSを含有する凍結乾燥製剤の安定性が著しく向上することを見出した。更に、中間体となる水中油型エマルションを調製する際に緩衝剤を配合し、当該エマルションの溶液中のpHをpH5.5〜8.5に調整することによって、凍結乾燥製剤の安定性が相乗的に向上することを見出した。すなわち、抗酸化剤を配合することにより、好ましくは加えて緩衝剤を配合することにより、凍結乾燥製剤の長期保存安定性は飛躍的に向上することを見出した。
本発明は、上記の知見をもとに、完成するに至ったものである。
〔1〕 細菌細胞壁骨格成分、油及び界面活性剤を含有する水中油型エマルションの凍結乾燥製剤であって、更に抗酸化剤を含有することを特徴とする、凍結乾燥製剤;
〔2〕 界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、〔1〕に記載の凍結乾燥製剤;
〔3〕 抗酸化剤がトコフェロールである、〔1〕又は〔2〕に記載の凍結乾燥製剤;
〔4〕 更に、緩衝剤を含有し、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである水中油型エマルションのpHが、pH5.5〜8.5に調節されることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の凍結乾燥製剤;
〔5〕 緩衝剤がリン酸塩である、〔4〕に記載の凍結乾燥製剤;
〔6〕 当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである水中油型エマルションにおける緩衝剤の濃度が、約10〜20mMとなるべく調製されていることを特徴とする、〔5〕に記載の凍結乾燥製剤;
〔7〕 更に、賦形剤としてマンニトールを含有することを特徴とする、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の凍結乾燥製剤;
〔8〕 細菌細胞壁骨格成分が、ウシ型結核菌Bacille Calmette-Guerin細胞壁骨格成分である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の凍結乾燥製剤;
〔9〕 以下の(1)及び(2)の特徴を有する〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の凍結乾燥製剤:
(1)80℃下で30日間保存した場合、ミコール酸の遊離量が約2%以内であり、
(2)80℃下で30日間保存した後に、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである水中油型エマルションのpH値が、保存前のpHと実質的に同等である;
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の凍結乾燥製剤に水性溶媒を添加して得られる、水中油型エマルション製剤;
〔12〕 界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、〔11〕に記載の水中油型エマルション;
〔13〕 抗酸化剤がトコフェロールである、〔11〕又は〔12〕に記載の水中油型エマルション;
〔14〕 更に、緩衝剤を含有し、pHが、pH5.5〜8.5に調節されていることを特徴とする、〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載の水中油型エマルション;
〔15〕 緩衝剤がリン酸塩である、〔14〕に記載の水中油型エマルション;
〔16〕 緩衝剤の濃度が約10〜20mMとなるべく調製されていることを特徴とする、〔14〕又は〔15〕に記載の水中油型エマルション;
〔17〕 更に、賦形剤としてマンニトールを含有することを特徴とする、〔11〕〜〔16〕のいずれかに記載の水中油型エマルション;
〔18〕 細菌細胞壁骨格成分が、ウシ型結核菌Bacille Calmette-Guerin細胞壁骨格成分である、〔11〕〜〔17〕のいずれかに記載の水中油型エマルション;
〔19〕 〔11〕〜〔18〕のいずれかに記載の水中油型エマルションを凍結乾燥させて得られる、凍結乾燥製剤;
〔20〕 細菌細胞壁骨格成分、油及び界面活性剤を含有する凍結乾燥製剤に、抗酸化剤からなる安定化剤を配合することによって、前記凍結乾燥製剤中の細菌細胞壁骨格成分に長期保存安定性を与えることを特徴とする、前記凍結乾燥製剤の安定化方法;
〔21〕 更に緩衝剤を配合して、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである水中油型エマルションのpHがpH5.5〜8.5に調整されることを特徴とする〔20〕に記載の方法;
〔22〕 細菌細胞壁骨格成分、油及び界面活性剤を含有する凍結乾燥製剤中の細菌細胞壁骨格成分の分解抑制方法であって、抗酸化剤を配合することを特徴とする方法;
〔23〕 細菌細胞壁骨格成分がBCG-CWSであり、油がスクワランであり、界面活性剤がポリソルベート80であり、抗酸化剤がトコフェロールである、〔20〕〜〔22〕のいずれかに記載の方法;
〔24〕 トコフェロールを有効成分として含有する、細菌細胞壁骨格成分、スクワラン及び界面活性剤を含有する水中油型エマルション又はその凍結乾燥製剤の安定化促進剤;
〔25〕 更に、細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである凍結乾燥前の水中油型エマルション、及び当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5 mg/ml〜1 mg/mlである水中油型エマルションのpHが、5.5〜8.5に調整されるべく緩衝剤が配合されていることを特徴とする、〔24〕に記載の安定化促進剤;
〔26〕 緩衝剤がリン酸塩である、〔25〕に記載の安定化促進剤;
等に関する。
「細胞壁骨格成分(CWS)」とは、細菌の菌体を物理的に粉砕した後、ヌクレアーゼによる除核酸、プロテアーゼによる除蛋白、有機溶媒での洗浄による脱脂などの精製工程を経て、不溶性残渣として得られるものを表し、その製法は公知である(J. Nat. Cancer Inst., 52, 95-101 (1974) )。
なお、本発明において、水中油型エマルションに含まれる細菌−CWSの濃度は、エマルションとして0.01〜10mg/mlになるように使用される。好ましくは、0.1mg/ml〜2mg/ml、さらに好ましくは0.2mg/ml〜1mg/ml、さらに好ましくは0.5mg/ml〜1mg/mlである。
より好ましくは、スクワラン、ドレコール6VR、スクワランと大豆油の混合物、スクワランとオレイン酸エチルの混合物、またはスクワランとドレコール6VRの混合物を挙げることができる。更により好ましくはスクワランが挙げられる。
油の濃度は、後述する細菌−CWSと油のペースト(混合油状物)の粘度が約0.7poise(25℃)以下、好ましくは約0.2〜約0.6poise(25℃)、更に好ましくは約0.28〜0.55poise(25℃)となるように適宜調整される。複数の油との混合物を使用する場合、それぞれの油を適当な組成比で混合して使用できるが、細菌−CWSとの混合時の粘度が約0.2〜0.7poise(25℃)の粘度になるような組成比とする。
例えば、油としてスクワランを用いた場合、約0.35〜0.55poise(25℃)、更に好ましくは約0.39〜0.51poise(25℃)の粘度を有する細菌−CWS含有ペーストが好適である。具体的には、細菌−CWS約0.66gに対して、スクワラン約6.6g〜35.2g、好ましくは約8.4g〜35.2gの組成が挙げられる。
前述のペーストは、以下の1)及び2):
1)細菌−CWS及び油を、分散補助溶媒としての有機溶媒中で混合攪拌する工程;
2)前記1)の有機溶媒を留去する工程;
により調製することができる。用いられる有機溶媒としては、ヘプタン、トルエン等の炭化水素系溶媒、5〜20%のエタノール等のアルコール系溶媒を含むヘプタン等の炭化水素系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。前記ペーストの調製方法および、前記工程(1)で用いられる有機溶媒については、国際公開パンフレット第2004/012751号を参照することができる。
好ましい界面活性剤としては、卵黄ホスファチジルコリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)を挙げることができる。より好ましくはポリソルベート80、ポリソルベート40、ポリソルベート60等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート類)が挙げられ、特に好ましい界面活性剤としてポリソルベート80を挙げることができる。
界面活性剤の濃度は、水中油型エマルションにおいて0.01〜10%w/wの範囲が適当であり、0.01〜3%w/wが好ましく、0.05%〜1%w/wが更に好ましい。これら界面活性剤は一種類に限らず、適宜、数種類を組み合わせて使用することができる。
トコフェロール類としては、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、又はこれらの中から任意に選択される、2〜4種類のトコロフェロールの混合物等が例示できる。具体的には、α−トコフェロール(商品名:Eミックス80、Eミックス70L等)が挙げられる。
抗酸化剤は、水中油型エマルションの製造工程における任意の工程で添加すればよいが、好ましくは、細菌−CWSと油の混合油状物(ペースト)を製造する際に、あらかじめ油に溶解させて用いることができる。
好ましい賦形剤としては、単糖類、または糖アルコールが挙げられ、特に好ましい賦形剤としてはマンニトールが挙げられる。
これら賦形剤は、1種類に限らず、適宜、数種類組み合わせて使用することができる。
賦形剤の濃度は、水中油型エマルションにおいて0.1%〜20%w/wの範囲が適当であり、0.1〜10%w/wが好ましい。賦形剤の好適な濃度は、賦形剤の種類によって異なるが、製造スケールや各含有成分の含有量に応じて、適宜調整することができる。グリシン等のアミノ酸の場合、2.25%(300mM)〜11.25%(1500mM)、好ましくは約6.75%(900mM)である。マンニトールの場合、水中油型エマルションにおける濃度は、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは1〜8%、より好ましくは約3〜6%である。マンニトールを賦形剤として用いることにより、等張と同程度の濃度で用いることができるので、より生体に負担の少ない安定な製剤を調製することができる。
前記賦形剤として挙げられた物質は、必要に応じて等張化剤として用いてもよい。これら賦形剤もしくは等張化剤は一種類に限らず、適宜、数種類を組み合わせて使用することができる。通常は、前記賦形剤が等張化剤を兼ねているが、前記賦形剤とは異なる物質を等張化剤として選択してもよい。等張化剤の濃度は、他の成分の含有量に応じて適宜設定されるが、通常0.1%〜30%W/W、好ましくは1%〜10%W/Wの範囲が適当である。
例えば、リン酸緩緩衝液としては、5mM〜50mMのリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなる緩衝液が挙げられ、通常はリン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムの比率を1:2.3(重量比)で溶解し、適宜pHを塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等の塩基で微調整してもよい。トリス緩衝液としては、5mM〜50mMのトリス溶液からなる緩衝液が挙げられ、適宜pHを0.1N〜4Nの塩酸等で微調整することができる。クエン酸緩衝液としては、5mM〜50mMのクエン酸溶液からなる緩衝液が挙げられ、適宜pHを0.1N〜4Nの塩酸等で微調整することができる。緩衝液として、好ましくはリン酸緩衝液が挙げられる。
賦形剤としてアミノ酸などの緩衝作用を有する物質を用いる場合には、適宜緩衝剤の添加量を調整する。
(1)80℃下で30日間保存した場合、ミコール酸の遊離量が約2%以内であり、
(2)80℃下で30日間保存した後に、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られる細菌細胞壁骨格成分の濃度が0.5mg/ml〜1mg/mlである水中油型エマルションのpH値が、保存前のpHと実質的に同等である。
更に好ましくは、前記(1)において、ミコール酸の遊離量は、約1%以内である。また前記(2)において、「実質的に同等」とは、保存前後で、凍結乾燥製剤を復水して得られる水中油型エマルションのpHの差が0.8以内、好ましくは0.5以内であることを表す。
本発明における凍結乾燥製剤を再懸濁するために使用される水性溶媒は、エマルション粒子の分散媒体となるものであり、注射用蒸留水、生理食塩水、または緩衝液等が挙げられるが、注射可能な水性溶媒であれば特に限定されない。ここで凍結乾燥製剤を再懸濁するために用いられる水性溶媒が生理食塩水や緩衝液などの無機塩を含む水性溶媒の場合、当該水性製剤の組成については、再懸濁後の水中油型エマルション製剤の安定性等を考慮して、適宜選択すればよい。また、再懸濁後の水中油型エマルション製剤における無機塩(緩衝剤や賦形剤として添加された無機塩)の濃度は、ヒトに投与される場合に等張液となるように調整されることが好ましい。
当該「水中油型エマルション」は、更に、賦形剤、緩衝剤等を含有することができる。すなわち当該水中油型エマルションは、好ましくはマンニトール等の賦形剤を含みかつ、更に緩衝剤を配合されてpHが5.5〜8.5に調整されている。
当該水中油型エマルションは、上記国際公開第2004/012751号パンフレットに記載された、以下の製造方法で得られることを特徴とする。すなわち、
1)細菌−CWS及び油を、分散補助溶媒としての有機溶媒中で混合攪拌する工程、
2)1)の有機溶媒を留去して、細菌−CWS含有ペーストを調製する工程、及び
3)得られた細菌−CWS及び油からなるペースト(混合油状物)及び界面活性剤を水中で乳化する工程
により製造することができる。前述のとおり、抗酸化剤は上記1)または3)の工程で配合させることができるが、好ましくは、1)の工程で配合させる。また、上記3)の工程において、好ましくは、賦形剤を配合することができる。
製造中間体としての水中油型エマルション及び、本発明の凍結乾燥製剤を復水して得られる水中油型エマルション製剤の組成としては、前記細菌−CWS含有ペーストを含み、かつ、0.1%〜20%、好ましくは1%〜10%の賦形剤、0.01%〜10%、好ましくは0.01%〜3%の界面活性剤、0.001%〜10%、好ましくは0.001%〜0.1%の抗酸化剤を含むことを特徴とする。
具体的には2Lあたり、0.67〜3.35gの細菌−CWSおよび0.1〜10%w/w、好ましくは0.4〜8%w/w、更に好ましくは0.6〜5%のスクワランを含み、かつ、1%〜10%w/wの安定化剤、0.01%〜3%w/wの界面活性剤、および0.001%〜0.1%w/wの抗酸化剤を含むことを特徴とする。
前記水性溶媒としては、水、生理食塩水、または、緩衝液等が挙げられる。
前記「緩衝液」とは、水中油型エマルション製剤(凍結乾燥製剤を水で再懸濁させることにより得られるエマルションを含む。)のpHを一定に保つ目的で用いられる、緩衝剤を含む水溶液を表す。本発明で使用可能な緩衝液としては特に制限されるものは無いが、医薬品製剤に使用される緩衝液であれば好ましい。
本発明の水中油型エマルション製剤は、緩衝剤によってpH5.5〜8.5、好ましくはpH6.0〜7.0に調整されることが好ましい。
投与量、投与回数は対象とする疾患、患者の症状、年齢、体重、性別等によって異なるが、例えば、成人に対して週1回もしくは4週1回の投与で1回あたり10〜250μgの範囲、好ましくは25〜200μgの範囲を投与することができる。
本発明の凍結乾燥製剤及びこれを復水した水中油型エマルション製剤は、癌治療薬または予防薬、詳しくは免疫療法剤として有用である。対象となる癌の種類に特に限定はないが、肺癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、子宮癌、乳癌、急性骨髄性白血病、舌癌、咽頭癌、卵巣癌、脳腫瘍等が挙げられる。ここで癌治療剤には、癌転移抑制剤としての態様も含まれる。
又は本発明の凍結乾燥製剤及びこれを復水した水中油型エマルション製剤は、他の免疫療法剤、具体的には各種癌抗原を有効成分とする癌ワクチンと供に用いることができる。
細胞壁骨格成分としてBCG−CWS2770mgを用いて、混合物A70.4gおよび10%エタノール/90%ヘプタン溶液400mLの混合液に加え、振とうあるいは超音波により室温で分散した。その後、窒素あるいは空気気流下70℃に加熱しエタノール/ヘプタンを留去した。ついで、0.02w/w%ポリソルベート80/10mMリン酸緩衝液888.6gを添加し、ホモミキサーを用いて粗乳化を行い、さらに、36.7gの10w/w%ポリソルベート80水溶液を添加し本乳化を行った。最後に、1.5gの10w/w%ポリソルベート80溶液を添加混合し、ポリソルベート80最終濃度を0.1w/w%に調整し、水中油型エマルションを得た。その後、6.7w/w%マンニトール/1.2w/w%ポリソルベート80水溶液3000gを添加し、4000gの最終製剤を得た。
この水中油型エマルション製剤をバイアルに2mLずつ分注し、凍結乾燥を行って本発明の凍結乾燥製剤を得た。凍結乾燥は、凍結乾燥機(DFM−13A−S特、ULVAC社製)を用いて行った。
細胞壁骨格成分としてBCG−CWS1358mgを用いて、混合物B35.2gおよび10%エタノール/90%ヘプタン溶液200mLの混合液に加え、振とうあるいは超音波により室温で分散した。その後、窒素あるいは空気気流下70℃に加熱しエタノール/ヘプタンを留去した。ついで、0.02w/w%ポリソルベート80/10mMリン酸緩衝液444.3gを添加し、ホモミキサーを用いて粗乳化を行い、さらに、18.4gの10w/w%ポリソルベート80水溶液を添加し本乳化を行った。最後に、0.76gの10w/w%ポリソルベート80溶液を添加混合し、ポリソルベート80最終濃度を0.1w/w%に調整し、水中油型エマルションを得た。その後、6.7w/w%マンニトール/1.2w/w%ポリソルベート80水溶液1500gを添加し、2000gの最終製剤を得た。
この水中油型エマルション製剤をバイアルに0.5mL又は1mLずつ分注し、凍結乾燥を行って本発明の凍結乾燥製剤を得た。凍結乾燥は、凍結乾燥機(DFM−05A−S特、ULVAC社製)を用いて行った。
実施例1、2、5及び6に記載の抗酸化剤もしくは緩衝剤を含む凍結乾燥製剤、国際公開パンフレット第2004/012751号実施例14に記載された方法で調製された抗酸化剤を含まない凍結乾燥製剤(比較例1)の保存安定性を評価した。すなわち、各凍結乾燥製剤を組函に入れ、80℃に維持した気相インキュベーター内にて保存した。1週間後に製剤を取り出し、遊離ミコール酸量および注射用蒸留水で再懸濁した後のpHを測定した。
結果を表1に示した。
表2の結果から、10mM以上のリン酸緩衝液を用いることにより、pHの変化が抑制され、遊離ミコール酸量も抑制された、保存安定性が優れた凍結乾燥製剤が得られることがわかる。
一方、表3に示すように、100mMリン酸緩衝液から製造した凍結乾燥製剤は、強制劣化保存(80℃1週間)後における凍結乾燥ケーキの性状がシュリンクあるいは瓶の上部に浮上するバイアルが出現した。すなわち、高濃度のリン酸緩衝液で調製した凍結乾燥製剤は、強制劣化保存条件で、形態変化を起した。尚、ここでシュリンクとは、凍結乾燥中に凍結状態にある水の一部が融解することにより生ずるような、凍結乾燥ケーキが縮んだ状態を表す。
上記の結果より、凍結乾燥製剤の安定性を維持する為には、低いリン酸濃度が好ましいことがわかる。以上の結果から、10mM〜20mMのリン酸緩衝液が好適であることがわかる。
1mg/mLトコフェロール(Eミックス80又はEミックス70L)/10%エタノール/90%ヘプタン溶液を調製し、その40mLとスクワラン16gを充分混合する(混合物Bとする)。
細胞壁骨格成分としてBCG−CWS:163mgを用いて、混合物B4.2gおよび10%エタノール/90%ヘプタン溶液20mLの混合液に加え、振とうあるいは超音波により室温で分散した。その後、窒素あるいは空気気流下70℃に加熱しエタノール/ヘプタンを留去した。ついで、0.02w/w%ポリソルベート80/5.7%マンニトール水溶液212gを添加し、ホモミキサーを用いて粗乳化を行い、さらに、1.74gの10w/w%ポリソルベート80水溶液を添加し本乳化を行った。最後に、21.8gの10w/w%ポリソルベート80溶液を添加混合し、ポリソルベート80最終濃度を1w/w%に調整し、240gの水中油型エマルション(最終製剤)を得た。
この水中油型エマルション製剤をバイアルに2mLずつ分注し、凍結乾燥を行って本発明の凍結乾燥製剤を得た。凍結乾燥は、凍結乾燥機(DFM−05A−S特、ULVAC社製)を用いて行った。
実施例5と同様の方法で、トコフェロールを添加せずに凍結乾燥製剤を製造した。
Claims (7)
- ウシ型結核菌Bacille Calmette−Guerin細胞壁骨格成分(BCG−CWS)、油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水中油型エマルションの凍結乾燥製剤であって、
更に抗酸化剤としてトコフェロール、
緩衝剤としてリン酸塩、
賦形剤としてマンニトール
を含有し、
当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られるBCG−CWSの濃度が0.5mg/ml〜1mg/mlである水中油型エマルションのpHが、pH5.5〜8.5に調節される
ことを特徴とする、凍結乾燥製剤。 - 当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られるBCG−CWSの濃度が0.5mg/ml〜1mg/mlである水中油型エマルションにおける緩衝剤の濃度が、約10〜20mMになるべく調製されていることを特徴とすることを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
- 上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがポリソルベート80である、請求項1または2に記載の凍結乾燥製剤。
- 以下の(1)及び(2)の特徴を有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤:
(1)80℃下で30日間保存した場合、ミコール酸の遊離量が約2%以内であり、
(2)80℃下で30日間保存した後に、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られるBCG−CWSの濃度が0.5mg/ml〜1mg/mlである水中油型エマルションのpH値が、保存前のpHと実質的に同等である。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の凍結乾燥製剤に水性溶媒を添加して得られる、水中油型エマルション製剤。
- BCG−CWS、油及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する凍結乾燥製剤に、
抗酸化剤のトコフェロールを安定化剤として配合し、
更に緩衝剤のリン酸塩を配合して、当該凍結乾燥製剤を水で復水して得られるBCG−CWSの濃度が0.5mg/ml〜1mg/mlである水中油型エマルションのpHがpH5.5〜8.5になるように調整する
ことによって、前記凍結乾燥製剤中のBCG−CWSに長期保存安定性を与えることを特徴とする、前記凍結乾燥製剤の安定化方法。 - トコフェロールを有効成分として含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型エマルション又はその凍結乾燥製剤の安定化促進剤。
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