JP5036342B2 - トランスポンダ、通信装置、情報管理システムおよびトランスポンダが設けられる容器 - Google Patents

トランスポンダ、通信装置、情報管理システムおよびトランスポンダが設けられる容器 Download PDF

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Description

本発明は、密集状態の物品に装着されるトランスポンダ、これを用いる通信装置および情報管理システム、ならびにトランスポンダが装着される容器に関する。
RFID(Radio Frequency IDentification)システムは、固体の自動認識に用いられるシステムであり、基本的にリーダとトランスポンダとを備えている。トランスポンダには、たとえばタグが用いられる。タグは、アンテナと集積回路(IC)とを有している。タグは、リーダからの要求信号を受信すると、IC内に記憶されている情報を送信する。換言すれば、リーダによってタグに保持されている情報を読取ることができる。このタグを、たとえば血液などの検体が収容される容易に装着され、検体の検査データの管理に利用することが、たとえば特許文献1,2に示されている。
検体を収容する容器は、単独で取扱われるのではなく、たとえば十数本から数十本程度を1つのラックに収容して取扱われる。したがって容器は密集状態にあり、タグもまた当然に密集状態にある。タグがこのように密集状態にあると、各タグ同士が影響し合い、リーダとの間で通信できない場合がある。特許文献1,2の構成では、リーダによるタグの情報の読取不良が生じるおそれがある。
このような密集状態であっても、タグの情報を読取ることができるようにするため、リーダに、各タグに対応させて1つずつアンテナを設けるシステムが、たとえば特許文献3および非特許文献1に示されている。このシステムでは、容器の底面にタグを設け、各容器が収容されるラックを載置する載置台に、ラック内の容器の配置ピッチと同一のピッチでリーダのアンテナを配置している。このようにタグのアンテナとリーダのアンテナとを近接させて配置することによって、密集状態でもタグの情報をリーダで読取ることができる。
特開2001−356688号公報 特開2002−362572号公報 特開2005−351641号公報 「データ書き込みができる試験管 小型RFIDチップを使った検体チューブ(試験管)管理システムを開発(ニュースリリース:2006年07月)」、マクセル精器株式会社、インターネット<URL:http://www.maxei.co.jp/news/pdf/060714Jpn.pdf>
特許文献3および非特許文献1に示されるようなシステムでは、リーダのアンテナと各タグとの位置合わせが重要であり、タグに対するリーダの位置の許容範囲が極めて小さく、わずかな位置ずれによって読取不良を生じてしまうおそれがある。
本発明の目的は、トランスポンダが装着される物品が密集状態にあっても、リーダによる情報の読取不良を生じないトランスポンダ、これを用いる通信装置および情報管理システム、ならびにトランスポンダが装着される容器を提供することである。
本発明は、密集状態に設けられる複数の物品にそれぞれ装着されるトランスポンダであって、
周波数が300MHz以上300GHz以下の範囲で用いられる電界型のアンテナ素子を用いて無線通信するトランスポンダ本体と、
非導電性の磁性材料から成る磁性材部を有し、トランスポンダ本体の少なくとも一部を覆う通信改善体とを備えことを特徴とするトランスポンダである。
また本発明は、前記磁性材部が、無線通信に用いられる電磁波の周波数において、複素比透磁率の実数部μ’が2以上であり、透磁率損失項tanδμが1未満であることを特徴とする。
また本発明は、前記通信改善体が、誘電材料から成る誘電材部をさらに有することを特徴とする。
また本発明は、前記通信改善体が、さらに導体層を有することを特徴とする。
また本発明は、前記各物品が、各一端面が同一平面上に配置されるように、同一の姿勢でそれぞれ設けられ、
トランスポンダ本体の少なくとも一部と物品との間に通信改善体が配置される状態で、各物品の一端面に装着されることを特徴とする。
また本発明は、前記アンテナ素子が、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、ループアンテナおよびこれらにリアクタンス構造部を装荷したアンテナの少なくとも1つを含む素子であることを特徴とする。
また本発明は、前記磁性材料が、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料、またはそれを含有する材料から成ることを特徴とする。
また本発明は、前記トランスポンダと、
前記トラスポンダと無線通信し、トランスポンダに保持される情報を読取可能なリーダとを備えることを特徴とする通信装置である。
また本発明は、前記通信装置と、
リーダによってトランスポンダから読取った情報を、各トランスポンダ毎に識別して記憶するデータベース装置とを備えることを特徴とする情報管理システムである。
また本発明は、トランスポンダが装着された各物品を、各物品の一端面が同一平面上に配置されるように、同一の姿勢に保持して搬送する搬送装置を備え、
各トランスポンダは、トランスポンダ本体の少なくとも一部と物品との間に通信改善体が配置される状態で、各物品の一端面に装着され、
リーダは、各物品の搬送装置による搬送経路の中途部で、搬送される各物品に装着されたトランスポンダに対向するように設けられ、搬送経路を経て搬送される各物品に装着されるトランスポンダから、順次情報を読取ることを特徴とする。
また本発明は、前記トランスポンダが装着される物品であることを特徴とする容器である。
本発明によれば、周波数が300MHz以上300GHz以下の範囲で用いられる電界型のアンテナ素子を有するトランスポンダ本体は、その少なくとも一部が通信改善体によって覆われる。通信改善体は、非導電性の磁性材料から成る磁性材部を有している。通信妨害体は、磁性材部によって、エネルギを損失させずに電磁界を遮蔽することができる。この通信改善体がトランスポンダ本体を覆うことによって、複数のトランスポンダが密集状態にあっても、電磁界の遮蔽効果によって、トランスポンダ同士の互いの電磁気的結合を含む影響を抑え、他のトランスポンダによる通信環境の悪化を抑制することができる。したがって複数のトランスポンダが密集状態にあっても、リーダによって読取不良を生じることなく、各トランスポンダから情報を読取ることができる。しかもトランスポンダに対するリーダの位置の許容範囲は大きくなり、位置ずれによる読取不良を生じることがない。このようなトランスポンダを用いることによって、密集状態で取扱われるような物品の情報を、好適に取扱うことができる。300MHz以上300GHz以下の範囲には、UHF帯(300MHz〜3GHz)、SHF帯(3GHz〜30GHz)およびEHF帯(30GHz〜300GHz)が含まれる。
また本発明によれば、磁性材部は、無線通信に用いられる電磁波の周波数において、複素比透磁率の実数部μ’が2以上であり、透磁率損失項tanδμが1.0未満である。これによってアンテナ素子から放射される電磁波による磁界の磁力線が、通信改善体内を集中して通るようにし、エネルギを損失させずに電磁界を遮蔽し、他のトランスポンダのアンテナ素子による影響を小さく抑えることができる。したがって自己のアンテナ素子の入力インピーダンスが低下することが防がれ、また他のトランスポンダのアンテナ素子によって電磁エネルギを損失してしまうことが防がれる。このようにして密集状態で取扱われるような物品に装着して好適に用いることができるトランスポンダを実現することができる。
また本発明によれば、通信改善体は、誘電材料から成る誘電材部を有している。これによってトランスポンダ同士の互いの影響をさらに抑えることができる。また誘電材部によって、波長短縮効果が得られ、アンテナ素子を小形化することできる。アンテナ素子が小形化されることによって、他のトランスポンダのアンテナ素子との距離を大きくすることが可能なり、互いの影響を小さくすることができる。これによっても、トランスポンダ同士の互いの影響をさらに抑えることができる。したがってリーダによって、トランスポンダから情報を確実に読取ることができる。
また本発明によれば、通信改善体は、導体層を有している。これによって通信改善体による電磁界の遮蔽効果が増し、トランスポンダ同士の互いの影響をさらに抑えることができる。またトランスポンダ本体のアンテナ素子に対する導波器または反射器としての機能を付与することもできる。さらに導体層による共振周波数のシフトを調整した構成とすることで、装着対象の物品がどのような種類の物品であっても、共振周波数を再調整することは不要となる。したがってリーダによって、トランスポンダから情報を確実に読取ることができる。
また本発明によれば、各トランスポンダが同一の平面上に配置されるので、各物品の一端面に対向する位置にリーダを配置することによって、トランスポンダとリーダとの間に他のトランスポンダが配置されてしまうことがない。これによってトランスポンダ同士の影響を排除することができる。つまり密集状態の物品に装着される各トランスポンダを、リーダによって確実に個別認識することが可能となる。また通信改善体がトランスポンダ本体と物品との間に配置されるので、トランスポンダが装着される物品が、金属から成る部分を有する物品、また導電性の被収容物が収容される容器など、周囲の磁界および電界に影響を与えて通信を妨害するような物品であっても、この物品による通信の妨害を防ぐことができ、通信距離を伸ばすことができ、且つ読取効率を上げることができる。したがってリーダによって、トランスポンダから情報を確実に読取ることができる。
また本発明によれば、アンテナ素子として、簡単な構成のアンテナを用いることができる。またダイポールアンテナを用いる場合、長距離通信が実現できる。
また本発明によれば、磁性材料が、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料、またはそれを含有する材料である。このような材料を用いることによって、前述の特性が得られる通信改善体を形成することができる。したがって前述の優れた効果を達成する通信改善体を実現することができる。
また本発明によれば、トランスポンダから情報を確実に読取ることができる読取効率の高い通信装置を実現することができる。したがって多数の物品の情報を取扱うのに適した通信装置を実現することができる。
また本発明によれば、リーダによって、読取不良のない高い読取効率で、トランスポンダから読取った情報を、データベース装置で記憶して保管することができる。したがって多数の物品の情報を取扱うのに適した情報管理システムを実現することができる。
また本発明によれば、各物品を、搬送装置で搬送しながら、各物品に装着されるトランスポンダから、リーダによって情報を読取り、データベース装置に記憶させることができる。これによって物品を読取位置に一旦停止させるなど手間を要することなく、多数の物品の情報を円滑に取得することができる。したがって多数の物品の情報を迅速に取扱うことができる情報管理システムを実現することができる。
また本発明によれば、容器に、前述のように情報の取扱に適したトランスポンダが装着されるので、収容される被収容物の情報の取扱性に優れた容器が得られる。
図1は、本発明の実施の一形態のタグ30の一部を示す断面図である。図2は、タグ30の全体を示す平面図である。図2には、理解を容易にするために、アンテナ素子11およびIC17に斜線のハッチングを付して示す。タグ30は、他の通信機器であるリーダ31との間で無線通信する機器である。タグ30とリーダ31とを備えて、通信装置32が構成される。通信装置32は、たとえば固体の自動認識などに利用されるRFID(
Radio Frequency IDentification)システムを構築する装置であり、タグ30は、この通信装置32のトランスポンダである。
タグ30は、トランスポンダ本体であるタグ本体33と、通信改善体であるシート体10とを備えている。タグ本体33は、アンテナ素子11と、アンテナ素子11に電気的に接続され、アンテナ素子11を用いて通信する通信手段である集積回路(以下「IC」という)17とを有し、アンテナ素子11を用いてリーダ31と無線通信する。タグ30は、タグ本体33が内蔵するバッテリによって駆動されるバッテリ駆動タグであってもよいし、タグ本体33が受信した信号のエネルギを利用して信号を返信するバッテリレスタグであってもよい。またタグ本体33は、インダクタンス(L)成分、コンデンサ(C)成分によって、アンテナ素子11を共振整合する整合回路(リアクタンス構造部)を備える構成であってもよいし、備えていなくてもよい。
アンテナ手段であるアンテナ素子11は、特に限定されるものではない。アンテナ素子11は、電界型のアンテナ素子であってもよいし、磁界型のアンテナ素子であってもよい。電界型のアンテナ素子とは、電気力線を検出する電波方式で無線通信する機能(以下「電界型機能」という)を有するアンテナ素子であり、電磁波を空間に放射し、通信先のアンテナ素子との間で、電磁波をやりとりして通信する構成である。磁界型のアンテナ素子とは、磁力線を検出する電磁誘導方式で無線通信する機能(以下「磁界型機能」という)を有するアンテナ素子であり、通信先のアンテナ素子と磁束結合して通信する構成である。電波方式では、電磁誘導方式に比べて、通信距離を大きくすることができ、電磁誘導方式では、電波方式に比べて、エネルギの伝達効率が高い。したがって電界型のアンテナ素子を用いれば、通信距離を大きくすることができ、電界型のアンテナ素子を用いれば、効率を高くすることができる。
アンテナ素子11には、電界型機能だけを有するアンテナ素子、磁界型機能だけを有する素子、電界型機能と磁界型機能とを併用するアンテナ素子、電界型機能と磁界型機能とを交互に切替えて利用するアンテナ素子が含まれる。本発明では、磁界型機能の有無に拘らず、電界型機能を有するアンテナ素子は、電界型のアンテナ素子であり、電界型機能の有無に拘らず、磁界型機能を有するアンテナ素子は、磁界型のアンテナ素子であり、したがってアンテナ素子には、電界型かつ磁界型のアンテナ素子も存在する。
本実施の形態では、アンテナ素子11として、電界型のアンテナ素子が用いられる。電界型のアンテナ素子11としては、たとえばダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、またはループアンテナが挙げられ、本実施の形態では、ダイポールアンテナが用いられる。ダイポールアンテナおよびモノポールアンテナは、電界型のアンテナ素子の典型例であり、ループアンテナは、周囲長が1波長、または1波長に近づくと電界型の挙動を示す。ここでいう波長は、実効的な意味であり、たとえば誘電率や透磁率にて波長短縮効果を受けてその波長相当分の長さになった場合を含む。
タグ本体33は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から成る基材18をさらに有する。アンテナ素子11は、基材18の厚み方向一方側の表面部に形成されるパターン導体によって実現される。基材18は、環状の板状部材である。この基材18は、楕円環状または多角形環状に形成されてもよいが、本実施の形態では、円板の中央部に円形の貫通穴が形成された円環状に形成されている。アンテナ素子11は、基材18の周方向に延びるように、ループ状、U字状、馬蹄形状などに形成され、本実施の形態では、円弧に沿って略C字状に形成されている。
IC17は、アンテナ素子11のたとえば中央部に配置されて基材18に設けられ、アンテナ素子11に電気的に接続されている。IC17は、少なくとも記憶部と制御部とを有している。記憶部には情報を記憶することが可能であり、制御部は、記憶部に情報を記憶させ、または記憶部から情報を読出すことができる。このIC17は、アンテナ素子11によって受信される電磁波信号が表す指令に応答して、情報を記憶部に記憶し、または記憶部に記憶される情報を読出して、その情報を表す信号をアンテナ素子11に与える。
アンテナ素子11は、アンテナ素子11の構造によって決定される通信方向Aへ向けて電磁波の信号を送信し、通信方向Aから到来する電磁波の信号を受信することができる。本実施の形態では、通信方向Aは、アンテナ素子11を基準にして、基材18およびシート体10とは反対側に向かう方向である。図1には、通信方向Aを図1における上方として示しているが、これはあくまでも主な方向を示しているものであり、回り込んだ電波で通信する場合もあるので、実際に通信する方向は、図1の矢印Aで示す方向に対して傾斜する図1の斜め上方へ向かう方向も、通信方向に含まれる。
タグ30は、アンテナ素子11によって到来する要求信号を受信すると、IC17の制御部による処理動作によって要求信号の表す要求内容に応じて動作する。要求信号の要求内容が、タグ30に保持されている情報の送信を指令する場合、タグ30は、IC17の記憶部に記録されている情報を表す応答信号をアンテナ素子11によって送信させる。要求信号の要求内容が、情報の記憶を指令する場合、タグ30は、その要求信号が表す記憶すべき情報を、IC17の記憶部に記憶させる。このとき記憶が完了したことを表す応答信号を、アンテナ素子11によって送信してもよい。したがってリーダ31は、要求信号を送信することによって、タグ30に要求信号の表す要求内容に従う動作をさせることができる。
タグ30は、物品12に装着して用いられ、IC17に物品12に関する情報を保持しておき、その情報をリーダ31からの要求に応じて伝達する。このタグ30は、たとえば物品12としての商品に貼着され、商品の盗難防止および在庫状況の把握など、商品管理に利用されてもよいし、物品12としての試験管などの容器に貼着され、容器に収容される検査対象の検査結果を管理するために利用されてもよい。検査対象は、血液および組織片などの病理検査のための検体であってもよい。
アンテナ素子11およびIC17の層の厚み寸法は、1nm以上500μm以下であり、基材18の層の厚み寸法は、0.1μm以上2mm以下である。本実施の形態では、このようにタグ本体33は、基材18を備える構成であるが、基材18を有していない構成、たとえばアンテナ素子11およびIC17が、シート体10に直接設けられる構成であってもよい。またタグ本体33は、アンテナ素子11およびIC17が、合成樹脂を用いてモールドされる構成であってもよい。
このようなタグ本体33と、シート体10とが積層されて、タグ30が構成される。タグ本体33とシート体10とは、アンテナ素子11およびIC17とシート体10との間に基材18が配置されるように、積層される。タグ本体33とシート体10とは、接合剤層を介して接合されてもよい。接合剤層は、たとえば粘着性または接着性を有する接合剤から成る層であり、その粘着性または接着性によって、アンテナ素子11とシート体10とが貼着される。接合剤は誘電材料から成り、接合剤層は、誘電材から成る層である。またタグ本体33とシート体10とは、少なくともいずれか一方の表面部が粘着性または接着性を有し、この粘着性または接着性を利用して貼着されてもよい。さらにタグ本体33とシート体10とは、基材18に、シート体10を、塗工、溶着、固着、埋め込み、挟み込み、吹きつけなどによって、付加する構成であってもよい。またまたタグ本体33が基材18を有していない構成として、シート体10に、アンテナ素子11およびIC17を、印刷、描写、蒸着、貼付などによって、直接加工して設ける構成であってもよい。
シート体10は、タグ本体33の近傍に設けられ、タグ本体33の少なくとも一部を覆うように設けられる。ここで、近傍とは、タグ本体33による無線通信の通信環境に影響を与える近い位置を意味している。シート体10は、本実施の形態では、タグ本体33による通信方向Aの上流側からタグ本体33を覆うように設けられる。通信方向Aは、タグ本体33から基材18とは反対側に向かう方向であり、基材18の厚み方向に平行である。タグ本体33、基材18およびシート体10が前述のように積層されることによって、シート体10によってタグ本体33を通信方向Aの上流側から覆う構成が実現される。
タグ本体33と、シート体10とを含んで構成されるタグ30は、物品12に装着されて用いられる。タグ30が物品12に装着されるにあたって、タグ本体33は、シート体10に関して物品12と反対側に配置される。したがってシート体10は、タグ本体33と物品12との間に配置される。またシート体10は、基材18と同様の環状に形成され、機材18と同軸に積層される。したがってタグ30は、環状であり、中央部に貫通孔34が形成されている。
シート体10は、電磁界のエネルギを吸収せずに、その電磁界の磁力線および電気力線を集中して通過させるシート体である。このシート体10は、タグ本体33で無線通信に用いられる電磁波の電磁界が、通信方向Aとは異なる方向へ拡がることを抑制する機能を有している。以下、このように磁力線を集中させ、電磁界の広がりを抑制することを、電磁界を遮蔽するという。このように電磁界を遮蔽することによって、電磁波を遮断することができる。
シート体10は、このような電磁界の遮蔽によって、通信妨害体による無線通信への悪影響を抑制することができる。通信妨害体は、通信方向Aとは異なる方向の近傍に存在し、無線通信に悪影響を与える物体である。通信環境の悪化の要因には、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下および電磁波(電磁界)のエネルギの損失が含まれる。また通信妨害体の影響により、アンテナ素子11の共振周波数がシフトすることも、通信環境の悪化の要因である。シート体10は、このような要因によって発生する通信環境の悪化を抑制するために、無線通信に用いられる電磁波の電磁界が、通信妨害体に届きにくくするためのシート体である。共振周波数のシフトに関しては、シート体10によって調整も可能であるが、さらに整合回路(リアクタンス構造部)によって整合されてもよい。
少なくとも一部が導電性材料から成る物体は、通信妨害体と成り得る。導電性材料とは、導電性を有する材料だけから成る材料、および導電性を有する材料を含んだ材料である。この導電性材料は、たとえば金属、Si系材料、黒鉛シートなどの導電性材料、ITOおよびZnOなどの導電性を有する酸化物ならびに水、薬品、油などの液体、含水性材料などを含み、アンテナ素子との間で高周波数的に短絡、結合または干渉を引き起こす可能性のあるレベルの導電率を有する材料をいう。導電性材料は、導電性を有する材料であり、金属など、抵抗率が10−6Ωcm以上10−1Ωcm未満である比較的抵抗率が低い材料と、水および海水などの液体ならびに半導体など、抵抗率が10−1Ωcm以上10Ωcm以下である比較的抵抗率が高い材料とを含む。したがって通信妨害体には、他のアンテナ素子、タグなどのトランスポンダ、金属板、金属容器、筐体、シールド材、導電性繊維、液体が収容された容器、液体が収容された試験管、ペーストが収容された容器、水分を含有した物体などが含まれる。
タグ30が装着される物品12が、複数個、互いに近接して設けられるような密集状態にある場合、逆に言えば、タグ30が密集状態にある物品12に装着され、タグ30が密集状態にある場合、1つのタグ30にとって、他のタグ30のタグ本体33が、前述の通信妨害体となってしまう。つまりアンテナ素子11が導電性材料から成るので、タグ30同士が互いに通信妨害体となってしまう。シート体10は、このように密集状態にあるタグ30同士の互いの通信妨害を抑制するために、タグ30に設けられる。また物品12の一部が導電性材料から成る場合、また物品12が水分を含むような導電性を有する被収容物を収容する場合などには、物品12が、前述の通信妨害体となってしまう。シート体10は、このように物品12による通信妨害も、抑制することができる。
無線通信に利用される電磁波は、どうような用途で利用される電磁波であってもよい。通信に利用される電磁波の周波数(以下「通信周波数」という)は、用途によって決定されるものであり、限定されるものではなく、あくまでも例示ではあるが、たとえば1MHz以上300GHz以下の範囲の周波数を含み、任意の単数または複数の周波数を選択することができる。アンテナ素子11として電界型のアンテナ素子を用いる場合には、300MHz以上300GHz以下の範囲の周波数に選択すれば、アンテナ素子11を小型化することができ、好適である。1MHz以上300GHz以下の範囲には、HF帯(3MHz〜30MHz)、VHF帯(30MHz〜300MHz)、UHF帯(300MHz〜3GHz)、SHF帯(3GHz〜30GHz)およびEHF帯(30GHz〜300GHz)が含まれる。
本実施の形態では、電磁波は、たとえばRFIDシステムで利用される電磁波であり、UHF帯に属する860MHz以上1GHz以下の範囲(以下「高MHz帯」という)に含まれる周波数の電磁波であって、さらに具体的には、日本国内では950MHz以上956MHz以下の範囲に含まれる周波数の電磁波である。また高MHz帯以外に、2.4GHz帯の周波数の電磁波を、無線通信に利用する構成であってもよい。2.4GHz帯は、2400MHz以上2500MHz未満の周波数範囲である。RFIDシステムでは、この2.4GHz帯に含まれる、2400MHz以上2483.5MHz以下の範囲の周波数の電磁波が用いられる場合もある。
シート体10は、少なくともシールド層13を有する。本実施の形態では、シート体10は、シールド層13に加えて、導体層14と、物品接合層15と、層間接合層16とを有する。以下、シールド層13、導体層14、物品接合層15および層間接合層16の不特定の少なくとも一層を指す場合、構成層という。シート体10は、各構成層13〜16が積層される積層体である。シールド層13が、非導電性の磁性材料から成る磁性材部であり、かつ誘電材料から成る誘電材部でもある。このようにシールド層13が、磁性材部および誘電材部を兼ねる構成であるが、磁性材部および誘電材部が、互いに異なる個別の層によって実現される構成でもよい。磁性材料は、磁性体だけから成る材料であってもよいし、磁性体とそれ以外の素材を含む材料であってもよい。誘電材料は、誘電体だけから成る材料であってもよいし、誘電体とそれ以外の素材を含む材料であってもよい。
シールド層13は、電磁界を遮蔽し、電磁波を遮断するための主となる層である。シート体10の電磁界を遮蔽する効果は、このシールド層13だけでも十分に達成されるが、より確実に電磁界を遮蔽できるように、遮蔽性を高くするために他の層を設けるようにしてもよい。たとえば本実施の形態のように、遮蔽性を高くするために、シールド層13に導体層14を積層することができる。
シールド層13は、複素比透磁率および複素比誘電率を含む材料特性値を選択することによって、無線通信に用いられる電磁波を遮断している。複素比透磁率の実数部μ’が大きいほど、磁力線が集中して通過するようになって電磁波の遮断効果が高くなり、複素比透磁率の虚数部μ”および透磁率損失項tanδμ(=μ”/μ’)が小さいほど、磁界エネルギの損失が小さくなる。したがって複素比透磁率の実数部μ’は、大きいほど好ましく、複素比透磁率の虚数部μ”および透磁率損失項tanδμは、小さいほど好ましい。また複素比誘電率の実数部ε’が大きいほど、電気力線が集中して通過するようになって電磁波の遮断効果が高くなり、複素比誘電率の虚数部ε”が小さいほど、電界エネルギの損失が小さくなる。したがって複素比誘電率の実数部ε’は、大きいほど好ましく、また複素比誘電率の虚数部ε”は、小さいほど好ましい。
また複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ’ならびに複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”の数値は、無線通信に用いられる電磁波の周波数に対応する数値である。本実施の形態では、シールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比透磁率の実数部μ’と複素比透磁率の虚数部μ”とは、μ’≧μ”の関係を有し、したがって複素比透磁率の実数部μ’が複素比透磁率の虚数部μ”以上である。シールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比透磁率の実数部μ’が2以上でありかつ透磁率損失項tanδμが1以下である。またシールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比透磁率の実数部μ’が10以上でありかつ透磁率損失項tanδμが1以下であることが好ましく、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比透磁率の実数部μ’が20以上でありかつ透磁率損失項tanδμが0.5以下であることが、さらに好ましい。また本実施の形態では、シールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比誘電率の実数部ε’が20以上であり、複素比誘電率の虚数部ε”が300以下であって、誘電率損失項tanδε(=ε”/ ε’)が15以下である。
このシールド層13を設けることによって、無線通信に用いられる電磁波による電磁界の磁力線が、シールド層13を集中して通過するようになる。しかもシールド層13による電磁界のエネルギの損失は小さく抑えられている。したがってシールド層13によって、タグ本体33で無線通信に用いられる電磁波のエネルギを損失することなく、その電磁波によって形成される電磁界を遮蔽し、この電磁界が、通信方向Aとは異なる方向へ拡がることを抑制することができる。このように電磁界の拡がりを抑制することによって、無線通信に用いられる電磁波の放射方向を制御し、いわばアンテナ素子11の指向性制御に相当する制御が可能である。
また電磁界の拡がりを抑制することによって、たとえばタグ30に対して通信方向A上流側または通信方向Aと交差する方向の近傍に存在し、金属から成る物体、水分を含む物体、他のタグなどの通信妨害体まで拡がることを防ぐ。これによって通信妨害体によってアンテナ素子11の入力インピーダンスが低下してしまうことを抑制するとともに、通信妨害体においてエネルギが損失することを抑制することができる。また近くにあるタグとの間でエネルギを奪合うパワーシェアリング現象など、他のタグによる干渉も抑えることができる。したがってタグ本体33の通信環境が、通信妨害体の悪影響を受けて悪化してしまうことが抑制される。
導体層14は、導電性材料から成る層であり、本実施の形態では銅から成る。導体層14の材料は、銅に限らず、アルミニウムなどの他の金属であってもよいし、金属以外にも、金属相当の導電性を有するものなら使用可能である。また導体層14の材料は、磁性を有する材料であってもよい。シート体10に導体層14を設けることによって、タグ本体33に対して、他のタグ30および物体12などの通信妨害体よりも近い位置に導電性材料から成る層が存在することになる。
シールド層13によって通信妨害体によるアンテナ素子11への入力インピーダンス低下の影響が抑制されるけれども、導体層14が無い場合、タグ30の密集の度合が変化するなどしてタグ本体33と通信妨害体との位置関係が変化し、または通信妨害体の種類が変化すると、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下度合が都度変化する。本実施の形態では、導体層14を設けることによって電磁界の遮蔽性が向上されるので、タグ30の密集の度合が変化するなどしてタグ本体33と通信妨害体との位置関係が変化し、または通信妨害体の種類が変化しても、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下度合が変化しないようになる。アンテナ素子11への導体層14の影響は、シールド層13などによって防がれ、タグ30の周囲の状況が変化しても、アンテナ素子11の入力インピーダンスを一定に保つことができる。したがって導体層14が設けられることを前提として、アンテナ素子11の入力インピーダンスとIC17の入力インピーダンスとを整合させておくことによって、通信妨害体によるアンテナ素子11の入力インピーダンス低下に起因する通信環境の悪化を、さらに確実に抑制することができる。
またシート体10では、少なくともシールド層13が誘電材料から成る。このようにシート体10は、誘電材料から成る層を有しており、これによってアンテナ素子11の波長短縮効果が得られる。この波長短縮効果によって、小形化のアンテナ素子11を実現することができる。ダイポールアンテナは、線状で、カーブおよび折曲がりがあってもよく自由な形状でよく、前述のように略C字状に形成することができる。また全長はたとえばλ/2あればよい。あくまでも一例であるが、具体例を述べると、たとえば通信周波数が950MHzである場合、その電磁波の波長は約15.8cmであるが、これにシート体10による波長短縮効果が加わり、約3〜10cmの線状素子が可能となり、さらに曲折を加えることで2〜3cmのラベルにも収まるサイズが可能となる。さらに小形化することもでき、貼れる対象は広範囲に及ぶことになる。モノポールアンテナはダイポールアンテナの片側の素子とグラウンド板との間に給電するので、素子全長はλ/4とさらに小形化できる。ループアンテナの場合、全周が1波長に近いとき、半波長ダイポールアンテナを2個並べた構造に近似することができ、電界型のアンテナ素子とみることができ、同様に小形化される。
導体層14は、中間アンテナとして機能することもある。また導体層14は、複数層用いる構成であってもよい。導体層14の入力インピーダンスを向上させるため、スリットを入れたり、分割したり、導電率が、位置によって異なる分布を有する構成であってもよい。導体層14は、シールド層13に対して、タグ本体33とは反対側に配置されている。これによってシールド層13によって、無線通信に用いられる電磁波による電磁界が導体層14に拡がることを抑制できるので、導体層14を設けることによって、導体層14によるエネルギの損失を抑制したうえで、アンテナ素子11の入力インピーダンスを一定に保つ効果が得られる。
また導体層14は、アンテナ素子11に対する反射器(Reflector)または導波器(
Director)として機能するように構成してもよい。導体層14は、アンテナ素子11の通信方向A上流側となる背面側に配置する場合、反射器としての機能させることができし、アンテナ素子11の通信方向A下流側となる前面側に配置する場合、導波器とし機能させることができる。このように反射器または導波器として機能させる場合の形状は、アンテナ素子11と同じでも異なっていてもよい。好ましくはアンテナ素子11より大きい構成である。
物品接合層15は、タグ30を物品12に接合するための層であり、物品接合層15は、粘着剤および接着剤の少なくとも1種類を含み、粘着性または接着性による接合力を有する接合剤から成る。層間接合層16は、シールド層13と導体層14との間に介在され、シールド層13と導体層14とを接合するための層である。物品接合層15は、自己の接合力で導体層14に、シールド層13とは反対側に接合されている。各構成層13〜16は、タグ本体33側から、シールド層13、層間接合層16、導体層14、物品接合層15の順に、積層されている。
シート体10において、導体層14、物品接合層15および層間接合層16は、必須の構成ではない。シート体10は、シールド層13だけを有し、このシールド層13が直接物品13に装着される構成でもよいし、シールド層13と物品接合層15を備え、シールド層13が物品接合層15によって物品12に接合される構成でもよい。またシート体10は、シールド層13と導体層14とが、層間接合層16を介さずに直接積層される構成でもよい。またシート体10の各構成層13〜16は、それぞれ多層化されていてもよく、たとえばシールド層13を多層化し、シールド層13が複素比透磁率に傾斜性を有する構成、であってもよい。またシールド層13は、単層で複素比透磁率に傾斜性を有する構成でもよい。ここで傾斜性を有する構成とは、厚み方向一方から他方に向かうにつれて、複素比透磁率が変化する構成である。
各構成層13〜16の厚み寸法およびシート体10全の厚み寸法は、特に限定されるものではないが、例を挙げるならば、本実施の形態では、シールド層13の厚み寸法は、1μm以上10mm以下であり、導体層14の厚み寸法は、100Å(1×10−8m)以上500μm以下であり、物品接合層15は、1μm以上1mm以下であり、層間接合層16は、1μm以上1mm以下であり、シート体10の全体の厚み寸法は、3μm以上12mm以下である。シート体10は、全体の厚み寸法が、小さくすることが可能で、かつ各構成層13〜16が前述のような材料から成っており、可撓性を有している。したがってシート体10は、自在に変形させることができる。
図3は、シールド層13の内部構造を拡大して示す断面図である。図2には、理解を容易にするために、磁性粉末21および微粒子22のハッチングを省略して示す。図2に示す構成は、シールド層13の内部構造の一例であり、シールド層13は、図2の構造以外の内部構造を有する構成であってもよい。シールド層13は、磁性体として、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料、または軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つを含む材料から成る。したがってシールド層13は、磁性体の薄膜から成る構成であってもよいし、磁性体から成る粉末および微粒子の少なくとも一方を含有する構成であってもよい。
本実施の形態では、シールド層13は、前述のような材料特性値を得るために、誘電体から成る結合材20に、磁性体から成る粉末(以下「磁性粉末」という)21,22が混合された材料によって形成される。したがってシールド層13を形成する材料は、磁性体から成る磁性粉末21,22と、磁性体以外の素材から成る結合材20とが混合された磁性材料であり、かつ誘電体から成る結合20と、誘電体以外の素材から成る磁性粉末21,22とが混合された誘電材料でもある。
結合材20は、ポリマーから成り、たとえばノンハロゲン系ポリマー、またはノンハロゲン系ポリマーと他のポリマーなどの材料とを混合したノンハロゲン系混合材料から成る。結合材の具体例は、あくまでも一例であり、ノンハロゲン系ポリマーに限定されるものではない。結合材20として、ハロゲン系ポリマーを用いることも可能である。
結合材20に関しては、ポリマー(樹脂、TPE、ゴム)ジェル、オリゴマーなど、有機系および無機系を問わず、また重合度などに依存することなく、あらゆる材質の材料を用いることができる。ノンハロゲン系の材料は、環境面で好ましく用いることができるものである。シート化するためにはポリマー材料が適し、たとえば以下に例示するものを好ましく用いることができるが、例に挙げていない種類の材料およびブレンドのし方が異なる材料、アロイ化した材料など、シート化できる材料は全て用いることが可能である。
結合材20の材料としては、各種の有機重合体材料を用いることが可能であり、たとえばゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチックを含む高分子材料などが挙げられる。前記ゴムとしては、たとえば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル系ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンアクリル系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴム単独、それらの誘導体、もしくはこれらを各種変性処理にて改質したものなどが挙げられる。また液状ゴムでも構わない。
これらのゴムは、単独で用いるほか、複数をブレンドして用いることができる。ゴムには、加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤などの従来からゴムの配合剤として用いられていたものを適宜配合することができる。これら以外にも、任意の添加剤を用いることができる。たとえば、誘電率および導電率を制御するために所定量の誘電体(カーボンブラック、黒鉛、酸化チタンなど)を、用途の1つである電子機器内に発生する不要電磁波への入力インピーダンスマッチングおよび温度環境に応じて、材料設計して添加することができる。さらに加工助剤(滑剤、分散剤)も適宜選択して添加してもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、たとえば塩素化ポリエチレンのような塩素系、エチレン系共重合体、アクリル系、エチレンアクリル共重合体系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、スチレン系、アミド系などの各種熱可塑性エラストマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。
さらに、各種プラスチックとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ウレタン系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、生分解性樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの結合材として、低分子量のオリゴマータイプおよび液状タイプを用いることができる。熱、圧力、紫外線、放射線、電子線、風乾、硬化剤などにより成型後にシート状になるものであれば、任意の材料を選択することができる。またポリマー以外の材料を用いることもできる。紙、木、セラミックス、粘土、アスファルト、リサイクル物等磁性粉のバインダーとしてシート状になるものであれば全て利用できる。
磁性粉末21,22の粒径は、1nm以上1000μm以下であり、好ましくは10nm以上300μm以下である。特にナノサイズの磁性粉末21,22を用いることによって、UHF帯およびSHF帯の電磁波に対して、シールド層13の複素比透磁率の実数部μ’の値をたとえば10以上と高くし、かつ複素比透磁率の虚数部μ”の値をたとえば5以下と低くすることができる。また磁性粉末21,22として、扁平な粉末を用いる場合、アスペクト比が2以上500以下、好ましくは10以上100以下の粉末が用いられる。
また磁性粉末21,22の表面は、表面処理が施されていることが好ましい。たとえば磁性粉末21,22は、絶縁性を付与するため、または絶縁性を高くするために、その表面に有機物または無機物の被覆層を、メッキ、溶着、電着などの被覆処理によって形成してもよい。また磁性粉末21,22は、耐食性を向上させるために、表面に酸化被膜を有していてもよい。この酸化被膜を形成した場合、磁性粉末21,22に絶縁性を付与し、または絶縁性を高くすることができる。表面処理剤には、カップリング剤および界面活性剤などを用いることができる。また磁性粉末21,22と結合材20の濡れ性を向上させるために、たとえば樹脂被覆してもよい。磁性粉末21,22と結合材20の濡れ性を向上するにあたっては、分散剤を用いてもよい。
磁性粉末21,22の材料となる磁性体としては、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素鋼(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr−Si合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Al−Ni−Cr合金、Fe−Ni−Cr合金、Fe−Cr−Al−Si合金、Fe系合金、Co系合金、Si系合金、Ni系合金、アモルファス金属などが挙げられる。また磁性粉末21,22の材料となる磁性体として、軟磁性粉末の材料としてフェライトまたは純鉄を用いてもよい。フェライトとしては、たとえばMn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mnフェライト、Cu−Znフェライト、Cu−Mg−Znフェライトなどのソフトフェライト、または永久磁石材料であるハードフェライトが挙げられる。純鉄としてはたとえばカルボニル鉄などが挙げられる。またマグネタイトなどの鉄酸化物であってもよい。磁性粉末21,22の材料としては、これら磁性材料を単体で用いるほか、複数をブレンドしても構わない。
磁性粉末21,22は、たとえば円板状を含む板状、楕円形を短軸まわりに回転させた回転楕円体状などの扁平な粉末であってもよいし、たとえば針状、繊維状、球状、多面体状、塊状などの非扁平の粉末であってもよい。好ましくは、磁性粉末21,22として、透磁率の高い扁平な軟磁性粉末を用いることがよい。磁性粉末21,22として、1種類の形状の粉末だけを用いてもよいし、複数種類の形状の粉末を組合せて混合して用いてもよいが、複数種類の形状の粉末を組合せる場合、少なくとも1種類は扁平状であることが好ましい。
本実施の形態では、磁性粉末21,22は、扁平な軟磁性金属粉末である扁平粉末21と、少なくとも外表面部が非導電性を有する微粒子22とを有する。扁平粉末21は、略円板状であり、平均厚み寸法は、2μmであり、厚み方向に垂直な方向の平均外径は、55μmである。この扁平粉末21は、互いに接触しないように分散され、かつ扁平粉末21の厚み方向が、シールド層13の厚み方向と大略的に平行になるように配向されている。微粒子22は、少なくとも外表面部が非導電性を有する球形状の微粒子である。また微粒子22は、扁平粉末21の厚み寸法よりも小さい微粒子であり、微粒子22の平均外径は、1μmである。
扁平粉末21は、たとえば鉄、珪素およびアルミニウムの合金(Fe−Si−Al)であるセンダストから成る。微粒子22は、外表面部が非導電性となり、かつ耐食性を有するように、たとえば酸化鉄(マグネタイト)から成る。磁性粉末21,22についての前述の形状、寸法および材料は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
結合材20に磁性粉末21,22を分散させてシールド層13を実現する場合、たとえば結合材20が100重量部に対して、磁性粉末21,22が1重量部以上1500重量部以下の配合量で、配合される材料によってシールド層13が形成される。100重量部の結合材20に対する磁性粉末21,22の配合量が、1重量部未満である場合、前述のような実数部μ’が高くかつ虚数部μ”が小さい好適な複素比透磁率が得られず、1500重量部を超えると加工性が劣り、シート体10を製造できなくなるか、または製造が困難になる。100重量部の結合材20に対する磁性粉末21,22の配合量は、好ましくは10重量部以上1000重量部以下である。磁性粉末21,22の配合量が、10重量部以上1000重量部以下である場合、複素比透磁率の実数部μ’がより高くしかつ虚数部μ”をより小さくできるとともに、加工性により優れたシールド層13を実現することができる。
本実施の形態において、無線通信に利用される電磁波の周波数は、高MHz帯および2.4GHz帯の周波数を含んでいる。以下、高MHz帯およびGHz帯(1GHz以上1THz未満)を含む周波数域を、高周波数域という。シールド層13の構成が同一である場合、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”は、電磁波の周波数によって異なり、周波数が高くなるにつれて小さくなる傾向を有している。したがって高MHz帯および2.4GHz帯の電磁波を含めて、高周波数域の電磁波による無線通信において通信改善するためには、たとえば1MHz以上10MHz以下程度の低い周波数域(以下「低周波数域」という)の周波数の電磁波による無線通信の通信改善だけを目的とする構成と比べて、低周波数域から高周波数域にわたる広い範囲で全体的に複素比透磁率の実数部μ’を大きくしなければならない。
シールド層13における複素比透磁率の実数部μ’を大きくするためには、シールド層13における磁性を有する材料から成る部分の量を多くする必要がある。また複素比透磁率の虚数部μ”を小さくするためには、磁力線の経路25における非磁性材料から成る部分を少なくすればよい。単純に考えると、シールド層13における扁平粉末21の配合量
を多くすれば、磁性を有する材料から成る部分の量を多くし、磁力線の経路における非磁性材料から成る部分を少なくすることができるが、扁平粉末21の配合量を多くしすぎて、扁平粉末21同士が接触してしまうと、シールド層13が導電性を有してしまい、シールド層13内に電流を生じ、抵抗による損失が発生して電磁エネルギが吸収されてしまう。したがって単純に扁平粉末21の配合量を多くすることはできない。
本実施の形態では、結合材20に、扁平粉末21と微粒子22とを混合することによって、微粒子22が、各扁平粉末21間に入り込む。これによってシールド層13の複素透磁率の実数部μ’の値を大きくするために扁平粉末21の配合比を高くしても、扁平粉末21同士が、互いに接触しないようにすることができる。さらに微粒子22の外表面部が非導電性、つまり電気絶縁性を有しているので、非導電性のシールド層13を実現することができる。
低周波数域の周波数では、結合材20に扁平粉末21を分散させたシート体10の複素比透磁率の実数部μ’は、もちろん磁性金属単体のシートの複素比透磁率の実数部μ’よりもそれぞれ小さい。周波数上昇による複素比透磁率の実数部μ’の低下率を比べると、結合材20に扁平粉末21を分散させたシート体10の低下率は、磁性金属単体のシートの低下率に比べて小さい。したがって300MHz以上、特に高MHz帯およびGHz帯(1GHz以上1THz未満)を含む高周波数域では、逆転現象が生じることもある程、結合材20に扁平粉末21を分散させたシート体10の複素比透磁率の実数部μ’は、磁性金属単体のシートの複素比透磁率の実数部μ’よりもそれぞれ大きくなる場合がある。この現象は、磁性体である扁平粉末21、22同士が離れて分散する結果、間に介在する材料による磁気ロスが生じるため、シート体10のシールド層13では、磁気共鳴周波数が高周波数側に、したがってMHz帯(1MHz以上1GHz未満)側からGHz帯側にシフトすることによる現象である。
さらにSnoekの限界則に示されるように複素比透磁率の実数部μ’の周波数上昇による低下もあり、複素比透磁率の実数部μ’の周波数上昇対する低下率に連動して、複素比透磁率の虚数部μ”が大きくなっている。300MHz以上、特に高MHz帯およびGHz帯を含む高周波数域では、磁性金属単体のシートなどでは、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”が共に大きいか、複素比透磁率の実数部μ’が小さくかつ複素透磁率の虚数部μ”が大きいという特性を有している。300MHz以上、特に高MHz帯およびGHz帯を含む高周波数域では、複素比透磁率の実数部μ’が大きくかつ複素比透磁率の虚数部μ”が小さいという特性を得ることは難しい。
磁性材料は、低周波数域における複素比透磁率の実数部μ’が大きいほど、周波数上昇による複素比透磁率の実数部μ’の低下率が大きいという傾向を有する。扁平粉末21は、このような傾向にある低周波数域における複素比透磁率の実数部μ’が大きい材料から成る粉末である。このような扁平粉末21を、単独で用いずに、結合材20に分散させることで、周波数上昇による複素比透磁率の実数部μ’の低下率を抑える。
また扁平粉末21を結合材20に分散させるだけの構成では、扁平粉末21同士の接触を防ぐことが困難であるうえ、扁平粉末21同士の接触を防ぐことができたとしても、扁平粉末21間に存在する結合材20の影響で、300MHz以上、特に高MHz帯およびGHz帯を含む高周波数域での複素比透磁率の実数部μ’を大きくすることが困難になる。したがって磁力線がシールド層13をさらに通りやすくなるように磁界パスともよばれる複素比透磁率の実数部μ’の高い経路を、シールド層13内にミクロなレベルで構築する必要がある。この磁界パスを形成するために微粒子22が混合される。もちろんこの磁界パスの形成によって、シールド層13が導電性を有する構成となることがないように、扁平粉末21間の高い電気絶縁性を確保する必要がある。この電気絶縁性の確保は、たとえば微粒子22を、少なくとも外表面部が全体にわたって非導電性を有する構成として実現される。本実施の形態では、この微粒子22としては、フェライトのナノ粒子などを用いている。この粒子は、酸化物磁性体を用いた場合は、導電性を発現することはない。
このようにして複素比透磁率の虚数部μ”がピーク値となる共鳴周波数が高周波数側にシフトし、さらに5GHzおよび10GHzと上げることで、300MHz以上、特に高MHz帯および2.4GHz帯での複素比透磁率の実数部μ’が大きくかつ複素比透磁率の虚数部μ”が小さい、シールド層13を実現することが可能となる。
シールド層13の具体的な例として、以下に実施例を挙げて説明する。実施例は、あくまでも一例であり、本発明が実施例に限定されるものではない。
実施例1では、結合材20が100重量部に対して、扁平粉末21が690重量部および微粒子22が69重量部の配合比で混合し、さらに界面活性剤、分散剤を加えるとともに、架橋剤を加え、熱プレス法によってシールド層13を形成し、このシールド層13を備えるシート体10を作成した。結合材20には、水素添加ニトリルゴム(HNBR;日本ゼオン製「ゼットポール」)を用い、扁平粉末21には、センダスト(Fe−Si−Al系合金;同和鉱業製DT)を用い、微粒子22には、超微粒子鉄粉(JFEケミカル製)を用いた。架橋材には、過酸化物(日本油脂社製の商品名「パーミクルD」)を用いた。配合に於ける、ポリマー分率は45.3vol.%、磁性体分率は46.4vol.%である。センダストである扁平粉末21の長径の平均値である平均粒径は55μm、アスペクト比は30〜40程度である。また超微粒子鉄粉の平均粒径は30nmである。
実施例1のシート体10において、理論比重値は3.89であり、実測比重値は3.53であった。実測比重値は、シート体10全体の重量を体積で除して算出し、理論比重値は、各構成成分の比重×含有量の総和を体積で除して算出した。
上記で得られたシールド層13について、材料特性値である複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”、複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”を、同軸管法によって測定した。具体的には、シールド層13と同一構成であり、かつ外形が7mmかつ内径が3mmの環状の試料を作成し、試料の同軸管内部への接触部分に導電性塗料を塗布および乾燥し、同軸管部分を、同軸ケーブルを介してアジレント社製のネットワークアナライザー8720ESに接続し、反射減衰強度S11および透過減衰強度S21を測定し、ここから複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”を求めた。また複素比誘電率の実数部ε’および複素比誘電率の虚数部ε”は、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”と同様にして測定した。複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”ならびに複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”の1または複数を不特定に指す場合、材料特性値という場合ある。
図4は、実施例1のシールド層13の材料特性値μ’、μ”、ε’、ε”の測定結果を示すグラフである。図4には、「◆」印によって、複素比透磁率の実数部μ’を示し、「■」印によって、複素比透磁率の虚数部μ”を示し、「△」印によって、複素比誘電率の実数部ε’を示し、「×」印によって、複素比誘電率の虚数部ε”を示す。図4に示すように、950MHzの電磁波に対する複素比透磁率の実部μ’は19.16であり、透磁率損失項tanδμが0.58であり、複素比誘電率の実部ε’が165.8であり、誘電率損失項tanδεが0.15である。2.45GHzの電磁波に対する複素比透磁率の実部μ’は13.57であり、透磁率損失項tanδμが0.70であり、複素比誘電率の実部ε’が167.54であり、誘電率損失項tanδεが0.25である。また表面抵抗率(JIS K6911)は、10Ω/□である。
また本発明の実施の他の形態のシールド層13として、磁性材料の充填率を高くするために、平均粒子径比が約4:1の大きさの異なる2種類の磁性粒子を、前述と同様の結合材20に混合し、微粒子および軟磁性金属繊維を混合する。さらに電気絶縁性を確保するために、電気絶縁性微粒子を混合する。前記2種類の磁性粒子は、前記扁平粉末21と同一の材料から成り、大きい方の平均粒子径は約20μmであり、小さい方の平均粒子径は約5μmである。また微粒子および軟磁性金属繊維は、鉄系材料から成り、微粒子の平均粒径および軟磁性金属繊維の平均繊維径は、約1μmである。電気絶縁性微粒子は、酸化ケイ素(SiO)から成り、平均粒子径は約10nmである。またこのサイズの微粒子は、扁平粉末21のシールド層13における分散時の方向および間隔を制御する役割も有する。
さらにシールド層13内の空隙をできるだけなくすために、シールド層13の実測比重値が、配合からの理論比重値になるべく近い値を取るように設計、製造している。図2に示す構成に変えて、前述のような構成であっても、同様に、複素比透磁率の虚数部μ”がピーク値となる共鳴周波数が高周波数側にシフトし、さらに5GHzおよび10GHzと上げることで、300MHz以上、特に高MHz帯および2.4GHz帯での複素比透磁率の実数部μ’が大きくかつ複素比透磁率の虚数部μ”が小さい、シールド層13を実現することが可能となる。
またシールド層13の材料設計の基本的思想は、通信周波数にて電気的高抵抗を有し、通信周波数での複素比透磁率の実数部μ’を高くして磁界成分をシールド層13内に呼び込み、扁平形状の磁性粉末をミクロに配向、配列させることで任意の方向に磁気が流れ易くなることで磁気異方性を付与し、複素比透磁率の虚数部μ”を低くして磁気的損失を抑えることである。これにより本発明の効果、特に遮蔽効果および指向性改善効果を得ること可能となる。
またシート体10は、各層13〜16の少なくともいずれか1つの層に、たとえば難燃剤または難燃助剤が添加されている。これによってシート体10に、難燃性が付与されている。たとえば携帯電話などのエレクトロニクス機器も、内装するポリマー材料に難燃性を要求されることがある。
このような難燃性を得るための難燃剤としては、特に限定されることはないが、たとえばリン化合物、ホウ素化合物、臭素系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化物系難燃剤、金属化合物系難燃剤などを適宜用いることができる。リン化合物としては、リン酸エステル、リン酸チタンなどが挙げられる。ほう素化合物としては、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。臭素系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカ
ン、デカブロモベンジルフェニルエーテル、デカブロモベンジルフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール、臭化アンモニウムなどが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛若しくはホウ酸亜鉛などが挙げられる。窒素系難燃剤としては、たとえばトリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、若しくはメラミンシアヌレート、メラミングアニジン化合物といったようなメラミン系化合物などが挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。金属化合物系難燃剤としては、たとえば3酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄などが挙げられる。
本実施例では、重量比において、結合材を100として、臭素系難燃剤を20、三酸化アンチモンを10、リン酸エステルを14の比で、それぞれ添加することによって、UL94難燃試験においてV0相当の難燃性を得ることができる。シート体10は、このような物品を構成する素材として、または物品に装着して好適に用いることができる。たとえば航空機、船舶および車両内の装置など、燃焼およびこれに伴うガスの発生を防止したい空間などで用いられる物品に装着するなどして、好適に用いることができる。
またシート体10は、電気絶縁性を有している。具体的には、各層11,12が前述のような材料から成ることによって、シート体10の表面抵抗率(JIS K6911)が10Ω/□以上である。シールド層13の表面抵抗率は、大きいほど好ましい。したがって実現可能な最大値が、表面抵抗率の上限値となる。このように高い表面抵抗率を有し、電気絶縁性を有している。
またシート体10は、耐熱性を有している。具体的には、ゴムあるいは樹脂材料に架橋剤を添加した場合のシート体10の耐熱温度は、150℃であり、シート体10は、少なくとも150℃を超える温度になるまでは、特性に変化を生じない。
シート体10は、少なくとも一方の表面部が、粘着性または接着性を有している。本実施の形態では、前述のように物品接合層15を有しており、これによって厚み方向他方側の表面部が粘着性または接着性を有している。シート体10は、物品接合層15の粘着性または接着性による結合力によって、物品に貼着することができる。したがってシート体10は、たとえば通信妨害部材12に貼着することによって、アンテナ素子11と通信妨害部材12との間またはアンテナ素子近傍に、容易に設けることができる。シート体10は、厚み方向一方側がアンテナ素子11側に配置され、厚み方向他方側が通信妨害部材12側に配置されて設けられる。貼着用剤は、たとえば日東電工社製No.5000Nが用いられる。
図5は、本発明の実施の他の形態のタグ30全体を示す平面図である。図5のタグ30は、図1〜図4を参照して説明したタグ30と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図1〜図4のタグ30では、アンテナ素子11として、ダイポールアンテナが用いられたけれども、図5のタグ30では、アンテナ素子11として、基材18と同軸に配置される略円環状のループアンテナが用いられる。その他の構成は同様である。このようにアンテナ素子11としてループアンテナを用いる構成であっても、アンテナ素子11としてダイポールアンテナを用いる構成と同様の効果が得られる。
図6は、図5に示すタグ30が装着される物品12を、内部が見えるように一部切り欠いて示す正面図である。図7は、物品12を拡大して示す平面図である。図7には、理解を容易にするために、タグ30に斜線のハッチングを付して示す。物品12に装着されるタグ30には、アンテナ素子11として略円環状のループアンテナが用いられている。タグ30は、たとえば物品12としての真空採血管に装着される。以下、理解を容易にするために、真空採血管に、物品の符号「12」を付す。
真空採血管12は、導電性の液体である血液が収容される容器である。真空採血管12は、試験管によって実現される有底円筒状の管本体51と、管本体51の開口部に同軸に装着され、管本体51の開口部を密に塞ぐ蓋体であるキャップ52とを備える。タグ30は、少なくともタグ本体33と管本体51との間にシート体10が配置される状態で、真空採血管12に装着される。タグ30は、たとえばキャップ52の本体51とは反対側の平面状の端面52aに、貼着される。シート体10が、物品接合層15を有しているので、物品である真空採血管12に装着して用いる場合、粘着性を利用して、タグ30を真空採血管12に容易に装着することができる。
キャップ52は、気密性、耐薬品性、液体シール性、耐環境性に優れた材料を用いて形成される。キャップ52は、たとえばゴムまたは樹脂から成り、たとえばシリコーン系樹脂、シリコーン系ゴム、フッ素系樹脂、フッ素系ゴムなどから成る。
またキャップ52の材料は、誘電材料であることが好ましく、加えて磁性材料であることが好ましい。さらにキャップ52の材料は、無線通信に影響を与えないように、損失成分である複素比透磁率の虚数部μ”および複素比誘電率の虚数部ε”がなるべく小さく、透磁率損失項tanδμ(=μ”/μ’)および誘電率損失項tanδε(=ε”/ε’)の少なくともいずれか一方が1未満であることが望ましい。前述のゴムまたは樹脂は、少なくとも誘電材料であり、金属粉末などを混合することによって、磁性材料にも成り得る。
またタグ30は、キャップ52が誘電材料から成る場合、キャップ52に埋込むようにして装着されてもよい。この場合、キャップ52によってタグ30を保護することができる。されにキャップ52を、耐環境性に優れた材料によって形成すれば、タグ30の保護性能が向上される。またキャップ52の端面52aにタグ30を貼着した状態で、保護フィルムなどで覆ってタグ30を保護するようにしてもよい。これらの保護構造を採用すれば、タグ30の耐久性を高くすることができ、物品である採血試験管12が、熱的または化学的に過酷な環境で用いられても、タグ30が損傷しにくくすることができる。このタグ30を保護する構成は、必須ではないので、前述のようにタグ30を単にキャップ52の端面52aに貼着する構成でもよい。
このようにタグ30をキャップ52に設ける場合、少なくとも管本体51には、タグ30を設けるための加工が不要であり、コストを低く抑えることができる。またタグ30をキャップ52に設けるにあたって、貼着する構成を採用すれば、キャップ52は従来品をそのまま用いることができ、加工が不要であるので、コストを低く抑えることができる。
真空採血管12は、注射器などの採血用具の針(以下「採血針」という)を、キャップ52に刺入して貫通させ、本体51に血液を注入し、または本体51から血液を抜取るように構成されている。キャップ52は、採血針が貫通しやすいように中央部分の軸線方向寸法が小さい構造を有している。タグ30は、前述のように環状であり、キャップ52に、タグ30を貼着しても、貫通孔34に採血針を挿通させることによって、タグ30を損傷しないように採血針をキャップ52に刺入することができる。タグ30は、キャップ52と同軸に設けられてもよいし、互いに軸線と垂直な方向にずれていてもよい。
タグ30を真空採血管12に設ける場合、タグ30がシート体10を備えていない場合、通信環境が収容される血液の影響を受けて悪化するおそれがあるが、本実施の形態では、タグ30がシート体10を備えているので、通信環境への血液の影響を防ぐことができる。またタグ30を、キャップ52の端面52aに貼着し、または端面52a近くに埋込むようにすれば、タグ30から管本体51に収容される血液の液面53までの距離Lをできるだけ大きくすることができる。これによって通信環境が血液によって影響を受けにくくすることができる。
タグ30には、物品に関する情報として、真空採血管12に収容される血液に関する情報が保持されている。血液に関する情報は、たとえば氏名、性別および年齢などの血液を採取した人物に関する情報、血液の採取日および血液の検査日など年月日に関する情報、血液型および成分などの血液自体に関する情報、検査方法などの検査自体に関する情報などでであってもよい。
図8は、真空採血管12が収容される試験管ラック55を簡略化して示す平面図である。図9は、試験管ラック55を簡略化して示す平面図である。図8は、真空採血管12が収容されている状態で試験管ラック55を示し、図9には、真空採血管12を省略して示す。試験管ラック55は、大略的に直方体状のラックであり、行列状に並ぶ複数の収容室を有し、各収容室に1本ずつ真空採血管12を収容することによって、複数本の真空採血管12を、行列状に並べて収容できるように構成されている。試験管ラック55には、たとえば最大で50本の真空採血管12を収容することができる。
また試験管ラック55は、各真空採血管12の軸線が互いに平行となり、キャップ52が同一側に配置されるようにして、各真空採血管12に装着されるタグ30が同一仮想平面上に並ぶように、各真空採血管12を収容できる構成である。試験管ラック55には、たとえばキャップ52を上方側に配置して、各真空採血管12が収容される。各タグ30の通信方向Aは、互い同一の方向であって、キャップ52が上方側に配置される場合、各通信方向Aは上方となる。
真空採血管12は、たとえばこのように試験管ラック55に収容され、複数の真空採血管12が1纏りとして取扱われ、一括して管理される。複数の真空採血管12を1纏りとして取扱うにあたって本実施形態では、試験管ラック55を用いているが、これを用いない場合もある。試験管ラック55を用いることで、隣接するタグ30同士の間隔を均一化し、各タグ30を整列配置させることができる。試験管ラック55は、従来品をそのまま用いることができる。また試験管ラック55は、50本収容可能なラックに限定されるものではなく、たとえば100本収容可能なラックであってもよい。試験管ラック55の収容可能本数は、任意に選択することができる。
複数の真空採血管12を一括管理する場合、真空採血管12を試験管ラック5A下流側にリーダ31が配置されるように、試験管ラック55の上方にリーダ31を配置させ、各タグ30から一括して、または順次、情報が読取られる。リーダ31を試験管ラック55の上方に配置させるにあたっては、リーダ31および試験管ラック55を相対的に変位させればよく、いずれか一方を変位させてもよいし、両方を変位させてもよい。
試験管ラック55に収容される状態で、各真空採血管12は、密集状態にある。タグ30は、このようにラックに収容されるなどして密集状態にある物品(真空採血管)12に装着される。したがって各タグ30は、密集状態で用いられる。このように各タグ30が密集状態にある場合、前述のように各タグ30同士が通信妨害体となり得るが、各タグ30には、シート体10が設けられており、隣接するタグ30によって通信環境が悪化することを抑制できる。これによってタグ30が密集状態にあっても、リーダ31によってタグ30の情報を読取ることができる。
各タグ30にシート体10が設けられ、互いの影響が抑制されているので、リーダ31は、リーダ31のアンテナ素子を各タグ33に1対1で対向させなくても、各タグ30の情報を読取ることができる。またリーダ31のアンテナ素子と各タグ33との厳密な位置合わせも不要である。したがってリーダ31として、簡単な構成のリーダを用いることができ、たとえば従来品を用いることができる。リーダ31には、アンテナ素子として、たとえばパッチアンテナを備えるリーダを用いることができる。
リーダ31は、各タグ30が配置される仮想平面に投影した場合の領域(以下「リーダ領域」という)が、1つの試験管ラック55に収容される各タグ30が配置される領域(以下「タグ領域」という)より小さくなる構成でもよい。図6および図7には、リーダ領域がタグ領域より小さい場合を示している。この場合、複数のリーダ31を設けるようにしてもよいし、リーダ領域が、タグ領域全域と、少なくとも1度は重なるように、走査すればよい。またリーダ領域がタグ領域より小さくても、リーダ領域とタグ領域との一方向の寸法が同一となるようにすれば、リーダを試験管ラック55に対して一方向と垂直な他方向へ変位させるだけでよい。
リーダ領域がタグ領域よりも小さい場合は、このようにリーダ31を各タグ30に対して相対的に変位させながら、各タグ30の情報が読取られる。リーダ領域がタグ領域と同一またはタグ領域より大きい場合、リーダ31を各タグ30に対して変位させずに、各タグ30の情報が読取ってもよいが、リーダ領域がタグ領域よりも小さい場合と同様に、リーダ31を各タグ30に対して相対的に変位させながら、各タグ30の情報が読取ってもよい。リーダ31を各タグ30に対して相対的に変位させながら、各タグ30の情報が読取るようにすれば、タグ30のアンテナ素子12に対して、リーダ31から様々な角度およびタイミングで要求信号を送信することができ、タグ30の応答を促すことができ、読取不良をより確実に防ぐことができる。
このように読取不良を防ぐ目的での相対変位は、速度、方向、時間に制限はなく、速度は変化してもよい。またこの相対変位は、リーダ31および試験管ラック55のいずれか一方だけの変位で実現されてもよいし、両方の変位によって実現されてもよい。また相対変位は、前述のように走査する場合のように、リーダ31が、各タグ30の配置される仮想平面と平行に変位する構成であってもよいし、仮想平面と交差する方向に変位する構成であってもよいし、仮想平面に対する角度を変化させるように角変位する構成あってもよい。また複数のリーダ31を設ける場合は、一部のリーダ31だけを相対変位させてもよい。相対変位させる機構は、特に限定されず、たとえばXYテーブル、XYZテーブル、ターンテーブル、コンベア、ロボットなどを用いることができる。また蓋および扉を用い、その開閉動作などを利用して、相対変位させる構成であってもよい。
図10は、通信装置32を備える情報管理システム60の読取装置61を簡略化して示す斜視図である。図11は、情報管理システム60を示すブロック図である。情報管理システム60は、物品に関する情報、本実施の形態では、血液に関する情報を管理するためのシステムである。情報管理システム60は、各タグ30から情報を読取るための読取装置61と、読取装置61によって読取った情報を、各タグ30毎に識別して記憶するデータベース装置であるサーバ62とを備える。
読取装置61は、各タグ30に対して非接触で、各タグ30から情報を読取る装置である。読取装置61の筺体63内には、試験管ラック55を収容可能な内部空間64が形成される。読取装置61は、リーダ31を備え、リーダ31は、筺体63内に固定されて設けられる。リーダ31は、内部空間64の読取位置66に試験管ラック55が配置されるとき、試験管ラック55に上方から臨む位置に配置されている。リーダ31は、筐体63内に搭載される通信手段67に、たとえば高周波ケーブルを介して接続される。
リーダ31には、少なくとも1つの発信素子が設けられ、電波法で規制されている上限出力、たとえば2.45GHz帯のRFIDシステムの場合、最大300mWで、要求信号を送信する。これによって密集したタグ30間におけるパワーシェアリング現象があってもタグ30に少しでも多くのエネルギが伝えることが可能となり、読取不良を最低限に抑える。また要求信号に用いる電磁波として、円偏波の電磁波を用いることで、電磁波の回込みを向上させ、かつタグ30が電磁波の偏波方向に依存しなくなるようにして、密集状態のタグ30を、欠落無く励起させ、要求信号に応答させる。これによって各タグ30が応答信号を送信し、この応答信号を受信することによって、リーダ31が各タグ30から情報を取得する。
またリーダ31が、要求信号を連続的に放射する場合には、その要求信号の回り込みが少なくなり、一部の特定のタグ30だけが応答する状況を作りやすくなってしまう。そこでリーダ31が、要求信号を一定時間間隔、たとえば250msec間隔で、間欠的に放射させることにより、チップの動作特性に於ける励起均一化を促し、特定のタグ30だけがリーダ31からの要求信号を独占して受信する状況を作りにくくし、なおかつ電磁波が回込みしやすい環境を作ることで、すべてのタグ30が欠落無く励起される状況を作ることができる。
また読取装置61は、たとえばベルトコンベアによって実現される搬送台68を備えている。搬送台68は、試験管ラック55を搭載可能であり、搭載される試験管ラック55を、筐体63外の積降位置69と読取位置66とにわたって往復するように、搬送する搬送装置である。この搬送台68は、試験管ラック55をそのまま搭載し、各真空採血管12を、その一端面であるキャップ52の端面52aが同一平面上に配置され、かつこの端面52aが上方を向く同一の姿勢に保持して搬送する。
この搬送台68は、積降位置69で試験管ラック55が搭載され、たとえば筐体63に設けられる読取ボタン70が操作されると、試験管ラック55を読取位置66まで変位させ、再び積降位置69に戻る搬送経路を辿るように、試験管ラック55を往復変位させる。したがって各真空採血管12も、同様の搬送経路を辿るように搬送される。このときの搬送速度は、たとえば毎秒1cm程度の低速度である。
リーダ31は、この搬送経路の中途部にある読取位置66で、搬送される各真空採血管12に装着されたタグ30に対向するように設けられていることになる。このリーダ31は、搬送経路を経て搬送される各真空採血管12に装着されるタグ30から、順次情報を読取る。このように読取装置61では、各真空採血管12を搬送台68で搬送することによって、各タグ30とリーダ31とを相対変位させならが、リーダ31によって、各タグ30の情報が読取られる。
また通信手段67は、LAN(Local Area Network)およびインターネットなどの通信ネットワークを介してサーバ62に接続されており、リーダ31によってタグ30から読取られた情報を受取り、サーバ62に送信する。また読取装置61には、たとえば筐体63に本数表示部71が設けられており、試験管ラック55を1往復させる1回の読取操作で、リーダ31によってタグ30から情報が読取られた真空採血管12の本数が表示される。したがって試験管ラック55に収容されている真空採血管12の本数と、本数表示部71に表示される本数とを照合し、読取不良が生じていないか、操作者が容易に把握することができる。
読取装置61とサーバ62との間は、LAN72a〜72d、ルータ73a,73b、インターネット74などを用いて構成される通信ネットワーク75を介して接続される。サーバ62は、読取装置61で、各タグ30から読取られた情報を、各タグ30毎に識別して記憶する。したがってサーバ62は、たとえば表1に示すように、真空採血管12に収容される血液毎に、その血液に関する情報を整理してデータベースを作成し、格納することによって、これらの情報を、必要に応じて取出せるように管理する。図10および図11には、1つのサーバ62に対して1つだけ読取装置61が接続される状態を示しており、このように1つのサーバ62に対して1つだけ読取装置61が接続される構成でもよいが、このような通信ネットワーク75を介して接続する構成では、1つのサーバ62に対して複数の読取装置61を接続する構成とすることが可能である。
表1は、血液に関する情報の一例を示す表である。表1には、血液に関する情報が、番号(RF‐ID No.)、血清内容、サンプル日、保存温度、入庫日である例を示しているが、これに限定されるものではない。
Figure 0005036342
各真空採血管12に収容される血液は、試験管ラック55毎、たとえば貯蔵庫で−30℃〜−120℃の温度下で保管され、必要に応じて再検査される。再検査の結果は、タグ30に保持される。このような再検査などによって、タグ30に保持される情報は、更新される場合がある。したがって定期的に、貯蔵庫から取出してまたは貯蔵庫内で、各タグ30から情報が読取られる。このような定期的な情報確認にあたって、血液に悪影響を与えないように迅速にタグ30から情報を読取るために、各真空採血管12を試験管ラック55に収容したまま、密集状態にある各タグ30からリーダ31によって情報を読取る必要があり、本実施の形態のタグ30が用いられ、読取装置61で情報が読取られる。
読取装置61は、試験管ラック55に収容される各真空採血管12に装着されるタグ30から情報を一括して読取り、その情報を表す信号を、たとえばTCP/IPのパケット信号に変換して、サーバ62に送信する。このとき、通信経路上での盗聴や改ざんなどを防止するため、読取装置61は、読取った情報をIPSecなどのプロトコルを用いて暗号化し、この暗号化した情報を表す信号をTCP/IPパケット信号に変換して送信する。サーバ62は、読取装置61から送信されてくる読取装置61からの信号を受信する。この信号は、暗号化された情報を表しているので、信号受信後、サーバ62は、情報を復号化し、復号化した情報をデータベース化して管理する。
従来のRFIDシステムでは、読取装置は、RS−232Cなどのシリアルインタフェイス経由でパーソナルコンピュータなどの管理端末と接続されていたので、1つの読取装置に、専用の管理端末が必要になっていた。したがって複数台の読取装置がある場合には、管理端末も複数台必要となり、多額の設備投資が必要であった。また、各読取装置により収集された情報は、それぞれの管理端末に分散して格納されてしまうため、データの一元管理ができなかった。これに対し、本発明では、複数の読取装置61を、通信ネットワーク75経由で1台のサーバ62に接続することが可能であり、各読取装置61で取得された情報を、1台のサーバ62で管理することができる。したがって導入設備の軽減、コスト削減、および情報の一元管理が可能となる。
図6〜図11を参照した説明では、図5に示すアンテナ素子11がループアンテナであるタグ30が用いられる構成を例に挙げたけれども、このタグ30に代えて、図1〜図4に示すアンテナ素子11がダイポールアンテナであるタグ30が用いられる構成であっても、同様の効果を達成することができる。またループアンテナおよびダイポールアンテナ以外のアンテナをアンテナ素子として有するタグであっても、シート体10を備えるタグが用いられる構成であれば、同様の効果を達成することができる。
図12は、本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を示す平面図である。図13は、図12のタグ30を示す断面図である。図12および図13のタグ30は、図5を参照して説明したタグ30と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図12および図13の2つのタグ30は、同一の構成であるが、以下の説明での理解を助ける目的で、左側のタグ30のアンテナ素子11およびIC17には、添え字「a」を添えて示し、右側のタグ30のアンテナ素子11およびIC17には、添え字「b」を添えて示し、文章中において、識別が必要な場合には添え字を用いて識別し、識別が不要な場合は、添え字を用いることなく説明する。
図12および図13のタグ30では、基材18およびシート体10は、環状ではなく、正方形板状である。アンテナ素子11は、略円環状のループアンテナであって、その軸線が基材18およびシート体10の中心を通るように設けられる。その他の構成は、図5のタグ30と、同一である。このような図12および図13のタグ30も、図1〜図11のタグ30と同様の通信改善効果を得られ、図1〜図11のタグ30と同様に、真空採血管12のキャップ52に装着して用いることができる。この場合、採血針は、アンテナ素子11を避けた位置で、タグ30を挿通するようにして、キャップ52に刺入される。
本件発明者らは、本発明の通信改善効果を確認するために、2つのタグ30が、図12および図13のように、並べられる状態を想定し、シミュレーションによって、通信改善効果を確認した。2つのタグ30は、各アンテナ素子11が同一平面上に同一方向を向けて配置されるように、並べて設けられている。各タグ30において、アンテナ素子11のループの軸線はタグ30の厚み方向に平行であり、各タグ30は、このアンテナ素子11のループの軸線が互いに平行になり、このアンテナ素子11のループの軸線と垂直な方向に並べて設けられる。各タグ30同士は、シート体10の一側面同士が互いに当接するように配置されている。このように2つのタグ30が並べられる状態は、図8を参照して説明した、タグ30が試験管ラック55に収容される各真空採血管12に装着された状態と同様に、密集状態に相当する。
図14は、シート体10を備えている2つのタグ30が、図12および図13のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。図15は、シート体10を備えていない2つのタグが、図12および図13のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。図14および図15には、周波数とSパラメータ値の関係を示す。Sパラメータ値の単位はdBであり、値の大きさを相対比較している。
反射減衰強度S11は、反射電力の割合であって、図12および図13に示すように2つのタグ30が並べて設けられる場合、いずれか一方、たとえば左側(または右側)のタグ30のIC17a(またはIC17b)からアンテナ素子11a(またはアンテナ素子11b)に供給された電力のうち、左側(または右側)のタグ30のアンテナ素子11a(またはアンテナ素子11b)で反射された電力の割合を表す。反射減衰強度S11は無線通信に利用される周波数帯においては小さい方がよい。透過減衰強度S21は、アンテナ素子11間(IC17間)を伝播した電力の割合であって、図12および図13に示すように2つのタグ30が並べて設けられる場合、いずれか一方、たとえば左側(または右側)のタグ30のIC17a(またはIC17b)からアンテナ素子11a(またはアンテナ素子11b)に供給された電力のうち、右側(または左側)のタグ30のIC17b(またはIC17a)に伝わった電力の割合を表す。一方のIC17から他方のIC17に電力が伝わる状態を、本発明では結合という。
図13および図14には、左側のタグ30のIC17aで給電した場合の反射減衰強度S11および透過減衰強度S21を例に挙げて示すが、2つのタグ30が同一の構成であるので、右側のタグ30のIC17bで給電した場合の反射減衰強度および透過減衰強度も、同一の値となる。また「単体コイルS11」は、タグ30が、単体で自由空間に存在する場合の「反射減衰強度S11」に相当する値を表している。
表2は、図14および図15に結果を示すシミュレーションにあたって設定した各層の材料特性値を示す。各材料特性値は、2.4GHzの周波数における値である。
Figure 0005036342
このシミュレーションでは、アンテナ素子11としてループアンテナが用いられる2つのタグ30を、図12、図13のように近接して並べた状態を想定し、各タグ30のアンテナ素子11間の結合特性を評価している。図14は、タグ本体33が、図12、図13のように、正方形状のシート体10によって部分的に覆われる場合のシミュレーション結果を示し、図15は、シート体10を用いていない場合のシミュレーション結果を示す。シミュレーションにあたり、シールド層13は、塩素化ポリエチレン100(部)にカルボニル鉄530(部)を加えて混練してシート化して作成した。このシールド層13は、同軸管法で測定した材料特性値は、2.4GHzにおいて複素比誘電率の実数部ε’が12.31でありかつ誘電率損失項tanδε=0.07、複素比透磁率の実数部μ’が3.0でありかつ透磁率損失項tanδμ=0.43であった。シミュレーションでは、この材料特性値を用いた。
図15に示すとおり、シート体10が無い場合、2つのアンテナ素子11を近づけて配置すると、反射減衰強度S11および透過減衰強度S21を示す各放物線が双峰状になり、無線通信に用いられる電磁波の周波数(以下「通信周波数」という)の前後にピークを有することになり、通信周波数での通信特性は低下する。これはアンテナ素子11同士が密結合し、アンテナ特性が低下していることを示す。また反射減衰強度S11が双峰状であることは、通信周波数で共振していないことを示す。これに対して図14に示すように、シート体10を有するタグ30では、双峰性が消えて、通信周波数またはその付近にピークを有する単峰状の通信特性が得られる。反射減衰強度S11が単峰状となることによって、ピークとなる周波数を通信周波数に合わせるように調整し、共振調整することができる。また通信周波数における透過減衰強度S21は、双峰状になる図15の場合と比べて小さくなっているが、隣接するタグの干渉および隣接するタグとの結合を示す双峰性を消して単峰状にすることが重要であり、好適な結果が得られている。このようにシート体10を用いることによって、通信特性を改善することができる。このメカニズムは、あくまでも推測ではあるが、シート体10による電磁波の放射パターン変更、シールド層による波長短縮によるアンテナ動作の変更や、シールド層の透磁率や損失成分による影響などが考えられる。いずれにしても、シート体10によって通信環境が改善されることは明らかである。特に電界型のアンテナ素子を用いる無線通信における通信改善に対して、磁性を有するシート体10の効果的であることを確認したことは、1つの知見である。
この近くに存在する2個のアンテナ素子11(タグ30)は、前述のように、密集状態のタグ30の読取りをモデリングしたものであり、互いのアンテナ素子11が通信妨害体となり、特に結合による影響が懸念されている。本発明のシート体10をアンテナ素子11に積層することにより、アンテナ素子11同士の結合を緩和できる可能性を有することを見出したものである。本例は、アンテナ素子11と通信妨害体の間にシート体10を配置するのではなく、シート体10が、アンテナ素子11と通信妨害体間以外のアンテナ素子11近傍に配置された例となる。
図14および図15には、図12および図13に示すタグ30についてのシミュレーション結果を示すが、図5のように円環状のシート体10が用いられる環状のタグ30であっても、同様の通信改善効果が得られる。したがって前述のような真空採血管12に収容される血液に関する情報の管理のために、タグ30を好適に用いることができる。
図16は、本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を示す平面図である。図16のタグ30は、図12および図13を参照して説明したタグ30と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図12および図13の2つのタグ30は、アンテナ素子11がループアンテナである構成であったけれども、図16のタグ30は、アンテナ素子11として、図2のタグ30と同様に、ダイポールアンテナが用いられる。その他の構成は、図12および図13のタグ30と、同一である。このような図16のタグ30も、図1〜図15のタグ30と同様の通信改善効果を得られ、図1〜図15のタグ30と同様に、真空採血管12のキャップ52に装着して用いることができる。この場合、採血針は、アンテナ素子11を避けた位置で、タグ30を挿通するようにして、キャップ52に刺入される。
本件発明者らは、2つのタグ30が、図16のように、並べられる状態についても、シミュレーションによって、通信改善効果を確認した。2つのタグ30は、各アンテナ素子11が同一平面上に同一方向を向けて配置されるように、並べて設けられている。各タグ30において、アンテナ素子11が延びる円弧の軸線はタグ30の厚み方向に平行であり、各タグ30は、このアンテナ素子11の軸線が互いに平行になり、このアンテナ素子11の軸線と垂直な方向に並べて設けられる。各タグ30同士は、シート体10の一側面同士が互いに当接するように配置されている。このように2つのタグ30が並べられる状態は、図8を参照して説明した、タグ30が試験管ラック55に収容される各真空採血管12に装着された状態と同様に、密集状態に相当する。
図17は、シート体10を備えている2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、反射減衰強度を示すグラフである。図18は、シート体10を備えている2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、透過減衰強度を示すグラフである。図19は、シート体10を備えていない2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、反射減衰強度を示すグラフである。図20は、シート体10を備えていない2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、透過減衰強度を示すグラフである。図17〜図20には、周波数とSパラメータ値の関係を示す。Sパラメータ値の単位はdBであり、値の大きさを相対比較している。また図16の場合も、2つのタグ30が同一の構成であるので、左側のタグ30のIC17aで給電した場合の反射減衰強度S11および透過減衰強度S21を例に挙げて示す。
図17〜図20に結果を示すシミュレーションにあたって、各層の材料特性値は、基材18の層厚が1.0mmになること以外は、表2に示す値と同一の値を想定した。この場合も、各材料特性値は、2.4GHzの周波数における値である。
このシミュレーションでは、アンテナ素子11としてダイポールアンテナが用いられる2つのタグ30を、図16のように近接して並べた状態を想定し、各タグ30のアンテナ素子11間の結合特性を評価している。図17、図18は、タグ本体33が、図16のように、正方形状のシート体10によって部分的に覆われる場合のシミュレーション結果を示し、図19、図20は、シート体10を用いていない場合のシミュレーション結果を示す。
図19、図20に示すとおり、シート体10が無い場合、2つのアンテナ素子11を近づけて配置すると、反射減衰強度S11および透過減衰強度S21を示す各放物線が双峰状になり、無線通信に用いられる電磁波の周波数(以下「通信周波数」という)の前後にピークを有することになり、通信周波数での通信特性は低下する。これはアンテナ素子11同士が密結合し、アンテナ特性が低下していることを示す。これに対して図17、図18に示すように、シート体10を有するタグ30では、双峰性が消えて、通信周波数にピークを有する単峰状の通信特性が得られる。このようにシート体10を用いることによって、通信特性を改善することができる。このメカニズムは、あくまでも推測ではあるが、シート体10による電磁波の放射パターン変更、シールド層による波長短縮によるアンテナ動作の変更や、シールド層の損失成分による影響などが考えられる。いずれにしても、シート体10によって通信環境が改善されることは明らかである。
この近くに存在する2個のアンテナ素子11(タグ30)は、前述のように、密集状態のタグ30の読取りをモデリングしたものであり、互いのアンテナ素子11が通信妨害体となり、特に結合による影響が懸念されている。本発明のシート体10をアンテナ素子11に積層することにより、アンテナ素子11同士の結合を緩和できる可能性を有することを見出したものである。本例は、アンテナ素子11と通信妨害体の間にシート体10を配置するのではなく、シート体10が、アンテナ素子11と通信妨害体間以外のアンテナ素子11近傍に配置された例となる。
このようにアンテナ素子11としてダイポールアンテナを用いるタグ30の場合も、アンテナ素子11としてループアンテナとして用いるタグ30の場合と同様に、2つのタグ30が近づけて配置される場合の通信改善効果が得られている。
図15、図19、図20に示すシミュレーションの結果から明らかなように、同一の周波数で通信する2つのタグ30が隣接して配置される場合、アンテナ素子11の構成に拘わらず、シート体10がなければ、タグ30同士の結合が生じ、共振周波数が2つに分かれてしまう。この場合、2つの共振周波数が、本来の通信周波数に比べて低い周波数と高い周波数とに現れてしまうので、本来の通信周波数によって、リーダ31と通信することができなくなってしまう。複数のタグ30が密集状態にある場合、シート体10を備えていなければ、これと同様のタグ30同士の結合がいたるところで生じることになり、リーダ31による読取不良が多発することになる。
これに対して、図14、図17、図18に示すシミュレーションの結果から明らかなように、同一の周波数で通信する2つのタグ30が隣接して配置される場合であっても、シート体10をタグ30に設けることによって、アンテナ素子11の構成に拘わらず、タグ30同士の結合を防ぎ、共振周波数が2つに分かれてしまうことを防ぐことができる。このようにシート体10を用いることによって、共振周波数の分離が解消され、本来の通信周波数またはその付近に、共振周波数が留められ、リーダ31と好適に通信することができる。したがって複数のタグ30が密集状態にある場合でも、シート体10を備えるタグ30であれば、リーダ31によって、読取不良を生じることなく情報を読取ることができる。このように密集状態のタグ30の通信改善を実現することができる。
図1〜図5、図12、図13、図16のタグ30では、アンテナ素子11として、ダイポールアンテナ、ループアンテナが用いられたけれども、アンテナ素子11として、これら以外のアンテナ、たとえばモノポールアンテナが用いられる構成であってもよい。このようなダイポールアンテナ、ループアンテナ以外のアンテナが用いられるタグ30であっても、タグ30同士の互いの結合防止効果、通信妨害体による悪影響の排除効果が得られ、同様の優れた通信改善効果が得られる。
図21は、図1〜図4を参照して説明したタグ30が装着される2本の真空採血管12を示す平面図である。図22は、シート体10を備えていないタグ80が装着される2本の真空採血管12を示す平面図である。図21および図22には、理解を容易にするために、アンテナ素子11,81およびIC17,82に、斜線のハッチングを付して示す。図21および図22では、共に、アンテナ素子としてダイポールアンテナを用いている。本発明のタグ30では、シート体10による波長短縮効果によって、アンテナ素子11が小形化される。このアンテナ素子11の小形化もまた、タグ30が密集状態にある場合の読取効率向上に寄与する。
図21に示すように、タグ30が前述のような試験管ラック55に収容される各真空採血管12は、試験管ラック55の構成によって決まるピッチで配置される。タグ30がこのような真空採血管12に装着される場合、タグ30のアンテナ素子11が小形化されているので、互いに隣接するアンテナ素子11間の距離L11は、大きくなる。
図22に示すように、シート体10を備えていないタグ80を用いる場合、ダイポールアンテナから成るアンテナ素子81とIC82とを備える構成であっても、シート体10による波長短縮効果が得られないので、アンテナ素子81は小形化されない。この場合、アンテナ素子81は、真空採血管12のキャップ52の端面52aではなく、真空採血管12の外周面を外囲するように設けられ、互いに隣接するアンテナ素子81間の距離L81は、小さくなってしまう。このために隣接するタグの影響を受けやすくなる。さらにダイポールアンテナを図22の様に曲げて使用するだけで、共振周波数のシフトが起こるため、シート体10を用いなければ、リーダ側の通信周波数との乖離がより強く生じてしまう。
このように複数の真空採血管12を密集して配置した場合、キャップ52の端面52aに装着可能な小形のタグ30では、真空採血管12を外囲するようにアンテナ素子81が設けられるタグ80と比較して、隣接するアンテナ素子11までの距離L11を大きくすることができる。つまり、L11>L81となる。これによって隣接するタグ30同士の影響を小さく抑えることが可能になり、これによっても通信改善効果が得られる。
このようなアンテナ素子11の小形化によって距離L11を大きくすることができる効果は、図1〜図4のタグ30だけではなく、図5、図12、図13、図16に示すタグ30でも、同様に達成することができる。またアンテナ素子11として、モノポールアンテナが用いられるタグ30の場合も、同様に、アンテナ素子11の小形化によって距離L11を大きくできる効果を達成することができる。屈曲させたダイポールアンテナ、モノポールアンテナおよびループアンテナは、前記距離L11を大きくすることができるので、真空採血管12に装着するタグ30のアンテナ素子11として、適しているといえる。
本発明の実施例で用いたアンテナは電界型アンテナである。本発明では、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、ループアンテナおよびこれらにリアクタンス構造部を装荷したアンテナの少なくとも1つを含むアンテナ素子であるとしている。ループアンテナは全周で共振した時に磁界型、半周で共振したときに電界型として機能する。電界型アンテナの密集対応に磁性材料を用いられることはほとんど検討されなかった。電界を扱うために誘電材料を用いられることが常識であった。しかし、電磁波は電界と磁界を有しているため、誘電特性に合わせて磁気特性を有する材料を用いることでより電磁波を好適に通信できるように操作できることを見出した。とくに密集時のアンテナ同士の結合対策(共振周波数の双峰性を抑制する手段)に磁性材料が有効であることを見出したのは1つの知見である。
図23は、図1〜図4を参照して説明したタグ30を金属板85に貼着した状態で、アンテナ素子11の近傍に形成される電界を示す断面図である。図24は、シート体10を介在させずに、アンテナ素子11およびICタグ17を金属板85の近傍に配置した状態で、アンテナ素子11の近傍に形成される電界を示す断面図である。図23は、理解を容易にするために、タグ30の構成のうち、アンテナ素子11、IC17およびシールド層13以外の構成を省略して示す。また図23および図24には、理解を容易にするために、アンテナ素子11を直線状に展ばすように展開して示す。以下、図23および図24において、アンテナ素子11の左側の端部を一端部11aとし、右側の端部を他端部11bとし、金属板85における各部分85a,85bのうち、左側の部分を一方部分85aとし、右側の部分を他方部分85bとする。金属板85は、通信妨害体となる。
アンテナ素子11の近傍に導電性材料から成る物体である金属板85が存在しない自由空間では、アンテナ素子11の両端部11a,11bの電位差によって生じる電界が、そのまま空間に広がり、電界の強度変化によって磁界が形成され、さらにその磁界の強度の変化によって電界が形成される。アンテナ素子11は、このような電界および磁界の形成現象が順次連続的に繰返される原理を利用して、電磁波を送信することができる。またアンテナ素子11は、送信原理と逆の原理によって、共振周波数の電磁波を受信することができる。
図24に示すように、シート体10を介在させずに、アンテナ素子11の近傍に金属板85が存在する場合、アンテナ素子11の両端に生じる電界は、金属板85から受ける電気的な影響を無視することができず、周波数にも依存するがMHz帯以上の周波数域では短絡(ショート)現象が生じ、結果的にアンテナ素子11の持つ入力インピーダンスがそれにより低下してしまうことになる。
つまりアンテナ素子11の両端部11a,11bに電位差が生じる状態では、アンテナ素子11の両端部11a,11bが、正または負にそれぞれ帯電された状態となり、これによってアンテナ素子11の両端部11a,11bと、金属板85におけるアンテナ素子11の両端部11a,11bとそれぞれ対向する部分85a,85bとの間に電界が形成され、アンテナ素子11の両端部11a,11bと正負反対に帯電された状態となる。アンテナ素子11には、ICによって交番電圧が印加され、両端部11a,11bは、正または負が交互に入替わるように帯電され、これと同期して金属板85における各部分85a,85bも、正または負が交互に入替わるように帯電されることになる。
微小時間について観察すると、アンテナ素子11の他端部11bから一端部11aに向かう電流I11が生じるとともに、金属板85内に、一方部分85aから他方部分85bに向かう電流I85が生じる。このように逆向きの電流が生じる。前述のようにアンテナ素子11には、ICによって交番電圧が印加されるので、図24に示す向きの電流が生じる状態と、図24に示す向きと反対向きの電流が生じる状態とが交互に発生する。周波数が高くなると、アンテナ素子11の一端部11aと金属板85の一方部分85aとの間、およびアンテナ素子11の他端部11bと金属板85の他方部分85bとの間に、あたかも電流I0が生じているのと等価の状態となり、アンテナ素子11の一端部11aと金属板85の一方部分85aとの間、およびアンテナ素子11の他端部11bと金属板85の他方部分85bとの間が、短絡しているのと等価の状態になる。いわば高周波的に短絡した状態となる。この高周波的に短絡する現象は、コンデンサに高周波の電圧を印加した場合に、通電しているのと同様の状態になることと同じ現象である。
このような高周波的な短絡が生じると、アンテナ素子11と金属板85とによって閉回路が形成され、金属板85が近傍に存在しない場合に比べて電流値が増加する。つまりアンテナ素子11の近傍に金属板85がない場合に比べて、入力インピーダンスが低下する。入力インピーダンスをZとし、電圧値をVとし、電流値をIとすると、入力インピーダンスZは、Z=V/Iとなり、電流値Iが増加することからも、入力インピーダンスZが低下していることから確認されている。この入力インピーダンスZは、アンテナ素子11と金属板85とによって形成される回路の入力インピーダンスであるが、回路を構成するアンテナ素子11の入力インピーダンスでもある。したがってアンテナ近傍に金属板85が存在すると、アンテナ素子11の入力インピーダンスが低下してしまう。
これに対して図23に示すように、シート体10は、電界型のアンテナ素子11と金属板85との間に設けると、アンテナ素子11の両端部11a,11bが帯電されることによって、金属板85との間に形成される電界の強度が小さくなる。したがって高周波的な短絡回路の形成が弱まり、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下が抑制される。入力インピーダンスの低下抑制は、アンテナ素子11に生じる電流の電流値が、通信妨害部材12が存在しない場合に近い小さい値となることから確認されている。このようにシート体10を用いることによって入力インピーダンスの低下を抑制することができ、通信環境を改善することができる。
図17および図24では、理解を容易にするために、金属板85を例に挙げて説明したけれども、金属板85に代えて、他の導電性材料から成る物体にタグ30が貼着される場合であっても、同様の動作となるタグ30の装着される物品12が、金属などの導電性材料から成る場合、また血液などの導電性を有する被収容物が収容される容器である場合にも、シート体10によって、入力インピーダンスの低下が抑制され、通信改善効果が得られる。したがって真空採血管12に装着されるタグ30がシート体を備えているので、このタグ30は、真空採血管12に収容される血液の影響を受けないようにして、アンテナ素子11の入力インピーダンス低下が防がれる。
本件発明者らは、シート体10によるアンテナ素子11の入力インピーダンスの低下防止効果を確認するためにシミュレーションを行った。シミュレーションに用いた構成は、図1の構成であり、物品12が金属から成る場合を想定した。つまり金属製の物品12近傍にダイポールアンテナであるアンテナ素子11がある場合に、アンテナ素子11と物品12との間にシート体10を挟込む状態で、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下防止度合を電磁界シミュレータ(Sonnet)により計算した。
シールド層13および基材18は、表1に示す構成である。シールド層13は、前述の実施例1と同様の構成であり、同様の材料特性値μ’、μ”、ε’、ε”を有している。
Figure 0005036342
導体層14は、金属板である銅(Cu)板とした。グラフなどは省略するが、シールド層13の材料特性値を950MHz帯の複素比透磁率の実数部μ’が50でありかつ透磁率損失項tanδμ=0.1である場合とした放射効率のシミュレーション結果の一例を述べると、入力インピーダンスは13Ω(1GHzの場合、リアクタンスがゼロの周波数)、放射効率は8%(利得−5.1dB)となった。
図25は、アンテナ素子11としてダイポールアンテナを用いる場合のシート体10の効果を確認するためのさらに他のシミュレーションにおいて想定したタグ30の構成を示す断面図である。このシミュレーションでは、アンテナ素子として直線状のダイポールアンテナを用い、シート体10は、シールド層13だけを有し、アンテナ素子11に基材18に相当する誘電体層を介してシート体10(シールド層13)を設け、シート体10(シールド層13)がアンテナ素子11と金属板85との間に配置されるように、シート体10(シールド層13)に金属板85を直接積層した構成について、通信状態をシミュレーションした。
図26は、図25の構成によるシミュレーション結果を示し、周波数とアンテナ素子11の入力インピーダンスの実数部(Real)および虚数部(Imaginary)との関係を示すグラフである。この入力インピーダンスの虚数部がゼロになる周波数が共振周波数(図26では953MHz)を示す。図27は、図25の構成によるシミュレーション結果を示し、指向性利得を示すグラフである。図28は、図25の構成によるシミュレーション結果を示し、絶対利得を示すグラフである。このシミュレーションにおいても、シールド層13は、表3に示す実施例1の構成とし、基材18は、表3の構成とした。
このシミュレーションでは、基材18に相当する誘電体層として、950MHz帯の複素比誘電率の実数部ε’が1.1でありかつ誘電率損失項tanδε=0.01である層厚1mmの誘電体層(たとえば発泡スチロールなどの発泡体層)を想定し、950MHz帯の複素比誘電率の実数部ε’が100でありかつ誘電率損失項tanδε=0.01、複素比透磁率の実数部μ’が50でありかつ透磁率損失項tanδμ=0.01、導電率10−4[S/m]であるシールド層13を想定した。アンテナ素子11側に誘電体層(基材18)が配置され、この誘電体層に、アンテナ素子11と反対側でシート体10としてシールド層13が積層されている。このようなシミュレーションの結果、入力インピーダンス(実数部)は、入力インピーダンスの虚数部(リアクタンス)がゼロの周波数である953MHzにおいて30Ωとなり、指向性利得は、6.696dBi(図22のθ(Theta)=0の場合の値)、絶対利得は、0.266dBi(図23のθ(Theta)=0の場合の値)となり、放射効率は22.53%となった。
これらのシミュレーションの結果からわかるように、シート体10は、電界型のアンテナ素子11と金属板85などの通信妨害体との間に設けることによって、通信妨害体によるアンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することができる。シミュレーションでは、アンテナ素子11と通信妨害体との間にシート体10が介在される構成であったけれども、シート体10は、アンテナ素子11と通信妨害体との間でなくても、アンテナ素子11に対して通信方向Aとは異なる方向に通信妨害体が存在する場合、アンテナ素子11の近傍に設ければ、同様にアンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することができる。
シート体10を用いなければ、電界型のアンテナ素子11は、通信妨害体の近傍では、ほとんど動作しなくなり、無線通信に用いることができなくなる。この理由として、電界型のアンテナ素子11の入力インピーダンスが大幅に小さくなることが挙げられる。電界型のアンテナ素子11の入力インピーダンスが小さくなると、電界型のアンテナ素子11を用いて通信するIC17の入力インピーダンスと乖離し、電界型のアンテナ素子11とIC17との間で、信号を受渡しすることができなくなってしまう。
シート体10は、アンテナ素子11が通信妨害体の近傍に配置されるときに、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することができる。電界型アンテナであるため誘電率を大きくしたいところであるが、一般に複素比誘電率の実数部ε’と虚数部ε”は連動するため、複素比誘電率の虚数部ε”も大きくなってしまう。この複素比誘電率の虚数部ε”が必要以上に大きくなると導電率が上がってしまい、短絡を進める方向に寄与することになる。つまり誘電率の実数部ε’には上限があることになる。本発明では誘電率以外に透磁率を制御することを手段として選択し、入力インピーダンスを効率的に回復させたものである。つまり誘電率(ε’)と透磁率(μ’)を併用して、導電性を上げすぎないことによって、通信改善効果を得ることができている。したがってシート体10を用いることによって、電界型のアンテナ素子11を用いて、通信妨害体の近傍であっても、好適に無線通信することができる。
具体的には、アンテナ素子11がダイポールアンテナである場合、ダイポールアンテナ
のたとえば中央部にIC17を接続させるが、IC17の入力インピーダンスは、たとえば40Ωであったり、50Ωであったりする。実装時に、この入力インピーダンスの整合を取るには、少なくともアンテナの入力インピーダンスが10Ω程度必要となる。この様に、通信妨害部材が近くに存在したり、またはタグが密集状態にあってもアンテナの入力インピーダンスをIC17との調整可能範囲に収めることが可能になることが本発明の1つの効果である。
アンテナ素子11に金属を近づけると、レジスタンスが下がり、入力インピーダンスも小さくなってしまうためである。計算例を示すと、シート体10を用いない場合、アンテナ素子11と通信妨害体との間に、0.53mm厚の誘電体のみあるとすると、入力インピーダンスは0.85Ωとなる。この数字はたとえ40Ωに比べて小さすぎる。タグ30では、構成の簡略化のために、アンテナ素子11とIC17とは直づけされる。途中に入力インピーダンス調整用の回路は設けられない。したがって前記入力インピーダンスの差は致命的である。これに対してシート体10を設けることによって、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することができる。
電界型のアンテナ素子11を用いるにあたって、通信妨害体などの通信妨害体に対する課題に対して、従来の技術では磁性を有するシートを用いることは検討されていなかった。この理由は、電界型のアンテナ素子では電界を主に利用するため、電界に対しては当然に効果がある誘電率が議論され、透磁率の効果は十分に着目されなかった。つまり透磁率を有するシート体10による入力インピーダンス回復効果は知られていなかった。
透磁率を利用した(誘電率も併用することになる)入力インピーダンス回復効果は大きく、通信妨害体の近傍に配置されることによるアンテナ素子11の入力インピーダンスが0Ω近くまで落ち込んだものが、シート体11の複素比透磁率の実数部μ’を10以上(高MHz帯または2.4GHz帯において)とすることで数10Ω付近まで回復する。これにより通信手段およびアンテナ素子11に接続されるIC固有の入力インピーダンス、たとえば、30Ωおよび50Ωと整合がとれることになり、まずアンテナ素子を含む共振回路として動作可能となる。
さらに電磁エネルギの減衰を抑えるため、エネルギ減衰中の磁界成分の発生に着目し、シート体10の複素比透磁率の調整によって、実数部μ’を大きくすることで磁界を集め、且つμ”を小さくすることで集めた磁界のエネルギが熱エネルギに変換しないようにする。このようにシート体10の複素透磁率を調整する場合、シート体10の複素比誘電率を調整する場合に比べて、電磁エネルギの減衰を抑える効果を得やすい。この理由は、磁界は発生源に近い程強くなるため、薄型シートであっても複素比透磁率を調整すれば、効果的に働くためである。
さらに電磁エネルギの損失を抑えることによって、アンテナ素子11のアンテナ特性としては、放射効率を大きくすることができる。放射効率η=10^((利得−指向性利得)/10)で表すことができる。指向性利得は、金属などの損失を含まない利得である。利得(通常Gainとだけ書かれている場合はこちらを指す。)は、損失を含んだ「いわば真の利得」といえる。計算結果、放射効率を良くする(上げる)ためには、損失を少なくすればよいことがわかった。また、アンテナの放射抵抗をRrad、損失抵抗をRlossとすると、放射効率η=Rrad/(Rrad+Rloss)である。Rradは無損失アンテナの入力インピーダンスのレジスタンスに相当するため、アンテナ素子11に金属を近づけてレジスタンスが下がると、放射効率が低下することになる。このため、アンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することで放射効率を大きくすることができる。
次に、電磁エネルギの損失であるが、シールド層13の複素比透磁率の虚数部μ”の数値が大きければその損失が大きくなり、結果的にアンテナ素子11の放射効率が低下する。複素比透磁率の透磁率損失項tanδμが1以下(高MHz帯または2.4GHz帯において)であると損失がやや少なくなり、複素比透磁率の透磁率損失項tanδμが0.5以下(高MHz帯または2.4GHz帯において)となれば、さらに電磁エネルギの損失が小さくなり、アンテナ素子11の放射効率を改善する。
さらにアンテナ素子11の長さは、シート体10の複素比誘電率および複素比透磁率による波長短縮効果の影響を受けるため、周波数の再調整が必要である。この波長短縮の影響を考慮するとシビアな製造条件が要求される。これを回避するためには、大きな数値をとる傾向にある複素比誘電率の実部をなるべく小さい値とすることが求められる。
シールド層13の複素比誘電率の実数部ε’は、アンテナ素子の大きさを決める波長短縮効果に複素比透磁率の実数部μ’と共に寄与する。複素比誘電率の実数部ε’を20以上とすることで、アンテナ素子11の大きさを約4.4分の1に短縮することができる。
シールド層13の複素比誘電率の虚数部ε”を300以下としている。
Figure 0005036342
ここでωは角周波数(ω=2πf)、ε0は真空の誘電率(8.8541×1012[F/m]、fは周波数[Hz]である。本発明のシールド層は導電性材料ではなく誘電性材料であるが、限界値としての導通を示す場合を知るため、導電性材料にて成り立つ上の式より計算すると、周波数が950MHzでは導電率σ≒15.9S/m(抵抗率ρ≒0.06Ωm)、周波数が2.4GHzでは導電率σ≒39.9S/m(抵抗率ρ≒0.02Ωm)が得られる。これら以下の導電率、これ以上の抵抗率を有していると概略考えてよい。
またアンテナ素子11として、ダイポールアンテナを用いることができる。これによって、簡単、小型な構成のダイポールアンテナを、通信妨害体の近傍で用いて無線通信することができる。
またシート体10には、シールド層13が設けられ、シールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比透磁率の実数部μ’と複素比透磁率の虚数部μ”がμ’≧μ”であり、好ましくは、複素比透磁率の実数部μ’が5以上でありかつ透磁率損失項tanδμ≦1であり、さらに好ましくは、複素比透磁率の実数部μ’が20以上でありかつ透磁率損失項tanδμ≦0.5である。またシールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比誘電率の実数部ε’が20以上である。さらにシールド層13は、無線通信に用いられる電磁波に対して、複素比誘電率の虚数部ε”が300以下である。これによってアンテナ素子11が通信妨害体の近傍に配置されるときに、通信妨害体よるアンテナ素子11の入力インピーダンスの低下を抑制することができるとともに、通信妨害体よる電磁エネルギの損失を抑制することができるシート体を実現することができる。
またシールド層13には、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属、磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料、またはそれが含有されている材料である。磁性を発現するための手法にとくに限定はないが、これらの材料を直接用いるか、結合材中に分散させるかの方向により実現される。この構成によって、前述の特性が得られるシールド層を形成することができる。したがって前述の優れた効果を達成するシート体10を実現することができる。
またシート体10は、導体層14を有しているので、アンテナ素子11の近傍に導電性材料から成る導体層14が存在する状態で、前述の無線通信に用いる電磁波の周波数に合わせて、シールド層13の複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”ならびに複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”が調整されている。これによってシールド層13の好適な特性を実現することができる。したがって通信妨害体の近傍で、さらに好適な無線通信を実現することができる。
またアンテナ素子11としてダイポールアンテナとシート体10を組合わせることにより、アンテナ素子11の小形化が実現できる。本シート体10の複素比透磁率の実数部μ’および複素比誘電率の実数部ε’の高さにより相まって、波長短縮効果が加わり、従来製品に比べて格段に小形化を達成することができる。ダイポールアンテナは線状で、カーブおよび折曲がりがあってもよく、全長がλ/2あればよい。たとえば950MHzでは、約15.8cm長であるが、これに本シート体による波長短縮効果が加わり、約3〜10cmの線状素子が可能となり、さらに曲折を加えることで2〜3cmのラベルにも収まるサイズが可能となる。さらに小形化することもでき、貼れる対象は広範囲に及ぶことになる。ダイポールアンテナ等のアンテナにリアクタンス構造部が組み込まれた設計となっていてもよい。またループアンテナにて磁界通信を部分的に利用する場合も、本発明のシールド層の効果を活用できることになる。
従来製品は、通信妨害体の近傍で動作するアンテナはパッチアンテナがある。ただし、パッチアンテナのサイズは一辺λ/2必要となり、たとえば950MHzでは、最大約15.8cm角の正方形状と大きくなり、具体的にはカードサイズには収まらず、タグとしても大きすぎる。パッチとグランド導体間の距離も一般にλ/16〜λ/64必要であり、小型、柔軟性を要求される用途には用いることができなかった。
図29は、本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を簡略化して示す斜視図である。図29は、シート体10などの厚みを省略して示す。図29に示すタグ30は、図1〜図4で説明したタグ30と類似の構成を有しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図1〜図4で説明したタグ30は、略C字状のアンテナ素子11を備える円環状のタグであったけれども、図29に示すタグ30は、直線状に延びるダイポールアンテナをアンテナ素子11として備え、このアンテナ素子11が、長方形状の基材18に設けられ、基材18に同様の長方形状のシート体10が積層される。このような直線状のダイポールアンテナを用いる構成のタグ30もまた、前述のような略C字状のダイポールアンテナを用いる構成のタグ30と同様の効果が得られ、密集状態で用いられて他のタグ30が通信妨害体となるような状況下であっても、リーダによる情報の読取が可能であるとともに、たとえば金属製の物品12など、タグ30が通信妨害体となる物品に装着されても、リーダによる情報の読取が可能である。
この図29に示すようなタグ30は、図1〜図4のタグ30と同様に、真空採血管12に装着して用いられてもよいが、物品12として、たとえば図30に示すような通信妨害体となる飲料品(理解を容易にするために物品の符号を付す)12の底部に貼着して、たとえば商品管理などの目的で用いることができる。飲料品12は、たとえば底部を下方に向けるなどの同一の姿勢で並べて箱詰めされるなど、密集状態で取扱われる場合がある。このような状態でも、リーダ31による情報の読取が可能である。
また図29に示すようなタグ30は、物品12として、たとえば図31に示すような通信妨害体となる基板などが多数用いられている電子装置(理解を容易にするために物品の符号を付す)12に内蔵するようにして、たとえば商品管理またはユーザ認証、盗難防止などの目的で用いることができる。電子装置12は、たとえば携帯電話装置である。このようにタグ30を電子装置12に内蔵するように設ける場合も、電子装置12が密集状態で取扱われたとしても、リーダ31による情報の読取が可能である。
またタグ30は、前述のように可撓性を有しているので、自在に変形させることができる。飲料品12の底部は、凹曲面状に形成されている場合があるが、このような場合でも、タグ30をその底部の形状倣わせて設けることが可能になる。したがってタグ30の装着場所の制限を少なくすることができる。
図32は、本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を簡略化して示す斜視図である。図32に示すタグ30は、図29で説明したタグ30と類似の構成を有しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図29で説明したタグ30は、アンテナ素子11としてダイポールアンテナが用いられたけれども、図32に示すタグ30は、アンテナ素子11としてモノポールアンテナが用いられる。ダイポールアンテナでは、アンテナ素子11のたとえば中央部に、つまりアンテナ素子11を構成する2つの素子片の間にIC17が設けられる構成であるけれども、モノポールアンテナは、前記2つの素子片の一方が、グラウンド板100に置き換えられる構成である。このようなモノポールアンテナを用いる構成のタグ30は、図29に示すタグ30と同様の効果が得られ、同様の用途に用いることができる。さらにダイポールアンテナを用いる場合よりもさらに小形化が可能である。
またシート体10は、前述のように難燃性が得られている。タグ30を電子装置12に内蔵する場合、そのタグ30には、難燃性を要求される場合がある。したがってタグ30は、このような難燃性が要求される用途にも好適に用いることができる。
またタグ30を電子装置12に内蔵する場合、タグ30が、電子装置12における発熱源の近傍で用いられる場合がある。シート体10として、熱伝導性に優れたシート体10を備えるタグ30を用いることによって、発熱源となる手段で発熱される熱を逃がすことができ、その発熱源となる手段の昇温を抑え、高温に晒されることによる性能低下を防ぐことができる。
またタグ30は、耐熱性および電気絶縁性を有している。耐熱性に関しては、特に自動車用途にて120℃および130℃での用いることがあり、その温度でも性能劣化することなく用いることができることが要求される。架橋材を添加し、結合材を架橋することでその耐熱性が実現できる。架橋の手段は問わないが、たとえば結合材の種類および架橋材を適宜に組合せることにより、それ以上の高温(たとえば200℃)の耐熱性を実現することももちろん可能である。さらに有機および無機系の絶縁性材料を結合材として、軟磁性金属粉を被覆することで、シート内に分散する軟磁性金属が直接接触することなくシート体10の電気絶縁性を向上させることができる。電気が導通するようではそれ自体に渦電流が発生し、磁気エネルギを減衰させてしまう。さらに回路およびメッキ筐体(グラウンド)が極近接して配置されるため、シート体10に導電性があればそれを介して導通してしまうことになり、動作に支障をきたすことになる。これらを防ぐためにシート体10には表面抵抗率として10Ω/□以上を達成している。
図33は、本発明の実施のさらに他の形態のリーダ31を示す平面図である。図34は、図33のリーダ31を備える読取装置61の一部を示す斜視図である。図34に示す読取装置61は、図10に示す読取装置61に代えて用いることができる装置であり、図10に示す読取装置61と類似しており、異なる点についてだけ説明する。図10の読取装置61が備えるリーダ31では、リーダ31のアンテナ素子の個数、配置は、特に制限がなく、任意の構成とすることができたけれども、図34の読取装置61が備える図33のリーダ31では、試験管ラック55における真空採血管12の収容本数と同数のアンテナ素子105が内蔵されている。
リーダ31の各アンテナ素子105は、たとえば円形のパッチアンテナであって、同一の仮想平面上に、各真空採血管12が試験管ラック55に収容された状態における各タグ30のピッチと同一のピッチで並んで設けられる。このようにリーダ31には、各タグ30と1対1に対応するように複数のアンテナ素子105が設けられている。
リーダ31は、読取位置66に配置される試験管ラック55の上端面に当接し、各タグ30に近づいた近接位置107と、試験管ラック55から離間し、各タグ30から遠ざかった離反位置108とにわたって変位可能に設けられている。したがってリーダ31は、読取位置66に配置される試験管ラック55に、近接および離反するように上下に変位可能に設けられ、読取装置61には、図示を省略するがリーダ31をこのように上下に変位させる駆動手段が設けられている。リーダ31が近接位置107にあるとき、リーダ31のアンテナ素子105が並ぶ仮想平面と、タグ30が並ぶ仮想平面とは、平行となる。
この読取装置61では、リーダ31が離反位置108にある状態で、積降位置69で試験管ラック55を搬送台68に搭載され、読取ボタン70が操作されると、試験管ラック55を積降位置69から読取位置66に変位させ、試験管ラック55を読取位置66に停止させる。この状態で、離反位置108から近接位置107に変位させ、再び離反位置108に戻すように、リーダ31を変位させる。リーダ31の変位速度は、たとえば毎秒1cm程度の低速度である。このようにリーダ31を上下に移動させながら、リーダ31によって、各タグ30から情報が読取られる。リーダ31の一往復が終了すると、試験管ラック55が、積降位置69まで搬送される。
このような構成の読取装置61を用いる場合にも、本発明に従うタグ30を好適に用いることができる。タグ30が本発明のようにシート体10を備えていない場合、リーダ31が近接位置107に配置されたときに、1対1で互いに対応するリーダ31のアンテナ素子105とタグ30とが、同軸に配置されるように厳密に位置合せされる必要があり、位置ずれを生じている場合、隣接するタグ30同士が影響しあい、リーダ31によってタグ30の情報を読取ることができなくなる。本発明のようにタグ30がシート体10を備える構成であれば、隣接するタグ30同士の影響を抑え、リーダ31のアンテナ素子105とタグ30とが、位置ずれを生じていても、リーダ31によってタグ30の情報を読取ることができる。
図35は、本発明の実施のさらに他の形態の読取装置61を簡略化して示す斜視図である。図35に示す読取装置61は、図34に示す読取装置61に代えて用いることができる装置であり、図34に示す読取装置61と類似しており、異なる点についてだけ説明する。図34の読取装置61は、固定設置形の装置であったけれども、図35の読取装置61は、作業者が手でリーダ31を変位させて用いるハンディ形の装置である。
図35に示す読取装置61は、通信手段が内蔵される読取装置本体110と、読取装置本体110に連結して設けられるリーダ31とを備えている。リーダ31は、図33に示すリーダ31と同様の構成である。図35に示す読取装置61は、作業者が、たとえば手で読取装置本体110を把持するなどして操作し、リーダ31を、図35に仮想線で示すように試験管ラック55の上端面に当接させ、各タグ30から情報を読取る。タグ30がシート体10を備え、前述のようにリーダ31のアンテナ素子105とタグ30との厳密な位置合わせが不要であるので、このように作業者が手でリーダ31を変位させるハンディ形の読取装置を実現することが可能である。このような読取装置61は、前述のような筐体63、搬送台68、リーダ31を上下に変位させる駆動手段などが不要であり、小形であり、操作性に優れ、かつポータビリティに優れた装置を実現することができる。また読取装置61とサーバ62とを接続する通信回線75として、無線LANを用いた回線とすることによって、読取装置61の操作性を向上することができる。
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。たとえばアンテナ素子11として、磁界型のアンテナ素子を用いて、効率を高くするようにしてもよい。また前述の実施の形態では、タグ30を装着する物品12の例として、真空採血管、飲料品、電子装置を挙げたけれども、タグ30は、その他にも様々な物品12に装着して用いることが可能である。たとえばシートまたはマットなどである枚葉状の物品12など、複数枚重ねて保管される物品12、ランダムな位置関係で密集状態になる衣類を含むクリーニング品などの物品12では、この物品12にタグ30を装着した場合、シート体10を用いなければタグ30同士の干渉がより起きやすくなる。これらのタグ30の干渉回避を含めた通信改善に、本発明のシート体10は有効である。また図10に示す読取装置61では、搬送台68を用いて試験管ラック55を移動させるように構成したが、反対に試験管ラック55を固定しておき、リーダ31側を移動させるように構成することもできる。
またトランスポンダの例としてタグを示しているが、たとえばカード型のトランスポンダにも、同様に実施することができる。またシート体10の積層構成は、前述の構成に限定されるものではなく、積層構成を変更するようにしてもよい。たとえばシールド層13に対して導体層14などと反対側に、物品接合層15と同様の構成を有するもう1つの接合層が設けられる構成であってもよい。このような接合層を設けることによって、シート体10をタグ本体33と積層するにあたって、タグ本体33とシート体10とを貼着することができる。
また難燃性を与えるための手段は、難燃剤を添加する構成に代えて、他の構成であってもよい。またシート体10に最低限必要な性能は、磁界を遮断する性能であり、その他の性能に関しては、必須要件ではなく、有していない構成であってもよい。また無線通信に用いる電磁波の周波数を、ラジオ波域に限定しないことも前述のとおりである。
その他にも、タグ30の形状および材料などの構成、また読取装置61および情報管理システム60の構成および動作について、この発明を逸脱しない範囲で種々に変形して実施できる。要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。
本発明の実施の一形態のタグ30の一部を示す断面図である。 タグ30の全体を示す平面図である。 シールド層13の内部構造を拡大して示す断面図である。 実施例1の材料特性値μ’、μ”、ε’、ε”の測定結果を示すグラフである。 本発明の実施の他の形態のタグ30全体を示す平面図である。 図5に示すタグ30が装着される物品12を、内部が見えるように一部切り欠いて示す正面図である。 物品12を拡大して示す平面図である。 真空採血管12が収容される試験管ラック55を簡略化して示す平面図である。 試験管ラック55を簡略化して示す平面図である。 通信装置32を備える情報管理システム60の読取装置61を簡略化して示す斜視図である。 情報管理システム60を示すブロック図である。 本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を示す平面図である。 図12のタグ30を示す断面図である。 図12および図13のように2つのタグ30が、近接して配置される場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 図12および図13に示すタグ30においてシート体10が設けられていない2つのタグが、同様に近接して配置される場合のシミュレーション結果を示すグラフである。 本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を示す平面図である。 シート体10を備えている2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、反射減衰強度を示すグラフである。 シート体10を備えている2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、透過減衰強度を示すグラフである。 シート体10を備えていない2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、反射減衰強度を示すグラフである。 シート体10を備えていない2つのタグ30が、図16のように、近接して配置した場合のシミュレーション結果であって、透過減衰強度を示すグラフである。
図1〜図4を参照して説明したタグ30が装着される2本の真空採血管12を示す平面図である。 シート体10を備えていない場合のタグ80が装着される2本の真空採血管12を示す平面図である。 図1〜図4を参照して説明したタグ30を金属板85に貼着した状態で、アンテナ素子11の近傍に形成される電界を示す断面図である。 シート体10を介在させずに、アンテナ素子11およびICタグ17を金属板85の近傍に配置した状態で、アンテナ素子11の近傍に形成される電界を示す断面図である。 アンテナ素子11としてダイポールアンテナを用いる場合のシート体10の効果を確認するためのさらに他のシミュレーションにおいて想定したタグ30の構成を示す断面図である。 図25の構成によるシミュレーション結果を示し、周波数とアンテナ素子の入力インピーダンスとの関係を示すグラフである。 図25の構成によるシミュレーション結果を示し、指向性利得を示すグラフである。 図25の構成によるシミュレーション結果を示し、絶対利得を示すグラフである。 本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を簡略化して示す斜視図である。 タグ30が装着される飲料品12を示す斜視図である。 タグ30が内蔵される電子装置12を示す斜視図である。 本発明の実施のさらに他の形態のタグ30を簡略化して示す斜視図である。 本発明の実施のさらに他の形態のリーダ31を示す平面図である。 図33のリーダ31を備える読取装置61の一部を示す斜視図である。 本発明の実施のさらに他の形態の読取装置61を簡略化して示す斜視図である。
符号の説明
10 シート体
11 アンテナ素子
12 物品(真空採血管、飲料品、電子装置)
13 シールド層
14 導体層
15 貼着用剤層
17 IC
20 結着材
21 磁性粉末
22 微粒子
30 タグ
31 リーダ
32 通信装置
55 試験管ラック
60 情報管理装置
61 読取装置
62 サーバ
68 搬送台

Claims (11)

  1. 密集状態に設けられる複数の物品にそれぞれ装着されるトランスポンダであって、
    周波数が300MHz以上300GHz以下の範囲で用いられる電界型のアンテナ素子を用いて無線通信するトランスポンダ本体と、
    非導電性の磁性材料から成る磁性材部を有し、トランスポンダ本体の少なくとも一部を覆う通信改善体とを備えことを特徴とするトランスポンダ。
  2. 前記磁性材部は、無線通信に用いられる電磁波の周波数において、複素比透磁率の実数部μ’が2以上であり、透磁率損失項tanδμが1未満であることを特徴とする請求項1に記載のトランスポンダ。
  3. 前記通信改善体は、誘電材料から成る誘電材部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のトランスポンダ。
  4. 前記通信改善体は、さらに導体層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトランスンダ。
  5. 前記各物品は、各一端面が同一平面上に配置されるように、同一の姿勢でそれぞれ設けられ、
    トランスポンダ本体の少なくとも一部と物品との間に通信改善体が配置される状態で、各物品の一端面に装着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のトランスポンダ。
  6. 前記アンテナ素子は、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、ループアンテナおよびこれらにリアクタンス構造部を装荷したアンテナの少なくとも1つを含む素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のトランスポンダ。
  7. 前記磁性材料は、軟磁性金属、軟磁性酸化金属、磁性金属および磁性酸化金属のうちの少なくともいずれか1つから成る材料、またはそれを含有する材料から成ることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載のトランスポンダ。
  8. 請求項1〜のいずれか1つに記載のトランスポンダと、
    前記トラスポンダと無線通信し、トランスポンダに保持される情報を読取可能なリーダとを備えることを特徴とする通信装置。
  9. 請求項に記載の通信装置と、
    リーダによってトランスポンダから読取った情報を、各トランスポンダ毎に識別して記憶するデータベース装置とを備えることを特徴とする情報管理システム。
  10. トランスポンダが装着された各物品を、各物品の一端面が同一平面上に配置されるように、同一の姿勢に保持して搬送する搬送装置を備え、
    各トランスポンダは、トランスポンダ本体の少なくとも一部と物品との間に通信改善体が配置される状態で、各物品の一端面に装着され、
    リーダは、各物品の搬送装置による搬送経路の中途部で、搬送される各物品に装着されたトランスポンダに対向するように設けられ、搬送経路を経て搬送される各物品に装着されるトランスポンダから、順次情報を読取ることを特徴とする請求項に記載の情報管理システム。
  11. 請求項1〜のいずれか1つに記載のトランスポンダが装着される物品であることを特徴とする容器。
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