図1〜図3は、いずれも本発明の実施形態に係る成形機としてのダイカストマシン1の、一部に断面図を含む正面図である。図1は、ダイカストマシン1の型開き状態を示している。図2は、ダイカストマシン1の型締状態を示している。図3は、ダイカストマシン1のタイバー引抜状態を示している。
ダイカストマシン1は、固定金型101及び移動金型103を保持する型締装置3と、固定金型101及び移動金型103により形成されるキャビティCa(図2及び図3において、位置のみ示し、具体的な形状は省略している。)に溶湯を供給する射出装置5(図3においてのみ図示)と、型締装置3及び射出装置5の動作を制御する制御装置7(図1においてのみ図示)とを有している。なお、ダイカストマシン1は、この他にも、移動金型103若しくは固定金型101から成形品を押し出す押出装置等を備えるが、図示は省略する。
型締装置3は、ベース9と、ベース9上に設けられ、固定金型101を保持する固定ダイプレート11と、ベース9上に設けられ、移動金型103を保持する移動ダイプレート13と、固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13に掛架される上部タイバー15U及び下部タイバー15D(以下、単に「タイバー15」といい、両者を区別しないことがある。)とを有している。
ベース9は、例えば、工場の床面等に載置されている。固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13は、ベース9上に互いに対向して配置されている。固定ダイプレート11は、移動ダイプレート13に対向する金型取付面に固定金型101を保持しており、ベース9に対して固定されている。一方、移動ダイプレート13は、固定ダイプレート11に対向する金型取付面に移動金型103を保持し、ベース9に対して、固定ダイプレートに近接離間する方向(型開閉方向)に移動可能に設けられている。
移動ダイプレート13の固定ダイプレート11に近接する方向(型閉じ方向)への移動により、固定金型101及び移動金型103の型閉じが行われる(図2参照。ただし、図2は、型締時を示している。)。また、移動ダイプレート13の固定ダイプレート11から離間する方向(型開き方向)への移動により、図1に示すように、固定金型101及び移動金型103の型開きが行われる。
タイバー15は、例えば、固定金型101及び移動金型103の周囲に複数本設けられている。具体的には、固定金型101及び移動金型103に対して上方側となる位置に上部タイバー15Uが2本設けられ、固定金型101及び移動金型103に対して下方側となる位置に下部タイバー15Dが2本設けられ、合計4本設けられている。4本のタイバー15は、例えば、固定金型101及び移動金型103を中心に、上下対称及び左右対称に配置されている。タイバー15は、少なくとも型閉じ状態において固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13に掛架可能(例えば、固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13を貫通可能)な長さを有している。
図2に示すように、タイバー15の一端を移動ダイプレート13に対して固定し、タイバー15の他端を固定ダイプレート11に対して固定ダイプレート11の背後側(移動ダイプレート13とは反対側、図2の紙面右側)に引っ張ることにより、タイバー15を伸長させ、その伸長量に応じた型締力を発生させることができる。
なお、本願では、タイバー15や後述するピストン31等の部材の移動方向について、移動ダイプレート13の移動方向との対応関係の把握が容易になるように、固定ダイプレート11の背後側の位置における移動であっても、固定ダイプレート11の背後側(紙面右側)への方向を型閉じ方向といい、移動ダイプレート13側(紙面左側)への方向を型開き方向ということがある。
型締装置3は、いわゆる複合型の型締装置により構成されており、型開閉を行うための駆動手段と型締を行うための駆動手段とを別個に有している。具体的には、型締装置3は、型開閉を行う駆動手段としての型開閉シリンダ17と、型締を行うための駆動手段としての型締シリンダ19とを有している。
型開閉シリンダ17は、筒状のシリンダ部21と、シリンダ部21内を摺動可能なピストン23(図1においてのみ図示する。)と、ピストン23に連結されたロッド25とを有している。ピストン23は、シリンダ部21内部を2つのシリンダ室に区画しており、2つのシリンダ室のいずれかに選択的に圧油(作動液)が供給されることにより、ピストン23及びロッド25は進退する。
型開閉シリンダ17は、例えば、ベース9内に大部分が収容されるようにして、ベース9に設けられている。また、型開閉シリンダ17は、ベース9において、固定ダイプレート11側にシリンダ部21が配置され、移動ダイプレート13側へロッド25を延出させるように設けられている。換言すれば、型開閉シリンダ17は、伸縮方向を型開閉方向に一致させて配置されている。
シリンダ部21は、ベース9に対して固定されている。すなわち、シリンダ部21は、間接的に固定ダイプレート11に対して固定されている。一方、ロッド25は、移動ダイプレート13に対して固定されている。従って、型開閉シリンダ17の伸縮により、移動ダイプレート13は型開閉方向に移動する。
なお、型開閉シリンダ17は、適宜な数だけ設けられてよい。例えば、型開閉シリンダ17は、一つだけ設けられてもよいし、固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13の左右中央(紙面貫通方向の中央)に対して対称に2つ設けられてもよい。
型締シリンダ19は、例えば、固定ダイプレート11に内蔵されたシリンダ部29と、シリンダ部29内を摺動可能なピストン31とを有している。
シリンダ部29は、固定ダイプレート11と一体的に形成され、若しくは、固定ダイプレート11に内蔵される別部材により形成されている。シリンダ部29内部には、固定ダイプレート11の金型取付面側に開口する第1小径室29aと、第1小径室29aに連通し、第1小径室29aよりも大径の大径室29bと、大径室29bに連通するとともに固定ダイプレート11の背後側に開口する第2小径室29cとが形成されている。
ピストン31は、第1小径室29aを摺動可能な第1小径部31aと、大径室29bを摺動可能な大径部31bと、第2小径室29cを摺動可能な第2小径部31cとを有している。大径部31bは、大径室29bを2つのシリンダ室に区画しており、その2つのシリンダ室に選択的に圧油(作動液)が供給されることにより、ピストン31は進退する。なお、第1小径部31a(第1小径室29a)と第2小径部31c(第2小径室29c)とは、同一径であってもよいし、異なる径であってもよい。なお、本実施形態では、同一径の場合を例示している。
後述するように、タイバー15とピストン31とは、固定側ハーフナット33によって係合又は当該係合を解除可能であり、また、タイバー15と移動ダイプレート13とは、移動側ハーフナット35によって係合又は当該係合を解除可能である。
従って、図2に示すように、タイバー15と移動ダイプレート13とを係合させ、タイバー15とピストン31とを係合させた状態で、ピストン31を固定ダイプレート11の背後側に駆動することにより、タイバー15が伸長され、その伸長量に応じた型締力が発生する。
なお、型締シリンダ19は、複数のタイバー15に対応して、タイバー15と同数設けられている。従って、一の型締シリンダ19は、一のタイバー15を他のタイバー15とは独立して伸長させることが可能である。
固定側ハーフナット33によるタイバー15とピストン31との係合は、以下のようになされる。
ピストン31には、第1小径部31a、大径部31b及び第2小径部31cを型開閉方向に貫通する孔部31dが形成されている。孔部31dは、固定ダイプレート11の金型取付面側に開口するとともに、固定ダイプレート11の背後側に開口している。タイバー15は、孔部31dに摺動可能に挿通されており、固定ダイプレート11側の端部を、孔部31dを介して固定ダイプレート11の背後側に突出させることが可能である。
タイバー15の固定ダイプレート11側の端部には、固定側被係合部15aが形成されている。固定側被係合部15aは、例えば、タイバー15の外周面に、タイバー15の周方向に延びる複数の溝が、タイバー15の延びる方向に一定のピッチで形成されることにより構成されている。一方、固定側ハーフナット33は、固定側被係合部15aの溝に係合可能な突条部をタイバー15の延びる方向に固定側被係合部15aの溝と同一ピッチで有している。
固定側ハーフナット33とピストン31とは、タイバー15の延びる方向において係合している。例えば、ピストン31の第2小径部31cは、固定ダイプレート11の背後側から突出しており、固定側ハーフナット33を開閉可能に支持する不図示の支持体に対して固定ダイプレート11の背後側の方向へ当接している。従って、ピストン31が固定ダイプレート11の背後側へ移動すると、固定側ハーフナット33も固定ダイプレート11の背後側へ移動する。
また、固定側ハーフナット33は、ピストン31が移動ダイプレート13側へ移動したときに、移動ダイプレート13側へ移動する。これは、例えば、ピストン31と固定側ハーフナット33の不図示の支持体とがネジ等により固定されることにより実現されてもよいし、固定側ハーフナット33を移動ダイプレート13側へ付勢する付勢手段が設けられることにより実現されてもよい。なお、固定側ハーフナット33とピストン31との係合等は、開状態及び閉状態のいずれにおいてもなされている。
固定側ハーフナット33が閉じられることにより、固定側ハーフナット33がタイバー15の固定側被係合部15aに噛合して、タイバー15とピストン31とは固定側ハーフナット33を介してタイバー15の延びる方向において互いに係合し、固定側ハーフナット33が開かれることにより、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとの噛合が解除され、タイバー15とピストン31との係合が解除される。
固定側ハーフナット33の開閉は、例えば、固定ダイプレート11に設けられたハーフナット開閉シリンダ37により行われる。ハーフナット開閉シリンダ37は、固定側ハーフナット33の固定ダイプレート11に対するタイバー15の延びる方向の移動に伴って固定ダイプレート11に対してタイバー15の延びる方向に移動可能に、スライド機構やリンク機構等の適宜な支持機構により固定ダイプレート11に支持されている。
移動側ハーフナット35によるタイバー15と移動ダイプレート13との係合は、以下のようになされる。
タイバー15の移動ダイプレート13側の端部には、移動側被係合部15bが形成されている。移動側被係合部15bは、例えば、固定側被係合部15aと同様に、タイバー15の外周面に、タイバー15の周方向に延びる複数の溝が、タイバー15の延びる方向に一定のピッチで形成されることにより構成されている。
一方、移動側ハーフナット35は、移動側被係合部15bの溝に係合可能な突条部をタイバー15の延びる方向に移動側被係合部15bの溝と同一ピッチで有している。また、移動側ハーフナット35は、移動ダイプレート13に設けられている。換言すれば、移動側ハーフナット35は、移動ダイプレート13に対してタイバー15の延びる方向において移動不可能に設けられている。
移動側ハーフナット35が閉じられることにより、移動側ハーフナット35がタイバー15の移動側被係合部15bに噛合して、タイバー15と移動ダイプレート13とはタイバー15の延びる方向において互いに係合し、移動側ハーフナット35が開かれることにより、移動側ハーフナット35とタイバー15の移動側被係合部15bとの噛合が解除され、タイバー15と移動ダイプレート13とのタイバー15の延びる方向における係合が解除される。
移動側ハーフナット35の開閉は、例えば、移動ダイプレート13に設けられたハーフナット開閉シリンダ39により行われる。ハーフナット開閉シリンダ39は、移動ダイプレート13に対して固定されている。
移動ダイプレート13には、タイバー15の端部に当接する当接部41が設けられている。当接部41は、移動ダイプレート13に固定されており、タイバー15の端部を当接部41に突き当てたときに、移動側ハーフナット35と移動側被係合部15bとが噛合位置に位置するように設けられている。すなわち、当接部41は、移動側ハーフナット35の複数の突条部と移動側被係合部15bの複数の溝との間に、1ピッチ未満のずれが生じている状態で移動側ハーフナット35が閉じられることを防止する。
当接部41は、複数のタイバー15に対応してタイバー15と同数設けられている。複数の当接部41は、互いに一体的に形成されていてもよいし、それぞれ個別に形成されていてもよい。また、当接部41は、移動側ハーフナット35の支持体及び/又はハーフナット開閉シリンダ39のシリンダ部と一体的に構成されていてもよいし、一体的に構成されていなくてもよい。
型締装置3は、金型交換のために、複数のタイバー15のうち上部タイバー15Uを固定ダイプレート11側へ引き抜くタイバー引抜シリンダ43を有している。
タイバー引抜シリンダ43は、筒状のシリンダ部45と、シリンダ部45内を摺動可能なピストン47(図1においてのみ図示する。)と、ピストン47に連結されたロッド49とを有している。ピストン47は、シリンダ部45内部を2つのシリンダ室に区画しており、2つのシリンダ室のいずれかに選択的に圧油(作動液)が供給されることにより、ピストン47及びロッド49は進退する。
タイバー引抜シリンダ43は、固定ダイプレート11の背後側(紙面右側)へロッド49を延出させるように配置されている。換言すれば、タイバー引抜シリンダ43は、伸縮方向を型開閉方向に一致させて配置されている。
シリンダ部45は、固定ダイプレート11に対して固定されている。具体的には、シリンダ部21は、固定ダイプレート11の上部に固定されている。また、シリンダ部21は、ロッド49の延出方向とは反対側の端部が、固定ダイプレート11の金型取付面側の端部から突出せず、かつ、当該金型取付面側の端部に概ね一致するように配置されている。
タイバー引抜シリンダ43のロッド49は、連結部材51により、固定ダイプレート11の背後側において、上部タイバー15Uに連結されている。
連結部材51は、例えば、上部タイバー15Uの端部から上部タイバー15Uの延びる方向と同一方向へ延出する軸部51aと、軸部51aとロッド49とに掛架される掛架部51bとを有しており、ロッド49の端部と上部タイバー15Uの端部とを連結している。なお、本実施形態では、軸部51aを連結部材51の一部として説明しているが、軸部51aがタイバー15の一部として構成されるとともに連結部材51が掛架部51bのみにより構成されてもよい。
射出装置5は、特に図示しないが、固定ダイプレート11を貫通し、固定金型101を介してキャビティCaに連通する射出スリーブ、当該射出スリーブ内を摺動可能な射出プランジャ、当該射出プランジャを駆動する射出シリンダ53(図3のみにおいて一部のみ示す)等を含んで構成されている。図3にも示すように、射出装置5は、固定ダイプレート11の背後側に設けられている。
制御装置7は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータを含んで構成されている。制御装置7は、型締装置3、射出装置5及び不図示の押出装置等の動作を制御する。例えば、制御装置7は、予め設定された情報や不図示の位置センサや圧力センサ等の信号に基づいて、型開閉シリンダ17、型締シリンダ19、ハーフナット開閉シリンダ37及び39、タイバー引抜シリンダ43、並びに、射出装置5の射出シリンダ53等に圧油を供給する不図示の油圧回路のポンプや電磁バルブに制御信号を出力する。なお、制御装置7は、型締装置3の制御装置として捉えることもできる。
以上の構成を有するダイカストマシン1の動作を説明する。
まず、型厚調整における動作について説明する。
型厚調整の初期状態は、概ね、図1に示す状態において固定側ハーフナット33が開かれている状態である。すなわち、移動ダイプレート13は、所定の型開き位置に配置されており、固定金型101と移動金型103とは離間している。また、固定側ハーフナット33及び移動側ハーフナット35は開かれており、タイバー15は、固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13に係合していない。なお、型開き位置は、後述する成形サイクルにおける型開き位置と同一の位置であってもよいし、異なる位置であってもよい。
この状態から、制御装置7は、移動ダイプレート13を型閉じ方向へ移動させるように型開閉シリンダ17を制御する。移動ダイプレート13の移動により、移動ダイプレート13に設けられた当接部41はタイバー15に当接する。これにより、タイバー15は、当接部41により押され、移動ダイプレート13とともに型閉じ方向へ移動する。
その後、固定金型101及び移動金型103が型接触すると、制御装置7は、型締シリンダ19のピストン31を移動させることにより、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとが噛合可能な位置へ、固定側ハーフナット33を移動させる。
ここで、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとが噛合可能な位置は、ピストン31のストローク内において複数存在するから、制御装置7は、予め定められた条件に従って、複数の噛合位置から一の噛合位置を選択する。例えば、制御装置7は、複数の噛合可能な位置から、ピストン31が最も移動ダイプレート13側に位置するものを選択する。また、例えば、制御装置7は、複数の噛合可能な位置から、ピストン31が、移動ダイプレート13側へ所定量(例えば、後述する成形後の離型動作に必要な量)以上及び/又は固定ダイプレート11側へ所定量(例えば、後述する型締に必要な量)以上、移動可能な位置を選択する。
なお、制御装置7は、型接触したか否かを、例えば、型開閉シリンダ17の油圧を検出する不図示の圧力センサの検出値やタイバー15の位置を検出する不図示の位置センサの検出値に基づくタイバー15の速度等に基づいて判断することができる。
また、制御装置7は、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとが噛合可能な位置を、例えば、タイバー15の位置を検出する不図示の位置センサの検出値と、ピストン31又は固定側ハーフナット33の位置を検出する不図示の位置センサの検出値と、予め記録された固定側被係合部15aのタイバー15に対する位置等の情報に基づいて算出することができる。
制御装置7は、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとが噛合可能な位置へ、固定側ハーフナット33を移動させると、固定側ハーフナット33を閉じ、固定側ハーフナット33と固定側被係合部15aとを噛合させ、これにより、ピストン31とタイバー15とを係合させる。
その後、制御装置7は、成形サイクルの開始に備える動作が行われるように各部を制御する。例えば、制御装置7は、型開閉シリンダ17により移動ダイプレート13を図1に示す型開き位置へ移動させる。そして、制御装置7は、型厚調整のための制御を終了する。
次に、ダイカストマシン1の成形サイクルにおける動作を説明する。
成形サイクル開始時においては、図1に示すように、移動ダイプレートは、型開き位置に位置しており、固定金型101と移動金型103とは離間している。固定側ハーフナット33は、型厚調整においてタイバー15の固定側被係合部15aに対して噛合した状態が維持されている。型締シリンダ19のピストン31は、型厚調整において固定側ハーフナット33と固定側被係合部15aとを噛合させたときの位置(型接触するときの位置)よりも移動ダイプレート13側に位置している。移動側ハーフナット35は開かれており、移動ダイプレート13とタイバー15とは互いに係合されていない。タイバー15の移動ダイプレート13側の端部は、当接部41から離間している。
なお、移動ダイプレート13の型開き位置は、後述する、成形品の押し出し、搬出等の工程が実行可能な位置に設定されている。また、移動ダイプレート13の型開き位置は、移動ダイプレート13を支持するスライダや型開閉シリンダ17のストロークの物理的な限界位置に対応する位置であってもよいし、当該ストロークの範囲内において製造者や使用者によって適宜に設定された位置であってもよい。
図1の型開き状態から、制御装置7は、移動ダイプレート13を型閉じ方向へ移動させるように、不図示の油圧回路を介して型開閉シリンダ17を制御する。移動ダイプレート13が型閉じ方向へ移動すると、移動ダイプレート13に設けられた当接部41は、タイバー15の移動ダイプレート13側の端部に当接する。
これにより、タイバー15は、当接部41により押され、移動ダイプレート13とともに型閉じ方向へ移動する。また、型締シリンダ19のピストン31は、固定側ハーフナット33によりタイバー15と係合されていることから、タイバー15とともに型閉じ方向へ移動する。
制御装置7は、移動ダイプレート13及びタイバー15がともに型閉じ方向へ移動している間に、移動側ハーフナット35を閉じる。これにより、移動ダイプレート13及びタイバー15は互いに係合される。
その後、固定金型101及び移動金型103は型接触する。なお、このときのピストン31の位置は、型厚調整において、固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとを噛合させたときの位置である。
なお、制御装置7は、適宜に移動ダイプレート13の目標速度を設定し、その設定した速度と、移動ダイプレート13等の位置を検出する不図示の位置センサの検出値に基づく速度とに基づいて、移動ダイプレート13の速度を制御する。
例えば、制御装置7は、成形サイクルを短縮しつつ型接触時の衝撃を緩和するように、型閉じ開始時から型接触直前までの移動ダイプレート13の移動を比較的高速で行い、型接触直前において減速する。なお、型接触の位置は、例えば、型厚調整時おいて、移動ダイプレート13等の位置を検出する不図示の位置センサにより検出される。
また、例えば、制御装置7は、当接部41がタイバー15に当接する直前に移動ダイプレート13を減速させ、当接部41とタイバー15との衝撃を緩和する。当接部41がタイバー15に当接する位置は、例えば、型厚調整時において、移動ダイプレート13の位置を検出する不図示の位置センサ及びタイバー15の位置を検出する不図示の位置センサの検出値に基づいて算出される。
固定金型101及び移動金型103が型接触すると、制御装置7は、型締シリンダ19のピストン31を固定ダイプレート11の背後側へ移動させる。これにより、図2に示すように、タイバー15は固定側被係合部15aが固定ダイプレート11の背後側へ引っ張られて伸長し、その伸長量に応じた型締力を生じる。
型締力が所定値に達して型締が完了すると、制御装置7は、キャビティCaに溶湯を供給するように射出装置5を制御する。すなわち、キャビティCaに連通する不図示の射出スリーブにラドル等により溶湯を供給し、射出シリンダ53により不図示の射出プランジャを射出スリーブ内で前進させる。これにより、溶湯がキャビティCa内に射出、充填される。そして、キャビティCa内に充填された溶湯が凝固することにより、成形品が形成される。なお、型締シリンダ19は、溶湯の射出、充填中も所定の型締力を維持するように制御される。
溶湯が凝固して成形品が形成されると、制御装置7は、タイバー15に加えていた張力を解除して型締力を無くすように、型締シリンダ19のピストン31を移動ダイプレート13側へ移動させる。
さらに、制御装置7は、固定金型101と移動金型103とが若干離間するまでピストン31を移動ダイプレート13側へ移動させる。すなわち、型厚調整時に固定側ハーフナット33とタイバー15の固定側被係合部15aとを噛合させた位置(型接触する位置)よりもピストン31を移動ダイプレート13側へ移動させる。これにより、比較的大きな力で離型がなされるとともに、タイバー15は、次回の成形サイクルにおいて、型接触前に当接部41に当接可能な位置へ移動する。
その後、制御装置7は、移動側ハーフナット35を開き、移動ダイプレート13とタイバー15との係合を解除する。なお、移動側ハーフナット35は、型締力が開放された後(タイバー15が型接触するときの位置に到達した後)であって、タイバー15が更に移動ダイプレート13側へ移動する前に開かれてもよい。
そして、制御装置7は、移動ダイプレート13を図1に示す型開き位置へ移動させるように、型開閉シリンダ17を制御する。なお、型開きの際には、不図示の押出装置により、成形品は固定金型101又は移動金型103から押し出され、型締装置3から搬出される。また、型開き後は、固定金型101及び移動金型103の洗浄や離型剤の塗布等の次のサイクルの準備が行われる。そして、次の成形サイクルが開始される。
次に、ダイカストマシン1の金型交換時の動作について説明する。
金型交換の開始時においては、ダイカストマシン1は、成形サイクルが終了した状態、すなわち、図1の型開き状態にあるものとする。そして、制御装置7は、上記の成形サイクルにおける型閉じと同様に型接触するまで型閉じを行う。ただし、この型閉じにおいては、成形サイクルにおける型閉じのように、当接部41がタイバー15に当接した後に移動側ハーフナット35を閉じる必要はない。また、固定側ハーフナット33は開かれていてもよい。
型接触後は、作業者等により、固定金型101と移動金型103とを互いに組み合わせた状態で搬送する準備がなされる。例えば、固定金型101と移動金型103とを共にクレーンに取り付けるとともに、固定金型101と固定ダイプレート11との固定及び移動金型103と移動ダイプレート13との固定が解除される。なお、この時点では、固定金型101は、固定ダイプレート11に取り付けられたままでもよい。
作業者等により、固定金型101及び移動金型103のクレーンへの取付等の作業が終了したことを示す信号が制御装置7へ入力されると、制御装置7は、上部タイバー15Uについて、固定側被係合部15a及び移動側被係合部15bにおける係合が解除され、下部タイバー15Dについて、固定側被係合部15aにおける係合が解除され且つ移動側被係合部15bにおける係合がなされた状態になるように、固定側ハーフナット33及び移動側ハーフナット35を制御する。なお、この固定側ハーフナット33及び移動側ハーフナット35の制御は、作業者等による作業の終了前に、例えば、型接触前や型接触直後から、その一部又は全部が行われていてもよい。
その後、制御装置7は、タイバー引抜シリンダ43により上部タイバー15Uを固定ダイプレート11の背後側(紙面右側)へ移動させる。これにより、図3に示すように、上部タイバー15Uは、型接触時の位置よりも更に固定ダイプレート11の背後側へ移動し、移動ダイプレート13から引き抜かれる。上部タイバー15Uは、例えば、移動ダイプレート13側の端部が、固定ダイプレート11の金型取付面と概ね一致する位置、若しくは、金型取付面よりも若干引き込まれた位置に位置するまで引き抜かれる。
また、制御装置7は、型開閉シリンダ17により移動ダイプレート13を型開き方向へ移動させる。これにより、図3に示すように、所定の型開き位置へ到達する。下部タイバー15Dは、移動側ハーフナット35により移動ダイプレート13に係合されているから、移動ダイプレート13とともに、型開き方向に移動する。図1と図3との比較から読解されるように、下部タイバー15Dのタイバー引抜時の位置は、成形サイクルにおける型開き時の下部タイバー15Dの位置よりも、型開き方向へ移動した位置となっている。
なお、上部タイバー15Uの型閉じ方向への移動と、下部タイバー15Dの型開き方向への移動とは、同時に行われてもよいし、いずれかが先に行われてもよい。また、タイバー引抜時の移動ダイプレート13の型開き位置は、成形サイクルにおける型開き位置と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
その後、固定金型101及び移動金型103は、互いに組み合わされたまま、クレーンなどにより上方や側方へ搬出される。そして、新たな固定金型101及び移動金型103が、互いに組み合わされたまま、クレーンなどにより固定ダイプレート11と移動ダイプレート13との間に搬入される。
新たな固定金型101及び移動金型103の搬入後、制御装置7は、型開閉シリンダ17により型閉じを行う。そして、作業者等により、固定金型101の固定ダイプレート11への固定及び移動金型103の移動ダイプレート13への固定がなされる。
固定ダイプレート11及び移動ダイプレート13の固定が完了すると、制御装置7は、上述した型厚調整の準備を行う。すなわち、制御装置7は、タイバー引抜シリンダ43により上部タイバー15Uを移動ダイプレート13側へ移動させる。型開閉シリンダ17により移動ダイプレート13を型開き位置へ移動させる。移動ダイプレート13の型開き方向への移動の中途まで移動ダイプレート13とタイバー15とを係合させることなどにより、タイバー15を所定距離移動ダイプレート13側へ移動させる。固定側ハーフナット33及び移動側ハーフナット35を開く。そして、上述の型厚調整が行われる。
以上の実施形態によれば、型締装置3の制御装置7は、型厚調整において、固定側ハーフナット33及び移動側ハーフナット35による係合を解除した状態で、移動ダイプレート13を型開閉シリンダ17により型閉じ方向へ移動させて当接部41に当接しているタイバー15を移動ダイプレート13とともに型閉じ方向へ移動させ、型接触後に、固定側ハーフナット33とタイバー15とが係合可能な位置へピストン31の駆動により固定側ハーフナット33を移動させ、固定側ハーフナット33をタイバー15に係合させ、成形サイクルにおいて、型厚調整における固定側ハーフナット33による係合を維持するとともに移動側ハーフナット35による係合を解除した状態で、移動ダイプレート13を型開閉シリンダ17により型閉じ方向へ移動させて当接部41をタイバー15に当接させ、タイバー15を移動ダイプレート13とともに型閉じ方向へ移動させ、移動側ハーフナット35によりタイバー15と移動ダイプレート13とを係合し、移動側ハーフナット35による係合及び型接触がなされた後に、タイバー15を伸長させる方向へピストン31を駆動して型締を行うように、固定側ハーフナット33、移動側ハーフナット35、型開閉シリンダ17及び型締シリンダ19を制御することから、当接部41によりタイバー15を移動ダイプレート13に対して一定位置に位置決めすることにより、成形サイクルにおけるタイバー15の締結を確実且つ迅速に行う構成において、型厚調整を行うことができる。その結果、例えば、型締シリンダのストロークの設計の自由度の向上、使用可能な金型の範囲の拡張が実現される。さらに、当接部41及び型締シリンダ19を利用して型厚調整がなされることから、新たな部材や駆動部の設置を抑え、簡素な構成で型厚調整が実現される。
型締装置3は、移動側ハーフナット35及び固定側ハーフナット33による係合を解除した状態で、タイバー15を固定ダイプレート11側へ移動させて移動ダイプレート13から引き抜くタイバー引抜シリンダ43を有することから、移動ダイプレート13側の背後側(移動ダイプレート13の紙面左側)にタイバー15の引抜用のスペースが必要なく、ダイカストマシン1全体として、省スペース化が図られる。すなわち、本実施形態では、固定ダイプレート11の背後側には、射出装置5が設けられているから、タイバー15を固定ダイプレート11の背後側に引き抜くこととしても、タイバー15の引き抜きに専用のスペースを設ける必要がない。
型締装置3において、タイバー15は複数本設けられ、制御装置7は、型接触後、上部タイバー15Uについて、移動側ハーフナット35及び固定側ハーフナット33による係合が解除された状態とするとともに、下部タイバー15Dについて、移動側ハーフナット35による係合がなされ且つ固定側ハーフナット33による係合が解除された状態とし、その後、タイバー引抜シリンダ43により上部タイバー15Uを固定ダイプレート11側へ移動させ、型開閉シリンダ17により移動ダイプレート13を型開き方向へ移動させるように、移動側ハーフナット35、固定側ハーフナット33及び型開閉シリンダ17を制御することから、上部タイバー15Uは、固定ダイプレート11の背後側に、下部タイバー15Dは、固定ダイプレート11の移動ダイプレート13側に延出することになる。従って、複数のタイバー15の荷重は、固定ダイプレート11に対してバランスされやすくなり、固定ダイプレート11は転倒し難くなる。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシン1は本発明の成形機の一例であり、型開閉シリンダ17は本発明の型開閉駆動部の一例であり、移動側ハーフナット35は本発明の移動側係合手段の一例であり、当接部41を含む部材は本発明の当接部材の一例であり、型締シリンダ19は本発明の型締駆動部の一例であり、型締シリンダ19のピストン31は本発明の可動部の一例であり、固定側ハーフナット33は本発明の固定側係合手段の一例であり、タイバー引抜シリンダ43は本発明のタイバー引抜駆動部の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。
型開閉用駆動部及び型締用駆動部は、油圧シリンダ(油圧機器)に限定されない。例えば、空圧シリンダ(空圧機器)であってもよいし、油圧機器、空圧機器を適宜に組み合わせたものであってもよい。
タイバーは、4本に限定されない。例えば、1本でもよいし、3本、5本以上であってもよい。固定側係合手段や移動側係合手段により係合されるタイバーの被係合部は、タイバーの端部に設けられていなくてもよい。例えば、固定側係合手段は、タイバーの、移動ダイプレートと係合する部分よりも固定ダイプレート側の部分に係合可能であれば、タイバーの中途に係合してもよい。
複数のタイバーのうちタイバー抜きが行われるタイバーは、上部のタイバーに限定されない。例えば、下部のタイバーであってもよいし、全てのタイバーの引き抜きが可能であってもよい。
射出装置は、固定ダイプレートの背後に設けられているものに限定されない。例えば、金型の下方から成形材料(実施形態では溶湯)を供給するものであってもよい。ただし、実施形態のように、固定ダイプレートの背後から成形材料を供給するものであれば、上述のように、タイバーを固定ダイプレートの背後に引き寄せても、タイバーの配置スペースを新たに設ける必要がない。
実施形態では、型厚調整の初期状態において、タイバー15の移動ダイプレート13側の端部が当接部41から離間している場合を例示したが、型厚調整の初期状態において、タイバー15の移動ダイプレート13側の端部が当接部41に当接していてもよい。
実施形態では、金型交換後に型厚調整の準備をするときに、移動ダイプレート13の型開き方向への移動の中途まで移動ダイプレート13とタイバー15とを係合させることなどにより、タイバー15を所定距離移動ダイプレート13側へ移動させる動作を例示したが、移動ダイプレート13が型開き位置に到達するまで、タイバー15を移動ダイプレート13に係合させてもよいし、型締シリンダ19及び固定側ハーフナット33によりタイバー15を移動ダイプレート13側へ移動させてもよい。
実施形態では、成形サイクルにおける型閉じ時に、当接部41がタイバー15に当接してから型接触するまでの間に移動側ハーフナット35が閉じられる動作を例示したが、移動側ハーフナット35は、当接部41がタイバー15に当接してから型締開始までに閉じられればよく、例えば、型接触後に閉じられてもよい。
実施形態では、成形品の凝固後、型締シリンダ19により、タイバー15を、型接触するときの位置よりも移動ダイプレート13側へ移動させ、その位置を成形サイクルの型開き状態におけるタイバー15の位置とすることにより、成形サイクルにおける型閉じ時に、型接触前に当接部41がタイバー15に当接する動作を例示した。しかし、成形品の凝固後、タイバー15は、型接触するときの位置まで移動するだけでもよい。なお、この場合、成形サイクルの型閉じ時には、当接部41のタイバー15への当接と型接触とは同時に行われることになる。また、成形品の凝固後、タイバー15を型接触位置よりも移動ダイプレート13側へ移動させる動作は、移動側ハーフナット35を開く前に、型開閉シリンダ17により移動ダイプレート13を型開き方向へ所定距離移動させることにより、実現されてもよい。
1…ダイカストマシン(成形機)、7…制御装置、11…固定ダイプレート、13…移動ダイプレート、15…タイバー、17…型開閉シリンダ(型開閉用駆動部)、19…型締シリンダ(型締駆動部)、31…ピストン(可動部)、33…固定側ハーフナット(固定側係合手段)、35…移動側ハーフナット(移動側係合手段)、41…当接部(当接部材)。