以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を模式的に示した正面図である。記録装置10はホストPC(ホスト装置)12と接続されており、ホストPC12から送信される記録情報に基づいて、4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのノズルから記録媒体(以下、ロール紙ともいう)Pにインクを吐出する。記録ヘッドは、それ自体をユニット構成とすることができるため、以下、4つの記録ヘッドをヘッドユニット22K、22C、22M、22Yという。4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは、記録媒体Pの搬送方向(矢印A方向)に沿って配置されている。各ヘッドユニットは、搬送方向に沿って、黒インク用ヘッドユニット22K、シアンインク用ヘッドユニット22C、マゼンタインク用ヘッドユニット22M、イエローインク用ヘッドユニット22Yの順で配置されている。ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yは所謂ラインヘッドであり、それぞれ記録媒体Pの記録幅全域に亘って延在し、その延在方向に沿って複数のノズルが列状に形成されている。また、これらのヘッドユニットは、搬送方向に対して互いに平行に配備されている。記録装置が記録を行う際には、各ヘッドユニットを移動させることなく、ヘッドユニットに設けられた吐出エネルギー発生手段を駆動することにより、吐出口(ノズルの開口部)からインクを吐出させる。吐出エネルギー発生手段としては、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子を用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、インク流路内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。以下、このような吐出エネルギー発生手段、インク流路、および吐出口を含む部分を「ノズル」ともいう。
ヘッドユニットは、吐出口が形成される面(以下、インク吐出口面ともいう)22Ks、22Cs、22Ms、22Ysに、インクの吐出動作に伴ってゴミやインク滴等の異物が付着することがある。これらの異物が付着した場合には、インクの吐出状態が変わって、記録に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため記録装置10には、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yが安定してインクを吐出できるように、回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、インク吐出口面のクリーニングを定期的に行うことにより、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのノズルからのインク吐出状態を初期の良好なインク吐出状態に回復することができる。回復ユニット40には、4つのヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのインク吐出口面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysに付着した異物を除去するためのキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに対して独立して設けられており、それぞれ、ブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等を含む。
記録媒体Pは、ロール紙供給ユニット24から供給され、記録装置10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
記録を行う際には、搬送中のロール紙Pがブラックのヘッドユニット22Kの下に到達すると、ホストPC12から送られた記録情報に基づいて、ヘッドユニット22Kからブラックインクが吐出される。同様に、ヘッドユニット22C、ヘッドユニット22M、ヘッドユニット22Yの順に、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出されて、ロール紙Pへのカラー画像の記録が完成する。
記録装置10には、各ヘッドユニットに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Y、各ヘッドユニットにインクを補充するためのポンプ、後述するクリーニング動作をするためのポンプ(図3等参照)などが備えられている。
図2は、図1の記録装置10の制御系を示すブロック図である。ホストPC(ホスト装置)12から送信された記録情報やコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。
CPU100は、記録装置10の記録情報の受信、記録動作、ロール紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前に行う動作処理では、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50から離して記録位置に移動させる。またCPU100は、後述するように、圧力センサ111によって得られた圧力情報に基づいて、ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに適正な負圧を付与するためのファンのファンモータ125の回転を随時補正する制御を行う。さらにCPU100は、出力ポート114およびモータ駆動部116を介して、ロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ126およびロール紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動することにより、ロ−ル紙Pを記録位置に搬送する制御を行う。
記録を行う際には、一定速度で搬送されるロール紙Pに対するインクの吐出タイミング(記録タイミング)を決定するために、先端検知センサ109でロール紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100は、イメージメモリ106から記録情報を順次読み出し、この読み出した記録情報を各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yに、ヘッドユニット制御回路112経由して転送する。
CPU100の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラムおよびテーブルなどが記憶されている。またCPU100は、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。さらにCPU100は、各ヘッドユニット22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動することにより、インクの加圧および吸引等の制御を行う。
図3は、インクタンク28Kからヘッドユニット22Kまでのインクの通る経路を模式的に示した図である。図3におけるヘッドユニット22Kは、それに対応するキャッピング機構50によってキャッピングされた状態にある。各ヘッドユニットは同じ構造であるため、以下、例としてブラックインク用ヘッドユニット22Kについてのみ説明を行う。
記録装置10には、ヘッドユニット22Kにインクを供給するインク供給装置60が組み込まれており、ヘッドユニット22Kは、貯留部22Krと、インクを吐出可能な吐出部22KSiと、を備えている。インク供給装置60は、記録装置10の本体に着脱自在なインクタンク28K、このインクタンク28Kとヘッドユニット22Kとをつなぐインク供給路62、および、そのインク供給路62の途中に配置されたインク供給ポンプ72などから構成されている。供給ポンプ72は、インクフィルタ90を介して貯留部22Krへのインク供給を担う。
本例の供給ポンプ72はチューブポンプであり、動作が停止したときに、インク供給路62を閉じる構成となっている。後述するように、記録動作の待機時に、貯留部22Krおよび空気室66を含む液室が、ノズル22Knを除いて大気と遮断された密閉系を形成する場合には、供給ポンプ72が停止することによりインク供給路62が閉じられる。供給ポンプ72として、インク供給路62を閉じることができないポンプを用いた場合には、インク供給路62を遮断するためのバルブ(遮断手段)を備えればよい。
貯留部22Krには、貯留されているインク(以下、貯留インクともいう)の液面22Krsのレベルを検知する液面検知センサ86が取り付けられている。また、貯留部22Krの下方には吐出部が位置し、その吐出部22KSiには、複数のノズル22Knと、それぞれのノズル22Knに貯留インクを供給するためのインク供給口および共通液室と、が形成されている。
貯留部22Krの上部には、空気を収容可能な空間(以下、空気室という)66が形成されている。貯留部22Krと空気室66と含めて液室ともいう。空気室66には、エアーフィルタ95を介して空気流路64が接続されるインク導入部が設けられており、空気流路64には、大気解放バルブ(遮断手段)84、および圧力を測定可能な圧力検出センサ81が備えられている。圧力検出センサ81は、空気室66内の圧力を検出することが可能である。空気流路64の一方端部は、エアーフィルタ95が設けられた負圧導入部に連通されている。空気流路64の他方端部は、減圧流路65とT字状に接続されており、その減圧流路65は、一端が吸入口61(空気導入部)によって大気に開放され、他端はファン68に接続されている。空気流路64において、バルブ84と空気室66との間の部位には、保圧流路27を介して後述する保圧機構80が接続されている。後述するように、記録動作の待機時に、貯留部22Krおよび空気室66を含む液室が、ノズル22Knを除いて大気と遮断された密閉系を形成する場合には、バルブ84によって空気流路64が閉じられる。
インクタンク28Kには、その内部のインクの有無を検出する検出センサ(不図示)が取り付けられている。また、インクタンク28Kには、その内部の圧力を大気圧にするための大気開放バルブ74が取り付けられている。
貯留部22Krの液面検知センサ86の測定結果に基づいて、インク液面22Krsが一定レベル以下にあると判断されたときには、インクタンク28Kの大気開放バルブ74を開放し、かつ供給ポンプ72を駆動する。これに、インクタンク28K内のインクを吸引して貯留部22Kr内に供給する。一方、液面検知センサ86が一定レベル以上のインク液面22Krsを検知したときには、供給ポンプ72を停止し、かつ大気解放バルブ74を密閉して、インクの供給を停止する。供給ポンプ72としてはチューブポンプが用いられており、供給ポンプ72の非駆動時には、インク供給路62が遮断される(インクタンク28Kと貯留部22Krとの間の流路が遮断される)。
図4は、ヘッドユニットの吐出口面22Ksをクリーニングする際の手順を示したフローチャートである。また、図5は、吐出口面22Ksからワイパ52によってインクを拭き取る手順を示す模式図であり、(a)は拭き取り開始前を示し、(b)は拭き取り終了直後を示し、(c)は拭き取り終了後の待機状態を示す。ここクリーニングとは、ヘッドユニット22Kのインク吐出を良好な状態に継続的に維持するために行われる動作をいい、経過時間や吐出状況等の条件を満たした場合、または、記録品位に異常が見られる場合等において、自動的にもしくは任意に実施される。以下、クリーニングの動作について順に説明する。
ステップS401でクリーニング指令を受信すると、ステップS402でバルブ84を解放する。その後、ステップS403でクリーニングポンプ92を作動させて、図5(c)のようにヘッドユニット22Kをキャッピングしているキャップ54内を減圧する。これにより、貯留部22Kr内のインクをノズル22Knからキャップ54に引き込んで排出させる。このようなインクの吸引排出動作を吸引回復動作ともいう。このインクの排出により、記録動作中等においてノズル22Knの周囲部に溜まった微細な気泡、およびヘッドユニットの吐出口面22Ks上に付着したゴミ等の異物を除去することができる。そして一定時間経過後、ステップ404でクリーニングポンプ92の駆動を停止する。その後、後述するように、保圧機構80内を減圧するために空気ファン68を作動させ(S405)、バルブ84を閉じてから(S406)、空気ファン68を停止させる(S407)。
この状態では、ヘッドユニット22Kの各ノズル22Knの開口を含む吐出口面22Ksに、まだインクなどの異物が付着しているおそれがある。そこで、そのような異物を除去するために、キャッピング機構50に備わるワイパ52で吐出口面22Ksを拭く。
すなわち、先ずステップS408で図5(a)に示すように、ヘッドユニット22Kを回復キャップ54の上方へ移動させる。その後、ステップS409でキャップ54を矢印B方向に移動することにより、図5(b)に示すように、吐出口面22Ksに付着しているインクなどの汚れをワイパ52で拭き取る。このような動作をワイピング動作という。このワイピング動作の終了後は、ステップS410でヘッドユニット22Kをキャップ54の位置に移動させて、図5(c)に示すように、ヘッドユニット22Kをキャップ54により再びキャッピングして待機状態となる。このようなワイピング動作は、上述した吸引回復動作とは別に、適宜のタイミングで独立して実施してもよい。
この待機状態においては、キャップ54の当接部がヘッドユニット22Kの吐出口面22Ksが密着して、ヘッドユニット22Kをキャッピングしている。そのため、キャップ54内では空気の対流がほとんど無く、ノズル22Kn内のインクの増粘を防止することができる。
ノズル22Knからキャップ54内に排出されたインク(廃インク)は、吸引ポンプ92(図3参照)によって吸引されて、廃インクタンク71(図3参照)に圧送される。廃インクタンク71には微小な大気開放口75が設けられており、廃インクや気泡の流入に伴って変化する廃インクタンク71内の圧力を大気へと解放する。
記録動作時には、ノズル22Knの吐出口にインクのメニスカスを形成するために、ヘッドユニット22K内のインクに適正な負圧を付与する必要がある。そのため記録動作時には、バルブ84を開放し、そして矢印C方向の空気の流れを作るようにファン68を作動させることにより、空気流路64を通してヘッドユニット22Kの空気室66内を減圧させる。これにより、貯留部22Kr内およびノズル22Kn内が減圧されることになる。
本実施形態では、特許文献4のように、負圧を発生させる空間から直接ファンによって空気を吸引するのではなく、図3のように間接的に吸引する手法を用いている。つまり、ファン68を作動させることで発生する負圧が直接空気室66に掛かるのではなく、大気を導入可能な吸入口61(空気導入部)を設けていることで、負圧は間接的に空気室66に掛かることになる。また本実施形態では、ファン68を作動させることにより、吸入口61から取り込まれた空気の流れが減圧流路65に生じ、その減圧流路65に接続された空気流路64内の空気は、主にエジェクタの原理により、減圧流路65の空気の流れに引き込まれる。この結果、空気室66に負圧が生じることになる。
バルブ84が解放されているときには、ノズルにおけるインクのメニスカスを最適な状態に維持するために、常に一定の負圧を空気室66内に付与することが必要である。吐出部22KSiからインクが吐出されると貯留部22Krのインク量が減るため、それに伴って空気室66の負圧は高くなる。空気室66の負圧が高い状態のままだと、メニスカスを所定の位置に形成することができなくなり、インクを良好に吐出できなくなる。そのため、インクの吐出に伴って高くなった負圧を一定の負圧に戻すために、空気室66内の圧力調整を行う必要がある。
本実施形態のように空気室66内の空気を間接的に吸引する手法では、空気室66からファン68までの間に大気と連通している部分があるため、減圧流路65には、ファン68の回転によって常に空気の流れが生じている。空気室66内の負圧は、その減圧流路65内の空気の流れに起因し、ファン68の回転速度が速くなって空気の単位面積あたりの流量(流速)が増大するほど、空気室66内の負圧は大きくなる。逆に、ファン68の回転速度が低下して空気の流量が減少するほど、空気室66内の負圧は小さくなる。
空気室66内の負圧を一定に維持するためには、その空気室66内の負圧の変動に応じてファン68を制御し、減圧流路65内の空気の流量を調整する必要がある。このような流量の調整に際しては、減圧流路65内を定常的に流れる空気が有利に作用する。すなわち、空気室66内の圧力が変動した時に、ファン68の回転速度が一定であっても空気室66内の圧力変動をある程度吸収するように、減圧流路65内の空気流量が自動的に変化する。したがって、空気室66内の細かな圧力変動に追従させるように、ファン68をさほど細かく制御する必要がない。つまり、ファン68の一定回転速度下において圧力変動に追従できる範囲(圧力ヘッドの吸収可能な程度)は、特許文献4のような構成、つまり空気室内の空気を直接的に吸引する場合よりも広くなる。そのため、空気室66内を比較的簡単な制御によって所定の負圧力に安定的に維持することができる。ファン68の回転を制御することにより、圧力変動量が短時間に大きく発生する場合にも一定の負圧を維持できることは勿論である。また本実施形態のように、空気室66内の空気を間接的に吸引する手法では、自動的に大気から空気を取り込むことで、空気室66内の圧力が目標値に収束するまでの時間を短時間にすることができる。
さらに、本実施形態のように空気室66内の空気を間接的に吸引することにより、貯留部22Kr内のインクと触れる空気室66内の空気を大きく攪拌することがない。そのため、インクの揮発成分が蒸発しにくく、インクは増粘しにくい。また本実施形態においては、ファン68の作動時に常時空気の流れが生じるため、その空の流れを利用してファンモータ82を冷却することができる。
ちなみに、特許文献4の構成のように空気室内の空気をファンによって直接吸引する場合には、空気室の圧力変動に敏感に対応するようにファンを制御する必要がある。すなわち、ファンで発生させた負圧が直接ノズル内に作用することから、ファンの回転速度を細かく制御する必要がある。しかし、ファンによる圧力制御の場合、オーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすく、目標とする圧力に収束させるには比較的時間を要する。しかも、空気室内の空気がファンによって攪拌されるため、貯留部にあるインクの揮発成分の蒸発が促進されるおそれがある。
図6は、記録信号を受信してから記録が終了するまでの動作を表わしたフローチャートである。通常、記録装置を使用していない状態では、ノズルKnからのインクの漏れを防止するために、バルブ84は閉じられている。記録を開始する場合には、予め、バルブ84が閉じられている状態でファン68を作動させて空気流路64内を減圧させてから、バルブ84を開く。
ステップS701で記録装置10が記録信号を受信すると、ステップS702でファン68を作動させる。次のステップS703では、ファン68による減圧が正常に行われているかを確認するために、空気流路64内の負圧を圧力検出センサ81で検出する。所定の負圧が得られていない場合にはステップS704へ進み、ファン68の回転速度を補正する。ステップS703において所定の負圧が得られていれば、ステップS705へ移行してバルブ84を解放する。
本実施形態では、大気と連通した貯留部22Krが吐出口面22Ksの上方に配置されているため、バルブ84が開くことによりノズル22Knの吐出口には、インク液面22Krsからの水頭圧力Hの正圧がノズル22Knの吐出口に作用する。そのため、ファン68によって空気室66に作用させる減圧の程度は、水頭圧力H以上に設定される。これによりノズル22Knに負圧が作用して、インクの最適なメニスカスが吐出口に形成される。
次に、ステップS706でヘッドユニット22Kをワイピング位置へ移動させてから、ステップS707にて、前述したように吐出口面22Ksのワイピング動作を行う。その後、ステップ708において、記録を行うためにヘッドユニット22Kを下降させてから記録位置へ移動させる。そして、ステップ709にて記録媒体Pに対する記録動作を行う。その記録動作の終了後、ステップS710において、ヘッドユニット22Kを上昇させから待機位置まで移動させて、キャップ54によってヘッドユニット22Kを再びキャッピングする。その後、ステップS711でバルブ84を閉じて、ステップS712でファン68の作動を停止する。これにより、記録装置が再び待機モードとなって、このフローを終了する。
記録動作が実行されている間、貯留部22Kr内のインクは、記録によるインク消費に伴って減少する。本実施形態においては、その減少したインクと同等体積の空気が吸入口61および空気流路64を経由して空気室66内に導かれる。また、液面検知センサ86によって、液面22Krsが一定レベル以下になったことが検知された場合には、液面検知センサ86が液面22Krsの所定の上限レベルを検知するまで、インク供給ポンプ72によって貯留部22Kr内へインクを供給する。この際には、貯留部22Kr内に流入するインクの体積相当分の空気が空気流路64を介して減圧流路65へ放出される。したがって、貯留部22Kr内のインクの増減による貯留部22Kr内の圧力変動、ひいてはノズル22Knに作用する圧力変動が抑制される。
次に、保圧機構80(図3参照)について説明する。
前述したように、記録装置における記録動作の待機時に、ヘッドユニット22Kの空気室66を大気に連通させる空気流路64はバルブ84によって遮断されている。また待機時には、ヘッドユニット22Kと、インクタンク28Kを含むインク供給ユニット側と、の間のインク流路62が供給ポンプ72によって遮断されている。したがって、このような待機時におけるヘッドユニット22Kの内部は、ノズル22Knの吐出口を除いて密閉された密閉系を形成している。
このような密閉系を形成する待機時において、温度変化があった場合には、空気室66内の空気が膨張もしくは収縮し、ノズル22Knの吐出口に形成されているインクのメニスカスが破壊されるおそれがある。また、温度が上昇して空気室66内の空気の体積が膨張した場合には、ノズル22Knの吐出口からインクが漏出して、吐出口形成面22Ksにインク溜まりを形成するおそれがある。極端な場合には、その漏出したインクがキャップ54から外部へ漏れるおそれもある。一方、温度が下がった場合には、空気室66内の空気の体積が収縮し、ノズル22Knの吐出口から内部に空気を引き込んでしまうおそれがある。このような事態が想定される場合には、記録動作の前に前述したようなクリーニング動作が欠かせない。なお、待機時におけるヘッドユニット22Kの温度変化の要因としては、外気温度の変化の他、例えば、インクの余熱の影響、待機モードにおける基板の発熱等が考えられる。
図7は、保圧機構80の簡略構成図である。この保圧機構80は、前述したように、保圧流路27を通して空気流路64(図3参照)に接続される。
83は、保圧機構80の本体を構成するケ−シングであり、その内部は、大気連通口83Aによって大気に連通されている。ケーシング83の内部には可撓性バッグ85の底部が固定されており、その可撓性バッグ85の内部は保圧流路27に連通されている。可撓性バック85は、保圧流路27との接続部分を除いて密閉されたバック内空間87を形成している。可撓性バック85は、その空間87内の圧力に応じて容積が変化するものであり、本例の場合は、所定範囲内において上下方向に伸縮可能な蛇腹状に形成されている。ケーシング83内には、可撓性バッグ85の上部を上方に付勢する引張りスプリング88が備えられている。このスプリング88が所定の付勢力によって可撓性バック85の上部を引き上げることにより、可撓性バック85は、その空間87内の圧力に応じて上下のF方向にスムーズに変形する。つまり本例の可撓性バック85は、その空間87内の極めて小さな圧力変化に応じてF方向に変形し、側方などから加わる外力によるF方向以外の方向への変形が抑えられる。
図7(a)は、可撓性バック85の空間87が大気に連通されているときの状態、つまり保圧機構80が外的要因を受けないときの状態を表す。すなわち、ファン68が停止し、かつバルブ84が開放されて、バック内空間87が保圧流路27と空気流路64を通して大気に連通されている。このようにバック内空間87が大気圧のとき、可撓性バッグ85の高さHaは、スプリング88の引き上げ力を受ける分だけ、可撓性バッグ85の自由長よりもやや大きい長さに相当する。ここで可撓性バッグ85の自由長とは、それにスプリング88のバネ力などを含む外力が与えられずに、可撓性バッグ85が単体として存在するときの長さである。スプリング88は、自由長の可撓性バッグ85を上方に引き伸ばすように作用するため、高さHaは、可撓性バッグ85の自由長よりもやや大きい長さに相当することになる。以下、可撓性バッグ85の高さHaを拮抗位置Haともいう。
図7(b)は、記録動作中における保圧機構80の状態を表す。記録動作時には、前述したように、ファン68の作用によって空気流路64が大気圧よりも減圧され、その減圧(負圧)がバルブ84を通して空気室66内に導入されている。したがって、バッグ内空間87は空気流路64と同様に減圧され、可撓性バッグ85はスプリング88の力に抗して下方へ押し縮められる。このとき、可撓性バッグ85の上面部を引き下げるように作用する力は、バッグ内空間87の上面部の面積Sに、ファン68によって減圧された圧力(減圧量)を乗じた値に相当する。
可撓性バッグ85の高さHbは、このような減圧によって可撓性バッグ85が下方へ押し縮められる力と、スプリング88が可撓性バッグ85を上方へ引き伸ばす力と、可撓性バッグ85が自らの自由長に戻ろうとする力と、が釣り合ったときの長さに相当する。スプリング88が可撓性バッグ85を上方へ引き伸ばす力は、可撓性バッグ85が下方へ押し縮められて高さHbが短くなるほど増大する。以下、可撓性バッグ85の高さHbを拮抗位置Hbともいう。
図8(c)は、バッグ内空間87が大きく減圧されて、可撓性バッグ85が限界まで下方へ押し縮められた状態を示す。このときの可撓性バッグ85の高さHcを拮抗位置Hcともいう。
次に、保圧機構80の作用について説明する。
記録動作時を含むファン68による減圧プロセス中において、ヘッドユニット22Kの空気室66が減圧されているときには、上述したようにバッグ内空間87内も減圧されて、可撓性バッグ85は図8(b)の拮抗位置Hbにある。このような減圧プロセスを経た後に、バルブ84を密閉してファン68を停止する待機状態に移行したときには、可撓性バッグ85はほぼ拮抗位置Hbに保たれる。
その理由は、バルブ84を閉じた待機時には、前述したようにヘッドユニット22Kの内部が、ノズル22Knの吐出口を除いて密閉された密閉系を形成し、またバッグ内空間87は、外部から空気を引き込むことがなく、その密閉系の一部を形成するからである。つまり、バッグ内空間87を含むヘッドユニット22Kの内部の系内は、ノズル22Knの吐出口によって大気に連通しているものの、その吐出口にインクのメニスカスが形成される。そのため、ヘッドユニット22Kの内部の系内の圧力と大気圧との差がメニスカスを破壊しない範囲内であれば、ノズル22Knの吐出口からのインクの排出および外気の吸引は阻止される。したがって、バッグ内空間87を含むヘッドユニット22Kの内部の系内は、密閉された空間とみなすことができる。ゆえに、減圧プロセスを経た後にバルブ84を閉じることにより、可撓性バッグ85は、ほぼ図8(b)の拮抗位置Hbに保たれることになる。
可撓性バッグ85が図8(b)の拮抗位置Hbにある待機時には、バッグ内空間87が減圧された状態であるため、ヘッドユニット22Kの内部の密閉系内は、ノズル22Kn内までをも含めて負圧状態に維持される。
このような待機時おいて、上記の密閉系内の温度が上昇した場合、その密閉系内の空気、つまり空気室66内、バッグ内空間87内、および空気流路64内などの空気が膨張する。そのような空気の膨張によって密閉系内の圧力が上昇(負圧が減少)した場合には、その上昇分の圧力がノズル22Knからインクを外部へ押し出すように作用する。しかし本実施形態においては、保圧機構80の作用により密閉系内の圧力(負圧)を保つことができる。
すなわち、密閉系内の空気が膨張した場合には、バッグ内空間87の体積を増加させるように、可撓性バッグ85が拮抗位置Hbよりも上方に伸びることにより、空気の体積膨張分を吸収する。ただし、可撓性バッグ85が上方に伸びる位置は拮抗位置Ha以下である。このように、可撓性バッグ85が拮抗位置Hbよりも上方に伸びたときには、スプリング88のバネ力と、可撓性バッグ85が自ら自由長に戻ろうとする力と、が可撓性バッグ85の内部上面を押し上げるように作用する。このような可撓性バッグ85が上方に伸びることにより、密閉系内の負圧が保たれることになる。密閉系内の空気が膨張する過程においては、スプリング88の作動長(引き伸ばし量)が短くなって、それが可撓性バッグ85の内部上面を上方へ引き上げる力が弱まる。そのため、可撓性バッグ85の上方の伸び量が大きくなるほど、その単位伸び量に対する密閉系内の負圧の吸収量は低下することになる。
また、上記の密閉系内の温度が下降した場合には、密閉系内の空気、つまり空気室66内、バッグ内空間87内、空気流路64内などの空気が収縮する。そのような空気の収縮によって密閉系内の圧力が下降(負圧が増大)した場合には、その下降分の圧力がノズル22Knから外部の空気を吸引するように作用する。しかし本実施形態においては、保圧機構80の作用により密閉系内の圧力(負圧)を保つことができる。
すなわち、密閉系内の空気が収縮した場合には、バッグ内空間87の体積を減少させるように、可撓性バッグ85が拮抗位置Hbよりも下方に縮むことにより、空気の体積収縮分を吸収する。ただし、可撓性バッグ85が下方に縮む位置は拮抗位置Hc以上である。このように、可撓性バッグ85が拮抗位置Hbよりも下方に縮んだときには、スプリング88のバネ力と、可撓性バッグ85が自ら自由長に戻ろうとする力と、が可撓性バッグ85の内部上面を押し上げるように作用する。このような可撓性バッグ85が下方に縮むことにより、密閉系内の負圧が保たれることになる。密閉系内の空気が収縮する過程においては、スプリング88の作動長(引き伸ばし量)が長くなって、それが可撓性バッグ85の内部上面を上方へ引き上げる力が強まる。そのため、可撓性バッグ85の下方の縮み量が大きくなるほど、その単位縮み量に対する密閉系内の負圧の吸収量は増加することになる。
以上説明したように、密閉系内の空気の膨張および収縮をバッグ内空間87の体積変化によって吸収することにより、密閉系内の負圧が保たれる。可撓性バッグ85が図7(c)の拮抗位置Hcの限界位置まで収縮したときに保たれる密閉系内の負圧は、ノズル22Knの吐出口に形成されるインクのメニスカスを破壊する大きさに達しないように設定するとよい。したがって、密閉系内の空気の膨張および収縮によって、可撓性バッグ85の拮抗位置が位置Haと位置Hcとの間の範囲内において変化することにより、密閉系内の負圧を適正な範囲に維持して、待機中の温度変化に起因する弊害を回避することができる。
また、可撓性バッグ85内は、ファン68による減圧プロセス中において減圧することにより、図7(b)のような拮抗位置Hbにリセットされる。したがって保圧機構80は、経時的に安定した性能を維持することができる。
本実施形態において、想定される空気の膨張および収縮による体積変化に対応する可撓性バッグ85の変位位置は、拮抗位置HaからHcの範囲内に設定した。しかし、必ずしもこのように設定しなくともよい。
仮に、可撓性バッグ85の拮抗位置が位置Haに達した後に、さらに空気の膨張が続いた場合には、上記の密閉系内が大気圧よりも大きい正圧になって、インクのメニスカスは、吐出口から凸状に突出する形状に形成されて破壊されやすくなる。この場合、そのメニスカスが破壊されて、ヘッドユニット22K内のインクがノズル22Knから外部へ漏出するおそれはあるものの、その状態も許容範囲内とみなしてもよい。また、可撓性バッグ85が拮抗位置Hcのときの密閉系内の負圧は、インクのメニスカスを破壊する程度以上の負圧に設定してもよい。ただし、想定される空気の収縮によって増加する密閉系内の負圧は、メニスカスを破壊する負圧以下とする。
また上述したように、待機時のバッグ内空間87の体積が変化することにより、上記の密閉系内の負圧の増加が支障のない範囲内において、待機中にノズル22Knからインクを吐出することも可能である。例えば、待機中に、ノズル22Kn内のインクの増粘を防止するために、画像の記録に寄与しないインクをノズル22Knからキャップ54内に吐出(予備吐出ともいう)して、ノズル22Kn内のインクをフレッシュなインクに置換することが可能である。さらに待機中に、画像を記録するためにノズル22Knからインクを吐出して、実際の記録動作を行なうことも可能である。また待機中に、ノズル22Knからキャップ54内に、画像の記録に寄与しないインクを吸引排出することも可能である。いずれにしても、密閉系内の負圧の増加が支障のない範囲内において、待機中に、ノズル22Knからインクを吐出および排出することが可能である。
(保圧機構の変形例)
ところで保圧機構80の構成は、上述した例に限定されるものではなく、上記の密閉系内の体積増減を吸収して、その密閉系内の負圧を維持することができる構成であればよい。以下、図8から図11に基づいて、本実施形態における保圧機構80の他の構成例について説明する。ただし、同様の機能を持つ部分については、同一名称および同一符号を付して説明を簡略化する。
図8の保圧機構80は、前述した図7の引っ張りスプリング88に代えて、可撓性バッグ85内に圧縮スプリング89が配備されている。圧縮スプリング89は、引っ張りスプリング88と同様に、可撓性バッグ85の内部上面を押し上げることにより、上記の密閉系内に負圧を作用させる。
図9の保圧機構80は、可撓性バッグ85の内部下面を錘91によって押し下げる構成となっている。本例の場合は、可撓性バッグ85の伸縮位置に拘わらず、錘91によって一定の力を可撓性バッグ85に加えることができる。そのため、上記の密閉系内の体積の変化量と、負圧の変化量と、の対応関係が単純化し、負圧の変化を抑制しやすくなる。
図10の保圧機構80は、可撓性バッグ85内に、2組の弓形のばね93を備えた構成となっている。2組の弓形のばね93は、その両端が互いに結合する上下対称的に組み合わされており、バッグ内空間87を拡張させるように、可撓性バッグ85の内部上面と内部下面を矢印方向に付勢する。そのバッグ内空間87が拡張するほど、可撓性バッグ85の内部上面および内部下面と、弓形のばね93と、が矢印方向に大きく変形する。バッグ内空間87の拡張方向は、上下方向のみに限定されず任意である。
図11の保圧機構80は、空気流路64の一部と一体的に構成されている。このように保圧機構80は、空気流路64から独立したユニット形態でなくてもよく、またヘッドユニット22Kなどの他の構成部材と一体的に構成してもよい。
以上、例示したような保圧機構によっても同様の効果を得ることができる。本発明においては、特に保圧機構の構成を限定するものではなく、例えば、これら例示したような構成の組み合わせてもよい。要は、上記の密閉系内の体積の増減を吸収して、負圧を維持できる構成であればよい。
(第2の実施形態)
保圧機構80は必ずしも空気流路64に接続しなくともよく、インク流路中に接続してもよい。図12は、保圧機構80をインク流路中に接続する一例としての本発明の第2の実施形態の説明図であり、保圧機構80は、保圧流路(インク流路)27によってヘッドユニット22Kの貯留部22Krに接続されている。保圧機構80は、前述した種々の構成を採ることができ、その内部に備わる可撓性バッグ85内には貯留部22Kr内のインクが導入される。記録装置の待機中に、貯留部22Krを含む密閉系内の空気の膨張および収縮は、保圧流路(インク流路)27を通して保圧機構80により吸収される。これにより、前述した実施形態と同様の保圧効果を得ることができる。
保圧機構80の可撓性バッグ85内は、インクによって満たされていてもよく、また空気が入っていてもよい。また、本実施形態のようにインク流路に保圧機構を備える場合、その保圧機構は、インク流路から独立したユニット形態とする他、例えば、ヘッドユニット22Kなどの他の構成物と一体的に構成してもよい。また、前述した実施形態および本実施形態においては、空気の体積の膨張および収縮に着目し、それらに起因する圧力変動を吸収する保圧機構80の機能について説明した。しかし厳密には、保圧機構80によって、温度変化によるインクの体積が膨張および収縮、およびヘッドユニット22Kなどの構成部材が受ける温度変化の影響などに起因する変動なども吸収することができる。
(第3の実施形態)
複数のヘッドユニットが用いられる場合、もしくは1つのヘッドユニット内に複数の貯留室が形成される場合には、必ずしも複数のヘッドユニットまたは複数の貯留室のそれぞれに対して、保圧機構を個別に備える必要はない。
図13は、本発明の第3の実施形態の要部の説明図であり、前述した実施形態と同様の部分には、同一符号を付して説明を省略する。ヘッドユニット22K、22C、22M,22Yの空気室66内に連通する空気流路64は集合されて、バルブ81を介して共通の減圧流路65に接続されている。その減圧流路65には、前述したようにファン68が備えられている。また、それぞれの空気流路64は、集合されて共通の保圧機構88に接続されている。
前述した実施形態と同様に、ファン68による減圧プロセスによって空気流路64内を減圧することにより、ヘッドユニット22K、22C、22M,22Yのそれぞれの空気室66内を一定の負圧に維持することができる。また、このような減圧プロセス後の記録装置の待機時に、バルブ64を閉じることにより、共通の保圧機構8880によって、ヘッドユニット22K、22C、22M,22Yのそれぞれの空気室66内の負圧を保つことができる。共通の保圧機構80は、それぞれのヘッドユニット22K、22C、22M,22Yに対して、空気が存在する空気流路64を介して接続されるため、それぞれのヘッドユニット内のインクは混じり合うことがない。
また、ヘッドユニット毎に、記録装置の待機中に維持する負圧の範囲が異なる場合には、それぞれのヘッドユニット毎に保圧機構80を接続してもよい。
(第4の実施形態)
前述した実施形態においては、ファンによる減圧プロセスによってヘッドユニット内を減圧する構成を備えている。しかし、ヘッドユニット内を減圧する方式は、このようなファンを用いた方式のみに特定されない。図14は、本発明の第4の実施形態として、前述した実施形態と異なる方式によってヘッドユニット内を減圧する方式を採用した一例の説明図であり、前述した実施形態と同様の部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態のヘッドユニットKrにおける貯留部22Krは、上下に位置する第1および第2の貯留部22Kr−1,22Kr−2に分けてられており、下側の第2の貯留部22Kr−2は吐出部22KSiと一体に構成されている。貯留部22Kr−1,22Kr−2は連通路33によって互いに連通されており、その連通路33にはバルブ35が備えられている。上側の第1の貯留部22Kr−1は、インクタンク28Kをメインタンクとしたときに、サブタンクとして機能することができる。前述した実施形態においては、吐出部22KSiと貯留部22Krは一体的に構成されている。
第1の貯留部22Kr−1は、大気連通口36を通して大気に連通している。また第1の貯留部22Kr−1内には、連通路33に連通する吸引口33Aの近傍に位置するポンプ34が備えられており、そのポンプ34は、モータ37によって回転駆動されて遠心ファンとして機能する。第2の貯留部22Kr−2には、保圧流路(インク流路)27によって保圧機構80が接続されている。バルブ35を閉じることにより、吐出部22KSiは、前述した実施形態と同様に密閉系を形成する。
本実施形態の場合は、モ−タ37によって、第1の貯留部22Kr−1内のインク中においてポンプ34を回転させ、その回転によって生じるインクの遠心力により、吸入口33Aの近傍を減圧する。その減圧により、前述した実施形態と同様に、吐出部22KSi内のインクに負圧を付与することができる。このようにポンプ34による減圧プロセスの後の待機時に、バルブ35を閉じることにより、吐出部22KSiは前述した実施形態と同様に密閉系を形成し、その密閉系内の負圧は、前述した第2の実施形態と同様に保圧機構80によって保たれる。
本実施形態では、上記の密閉系内に積極的に空気を貯蔵する空間(空気室66)はない。しかし記録動作等に伴って、その密閉系内に気泡が混入することが考えられるため、前述した実施形態と同様に、その気泡の膨張および収縮を吸収するように保圧機構80を機能させることができる。またバルブ35は、サブタンクを構成する第1の貯留部22Kr−1の大気連通口36に備えてもよい。この場合には、待機時にバルブ35によって大気連通口36を閉じることにより、上記の密閉系内に、第1の貯留部22Kr−1内の空気層が含まれるため、前述した第1および第3の実施形態と同様に保圧機構80を機能させることができる。また、この場合には、ポンプ34とモータ37とを接続するシャフト(接続部)が第1の貯留部22Kr−1を貫通する部分に、その貯留部22Kr−1の内部を外気と遮断するためのシール機構を備える必要がある。また、第1および第2の貯留部22Kr−1,22Kr−2を含めてユニット化した記録ヘッドを構成する他、第1の貯留部22Kr−1を記録装置側に備え、第2の貯留部22Kr−2を記録ヘッド側に備えてもよい。
(他の実施形態)
インクの吐出方式としては、前述した実施形態のように吐出エネルギー発生素子として電気熱変換体(ヒータ)を用いる方式の他、圧電素子などを用いた種々の方式を採用することができる。つまり本発明は、種々の吐出方式の記録ヘッドに対して広く適用することができる。また本発明を適用可能な記録ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドのみに特定されず、種々の方式によって画像を記録可能な記録ヘッドに対して適用可能である。
また、インクを用いて記録媒体に画像を記録する記録方式としては、前述した実施形態のような所謂フルライン方式、つまり記録媒体の幅方向の記録領域の全域に渡って延在する長尺な記録ヘッドを用いる記録方式のみに特定されない。例えば、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送動作と、を伴って画像を記録する所謂シリアルスキャン方式であってもよい。また、前述した第1から第3の実施形態におけるファン68としては、種々のものを用いることができ、プロペラタイプのいわゆる非容積型のポンプの他、容積型のポンプを用いることもできる。また本発明は、インク以外の液体(薬液など)を供給するための液体供給装置および液体供給装置、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッド、その液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置としても広く適用可能である。
本発明は、負圧を導入可能な液室内のインクをノズルから吐出可能なインクジェット記録ヘッドにおいて、液室がノズルを除いて大気と遮断された密閉系を形成するときに、液室内の負圧を保つように液室内の流体の体積変化を吸収可能な保圧機構を備えればよい。その場合、保圧機構は、液室に連通しかつ容積の増減が可能な閉空間と、その閉空間を形成する形成部材に閉空間を増加させる方向の荷重を与える荷重付与部と、を含むことができる。その形成部材は、少なくとも可撓性の部材を含む構成することができ、また、剛体のシリンダとピストンとを組み合わせるようにして閉空間を形成することもできる。また荷重付与部としては、前述したようなばね部材や錘を含む構成の他、種々の構成を採用することができ、要は、閉空間を増加させる方向の荷重を与えることができればよい。
液室は、ノズルに連通するインク貯留部と、インク貯留部に連通する空気室と、負圧発生部から空気室内に負圧を導入可能な負圧導入部と、インク供給部からインク貯留部にインクを導入可能なインク導入部と、を含むことができる。その場合、液室は、負圧発生部と負圧導入部との間が遮断され、かつインク供給部とインク導入部との間が遮断されることにより密閉系を形成することになる。
また負圧発生部は、液室内を減圧するように空気室内の空気を外部に放出するための空気流路を含むことができ、さらに、ファンによって空気の流れが生じる保圧流路中に空気流路を連通させることにより、空気室内の空気が保圧流路内に吸引させることができる。また負圧発生部は、液室に連通路を介して連通されてインクを貯留可能なインク貯留部と、液室内のインクに負圧を付与するように、連通路内のインクを液室からインク貯留部に向かって吸引するポンプと、を備えることができる。