JP4995134B2 - 風車の監視装置及び方法並びにプログラム - Google Patents
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Description
また、複数の計測項目間で複数の組み合わせの相関があるときには、これらの相関を考慮して運転状態を判定することが好ましいが、このような複雑な処理については自動により判定することは困難であった。
また、診断精度の向上を図るために、専門家による診断判定を行うことも考えられるが、多大な計測データを処理することは、労力、時間の面から好ましくない。また、専門家による診断の場合には、運転時の異常検知や要因分析の精度・再現性が専門家個人の知見や熟練度に依存することとなる。従って、風車設備の異常検知や要因分析の診断レベルに大きなバラツキが生じてしまうという問題が生ずる。
本発明は、風車に設けられた複数のセンサによって計測された計測データに基づいて作成される特性値を用いて、前記風車の状態を監視する風車の監視装置であって、計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納されているとともに、同じ計測時間に関連付けられている特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットには、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報が付与されて格納されている第1記憶手段と、計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納されているとともに、同じ計測時間に関連付けられている特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットには、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報が付与されており、かつ、前記データセットを構成する特定の前記特性項目の特性値が予め定義されている所定の基準範囲に属している第2記憶手段と、前記第1記憶手段から診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定するとともに、前記第2記憶手段から前記診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定する診断設定手段と、前記診断設定手段によって設定された前記被診断データファイルのデータセット及び前記基準データファイルのデータセットを元に、統計的演算手法を用いて、前記風車の状態を表す状態指標値を算出する指標値算出手段と、前記指標値算出手段によって算出された状態指標値に基づいて、前記風車の状態を評価する評価手段と、前記評価手段による評価結果を通知する通知手段とを備える風車の監視装置を提供する。
このようにすることで、クラス分類別に設定された適切な基準範囲を用いて、基準データファイルを作成することが可能となる。
図1は、風車の概略構成を示した図である。図1に示すように、風車1は、基礎6の上に立設される支柱2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、略水平な軸線周りに回転可能にしてナセル3に設けられるロータヘッド4とを有している。ロータヘッド4には、その回転軸線周りに放射状に複数枚の風車翼5が取り付けられている。これにより、ロータヘッド4の回転軸線方向から風車翼5に当たった風の力が、ロータヘッド4を回転軸線周りに回転させる動力に変換され、この動力が発電機によって電気エネルギーに変換されるようになっている。
Memory)などの主記憶装置12、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk
Drive)などの補助記憶装置13、キーボードやマウスなどの入力装置14、及びモニタやプリンタなどの出力装置15、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置16などで構成されている。
補助記憶装置13には、各種プログラム(例えば、監視プログラム)が格納されており、CPU11が補助記憶装置13から主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
ここで、各データファイルの各計測データには、その計測データが測定された計測時間が関連付けられている。この計測時間は、後述するクラス分類部24において行われる診断データの作成処理において、データファイル間の各種測定データを互いに関連付ける紐付けパラメータとして機能する。
〔サンプリング時間の統一化処理〕
上述した計測情報記憶部21に格納されている各種データファイルに係る各計測データの計測時間の時間間隔(以下「サンプリング時間」という)は統一されていない。従って、データ生成部22は、まず、これらのサンプリング時間を統一する処理を行う。本実施形態では、各データファイルを1分間隔の計測データとなるように再構築する。
このようにすることで、全てのデータファイルの計測データを共通の時間間隔で同期関連付けさせることができる。
次に、データ生成部22は、計測時間を統一させた各種データファイルのうち、所定のデータファイルを対象に、「診断物理量」の抽出を行う。
つまり、上述のように、上記計測情報記憶部21には、各種センサによって計測された生のデータが格納されることとなるが、各監視部位の運転状況等を診断するためには、これら生のデータから診断に好適な診断物理量を生成、抽出する必要がある。
このようにして、所定のデータファイルにおいて、診断物理量が算出され、新たなデータベースが作成される。
図6に、被診断データファイルの一例を示す。図6に示されるように、センサ別に各計測時間における計測データまたは診断物理量が関連付けられている。本実施形態では、図6の表の最上段に記載された各計測データや診断物理量の属性を示す「正規化風速」、「MET風速乱れ度」、「送電端出力」、「AZi1」、「AZi2」等の見出しを「特性項目」といい、各特性項目の各データを「特性値」と定義する。
本実施形態では、ある1日の0:00から23:59までの1分刻みの特性値を統合して1つの被診断データファイルを構成している。
具体的には、クラス分類部24は、クラス分類定義部23に定義されているクラス定義に基づいて、各データセット、換言すると、図6に示された被診断データファイルの行毎に、どのクラス分類に属するかを区分けし、各データセットにクラス分類を示すフラグを立てる。
本実施形態では、クラス分類の指標量となる特性項目を、「風速」としている。「風速」は、風車の発電性能に強い相関性を有しているため好都合である。ここでは、「風速」の段階毎の物理量で境界値(条件)を設定し、クラスF0、F1、F2、F3とクラス分類を定義している。
上記クラスF0は、風車が発電に寄与しない風速域であるため、クラスF0は診断対象外のデータ集団とし、クラスF1からF3の3クラスを診断対象となるクラスとして定義する。
また、上記例では、風速等に基づいてクラス分類を行ったが、図7にカッコで示されるように、風車の発電性能に強い相関性を示す「回転数」に基づいてクラス分類を行うこととしてもよい。
もちろんこの段階で、第2記憶部28に格納されている正常データファイルの各データセットには、前段処理のクラス分類部24においてクラス分類のフラグが付加されている。
図9は、発電量の変動範囲を規定したおよそ性能面からの正常定義である。
図9において横軸は風速、縦軸は発電量Pである。発電量の性能曲線は、P(V、r)の関数で表すことができる。発電量の正常範囲は、風速によるクラス分類F1〜F3毎に、正常範囲(I),(II),(III)がそれぞれ定義されており、正常な性能範囲であると定義する条件は、その性能曲線から±ΔP/2の変動幅としている。
更に、上記例では、横軸を風速としたが、図9において、横軸を回転数r、縦軸を発電量Pとしてもよい。この場合、回転数に応じたクラス分類毎に、上記正常範囲(I)、(II)、(III)が定義されることとなる。
図10において横軸は風速、縦軸は風向偏差Δθである。ここで「風向偏差」について説明する。通常、風車の「正常」な運転条件とは、常に風向きに対して風車翼の回転面が真正面で受け止めていることが前提となる。
また、本実施形態では、風車1を構成部位の一つのナセル3の中の軸受け・増速機(監視部位)の状態を監視する場合を想定する。
以下、状態指標値の算出処理について図12を参照して説明する。
まず、指標値算出部30は、データの規格化処理を実行する(図12のステップSB1)。
例えば、診断設定部29において設定された基準データファイルの計測時間数をi、特性項目数をjとすると、基準データファイルは、i行j列の行列を成す。例えば、1分間隔で1日分のデータ数ならば、24時間×60分=1440分で1440行、計測したデータ項目種類が200種類あれば、200列のデータサイズになる。
なお、以下の説明においては、図13に示すように、n行k列の各データファイルを想定して説明する。
次に、指標値算出部30は、基準データファイルの特性規格値Xijを用いて、相関行列R=(rij)を計算する(図12のステップSB2)。相関行列Rは以下の(5)式を用いて導出される。相関行列は対角成分が1であるk次行列となる。
続いて、指標値算出部30は、以下の(6)式を用いて、基準データファイルの相関行列Rの逆行列A=R-1を算出する(図12のステップSB3)。
次に、上記(6)式で求められた基準データファイルの相関逆行列Aと、規格化後の被診断データファイルの各特性規格値Yijを用いてマハラノビス距離D2 i(以下「MD値」という)を求める(図12のステップSB4)。MD値D2 iは、以下の(7)式を用いて算出される。
次に、本発明の第2の実施形態について、図を参照して説明する。
上述した第1の実施形態に係る風車1の監視装置では、風車の増速機を監視する場合について説明したが、本実施形態では、風車構造体全体にかかる荷重及び強度を監視する場合について説明する。
一般に風車は、風を風車翼で受け、風車翼が回転することで機械的エネルギーを生みだし、その機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するが、このとき風車構造体は風等による荷重がかかっている。初期設計では、各構造部位の耐荷重許容値を充足する強度が保たれているが、風雨・腐食・経年劣化などにより強度劣化が進展する。
この場合、図6に示した診断データファイルにおいて、「特性」に分類される特性項目が監視部位に応じて増えることとなる。
そして、上記MD値の算出については、複数の監視部位の状態を総合して、一種類のMD値にて風車の健全性指標値として算出される。
次に、本発明の第3の実施形態に係る監視装置について説明する。
上述した第1または第2の実施形態に係る監視装置において、異常判定部31によって異常が検知された場合、どの特性項目がその異常状態に関与しているのか、または関与してないのか、を定量的に特定する必要性が出てくる。本実施形態は、その要求に鑑み提案されたものである。
式(8)で算出された12通りのSN比η1〜η12の結果は、図18のように、直交表の右端に追加される。これで要因効果の各特性項目(特性項目1から特性項目5)についてのSN比利得を算出する準備が整ったこととなる。
具体的には、風車1の特性項目に併せて考えれば、例えば、「特性項目1=低速段噛み合せ1次」、「特性項目=中速段オーバーオール値」、「特性項目=風速乱れ度」、「特性項目=風向偏差」、「特性項目=風車翼中央歪み値」等のように、当てはめて考えて良い。
以下の式に表されるように、異常診断データファイルにおける要因効果分析で求める特性項目1から5のSN比利得ηc1〜ηc5とは、その特性項目を使った組み合わせの時(○)のSN比と使わなかった組み合わせの時(×)のSN比の差分である。
要因分析部50は、各特性項目に対する要因効果の寄与率を式(9)の利得に基づいて定量化することで、被診断データファイルの複数ある特性項目から異常の要因に寄与している可能性の高い特性項目を選定し、この要因効果の結果を通知部32に出力する。これにより、通知部32によって要因分析部50の解析結果がユーザに通知される。
次に、本発明の第4の実施形態に係る風車の監視装置について説明する。
上述した各実施形態においては、基準データファイルとして正常データファイルを用いていた。本実施形態では、これに代えて、基準データファイルとして異常データファイルを用いることにより、上述したMD値を算出する。そして、このMD値が所定の閾値よりも小さかった場合に、異常が発生していると判定する。
次に、本発明の一実施形態に係る監視システムについて説明する。
上述した各実施形態に係る監視装置は、1台の風車の各部に関する状態監視を行うものであった。本実施形態に係る監視システムは、複数の風車が設置されているウィンドファームにおいて、その一部或いは全ての風車1の状態監視を行う。
具体的には、監視システムは、各監視装置から上記状態指数値等の監視結果の情報を無線通信ネットワーク等の通信ネットワークを介して取得するとともに、監視対象である風車から出力される総出力電力量について、ネットワークを介して取得する。
3 ナセル
4 ロータヘッド
5 風車翼
10 風車の監視装置
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
16 通信装置
21 計測情報記憶部
22 データ生成部
23 クラス分類定義部
24 クラス分類部
25 第1記憶部
26 正常データ条件定義部
27 正常データ抽出部
28 第2記憶部
29 診断設定部
30 指標算出部
31 異常判定部
32 通知部
50 要因分析部
Claims (11)
- 風車に設けられた複数のセンサによって計測された計測データに基づいて作成される特性値を用いて、前記風車の状態を監視する風車の監視装置であって、
計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納されているとともに、同じ計測時間に関連付けられている特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットには、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報が付与されて格納されている第1記憶手段と、
計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納されているとともに、同じ計測時間に関連付けられている特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットには、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報が付与されており、かつ、前記データセットを構成する特定の前記特性項目の特性値が予め定義されている所定の基準範囲に属している第2記憶手段と、
前記第1記憶手段から診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定するとともに、前記第2記憶手段から前記診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定する診断設定手段と、
前記診断設定手段によって設定された前記被診断データファイルのデータセット及び前記基準データファイルのデータセットを元に、統計的演算手法を用いて、前記風車の状態を表す状態指標値を算出する指標値算出手段と、
前記指標値算出手段によって算出された状態指標値に基づいて、前記風車の状態を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価結果を通知する通知手段と
を備える風車の監視装置。 - 前記特性項目は、風車を取り巻く環境に関する環境区分、風車運転の性能・発電条件に関する性能区分、及び風車に設定された各種監視部位に係る運転状態の診断に関する特性区分の3つに大別される請求項1に記載の風車の監視装置。
- 前記クラス分類は、前記環境区分及び前記性能区分の少なくともいずれか一方に分類される所定の特性項目の特性値に応じて決定される請求項2に記載の風車の監視装置。
- 前記第2記憶手段に格納される複数の前記データセットは、前記風車から収集された複数の前記計測データから生成される複数のデータセットのうち、前記特定の特性項目に係る特性値が予め設定されている基準範囲に属するデータセットのみが抽出されたものである請求項1から請求項3のいずれかに記載の風車の監視装置。
- 前記基準範囲は、前記クラス分類別に設定されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の風車の監視装置。
- 前記指標値算出手段は、前記診断設定手段によって設定された前記基準データの特性分布を求めるとともに、前記被診断データの特性分布を求め、互いの特性分布が乖離している距離を定量的に求めることで前記状態指標値を算出する請求項1から請求項5のいずれかに記載の風車の監視装置。
- 前記指標値算出手段により算出される前記状態指標値は、マハラノビス・タグチメソッドを用いて算出されるマハラノビス距離である請求項6に記載の風車の監視装置。
- 前記評価手段によって異常が発生していると評価された場合に、その異常の要因分析を行う要因分析手段を備える請求項1から請求項7のいずれかに記載の風車の監視装置。
- 複数の風車を備えるウィンドファームの一部または全体の状態を監視する風車群の監視システムであって、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の風車の監視装置を備え、前記風車の監視装置によって求められた各前記風車の状態指標値及び前記ウィンドファームの一部または全体の運転性能に基づいて、ウィンドファームの一部または全体の状態を監視する風車群の監視システム。 - 風車に設けられた複数のセンサによって計測された計測データに基づいて作成される特性値を用いて、前記風車の状態を監視する風車の監視方法であって、
計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納された被診断データファイルを作成する過程と、
前記被診断データファイルにおいて、同じ計測時間に関連付けられている前記特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットに、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報を付与する過程と、
特定の特性項目に関する特性値が、予め定義されている所定の基準範囲に属しているとともに、各特性項目の特性値が計測時間に関連付けられている基準データファイルを作成する過程と、
前記基準データファイルにおいて、同じ計測時間に関連付けられている前記特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットに、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報を付与する過程と、
前記被診断データファイルから診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定するとともに、前記基準データファイルから前記診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定する過程と、
設定した前記被診断データファイルのデータセット及び前記基準データファイルのデータセットを元に、統計的演算手法を用いて、前記風車の状態を表す状態指標値を算出する過程と、
前記状態指標値に基づいて、前記風車の状態を評価する過程と、
前記評価の結果を通知する過程と
を有する風車の監視方法。 - 風車に設けられた複数のセンサによって計測された計測データに基づいて作成される特性値を用いて、前記風車の状態を監視するのに使用される風車の監視プログラムであって、
計測時間に関連付けられた複数の特性値が特性項目別に格納された被診断データファイルを作成する処理と、
前記被診断データファイルにおいて、同じ計測時間に関連付けられている前記特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットに、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報を付与する処理と、
特定の特性項目に関する特性値が、予め定義されている所定の基準範囲に属しているとともに、各特性項目の特性値が計測時間に関連付けられている基準データファイルを作成する処理と、
前記基準データファイルにおいて、同じ計測時間に関連付けられている前記特性値を一つのデータセットとした場合に、該データセットに、所定の特性項目の特性値に応じて決定されるクラス分類を示す識別情報を付与する処理と、
前記被診断データファイルから診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定するとともに、前記基準データファイルから前記診断に用いる複数の前記データセットを抽出して設定する処理と、
設定した前記被診断データファイルのデータセット及び前記基準データファイルのデータセットを元に、統計的演算手法を用いて、前記風車の状態を表す状態指標値を算出する処理と、
前記状態指標値に基づいて、前記風車の状態を評価する処理と、
前記評価の結果を通知する処理と
をコンピュータに実行させるための風車の監視プログラム。
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