JP4993933B2 - 片面サブマージアーク溶接用裏当フラックス - Google Patents
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MgOはスラグ形成のための主要な成分であり、その添加により、スラグの粘度を低下させる。MgOの含有量が19質量%未満であると適正なスラグ量が確保できず裏ビードが過大になる。一方、MgOの含有量が43質量%を超えるとスラグ量は増大し、裏ビードの余盛高さが低くなると共に、スラグ粘度が低下し裏ビードの幅の揃いが劣化し、波目が粗くなり外観が損なわれる。従って、MgOの添加量を19乃至43質量%とする。
TiO2は、その添加により、フラックスの融点及び高温での粘度を変化させる特性を有し、スラグの粘度と剥離性を調整するのに特に重要な成分である。TiO2の含有量が8質量%未満であると裏ビードのスラグ焼き付きが発生し、スラグの剥離性が劣化する。一方、TiO2の含有量が32質量%を超えるとスラグの粘度が増加するため、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化し、アンダーカットが発生する。また、TiO2の含有量が8質量%未満の場合と同様に、スラグの剥離性が劣化する。従って、TiO2の添加量を8乃至32質量%とする。
SiO2は、その添加により、フラックスの高温における粘度及び融点を変化させる特性を有し、スラグ粘度の調整とスラグ形成のため特に重要な成分である。SiO2の含有量が8質量%未満ではスラグの粘度が低下することで、裏ビードの幅の揃いが劣化し、波目が粗くなるため外観が損なわれる。一方、SiO2の含有量が35質量%を超えるとスラグの粘度が過大となり、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化しアンダーカットが発生すると共に、スラグ量が増大し、裏ビードの余盛高さが過小となる。従って、SiO2の添加量を8乃至35質量%とする。
Al2O3は、その添加により、スラグの粘度および凝固温度を調整するのに有効な成分である。Al2O3の含有量が3質量%未満であるとスラグの粘度が低くなり、裏ビードの幅の揃いが劣化し、波目が粗くなるため、ビード外観が損なわれる。一方、Al2O3の含有量が18質量%を超えるとスラグの凝固温度が低くなり、裏ビードの形状が過大となる。従って、Al2O3の添加量を3乃至18質量%とする。
CaOは、その添加により、スラグの粘度を調整しビード形状を整えるために重要な成分であり、またスラグの剥離性を調整するのに有効な成分である。CaOの含有量が3質量%未満であるとスラグの粘度が過小となり、裏ビードの幅の揃いが劣化する。一方、CaOの含有量が23質量%を超えるとスラグの粘度が過大となり、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化し、アンダーカットが発生すると共に、スラグが焼付き及びスラグ剥離性が劣化する。従って、CaOの添加量を3乃至23質量%とする。
CaF2は、その添加により、スラグの粘度を調整しスラグ生成を促進させるために有効な成分である。CaF2の含有量が2質量%未満であるとスラグ量が不足するため裏ビードの余盛が過大となる。一方、CaF2の含有量が14質量%を超えるとスラグの粘度が過大となり、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化する。また、アンダーカットが発生し、ビード外観が損なわれる。従って、CaF2の添加量を2乃至14質量%とする。
熱硬化性樹脂は裏当銅板へのこびりつきを抑制するため、極力添加しないことが好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が1.0質量%を超えると溶接熱により裏当フラックスの裏当銅板へのこびりつきが増加する。従って、こびりつきと工業的な混入量を考慮し、熱硬化性樹脂の添加量を1.0%未満に規制する。
SiO2、及びTiO2はフラックスの主成分であり、その添加により、融点、及び高温におけるスラグの粘度を変化させる特に重要な成分である。SiO2、及びTiO2の含有量が総量で22質量%未満であるとスラグの高温粘度が低下し、裏ビードの幅の揃いが劣化し、波目が粗くなり外観を損なうと共に、スラグ剥離性が劣化する。また溶接アーク直近における裏当フラックスの溶融、凝固反応のバランスが崩れ、適正な裏ビードの余盛高さと幅が得られない。一方、SiO2、及びTiO2の含有量が総量で58質量%を超えるとスラグの高温粘度が増加し、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化し、アンダーカットが発生する。また溶接アーク直近における裏当フラックスの溶融、凝固反応のバランスが崩れ、適正な裏ビードの余盛高さと幅が得られない。従って、SiO2、及びTiO2の含有量を総量で22乃至58質量%とする。
スラグの高温における粘度は、裏ビード形状の調整のため重要なパラメータである。スラグの1400℃における粘度が0.085Pa・秒未満であると、スラグの粘度が過小となるため、裏ビードの幅の揃いが劣化し、波目が粗くなり外観を損なう。一方、スラグの1400℃における粘度が0.250Pa・秒を超えるとスラグの粘度が過大となり、鋼板と裏ビードのなじみ性が劣化し、アンダーカットが発生する。従って、スラグの1400℃における粘度を0.085乃至0.250Pa・秒に規定する。なお、主にSiO2、TiO2、CaF2、CaO、及びMgOは高温粘度を変化させる重要な成分であり、SiO2、TiO2、CaF2、及びCaOの含有量を増加、又はMgOの含有量を減少させると粘度は増加する。一方、SiO2、TiO2、CaF2、及びCaOの含有量を減少、又はMgOの含有量を増加させると粘度は低下する。
Feを除くフラックス成分の融点は、フラックスの溶融と凝固のバランスを適正化し、裏ビード余盛高さを調整するための重要なパラメータである。融点が850℃未満であると、裏ビードの余盛高さが過大となり溶接中に溶落する可能性が高くなる。一方、1400℃を超えると、フラックスの溶融と凝固のバランスが崩れ、十分な裏ビードの余盛高さを得ることができない。従って、Feを除くフラックス成分の融点を850乃至1400℃に規定する。なお、主にSiO2及びAl2O3はフラックスの融点を変化させる重要な成分であり、SiO2及びAl2O3の含有量を増加させると融点は下がる。一方、SiO2及びAl2O3の含有量を減少させると融点は上がる。
MnOは、その添加により、スラグ生成を促進させるために有効な成分である。MnOの含有量が1.0質量%未満であるとスラグ量が少なくなり、裏ビードが大きくなる。一方、MnOの含有量が9.5質量%を超えるとスラグ量が増加し、裏ビードが小さくなる。従って、MnOの添加量を1.0乃至9.5質量%とする。
B2O3は溶接アーク熱で還元され、表フラックスに含有した場合Bとして溶接金属中に存在し靱性を確保する効果を有するが、裏当フラックスに含有しても溶接金属全体への歩留は低いため特にその効果は少ない。しかし、B2O3の含有量が1.6質量%を超えると裏ビードに多く固溶し、耐高温割れ性が劣化する可能性があると共に、スラグ焼き付きが発生する可能性がある。従って、B2O3の添加量を1.6質量%以下に規制する。
ZrO2は、その添加により、スラグの剥離性を調整するために有効な成分である。しかし、ZrO2の含有量が11質量%を超えると、スラグの焼き付きが増加し、部分的にスラグ剥離性が劣化する可能性がある。従って、ZrO2の添加量を11質量%以下に規制する。
Na2O、及びK2Oは、その添加により、アークの安定性を確保するために有効な成分であるが、Na2O、及びK2Oの含有量が総量で6質量%を超えると耐吸湿性が劣化し、ブローホールの発生、及び耐低温割れ性が劣化する可能性がある。従って、Na2O、及びK2Oの添加量を総量で6質量%以下に規制する。
溶接中の大気からのシールド性及び溶接作業性等を適正に保つため、Mo、CO2、BaO、Fe、及びFe酸化物などを添加できるが、微量成分、不可避的不純物の総量を7質量%以下に規制する。
2:電極
3:鋼板
Claims (1)
- 熱硬化性樹脂の含有量が1.0質量%未満の片面サブマージアーク溶接用裏当フラックスであって、フラックス成分は、MgO:19乃至43質量%、TiO2:8乃至32質量%、SiO2:8乃至35質量%、Al2O3:3乃至18質量%、CaO:3乃至23質量%、CaF2:2乃至14質量%、SiO2及びTiO2:総量で22乃至58質量%、MnO:1.0乃至9.5質量%、B2O3:1.6質量%以下、ZrO2:11質量%以下、Na2O及びK2O:総量で6質量%以下を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、この不可避不純物の量を7質量%以下に規制した組成を有し、前記フラックス成分によって形成されるスラグの1400℃における粘度が0.085乃至0.250Pa・秒であり、Feを除くフラックス成分の融点が850乃至1400℃であることを特徴とする片面サブマージアーク溶接用裏当フラックス。
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