JP4992319B2 - 時計 - Google Patents
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Description
このような時計に内蔵されるゴングは、ケース内周に沿って配置された略C字状の金属棒材で構成され、一端のみを地板等にネジ等で強固に固定し、他端側は固定せずに自由端とされていた。これにより、ゴングをハンマーで叩いた際にゴングが振動して音が発生するように構成されていた。
そのため、本発明者は、腕時計や懐中時計のような携帯可能な小型の時計にも内蔵でき、かつ、従来にない特徴を有する音を発せられる音源を種々検討していた。
その結果、お鈴などのお椀型(釣鐘型)の音源を採用することで、これまでの時計にはない独自の音色と余韻を実現することができた。
しなしながら、このようなお椀型の音源は、前記ゴングに比べて体積が大きいために腕時計のような小型の時計内に組み込むには工夫が必要であった。その上、ゴングは端部を地板等に強固に固定するだけでよかったが、お椀型の音源はその固定の仕方で音色や余韻が大きく異なってしまうという新たな問題も見出された。
また、本発明の時計は、時刻を計時して表示する時計機構と、ハンマーと、前記ハンマーの打撃によって音を鳴らすお椀型音源と、前記お椀型音源を前記時計機構に固定する音源固定部材と、前記ハンマーを動作させる打撃制御手段と、を備え、前記お椀型音源は底部と側壁部とを備え、前記時計機構の少なくとも一部、前記ハンマーおよび前記打撃制御手段は、前記お椀型音源の底部および側壁部で囲まれた内部空間に配置され、前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部の中心に取り付けられ、かつ、前記時計機構に対してばね材を介して取り付けられ、前記お椀型音源は、前記ハンマーで前記お椀型音源が打撃された際に、前記ばね材が変形することによって、時計の外装ケースおよび前記時計機構に接触しない範囲で所定距離だけ移動可能とされていることを特徴とする。
に固定しているので、お鈴などのお椀型音源において、特に音の発生に影響する側壁部分の振動への影響を軽減でき、音の余韻を長くすることができる。
また、音源固定部材は、ハンマーで打たれたお椀型音源を所定距離だけ移動可能に取り付けているため、お椀型音源に打撃により伝わったエネルギが音源や音源固定部材の部品の変形に消費されないため、音源の振動が減衰し難くなり、音の余韻が長くなる。このため、音源としてゴングを用いた場合に比べて、特に余韻が長い音を発生させることができる。
すなわち、音源固定部材を所定の隙間寸法を介して時計機構側に取り付けていれば、ハンマーでお椀型音源を叩いた際に、音源固定部材は前記隙間寸法分の微少距離を移動できる。このため、お椀型音源に打撃により伝わったエネルギが音源や音源固定部材の変形に消費されないため、音源の振動が減衰し難くなり、音の余韻が長くなる。
また、音源固定部材をばね材を介して時計機構側に取り付けていれば、ハンマーでお椀型音源を叩いた際に、音源固定部材は前記ばね材が変形することで微少距離を移動できるため、音源の振動が減衰し難くなり、音の余韻が長くなる。
さらに、通常の携帯時の振動、衝撃ではケースやムーブメントにお椀型音源が接触しないように設定されているため、通常の使用状況においてお椀型音源がケースなどに接触して音が鳴ってしまうことを防止できる。
音源固定部材の固定アーム部で時計機構に取り付けているので、指針の駆動軸等が設けられる時計機構の中心軸部分を避けて取り付けることができる。このため、時計機構における部品配置の調整が不要となり、既存の時計機構を用いることもでき、コストを低減できる。
また、音源固定部材を所定の隙間寸法を介して時計機構側に取り付けたので、ハンマーでお椀型音源を叩いた際に、音源固定部材は前記隙間寸法分の微少距離を移動できる。このため、お椀型音源に打撃により伝わったエネルギが音源や音源固定部材の変形に消費されないため、音源の振動が減衰し難くなり、音の余韻が長くなる。
なお、セルフセンタリング機構としては、ばねを利用したり、傾斜面およびお椀型音源の自重を利用したものなどが利用できる。
この調速装置としては、動力伝達手段を介して供給されるエネルギ蓄積手段のエネルギにより回転するロータと、前記ロータの回転軸に直交する翼平面を備えるとともに、ロータの回転による遠心力でロータの半径方向外周側に移動可能に設けられた翼と、前記ロータおよび翼間に配置されるとともに、前記翼をロータの半径方向内周側に引き戻す翼引き戻し手段と、前記ロータの外周に設けられ、かつ、前記翼がロータの半径方向外周側に移動した際に、その翼平面に対して所定の隙間寸法だけ離れて対向配置される対向面を備える対向物と、を備えるものが好ましい。
翼がロータの半径方向外周側に移動すると、翼には移動量に応じた流体粘性抵抗が加わる。すなわち、ロータ速度がある速度に達すると、速度に応じた遠心力を受けた翼が対向物と平面的に重なる。翼平面と対向物の対向面との距離を周囲の部材と翼平面との距離よりも小さい所定寸法に設定しておけば、翼が対向物と平面的に重なると、翼と対向物の間に翼と対向物が重なる前に翼の周囲に発生していた粘性抵抗より大きな粘性抵抗が働く。従って、粘性抵抗は翼と対向物が重なり始める速度を境に大きく変化する。つまり、翼は対向物の境界線(内周縁)付近で、ロータ速度増→翼移動量増→翼と対向物が重なり、粘性抵抗増→ロータ速度低下→翼引き戻される→翼と対向物の重なり無くなり、粘性負荷減→ロータ速度上昇、といった現象を繰り返す。
よって、エネルギ蓄積手段からロータまでの動力伝達経路中、またはロータ以降、もしくはロータへの動力伝達経路とは別経路でエネルギ蓄積手段から動力を受けるアクチュエータ、発電機などを配置した場合、前記調速装置によってロータ速度つまりはエネルギ蓄積手段におけるエネルギ供給速度(例えばゼンマイが解ける速度)が一定となるため、短期的に見ればアクチュエータや発電機の動作速度は変動するものの、一定期間中の回転総数は平均化され、ハンマー等のアクチュエータや発電機の動作を一定速度に制御できる。
すなわち、この調速装置によれば、電子制御ではなく、機械的な制御によってエネルギ蓄積手段で駆動されるアクチュエータの作動速度をほぼ一定にできるので、制御回路やセンサ類を不要にでき、低コスト及び省スペース化を実現できる。また、機械式のため、電源が不要であり、リピータやソネリ機構搭載の機械式時計やオルゴールなど電源を持たない商品にも搭載できる。さらに、機械式で電源が不要なので、電子制御式機械時計に搭載した場合、発電調速機が発電した電力を使用する必要が無く、電力消費増大によって電子制御式機械時計の持続時間が短縮してしまうことを防止できる。
さらに、流体粘性抵抗を利用する非接触式調速機のため、雑音発生を防止できる。そのため、オルゴールやリピータ、ソネリ機構搭載の時計など、音色を楽しむための商品に搭載した場合、雑音発生が無いため、純粋に音源の音色を鑑賞できる。
また、調速装置全体を薄型化でき、腕時計等の携帯機器にも容易に搭載できる。
粘性流体として空気を利用することもでき、空気を利用している場合には、粘性流体を密封するためのハウジングなどを設けなくてよいので、容易に小型化でき、ハウジングと軸とのシール構造によるロスも防止できる。
この際、前記機械的エネルギ源およびエネルギ蓄積手段は、共に、ゼンマイを内蔵する香箱車などで構成できる。
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の時計1を示す平面図である。時計1は、ベースとなる時計の文字板側にソネリ機構3が搭載されたものであり、このソネリ機構の動作に調速装置2が利用されたものである。
次に、調速装置2の構成について説明する。
調速装置2は、図2,3に示すように、ロータ200と、2枚の翼210と、翼引き戻し手段であるジグザグばね220と、対向物230とを備えて構成されている。
ロータかな202は小歯車であり、焼き入れした鋼製のものである。このロータかな202には、動力伝達手段である動力伝達輪列4の歯車が噛み合っている。動力伝達輪列4は、増速輪列であり、ゼンマイが内蔵された香箱車31に噛み合っている。このため、ロータ200は香箱車31から動力伝達輪列4を介して伝達される機械的エネルギによって回転される。
各翼案内板203には、ルビーなどの硬石製の翼軸穴石204が圧入固定されているとともに、鋼製の翼ロック軸205、鋼製のばね掛け軸206の両端がそれぞれ圧入固定されている。翼軸穴石204は、ロータかな202を中心に点対称の位置に設けられている。
ばね掛け軸206には、前記ジグザグばね220が固定されている。
ジグザグばね220は、ステンレス薄板を加工して形成されたものであり、中央に設けられたばね位置決め部221と、このばね位置決め部221の各端部から延長され、ジグザグ状に形成されたジグザグばね部222とを備えて構成されている。
そして、ジグザグばね220は、ばね位置決め部221に形成された2つの穴を前記ばね掛け軸206に差し込むことで翼案内板203間に回り止めされて取り付けられている。なお、ばね位置決め部221の中央の穴には、ロータかな202が貫通されている。
このため、ロータ200が停止している場合には、図2(A)に示すように、翼210は、ジグザグばね220のばね力によってロータ200の中心側に引き寄せられ、先端が翼ロック軸205に押し付けられている。
この際、翼210には、翼軸211の近傍に係止突起213が形成されており、翼210の外側への移動は、係止突起213が前記ばね掛け軸206に当接する位置(角度)までに規制されている。従って、本実施形態では、係止突起213およびばね掛け軸206によって翼飛び出し過多防止手段が構成されている。
また、ロータ200の回転が下がると、翼210に働く遠心力も回転数の低下に応じて小さくなり、その分だけ翼210はジグザグばね220に引き戻される。
なお、翼210は、ロータかな202を中心に点対称位置に配置された翼軸穴石204に軸支されているので、ロータ200に対して重量バランスが保たれた位置に取り付けられている。
各対向板233間の寸法は、その間に介在されるスペーサ232の厚さ寸法によって設定される。従って、本実施形態では、厚さ寸法の異なる複数種類のスペーサ232を用意しておき、スペーサ232を選択して取り付けたり、後から交換することで、前記対向板233間の寸法を適切な寸法に設定している。
また、前記翼210が遠心力で外側に移動した際には、各対向板233間の隙間部分に配置されるように構成されている。この際、翼210は、各対向板233間の隙間の略中央に配置され、翼210と各対向板233間の隙間がそれぞれ略同一となるように構成されている。
さらに、遠心力で翼210が外側に移動し、翼210の係止突起213がばね掛け軸206に当接する最外周位置まで移動した場合に、翼210の外周形状の一部が穴233Aと同心円となるように形成されている。すなわち、図2(B)に示すように、穴233Aと同心円の点線235に、翼210の外周の一部が重なるような形状とされている。
このような構成の調速装置2では、次のように動作して速度を制御する。
すなわち、動力伝達輪列4を介してロータ200が回転すると、翼210に遠心力が働き、翼210が翼案内板203の外側に飛び出して、対向板233間に入り込む。翼210の翼平面と対向板233の対向面間の隙間は小さいため、翼210は対向板233間に入る前に比べて大きな空気粘性抵抗を受ける。その空気粘性抵抗でロータ200の速度が低下すると遠心力が弱くなり、翼案内板203の外に飛び出していた翼210は、ジグザグばね220によって引き戻される。
そして、ロータ200の速度が低下し、翼210が対向板233間から翼案内板203側に引き込まれると、翼210に働いていた空気粘性抵抗も小さくなるため、再びロータ200の速度は上昇し、翼210が翼案内板203の外に飛び出して対向板233間に入り込む。このような挙動を微少に繰り返すことで、ロータ200はある一定の回転速度に保たれる。
次に、本実施形態の調速装置2によって作動速度が調速されるソネリ機構3について説明する。
なお、ソネリ機構3の概略構成は、音源としてゴングではなくお椀型音源を用いている以外は、従来から知られているものと同様なので、説明を省略あるいは簡略する。
従来のソネリ機構の構成は、例えば、Francois Lecoultre著、「A guide to complicated watches」、159〜179頁に開示されている。
これらの構成のうち、アワーリピーティングラック70と、センターホイール80とは、従来のソネリ機構から改良された部分があるため、その点は詳細に述べるが、他の部分は従来の機構と同様のものであるため、説明を簡略する。
すなわち、筒かな7の外周には角取り部が形成され、中心に角穴のあいたスクリューナット40が文字板側から挿入されている。このため、スクリューナット40は、筒かな7(2番車=分針)と一体的に回転する。
スクリューナット40の外周部の突起41は、ベースのムーブメントが正時を指す(分針が12時位置を指す)少し前にリリースレバー60に接触し、リリースレバー60を図1中反時計回りに回転させる。
さらに、スクリューナット40の円板部にはピン42が突設されている。
すなわち、各側面52Aの長さを、短い方向から順にL1〜L12とすると、Ln(nは1〜12)=L1+(n−1)×ΔLであり、ΔL毎、順次加算された長さに設定されている。
この数取り車50は、前記スクリューナット40のピン42が星形歯車51の歯51Aに係合することによって、1時間に1/12毎回転する。
このリリースレバー60は、回転軸65によって地板5に回動自在に取り付けられ、前記スクリューナット40の回転に伴い、図1中反時計回りに回転される。
一方、例えば、竜頭36の操作で分針を反時計回りに移動した場合など、ビーク62に図4中時計回り(B方向)の力が加わった場合には、ビーク62がB方向に回動し、その後、リリースレバーばね64の付勢力で元の位置に戻るようになっている。これにより、ビーク62つまりはリリースレバー60の破損を防止できる。
そして、リリースレバー60が反時計回りに回転された際には、リリースレバークリック63はリリースラチェット82の三角歯821を押し、リリースラチェット82を反時計回りに回転させる。
HRR70は、図5にも示すように、地板5および輪列受け6間に回転自在に支持された回転軸71と、この回転軸71に圧入固定されたラック本体72と、ラック本体72に回転自在に取り付けられHRRクリック73と、回転軸71に案内されて前記HRRクリック73を付勢するHRRクリックばね74とを備えている。
HRRクリック73は、略T字形に形成され、前記数取り車50の各側面52Aに当接可能な端子部(時刻読み取り端子)731と、前記HRRクリックばね74に係合可能な2つの係止部732とを備えている。そして、HRRクリック73は、HRRクリック73に形成された長穴(トラック穴)733をラック本体72に圧入されたピンに挿入することでラック本体72に回転自在に取り付けられている。
そして、HRRクリック73が前記数取り車50の側面52Aに接触している状態で、針合わせ操作を行い、数取り車50が回転して数取り板52がHRRクリック73の側面にぶつかった場合には、前記係止部732が凹部742から外れてHRRクリック73が回転できるので、HRRクリック73が破損することがない。
また、数取り車50のHRRクリック73への接触状態が解除されると、前記係止部732が三角歯741の斜面に案内され、係止部732が凹部742に嵌合する静止位置まで自動的に戻る。
リリースラチェット82は、ドライビングローラ81の地板5側に配置され、前記軸812に回転自在に挿入されている。このリリースラチェット82は略円板状に形成され、その外周面には前記リリースレバー60のリリースレバークリック63が噛み合う三角歯821が形成されている。
リリースピン84は、リリースラチェット82に圧入され、ドライビングローラ81の円板811に形成された穴813に貫通して配置されている。なお、穴813は円板811の円周方向に所定長さを有する長穴とされている。
CWリリースクリックばね86は、ピン861でドライビングローラ81の円板811上に固定されている。このCWリリースクリックばね86の先端は、前記CWリリースクリック85に係合し、CWリリースクリック85をツバピン851を軸として時計回りに回転する方向に付勢している。
さらに、アワーラチェット90には、ソネリ機構3が停止状態の際にハンマー34が動作することを禁止するハンマー鳴り止め用の突起902が形成されている。
次に、お椀型音源910のムーブメント11への固定構造に関して図9〜12を参照して説明する。
お鈴、梵鐘、和時計の鐘、目覚まし時計の鐘等のお椀型に形成されたお椀型音源910は、特に側壁911部分が振動して音を発生させるため、側壁部分を固定することはできず、お椀の底部912の中心で固定する必要がある。
さらに、本発明者が様々な試行を行ったところ、底部912の中心を固定する場合でも強固に固定してしまうとお椀型音源910全体の振動状態が規制されて余韻が短くなってしまうことが新たに判明した。
音源固定板920は、金属製の板材からなり、お椀型音源910の底部912の中心に固定される固定部921と、固定部921からムーブメント11の外周側に向かって突設された固定アーム部922とを備えている。
各固定アーム部922の先端部には、ムーブメント11に固定するための孔922Aが形成されている。
そして、前記ピン923に音源固定板スペーサ924を挿通し、さらに音源固定板920の孔922Aを挿通した状態で、前記ピン923のネジ穴に固定ねじ926をねじ込むことで、音源固定板920が時計ムーブ受11Aを有するムーブメント11に取り付けられている。
この隙間寸法L1,L2は、例えば、0.01〜0.1mm程度に設定すればよい。この隙間が大きすぎるとハンマー34でお椀型音源910を叩いた場合等に、お椀型音源910が移動し過ぎてしまう。この場合、ハンマー34とお椀型音源910の側壁911との間隔が変化してハンマー34によってお椀型音源910に加えられる打撃力が変化し、それにより音色も変化してしまう。
一方、隙間寸法が小さすぎると、お椀型音源910が微少距離移動できなくなり、ハンマー34で打たれた際に、お椀型音源910に伝わったエネルギがお椀型音源910や音源固定板920の変形に消費されてしまい、お椀型音源910の振動が減衰してしまい、余韻が短くなってしまう。
これに対し、上記のように適切な隙間寸法に設定すれば、お椀型音源910が微少距離移動できるため、ハンマー34で打たれた際に、お椀型音源910に伝わったエネルギがお椀型音源910や音源固定板920の変形に消費されず、お椀型音源910の振動が減衰しにくくなり、余韻を長くすることができる。
また、お椀型音源910の側壁911には、竜頭36の巻真36Aを挿通するための貫通孔914が形成されている。
なお、お椀型音源910やムーブメント11が内蔵される時計1の外装ケース1Aにも、前記巻真36Aを挿通するための貫通孔1Bが形成されている。
そのため、時計1の胴や裏蓋からなる外装ケース1Aには、お椀型音源910の移動を規制するバックアップ部930が設けられている。バックアップ部930は、例えば、板状の部材で構成され、ケース内周面において、お椀型音源910の周囲に90度間隔で4個配置されている。バックアップ部930は、お椀型音源910の外周面の形状に合わせて形成されて、お椀型音源910に対して所定の隙間寸法だけ離れた設けられた受け面931を備えている。
従って、時計1を落下させた場合など、お椀型音源910に大きな力が加わって前記お椀型音源910が移動しても、前記いずれかのバックアップ部930の受け面931にお椀型音源910が当接し、それ以上移動することを防止している。
次に、このような構成のソネリ機構3の動作に関し、簡単に説明する。
通常の状態では、香箱車31の回転力(トルク)は増速輪列32を介してセンターホイール80に伝達され、CW80は図1中反時計回り方向に回転力を受けている。しかし、GRP87の無歯形部871とHRR70の規制部76とが押し付けられているので、CW80は回転せずに停止している。
これにより、ドライビングラチェット89の三角歯891に噛み合っていたCWリリースクリック85の爪部853が三角歯891から外れる。
このときGRP87に固定されているアワーラチェット90は、外周の三角歯901でハンマー34の軸に回転自在に取り付けられたハンマートリップ341を弾きながら、時計回りに回転する。
すなわち、数取り車50は数取り板52の下側に12本の歯51Aを持つ星形歯車51を有する。スクリューナット40は、筒かな(分針)7と一体になって1時間に1回転する際に、ビーク62に突起41が接触する前に、円板に圧入されたピン42が数取り車50の星形歯車51に係合し、数取り車50を1時間分(1/12回転=30度)だけ回転させる。このとき、星形歯車51は、三角歯のクリックが押し付けられているため、数取り車50はクリック感をもって回転し、位置決めされる。
このドライビングローラ81の回転速度は、香箱車31の回転速度で設定され、香箱車31の回転速度は、前述したように調速装置2で調速され、非常にゆっくりした速度で回転する。
これによりギャザリングラックピニオン87は、CWリリースクリック85に拘束され、ドライビングローラ81と一体になって反時計回り方向に回転する。
このお椀型音源910を打つ動作は、センターホイール80が回転してアワーラチェット90の三角歯901がハンマートリップ341に当たる度に行われるので、数取り車50の回転位置つまり数取り車50から読み取った時刻の時数分だけお椀型音源910が鳴らされる。従って、利用者は、鳴らされた音の数で時刻を知ることができる。
この際、図1に示すように、アワーラチェット90の突起902がハンマートリップ341に当接し、ハンマートリップ341が反時計回り方向に回転することを防止している。このとき、ハンマートリップ341はハンマー34のピン343に当接し、ハンマー34をお椀型音源910から離れた位置に静止させている。このため、腕時計を携帯中に拍手したり、腕を強く振るなどした場合でも、ソネリ機構3が作動していない場合にお椀型音源910が鳴ることはない。
リリースレバー60は、筒かな7の回転により、ビーク62がスクリューナット40の突起41から外れると、ばね力によって時計回り方向に回転し、初期位置に戻る。
以上が、ソネリ(時打ち)機構3の一連の動作である。
以上のような構成の本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)本実施形態では、お椀型音源910の底部912の中心を、音源固定板920に固定するとともに、音源固定板920をムーブメント11に取り付ける際に、音源固定板920と音源固定板スペーサ924との間に所定の隙間寸法L1,L2を設定したので、ハンマー34でお椀型音源910を叩いた際に、音源固定板920は前記隙間寸法分の微少距離を移動できる。このため、お椀型音源910に打撃により伝わったエネルギが音源910や音源固定板920の部品の変形に消費されないため、音源910の振動が減衰し難くなり、音の余韻が長くなる。このため、音源としてゴングを用いた場合に比べて、特に余韻が長い音を発生させることができ、利用者は音の余韻を十分に鑑賞でき、緩やかで心地よい時の流れを感じることができる。
一方、本実施形態では、ばね性を有する音源固定板920を用いているので、お椀型音源910がある程度移動した場合でも、音源固定板920の弾性変形域を超えない限り、音源固定板920は、弾性変形によってお椀型音源910の移動による力を吸収し、元の状態に戻すことができる。
また、側壁911に、巻真36Aが挿通される貫通孔914を形成したので、お椀型音源910とムーブメント11とを上下方向にずらして配置する必要が無く、その分、時計1の厚さ寸法を押さえることができる。
さらに、側壁911を通して巻真36Aを配置する場合、側壁911に開口側から溝を形成して配置することも考えられるが、この場合、前記溝がお椀型音源910の振動状態に影響し、音が発生し難くなってしまう。これに対し、本実施形態では、側壁911に貫通孔914を明けるだけであるため、お椀型音源910の振動状態への影響を小さくでき、余韻のある音を発生させることができる。
さらに、流体粘性抵抗を利用する非接触式調速機のため、雑音発生を防止できる。そのため、ソネリ機構搭載の時計1において、雑音発生が無いため、純粋に音源の音色を鑑賞できる。
また、翼210を利用した調速装置2であるため、調速装置2全体を薄型化でき、腕時計1にも容易に搭載できる。
また、翼210の両面に対向板233が設けられているので、あがきによって翼210が一方の対向板233側に寄ってその隙間寸法が小さくなっても、他方の対向板233との隙間寸法は大きくなるため、トータルでの粘性抵抗の変化は少なくなり、調速装置2の速度は安定し、機器の作動速度も略一定に維持できる。
その上、ジグザグばね220は、2つの翼210に対応する2つのジグザグばね部222と、これらを連結するばね位置決め部221とで一体に形成されているので、位置決め用の部位が一組でよく、全体をコンパクトにでき、バネ製造の工数も減るため、組立や取扱いも容易になる。
次に、本発明の第2実施形態について、図13に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態の音源固定板920とムーブメント11との固定構造を変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
第2実施形態では、音源固定板920の孔922A部分に、ラバーブッシュ927が設けられている。
ラバーブッシュ927は、音源固定板920よりも弱いばね性、つまりより小さな力で変形する材料(ゴム)で構成されている。
このような本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
次に、本発明の第3実施形態について、図14に基づいて説明する。第3実施形態も、第1実施形態の音源固定板920とムーブメント11との固定構造を変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
第3実施形態では、音源固定板スペーサ924と、音源固定板920との間に、針座などに利用されるリング状の板バネ928が介装されている。板バネ928は、りん青銅などかならるバネ材を曲面形状にクセ付けすることなどで構成されている。
その上、板バネ928を設けてセルフセンタリング機構を実現しているため、ハンマー34で叩かれたお椀型音源910を、元の位置に自動的に戻すことができる。このため、ハンマー34と側壁911との距離が常に一定となり、ハンマー34によってお椀型音源910に加えられる打撃力が一定に維持されるため、音や余韻の発生状態も一定に維持できる。
次に、本発明の第4実施形態について、図15に基づいて説明する。第4実施形態も、第1実施形態の音源固定板920とムーブメント11との固定構造を変更したものであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
第4実施形態では、前記音源固定板スペーサ924の代わりに、両端にフランジ929Aを有する音源固定板スペーサ929を設けている。
音源固定板スペーサ929の各フランジ929Aは、他のフランジ929Aに対向する面同士が、音源固定板スペーサ929の外周から中心軸に向かうにしたがって徐々に近接するように傾斜されて形成されている。
なお、音源固定板スペーサ929は、各フランジ929Aが設けられている部分で2分割されており、一方の音源固定板スペーサ929をピン923に挿通して配置した後、前記音源固定板920を挿入し、さらに、他方の音源固定板スペーサ929を一方の音源固定板スペーサ929に係合させ、さらにピン923に固定ねじ926をねじ込むことで、一体的に配置されている。
その上、音源固定板スペーサ929のフランジ929Aの傾斜面を利用し、お椀型音源910および音源固定板920の自重によってセルフセンタリングを行うことができる構造を採用しているため、ハンマー34でお椀型音源910を打った際には、お椀型音源910は容易に微少移動でき、かつ、打ち終わると、お椀型音源910は容易に元の位置に戻すことができる。このため、余韻の長さを十分に確保でき、音色も一定にできる。
次に、本発明の第5実施形態について、図16に基づいて説明する。第5実施形態は、前記各実施形態のような板状の音源固定板920を用いずに、ムーブメント11にラバーブッシュからなる音源固定部材950をねじ951で固定し、この音源固定部材950をお椀型音源910の底部912の中心に固定したものである。
さらに、ラバーブッシュ製の音源固定部材950を用いているので、前記音源固定板920を用いる場合に比べてコストを低減できる。
音源固定板920としては、固定アーム部922が3本設けられたものや、5本以上設けられたものでもよく、その具体的な構造は、前記実施形態のものに限定されない。
また、バックアップ部930は、リブ状に突設されたものに限らず、例えば外装ケース1Aの内面をその全周に渡って前記お椀型音源910の外周面に沿った形状にすることで形成してもよい。さらに、バックアップ部930は、必ずしも必須の構成ではなく、バックアップ部930を設けない構成としてもよい。
例えば、第4実施形態の音源固定板スペーサ929を用いるとともに、この音源固定板スペーサ929と音源固定板920との間に第3実施形態の板バネ928を設けてもよい。この場合、いずれもセルフセンタリング機能を有しているため、セルフセンタリング機能を強化できる利点がある。
本実施例では、前記第1実施形態のように、音源固定板スペーサ924と音源固定板920との間に所定寸法(実施例ではL1=L2=0.03mm)の隙間を設定した場合と、第2実施形態のようにラバーブッシュ927を配置して音源固定板スペーサ924と音源固定板920とで挟み込んだ場合と、音源固定板スペーサ924と音源固定板920との間に隙間は設定せずに固定ねじ926を緩く締めてガタにより音源固定板920を僅かに移動可能に設定した場合と、音源固定板スペーサ924と音源固定板920との間に隙間は設定せずに固定ねじ926で完全に固定し、音源固定板920を時計ムーブ受11Aに対して移動できないようにした場合の4種類の固定方法を評価した。
これらの各固定方法において、ハンマー34でお椀型音源910を打ってからの経過時間に伴う音圧の変化を図17のグラフに示す。
一方、音源固定板920の微少距離移動可能にした他の3つの固定方法では、高次の周波数振動の後、一次の周波数振動が比較的長く続き、実際にも余韻のある音が発生できた。特に、図17の「隙間設定」の結果に示すように、所定寸法の隙間を設定すれば、比較的音圧が高い状態で長く振動状態を継続でき、余韻を十分に長くすることができることが判明した。従って、本発明の有用性が確認できた。
Claims (7)
- 時刻を計時して表示する時計機構と、
ハンマーと、
前記ハンマーの打撃によって音を鳴らすお椀型音源と、
前記お椀型音源を前記時計機構に固定する音源固定部材と、
前記ハンマーを動作させる打撃制御手段と、を備え、
前記お椀型音源は底部と側壁部とを備え、
前記時計機構の少なくとも一部、前記ハンマーおよび前記打撃制御手段は、前記お椀型音源の底部および側壁部で囲まれた内部空間に配置され、
前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部の中心に取り付けられ、かつ、前記時計機構に対して所定寸法の隙間を介して取り付けられ、
前記お椀型音源は、前記ハンマーで前記お椀型音源が打撃された際に、前記隙間によって、時計の外装ケースおよび前記時計機構に接触しない範囲で所定距離だけ移動可能とされていることを特徴とする時計。 - 時刻を計時して表示する時計機構と、
ハンマーと、
前記ハンマーの打撃によって音を鳴らすお椀型音源と、
前記お椀型音源を前記時計機構に固定する音源固定部材と、
前記ハンマーを動作させる打撃制御手段と、を備え、
前記お椀型音源は底部と側壁部とを備え、
前記時計機構の少なくとも一部、前記ハンマーおよび前記打撃制御手段は、前記お椀型音源の底部および側壁部で囲まれた内部空間に配置され、
前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部の中心に取り付けられ、かつ、前記時計機構に対してばね材を介して取り付けられ、
前記お椀型音源は、前記ハンマーで前記お椀型音源が打撃された際に、前記ばね材が変形することによって、時計の外装ケースおよび前記時計機構に接触しない範囲で所定距離だけ移動可能とされていることを特徴とする時計。 - 請求項1または請求項2に記載の時計において、
前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部と、前記時計機構の中心以外の部分とを繋ぐことを特徴とする時計。 - 請求項1に記載の時計において、
前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部に固定された固定部と、当該固定部から突設された複数本の固定アーム部とを備えて構成され、
前記固定アーム部は、前記時計機構に対して所定寸法の隙間を介して取り付けられ、この隙間によって前記お椀型音源は前記所定距離の移動が可能とされていることを特徴とする時計。 - 請求項2に記載の時計において、
前記音源固定部材は、前記お椀型音源の底部に固定された固定部と、当該固定部から突設された複数本の固定アーム部とを備えて構成され、
前記固定アーム部はばね性を有し、かつ、前記時計機構に対して前記固定アーム部のばね性よりも弱いばね性のばね材を介して取り付けられ、前記ばね材が変形することによって前記お椀型音源は前記所定距離の移動が可能とされていることを特徴とする時計。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の時計において、
前記時計の前記外装ケースには、前記お椀型音源が移動した際に、前記音源固定部材の弾性変形域を超えない範囲で前記お椀型音源に当接してそれ以上の移動を規制するバックアップ部が設けられていることを特徴とする時計。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の時計において、
前記お椀型音源が移動した後に、前記お椀型音源を元の位置に戻すセルフセンタリング機構を備えることを特徴とする時計。
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