以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における被測定物例えば測定用治具の構成図である。図2Aは、本発明の第1実施形態における測定用治具をその上面から見た平面図であり、3個の保持爪でレンズの外周部の3方向より支持されている図である。図3及び図4Aは、それぞれ、前記1つの保持爪の概略構成の斜視図及び拡大断面側面図である。
図1において、1は測定物であるレンズ(例えば、直径3〜7mmの円形の球面又は非球面のレンズ)、2は公知の3次元形状測定装置70に連結されかつレンズ1の上方よりXY方向(上下方向と直交する横方向沿いでかつ互いに直交する2つの方向)に走査し、Z方向(上下方向)にフォーカスがかかりレンズ1のレンズ面1a等の形状を測定するスタイラス、3は横方向沿いに被測定物に当接するように配置された被測定物のレンズ1の周囲に等間隔で配置され(例えば3個配置される場合には、120度間隔でそれぞれ配置され)かつレンズ1の外周部の側面(レンズコバ部7が有る場合にはレンズコバ部7の側面、レンズコバ部7が無い場合にはレンズ自体の外周部の側面)とレンズ1の外周部の裏面をそれぞれ支持する、保持ユニットの一例としての、保持爪であり、4は保持爪3の一部を構成しかつ横方向に対して斜めに(例えば20°〜45°の傾斜角度で)レンズ載置位置A0側に突出した外径位置基準球支持部材4Aの先端の円錐部4bに支持された、外形位置決め球の一例としての、外径位置基準球で、これらの3個の外径位置基準球4のそれぞれの球面の側面をレンズ1の外周部の側面に接触してレンズ1の外周部の側面を支持することにより、3個の外径位置基準球4のそれぞれの球面の、レンズ1の外周部の側面に対する姿勢が変わっても、レンズ1の径方向の位置を3個の外径位置基準球4により精確に支持することができる。3個の外径位置基準球4は同一の直径を有している。
3個の保持爪3は、3本の外径位置基準球支持部材4Aでそれぞれ1つずつ支持された合計3個の外径位置基準球4の他に、レンズ1の外周部の裏面を支持する裏面支持部材の一例として機能する3本の円筒横方向ピン5を備えて構成している。3本の円筒横方向ピン5は、同一の直径を有し、それぞれレンズ載置位置A0側に向けて横方向沿いに突出しており、レンズ1のレンズ1の外周部の裏面を3本の円筒横方向ピン5のそれぞれの先端の円筒面で支持することにより、平面でレンズ1の外周部の裏面を支持する場合に比べて、レンズ1と円筒横方向ピン5との間の接触面積が少なくなり、レンズ1の外周部の裏面と円筒横方向ピン5との間にごみ等が挟みにくくなり、レンズ1の外周部のレンズ裏面の位置をダイレクトに支持することができる。
さらに、保持爪3には長さ調整機構6を備えて、長さ調整機構6により、レンズ載置位置A0側に向けてそれぞれ突出した外径位置基準球支持部材4A及び円筒横方向ピン5の突出量を、それぞれ独立して調整できるようにしている。具体的には、外径位置基準球支持部材4Aは、横方向に対して斜めにレンズ載置位置A0側に突出可能に、長さ調整機構用ケーシング6cの第1貫通穴6dに進退自在に挿入され、長さ調整機構用ケーシング6cにねじ込まれている第1調整ねじ6aをねじ込むことにより、第1調整ねじ6aの内側端部が第1貫通穴6d内の外径位置基準球支持部材4Aの側面に接触して押圧し、外径位置基準球支持部材4Aを第1貫通穴6d内で固定するようにしている。逆に、第1調整ねじ6aを長さ調整機構用ケーシング6cに対して緩めれば、長さ調整機構用ケーシング6cの第1貫通穴6d内で外径位置基準球支持部材4Aを進退させて長さ調整(突出量調整)を行なうことができる。この結果、外径位置基準球支持部材4Aの先端に固定された外径位置基準球4はXZ面で斜めに位置を自在に調整することが可能で、レンズ1の外周部の側面の支持高さをレンズコバ部7の高さ寸法に応じて、レンズ形状測定前に好適な支持位置に調整することが可能である。
また、長さ調整機構6により、レンズ載置位置A0側に向けてそれぞれ突出した外径位置基準球支持部材4A及び円筒横方向ピン5の突出量を、それぞれ独立して調整できるようにしている。具体的には、円筒横方向ピン5は、横方向にレンズ載置位置A0側に突出可能に、長さ調整機構用ケーシング6cの第2貫通穴6eに進退自在に挿入され、長さ調整機構用ケーシング6cにねじ込まれている第2調整ねじ6bをねじ込むことにより、第2調整ねじ6bの内側端部が第2貫通穴6e内の円筒横方向ピン5の側面に接触して押圧し、円筒横方向ピン5を第2貫通穴6e内で固定するようにしている。逆に、第2調整ねじ6bを長さ調整機構用ケーシング6cに対して緩めれば、長さ調整機構用ケーシング6cの第2貫通穴6e内で円筒横方向ピン5を進退させて長さ調整(突出量調整)を行なうことができる。この結果、円筒横方向ピン5の先端の位置は横方向沿いにXY平面内での位置を自在に調整することが可能で、レンズ1の外周部のレンズコバ部7の幅に合わせて、レンズ形状測定前に好適な支持位置に調整することが可能である。なお、さらに具体的な長さ調整の手順については、後述する。
また、各保持爪3は、各保持爪3の上部に外径位置基準球支持部材4Aの軸方向沿いに延びたレンズ押さえばね8を備えて、レンズ押さえばね8にて、レンズコバ部7の上面を支持し、レンズ1がガタつかない様に支持する。図2Bに示すように、レンズ押さえばね8のレンズ側の先端には、円形の貫通穴8aを有して、貫通穴8a内に外径基準球4が位置して、図1のA1及びA2の位置に示すように、貫通穴8aの上方からスタイラス2の先端が貫通穴8a内に挿入されてスタイラス2の下端が外径基準球4に接触して、スタイラス2に連結された3次元形状測定装置70で外径位置基準球4の位置座標をそれぞれ測定できるようにしている。このとき、レンズ押さえばね8の付勢力でレンズ1を歪ませないようにするため、各円筒横方向ピン5の上方の位置で、レンズコバ部7の上方よりレンズコバ部7をレンズ押さえばね8の先端が支持するようにしている。
各保持爪3は、レンズ1の外周部の側面を支持する3個の外径基準球4と、レンズ1の外周部の裏面を先端でそれぞれ支持する3個の円筒横方向ピン5と、3個のレンズ押さえばね8とより構成されて、これらの部材を一体的にレンズ1の径方向沿いに進退させることができる。
11は押圧手段の一例としての保持爪予圧付勢ばねであり、3個ある保持爪3のうちの1つの保持爪3(例えば図2Aでは右下の保持爪3)を、保持爪予圧付勢ばね11の付勢力によりレンズ1の中心方向(左上向きの矢印11A沿い)に一定の力でレンズ1の外周部の側面に対して押さえ付けて、保持爪予圧付勢ばね11の付勢力により一定力で与圧を付勢し、3つの保持爪3の均等な力でレンズ1の外周部の側面を押えて支持する。
なお、一例として、外径位置基準球4の直径は1mmであり、その加工精度は0.1μm以下の精度(例えば50nm以下の精度)の真球度を有するものであり、レンズコバ部7の幅は0.4mm〜0.5mm程度である。
前記したように、測定用治具は、3個の保持爪3と、1つの保持爪予圧付勢ばね11と、支持プレート10とより大略構成している。
図2Aにおいて、9は、前記測定用治具において、レンズ1の表裏の偏心位置を測定するときに使用する治具であって、上面と下面より測定可能な3つの偏心位置測定用基準球であり、レンズ1の表裏の偏心位置を測定する際に使用する。10は、前記測定用治具の一部を構成する支持プレートであり、この支持プレート10に前記3個の保持爪3等及び偏心位置測定用基準球9を設置する。偏心位置測定用基準球9は支持プレート10の貫通穴10b内に支持されており、支持プレート10の両面に偏心位置測定用基準球9が露出して、支持プレート10の表裏両面側からスタイラス2が接触可能としている。支持プレート10の中央には貫通穴10aが形成されており、後述する、円筒横方向ピン5の長さ調整と外径位置基準球支持部材4Aの長さ調整をそれぞれ行なう図12A、図12Bに示す長さ調整用治具60を嵌合可能としている。11は、前記したように、保持爪3をレンズ中心方向に一定力で与圧を付勢し、3つの保持爪3で均等な力でレンズ1を押えるための、保持爪与圧付勢ばねである。
なお、図4Aに示すように、レンズコバ部7のエッジの先端は、斜めに支持された外径基準球4と円筒横方向ピン5の間には隙間50があるので、外径基準球4と円筒横方向ピン5とが機械的に互いに干渉することがなく、レンズ1を安定して設置することが可能である。
前記構造を有する前記レンズ形状測定治具を使用して実施するレンズ形状測定動作の手順を、図4B及び図4Cを用いて説明する。
レンズ1の外周部の側面が、3個の保持爪3のうちの2個の保持爪3の外径位置基準球4にそれぞれ接触するように、支持プレート10の中央のレンズ載置位置A0にレンズ1を載置したのち、残りの1個の保持爪3の外径位置基準球4を与圧付勢ばね11の付勢力によりレンズ1の外周部の側面に接触させて、3個の保持爪3により、レンズ1をその外周より一定力で押えてレンズ載置位置A0に保持する。
この状態で、まず、3次元形状測定装置70の記憶部71から3つの外径位置基準球4のXYZ位置座標を取得する(ステップS1)。
次いで、取得されたXYZ位置座標を基に、3次元形状測定装置70のスタイラス2を移動させて、スタイラス2を、3個の保持爪3の先端の3つの外径位置基準球4のうちの1つの外径位置基準球4に接触させて(図1のA1又はA2の位置に示すスタイラス2を参照。)、外径位置基準球4のXYZ位置座標をスタイラス2に連結された3次元形状測定装置70により測定して、測定結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する。
この測定は、外径位置基準球4の上面の頂点を中心として、XY面内で同心円状にスタイラス2を走査することにより、外径位置基準球4の上面の頂点付近のXYZ位置座標が3次元形状測定装置70により測定され、事前に求めておいた外径位置基準球4の半径を用いて、外径位置基準球4の円弧中心及び外径位置基準球4のZ位置高さを、それぞれ、3次元形状測定装置70に接続された演算部72で算出し(ステップS2)、当該外径位置基準球4のXYZ位置を決定する。これにより、1つ目の外径位置基準球4のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1,Y1,Z1)を算出して、算出結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS3)。
次いで、残りの2個の外径位置基準球4も順次同様に測定して、3個の外径位置基準球4のすべてのXYZ位置座標をそれぞれ測定して算出し、3個の外径位置基準球4のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)をそれぞれ得て、記憶部71に記憶する(ステップS4)。
その後、レンズ1のレンズ面1aをスタイラス2でXY軸上に走査してXYZ位置座標を3次元形状測定装置70で測定し(図1のA3の位置に示すスタイラス2を参照。)、レンズ測定中心を演算部72で求めて、記憶部71に記憶する(ステップS5)。レンズ1を3次元形状測定装置70に対して、サブミクロン以下の精度で例えば水平に取り付けることは不可能であり、斜めに取り付けられたレンズ1では、頂点がレンズ1の中心にはならない。そこで、XY軸上に複数点のデータ測定を行い、レンズ1が非球面の場合、この測定データからレンズ1の傾き、レンズ1の傾いた状態でのレンズ1の中心位置を計算で求めることができる。具体的には、設計式と測定データの差の2乗の和が最小になるように、XY位置、XY軸まわりの傾き、Z位置を変化させて、レンズ1の姿勢を求めることができる。
次いで、この測定中心を測定座標の開始点とし、レンズ面1aを同心円状にレンズ面1aの全面のXYZ位置座標を測定して、レンズ1の形状データを取得して記憶部71に記憶する(ステップS6)。
次いで、演算部72により、測定した形状データと測定対象のレンズ1の設計式との差を求め、その差の2乗和が最小になるように、設計座標(設計式で定義されたレンズ面上のXYZ座標、又は、レンズ1の形状を定義する設計座標)を、XYZ方向に平行移動あるいは、XYZ軸まわりの回転方向であるA、B、C方向にそれぞれ回転させ、最小となった値を3次元形状測定装置70の座標を基準としたアライメント量(Xa,Ya,Za,Aa,Ba,Ca)として算出して記憶部71に記憶する(ステップS7)。
その後、3個の外径位置基準球4の測定で得られた、3個の外径位置基準球4のXYZデータと、予め測定された3個の外径位置基準球4の中心と円筒方向のピン上面のそれぞれの高さ(外径位置基準球4のZ位置高さ)h1、h2、h3を用いて、演算部72により、3個の外径位置基準球4における、レンズ1の裏面が円筒横方向ピン5に接している治具面高さZ1j=Z1−h1、Z2j=Z2−h2、Z3j=Z3−h3を算出して、記憶部71に記憶する(ステップS8)。
次いで、3個の外径位置基準球4のレンズ外径と接する位置での治具面高さZ1j、Z2j、Z3jの3点の位置座標(X1,Y1,Z1j)、(X2,Y2,Z2j)、(X3,Y3,Z3j)を通る平面の方程式P1を算出する(ステップS9)。
次いで、この平面の方程式P1とX、Y各軸のなす角、すなわちレンズ1の外周部の裏面のチルト角Ap、Bpを演算部72で算出して、記憶部71に記憶する(ステップS10)。平面の方程式より、平面の法線ベクトルは容易に求まり、求められた法線ベクトルのXZ面、YZ面で見たベクトルも容易に求まることから、この2つのベクトルと、Z軸のなす角(チルト角Ap、Bp)を内積から求めることができる。
次いで、レンズ1の外形形状が円形でない場合は、レンズ1の外周部の側面のうちのレンズ基準側面と定義された部分に設置された、1個目と2個目の外径位置基準球4の位置座標とX軸のなす角Cpをスタイラス2で求め、レンズ1の外周部の側面のチルト角を演算部72で求めて記憶部71に記憶する(ステップS11)。ただし、レンズ1の外形形状が円形である場合には、このステップS11は省略する。
その後、予め測定された3個の外径位置基準球4の半径R1,R2,R3と、先に求めた3個の外径位置基準球4のXY座標を中心とし、前記半径で描かれた3つの円に内接する円の中心座標Xc、Ycを演算部72で算出する(ステップS12)。
次いで、このXc、Ycの値を、先に求めた平面の方程式P1に、前記Xc,Ycを代入し、レンズ1の外周部の側面に対する中心位置での基準高さZcを演算部72で算出する(ステップS13)。
次いで、前記アライメント量(Xa,Ya,Za,Aa,Ba,Ca)と、前記レンズ1の外周部の裏面のチルト角Ap、Bp及び中心位置との差を演算部72で求めることにより、レンズ1の外周部基準(言い換えれば外形基準)での偏心量dX=Xa−Xc,dY=Ya−Yc,dZ=Za−Zcと、チルト量dA=Aa−Ap,dB=Ba−Bp,dC=Ca−Cpをそれぞれ算出して、記憶部71に記憶する(ステップS14)。なお、レンズ1の外形形状が円形である場合には、dC=Ca−Cpは算出しない。
この結果、算出されたレンズ1の外周部基準(言い換えれば外形基準)での偏心量とチルト量を基に、前記レンズ1の姿勢を演算部72で求めることにより、前記レンズの形状を測定することができる。
前記第1実施形態にかかる形状測定方法及び測定用治具によれば、レンズ1の外周部の側面、あるいはレンズ1の裏面を直接測定できない場合でも、レンズ1の外周部の外側に配置された3つの外径位置基準球4と、レンズ1の外周部の3カ所に設けられた前記レンズ1の裏面を支持する円筒横方向ピン5とにより、レンズ1の外径あるいは裏面を基準に、レンズ1の姿勢の測定、従って、レンズ形状測定を高精度に行うことが出来る。
さらに、3つの外径位置基準球4が外径位置基準球支持部材4Aにより横方向に対して斜め方向からレンズ1の外周部の側面を支持し、外径位置基準球4の高さと、外径位置基準球4の半径位置を長さ調整機構6でそれぞれ可変とし、3つの円筒横方向ピン5の半径方向の位置を長さ調整機構6でそれぞれ可変とし、前記外径位置基準球4と前記円筒横方向ピン5を、1つの保持ユニットの一例としての保持爪3として構成し、かつ、3つの保持ユニットで前記測定用治具を構成することにより、前記保持爪3の保持ユニットをレンズ寸法個々に応じて作り替えることなく測定を行うことが出来る。
以下に、円筒横方向ピン5の長さ調整と外径位置基準球支持部材4Aの長さ調整について詳述する。
図12Aに、3個の保持爪3のそれぞれの円筒横方向ピン5の長さ調整と外径位置基準球支持部材4Aの長さ調整をそれぞれ行なう長さ調整用治具60の構成を示す。長さ調整用治具60は、1段目の小さい方の円筒部60aと、2段目の大きい方の円筒部60bとよりなる2段の円筒形状より構成されている。1段目の小さい方の円筒部60aの外径は、レンズ1のレンズコバ部7の裏面側の内径と同じ大きさで、円筒横方向ピン5の先端の直径と同程度の厚さで作成する。さらに、測定するレンズ1の外周部の側面基準のレンズコバ部7の外径と同じになるように、レンズコバ部7のコバ幅ddだけ大きくした円筒で2段目の大きい方の円筒部60bを、レンズコバ部7の厚さと同程度の厚さで作成する。
この長さ調整用治具60の小さい方の円筒部60aを図12Bに示すように、前記測定用治具の支持プレート10の中央の貫通穴10aにはめ込むように取り付ける。次いで、長さ調整機構6で、斜めに外径位置基準球支持部材4Aに支持された外径位置基準球4が長さ調整用治具60の2段目の円筒部60bのほぼ中央に来るように長さ調整する。具体的には、第1調整ねじ6aを緩めて長さ調整機構用ケース6cに対する外径位置基準球支持部材4Aの位置調整を行なったのち、第1調整ねじ6aを締めてその位置で外径位置基準球支持部材4Aを固定する。また、円筒横方向ピン5の位置を、長さ調整用治具60の1段目の円筒部60aの側面位置に接触するように長さ調整する。具体的には、第2調整ねじ6bを緩めて長さ調整機構用ケース6cに対する円筒横方向ピン5の位置調整を行なったのち、第2調整ねじ6bを締めてその位置で円筒横方向ピン5を固定する。
このような図12Aに示す長さ調整用治具60を用いることにより、レンズコバ部7が0.4mm程度と小さくても、円筒横方向ピン5の位置を容易に調整することができる。
また、このように、3個の保持爪3の位置をそれぞれ調整可能とする(言い換えれば、外径位置基準球支持部材4Aに支持された外径位置基準球4の位置調整可能及び円筒横方向ピン5の位置調整可能とする)ことで、高精度な加工が必要な、外径位置基準球4を、測定するレンズ1の形状に応じて設計・製作する必要がなく、測定対象であるレンズ1の機種切り替え時にも、前記長さ調整用治具60により、又は、図11に示す簡便な治具60Cにより、低コストで行うことができる。
図11に示す簡便な治具60Cは、例えば、厚さが既知の円柱状のブロックゲージ60Cで構成されており、3つの外径位置基準球4と円筒横方向ピン5の高さ測定を行なうものである。このブロックゲージ60Cは、以下のようにして使用する。
まず、ブロックゲージ60Cを使用する前に、3本の円筒横方向ピン5の位置調整を行なうために、長さ調整用治具60の1段目の小さい方の円筒部60aのみを使用する。具体的には、例えば、円筒部60aを、前記測定用治具の支持プレート10の中央の貫通穴10aに図12Bにおける上方から下方にはめ込んで、円筒部60aの側面に3本の円筒横方向ピン5の先端を接触させて、3本の円筒横方向ピン5の位置調整を行なう。
次いで、長さ調整用治具60の円筒部60aを支持プレート10の中央の貫通穴10aから取り外したのち、図11に示すように、校正用ブロックゲージ60Cを3本の円筒横方向ピン5で支持するように載置する。
次いで、図11にA4で示すように、ブロックゲージ60Cの上面をスタイラス2が走査して上面を測定し、スタイラス2に連結された3次元形状測定装置70でブロックゲージ60Cの上面の位置座標を求めて、求められた位置座標を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する。
次いで、図11にA5及びA6で示すように、スタイラス2に連結された3次元形状測定装置70で3つの外径位置基準球4を順次走査して、それらの位置座標をそれぞれ測定して、それぞれの頂点座標を演算部72で算出して、算出結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する。
次いで、ブロックゲージ60Cの上面の位置座標の測定データより求めた平面より、ブロックゲージ60Cの厚さを引いた平面の方程式に、3つの外径位置基準球4の頂点座標であるXY位置座標を代入し、このときの3つの外径位置基準球4のZ位置と3つの外径位置基準球4の各頂点高さとの差Z1d、Z2d、Z3dを校正パラメータとして演算部72で算出する。
最後に、算出されたデータを記憶部71に記憶する。
このようにして、記憶部71に記憶された校正パラメータを、レンズ形状測定時の校正パラメータとして使用する(治具面高さZ1j、Z2j、Z3j(予め測定された3個の外径位置基準球4の中心と円筒方向のピン上面のそれぞれの高さh1、h2、h3に相当)と同様に扱う)。
(第2実施形態)
図5A及び図5Bは、本発明の第2実施形態における測定用治具の別の例にかかる保持爪3Aの詳細図である。第1実施形態と異なるのは、円筒横方向ピン5に代えて、先端形状が球面の球状横方向ピン13を使用する点である。
図5A及び図5Bで、レンズ1Aの外周部の裏面でレンズ1Aの外周部のエッジ近傍まで、レンズ面が加工されている場合(言い換えれば、レンズコバ部が無い場合)、エッジ近傍の支持位置でのレンズ1Aの外周部の裏面は傾斜面となり、先端形状が球面13aの球状横方向ピン13にて支持する。この3つの球状横方向ピン13を、予め外径位置基準球4と球状横方向ピン13の頂点位置のXYZ位置座標を事前にスタイラス2を走査して3次元形状測定装置70で測定し、3つの保持爪3での各隣接する2つの外径位置基準球4間の距離を演算部72で算出しておく。さらに、レンズ1Aの設計式より支持点近傍のレンズ中心方向への傾きの正接を演算部72で求めておく。この傾きと1つの保持爪3を基準とし、2つの保持爪3の中心方向への距離の差を前記正接に掛けた値を、レンズ裏面支持位置の高さhとして用いる。
なお、一例として、外径位置基準球4で支持するレンズ1Aの外周部の側面の位置である高さ(レンズ裏面支持位置の高さ)hは1mm程度、球状横方向ピン13の球面13aによりレンズ1Aの裏面を支持する位置は、レンズ1Aの外周部のエッジから大略1mm内側の位置である。
前記第2実施形態によれば、第1実施形態の円筒横方向ピン5に代えて、レンズ1Aの裏面に接する面が球面13aの球状横方向ピン13を使用するようにしたので、円筒横方向ピン5で支持する場合よりも、レンズ1Aの裏面が平面のレンズコバ部7を有しておらず傾斜したレンズ1Aの裏面を高い精度で支持することができて、好適なレンズ形状測定を行うことができる。
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態における測定用治具の別の例の保持爪3Bの詳細図である。第1実施形態と異なるのは、外径位置基準球4の代わりに、凹形状の円錐面14aを中央に有する円筒型の(外形位置決め体の一例としての)凹円錐位置決めピン14を外径位置基準球支持部材4Aの先端に固定する点である。
図6において、レンズ1の外周部の側面に接触する、凹円錐位置決めピン14の側面が円筒形に構成され、円筒型の凹円錐位置決めピン14がレンズ1の外周部の側面に接触する部分の高さと同じ高さに、凹形状の円錐面14aが凹円錐位置決めピン14の内部に設けられたものである。また、各凹円錐位置決めピン14の円錐面14aのテーパ角と凹円錐位置決めピン14の外径は、予め別途測定しておくものとする。一例として、凹円錐位置決めピン14は外径1mmとし、凹形状の円錐面14aの精度は1μm以下とする。一例として、凹形状の円錐面14aは、厚さ0.5mm〜1.0mmに対して0.3mm凹ませた形状とする。
図6の凹円錐位置決めピン14を用いた第3実施形態における測定用治具におけるレンズ形状測定の手順を、図7A及び図7Bを用いて説明する。
レンズ1を図6の形態でそれぞれ構成された3個の保持爪3Bを、図2と同じ上面からの構成の測定用治具の支持プレート10に設置し、レンズ1の外周部より一定力でレンズ1を3個の保持爪3Bで押えて支持する。
この状態で、まず、3次元形状測定装置70の記憶部71から3本の凹円錐位置決めピン14のXYZ位置座標を取得する(ステップS21)。
次いで、取得されたXYZ位置座標を基に、3次元形状測定装置70のスタイラス2を移動させて、スタイラス2を、3個の保持爪3の先端の3本の凹円錐位置決めピン14のうちの1本の凹円錐位置決めピン14にスタイラス2を接触させて(図1のA1又はA2の位置に示すスタイラス2を参照。)、凹円錐位置決めピン14のXYZ位置座標をスタイラス2に連結された3次元形状測定装置70により測定して、測定結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する。
この測定は、凹円錐位置決めピン14の円錐面14aで円錐の頂点を中心として、XY面内で同心円状にスタイラス2を走査することにより、凹円錐位置決めピン14の上面の頂点付近のXYZ位置座標が3次元形状測定装置70により測定され、事前に求めておいた凹円錐位置決めピン14のテーパ角(傾斜角)を用いて、凹円錐位置決めピン14の円弧中心及び凹円錐位置決めピン14のZ位置高さを、それぞれ、3次元形状測定装置70に接続された演算部72で算出し(ステップS22)、当該凹円錐位置決めピン14のXYZ位置を決定する。これにより、1本目の凹円錐位置決めピン14のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1,Y1,Z1)を算出して、算出結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS23)。
次いで、残りの2本の凹円錐位置決めピン14も順次同様に測定して、3本の凹円錐位置決めピン14のすべてのXYZ位置座標をそれぞれ測定して算出し、3本の凹円錐位置決めピン14のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)をそれぞれ得て、記憶部71に記憶する(ステップS24)。
その後、レンズ1のレンズ面1aをスタイラス2でXY軸上に走査してXYZ位置座標を3次元形状測定装置70で測定し(図1のA3の位置に示すスタイラス2を参照。)、レンズ測定中心を演算部72で求めて、記憶部71に記憶する(ステップS25)。レンズ1を3次元形状測定装置70に対して、サブミクロン以下の精度で例えば水平に取り付けることは不可能であり、斜めに取り付けられたレンズ1では、頂点がレンズ1の中心にはならない。そこで、XY軸上に複数点のデータ測定を行い、レンズ1が非球面の場合、この測定データからレンズ1の傾き、レンズ1の傾いた状態でのレンズ1の中心位置を計算で求めることができる。具体的には、設計式と測定データの差の2乗の和が最小になるように、XY位置、XY軸まわりの傾き、Z位置を変化させて、レンズ1の姿勢を求めることができる。
次いで、この測定中心を測定座標の開始点とし、レンズ面1aを同心円状にレンズ面1aの全面のXYZ位置座標を測定して、レンズ1の形状データを取得して記憶部71に記憶する(ステップS26)。
次いで、演算部72により、測定した形状データと測定対象のレンズ1の設計式との差を求め、その差の2乗和が最小になるように、設計座標(設計式で定義されたレンズ面上のXYZ座標、又は、レンズ1の形状を定義する設計座標)を、XYZ方向に平行移動あるいは、XYZ軸まわりの回転方向であるA、B、C方向に回転させ、最小となった値を3次元形状測定装置70の座標を基準としたアライメント量(Xa,Ya,Za,Aa,Ba,Ca)として算出して記憶部71に記憶する(ステップS27)。
その後、3本の凹円錐位置決めピン14の測定で得られた、3本の凹円錐位置決めピン14のXYZデータと、予め測定された3本の凹円錐位置決めピン14のそれぞれのテーパ高さ(凹円錐位置決めピン14のZ位置高さ)h1、h2、h3を用いて、演算部72により、3本の凹円錐位置決めピン14における、レンズ1の裏面が円筒横方向ピン5に接している治具面高さZ1j=Z1−h1、Z2j=Z2−h2、Z3j=Z3−h3を算出して、記憶部71に記憶する(ステップS28)。
次いで、3本の凹円錐位置決めピン14のレンズ外径と接する位置での治具面高さZ1j、Z2j、Z3jの3点の位置座標(X1,Y1,Z1j)、(X2,Y2,Z2j)、(X3,Y3,Z3j)を通る平面の方程式P1を算出する(ステップS29)。
次いで、この平面の方程式P1とX、Y各軸のなす角、すなわちレンズ1の外周部の裏面のチルト角Ap、Bpを演算部72で算出して、記憶部71に記憶する(ステップS30)。平面の方程式より、平面の法線ベクトルは容易に求まり、求められた法線ベクトルのXZ面、YZ面で見たベクトルも容易に求まることから、この2つのベクトルと、Z軸のなす角(チルト角Ap、Bp)を内積から求めることができる。
次いで、レンズ1の外形が円形でない場合は、レンズ1の外周部の側面のうちのレンズ基準側面と定義された部分に設置された、1本目と2本目の凹円錐位置決めピン14の位置座標とX軸のなす角Cpをスタイラス2で求め、レンズ1の外周部の側面のチルト角を演算部72で求めて記憶部71に記憶する(ステップS31)。ただし、レンズ1の外形形状が円形である場合には、このステップS11は省略する。
その後、予め測定された3本の凹円錐位置決めピン14のレンズ1に接する位置の半径R1,R2,R3と、先に求めた3本の凹円錐位置決めピン14のXY座標を中心とし、前記半径で描かれた3つの円に内接する円の中心座標Xc、Ycを演算部72で算出する(ステップS32)。
次いで、このXc、Ycの値を、先に求めた平面の方程式P1に、前記Xc,Ycを代入し、レンズ1の外周部の側面に対する中心位置での基準高さZcを演算部72で算出する(ステップS33)。
次いで、前記アライメント量(Xa,Ya,Za,Aa,Ba,Ca)と、前記レンズ1の外周部の裏面のチルト角Ap、Bp及び中心位置との差を演算部72で求めることにより、レンズ1の外周部基準(言い換えれば外形基準)での偏心量dX=Xa−Xc,dY=Ya−Yc,dZ=Za−Zcと、チルト量dA=Aa−Ap,dB=Ba−Bp,dC=Ca−Cpをそれぞれ算出して、記憶部71に記憶する(ステップS34)。なお、レンズ1の外形形状が円形である場合には、dC=Ca−Cpは算出しない。
この結果、算出されたレンズ1の外周部基準(言い換えれば外形基準)での偏心量とチルト量を基に、前記レンズ1の姿勢を演算部72で求めることにより、前記レンズの形状を測定することができる。
前記第3実施形態にかかる形状測定方法及び測定用治具によれば、レンズ1の外周部の外側に配置された3本の円筒型の位置決め体の一例である凹円錐位置決めピン14と、前記凹円錐位置決めピン14の中央に開けられた測定用の凹形状の円錐面14aを、凹円錐位置決めピン14の側面のレンズ1の外周部の側面の支持高さに近い位置に設置することにより、凹円錐位置決めピン14が多少傾いてもXY方向の誤差が最小になり、高い精度でレンズ形状測定を行なうことができる。
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態における測定用治具のさらに別の例の保持爪3Cの詳細図である。第3実施形態と異なるのは、凹形状の円錐面14aを有する円筒型の凹円錐位置決めピン14の代わりに、凹形状の円錐面15aを中央に有する球形の(外形位置決め体の別の例としての)凹円錐位置決めピン15を外径位置基準球支持部材4Aの先端に固定する点である。
図8において、凹円錐位置決めピン15の、レンズ1の外周部の側面部分に接触する部分が球形で形成され、レンズ1の外周部の側面に接触する部分の高さと同じ高さに設けられた、凹形状の円錐面15aを有するように、凹円錐位置決めピン15が構成されている。また、各凹円錐位置決めピン15のテーパ角と外径は予め別途測定しておくものとする。
図8の凹円錐位置決めピン15を用いた測定用治具における測定の手順は図6の測定用治具と同様である。
第4実施形態によれば、凹円錐位置決めピン15の外形部分を球形に構成することにより、レンズ1の外周部の側面に接触する部分の加工精度をより高めることができて、より高精度にレンズ形状測定を行なうことができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態における測定用治具として、図9A〜図9Cに、それぞれ、レンズ1の外周部の裏面を支持する円筒横方向ピン5の先端上に設けられた裏面支持部材の3つの例を示す。
まず、図9A及び図9Bは三角錐状に加工した、裏面支持部材5A,5Bにてレンズ1の外周部のレンズコバ部7の裏面をそれぞれ支持するものである。裏面支持部材5Aは、斜辺が斜め右上方向沿いに向けられた直角三角形の側面を有するのに対して、裏面支持部材5Bは斜辺が円筒横方向ピン5の先端に固定された直角三角形の側面を有するものである点で異なるが、いずれも、裏面支持部材5A,5Bの三角錐の上端の頂点でレンズ1の外周部のレンズコバ部7の裏面を支持する。
図9Cは四角錐状に加工した裏面支持部材5Cの四角錐の上端の頂点でレンズ1の外周部のレンズコバ部7の裏面を支持する。
前記第5実施形態における測定用治具は以下のようにして使用される。例えば、前記第1実施形態にかかる前記測定用治具において、図1で、裏面を支持する円筒横方向ピン5を、図9Aに示すように先端に裏面支持部材5Aが固定された円筒横方向ピン5に変更した場合、裏面支持部材5Aの三角錐尖った頂点の上端のレンズ裏面支持高さを、予め外径位置基準球4の頂点位置と裏面支持部材5Aの頂点位置のXYZ位置座標を事前にスタイラス2で走査して3次元形状測定装置70で測定し、3つの保持爪3での各Z位置高さの距離を算出しておき、裏面支持位置のZ位置高さとして用いればよい。
この構成により、レンズ1の底面部分にゴミ等が付着していても、尖った形状の裏面支持部材5Aにより支持することにより、ゴミ等を跳ね除け、レンズ面を直接支持することが可能で、レンズ1を傾けることなく支持することが可能となり、高精度な測定を行うことが可能となる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態における測定用治具を使用しての形状測定方法において、図10A〜図10Dに、前記測定用治具上に設けられた、3個の表裏偏心位置測定用基準球9を用い、レンズ1の表面に対するレンズ1の裏面のレンズ1の偏心量とチルト量で表されるレンズ1の姿勢の測定フローを示す。
図10A及び図10Bのフローはレンズ外径基準での測定方法で、前記図7A及び図7Bと同じ手順で測定する。すなわち、図10A及び図10BのフローにおけるステップS41〜S54での動作は、図7A及び図7BのフローにおけるステップS21〜S34での動作と同一である。
ステップS54の後、レンズ1の表面側から、3つの偏心位置測定用基準球9(ただし、図10C〜図10Dでは単に「基準3球」と称する。)を測定する(ステップS55)。このステップS55は基準3球の測定を1つずつ順次行うことを意味しており、具体的には、以下のステップS56〜S59の測定動作を行なうことを意味する。
次いで、3次元形状測定装置70の記憶部71から3つの偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標を取得する(ステップS56)。
次いで、取得されたXYZ位置座標を基に、3次元形状測定装置70のスタイラス2を移動させて、スタイラス2を、3個の偏心位置測定用基準球9のうちの1つ目の偏心位置測定用基準球9の頂点近くの部分に接触させてXY軸上を走査して、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標をスタイラス2に連結された3次元形状測定装置70により測定して、測定結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS57)。
次いで、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の頂点を基準にXY軸上あるいは同心円状にスタイラス2で前記1つ目の偏心位置測定用基準球9を走査して、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の上面の頂点付近のXYZ位置座標を3次元形状測定装置70により測定し、予め測定していた前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の半径を用いて、レンズ1の表面側より測定した前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の中心のXYZデータ(XYZ位置座標データ)、すなわち、1球目の偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標:(X1f,Y1f,Z1f)を算出して、算出結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS58)。
次いで、残りの2個の偏心位置測定用基準球9も順次同様に測定して、3個の偏心位置測定用基準球9のすべてのXYZ位置座標をそれぞれ測定して算出し、3個の偏心位置測定用基準球9のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1f,Y1f,Z1f)、(X2f,Y2f,Z2f)、(X3f,Y3f,Z3f)をそれぞれ得て、記憶部71に記憶する(ステップS59)。
次に、前記測定用治具ごと、レンズ1を表裏反転させ(言い換えれば、前記測定用治具にレンズ1を保持した状態のまま、前記測定用治具を表裏反転させ)、図7A及び図7Bと同様の手順で、裏面側のレンズ1の裏面をXY軸上に測定して測定中心を算出する(ステップS60)。
次いで、レンズ1の裏面上を測定して、レンズ1の裏面の形状データを取得する(ステップS61)。
次いで、予め記憶部71に記憶されたレンズ1の裏面形状の設計式と、測定データとの差が最小になるように、設計座標(設計式で定義されたレンズ面上のXYZ座標、又は、レンズ1の形状を定義する設計座標)を、XYZ方向に平行移動あるいは、XYZ軸まわりの回転方向であるA、B、C方向に回転させ、各測定点での差の2乗和が最小となった値を3次元形状測定装置70の座標を基準としたアライメント量(Xab,Yab,Zab,Aab,Bab,Cab)として算出して記憶部71に記憶する(ステップS62)。
その後、前記測定用治具の位置をずらせることなく、レンズ1の裏面側より、表裏偏心位置測定用基準球9を前記と同様の手法で測定する。すなわち、まず、レンズ1の裏面側から、3つの偏心位置測定用基準球9を測定する(ステップS63)。このステップS63は基準3球の測定を1つずつ順次行うことを意味しており、具体的には、以下のステップS64〜S67の測定動作を行なうことを意味する。
次いで、3次元形状測定装置70の記憶部71から3つの偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標を取得する(ステップS64)。
次いで、取得されたXYZ位置座標を基に、3次元形状測定装置70のスタイラス2を移動させて、スタイラス2を、3個の偏心位置測定用基準球9のうちの1つ目の偏心位置測定用基準球9の頂点近くの部分に接触させてXY軸上を走査して、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標をスタイラス2に連結された3次元形状測定装置70により測定して、測定結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS65)。
次いで、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の頂点を基準にXY軸上あるいは同心円状にスタイラス2で前記1つ目の偏心位置測定用基準球9を走査して、前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の上面の頂点付近のXYZ位置座標を3次元形状測定装置70により測定し、予め測定していた前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の半径を用いて、レンズ1の裏面側より測定した前記1つ目の偏心位置測定用基準球9の中心のXYZデータ(XYZ位置座標データ)、すなわち、1球目の偏心位置測定用基準球9のXYZ位置座標:(X1b,Y1b,Z1b)を算出して、算出結果を3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する(ステップS66)。
次いで、残りの2個の偏心位置測定用基準球9も順次同様に測定して、3個の偏心位置測定用基準球9のすべてのXYZ位置座標をそれぞれ測定して算出し、3個の偏心位置測定用基準球9のXYZデータ(XYZ位置座標データ)(X1b,Y1b,Z1b)、(X2b,Y2b,Z2b)、(X3b,Y3b,Z3b)をそれぞれ得て、記憶部71に記憶する(ステップS67)。
この後、前記、レンズ1の表面側から測定した3つの偏心位置測定用基準球9を基準にレンズ1の表面の位置座標を決定し、さらに、レンズ1の裏面側から測定した3つの偏心位置測定用基準球9を基準にレンズ1の裏面の位置座標を決定し、各偏心位置測定用基準球9の中心は同一であることから、レンズ1の裏面の座標変換を行い、レンズ1の表面基準でレンズ1の裏面の偏心量、チルト量の算出を行うことにより、レンズ1の表面に対する裏面のレンズ1の偏心量とチルト量で表されるレンズ1の姿勢の算出を行う(ステップS68)。この算出方法は公知であり、例えば、特開2000−71344号公報の[0013]以降などに記載されている。
この構成により、レンズ1の外形基準での偏心とチルトの姿勢のみならず、レンズの表面に対する裏面の偏心とチルトの姿勢も測定が可能となる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態における測定用治具を使用しての形状測定方法における、前記測定用治具の校正手順を図11に示す。図11において、保持爪3は、斜めに外径位置基準球支持部材4Aで支持された外径位置基準球4と、円筒横方向ピン5とにより構成されている第1実施形態の例で説明するが、第2〜5実施形態などにかかる図5A及び図5B、図6、図8、図9A〜図9Cの構成の保持爪3A,3B,3Cなどでも、ほぼ同様の校正手順で前記測定用治具の校正(3つの外径位置基準球4の位置調整)を行なうことができる。
保持爪3の3本の円筒横方向ピン5で、厚さが既知の円柱状のブロックゲージ60Cを支持するように3本の円筒横方向ピン5の上に載置する。
次いで、図11にA4で示すように、ブロックゲージ60Cの上面をスタイラス2が走査して上面を測定し、スタイラス2に連結された3次元形状測定装置70でブロックゲージ60Cの上面の位置座標を求めて、この求められた位置座標のデータより平面の方程式P2を3次元形状測定装置70の演算部72で算出して、3次元形状測定装置70の記憶部71に記憶する。
次いで、図11にA5及びA6で示すように、スタイラス2に連結された3次元形状測定装置70で3つの外径位置基準球4を順次走査して、それらの位置座標をそれぞれ測定して、それぞれの頂点座標を演算部72で算出して、算出結果を記憶部71に記憶する。
次いで、ブロックゲージ60Cの上面の位置座標の測定データより求めた平面に関する前記平面の方程式P2より、ブロックゲージ60Cの厚さを引いた平面の方程式P3に、3つの外径位置基準球4の頂点座標であるXY位置座標を代入し、この時の3つの外径位置基準球4のZ位置と3つの外径位置基準球4の各頂点高さの差Z1d、Z2d、Z3dを校正パラメータとして演算部72で算出し、記憶部71へ記憶して、レンズ形状測定時の校正パラメータとする。
このように、ブロックゲージ60Cを基準に、第1実施形態で説明したような前記手法でこれらのパラメータを校正することにより、ナノメートルオーダでの3つの外径位置基準球4の高さ位置の校正が可能となる。
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態における測定用治具を使用しての形状測定方法において、前記測定用治具に対してレンズ1を回転させ、それぞれレンズ面と3つの外径位置決め体を測定することにより、より高精度に外径基準でのレンズ1の姿勢を測定する方法を、図13に基づいて説明する。
前記測定用治具に対し、レンズ1を、前記レンズ1の外形を支持する保持爪3に対し所定の角度(例えば90°〜180°)で回転させ、各回転角での姿勢データを元の位置へ回転座標変換し、姿勢データの平均を求めることにより、高精度な測定を行うことが可能となる。例えば、前記測定でレンズ1を前記測定用治具に対して、レンズ1の上面より、0°位置から90°ずつ回転した4つの位置(0°位置、90°位置、180°位置、270°位置)でそれぞれレンズ1の姿勢を測定し、それぞれの回転位置での姿勢データを元の0°位置へ回転座標変換し、姿勢データの平均を求める。また、別の例では、レンズ1の上面より、0°位置から180°ずつ回転した2つの位置(0°位置、180°位置)でそれぞれレンズ1の姿勢を測定し、それぞれの回転位置での姿勢データを元の0°位置へ回転座標変換し、姿勢データの平均を求める。具体的には、それぞれ測定した、0°位置での偏心量dX0、dY0、チルトdA0、dB0、90°位置での偏心量dX90、dY90、チルトdA90、dB90、180°位置での偏心量dX180、dY180、チルトdA180、dB180、270°位置での偏心量dX270、dY270、チルトdA270、dB270、とすると、レンズの平均の偏心dXaは、dXa=(dX0+dX90+dX180+dX270)/4で求められる。同様に、偏心dYa=(dY0+dY90+dY180+dY270)/4、チルトdAa=(dA0+dA90+dA180+dA270)/4、チルトdBa=(dB0+dB90+dB180+dB270)/4、として求めることができる。
第8実施形態によれば、前記測定でレンズ1を治具に対して、レンズ1の上面より、0°位置と、前記0°位置からレンズ1を180°回転した180°位置とで、それぞれのレンズ1の姿勢を測定し、前記180°の位置での姿勢を座標変換し、前記0°位置での姿勢と比較して、姿勢データの平均を求めることにより、より高精度な測定を行うことが出来る。
なお、前記0°位置は、プラスチックの成形品レンズの場合、成型時に発生するプラスチックの流し込み部があり、レンズの回転方向を一意に決めることができる。この場合、レンズの設計座標と、3次元形状測定装置の座標系が一致するレンズの方向を0度としてマークすることができる。一方、レンズがガラスの成形品の場合、レンズは見た目は回転対象に成型されている。この場合、回転方向の位置をレンズの形状のみでは特定できないため、評価のために、簡易的にマジックインキ等で回転方向の位置を指定し、このマジックインキで指定された位置を基準に、例えば、0°位置はマークが手前、90°位置はマークが右などと指定し、レンズを回転させることができる。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。