JP4976906B2 - Haz靭性、母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスに優れた厚鋼板 - Google Patents

Haz靭性、母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスに優れた厚鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、例えば海洋構造物などの溶接構造物に適用される厚鋼板に関し、好ましくは入熱量が40kJ/mm以上程度の超大入熱溶接しても溶接後の熱影響部(Heat Affected Zone、HAZ)の靭性に優れ、さらに母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスにも優れた厚鋼板に関する。
近年、海洋構造物等の大型化が進められ、板厚が60mm以上の厚鋼板が用いられることがある。このような厚鋼板を効率良く溶接するために、入熱量が40kJ/mm以上である超大入熱溶接を行ってもHAZ靭性に優れていることが求められる。
しかし超大入熱溶接を行うと、HAZが高温のオーステナイト領域まで加熱されてから徐冷されるため、その組織が粗大化し、HAZ靭性が著しく劣化するという問題があった。そのため従来では、溶接入熱量の制限を余儀なくされていた。
このような超大入熱溶接で良好なHAZ靭性を達成するため、例えば、特許文献1、2は、TiNを鋼中に分散させることを提案している。また特許文献3は、低C化、低P化に加えてNbとBの添加バランスを調節している。特許文献4では、溶接用鋼中に存在するTiN系介在物の中に積極的にNbを含有させて、粗大フェライトの生成を抑制している。特許文献5は、鋼材にNを比較的多量に添加し、かつTiとBの添加バランスを適切に制御すれば、大入熱溶接したときのHAZ靭性を改善できるとしている。
特開平2−250917号公報 特開平2−254118号公報 特開2003−166033号公報 特開2004−218010号公報 特開2005−200716号公報
しかし、溶接の分野ではHAZ靭性のさらなる改善が求められている。さらに上記特許文献はいずれも母材靭性についても考慮していない。さらに厚鋼板は、伸びや強度−伸びバランスに優れていることも求められる。
従って、本発明が解決しようとする課題は、40kJ/mm以上の超大入熱溶接しても良好なHAZ靭性を示し、さらに母材靭性、伸び、強度−伸びバランスにも優れている厚鋼板を提供することにある。
前記課題を解決し得た本発明に係るHAZ靭性、母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスに優れた厚鋼板は、C:0.030〜0.10%(質量%の意味、以下同じ)、Si:1.0%以下(0%を含まない)、Mn:0.8〜2.0%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.035%、Ti:0.015〜0.03%、B:0.0010〜0.0035%、及びN:0.0050〜0.01%を含有し、
さらにCu:2.0%以下(0%を含む)、Ni:2.0%以下(0%を含む)、Cr:1%以下(0%を含む)、Mo:0.5%以下(0%を含む)及びV:0.1%以下(0%を含む)を含有し、
残部がFe及び不可避不純物からなる厚鋼板であって、
残留オーステナイトの体積率が2〜10%、島状マルテンサイト(Martensite−Austenite constituent(MA))の平均円相当径が3.0μm以下であり、
しかも下記式(1)及び(2)を満足している点にその要旨を有する。
1.5≦[Ti]/[N]≦4 … (1)
40≦X値≦160 … (2)
X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
(式中、[Ti]、[N]、[C]、[Si]、[Mn]、[Nb]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]は鋼板中の各元素の含有量(質量%)を表す)
本発明の厚鋼板のδ域の温度範囲は、例えば、40℃以下である。本発明の厚鋼板では、深さt/4の位置(t=板厚)において、Ti系炭窒化物の平均粒子径が43nm以下であることが望ましい。
本発明の厚鋼板は、さらにCa:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、REM:0.01%以下(0%を含まない)、Zr:0.1%以下(0%を含まない)、Hf:0.05%以下(0%を含まない)、Co:2.5%以下(0%を含まない)、W:2.5%以下(0%を含まない)などを含有していてもよい。
なお本明細書において「炭窒化物」は、炭化物、窒化物も含む意味で使用する。
本発明によれば、各元素の量をそれぞれ単独で制御するだけでなく、X値、Ti/N比などの観点から各元素量の相互の関係を制御しており、しかも残留オーステナイト(γ)の体積率と島状マルテンサイト(MA)の大きさを制御しているため、超大入熱溶接しても優れたHAZ靭性を示し、かつ母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスにも優れている厚鋼板を得ることができる。
本発明の厚鋼板では、HAZ靭性及び母材靭性(低温靭性)を改善するために(A)X値、(B)Ti/N比を制御し、さらに母材靭性を低下させることなく伸びを高め、強度−伸びバランスを向上するために(C)残留オーステナイトを少なくしながら、島状マルテンサイト(MA)が大きくならないようにしている。以下、順に説明する。
(A)X値
X値はδ域の温度範囲に関する関数である。HAZ靭性の改善を試みて、このX値に到達した経緯を説明する。まず始めに本発明者らは、Ti系炭窒化物を微細化することによって、超大入熱溶接でも良好なHAZ靭性を達成することを試みた。従来のTi系炭窒化物の分散状態は、溶鋼凝固時の冷却速度が一定であれば、Ti、Nの添加バランスのみにより定まるものと考えられてきた。しかし本発明者らが鋭意検討した結果、鋼の状態図において表されるδ域の温度範囲を縮小させることにより、同じTi、N添加量でも、Ti系炭窒化物を微細分散させ得ることを見出した。
前記「δ域」とは、鋼の状態図においてδ鉄が含まれる領域を意味する。この「δ鉄が含まれる領域」は、δ鉄のみの領域の他にも、δ+γの2相領域など、δ鉄と他の状態が含まれる領域も包含する。そして「δ域の温度範囲」とは、δ鉄が含まれる温度範囲(δ域の上限温度と下限温度との差)をいう。特定組成の鋼において、例えば、δ鉄のみの温度範囲とδ+γ鉄の温度範囲がある場合、これらの温度範囲の合計が、δ域の温度範囲である。このδ域の温度範囲は、総合熱力学計算ソフトウェア(Thermo−calc、CRC総合研究所から購入可能)に、鋼板の化学成分組成を入力することにより計算することができる。
このδ鉄中ではTiの拡散速度が速い。δ域の温度範囲が広いほど、δ鉄が存在する時間が長くなってTiの拡散が進むため、粗大なTi系炭窒化物が形成され易くなると考えられる。そこで化学成分組成を調整してδ域の温度範囲を縮小することにより、Ti系炭窒化物を微細化することを検討した。特定成分を基準にしつつ化学成分量の1つだけを変更しながらThermo−calcの計算を繰り返すことにより、各化学成分のδ域の温度範囲への影響を調べた。この計算に基づき、δ域の温度範囲と相関関係があり、化学成分組成の関数として表されるX値(下記式(3))を定めた:
X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]
+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]…(3)
(式中、[C]、[Si]、[Mn]、[Nb]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]は鋼板中の各元素の含有量(質量%)を表す。)
X値を定める上記式(3)中の係数は、特定成分の鋼から、各化学成分を変化させた場合のδ域の温度範囲の減少量に対応する。具体的には、例えば[C]の係数の「500」は、C量を0.01%だけ増大させたときに、Thermo−calcの計算にてδ域の温度範囲が約5℃減少することを意味する。そしてX値とδ域の温度範囲とは、ほぼ反比例の関係(X値が増大すれば、δ域の温度範囲は減少するという関係)にある。
そして様々なX値を有する鋼板を製造してそれらの特性を調べたところ、X値を増大させることによって(δ域の温度範囲を狭くすることによって)、Ti系炭窒化物が微細化し、かつ小入熱溶接及び超大入熱溶接のいずれであってもHAZ靭性が向上することが判明した。
さらにX値を増大させることで、Nb系炭窒化物が微細化するためか、鋼板の母材靭性(吸収エネルギー)も向上することも解った。Nb系炭窒化物はTi系炭窒化物を核にして析出するため、Ti系炭窒化物を微細化したことで、Nb系炭窒化物も微細化するものと思われる。
従って本発明の厚鋼板では、X値の値が下記式(2)を満足するようにする。なおX値の意味は上記のように解釈されるが、最も重要なのはX値と諸特性との間に相関関係がある点であり、解釈の如何に拘わらずX値を満足するものは本発明に含まれる。
40≦X値≦160 … (2)
X値の範囲は、40以上、好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上である。X値が大きくなるほど、Ti系炭窒化物が微細化し、HAZ靭性及び母材靭性が良好になる。しかしX値が大きくなると、島状マルテンサイト組織(Martensite−Austenite constituent(MA))が増大し、母材靭性がかえって劣化し、また伸びも低下する。従ってX値は、160以下、好ましくは100以下、さらに好ましくは75以下である。
(B)Ti/N比
また本発明の厚鋼板では、Ti量とN量とのバランスをとることによって、HAZ靭性を改善している。具体的には下記式(1)を満足するようにしている。
1.5≦[Ti]/[N]≦4 … (1)
(式中、[Ti]、[N]は鋼板中の各元素の含有量(質量%)を表す。)
[Ti]/[N]が4を超えると、Ti系炭窒化物が粗大になり、HAZ靭性が低下する。好ましい[Ti]/[N]は、3.5以下である。また逆に[Ti]/[N]が1.5未満であれば、過剰Nの影響で、HAZ靭性が低下する。好ましい[Ti]/[N]は、2.0以上、より好ましくは2.5以上である。
靭性の観点から、本発明の厚鋼板中のTi系炭窒化物は微細であることが好ましい。本発明の厚鋼板中のTi系炭窒化物は、例えば、43nm以下、好ましくは40nm以下、さらに好ましくは35nm以下である。
なお本発明におけるTi系炭窒化物の平均粒子径の値は、以下のようにして測定した値である。まず、鋼板の熱履歴を代表する部分として深さt/4の位置(t=板厚)を、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観察倍率6万倍以上(後述する実施例では6万倍)、観察視野2.0×2.0μm以上(後述する実施例では2.0×2.0μm)、観察箇所5箇所以上(後述する実施例では5箇所)の条件で観察する。そしてその視野中の各炭窒化物の面積を測定し、この面積から各炭窒化物の円相当径を算出する。この各炭窒化物の円相当径を算術平均(相加平均)して得られる値を、本発明におけるTi系炭窒化物の平均粒子径とする。
なおTi系炭窒化物であるか否かの判別は、各炭窒化物粒子の主体となる成分によって定まる。すなわちTi系炭窒化物とは、炭素および窒素を除いた残りの元素の合計質量を100%としたとき、Tiの割合が50質量%以上になるものをいう。元素の量はエネルギー分散型X線検出器(EDX)によって決定することができる。なお、あまりに微細な炭窒化物は測定できないため、本発明における炭窒化物とは、円相当径が5nm以上のものに限定する。
(C)残留オーステナイトと島状マルテンサイト組織(MA)
厚鋼板は上述したように母材靭性(特に低温靭性)やHAZ靭性に優れていることが望まれるが、特に建築構造物や鋼構造物に使用される場合には、耐震性を向上させる観点から、均一伸びにも優れていることも求められる。均一伸びとは、局部収縮が開始するまでの伸びのことを意味し、鋼板が変形する際の安定性の指標となるものである。なお単純に均一伸びを上げても、その分、強度が低下したのでは耐震性を向上させることはできない。従って均一伸びが高く、かつ強度−伸びバランス(強度と伸びの績)にも優れていることが重要である。なお本発明の系では、均一伸びは全伸びの約50%程度の値であるため、後述の実験例では全伸びで評価した。
均一伸びを向上し、強度−伸びバランスも向上させるには、鋼組織の残留オーステナイト(γ)量を増加することが考えられるが、一般的には、残留オーステナイトを増加すると島状マルテンサイト(MA)も大きくなるため、母材靭性が低下する。本発明では、後述する特定の製造方法を採用しているため、島状マルテンサイト(MA)の粗大化を防止しつつ、残留オーステナイト(γ)を増加することに成功し、母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスの全てを向上させることができる。
残留オーステナイトの体積率は、2%以上、好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは3%以上である。残留オーステナイトの体積率を大きくするほど、強度−伸びバランスを向上できる。しかし残留オーステナイトの体積率が大きくなり過ぎると、靭性や伸びが低下する。従って残留オーステナイトの体積率は、10%以下、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。
なお残留オーステナイトの体積分率は、以下のようにして測定する。鋼板のt/4(t=板厚)位置から得られた試験片を鏡面研磨し、X線回折によって、リーベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留オーステナイト分率を求めた。X線回折装置は、理学電気製の「RAD−RU300」を使用し、ターゲットはCoとし、ターゲット出力は40kV、200mAとした。
島状マルテンサイトの平均円相当径は、3.0μm以下、好ましくは2.7μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。島状マルテンサイトの平均円相当径の下限を設定する必要はないが、容易に達成できる範囲が望ましく、例えば、0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であってもよい。
島状マルテンサイト(MA)の平均円相当径の測定法は、次の通りである。鋼板を圧延方向に沿って切断し、この切断面のt/4(t=板厚)位置をレペラー腐食した後、光学顕微鏡写真(観察倍率:1000倍、観察視野:50μm×50μm)を撮影する(n数=10)。撮影した写真を画像解析装置(Media Cybernetics製、Image−Pro Plus)で処理することよって、各島状マルテンサイトの円相当径を算出し、その算術平均(相加平均)を求める。
なお本発明の厚鋼板の組織は、ベイナイトを主体とする組織、又はフェライトとベイナイトを主体とする組織である。主体とは面積率で70%以上であることをいい、残りの組織には、前述の残留オーステナイト(γ)及び島状マルテンサイト(MA)の他、パーライト、マルテンサイト、セメンタイトなどが含まれることがある。
上述したように本発明では、(A)X値、(B)Ti/N比、(C)残留オーステナイト(γ)と島状マルテンサイト組織(MA)などを制御することによって、HAZ靭性、母材靭性(低温靭性)、伸び、強度−伸びバランスなどを改善している。しかし、これらの効果を有効に発揮させるためには、鋼板の成分組成も重要である。本発明の鋼板の成分組成及びその限定理由は、以下の通りである。
[C:0.030〜0.10%]
Cは、鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、また鋼の状態図におけるδ域の温度範囲を縮小させるために有効な元素である。C量が0.030%未満では強度を確保することができなくなる。一方、C量が0.10%を超えると、伸び及びHAZ靭性が劣化する。そこでC量を0.030〜0.10%と定めた。C量の好ましい下限は0.04%以上、さらに好ましくは0.05%以上である。またC量の好ましい上限は0.08%以下、さらに好ましくは0.07%以下である。
[Si:1.0%以下(0%を含まない)]
Siは、鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、そのためには、0.01%以上添加することが好ましい。しかしSiを過剰に添加すると、伸び及びHAZ靭性が低下するため、その上限を1.0%とする必要がある。Si量の好ましい下限は、0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。Siの好ましい上限は0.8%以下であり、より好ましくは 0.6%以下である。
[Mn:0.8〜2.0%]
Mnは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を確保するのに有効な元素である。Mn量が0.8%未満では、強度確保の作用が充分に発揮されない。一方、Mn量が2.0%を超えると、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。そこでMn量を、0.8〜2.0%と定めた。Mn量の好ましい下限は1.0%以上であり、より好ましくは1.5%以上である。一方、Mn量の好ましい上限は1.8%以下、より好ましくは1.6%以下である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
不純物元素であるPは、母材靭性およびHAZ靭性に悪影響を及ぼすため、その量は、できるだけ少ないことが好ましい。よってP量は、0.03%以下、好ましくは0.01%である。しかし工業的に、鋼中のP量を0%にすることは困難である。
[S:0.01%以下(0%を含まない)]
Sは、MnSを形成して延性を低下させる元素であり、特に高張力鋼において悪影響が大きくなるため、その量は、できるだけ少ないことが好ましい。よってS量は、0.01%以下、好ましくは0.005%以下である。しかし工業的に、鋼中のS量を0%にすることは困難である。
[Al:0.01〜0.10%]
Alは、脱酸、及びミクロ組織の微細化により母材靭性を向上させる効果を有する元素である。このような効果を充分に発揮させるため、Alを0.01%以上添加する。もっともAlを過剰に添加すると、かえってHAZ靭性が低下するため、上限を0.10%とする。Al量の好ましい下限は0.02%以上である。一方、その好ましい上限は0.06%以下であり、より好ましくは0.04%以下である。
[Nb:0.005〜0.035%]
Nbは、素地の焼入れ性を向上させて鋼板の強度を高めるために有効な元素である。このような効果を充分に発揮させるために、Nb量は0.005%以上であることが必要である。しかしNbを過剰に添加すると、HAZ靭性が低下するため、その上限量を0.035%と定めた。Nb量は、好ましくは0.010%以上であり、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.020%以下である。
[Ti:0.015〜0.03%]
Tiは、Nと微細な窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することにより(いわゆるピンニング効果により)、HAZ靭性を向上させるために有効な元素である。このような効果を充分に発揮させるため、Tiを0.015%以上添加する。しかしTi量が過剰であると、かえってHAZ靭性が劣化するため、Ti量の上限を0.03%と定めた。Ti量は、好ましくは0.018%以上、0.030%以下(特に0.020%以下)である。
[B:0.0010〜0.0035%]
Bは、超大入熱溶接の際に、HAZ、殊にボンド部の付近で、BNを核にした粒内フェライトを生成させると共に、固溶Nの固定作用も有し、HAZ靭性改善に重要な元素である。本発明では、その効果を充分に発揮させるためにBを、通常の厚鋼板中の含有量よりも多く、0.0010%以上含有させている。しかしB量が過剰であると、超大入熱溶接の際に粗大なベイナイト組織が形成されるため、かえってHAZ靭性が劣化する。そのためB量の上限を0.0035%と定めた。B量は、好ましくは0.0015%以上(特に0.0020%以上)、0.0030%以下(特に0.0025%以下)である。
[N:0.0050〜0.01%]
Nは、Tiと結合して微細な炭窒化物を形成し、超大入熱溶接の際にオーステナイト粒の粗大化を抑制し、HAZ靭性を向上させる効果を有する元素である。N量が少なすぎると、上記効果が充分に発揮されないため、その下限を0.0050%以上に定めた。一方、N量が過剰であると、HAZ靭性に悪影響を及ぼすため、その上限を0.01%と定めた。N量の好ましい下限は0.006%以上であり、より好ましくは0.007%以上である。またN量の好ましい上限は0.009%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。
本発明の厚鋼板は、上記各成分を必須成分として含有するが、必要に応じてさらに追加の成分を含有していてもよい。例えば、本発明の厚鋼板は、Cu、Ni、Cr、Mo、Vなどの第1の追加成分を、下記に示す範囲で含有していてもよい。なお任意成分であるため、下限値は0%に設定しているが、積極添加する場合には下限値は0%超になる。またこれらCu、Ni、Cr、Mo、Vなどは、単独で添加してもよく、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
[Cu:2.0%以下(0%を含む)]
Cuは、焼入れ性を高めて強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。またCと同様にδ域の温度範囲を縮小させて、Ti系炭窒化物を微細化する効果を有すると考えられる。このような効果を充分に発揮させるために、Cu量は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.3%以上、特に0.4%以上であることが推奨される。しかしCu量が過剰であると、伸び及びHAZ靭性が低下する傾向があるため、その上限を2.0%と定めた。Cu量は好ましくは1.0%以下である。
[Ni:2.0%以下(0%を含む)]
Niも、Cuと同様に、焼入れ性を高めて強度向上に寄与し、δ域の温度範囲を縮小させるために有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、Ni量は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.3%以上、特に0.4%以上であることが推奨される。しかしNi量が過剰であると、伸び及びHAZ靭性が低下する傾向があるため、その上限を2.0%と定めた。Ni量は好ましくは1.0%以下である。
[Cr:1%以下(0%を含む)]
Crも、Cuと同様に、焼入れ性を高めて強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、Cr量は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.4%以上であることが推奨される。しかしCr量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が低下するので、その上限を1%と定めた。Cr量の好ましい上限は0.8%である。
[Mo:0.5%以下(0%を含む)]
Moは、焼入れ性を高めて強度を向上させることに加えて、焼戻し脆性を防止するために有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、Mo量は、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上であることが推奨される。しかしMo量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、その上限を0.5%以下と定めた。Mo量は、好ましくは0.3%以下である。
[V:0.1%以下(0%を含む)]
Vは、少量の添加により、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果を有する元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を充分に発揮させるために、V量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上であることが推奨される。しかしV量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、その上限を0.1%と定めた。V量は、好ましくは0.05%以下である。
本発明の厚鋼板では、さらに必要に応じて第2の追加の成分を含有していてもよい。第2の追加の成分を添加する場合、それらの組み合わせ及び添加量は、以下の通りである。
(イ)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、及びREM:0.01%以下(0%を含まない)から選択される少なくとも1種、
(ロ)Zr:0.1%以下(0%を含まない)及び/又はHf:0.05%以下(0%を含まない)、
(ハ)Co:2.5%以下(0%を含まない)及び/又はW:2.5%以下(0%を含まない)。
なお前記(イ)、(ロ)、(ハ)は、いずれか一つを実施してもよく、二つ以上を組み合わせて実施してもよい。以下、(イ)、(ロ)、(ハ)の詳細を説明する。
(イ)Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、及びREM:0.01%以下から選択される少なくとも一種について
Ca、Mg、及びREM(希土類元素)は、HAZ靭性を向上させる効果を有する元素である。詳しくは、Ca及びREMは、MnSの球状化効果、言い換えれば介在物の形態制御による異方性の低減作用があり、HAZ靭性を向上させる。一方、Mgは、MgOを形成し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ靭性を向上させる。このような効果を充分に発揮させるために鋼板中に、Caは0.0005%以上、Mgは0.0001%以上、REMは0.0005%以上含有させることが好ましい。しかしこれらの量が過剰であると、かえって母材靭性およびHAZ靭性を劣化させるので、Caは0.005%以下、Mgは0.005%以下、REMは0.01%以下と定めた。好ましくはCaが0.003%以下、Mgが0.0035%以下、REMが0.007%以下である。
(ロ)Zr:0.1%以下および/又はHf:0.05%以下について
Zr及びHfは、Tiと同様に窒化物を形成し、溶接時におけるHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制するので、HAZ靭性の改善に有効な元素である。このような効果を充分に発揮させるため、Zr量は、好ましくは0.001%以上、Hf量は、好ましくは0.0005%以上であることが推奨される。しかしこれらの量が過剰であると、かえって母材靭性およびHAZ靭性が低下させるので、これらを含有させる場合、Zr量の上限を0.1%、Hf量の上限を0.05%と定めた。
(ハ)Co:2.5%以下および/又はW:2.5%以下について
Co及びWは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を高める効果を有する元素である。このような効果を充分に発揮させるため、これらの1つ又は両方を、それぞれ0.1%以上で含有させることが好ましい。しかしこれらの量が過剰であると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化するため、これらの量の上限を、それぞれ2.5%と定めた。
本発明の厚鋼板では、残部は、Fe及び不可避不純物であってもよい。
本発明の厚鋼板を製造する為には、概略、上記化学成分量、[Ti]/[N]及びX値の要件を満たす鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとする。そして加熱及び熱間圧延した後、所定の方法で焼入れする必要がある。なお焼入れした鋼板は、必要により、焼戻ししてもよい。
まず溶鋼の冷却について詳述すると、本発明の厚鋼板は、X値を制御してδ域の温度範囲を狭くしているので、溶鋼を通常の条件で冷却(例えば1500℃から1100℃までを0.1〜2.0℃/秒の冷却速度で冷却)してスラブを形成しても、Ti系炭窒化物を十分に小さくできる。但し、より微細な炭窒化物を形成させるために、鋳造機の冷却水量や冷却方法を変更して、凝固時の冷却速度を向上させることが好ましい。
次に熱間圧延の加熱温度及び仕上げ温度は、通常の範囲から選択できる。加熱温度は、例えば、900〜1300℃程度(好ましくは950〜1250℃程度)の範囲から設定でき、仕上げ温度は、例えば、750〜950℃程度(好ましくは750〜900℃程度)の範囲から設定できる。
そして本発明の製造工程で最も重要なのは、熱間圧延後の焼入れ方法である。この焼入れは、島状マルテンサイトの粗大化を防止しつつ、残留オーステナイトを増加させるために実施する。焼入れ方法は、大きく2種類(焼入れ法A、焼入れ法B)に分けられる。焼入れ法Aは、熱間圧延した鋼板を、直接、又はオフラインなどで再加熱した後、第1の焼入れを行い、再び加熱して第2の焼入れを行い、焼戻しする方法である。焼入れ法Bは、熱間圧延した鋼板を、直接、又はオフラインなどで再加熱した後、途中まで加速冷却(第1の加速冷却という)し、一旦冷却を緩めた後、再度加速冷却(第2の加速冷却という)する方法である。焼入れ法A及び焼入れ法Bの詳細条件は、以下の通りである。
(A)焼入れ法A
焼入れ法Aにおける第1の焼入れでは、冷却開始温度は、750℃以上、好ましくは800℃以上、さらに好ましくは850℃以上である。冷却開始温度が低すぎると、焼きが十分に入らない。第1の焼入れの冷却停止温度は、通常の焼入れと同様であり、例えば、200℃以下である。
第2の焼入れにおける冷却開始温度は、850℃以下(好ましくは800℃以下、さらに好ましくは750℃以下)であって、フェライト−オーステナイトの2相になる温度以上(例えば、700℃以上)である。冷却開始温度が高すぎると、残留オーステナイトが粗大化する。一方、冷却開始温度が低すぎると、2相域からの焼入れにならず、残留オーステナイトが不足し、強度−伸びバランスが劣化する。第2の焼入れの冷却停止温度は、例えば、200℃以下である。
第1の焼入れ及び第2の焼入れいずれにおいても、冷却速度は通常の焼入れと同様であり、例えば、1℃/秒以上、好ましくは3℃/秒以上、さらに好ましくは5℃/秒以上である。
この焼入れ法Aでは、第2の焼入れの再加熱温度も重要である。再加熱温度は、例えば、700〜900℃程度、好ましくは720〜850℃程度である。再加熱温度が低すぎると、冷却開始温度が低くなり過ぎる。また再加熱温度が高すぎると、冷却開始までに時間がかかり過ぎ、残留オーステナイトが不足し、かつ島状マルテンサイト(MA)が粗大化する。保持時間については、15分以上とする。
焼戻し条件は、通常の範囲で設定でき、例えば、400〜600℃で10〜30分間保持してから冷却する。
(B)焼入れ法B
焼入れ法Bにおける第1の加速冷却では、冷却開始温度は、900℃以下(好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下)、700℃以上(好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上)である。第1の加速冷却における冷却停止温度は、750℃以下(好ましくは700℃以下、さらに好ましくは650℃以下)、550℃以上(好ましくは600℃以上)である。冷却停止温度が高すぎると、残留オーステナイトが不足する一方で、島状マルテンサイト(MA)が粗大化する。一方、冷却停止温度が低すぎると、残留オーステナイトが不足する。
なお第1の加速冷却の冷却速度は、通常の焼入れの冷却速度と同等であり、例えば、1℃/秒以上、好ましくは3℃/秒以上、さらに好ましくは5℃/秒以上である。冷却速度が遅すぎると、実質的に第1の加速冷却を行わなかったことになり、未変態オーステナイトへのC濃化が多くなりすぎ、パーライトやセメンタイトに変態してしまうため、残留オーステナイトが不足する。
第1の加速冷却終了後、第2の加速冷却開始までの間は、等温保持してもよく、緩やかに冷却(例えば、冷却速度1℃/秒未満(空冷など))してもよい。第1の加速冷却終了後、第2の加速冷却開始までの時間(以下、インターバルという)は、例えば、20〜130秒程度、好ましくは30〜100秒程度、さらに好ましくは40〜80秒程度である。インターバルが短すぎると、フェライトが少なすぎて未変態オーステナイトへのC濃化が十分でなく、残留オーステナイトが不足する。また逆にインターバルが長すぎると、未変態オーステナイトへのC濃化が多くなりすぎ、パーライトやセメンタイトに変態してしまうため、残留オーステナイトが不足する。
第2の加速冷却の開始温度は、700℃以下(好ましくは650℃以下、さらにこのましくは630℃以下)、550℃以上(好ましくは600℃℃以上、さらに好ましくは620℃以上)である。また第2の加速冷却における冷却停止温度は、400℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。冷却停止温度が高すぎると、実質的に第2の加速冷却を行わなかったことになり、残留オーステナイトが不足する。
第2の加速冷却の冷却速度は、第1の加速冷却と同様である。
なお焼入れ法Bでは、第2の加速冷却終了後、焼戻ししてもよい。焼戻し条件は、焼入れ法Aと同様である。
本発明の厚鋼板は、JISの厚鋼板の定義に従い、板厚が3.0mm以上であるが、好ましくは10kJ/mm以上の入熱(特に超大入熱)の溶接が求められるような厚さを有する。10kJ/mm以上の入熱(特に超大入熱)が求められる板厚は、例えば、20mm以上、さらに好ましくは40mm以上、特に60mm以上である。本発明によれば、超大入熱溶接しても良好なHAZ靭性を示すため、板厚を厚くしても、HAZ靭性を低下することなく溶接できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験No.1〜60
表1〜3に示す組成の鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却(1500℃から1100℃までの冷却速度:0.1〜2.0℃/秒)し、スラブを得た(スラブ厚=270mm)。このスラブを表4〜5に示す製造方法で熱間圧延及び焼入れすることによって、厚さ60mmの鋼板を得た。なお表4は焼入れ法Aの条件を示すものであり、表5は焼入れ法Bの条件を示すものである。
鋼板の化学成分組成から計算した[Ti]/[N]及びX値、並びにThermo−calcから計算したδ域の温度範囲の値(表中で「δ域」と記載)を、表1〜3に示す。
また上記のようにして製造した鋼板について、前述した要領で、残留オーステナイトの体積率、島状マルテンサイト(MA)の円相当径、並びにTi系炭窒化物の平均粒径(円相当径)を調べた。また下記要領で、鋼板の引張強さ、全伸び、靭性(vE-60)、及びHAZ靭性を測定した。これらの結果を表6〜7に示す。
[引張強さ、全伸び]
深さt/4の位置(t=板厚)で、試験片の長手方向が鋼板の板幅方向(C方向)となる様にJIS4号試験片を採取し、引張試験を行うことにより、引張強さ、及び全伸びを測定した。引張強さが490MPa以上、全伸びが30%以上、強度−伸びバランス(強度と伸びの績)が20000MPa%以上のものを合格とした。
[母材靭性]
深さt/4の位置(t=板厚)で、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向(L方向)となる様に、JIS Z 2242に規定するVノッチ標準試験片を採取し、−60℃でシャルピー衝撃試験(衝撃刃半径2mm)を行い、吸収エネルギー(vE-60)を測定した。vE-60が100J以上のものを合格とした。
[HAZ靭性]
板厚60mmの鋼板に対して入熱40kJ/mmでエレクトロガスアーク溶接を行った。図1に示すt/2部(t=板厚)から JIS Z 2242に規定するVノッチ標準試験片を採取し(ノッチ位置は、ボンドから0.5mmHAZ側)、−40℃でシャルピー衝撃試験(衝撃刃半径2mm)を行い、吸収エネルギー(vE-40)を測定した。吸収エネルギーが200J以上のものを合格とした。
また本発明の成分範囲を満足する実験No.1〜33の結果に基づき、X値、Ti系炭窒化物の平均粒径、HAZ靭性(vE-40)、母材靭性の関係を整理した。結果を図2〜4に示す。さらに本発明の成分範囲とX値を満足する実験No.1〜32及びNo.50〜57の結果に基づき、残留オーステナイトの体積率と強度−伸びバランスの関係を整理した。結果を図5に示す。
図2〜4から明らかなように、X値を大きくすることで、Ti系炭窒化物の平均粒径を小さくでき、HAZ靭性(vE-40)と母材靭性(vE-60)を改善できる。また図5から明らかなように、残留オーステナイトの体積率を大きくすることで、強度−伸びバランスを改善できる。さらに実験No.58〜60との対比から明らかなように、島状マルテンサイト(MA)の円相当径を小さくすることで、母材靭性(vE-60)の劣化を防止できる(実験No.1〜32)。
本発明の厚鋼板の引張強度クラスは、例えば、490MPa以上、好ましくは540MPa以上であり、最も好ましい場合には590MPa以上の厚鋼板も提供できる。本発明の厚鋼板は、例えば、海洋構造物などの溶接構造物に適用できる。
図1はHAZ靭性測定用の試験片の採取位置を示す概略図である。 図2は実験No.1〜33の結果に基づき、X値とTi系炭窒化物の平均粒径との関係を整理したグラフである。 図3は実験No.1〜33の結果に基づき、X値とHAZ靭性(vE-40)との関係を整理したグラフである。 図4は実験No.1〜33の結果に基づき、X値と母材靭性(vE-60)との関係を整理したグラフである。 図5は実験No.1〜32及びNo.50〜57の結果に基づき、残留オーステナイトの体積率と強度−伸びバランスとの関係を整理したグラフである。

Claims (7)

  1. C:0.030〜0.10%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:1.0%以下(0%を含まない)、
    Mn:0.8〜2.0%、
    P:0.03%以下(0%を含まない)、
    S:0.01%以下(0%を含まない)、
    Al:0.01〜0.10%、
    Nb:0.005〜0.035%、
    Ti:0.015〜0.03%、
    B:0.0010〜0.0035%、及び
    N:0.0050〜0.01%を含有し
    部がFe及び不可避不純物からなる厚鋼板であって、
    残留オーステナイトの体積率が2〜10%、島状マルテンサイト(MA)の平均円相当径が3.0μm以下であり、
    しかも下記式(1)及び(2)を満足することを特徴とするHAZ靭性、母材靭性、伸び、及び強度−伸びバランスに優れた厚鋼板。
    1.5≦[Ti]/[N]≦4 … (1)
    40≦X値≦160 … (2)
    X値=500[C]+32[Si]+8[Mn]−9[Nb]+14[Cu]+17[Ni]−5[Cr]−25[Mo]−34[V]
    (式中、[Ti]、[N]、[C]、[Si]、[Mn]、[Nb]、[Cu]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[V]は鋼板中の各元素の含有量(質量%)を表す)
  2. δ域の温度範囲が40℃以下である請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 深さt/4の位置(t=板厚)において、Ti系炭窒化物の平均粒子径が43nm以下である請求項1又は2に記載の厚鋼板。
  4. さらにCu:0%超、2.0%以下、Ni:0%超、2.0%以下、Cr:0%超、1%以下、Mo:0%超、0.5%以下及びV:0%超、0.1%以下を単独で含有するか、2種以上を組み合わせて含有する請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。
  5. さらにCa:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、及びREM:0.01%以下(0%を含まない)から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜のいずれかに記載の厚鋼板。
  6. さらにZr:0.1%以下(0%を含まない)及び/又はHf:0.05%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜のいずれかに記載の厚鋼板。
  7. さらにCo:2.5%以下(0%を含まない)及び/又はW:2.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜のいずれかに記載の厚鋼板。
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