JP4965026B2 - ブロイラー種畜タイプ家禽類における突然死を予防するためのカルニチン補充食 - Google Patents
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Description
【０００１】
［発明の背景］
１．発明の分野
本発明は、一般に、家畜における病気の予防に関し、より具体的にはブロイラー種畜系家禽類（broiler breeder strain poultry）における突然死症候群の予防に関する。
【０００２】
２．背景
突然死症候群（Sudden Death Syndrome；ＳＤＳ）は、急死症候群（Acute Death Syndrome）もしくはフリップ・オーバー（Flip-Over）としても知られ、産卵開始と産卵ピークの間の代謝ストレスの高い期間の、何の兆候もない種畜メンドリの高い死亡率（１２〜１８％）により特徴付けられる。ＳＤＳで死亡するニワトリおよびシチメンチョウは、しばしば仰向けに横たわって発見される。１９７０年代後半にオーストラリアで最初に認識され、１９８０年代にヨーロッパと米国に広まり、該症候群の特定の病因は同定されていない。しかし、該病気は、心臓血管系疾患であることが知られており、異常な心臓特性および病変により証拠付けられる。死亡率は、産卵期間の代謝におけるカリウム、カルシウム、もしくはリンのアンバランスもしくは欠乏の影響と関連しているが、これらの領域に関する治療は有効でないことが分かった。
【０００３】
変遷する動物伝染病学は、ＳＤＳが、家禽類産業に対して大きく世界的に動物間流行病に発展する恐れがあると示唆している。産卵の開始と関連してストレスを悪化させているのは、今日の遺伝的に操作された鳥の成長速度の速さおよび代謝要求性の高さである。肉用家禽類の脂肪のない系統（lean strains）を迅速に成長させたい要望、並びに内臓器官の全体サイズを小さくすることにより収量を増大させたい加工業者からの要求は、突然死症候群に罹りやすい系統を選択していることを意味する。鶏肉の所定の量を生産するのに必要な屠殺までの齢および飼料の量は、１９５０年代初めから半分以上に低下している。Havenstein,G.B., P.R.Ferket, S.E.Scheldeler and B.T.Larson, Growth, Livability and Feed Conversion of 1957 vs. 1991 Broilers When Fed“Typical”1957 and 1991 Broiler Diets, Poultry Science, Vol.73, pp.1785-1794 (1994)を参照されたい。１９５０年代初め、４ポンドの収量までブロイラーを成長させるのに必要な期間の平均は、１５週を超えていた。遺伝的選択により、この期間は、現在の平均である約６週まで短くなった。その結果、家禽類の肉を１ユニット生産するのに必要な鳥の代謝は、より短い期間に圧縮された。このような代謝要求性は、気温の低さや高さ、病気などの環境因子により更に高まる。高い代謝要求性を有する鳥は、酸素の要求が高いため、鳥の心臓血管支持系に対して重いストレスがかかる。
【０００４】
該ブロイラー種畜は、上述のストレスの厳しい（demanding）組み合わせを経験する。該ブロイラー種畜は、速い成長速度を有するように遺伝的に操作されている一方、産卵のストレスも受けなければならない。
【０００５】
低いトータル死亡率の群れにおいて、１〜２％のＳＤＳ発症率は、経済に大きな影響を及ぼす。従って、家禽類のブロイラー種畜サブセットの間で、突然死症候群の発症率を低下させる必要がある。ターゲット家禽類の統計学的研究において、産卵サイクルの初期（例えば、産卵開始の直前や産卵ピークの続くストレスの多い期間）に供給されるブロイラー種畜系家禽類のためのカルニチン補充食が、ＳＤＳと関連のある心臓の奇形を防ぐことを本発明者らは驚くべきことに発見した。
【０００６】
これまで、家禽類の食事においてカルニチンは、飼料摂取、体重および腹部脂肪量に対して、あるいは成長中のブロイラーの屠殺後の食用部分（carcass）もしくは肝臓の脂質レベルに対して何ら有利な効果を示さないことが報告されている（Cartwright, Poultry Science, Vol.65, Suppl.1, p.21, 1986）。食事におけるカルニチンは、ブロイラーのエタノール代謝を遅らせることが示されている（Smith et al., Poultry Science, Vol.71, Suppl.1, p.64, 1992）。また、米国特許第5,362,753号において、家禽類の食事におけるカルニチンは、種畜メンドリが産む卵の孵化能力を増大させることが示されている。しかし、後者の文献に関して、当該発明の主要な効果は、‘753特許の表１に示されるように、産卵の時期（即ち、産卵ピークおよびピーク後）における孵化能力に関することに留意されたい。更に、‘753文献は、卵の蓄積脂肪を胚が容易に利用できるような卵のカルニチン濃度を増大させることに関するものであることに留意されたい。‘753文献の隅々にわたっても、カルニチン補充食を消費した種畜メンドリに対する効果については、何も教示もしくは示唆されていない。
【０００７】
家禽類と関係なく、カルニチンは、ブタの食事の補充物質として（米国特許第,124,357号および第5,192,804号、ＰＣＴ公開公報 WO 98/24328）、サケの２年子サケ飼料（smolting feed）の補充物質として（米国特許第5,722,346号）、ナマズの食事の補充物質として（米国特許第5,030,657号）使用されている。心不全もしくは心筋虚血の治療におけるカルニチンの使用は、米国特許第4,075,352号およびＰＣＴ公開公報 WO 98/43617に記載されている。
【０００８】
カルニチンの使用は公知であるが、全先行技術は、突然死症候群を予防するために産卵サイクルの初期にブロイラー種畜系家禽類に供給するカルニチン補充食について、本明細書で開示およびクレームするように教示もしくは示唆をしていない。
【０００９】
［発明の簡単な概要］
本発明において、有効量のカルニチンが、突然死症候群を予防するためにブロイラー種畜系メンドリに投与される。好ましくは、Ｌ−カルニチンが、鳥の食物もしくは水分供給に補充物質として投与される。飼料組成物における適用が最も好ましく、ここで供給されるＬ−カルニチンの量は、飼料組成物の５〜１０００ｐｐｍ（parts per million）であり、最も好ましくは約１０〜４００ｐｐｍである。。
【００１０】
本発明の特に好ましい局面において、カルニチン補充食事は、突然死症候群を予防するため、産卵サイクルの初期（例えば、１８〜３２週齢）のブロイラー種畜ニワトリに供給される。更に本発明の食事は、第二の産卵（production）サイクルを開始した脱皮した鳥においてＳＤＳを予防するのに有効であり得る。
【００１１】
本発明を実施するために想定されるベスト・モードを簡潔に説明することにより本発明の好ましい態様のみを記載した以下の詳細な説明から、本発明やその目的および効果が当業者に更に理解されることは明らかでしょう。本発明は、理解されるとおり、本発明の範囲および精神から逸脱することなく種々の明らかな点において改変を行うことができる。従って、この詳細な説明は、その性質上説明とみなされるべきで、限定するものとみなされてはならない。
【００１２】
［好ましい態様の詳細な説明］
カルニチンは、化学的に３−ヒドロキシ−４−Ｎ−トリメチルアミノ絡酸、あるいは −ヒドロキシ −トリメチルアミノ絡酸として知られ、脊椎動物の筋肉に存在する第４級アンモニウム化合物であり、その代謝機能としてはミトコンドリア膜を横断する脂肪酸の輸送に関与する。多くの他の生体分子のように、カルニチンは、２つの形態：Ｌ−カルニチンおよびＤ−カルニチンをとる。ここで使用される「カルニチン」という用語は、Ｌ−カルニチンおよび/またはその薬学的に許容される非毒性の塩をいい、限定されないその具体例には、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸マグネシウムがある。
【００１３】
「家禽類（poultry）」という用語は、その通常の広い意味でここでは使用され、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ハクチョウ、ホロホロチョウ（guinea）、ハト、クジャク、ダチョウ、キジ、ウズラ、および他の猟鳥を含む幾つかの種の鳥のことをいう。「ブロイラー（broiler）」という用語は、当該産業において周知である、肉用タイプの鳥（即ち、ヒトの消費のために生産される鳥）から成る家禽類の各種のサブセット（subset）のことをいう。「若いメンドリ（pullet）」という用語は、１０〜３２週齢の若いメスのニワトリのことをいい、孵化させるための卵を産む「卵用タイプ」の鳥（例えば、ブロイラー種畜メンドリ）を指す。本発明者らは、家禽類（特に若いメンドリ）に供給されたカルニチン補充食が、ＳＤＳの発症と関連した心筋症および心臓の病変の発症を減少させることを驚くべきことに発見した。推論される作用機序は、ＡＴＰ生成のための心臓内での脂質エネルギー利用の増大および心筋の収縮機能の強化である。
【００１４】
家禽類の発育（life）の中でピーク的なエネルギー要求期間は、ブロイラー種畜系メンドリにおいて、産卵の開始時期とピーク産卵の時期との間に起こる。ニワトリにおいて、この発育段階は、一般に２１〜３２週齢に対応する。この時期に、鳥は急速な組織の成長（accretion）および産卵のエネルギー要求を経験する。メンドリがＳＤＳを最も発症しやすいのはこの時期である。本発明の食事は、産卵の開始前から産卵のピークの時期まで２〜４週間供給されると、ＳＤＳと関連した心臓の特性に正の影響を及ぼす。
【００１５】
更に、本発明の食事は、第二の産卵サイクルを経験している老齢の換羽した（molted）鳥に、第二の産卵サイクルの直前および初期段階に供給されると、ＳＤＳの予防に有効であると考えられる。ここで使用される「産卵の開始」とは、第二の産卵サイクルと関連した産卵の開始も含む。第一の産卵サイクルを経験している鳥に６０週齢まで更に補充物質を供給することは、継続する産卵のストレスを受けている家禽類にとって有効であると考えられる。
【００１６】
本発明において補充カルニチンは、若いブロイラー種畜メンドリに、上述のストレス期間の間、有効量供給され、ここで所望の効果は、突然死症候群の発症を低下させることである。この低下は、カルニチン補充物質なしの食事を供給されたメンドリの病気発症率より低い任意のレベルであり得る。
【００１７】
補充カルニチンは、鳥の食事において、固体もしくは液体の形態で供給されることが好ましく、最も好ましくは飼料組成物の一部として供給される。特定の種および家禽類の種畜に供給されるべきカルニチンの必要濃度は、試験用飼料組成物を用いてカルチニンの濃度範囲を試験することにより、通常の技術で最適化することができる。ニワトリについて、カルニチンの有効量は、飼料組成物の約５ｐｐｍ以上である。本発明の目的に対して逆の効果を奏するものとして上限は確立されていない（便宜的には１０００ｐｐｍの上限が提案されている）が、本発明を実施する最善の既知の方法として、カルニチンの有効量を、飼料組成物の約１０ｐｐｍ〜約４００ｐｐｍ、最も好ましくは飼料組成物の約４０ｐｐｍとした、カルニチン補充食を供給することが現在想定される。
【００１８】
カルニチンを添加した基本食は、鳥の栄養要求を満たす、典型的な家禽類の食事であり得る。慣用的な食事は、種々のタンパク質、炭水化物、ビタミン、およびミネラル源のなかから選択されるものを含み、一般に約１２〜２５％の粗タンパク質、約０．５〜１０％の粗脂質、および２〜１２％の粗繊維質を含む。主要な成分は、一般に、炭水化物および幾つかのタンパク質を供給する穀物および処理された穀物の副産物である。ダイズ、アルファルファ、コーンのグルテン、綿の実、ヒマワリ、および他の植物からのタンパク質ミールが、動物の副産物のように、追加のタンパク質を食事に供給するのにしばしば使用される。家禽類の飼料組成物は、一般に種々のビタミンおよびミネラルが補充され、糖みつおよび動物の脂質を添加して、味を改良し、エネルギーレベルを高めたりバランスよくしたりする。家禽類の種々の種および発育段階に対する、家禽類の栄養要求および典型的な家禽類の食事について論じるために、National Research Council, Nutrient Requirements of Poultry. Nutrient Requirements of Domestic Animals. National Academy of Science, Washington, D.C. (1994)が一般に参照され、該文献は、本明細書の開示内容の一部とする。また、典型的な食事は、以下に報告される例に記載される。また、飼料供給のスケジュールおよび速度は、当該分野で使用される標準的なスケジュールおよび速度であり得る。
【００１９】
カルニチンは水溶性であるため、代わりに鳥の水分供給を介して投与することもできる。しかし、水分の消費は、消費される飼料のタイプ、温度、湿度、および鳥の活動に応じて変化するので、摂取量を注意してモニターしなければならない。ニワトリにおいて、飼料消費に対する水分の比率は、一般に１．５〜３．０から１．０までの範囲であるが、高い気温に晒されている間や長いストレス期間には、４〜１を超えることもある。
【００２０】
本発明は、以下の限定されない例を参照することにより更に理解されることになる。
【００２１】
［例］
材料と方法：９０匹の２０週齢のCobb X Cobbブロイラー種畜について、体重を測り、個々の産卵用（layer）ケージにランダムに割り当てた。全ての鳥に、２９０４ kcal ME/kg、１６％タンパク質、０．７４％リシン、０．３２％メチオニンを含有する１２０グラムの飼料（これは、種畜（Cobb Vantress of Siloam Springs, Arkansas）から推奨されるレベルを満たすか超えている）を供給した。水分を適宜消費のために供給した。２４週齢で、制御されている照射を、１日あたり１６時間の照射まで増やし、飼料を１日あたり１３０ｇまで増加させ、６種類の食事処置（表１）のうちの一つをランダムに鳥に割り当てた。すなわち、６種類の食事処置は、カリウム（１．０％）、抗酸化薬（１．０％）、カルニチン（２００ｐｐｍ）、カリウム＋カルニチン、抗酸化薬＋カルニチン、または補充物質なし（コントロール）を含む。各食事は、２．９％カルシウムを含有している。
【００２２】
【表１】
1 ２９０４ kcal ME/kg、１６％粗タンパク質、０．７４％リシン、０．３２％メチオニン、および２．９％カルシウムを含んで計算される。
2 炭酸カリウム−６５％Ｋ+、Church and Dwight, Princeton, NJ 08543
3 抗酸化薬ミックス−ビタミンＥ５０％（90,700 IU/lb）；ビタミンＣ結晶（129,572 mg/lb）；リボフラビン８０（22,675 mg/lb）；炭酸カルシウム６．９％；Rice Hulls １９．５％
4 カルニチン−Ｌ−カルニチン、Lonza,Inc., Fair Lawn. NJ 07410
【００２３】
個々の産卵は、毎日記録した。検死は、全ての死亡について行った。各食事ごとに３羽の鳥のサンプルを麻酔し、Hologicエックス線 骨デンシトメーターを用いて全身をスキャンして、体の質量組成、脂肪のない肉（lean）の質量、パーセント脂肪、骨質量密度を測定した。血清電解質の測定のために、これらの鳥から静脈穿刺により血液サンプル（２．０ｍＬ）を収集した。
【００２４】
３１週齢で、残りの鳥から静脈穿刺により血液（２．０ｍＬ）を採取し、その後、ＣＯ2を用いて安楽死させ、検死を行った。心臓切片を採取し、組織病理学的検査のため、１０％緩衝化中性ホルマリンで固定した。心臓の全重量を量った後、以下のとおり解剖した。右心室壁（ＲＶ）、左心室壁（ＬＶ）、および隔壁（Ｓ）の重量を記録した。右心室壁および左心室壁の重量は、頭部全重量に対して、および体重に対して表示した。心臓指数（heart index）は、ＨＩ＝ＲＶ/ＬＶ＋Ｓで計算した。組織病理学的な心臓の病変は、１〜３のスコアを付けた。ＳＤＳの心臓の病変は、既に詳細に記載されており既知である。スコア１は、極僅かな脂肪の沈着および筋繊維（myofiber）サイズの変化を示し、スコア３は、心筋の変性、動脈硬化、および動脈炎の目立った病巣を示す。スコア２は、２つの両極端な状態の中間を示す。データは、ＳＡＳのGeneral Linear Models法（SAS Institute, 1985）を用いて分析した。変動の原因は、カリウム、抗酸化薬、カルニチン、およびカリウムとカルニチンとの相互作用であった。食事の効果があったときには、Duncan’s Multiple Range Test（SAS Institute, 1985）を用いて、平均（means）を分離した。
【００２５】
結果および議論：カルニチンの補充が、心臓特性に効果をもたらした（表２）。
【００２６】
【表２】
＋Ｐ 0.10, *Ｐ 0.05, **Ｐ 0.01, ＮＳ＝有意でない
1 Ｋ＝基本食＋カリウム、Anti＝基本食＋抗酸化薬、Carn＝基本食＋カルニチン、ＫおよびCarn＝基本食＋カリウムとカルニチン、AntiおよびCarn＝基本食＋抗酸化薬とカルニチン、コントロール＝基本食
2 Ｋ＝カリウム補充、Carn＝カルニチン補充、Ｋ＊Carn＝カリウムとカルニチンとの相互作用、Anti＝抗酸化薬補充
3 HRTINDEX＝右心室壁/左心室壁＋隔壁；PWHLHRT＝心臓の全重量/体重；PLRVENT＝（左心室＋右心室）/体重；PLVENT＝左心室/体重；PRTVENT＝右心室/体重；PPLVENT＝左心室/心臓の全重量；PPRTVENT＝右心室/心臓の全重量；HSCORE＝何もなし〜重篤な心筋の変性までを示す１〜３までの主観的なスコア
ab 共通の上付き文字を付していない平均には差がある（Ｐ 0.05）
【００２７】
心臓指数、心臓のスコア、および（体重(ＢＷ)に対する、および心臓の重量に対する）右心室の重量は全て、カルニチンの補充により良くなった。左心室の重量は、心臓の重量に対して良くなった。この研究の結果により、食事のカルニチンは、ＳＤＳと関連した望ましくない心臓特性を軽減することが示された。このことは、ブロイラー種畜系家禽類において、産卵サイクルの初期段階（例えば、第一の産卵サイクルにおける、産卵開始の直前、および産卵の開始と産卵のピークとの間）にカルニチンを使用することを示唆している。この実験データおよび当該分野の知識により、補充の有効範囲は、５〜１０００ｐｐｍであると推定するのが適切である。
【００２８】
本発明は、ある程度詳細に説明されているが、例示の目的でここに記載した態様に限定されず、各構成要件が権利を与えられる等価物の範囲も含めて、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解される。
［発明の背景］
１．発明の分野
本発明は、一般に、家畜における病気の予防に関し、より具体的にはブロイラー種畜系家禽類（broiler breeder strain poultry）における突然死症候群の予防に関する。
【０００２】
２．背景
突然死症候群（Sudden Death Syndrome；ＳＤＳ）は、急死症候群（Acute Death Syndrome）もしくはフリップ・オーバー（Flip-Over）としても知られ、産卵開始と産卵ピークの間の代謝ストレスの高い期間の、何の兆候もない種畜メンドリの高い死亡率（１２〜１８％）により特徴付けられる。ＳＤＳで死亡するニワトリおよびシチメンチョウは、しばしば仰向けに横たわって発見される。１９７０年代後半にオーストラリアで最初に認識され、１９８０年代にヨーロッパと米国に広まり、該症候群の特定の病因は同定されていない。しかし、該病気は、心臓血管系疾患であることが知られており、異常な心臓特性および病変により証拠付けられる。死亡率は、産卵期間の代謝におけるカリウム、カルシウム、もしくはリンのアンバランスもしくは欠乏の影響と関連しているが、これらの領域に関する治療は有効でないことが分かった。
【０００３】
変遷する動物伝染病学は、ＳＤＳが、家禽類産業に対して大きく世界的に動物間流行病に発展する恐れがあると示唆している。産卵の開始と関連してストレスを悪化させているのは、今日の遺伝的に操作された鳥の成長速度の速さおよび代謝要求性の高さである。肉用家禽類の脂肪のない系統（lean strains）を迅速に成長させたい要望、並びに内臓器官の全体サイズを小さくすることにより収量を増大させたい加工業者からの要求は、突然死症候群に罹りやすい系統を選択していることを意味する。鶏肉の所定の量を生産するのに必要な屠殺までの齢および飼料の量は、１９５０年代初めから半分以上に低下している。Havenstein,G.B., P.R.Ferket, S.E.Scheldeler and B.T.Larson, Growth, Livability and Feed Conversion of 1957 vs. 1991 Broilers When Fed“Typical”1957 and 1991 Broiler Diets, Poultry Science, Vol.73, pp.1785-1794 (1994)を参照されたい。１９５０年代初め、４ポンドの収量までブロイラーを成長させるのに必要な期間の平均は、１５週を超えていた。遺伝的選択により、この期間は、現在の平均である約６週まで短くなった。その結果、家禽類の肉を１ユニット生産するのに必要な鳥の代謝は、より短い期間に圧縮された。このような代謝要求性は、気温の低さや高さ、病気などの環境因子により更に高まる。高い代謝要求性を有する鳥は、酸素の要求が高いため、鳥の心臓血管支持系に対して重いストレスがかかる。
【０００４】
該ブロイラー種畜は、上述のストレスの厳しい（demanding）組み合わせを経験する。該ブロイラー種畜は、速い成長速度を有するように遺伝的に操作されている一方、産卵のストレスも受けなければならない。
【０００５】
低いトータル死亡率の群れにおいて、１〜２％のＳＤＳ発症率は、経済に大きな影響を及ぼす。従って、家禽類のブロイラー種畜サブセットの間で、突然死症候群の発症率を低下させる必要がある。ターゲット家禽類の統計学的研究において、産卵サイクルの初期（例えば、産卵開始の直前や産卵ピークの続くストレスの多い期間）に供給されるブロイラー種畜系家禽類のためのカルニチン補充食が、ＳＤＳと関連のある心臓の奇形を防ぐことを本発明者らは驚くべきことに発見した。
【０００６】
これまで、家禽類の食事においてカルニチンは、飼料摂取、体重および腹部脂肪量に対して、あるいは成長中のブロイラーの屠殺後の食用部分（carcass）もしくは肝臓の脂質レベルに対して何ら有利な効果を示さないことが報告されている（Cartwright, Poultry Science, Vol.65, Suppl.1, p.21, 1986）。食事におけるカルニチンは、ブロイラーのエタノール代謝を遅らせることが示されている（Smith et al., Poultry Science, Vol.71, Suppl.1, p.64, 1992）。また、米国特許第5,362,753号において、家禽類の食事におけるカルニチンは、種畜メンドリが産む卵の孵化能力を増大させることが示されている。しかし、後者の文献に関して、当該発明の主要な効果は、‘753特許の表１に示されるように、産卵の時期（即ち、産卵ピークおよびピーク後）における孵化能力に関することに留意されたい。更に、‘753文献は、卵の蓄積脂肪を胚が容易に利用できるような卵のカルニチン濃度を増大させることに関するものであることに留意されたい。‘753文献の隅々にわたっても、カルニチン補充食を消費した種畜メンドリに対する効果については、何も教示もしくは示唆されていない。
【０００７】
家禽類と関係なく、カルニチンは、ブタの食事の補充物質として（米国特許第,124,357号および第5,192,804号、ＰＣＴ公開公報 WO 98/24328）、サケの２年子サケ飼料（smolting feed）の補充物質として（米国特許第5,722,346号）、ナマズの食事の補充物質として（米国特許第5,030,657号）使用されている。心不全もしくは心筋虚血の治療におけるカルニチンの使用は、米国特許第4,075,352号およびＰＣＴ公開公報 WO 98/43617に記載されている。
【０００８】
カルニチンの使用は公知であるが、全先行技術は、突然死症候群を予防するために産卵サイクルの初期にブロイラー種畜系家禽類に供給するカルニチン補充食について、本明細書で開示およびクレームするように教示もしくは示唆をしていない。
【０００９】
［発明の簡単な概要］
本発明において、有効量のカルニチンが、突然死症候群を予防するためにブロイラー種畜系メンドリに投与される。好ましくは、Ｌ−カルニチンが、鳥の食物もしくは水分供給に補充物質として投与される。飼料組成物における適用が最も好ましく、ここで供給されるＬ−カルニチンの量は、飼料組成物の５〜１０００ｐｐｍ（parts per million）であり、最も好ましくは約１０〜４００ｐｐｍである。。
【００１０】
本発明の特に好ましい局面において、カルニチン補充食事は、突然死症候群を予防するため、産卵サイクルの初期（例えば、１８〜３２週齢）のブロイラー種畜ニワトリに供給される。更に本発明の食事は、第二の産卵（production）サイクルを開始した脱皮した鳥においてＳＤＳを予防するのに有効であり得る。
【００１１】
本発明を実施するために想定されるベスト・モードを簡潔に説明することにより本発明の好ましい態様のみを記載した以下の詳細な説明から、本発明やその目的および効果が当業者に更に理解されることは明らかでしょう。本発明は、理解されるとおり、本発明の範囲および精神から逸脱することなく種々の明らかな点において改変を行うことができる。従って、この詳細な説明は、その性質上説明とみなされるべきで、限定するものとみなされてはならない。
【００１２】
［好ましい態様の詳細な説明］
カルニチンは、化学的に３−ヒドロキシ−４−Ｎ−トリメチルアミノ絡酸、あるいは −ヒドロキシ −トリメチルアミノ絡酸として知られ、脊椎動物の筋肉に存在する第４級アンモニウム化合物であり、その代謝機能としてはミトコンドリア膜を横断する脂肪酸の輸送に関与する。多くの他の生体分子のように、カルニチンは、２つの形態：Ｌ−カルニチンおよびＤ−カルニチンをとる。ここで使用される「カルニチン」という用語は、Ｌ−カルニチンおよび/またはその薬学的に許容される非毒性の塩をいい、限定されないその具体例には、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸マグネシウムがある。
【００１３】
「家禽類（poultry）」という用語は、その通常の広い意味でここでは使用され、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ハクチョウ、ホロホロチョウ（guinea）、ハト、クジャク、ダチョウ、キジ、ウズラ、および他の猟鳥を含む幾つかの種の鳥のことをいう。「ブロイラー（broiler）」という用語は、当該産業において周知である、肉用タイプの鳥（即ち、ヒトの消費のために生産される鳥）から成る家禽類の各種のサブセット（subset）のことをいう。「若いメンドリ（pullet）」という用語は、１０〜３２週齢の若いメスのニワトリのことをいい、孵化させるための卵を産む「卵用タイプ」の鳥（例えば、ブロイラー種畜メンドリ）を指す。本発明者らは、家禽類（特に若いメンドリ）に供給されたカルニチン補充食が、ＳＤＳの発症と関連した心筋症および心臓の病変の発症を減少させることを驚くべきことに発見した。推論される作用機序は、ＡＴＰ生成のための心臓内での脂質エネルギー利用の増大および心筋の収縮機能の強化である。
【００１４】
家禽類の発育（life）の中でピーク的なエネルギー要求期間は、ブロイラー種畜系メンドリにおいて、産卵の開始時期とピーク産卵の時期との間に起こる。ニワトリにおいて、この発育段階は、一般に２１〜３２週齢に対応する。この時期に、鳥は急速な組織の成長（accretion）および産卵のエネルギー要求を経験する。メンドリがＳＤＳを最も発症しやすいのはこの時期である。本発明の食事は、産卵の開始前から産卵のピークの時期まで２〜４週間供給されると、ＳＤＳと関連した心臓の特性に正の影響を及ぼす。
【００１５】
更に、本発明の食事は、第二の産卵サイクルを経験している老齢の換羽した（molted）鳥に、第二の産卵サイクルの直前および初期段階に供給されると、ＳＤＳの予防に有効であると考えられる。ここで使用される「産卵の開始」とは、第二の産卵サイクルと関連した産卵の開始も含む。第一の産卵サイクルを経験している鳥に６０週齢まで更に補充物質を供給することは、継続する産卵のストレスを受けている家禽類にとって有効であると考えられる。
【００１６】
本発明において補充カルニチンは、若いブロイラー種畜メンドリに、上述のストレス期間の間、有効量供給され、ここで所望の効果は、突然死症候群の発症を低下させることである。この低下は、カルニチン補充物質なしの食事を供給されたメンドリの病気発症率より低い任意のレベルであり得る。
【００１７】
補充カルニチンは、鳥の食事において、固体もしくは液体の形態で供給されることが好ましく、最も好ましくは飼料組成物の一部として供給される。特定の種および家禽類の種畜に供給されるべきカルニチンの必要濃度は、試験用飼料組成物を用いてカルチニンの濃度範囲を試験することにより、通常の技術で最適化することができる。ニワトリについて、カルニチンの有効量は、飼料組成物の約５ｐｐｍ以上である。本発明の目的に対して逆の効果を奏するものとして上限は確立されていない（便宜的には１０００ｐｐｍの上限が提案されている）が、本発明を実施する最善の既知の方法として、カルニチンの有効量を、飼料組成物の約１０ｐｐｍ〜約４００ｐｐｍ、最も好ましくは飼料組成物の約４０ｐｐｍとした、カルニチン補充食を供給することが現在想定される。
【００１８】
カルニチンを添加した基本食は、鳥の栄養要求を満たす、典型的な家禽類の食事であり得る。慣用的な食事は、種々のタンパク質、炭水化物、ビタミン、およびミネラル源のなかから選択されるものを含み、一般に約１２〜２５％の粗タンパク質、約０．５〜１０％の粗脂質、および２〜１２％の粗繊維質を含む。主要な成分は、一般に、炭水化物および幾つかのタンパク質を供給する穀物および処理された穀物の副産物である。ダイズ、アルファルファ、コーンのグルテン、綿の実、ヒマワリ、および他の植物からのタンパク質ミールが、動物の副産物のように、追加のタンパク質を食事に供給するのにしばしば使用される。家禽類の飼料組成物は、一般に種々のビタミンおよびミネラルが補充され、糖みつおよび動物の脂質を添加して、味を改良し、エネルギーレベルを高めたりバランスよくしたりする。家禽類の種々の種および発育段階に対する、家禽類の栄養要求および典型的な家禽類の食事について論じるために、National Research Council, Nutrient Requirements of Poultry. Nutrient Requirements of Domestic Animals. National Academy of Science, Washington, D.C. (1994)が一般に参照され、該文献は、本明細書の開示内容の一部とする。また、典型的な食事は、以下に報告される例に記載される。また、飼料供給のスケジュールおよび速度は、当該分野で使用される標準的なスケジュールおよび速度であり得る。
【００１９】
カルニチンは水溶性であるため、代わりに鳥の水分供給を介して投与することもできる。しかし、水分の消費は、消費される飼料のタイプ、温度、湿度、および鳥の活動に応じて変化するので、摂取量を注意してモニターしなければならない。ニワトリにおいて、飼料消費に対する水分の比率は、一般に１．５〜３．０から１．０までの範囲であるが、高い気温に晒されている間や長いストレス期間には、４〜１を超えることもある。
【００２０】
本発明は、以下の限定されない例を参照することにより更に理解されることになる。
【００２１】
［例］
材料と方法：９０匹の２０週齢のCobb X Cobbブロイラー種畜について、体重を測り、個々の産卵用（layer）ケージにランダムに割り当てた。全ての鳥に、２９０４ kcal ME/kg、１６％タンパク質、０．７４％リシン、０．３２％メチオニンを含有する１２０グラムの飼料（これは、種畜（Cobb Vantress of Siloam Springs, Arkansas）から推奨されるレベルを満たすか超えている）を供給した。水分を適宜消費のために供給した。２４週齢で、制御されている照射を、１日あたり１６時間の照射まで増やし、飼料を１日あたり１３０ｇまで増加させ、６種類の食事処置（表１）のうちの一つをランダムに鳥に割り当てた。すなわち、６種類の食事処置は、カリウム（１．０％）、抗酸化薬（１．０％）、カルニチン（２００ｐｐｍ）、カリウム＋カルニチン、抗酸化薬＋カルニチン、または補充物質なし（コントロール）を含む。各食事は、２．９％カルシウムを含有している。
【００２２】
【表１】
2 炭酸カリウム−６５％Ｋ+、Church and Dwight, Princeton, NJ 08543
3 抗酸化薬ミックス−ビタミンＥ５０％（90,700 IU/lb）；ビタミンＣ結晶（129,572 mg/lb）；リボフラビン８０（22,675 mg/lb）；炭酸カルシウム６．９％；Rice Hulls １９．５％
4 カルニチン−Ｌ−カルニチン、Lonza,Inc., Fair Lawn. NJ 07410
【００２３】
個々の産卵は、毎日記録した。検死は、全ての死亡について行った。各食事ごとに３羽の鳥のサンプルを麻酔し、Hologicエックス線 骨デンシトメーターを用いて全身をスキャンして、体の質量組成、脂肪のない肉（lean）の質量、パーセント脂肪、骨質量密度を測定した。血清電解質の測定のために、これらの鳥から静脈穿刺により血液サンプル（２．０ｍＬ）を収集した。
【００２４】
３１週齢で、残りの鳥から静脈穿刺により血液（２．０ｍＬ）を採取し、その後、ＣＯ2を用いて安楽死させ、検死を行った。心臓切片を採取し、組織病理学的検査のため、１０％緩衝化中性ホルマリンで固定した。心臓の全重量を量った後、以下のとおり解剖した。右心室壁（ＲＶ）、左心室壁（ＬＶ）、および隔壁（Ｓ）の重量を記録した。右心室壁および左心室壁の重量は、頭部全重量に対して、および体重に対して表示した。心臓指数（heart index）は、ＨＩ＝ＲＶ/ＬＶ＋Ｓで計算した。組織病理学的な心臓の病変は、１〜３のスコアを付けた。ＳＤＳの心臓の病変は、既に詳細に記載されており既知である。スコア１は、極僅かな脂肪の沈着および筋繊維（myofiber）サイズの変化を示し、スコア３は、心筋の変性、動脈硬化、および動脈炎の目立った病巣を示す。スコア２は、２つの両極端な状態の中間を示す。データは、ＳＡＳのGeneral Linear Models法（SAS Institute, 1985）を用いて分析した。変動の原因は、カリウム、抗酸化薬、カルニチン、およびカリウムとカルニチンとの相互作用であった。食事の効果があったときには、Duncan’s Multiple Range Test（SAS Institute, 1985）を用いて、平均（means）を分離した。
【００２５】
結果および議論：カルニチンの補充が、心臓特性に効果をもたらした（表２）。
【００２６】
【表２】
1 Ｋ＝基本食＋カリウム、Anti＝基本食＋抗酸化薬、Carn＝基本食＋カルニチン、ＫおよびCarn＝基本食＋カリウムとカルニチン、AntiおよびCarn＝基本食＋抗酸化薬とカルニチン、コントロール＝基本食
2 Ｋ＝カリウム補充、Carn＝カルニチン補充、Ｋ＊Carn＝カリウムとカルニチンとの相互作用、Anti＝抗酸化薬補充
3 HRTINDEX＝右心室壁/左心室壁＋隔壁；PWHLHRT＝心臓の全重量/体重；PLRVENT＝（左心室＋右心室）/体重；PLVENT＝左心室/体重；PRTVENT＝右心室/体重；PPLVENT＝左心室/心臓の全重量；PPRTVENT＝右心室/心臓の全重量；HSCORE＝何もなし〜重篤な心筋の変性までを示す１〜３までの主観的なスコア
ab 共通の上付き文字を付していない平均には差がある（Ｐ 0.05）
【００２７】
心臓指数、心臓のスコア、および（体重(ＢＷ)に対する、および心臓の重量に対する）右心室の重量は全て、カルニチンの補充により良くなった。左心室の重量は、心臓の重量に対して良くなった。この研究の結果により、食事のカルニチンは、ＳＤＳと関連した望ましくない心臓特性を軽減することが示された。このことは、ブロイラー種畜系家禽類において、産卵サイクルの初期段階（例えば、第一の産卵サイクルにおける、産卵開始の直前、および産卵の開始と産卵のピークとの間）にカルニチンを使用することを示唆している。この実験データおよび当該分野の知識により、補充の有効範囲は、５〜１０００ｐｐｍであると推定するのが適切である。
【００２８】
本発明は、ある程度詳細に説明されているが、例示の目的でここに記載した態様に限定されず、各構成要件が権利を与えられる等価物の範囲も含めて、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解される。
Claims (10)
- カルニチンを有効成分として含有する、ブロイラー種畜タイプのメンドリ（broiler breeder type hen）における突然死症候群を予防するための医薬組成物であって、１８〜３２週齢のブロイラー種畜タイプのメンドリに供給される医薬組成物。
- 前記ブロイラー種畜タイプのメンドリが、高い代謝要求性を有する、遺伝的に操作されたブロイラー種畜タイプのメンドリである請求項１に記載の医薬組成物。
- 前記カルニチンが、Ｌ−カルニチンである請求項１または２に記載の医薬組成物。
- 前記メンドリの食事において供給される請求項１〜３の何れか１項に記載の医薬組成物。
- 飼料組成物の一部として供給される請求項４に記載の医薬組成物。
- 前記カルニチンの量が、医薬組成物の５ｐｐｍ〜１０００ｐｐｍである請求項４または５に記載の医薬組成物。
- 前記カルニチンの量が、医薬組成物の１０〜４００ｐｐｍである請求項６に記載の医薬組成物。
- 前記カルニチンの量が、医薬組成物の４０ｐｐｍである請求項７に記載の医薬組成物。
- 液体形態で供給される請求項１〜３の何れか１項に記載の医薬組成物。
- 前記メンドリの水分補給において供給される請求項９に記載の医薬組成物。
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