JP4964794B2 - 光学フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルムおよびその製造方法に関する。特に、延伸時のボーイングを抑えて、軸ズレが小さな光学フィルムを提供するものである。
従来、熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、面内のレタデーション、厚み方向のレタデーションを発現させ、液晶表示素子の位相差膜として使用し、視野角拡大を図ることが実施されている。特に近年TN液晶表示のテレビ用途への展開のために、液晶表示装置に組み入れたときに高コントラストを実現できる位相差膜が必要とされている。
位相差膜として、熱可塑性樹脂フィルムを延伸したものが知られている。例えば、熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら幅方向に延伸することにより位相差膜を製造する方法が知られている。しなしながら、この方法では一般に延伸時のボーイングが大きくなってしまうため、得られる延伸フィルムの光学特性にムラが生じ、遅相軸がフィルム幅方向から大きくずれてしまう(軸ズレ)という問題があった。
この問題に対処するために、フィルム幅方向の温度分布を制御することにより、ボーイングの発生を抑え、軸ズレを小さくすることが提案されている(特許文献1参照)。具体的には、延伸時のフィルム温度を(Tg−15℃)〜(Tg+30℃)に制御しつつ、フィルム中央部の温度をフィルム端部の温度より0.5〜10℃低くすることが提案されている(Tgはフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度である)。
また、別の方法として、フィルム予熱時とフィルム延伸時の温度を制御することにより、ボーイングの発生を抑えることも提案されている(特許文献2参照)。具体的には、フィルム予熱時の温度T1(単位℃)、幅方向へのフィルム延伸の前半の温度T2(単位℃)、延伸の後半の温度T3(単位℃)を、T2−20≦T1≦T2+5とT2−20≦T3≦T2+20を満足するように制御することが提案されている。
特開2006−224618号公報 特開2005−254812号公報
特許文献1や特許文献2に記載される方法は、いずれも延伸温度や延伸前の予熱温度を制御するものであるが、このような細かな温度制御を行うためには精密な温度制御を可能にする機構が必要である。また、温度制御のためのコストもかかり、生産性も低下する。さらに、このような温度制御を行うと、光学特性の発現性を擬制にせざるを得ないことがある。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、延伸時に複雑な温度制御を行わなくても簡便にボーイングを抑えることができて、軸ズレが小さい光学フィルムの製造方法を提供することを本発明の目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明者らは、特定の表面状態を有する熱可塑性樹脂フィルムを特定の方向に延伸することにより、初期の目的を達成して本発明を完成するに至った。すなわち、課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
[1] 熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂フィルムの表面には、高さが0.01μm〜0.1μmであって同一方向に伸長する複数の筋状凸部が、互いに1.0mm〜2.5mmの間隔を隔てて存在しており、かつ、
前記筋状凸部の伸長方向に前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[2] 前記筋状凸部が前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向に伸長しており、かつ、前記熱可塑性樹脂フィルムをフィルムの幅方向に延伸することを特徴とする[1]に記載の光学フィルムの製造方法。
[3] 前記熱可塑性樹脂フィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜したフィルムであることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルムの製造方法。
[4] 前記熱可塑性樹脂フィルムが環状オレフィン系フィルムであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[5] 前記延伸時の前記熱可塑性樹脂フィルムの搬送速度が10〜30m/minであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[6] 前記延伸を行った後に、前記熱可塑性樹脂フィルムを前記延伸方向に直交する方向に収縮することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の製造方法により製造される光学フィルム。
[8] 表面に、高さが0.01μm〜0.1μmであって同一方向に伸長する複数の筋状凸部が互いに1.0mm〜2.5mmの間隔を隔てて存在していることを特徴とする光学フィルム。
[9] 前記光学フィルムのReの変動が0〜4nmであり、かつ、Rthの変動が0〜4nmであることを特徴とする[7]または[8]に記載の光学フィルム。
[10] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた偏光板。
[11] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた光学補償フィルム。
[12] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた反射防止フィルム。
[13] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた液晶表示装置。
[14] [7]〜[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの長手方向と偏光膜の長手方向を互いに平行に貼り合わせる工程を含むことを特徴とする偏光板の製造方法。
[15] 前記熱可塑性樹脂フィルムと前記偏光膜がいずれもロール状であり、各ロールから提供される前記熱可塑性樹脂フィルムと前記偏光膜を連続的に貼り合わせることを特徴とする[14]に記載の偏光板の製造方法。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、複雑な温度制御を行わなくても、延伸時のボーイングを抑えることができる。また、本発明の光学フィルムは、軸ズレが小さくて、ReとRthの変動も小さいという特徴を有する。
以下において、本発明の光学フィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
1.熱可塑性樹脂フィルムの素材
(1−1)熱可塑性樹脂
本発明で製造する熱可塑性樹脂フィルムの素材は、特に限定されないが、環状オレフィン、セルロースアシレート(例えばアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート)、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイトが挙げられる。好ましいのは環状オレフィンであり、中でも付加重合によって得られた環状オレフィンが好ましい。
本発明で熱可塑性樹脂として用いられる環状オレフィンは、ノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は、開環重合、付加重合のいずれの方法でも行える。付加重合としては、例えば特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、国際公開第2006/004376号パンフレットに記載のものが挙げられ、なかでも特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。開環重合としては、国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられ、なかでも国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のもののほうがより好ましい。
(1−2)添加剤
本発明で用いる熱可塑性樹脂には、種々の添加剤を添加することができる。例えば、可塑剤、安定剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、レタデーション調整剤を好ましく添加することができる。
可塑剤として、例えばアルキルフタルリルアルキルグリコレート類、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類、多価アルコール類を通常0〜20質量%添加することができる。
安定剤として、例えばホスファイト系安定剤(例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト)、フェノール系安定剤(たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオレート、4,4−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオレート]、エポキシ化合物、チオエーテル化合物を通常0〜3質量%添加することができる。
マット剤として、例えばシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、炭酸カルシウム、クレイ等の無機微粒子、架橋アクリル、架橋スチレン等の有機微粒子を通常0〜1000ppm添加することができる。
紫外線吸収剤として、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2,−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]を挙げることができる。
2.熱可塑性樹脂フィルムの製膜
本発明では熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は特に制限されないが、以下において説明する溶融製膜法により製造することが好ましい。
(2−1)ペレット化
前記熱可塑性樹脂、または前記熱可塑性樹脂と添加物との混合物は、溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。
ペレット化は前記熱可塑性樹脂と添加物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出ながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化してもかまわない。
押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
好ましいペレットの大きさは10mm3〜1000mm2であり、より好ましくは30mm3〜500mm3である。
(2−2)混練溶融
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
乾燥したペレットは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給され混練、溶融される。シリンダー内は供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は190〜300℃が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
(2−3)濾過
樹脂中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
(2−4)ギアポンプ
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
(2−5)ダイ
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
(2−6)キャスト
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂(メルト)を好ましくはキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。
この時、ダイとキャスティングドラムの間を遮蔽し風の影響を抑制することが好ましい。
メルトがキャスティングドラムに接触する際、タッチロール法を用いてキャスティングドラムとメルトとの密着を上げることが特に好ましい。密着を上げる方法として、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法をタッチロール法と組み合わせて用いてもよい。このような密着向上法はメルトの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
タッチロール法とは、キャストドラム上にタッチロールを置いてフィルム表面を整形するものである。この時、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。これによりフィルムに過剰な面圧をかけることなく、フィルムの表面凹凸を好ましい範囲内に制御することができる。このためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚は、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、例えば外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。タッチロールによる押付けが弱ければRthをより低減することができるが、小さすぎると表面粗さを好ましい範囲内に抑えにくくなる傾向がある。一方大きすぎると表面粗さは小さくなるがRthが増加し易くなる傾向がある。タッチロールの面圧は、0.1MPa〜5MPaが好ましく、より好ましく0.2MPa〜3MPa、さらに好ましくは0.3MPa〜2MPaである。ここでいう面圧とはタッチロールを押し付けている力を熱可塑性樹脂フィルムとタッチロールの接触面積で割った値である。
タッチロールの温度は好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。このように内部に温調機構を有するタッチロールを用いることがより好ましい。
タッチロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面にメッキを行うことも好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールはゴム表面の凹凸が大きいため、表面凹凸を特定の範囲内に制御した熱可塑性樹脂フィルムを製膜したいときは使用を避けることが好ましい。
タッチロール、キャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが通常100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
タッチロールは、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
キャスティングドラム(ロール)は複数本用いて徐冷することがより好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は100mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
この後、キャスティングドラムからフィルムを剥ぎ取り、ニップロールを経た後、巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は0.7m〜3mが好ましく、1m〜2mがさらに好ましい。製膜後(未延伸)の厚みは30μm〜300μmが好ましく、より好ましくは40μm〜250μm、さらに好ましくは60μm〜200μmである。
(2−7)トリミング、厚みだし加工、巻取り
このようにして延製膜した後、両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に片面或いは両面にラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
3.延伸
(3−1)予備加熱
溶融製膜した熱可塑性樹脂フィルムは一方向に延伸するが、それに先だって予備加熱することができる。予備加熱を行うことによって、延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきをさらに小さくすることができる。予備加熱は、予備加熱に続けて行う延伸に用いるテンターのクリップにあらかじめフィルムを把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予備加熱の温度は、好ましくは延伸温度±50℃、より好ましくは延伸温度±35℃、さらに好ましくは延伸温度±20℃とする。後で行う熱処理後のボーイングが進行方向に凸の場合は延伸温度より下げるのが好ましく、進行方向に凹の場合は延伸温度より高くするのが好ましい。好ましい予備加熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予備加熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
このようにして得られた熱可塑性樹脂フィルムの表面には、高さが0.01μm〜0.1μmであって同一方向に伸長する複数の筋状凸部が、互いに1.0mm〜2.5mmの間隔を隔てて存在する。熱可塑性樹脂フィルムの表面に存在する筋状凸部は、直線またはほぼ直線であり、フィルム端部からもう一方の端部まで連続していることが好ましいが、連続していなくてもよい。また、ここでいう筋状凸部の間隔とは、隣り合う筋状凸部の頂部間の距離をいう。筋状凸部の高さは、好ましくは0.03μm〜0.1μmであり、より好ましくは0.03μm〜0.07μmである。また、筋状凸部の間隔は、好ましくは1.2mm〜2.3mmであり、より好ましくは1.5mm〜2.0mmである。筋状凸部の高さが0.1μmを超えてしまうとフィルムの概観不良が視認されるという問題が生じやすくなり、逆に筋状凸部の高さが0.01μm未満であるとフィルムの平滑性が高くなりすぎボーイングの改良効果が望めなくなる。また、筋状凸部の間隔が2.5mmより大きくなると、その間での応力のかかり方に指向性がなくなるため、ボーイングの改良効果が小さくなる傾向があり、逆に筋状凸部の間隔が1.0mm未満である各筋状凸部間で、光が干渉し、外観不良が起こりやすくなるという問題が生じる。筋状凸部の高さと間隔は、例えばタッチロール製膜における、ロール圧、ロール速度、ロール温度、さらにロール硬度を制御したり、タッチロールで挟む直前の樹脂温度を制御したりすることにより調整することができる。
(3−2)延伸
本発明の製造方法では、製膜した熱可塑性樹脂フィルムを筋状凸部の伸長方向に延伸する。筋状凸部が熱可塑性樹脂フィルムの幅方向に伸長している場合は、フィルムの幅方向に延伸する。ここでは幅方向に延伸する場合を例にとって以下の説明を行う。幅方向に延伸することにより、最終的に得られる光学フィルムのRe、Rthの幅方向、長手方向の変動(ばらつき)、配向角の長手方向あるいは幅方向からのずれを小さくすることができる。なお、本明細書において、幅方向は長手方向に直交する方向である。
延伸前のフィルム中の揮発成分(溶剤や水分など)は、樹脂に対して0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましく0.3質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。揮発成分が多量に存在すると乾燥に伴う収縮応力が働き、ボーイングが大きくなってしまうことがある。
幅方向の延伸はテンターを用い実施できる。即ち、フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、幅方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、(Tg−10℃)〜(Tg+60℃)が好ましく、(Tg−5℃)〜(Tg+45℃)がより好ましく、Tg〜(Tg+30℃)がさらに好ましい。延伸時のフィルム搬送速度は10〜30m/minが好ましく、15〜30m/minがより好ましく、20〜30m/minがさらに好ましい。好ましい延伸倍率は10%〜250%、より好ましくは20%〜200%、さらに好ましくは30%〜150%である。ここでいう延伸倍率(%)とは下記式で規定されるものである。
本発明の製造方法によれば、延伸時のボーイングを抑制することができる。延伸時のボーイングは0〜10であることが好ましく、0〜8であることがより好ましく、0〜6であることがさらに好ましく、0〜3であることが特に好ましい。
4.予熱
本発明の製造方法では、幅方向に延伸したフィルムの温度をTg〜(Tg+10℃)に予熱してからフィルムの長手方向に収縮させることが好ましい。予熱温度は(Tg+3℃)〜(Tg+10℃)が好ましく、(Tg+3℃)〜(Tg+8℃)がより好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは30秒〜3分である。予熱はテンターのクリップで把持して行うのが好ましく、即ち上記の幅方向の延伸と連続して行うのが好ましい。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくなる傾向がある。
予熱を行うことによって、Re,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを一段と小さくすることができる。
5.収縮
(5−1)収縮の条件
本発明の製造方法では、予熱したフィルムを延伸方向と直交する方向に収縮させることが好ましい。例えば幅方向に延伸した場合は、長手方向に収縮させることが好ましい。長手方向の収縮処理は、フィルムの長手方向の搬送速度を上流側より下流側を低くすることで達成できる。長手方向の収縮率は0.1%〜50%が好ましく、より好ましくは1%〜40%であり、さらに好ましくは5%〜35%である。ここでいう収縮率とは下記式で規定されるものである(フィルムの長さは、長手方向の長さである)。
長手方向の収縮速度は、0.1〜1%/秒が好ましく、0.1〜0.7%/秒がより好ましく、0.1〜0.5%/秒がさらに好ましく、0.3〜0.5%/秒が特に好ましい。長手方向の収縮速度が0.1%/秒以上であれば効率よく収縮することができ、長手方向の収縮速度が1%/秒以下であれば皺やトタン状の波打ちを生じることなく収縮することができる傾向がある。
収縮処理温度は好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+50℃)、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+40℃)、さらに好ましくはTg〜(Tg+30℃)である。収縮処理時間は好ましくは1秒〜15分、より好ましくは5秒〜10分、さらに好ましくは10秒〜5分である。
フィルムは延伸により延伸方向に伸張されるが、これに伴う物質収支を合わせるために延伸方向と直交する方向の長さと厚みが減少する。この厚み減少に伴いフィルム面が圧縮され、面内に分子が配向して面配向が強くなる。この結果Rthが増加する。しかし長手方向に収縮を行うことで厚み減少を抑制でき、低いRthを実現できる。即ち長手方向に収縮することでNzファクターが1.05〜1.4のフィルムを実現できる。さらにこの長手方向の収縮により延伸後のフィルムの熱収縮を抑制する効果もあり、80℃で100時間静置した後の熱収縮量を0.5%以下、より好ましくは0.3%以下にすることができる。
(5−2)収縮方法
このような長手方向の収縮は例えば下記のような方法1〜4により達成される。方法1と方法2は組み合わせて行うこともできる。好ましいのは、下記の方法2および方法4である。
(方法1:テンター内のクリップの搬送速度を調製する方法)
横延伸はクリップでフィルム両端を拡幅することにより行われる(テンター延伸)が、延伸方向と直交する方向の収縮を促し厚み方向の収縮を促進するために、幅方向の延伸と上記予熱を行った後にテンター内のクリップの搬送速度を延伸部入口より遅くする。幅方向の延伸と長手方向の収縮を同時に行うと、面内に延伸と伸張が同時に発生し残留歪が発生し易いうえ、面内の均一性が低下し易いが、幅方向の延伸を行った後に予熱してから長手方向に収縮させればこのような問題は生じない。幅方向の延伸後に長手方向の収縮を行うには、例えば延伸と収縮で別のテンターレールを用意し、速度を独立に制御できるようにすることで達成でき、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報等に記載のようなものを使用することができる。
また、二軸延伸機を用いて行うことも可能である。具体的には、幅方向の延伸と長手方向の収縮とを任意の条件で自動的に行うことができる二軸延伸機を用いて行うことができる。例えば、特開2003−211533号公報、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2000−246795号公報、特開2004−106434号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報、特開2006−22916号公報に記載の装置を使用することができる。具体的には、市金工業社製の高機能薄膜装置(商品名FITZ)等が使用できる。この装置は、長手方向(フィルムの搬送方向)の延伸倍率と幅方向の収縮倍率を任意に設定できる。
(方法2:熱処理ゾーンの入口側より出口側の搬送速度を遅くする方法)
この方法では幅方向の延伸を行った後(すなわちテンターから出た後)、フィルムを2対以上のニップロールを設けた熱処理ゾーンに挿入し、出口側のニップロールより入口側のニップロールの搬送速度を早くすることで達成できる。この熱収縮ゾーンではフィルムの収縮は長手方向だけでなく幅方向にも発生するため、長手方向の収縮を優先して発現させるために、熱処理ゾーンの縦横比(ゾーン長を入口側フィルム幅で割った値)を0.01〜2にすることが好ましく、0.05〜1.6にすることがより好ましく、0.1〜1.3にすることがさらに好ましい。熱処理ゾーンの加熱方法は、ニップロール間に熱処理ゾーンやヒーターを設けて行ってもよく、またニップロールを加熱し熱可塑性樹脂延伸フィルムを加熱してもよい。このようにして出口側の搬送速度を下げる収縮法は、搬送張力を弱くしただけの熱処理とは効果が全く異なる。即ち搬送張力低下だけでは上記のようなネックインを促すような効果は全く発生しない。なお、この収縮処理は幅方向の延伸後にオンラインで行ってもよいし、幅方向の延伸後にフィルムを巻き取った後にオフラインで行ってもよい。好ましいのはオンライン処理である。
(方法3:テンターのチャック上で熱可塑性樹脂延伸フィルムを搬送方向に収縮させる方法)
幅方向の延伸後にチャック上で熱可塑性樹脂延伸フィルムを搬送方向にスリップさせることで長手方向に収縮させることができる。即ち、チャックに熱可塑性樹脂延伸フィルムが搬送方向に滑るような機構を設けておくことにより長手方向に収縮させることができる。このような機構は特に限定されないが、例えばチャックのクリップ部に搬送方向に滑車を設置することでも達成でき、またクリップの熱可塑性樹脂延伸フィルム把持面に滑性の素材(例えばテフロン)を貼り付けることでも達成できる。
(方法4:横延伸後のロール間低張力搬送方法)
幅方向の延伸後(すなわちテンターから出た後)、フィルムを低張力で熱処理するとフィルムは長手方向と幅方向に収縮しようとするが、この時フィルムをロール間に搬送させることで、ロールとフィルムの摩擦力により幅方向の収縮を抑制して長手方向の収縮を優先して発現させることができる。
フィルムの横収縮を抑制するために必要な摩擦力を得るために、フィルムがロール上をラップしている長さ(W)と、ロール間でフィルムがロールと接触していない長さ(G)の比(W/G)は0.01〜3が好ましく、より好ましくは0.03〜1、さらに好ましくは0.05〜0.5である。この範囲を超えるとロール間が長くなり摩擦力が低下し幅方向に収縮が発生してReが低下、Rth/Reが上昇し易いうえ、縦皺が発現し易くなってしまう傾向がある。一方、W/Gがこの範囲未満では延伸で発生した残留歪が解消せず熱寸法変化が増大し易くなってしまう傾向がある。
ロールの数は2本〜100本が好ましく、より好ましくは3本〜50本、さらに好ましくは4本〜20本である。好ましいロールの直径は5cm〜100cmであり、より好ましくは10cm〜80cm、さらに好ましくは15cm〜60cmである。
さらにロールと熱可塑性樹脂延伸フィルムの間の摩擦力を充分に得るために熱可塑性樹脂延伸フィルムの静摩擦係数は2.0以上であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.0〜2.5であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂延伸フィルムの動摩擦係数は3.5以上であることが好ましく、3.5〜5.0であることがより好ましく、3.5〜4.8であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂延伸フィルムの表面粗さ(Ra)は0.005μm〜0.04μmが好ましく、より好ましくは0.007μm〜0.035μm、さらに好ましくは0.009μm〜0.030μmである。このような表面を持つフィルムはタッチロール製膜法により達成できる。これはキャストした直後のフィルムを両面から表面の平滑なロールで挟み込むことで、これを用いない場合に比べ高い平滑性を達成でき上述の表面粗さを実現できる。
6.光学フィルムの物性
本発明の製造方法により製造される熱可塑性樹脂延伸フィルムは、光学的に好ましい物性を備えているため光学フィルムとして有用である。
(6−1)レタデーション
本発明の光学フィルムは、ReとRthが下式(R−1)および(R−2)を満足することが好ましい。
式(R−1): 0nm≦Re≦300nm
式(R−2): 10nm≦Rth≦300nm
本発明の光学フィルムは、ReとRthが下式(R−3)および(R−4)を満足することが好ましい。
式(R−3):20nm≦Re≦200nm
式(R−4):20nm≦Rth≦200nm
本発明の光学フィルムのRe,Rthの変動は0nm以上5nm未満が好ましく、より好ましく0〜4nm、さらに好ましくは0〜3nm%、さらにより好ましくは0〜2nm、特に好ましくは0〜1nmである。
80℃で200時間経時前後のRe,Rthの変化率は0%〜8%が好ましく、より好ましくは0%〜6%、さらに好ましくは0%〜4%である。
本発明の光学フィルムのNzファクターは、1.05〜1.4であることが好ましく、例えば1.0超〜1.4としたり、1.2超〜1.4としたり、1.25〜1.4としたりすることができる。Nzファクターの調整は、例えば長手方向の収縮条件を制御することにより行うことができる。具体的には、長手方向の収縮率を小さくすればNzファクターを比較的大きくすることができる。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおけるフィルム面内のレタデーションおよび厚さ方向のレタデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。また測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルまたはプログラム等で交換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の式(A)および式(B)よりRthを算出することもできる。
[上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値を表す。式(A)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。]
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzより(nx−nz)/(nx−ny)を計算することによりさらにNzファクターが得られる。
(6−2)遅相軸
本発明の光学フィルムは、遅相軸が延伸方向(すなわち筋状凸部の方向)を向いている。筋状凸部がフィルムの幅方向に存在しており、フィルムを幅方向に延伸した場合は、遅相軸はフィルムの幅方向に向いている。遅相軸の軸ズレは±3°未満であることが好ましく、±2°以内であることがより好ましく、±1°以内であることがさらに好ましい。
本発明によれば、遅相軸が幅方向を向いている光学フィルムを容易に製造することができる。遅相軸が幅方向を向いている光学フィルムは、偏光膜や偏光板との貼り合わせの際にこれらとロールツーロール(roll to roll)で貼り合わせることができるため、工業生産上のメリットが大きい。
(6−3)筋状凸部
光学フィルムの表面には、高さが0.01μm〜0.1μmであって同一方向に伸長する複数の筋状凸部が、互いに1.0mm〜2.5mmの間隔を隔てて存在する。光学フィルムの表面に存在する筋状凸部は、直線またはほぼ直線であり、フィルム端部からもう一方の端部まで連続していることが好ましいが、連続していなくてもよい。また、ここでいう筋状凸部の間隔とは、隣り合う筋状凸部の頂部間の距離をいう。筋状凸部の高さは、好ましくは0.03μm〜0.1μmであり、より好ましくは0.03μm〜0.07μmである。また、筋状凸部の間隔は、好ましくは1.2mm〜2.3mmであり、より好ましくは1.5mm〜2.0mmである。
(6−4)寸法変化率
本発明の光学フィルムの80℃で200時間経時前後の長手方向および幅方向の寸法変化はいずれも0%〜±0.5%が好ましく、より好ましくは0%〜±0.3%、さらに好ましくは0%〜±0.1%である。
(6−5)厚み
本発明の光学フィルムの厚みは15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜120μm、さらに好ましくは25μm〜80μmである。厚みむらは長手方向、幅方向のいずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
(6−6)摩擦係数
本発明の光学フィルムの摩擦係数は、静摩擦係数が2.0以上であることが好ましく、動摩擦係数が3.5以上であることが好ましい。静摩擦係数と動摩擦係数の好ましい範囲は、上記(5−2)の収縮方法において記載した好ましい範囲と同じである。
7.フィルムの加工
このようにして得た本発明の光学フィルムは、単独で使用してもよく、機能層と組み合わせて使用してもよい。本発明の光学フィルムには、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学異方性層(光学補償層)の付与、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
以下において、本発明の光学フィルムの代表的な加工工程について説明する。
(7−1)表面処理と下塗り層の形成
本発明の光学フィルムには、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を行うことができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
これらの中でも好ましいのがグロー放電処理、コロナ処理、火炎処理であり、さらに好ましのがコロナ処理である。
本発明の光学フィルムには、機能層との接着のために下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
(7−2)光学異方性層の形成(光学補償フィルムの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶性化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、IDW'00、FMC7−2のP411〜414等に記載されている。
光学異方性層は、支持体上に直接液晶性化合物から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性化合物から形成する。配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。すなわち、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(5)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(5)
D(−LQ)r
(一般式(5)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、rは4〜12の整数である。)
円盤状コアDの例を以下に示す。以下の各例において、LQまたはQLは、二価の連結基Lと重合性基Qとの組み合わせを意味する。
一般式(5)において、二価の連結基Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基Lは、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基Lは、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基Lの例を以下に示す。左側が円盤状コアDに結合し、右側が重合性基Qに結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例えばアルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−、
L2:−AL−CO−O−AL−O−、
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−、
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−、
L5:−CO−AR−O−AL−、
L6:−CO−AR−O−AL−O−、
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L8:−CO−NH−AL−、
L9:−NH−AL−O−、
L10:−NH−AL−O−CO−、
L11:−O−AL−、
L12:−O−AL−O−、
L13:−O−AL−O−CO−、
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−、
L15:−O−AL−S−AL−、
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−、
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、
L21:−S−AL−、
L22:−S−AL−O−、
L23:−S−AL−O−CO−、
L24:−S−AL−S−AL−、
L25:−S−AR−AL−。
一般式(5)の重合性基Qは、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基Qの具体例を以下に示す。
重合性基Qは、不飽和重合性基(Q1、Q2、Q3、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)またはエポキシ基(Q6、Q18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)であることが最も好ましい。具体的なrの値は、円盤状コアDの種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明支持体に垂直な)方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
前記光学異方性層は、ディスコティック液晶性化合物とともにポリマーを含有していてもよい。該ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書参照)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書参照)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書参照)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書参照)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書参照)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書参照)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書参照)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
前記光学異方性層は、前記液晶性化合物の少なくとも一種と、所望により重合性開始剤、フッ素系ポリマー等の添加剤を含有する塗布液を調製し、該塗布液を配向膜表面に塗布・乾燥することで形成することができる。
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学補償フィルムを作製する場合には、前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることがさらに好ましい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
(7−3)偏光板の作製
(偏光膜)
偏光板に使用する偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、またはバインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
汎用の偏光膜は、例えば、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製することができる。
汎用の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。一方、厚みの上限については、特に限定はしないが、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在、汎用の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置では、観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例えばポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネイトおよびそれらのコポリマー(例えばアクリル酸/メタクリル酸重合体、スチレン/マレインイミド重合体、スチレン/ビニルトルエン重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル重合体、エチレン/酢酸ビニル重合体)が含まれる。水溶性ポリマー(例えばポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、−COONa、−Si(OH)3、N(CH33・Cl、C919COO−、−SO3Na、−C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、−COONa、−SH、−SC1225を導入することができる。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ケン化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコールおよびアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー層中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
架橋剤については、米国再発行特許23297号公報に記載がある。また、ホウ素化合物(例えばホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えばスルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。二色性色素は、遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩として用いられる。2種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜または偏光板が、単板透過率および偏光率とも優れており好ましい。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にある(偏光板の単板透過率の最大値は50%である)ことが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を、接着剤を介して配置することも可能である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。その中でもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
(偏光板の製造)
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10〜80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、液晶表示装置を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45度である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置において必ずしも45度でない装置が開発されており、延伸方向は液晶表示装置の設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。なお。ここでいう延伸率とは、延伸前にフィルムに標点を付けておき、その延伸前の長さ(L)と延伸後の長さ(L‘)の比(L’/L)で表される。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80度斜め延伸されたバインダーフイルムが製造される。
ラビング法では、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90度が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360度以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60度の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50度が好ましく、45度が特に好ましい。
(7−4)液晶表示装置への利用
本発明の光学補償フィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。以下、各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)のディスコティック液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)のディスコティック液晶性化合物で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向のディスコティック液晶性化合物で補償することもできる。
ホメオトロピック配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95度の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5度未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15度以上であることが好ましく、15度〜85度であることがさらに好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック液晶性化合物とホモジニアス配向した棒状液晶性化合物の混合体からなる光学異方性層は、Rthレタデーション値が40nm〜200nmであり、Reレタデーション値が0〜70nmであることが好ましい。
ホメオトロピック配向(水平配向)しているディスコティック液晶性化合物層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性化合物層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向しているディスコティック液晶性化合物層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性化合物を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号明細書、同5410422号公報に開示されている。棒状液晶性化合物が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性化合物が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
黒表示にTNモードと液晶の配向は同じ状態であるため、好ましい態様もTNモード対応を同じである。ただし、TNモードに比べ、OCBモードの方がセル中央部で液晶性化合物が立ち上がった範囲が大きいために、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層について、若干のレタデーション値の調整が必要である。具体的には、(透明)支持体上のディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレタデーション値が150nm〜500nmであり、Reレタデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性化合物が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報参照)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の黒表示において、液晶セル中の棒状液晶性化合物は、そのほとんどが、立ち上がった状態であるため、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層で液晶性化合物を補償し、別に、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向し、棒状液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の透過軸方向との角度が5度未満である光学異方性層で偏光板の視角依存性を補償することが好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレタデーション値が150nm〜500nmであり、Reレタデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
(7−5)反射防止層の付与(反射防止フィルムの作製)
本発明の光学フィルムの上に反射防止層を付与してもよい。反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けてなる。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層からなる反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の光学フィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(塗布型反射防止フィルムの層構成)
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなる反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(例えば特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例えば特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えばサイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(前方散乱層)
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(その他の層)
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(塗布方法)
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(アンチグレア機能)
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
8.測定法
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(8−1)筋状凸部の高さと間隔
フィルム表面に観察される筋状凸部の高さと間隔を、FUJINON社製のレーザー干渉膜厚計F601により測定した。
(8−2)ボーイング
図1に示すように、テンター2のチャック3にフィルム1を保持してフィルムの搬送方向Aとは直交する方向にフィルムを延伸する際に、延伸前のフィルム表面にフィルム幅方向に伸長する線4を記入しておき、幅方向への延伸が完了した時点における線5のたわみ量bを延伸完了時のフィルム幅wで除することにより下記式によりボーイングを算出した。
(8−3)Rth、Re
フィルムの両端5cmずつをスリットした後、全幅に亘り等間隔で20点サンプリング(3cm×3cmの正方形)した。この時正方形の各辺を長手方向(製膜方向)と幅方向に平行に切り出した。
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%に5時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測器(株)製)を用いて、相対湿度25℃・60%において、上述のようにサンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±50°まで10°ずつ傾斜させて方向から波長550nmにおけるレタデーション値を測定した。また、垂直(法線)方向から面内のレタデーション(Re)、垂直方向、±10〜40°方向の測定値から厚み方向のレタデーション(Rth)を算出した。20点の測定値の平均値を、フィルムのRe、Rthとした。
(8−4)Re変動、Rth変動
(8−3)で測定した幅方向20点のRe,Rthの最大値と最小値の差を、それぞれRe変動、Rth変動とした。
(8−5)軸ズレ
特開2007−108529号公報の実施例1と同じ方法によりフィルムの配向角を測定し、遅相軸とフィルムの幅方向とのなす角を軸ズレとした。
(8−6)熱寸法変化、熱寸法変化むら
フィルムの全幅を5等分した各点で以下のサンプリングを行った(MD:長手方向、TD:幅方向)。
MDサンプル:MD15cm×TD5cm
TDサンプル:TD15cm×MD5cm
各サンプルを25℃・相対湿度60%で3時間以上調湿し、この環境中で10cm基長のピンゲージを用い測長し、これをL1とした。次に、各サンプルを80℃・相対湿度10%で200時間放置後、25℃・相対湿度60%で3時間以上調湿し、この環境中で10cm基長のピンゲージを用い測長し、これをL2とした。下記式からMD,TDの各点(10点)の熱寸法変化を測定し、この平均値を熱寸法変化とした。
熱寸法変化(%)=100×|L2−L1|/L1
上記10点中の熱寸法変化(絶対値)の最大値と最小値の差を、10点の熱寸法変化の平均値で割り百分率で示したものを熱寸法変化むらした。
(8−7)表面粗さ
コンパクトレーザー干渉計(富士写真光機(株)製 F601)を用いてフィルムの表面粗さ(Ra)を測定した。
(8−8)ガラス転移温度(Tg)
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンにフィルムを20mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から120℃まで昇温し、15分間保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温し、ベースラインが低温側から偏奇し始める温度を熱処理前のポリマーフィルムのTgとした。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
1.未延伸フィルムの調製
下記樹脂A〜Cのうち表1に記載される樹脂を選択して、以下に記載される方法により溶融製膜を実施した。
樹脂A:ポリプラスチックス(株)製TOPAS6013(Tg=136℃)
樹脂B:三井化学(株)製APEL6015T(Tg=145℃)
樹脂C:国際公開第98/14499号パンフレットの実施例1の化合物(Tg=136℃)
樹脂を110℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.1%以下とした後、1軸混練押出し機を用い260℃で溶融しギアポンプから送り出した。その後、濾過精度5μmのリーフディスクフィルターにて濾過し、スタティックミキサーを経由してスリット間隔0.8mm、260℃のハンガーコートダイから、Tg−5℃、Tg−10℃、Tg−15℃に設定した3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側のキャストロールに表1に記載の面圧でタッチロールを接触させ、厚み100μmの未延伸フィルムを製膜した。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した(但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)。なお、表1において面圧が0と表示されているものは、タッチロールを用いずに製膜したことを意味する。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各フィルムを、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。得られた各未延伸フィルム表面に観察される筋状凸部の高さと間隔を測定した。なお、筋状凸部の高さと間隔は、タッチロールの面圧及びロールの回転速度を調整することによりコントロールした。図2に、筋状凸部を有するフィルムと筋状凸部を有しないフィルムの表面拡大写真を示す(MDは長手方向を示す)。
2.幅方向への延伸
各未延伸フィルムを、テンターを用いてTg+5℃で幅方向に表1に記載の倍率で延伸した。このとき、テンターの隣り合うチャック間の距離(長手方向の距離)を1cmとした。また、フィルムの搬送速度は20m/分とした。また、幅方向への延伸によるボーイングを測定して表1に記載した。
このようにして得られた各熱可塑性樹脂延伸フィルムのRe、Rth、Re変動、Rth変動、軸ズレを上記の方法で測定し、結果を表1に記載した(幅方向20点の平均値)。
表1から明らかなように、実施例1〜7の延伸フィルムはRe変動とRth変動がいずれも小さかった。また、軸ズレとボーイングも小さかった。これに対して、比較例1〜3の延伸フィルムはこれらがいずれも大きかった。
得られた各熱可塑性樹脂延伸フィルムの80℃で200時間経時前後の長手方向および幅方向の寸法変化はいずれも0%〜±0.1%であった。また、得られた各熱可塑性樹脂延伸フィルムの厚みは40〜100μmであり、厚みむらは長手方向、幅方向のいずれも0%〜1%であった。
3.表面処理
上記2で得られた熱可塑性樹脂延伸フィルムの表面に対して、下記条件でコロナ放電処理を行った。
電極:VETAPONE社製 Coron−Plus
ジェネレーター:CP1C
出力:900W
フィルム搬送速度:6m/分
4.光学異方性層用の配向膜の作製
(1)配向膜の形成
表面処理後の熱可塑性樹脂延伸フィルム上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥して配向膜を形成した。
(配向膜塗布液組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
(2)光学異方性層の作製
配向膜上に、下記の光学異方性層塗布液を、#3.2のワイヤーバーを1171回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、30m/分で搬送されている上記ロールフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。光学異方性層の厚みは1.3μmであった。また、得られた光学補償シートの弾性率を測定したところ2.4MPaであった。
(光学異方性層塗布液の組成)
下記の組成物を、97質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
下記のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.34質量部
セルロースアセテートブチレート
(CAB531−1、イーストマンケミカル社製) 0.11質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.56質量部
下記フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.06質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
偏光板をクロスニコル配置とし、得られた光学補償シートのムラを観察したところ、正面、および法線から60度まで傾けた方向から見ても、ムラは検出されなかった。
(3)偏光膜と鹸化フィルムの作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した。その後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
これとは別に、セルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)製フジタックTF80UL)を、濃度が1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度が0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させて鹸化を完了した。
(4)偏光板の作製
(2)で得られた光学補償シートを、(3)で作製した鹸化処理を行った市販のセルロースアシレートフィルムと組合せて、(3)で作製した偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せることにより、偏光板を得た。
(2)で得られた光学補償シートは、遅相軸がフィルムの幅方向であるため、ロール形態で作製されている偏光膜および偏光膜両側の保護膜をロールツーロール(roll to roll)で貼り合わせることができた。
5.TN液晶パネルでの評価
TN型液晶パネルを使用した液晶表示装置(MDT−191S、三菱電(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上で作製した偏光板を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側およびバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。このようにして作成したTN液晶パネルを80℃・相対湿度10%の環境下で200時間静置した。その後、25℃・相対湿度60%の環境下に8時間調温調湿後、液晶表示装置のコントラスト、コントラストむら、光もれを評価したところ、実施例1〜7の熱可塑性樹脂延伸フィルムを用いた液晶表示装置はいずれも良好な結果を示した。
6.低反射フィルムの作製
実施例1〜7の熱可塑性樹脂延伸フィルムを用いて、発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
7.液晶表示素子の作製
上で作製した偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いた。実施例1〜7の熱可塑性樹脂延伸フィルムを用いたものは、液晶表示装置としていずれも良好に機能した。
特開2007−108529号公報や特開2006−133720号公報に記載されているような従来法で製造したフィルムは、装置の特性上、延伸したフィルムの端部でレタデーションムラや軸ズレが起こりやすいため、生産効率が悪かったり、画面サイズが大きな液晶表示装置に適用しにくかったりするという問題があった。これに対して、本発明の方法で製造したフィルムは、これらの問題がなく、延伸後のフィルムの得率を上げることができた。
また、上で作製した低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行った。実施例1〜7の熱可塑性樹脂延伸フィルムを用いたものは、液晶表示装置としていずれも良好に機能した。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、複雑な温度制御を行わなくても、安価で簡便に延伸時のボーイングを抑えることができる。また、本発明の光学フィルムは、軸ズレが小さくて、ReとRthの変動も小さいという特徴を有する。特に本発明によれば、遅相軸が幅方向を向いていて軸ズレが小さな光学フィルムを提供できるため、偏光膜などとロールツーロール(roll to roll)で貼り合わせることができる。このため、本発明は工業的な生産効率を高めることができ、産業上の利用可能性が高い。
ボーイングの測定方法を示す概略図である。 筋状凸部を有するフィルム(a)と筋状凸部を有しないフィルム(b)の表面拡大写真である。 実施例における長手方向のフィルム収縮機構を示す概略図である。
符号の説明
1 フィルム
2 テンター
3 チャック
4 延伸前のフィルム表面の線
5 延伸後のフィルム表面の線
A フィルムの搬送方向

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する工程を含む光学フィルムの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの表面には、高さが0.01μm〜0.1μmであって同一方向に伸長する複数の筋状凸部が、互いに1.0mm〜2.5mmの間隔を隔てて存在しており、
    前記製造方法は、前記筋状凸部の伸長方向に前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸する工程を含み、かつ、
    前記熱可塑性樹脂フィルムが環状オレフィン系フィルムであることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂フィルムが、260℃以上で熱可塑性樹脂を溶融する工程を経て製造されたフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記筋状凸部が前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向に伸長しており、かつ、前記熱可塑性樹脂フィルムをフィルムの幅方向に延伸することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記製造方法において行う延伸が、フィルムの幅方向の延伸のみであることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂フィルムが、タッチロールを用いて溶融製膜したフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記延伸時の前記熱可塑性樹脂フィルムの搬送速度が10〜30m/minであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記延伸を行った後に、前記熱可塑性樹脂フィルムを前記延伸方向に直交する方向に収縮することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により製造される光学フィルム。
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