JP4954523B2 - 高濃度のs−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法 - Google Patents

高濃度のs−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法 Download PDF

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本発明はユリ科植物の食用部由来のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を高濃度に含有する抽出物の製造方法に関する。
摺りおろしたニンニクを簡便に使用できる物として、チューブや瓶、プラスチック容器など様々な形態で市販されているが、ニンニクは摺り下ろした瞬間に酵素反応により香気が発生するが、時間が経つとともに新鮮な香気は劣化してしまうという欠点がある。
ユリ科植物の食用部にはアリイン、イソアリインに代表されるS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類が含まれており、これらはアリイナーゼなどの分解酵素により、アリシンなどを経由し、各種のスルフィド類やジチイン類などの揮発性含硫化合物に分解されることが知られている。これの揮発性含硫化合物はニンニクに代表されるユリ科植物の特徴的香気成分として知られている。しかしながら、これらの揮発性含硫化合物は分解しやすいため、ニンニク香気強化の目的でこれらの揮発性含硫化合物を香料として添加した場合でも、経時変化により香気が劣化するという欠点は解消することができない。
S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類はこれらの香気の植物体中でのプレカーサーであるが、食品などに揮発性含硫化合物のプレカーサーとして添加すると徐々に分解して香気が生成し、香気が長期間持続する効果が得られるため大変有用な物質である。また、近年の天然指向より、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を香気プレカーサーとして食品に使用する場合、天然からの抽出物であることが好ましい。
ニンニクからアリインを抽出する技術としては、ニンニクを熱水中で酵素失活させた後破砕して水を加えた抽出液を逆相系カラムを用いた液体クロマトグラフィーにより精製する方法(特許文献1)、ニンニクを急速加熱し、水を加え粗砕し、分離して得られた液にビタミンB1、糠または酵母を添加して、セルラーゼ処理することによる無臭ニンニク液の製法(特許文献2)が知られている。
特開平6−220008 特公平3−78983
しかしながら特許文献1の精製方法により得られるアリインの量は少量であり、工業的な生産に向いているとは言えない。また特許文献2の方法で得られる無臭ニンニク液はアリインを満足できる濃度で含有していない。従って本発明の目的は、天然物由来で高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法を提供することである。
本発明者は、天然物由来で高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法について鋭意研究を行った。その結果、ユリ科植物の食用部に酵素としてマンナナーゼ、セルラーゼおよびペクチナーゼの3種類全てを併用して処理することで粉砕工程を行うことなくきわめて容易かつ効率的な液状化が可能であり、このものは固液分離、濾過、カラム通液などの工業的操作が容易であることを見出した。さらに得られた抽出液を、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、その後アルカリ溶液にて脱着することで、天然物由来でかつ高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ユリ科植物の食用部をマンナナーゼ、セルラーゼおよびペクチナーゼの3種類全てを含む酵素で処理した後、イオン交換樹脂処理することを特徴とする高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法を提供するものである
発明はまた、イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である前記の高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類が抽出物の乾燥物当たり10重量%以上含まれている前記の高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法を提供するものである
本発明により高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の容易且つ簡便な工業的製造方法を提供することができる。得られた抽出物はそのまま、あるいは粉末化、硬化油脂被覆粉末などの形態とし、その形態で必要に応じて酵素と反応させ、香気を発生させることができるため、ユリ科植物の香気プレカーサーとして使用できる。また、このプレカーサーを添加した場合、香気の持続性が大きく改善されるという効果が得られる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において使用することのできるユリ科の植物としてはニンニク、タマネギ、ワケギ、ニラ、ギョウジャニンニク、ナガネギ、ラッキョウ、及びリークを挙げることができるが、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有している植物であれば、これらに限定されるものではない。また好ましい植物としてはニンニク、タマネギ、ナガネギ、ニラを、特に好ましい植物としてはニンニクを例示することができる。本発明ではこれらの可食部を原料として使用する。
まず、原料は水洗して汚れや雑菌を取り除き、そのまま、あるいは剥皮し、必要に応じて適当な大きさに裁断した後、急速加熱を行う。この工程により植物細胞内に含まれるアリイナーゼなどの分解酵素を失活させ、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類が分解することを防ぐことができる。急速加熱の方法はアリイナーゼなどの分解酵素が失活される方法であれば特に制限はないが、蒸煮処理、熱湯処理、マイクロ波処理などを例示することができる。
引き続き酵素処理により、植物組織の分解を行い、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類の抽出と抽出系全体の粘性および分離特性を改善する。本発明ではこの酵素処理においてマンナナーゼ、セルラーゼおよびペクチナーゼの3種全てを使用することが重要である。酵素処理においてマンナナーゼ、セルラーゼまたはペクチナーゼから選ばれる1種または2種を使用した場合でも、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類の抽出と抽出系全体の粘性および分離特性をある程度改善することは可能である。しかしながら、今回発明者などはこれら3種全てを併用することで、1種または2種の酵素を使用した場合に比べ組織分解が格段に進み、その後の分離、濾過、カラム通液が工業的規模でも可能となることを見出した。特にカラム通液においては3種全てを使用した場合、1種または2種を使用した場合に比べ、抽出液の粘度が格段に下がるため、製造上きわめて有利となることを見出した。
マンナナーゼはマンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ガラクトグルコマンナンなどの構成成分中にマンノースを含む多糖類を加水分解する酵素で、β−マンナナーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼなどが知られている。マンナナーゼは糸状菌などの培養によって採取される培養物、培養液、該培養物を適量の水や緩衝液で抽出した抽出液、該培養液から菌を濾別した培養液、或いはこれらの液を濃縮した液に含まれるものを用いることができる。また、植物に由来するもや、各種のものが利用可能である。市販のマンナナーゼ製剤としては、スミチームACH−L(新日本化学工業社製)、セルロシンGM5(エイチビィアイ社製)、ビガラーゼM(洛東化成工業社製)などを例示することができる。かかるマンナナーゼの使用量は、酵素の力価によっても異なるが、通常、原料としたユリ科植物の重量を基準として約10〜約10,000U/gの範囲内とすることができる。
ペクチナーゼはポリガラクツロナーゼ、ペクチックエンザイム、ポリメチルガラクツロナーゼ、ペクチンデポリメラーゼとも呼ばれ、ペクリニン酸、ペクチン、ペクチン酸などのα(1−4)結合を加水分解する酵素である。また、ガラクツロン酸のカルボキシル基のメチルエステルを加水分解するペクチンメチルエステラーゼを含める場合も多い。ペクチナーゼは、細菌、カビ、酵母、高等植物、カタツムリなどに含まれていることが知られており、本発明ではこれらをはじめとする生物から取得したペクチナーゼを広く使用することができる。また、市販のペクチナーゼ製剤を使用してもよい。市販のペクチナーゼ製剤としては、例えば、スクラーゼ(三共社製)、ペクチネックスウルトラSP−L(ノボザイムズA/S社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ウルトラザイム(ノボザイムズA/S社製)、ペクチナーゼG、ニューラーゼF(以上天野エンザイム社製)などを例示することができる。かかるペクチナーゼの使用量は、酵素の力価によっても異なるが、通常、原料としたユリ科植物の重量を基準として約30〜約3,000U/gの範囲内とすることができる。
セルラーゼはセルロースを加水分解する活性を有する酵素である。セルロースはD−グルコースがβ−1,4結合で分枝無くつながった多糖類の一種でグルコースの数はおよそ5,000個程度と言われている。植物の細胞壁の主要な構成成分で、親水性は強いが水に不溶である。セルラーゼとしては、セルロースを分解する活性を有するものであれば特に制限はなく任意のものを使用することができ、市販品のセルラーゼ製剤としては例えば、セルラーゼT「アマノ」、セルラーゼA「アマノ」(以上天野エンザイム社製)、ドリセラーゼKSM、マルチフェクトA40、セルラーゼGC220(以上ジェネンコア協和社製)、セルラーゼGODO−TCL、セルラーゼGODO TCD−H、ベッセレックス、セルラーゼGODO−ACD(以上合同酒精社製)、Cellulase(東洋紡績社製)、セルライザー、セルラーゼXL−522(以上ナガセケムテックス社製)、セルソフト、デニマックス(以上ノボザイムズ社製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2(以上エイチビィアイ社製)、セルラーゼ“オノズカ”3S、セルラーゼY−NC(以上ヤクルト薬品工業社製)、スミチームAC、スミチームC(以上新日本化学工業社製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット(洛東化成工業社製)などが挙げられる。かかるセルラーゼの使用量は、酵素の力価によっても異なるが、通常、原料としたユリ科植物の重量を基準として約1〜約1,000U/gの範囲内とすることができる。
酵素による処理は、それ自体既知の方法、例えば特許庁公報周知・慣用技術集(香料)第II部 食品香料(2000.1.14発行)微生物・酵素フレーバー(P46〜P57)などの刊行物に記載の方法に準じて行うことができる。
一実施態様を例示すれば次の通りである。前記の急速加熱した原料1重量部をホールの状態あるいは荒く粉砕した後、水を添加あるいは水無添加で、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間殺菌した後冷却し、上記の3種類の酵素を添加して、攪拌あるいは静置し20〜70℃にて0.5〜24時間反応を行う。例えば原料がニンニクの場合、粉砕を行わなくとも酵素反応は進行するが、酵素反応をある程度速く進めるためには荒く粉砕した方が有利である。しかしながら、あまり細かく粉砕してしまうとその後の分離、濾過の工程に時間を要する。酵素反応時に添加する水の量は酵素を反応系全体に行き渡らすことができる最低量で充分であり、原料の粉砕を行った場合には原料の種類によっては使用しなくても反応は可能であるが、原料に対し0〜2倍程度を例示することができる。
酵素処理後、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間加熱することにより酵素失活する。その後冷却し、遠心分離、濾紙濾過などの適宜な分離手段によって残渣を分離することにより分離液を得ることができる。
引き続きイオン交換樹脂にて処理を行う。使用するイオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂(H+型)を使用するが、好ましくは強酸性陽イオン交換樹脂(H+型)、より好ましくはスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂を使用する。スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオンUBK−550(三菱化学社製)、ダイヤイオンSK1B(三菱化成社製)、アンバーライト IR120B、アンバーライト 200C、デュオライトC−26(以上Rohm&Haas社製)、ダウエックス MSC−1(DOWEX社製)、LEWATIT SP−112(LEWATIT社製)などが挙げられる。樹脂に接触させる方式は回分式、カラム式いずれでも良いが、生産規模ではカラム方式の方が一般的である。樹脂の使用量は、抽出液に含まれるS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類含量によるため一様に設定できないが、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を全て吸着(交換)することが可能な量であればいかなる量でも良く、例えば抽出液に対し0.1倍〜10倍量を例示することができる。また、通液の条件としては通液速度SV=0.5〜5を例示することができる。
吸着後、イオン交換樹脂に対し0.1〜10倍量の水を通液し不要な成分を除き、アルカリ溶液によりS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を脱着(交換)し、高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物を得ることができる。脱着の際に使用するアルカリの種類に特に制限はないが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが挙げられる。またアルカリの濃度および量は強酸性陽イオン交換樹脂に吸着したS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を脱着できる濃度および量であればよく、濃度は0.5〜3N、量は対イオン交換樹脂1〜5倍容量を例示することができる。 また、通液の条件としては通液速度SV=0.5〜5を例示することができる。また、脱着に際しては脱着のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類含量を確認し、S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類濃度の高い画分のみを集めることにより、さらに高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物を得ることができる。S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類の含有量は抽出物の乾燥重量当たり10%以上とすることができ、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上とすることが可能である。
なお、本発明で言うS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類の例としては、アリイン(S−アリルシステインスルフォキサイド)、イソアリイン(S−1−プロペニルシステインスルフォキサイド)、S−メチルシステインスルフォキサイド、S−エチルシステインスルフォキサイド、S−プロピルシステインスルフォキサイド、 S−ブチルステインスルフォキサイド、シクロアリイン、γ−L−グルタミル−S−プロペニルシステインスルフォキサイドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
得られたS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を高濃度に含む抽出物は、そのまま、あるいは酸を加えて中和、あるいは透析またはイオン交換によりアルカリを除去した後、さらに濃縮、所望により、デキストリン、化工澱粉、サイクロデキストリン、アラビアガムなどの賦形剤を添加してペースト状、粉末状とすることができ、粉末はさらに硬化油脂被覆粉末など様々な形態とすることができる。
かくして得られた高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物もしくはそれを含む組成物が使用される飲食物は、可食性のものであれば特に限定されることはないが、例えばおろしニンニク、焼肉のたれ、シーズニングオイル、シーズニングパウダー、ウスターソース、トマトケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、蠣油、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素、味噌、粉末味噌、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、食酢などの各種調味料;ポテトチップスなどの各種スナック食品類;即席麺などの各種インスタント食品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキーなどの食肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、薩摩揚げなどの水産加工品;即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレーなどのカレー類;油脂を含有する各種レンジ食品及び冷凍食品;バター、マーガリン、チーズなどの酪農・油脂製品;口腔製品;医薬品;飼料などが例示される。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
実施例1
市販ニンニク(中国産)の皮をむき、剥きニンニク500gを沸騰水にて10分間煮沸後、ざるにあけ、水を切り、2Lセパラブルフラスコに入れた。イオン交換水500gを加え90℃、5分間加熱後、50℃に冷却し、セルロシン GM5(エイチビィアイ社製)1.25gを水12.5gに溶解したもの、ペクチナーゼG(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したものおよびセルラーゼT(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したものを添加し、50℃、16時間静置反応した。その後50℃、2時間攪拌を行った後、90℃、10分間加熱攪拌して酵素を失活した。40℃まで冷却後、40メッシュ濾過を行い、酵素処理ニンニク抽出液932.5g(発明品1:Bx17.2°、アリイン含量0.254%)を得た。発明品1の粘度は20℃で、43mPa・sであった。引き続き、東洋濾紙No.2(5.5cm)にセルロースパウダー10gを濾過助剤としてコーティングしたヌッチェを使用し0.01MPaにて減圧濾過を行い濾液905gを得た。濾過に要した時間は6.3分であった。次いで濾液をダイヤイオンUBK−550(三菱化学社製)646mlにSV=2で通液した。通過液にアリインが含まれていないことをTLCにて確認後、イオン交換樹脂をイオン交換水2513mlで洗浄した。洗浄液にはアリインが含まれていないことをTLCにて確認した。次に以下の溶離液を通過させ吸着物の脱着を行った。
フラクション1:1Nアンモニア水 1077ml
フラクション2:2Nアンモニア水 1077ml
フラクション3:1Nアンモニア水 2154ml
それぞれのフラクションをTLCで確認したところ、フラクション2にのみアリインが確認された。フラクション2をロータリエバポレーターを用いて濃縮後、真空乾燥し、乾燥物(発明品2)9.5gを得た(対剥きニンニク収率1.9%)。発明品2のアリイン含量をHPLCにて測定したところ22.8%であった。
(アリイン含量の測定方法)
誘導化試薬の調製:
オルト−フタルジアルデヒド(OPA)140mgをメタノール5mlに溶解し、ついで2−メチル−2−プロパンチオール0.1mlを攪拌しながら混合し、さらに0.05モルのリン酸2水素ナトリウム水溶液(pH9.5)50mlを加え、誘導化試薬とした。
標準品、試料の調製:
試薬のアリインを使用し、20ppmおよび80ppmの標準溶液を調製した(いずれも80%メタノールに溶解)。それぞれの標準液および試料溶液400μlに誘導化試薬600μlを加え、室温下で30分静置し反応させた。
高速液体クロマトグラフィーの条件:
装置 :Waters HPLC system
カラム:Waters Symetry C18 5μm 4.6×150mm
検出機:Waters 2487 dual λ absorbance dete ctor
移動相A:0.1m酢酸ナトリウム(pH7.2)/アセトニトリル/テトラヒドロフラン=900/95/5
移動相B:アセトニトリル/水=800/200
流速 :0.7ml/min
検出 :紫外吸収(吸光度の測定):337nm
注入量:20μl
グラジェント条件:表1に示す
Figure 0004954523
実施例2(ニンニクエキス粉末およびニンニクエキス硬化油被覆粉末の製造)
水84.64gに発明品2を9.5gおよびデキストリン(DE12)11.66gを溶解し、60〜70℃で溶解した後40℃まで冷却した。これを真空乾燥、ミキサー粉砕し乾燥しニンニクエキス粉末21.0g(発明品3:アリイン含量10.0%、平均粒径100μ)を得た。さらに得られたニンニクエキス粉末21gと硬化菜種油(平均粒径10μ)21gを自動乳鉢(ヤマト科学社製ラボミルモデルUT−21)を用い、15rpmにて2時間混合し、ニンニクエキス硬化油脂被覆粉末42g(発明品4:アリイン含量5%)を得た。
比較例1(ニンニク精油粉末およびニンニク精油硬化油被覆粉末の製造)
水150gにアラビアガム40gおよびデキストリン40g(DE12)添加し、60〜70℃で溶解した後40℃まで冷却した。これにニンニク精油5gを添加し、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、30〜40℃に保ちながら8000rpmにて10分間攪拌することにより乳化を行った。得られた乳化液をニロ社製モービルマイナースプレードライヤーを用い、送風温度150℃、排風温度80℃で噴霧乾燥し、ニンニク精油粉末80g(比較品1:ニンニク精油含量5%)を得た。さらにこのニンニク精油粉末(平均粒径100μ)80gと硬化菜種油(平均粒径10μ)80gを自動乳鉢(ヤマト科学社製ラボミルモデルUT−21)を用い、15rpmにて2時間混合し、ニンニク精油硬化油脂被覆粉末160g(比較品2:ニンニク精油含量2.5%)を得た。
実施例3(スナック用シーズニングパウダーへの応用)
発明品3または比較品1を使用し、下記表2に示す配合割合にてシーズニングパウダーを試作した。このシーズニングパウダーをポテトチップ(塩)に5%ふりかけ、良く訓練された5人のパネラーにより評価した。評価はフレッシュ感およびニンニク臭についてそれぞれの強度を5段階で評価した。また、風味を言葉で表現した。5人の平均点および共通の風味評価を表3に示す。
Figure 0004954523
Figure 0004954523
表3に示したように、発明品3を添加したポテトチップスはニンニク臭が非常に強いとともに、擦りたてのニンニクをイメージさせるシャープなフレッシュ感が非常に強くなっていた。これはニンニク乾燥粉末中に含まれる酵素が唾液の水分により活性化し、発明品3に含まれるS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を分解するため口腔中で香気が発生することによると考えられる。一方比較品1を添加したものは、ニンニク的香気は強化されるが、フレッシュ感はそれほど強くはなかった。
実施例4(おろしニンニク加工品の香気補強)
市販品おろし生ニンニクに発明品4または比較品2を0.5重量%添加混合し、密封容器に充填し、37℃にて4週間保存試験を行った。また、全くの無添加品も同一の条件で保存試験を行った。保存前後の風味を良く訓練された5人のパネラーにより評価した。評価はフレッシュ感、ニンニク臭、漬け物臭についてそれぞれの強度を5段階で評価し、また、風味を言葉で表現した。5人の平均点および共通の風味評価を表4に示す。
Figure 0004954523
表4に示すとおり、発明品4添加品、比較品2添加品のいずれも無添加品と比べ製造直後、保存後いずれにおいても風味の改良効果が見られた。しかしながら、発明品4添加品、比較品2添加品共に製造直後では刺激を伴うフレッシュな擦りたての風味を有していたが、保存後では比較品2添加品は風味が大幅に劣化していたのに対し、発明品4添加品はフレッシュな風味を持続することができた。発明品4はS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を高濃度に含有するエキスを粉末化し、さらに水分との接触を妨げるため硬化油にて被覆した粉末であるが、上記のようなおろしニンニクに添加した場合、ニンニク中の酵素は硬化油脂被覆粉末に浸透する速度が遅いため、酵素反応が徐々におこなわれ、新鮮な風味が持続できたものと考えられる。一方比較品2はニンニク精油を粉末化し、さらにワックスコートした粉末であるが、香気の強化効果は見られるものの、フレッシュな擦りたての香気を維持することはできなかった。
比較例2
実施例1において酵素を全く使用せずに、それ以外は実施例1と全く同様の操作を行い下記の酵素無処理ニンニク抽出液を得た。また、実施例1において3種類使用している酵素のうち2種類を使用し、それ以外は実施例1と全く同様の操作を行い下記の酵素処理ニンニク抽出液を得た。
比較品3:酵素無処理ニンニク抽出液(収量552.2g、Bx10.5°)。
比較品4:セルロシン GM5(エイチビィアイ社製)1.25gを水12.5gに溶解したものおよびペクチナーゼG(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したもの2種類を使用した酵素処理ニンニク抽出液(収量758.9g、Bx15.1°)。
比較品5:セルロシン GM5(エイチビィアイ社製)1.25gを水12.5gに溶解したものおよびセルラーゼT(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したもの2種類を使用した酵素処理ニンニク抽出液(収量803.1g、Bx14.6°)。
比較品6:ペクチナーゼG(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したものおよびセルラーゼT(天野エンザイム社製)1.25gを水12.5gに溶解したもの2種類を使用した酵素処理ニンニク抽出液(収量838.3g、Bx15.3°)。
比較品3〜6の抽出液について粘度、アリイン含量を測定した。また比較品3〜6は実施例1と同様に、東洋濾紙No.2(5.5cm)にセルロースパウダー10gを濾過助剤としてコーティングしたヌッチェを使用し0.01MPaにて減圧濾過を行い濾液を得、その際濾過に要した時間を測定した。発明品1および比較品3〜6のそれぞれの粘度、アリイン含量および濾過時間を表5に示す。
Figure 0004954523
表5から酵素としてマンナナーゼ、セルラーゼおよびペクチナーゼの3種類全てを含むことにより粘度、濾過時間が大幅に改善されたことが示された。

Claims (3)

  1. ユリ科植物の食用部をマンナナーゼ、セルラーゼおよびペクチナーゼの3種類全てを含む酵素で処理した後、イオン交換樹脂処理することを特徴とする高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法。
  2. イオン交換樹脂が強酸性陽イオン交換樹脂である請求項1に記載の高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法。
  3. S−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類が抽出物の乾燥物当たり10重量%以上含まれている請求項1または2に記載の高濃度のS−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法。
JP2005277424A 2005-09-26 2005-09-26 高濃度のs−アルケニル(またはアルキル)システインスルフォキサイド類を含有する抽出物の製造方法 Expired - Fee Related JP4954523B2 (ja)

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