以下、本発明の一実施形態に係る複写機1について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複写機1を概略的に示す図である。
複写機1は、特許請求の範囲の記載における「画像形成装置」の一例である。
複写機1は、画像形成機構Iと、記録紙搬送経路Lと、定着装置300と、制御部100とを備える。
記録紙搬送経路Lは、複写機1の下部に設けられた給紙装置から記録紙搬送経路Lへ当該給紙装置に積載された記録紙Pを搬入させ、搬入された記録紙Pを、記録紙搬送経路Lの下流側へと搬送する。
画像形成機構Iは、この記録紙搬送経路Lの途中に設けられ、感光体ドラムなどを備えており、この感光体ドラム等によって、記録紙搬送経路Lにより当該画像形成機構Iの位置に搬送されてくる記録紙Pに、複写機1が印刷を行なう画像のトナー像を形成する。
定着装置300は、記録紙搬送経路Lにおけるこの画像形成機構Iよりも下流側に設けられており、画像形成機構Iによりトナー像が形成されてから、記録紙搬送経路Lにより当該定着装置300へ搬送されてくる記録紙Pに定着処理を施し、つまり、記録紙Pを加熱することにより、画像形成機構Iにより記録紙Pに形成されたトナー像を当該記録紙Pへ定着させる。
定着装置300は、定着ローラ310と、圧ローラ310pとを備える。
定着ローラ310は、特許請求の範囲の記載における「定着ローラ」の一例である。
定着ローラ310は、定着装置300内部に設けられた誘導加熱部320(図2)により加熱されて、記録紙搬送経路Lにより当該定着ローラ310へ通紙される記録紙Pに熱を付与することにより、記録紙Pに定着処理をする。
他方、圧ローラ310pは、記録紙搬送経路Lを挟んで定着ローラ310に対向配置され、定着ローラ310に押圧当接して、押圧当接する定着ローラ310との間に記録紙搬送経路Lにより記録紙Pが通紙されると、通紙される記録紙Pを定着ローラ310に密着させて、定着ローラ310により記録紙Pに定着処理をさせる。
制御部100は、この定着装置300など、複写機1各部の動作を制御する情報処理装置であり、たとえば、CPU、ROM、RAM等を備えたプログラム内蔵方式のコンピュータや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって構成される。
制御部100は、定着装置300と制御信号線により接続し、定着装置300の温度センサ等から情報を取得すると共に、定着装置300に対して制御信号を入力することにより、定着装置300に適切な動作をさせる。
図2は、定着装置300(図1)が備える本体部300aと模擬発熱部300bとを示す図である。図2は、図1の下側(記録紙搬送経路Lの上流側)から図1の上側(記録紙搬送経路Lの下流側)への記録紙搬送方向(y方向:図1,図2)を図2における右から左への方向(y方向:図2)として、そして、図2の上側に定着ローラ310が、下側に他方の圧ローラ310pがくるように図示をしている。
定着装置本体部300aは、定着ローラ310および圧ローラ310pと共に、誘導加熱部320と、温度センサ(第一の温度センサ)310sとを備える。そして、誘導加熱部320は、加熱コイル(第一の加熱コイル)320cと、高誘電率保持部材320hとを備える。
誘導加熱部320は、特許請求の範囲の記載における「誘導加熱手段」の一例である。そして、第一の加熱コイル320cは、特許請求の範囲の記載における「(第一の)コイル」の一例である。
第一の加熱コイル320cは、定着ローラ310の内部に設けられており、配線Cから電力を受けて磁束を発生して、この磁束によって定着ローラ310に誘導電流を生じさせることで、定着ローラ310を誘導加熱する。ここで、この第一の加熱コイル320cは、加熱効率をよくするため、加熱を行なう、定着ローラ310の加熱領域310rのごく近傍に設けられる。ここで加熱領域310rは、定着ローラ310が圧ローラ310pから押圧されて、記録紙Pが通過する、定着ローラ310のニップ部である。
温度センサ(第一の温度センサ)310sは、定着ローラ310の温度を検出する。ここで、第一の温度センサ310sは、定着ローラ310が記録紙Pに定着処理をする温度を制御部100が検出し、この温度を適切に制御するために用いられるので、定着ローラ310が定着処理をする上述した加熱領域310rの温度を的確に検出するようにしたいが、加熱領域310rの近傍には、上述した加熱コイル320cや高誘電率保持部材320h、圧ローラ310p、記録紙Pの搬送経路Lなどがあるので、レイアウトの制約がきつく、第一の温度センサ310sは、かかる加熱領域310rからから少し離れた位置、より具体的には、加熱領域310rから、記録紙が通紙される回転方向(図2における時計回り方向)の側に向けて、定着ローラ310が少し離れた位置に設けられている。
このため、この第一の温度センサ310sは、定着ローラ310が加熱領域310rから第一の温度センサ310sまで回転する時間だけズレて、現在は第一の温度センサ310sの位置にあるが、このズレの時間分だけ過去には、加熱領域310rにあった定着ローラ310の部分の温度を検出することにより、このズレ時間分だけズレた過去の加熱領域310rの温度を検出する。ただし、定着ローラ310の回転速度が通常の速度であれば、このズレ時間は小さく、第一の温度センサ310sは実質的に現在の加熱領域310rの温度を検出することができる。
ただし、第一の温度センサ310sは、たとえば、記録紙搬送経路Lの少なくとも一部が機械的なロックにより停止した場合など、定着ローラ310の駆動機構がロック等どの何らかの原因により停止したときには、上述したような定着ローラ310の回転がなくなるので、正しい現在の加熱領域310rの温度を遅れなく検出することができなくなる。このときには、定着ローラ310のこの第一の温度センサ310sの位置は、熱が定着ローラ310から放熱することにより、しだいに低い温度となるので、第一の温度センサ310sはかかる温度低下を検出する。このとき、かかる温度低下は、加熱領域310rが誘導加熱部320から誘導加熱され続けていても起きる。
そして、また、記録紙搬送経路Lにより記録紙Pの搬送が半分の速度で行なわれる半速モードで複写機1が動作しているときも、定着ローラ310が通常のときの半分の速度でしか回転されず、第一の温度センサ310sは、通常時の2倍の時間まで遅れたかなり古い加熱領域310rの温度を検出することとなる。このときにも、第一の温度センサ310sは、誤った温度を検出する。
なお、高誘電率保持部材320hは、加熱コイル320cの磁束により無駄な電波が出てしまうことを抑制する。
他方、模擬発熱部300bは、第二の加熱コイル350cと、発熱体350hと、第二の温度センサ350sと、サーモスタット350Swとを備える。
模擬発熱部300bは、特許請求の範囲の記載における「模擬発熱手段」の一例である。そして、第二の加熱コイル350は、特許請求の範囲の記載における「第二のコイル」の一例である。
模擬発熱部300bは、配線Cにより先に説明した本体部300aの誘導加熱部320に直列に接続されており、接続されたこの誘導加熱部320が定着ローラ310を誘導加熱するときに、この誘導加熱と同時に、誘導発熱を行なう。
第二の加熱コイル350cは、模擬発熱部300bに接続する配線Cにつなげられており、これにより、上述した、本体部300a側の誘導加熱部320が有する第一の加熱コイル320cと共に、第一の加熱コイル320cに対して直列に配線Cにつながれ、この第一の加熱コイル320cが磁束を発生して誘導加熱部320が定着ローラ310に誘導加熱を行なうときに、同時に磁束を発生する。
発熱体350hは、第二の加熱コイル350cが発生するこの磁束を受けて誘導電流を生じて誘導発熱を行なう。
模擬発熱部300bは、これら第二の加熱コイル350cおよび発熱体350hにより、本体部300a側で誘導加熱部320が定着ローラ310に誘導加熱をするときに同時に、第二の加熱コイル350cで磁束を生じて、発熱体350hに誘導電流を流れることによって誘導発熱を行なう。
なお、模擬発熱部300bは、定着装置本体部300a側の上述した第一の加熱コイル320cの生じる磁束による影響を受けず、特に、第一の加熱コイル320cの磁束によって発熱体350hが誘導発熱をしない位置に設けられている。
以下では、模擬発熱部300bのこの発熱体350hの温度のことを、定着ローラ310の加熱領域310r等の温度と対比して、単に、模擬発熱部300bの温度と呼ぶ。
模擬発熱部300bの温度(発熱体350hの温度)は、定着ローラ310が誘導加熱部320から誘導加熱されるのと同時に模擬発熱部300bで誘導発熱がされることにより、定着ローラ310の加熱領域310rに加えられる熱量の変化に合わせて温度変化して、定着ローラ310の加熱領域310rに加えられる熱量に対して、たとえば略比例や、あるいは略線型などの一定の相関関係を有する温度となり、これにより、模擬発熱部300bの温度は、加熱領域310rの(非通紙部の)温度を特定する温度になる。ここに、「特定する」とは、完全に特定することだとしてもよいのは勿論、ある程度の誤差を含んで特定する場合、一定の範囲内に特定する場合などを含む。
第二の温度センサ350sは、かかる加熱領域310rの温度を特定する模擬発熱部300bの温度を検出する。
サーモスタット350Swは、自己の温度が一定の温度(以下、安全装置動作温度と呼ぶ)以上であるとオフ状態になるスイッチである。そして、サーモスタット350Swは模擬発熱部300bの温度を検出して、模擬発熱部300bの温度が安全装置動作温度以上であるとオフ状態になる。そして、サーモスタット350Swは、上述した2つの加熱コイル320cおよび350cを直列に接続する配線Cに、これら2つの加熱コイル320cおよび350cと共に直列に接続されており、模擬発熱部300bの温度がその安全装置動作温度以上であるときには、配線Cによるこれら2つの加熱コイル320cおよび350cへの電力供給を切り、これによって、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を停止させる。
サーモスタット350Swは、「過電流防止器」の一例である。
第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swは、第一の温度センサ310sが、定着ローラ310の加熱領域310rの近傍に設けることができないのと違い、この模擬発熱部300bの近傍ではレイアウト上の制約少なく、自由にこの模擬発熱部300bの近傍で、それら第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swを設ける位置をそれぞれ選ぶことができる。このため、これら第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swは、それらの検出温度が、模擬発熱部300bの温度に対して遅れなく、模擬発熱部300bの温度が変化するとこれら検出温度も即時に同一の変化をする位置を選んで配置されている。
そして、上述の通り、模擬発熱部300bの温度は、定着ローラ310の加熱領域310rの温度変化に合わせて同時に変化して、略比例などの相関関係が加熱領域310rの温度に対してある温度となるので、これらの検出温度も、定着ローラ310の加熱領域310rの温度変化に合わせて同時に変化して、略比例などの相関関係ある温度となる。
図3は、小さいサイズの記録紙Ps(図4参照)が定着ローラ310に通紙された場合における、定着ローラ310の記録紙Psが通紙される領域310cおよび通紙がされない領域310tを示す図である。
図3を参照して、更に、第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swの検出温度について説明する。
記録紙Psは、様々な種類の記録紙Pのうちで比較的、小さいサイズの記録紙である。
記録紙Psは、定着ローラ310の長手方向、つまり定着ローラ310の回転軸が伸びる方向(z方向:図3)の幅w1が、定着ローラ310の当該長手方向の長さw2よりも短い。このため、記録紙Psが定着ローラ310に通紙されるときには、定着ローラ310は長手方向に記録紙Psの幅w1の領域310cに記録紙Psが通紙されるだけとなり、この通紙がされる領域310cよりも長手方向に外側の、定着ローラ310全体の長手方向の幅w2から、この中央部の領域310cの幅w1を引いた、「幅w2−幅w1」の長さの幅である端部(周辺部)の領域310tには記録紙Psが通紙されない。
そして、かかる端部の領域310tでは、誘導加熱部320の誘導加熱(図2参照)により定着ローラ310に与えられる熱が、通紙される記録紙Psに奪われず、つまり記録紙Psにより定着ローラ310のかかる端部の領域310tは冷却されず、この端部の領域310tでは、中央部の領域310cよりも温度が相対的に高くなる。これにより、端部の領域310tでは温度が高く、中央部の領域310cでは温度が低い温度勾配が定着ローラ310において長手方向に生じる。
図4は、定着ローラ310に生じる温度勾配と、かかる温度勾配を解消させる動作をする複写機1の各構成とを示す図である。
図4の下部のグラフでは、小さいサイズの記録紙Ps(図3参照)が定着ローラ310に通紙された場合に定着ローラ310で長手方向に生じる温度勾配を示している。
図4のグラフでは、横軸に、定着ローラ310の長手方向の各位置をとり、また、縦軸に、各位置での定着ローラ310の温度をとり、そして、データSmlTとして、小さいサイズの記録紙Psが定着ローラ310に通紙される場合の定着ローラ310の温度を、また、データBigTとして、この記録紙Psよりも大きく、定着ローラ310に対して、当該定着ローラ310の長手方向の幅w2一杯に通紙される大きなサイズの記録紙が定着ローラ310に通紙される場合の定着ローラ310の温度を、それぞれ、示している。
そして、このグラフでは、横軸に示した定着ローラ310の長手方向の各部の位置のうちで、上述した図3を参照して説明した定着ローラ310の端部の領域310tと、中央部の領域310cとの位置がどの位置であるかをそれぞれ二点差線および破線により区分して図示している。
このグラフにおいて、大きいサイズの記録紙のデータBigTに示されているように、大きいサイズの記録紙が通紙されるときには、長手方向に全ての位置で、どこでも同じく、定着ローラ310の熱が記録紙へ逃げるので、どの位置でも定着ローラ310は略均一の温度になる。
これに対して、小さいサイズの記録紙Ps(図3)のデータSmlTに示されているように、小さいサイズの記録紙Psが通紙されるときには、図4で破線により示す位置の、定着ローラ310の中央部の領域310cでは、上述の大きなサイズの記録紙のデータBigTのデータとおよそ同じ温度になるものの、図4で二点鎖線により示す位置の端部の領域310tのデータでは、中央部の領域310cのかかる温度よりも高い温度となる。
このため、小さいサイズの記録紙Psが定着ローラ310に通紙される場合には、本体部300aの第一の温度センサ310sは(図3、図4参照)、中央部の領域310cの長手方向の位置に設けられていてかかる温度勾配のうちで中央部の領域310cにおける温度を検出することから、端部の領域310tにおける上述した高い温度に対して、正しくない、誤った低い温度を検出することとなる。
このような第一の温度センサ310sの誤った低い検出温度T1に対して、第二の温度センサ350sやサーモスタット350Swの検出温度は次のようになる。
先述の通り、模擬発熱部300bの温度は、定着ローラ310の温度を特定するものであるが、図4のグラフで示したように、定着ローラ310で温度勾配が生じたときには、模擬発熱部300bには記録紙Ps(P)が通紙されず、熱が記録紙Psへ奪われることがなくて、端部の領域310tと同じようになり、端部の領域310tの温度を特定するものとなる。
このため、模擬発熱部300bの温度は、図4のグラフで示したように、定着ローラ310で温度勾配が生じたときには、図4のデータSmlTに示した温度勾配のうちで高い温度の部分を構成する定着ローラ310の端部の領域310tの温度に相関した変化をして、相関した温度となる。つまり、模擬発熱部300bの温度を検出した第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swの検出温度T2は、それぞれ、記録紙Psが通紙されない端部の領域310tの温度に対して、たとえば略比例などの相関関係のある変化をして、相関関係のある温度になる。
結局、検出温度は、定着ローラ310の加熱領域310rに対して遅れなく相関した温度であると共に、図3、図4を参照して上記に説明した、小さいサイズの記録紙Psが定着ローラ310に通紙されるときには、単に、定着ローラ310の加熱領域310rの温度に相関するというだけでなく、温度勾配が生じると、温度勾配により高い温度となった端部の領域310tの温度に特に相関するものとなる。
サーモスタット350Sw(図2〜4)は、かかる自己の検出温度に基づいて、検出温度が安全装置動作温度未満であるときのみ、誘導加熱部320(図2参照)に定着ローラ310の誘導加熱をさせ、検出温度が安全装置動作温度以上のときには、誘導加熱部320(図2)への通電を切り、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を停止させる。
図5は、高周波ON/OFF回路100xを示す図である。
他方、図4、図5に示した高周波ON/OFF回路100xは、配線C上に設けられ、配線Cを通じた2つの加熱コイル320c,350cへの商用電源からの電力供給をオン状態とオフ状態との間で切り替える。
また、通紙用モータMtr(図4)は、定着ローラ310に記録紙を通紙させるモータ
であり、たとえば、記録紙搬送経路L(図1)の一部などに設けられている。
そして、制御部100には、ローラ温度制御機能部100fが実現される。
このローラ温度制御機能部100fは、制御部100が有する、定着ローラ310の温度制御をする機能の機能ブロックである。
制御部100は、「制御手段」の一例を構成する。
ここで、制御部100は、たとえば従来品を用いて、従来品のソフトウェアを書き換えるだけなどで構成してもよい。この点については、図4においても、単に制御部100だけを示すのでなく、かかる書き換えにより制御部100に実現される機能の機能ブロックである、ローラ温度制御機能部100fを明示して、明確にしている。
この実施形態でローラ温度制御機能部100fが有する性質、機能、実行する動作などは、全て、制御部100fがこれを有したり、実行したりして、実現するものである。
ローラ温度制御機能部100fは、高周波ON/OFF回路100xを用いて誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を制御する。また、ローラ温度制御機能部100fは、通紙用モータMtrにより定着ローラ310への記録紙の通紙を制御する。ローラ温度制御機能部100fは、これらの制御をすることにより、定着ローラ310の温度制御を行なう。
ローラ温度制御機能部100fが定着ローラ310の温度制御に用いるこれら高周波ON/OFF回路100xおよび通紙用モータMtrのことを、温度変化装置100mと呼ぶ。これら温度変化装置100mに含まれる、高周波ON/OFF回路100xおよび通紙用モータMtrは、ローラ温度制御機能部100fが動作を制御して、定着ローラ310の温度を変化させることができるものである。
図6は、ローラ温度制御機能部100fが定着ローラ310の温度制御をするタイミングを示すタイミングチャートである。
図6では、上段(A)に、定着装置本体部300aにおいて第一の温度センサ310sに検出される検出温度T1を、また、下段(B)には、第二の温度センサ350sおよびサーモスタット350Swによって検出される模擬発熱部300bの温度の検出温度T2を示している。
タイミングt0は、複写機1が、ユーザにより印刷開始ボタンが押される等によって、定着装置300の立ち上げを開始するタイミングである。
タイミングt1は、複写機1が、この立ち上げを完了したタイミングである。このときには、図6の上段(A)に示すように、定着ローラ310は、記録紙への定着処理を適切にできる温度つまり定着温度(例えば180℃)になっている。
複写機1は、このタイミングt1から、画像形成機構I(図1)等により記録紙Pへの印字を開始する。
図7は、ローラ温度制御機能部100fが行なう、定着ローラ310の温度を180℃に保つ温度制御処理を示すフローチャートである。
図7における、タイミングt1〜t3は、ローラ温度制御機能部100fが、このステップS1の処理により、定着ローラ310の温度を180℃に維持させた期間を示している。
ステップS11においては、ローラ温度制御機能部100fは、複写機1が行なっている印刷が、半速モードではない通常のモードでの印刷か、半速モードでの印刷かいずれであるかを特定する。
ステップS12では、ローラ温度制御機能部100fは、ステップS11で複写機1が半速モードではない通常モードでの印刷をしていると特定された場合に(ステップS11:NO)、定着ローラ310の温度制御を、定着装置本体部300aの第一の温度センサ310sの検出温度T1に基づいて行なう。このときには、通常の速度で定着ローラ310が回転しているので、第一の温度センサ310sの検出温度T1は、遅れなく、正しく定着ローラ310の加熱領域310rの温度を検出した温度となる。そこで、このときには、ローラ温度制御機能部100fは、第一の温度センサ310sの検出温度T1に基づいて、高周波ON/OFF回路100x(図4参照)を用いて誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を制御することにより、加熱領域310rが180℃になるようにする。
他方、ステップS13では、ローラ温度制御機能部100fが、先のステップS11で、複写機1が半速モードでの印刷をしていることが特定された場合に(ステップS11:YES)、定着ローラ310を180℃に維持させる処理を行なう。
このときには、先述の通り、第一の温度センサ310sの検出温度T1は、定着ローラ310の加熱領域310rの現在の正しい温度とは異なった、遅れのある不正確な温度となっている。
また、半速モード時の場合、1枚の用紙に対して必要な熱量は一定であるのに、搬送速度は半分になって、定着時間が2倍になり、単位時間内に通紙領域の記録紙により奪われる熱量が減少することにより、定着ローラ310の非通新領域と通紙領域との温度差が小さくなる。
そこで、ローラ温度制御機能部100fは、このステップS13では、第二の温度センサ310sの検出温度T2を用いる。
ローラ温度制御機能部100fは、定着ローラ310の加熱領域310rの温度を180℃とする第二の温度センサ310sの目標温度(たとえば90℃)を予め記憶しており、第二の温度センサ310sの検出温度T2がこの目標温度(90℃)以上になると、高周波ON/OFF回路100x(図4参照)により、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を停止させて、これにより、模擬発熱部300bの温度を当該目標温度100℃に維持させて、定着ローラ310の加熱領域310rの温度を目標温度(90℃)に対応する定着ローラ310側の温度である、定着温度(180℃)に維持させる。
図6下段のタイミングt1〜t2における、第二の温度センサ310sの検出温度T2が上述した目標温度(90℃)の期間は、ローラ温度制御機能部100fが、このステップS13の処理をして、定着ローラ310の加熱領域310rの温度を定着温度(180℃)に維持させた期間を示しており、加熱領域310rの温度(定着温度:180℃)が、定着ローラ310の回転による検出遅れの時間分遅れながら(図2の説明を参照)、第一の温度センサ310sにより180℃(定着温度)と、図6上段のタイミングt1〜t2に示すように検出される。
ステップS1rは、ローラ温度制御機能部100fが、以上、説明したステップS11〜S13の処理を繰り返し実行させて(ステップS1r:NO)、定着ローラ310の温度を継続して定着温度180度に維持する繰り返し制御処理を示している。
図8は、ローラ温度制御機能部100fが、定着ローラ310の温度勾配を抑制する温度制御処理を示すフローチャートである。
ステップS21で、ローラ温度制御機能部100fは、小さなサイズの記録紙Ps(図3参照)が定着ローラ310に通紙されているか否かを特定し、小サイズの記録紙Psが通紙されていることが特定されると(ステップS21:YES)、ステップS22〜S23の処理をする。
ステップS22で、ローラ温度制御機能部100fは、第二の温度センサ350sの検出温度が定着ローラ許容温度限界(例えば100℃)よりも高い温度か否かを判定する。
ここで、この定着ローラ許容温度限界とは、定着ローラ310の端部の領域310tの温度が許容限度レベル(例えば200℃)まで高くなったときに、その温度上昇に合わせた模擬発熱部300bでの誘導発熱による温度上昇で模擬発熱部300bがなる温度である。
そして、ここで、定着ローラ310の温度の許容限度レベルとは、たとえば、定着ローラ310においていわゆるホットオフセットが生じない限度の温度である。
定着ローラ許容温度限界は、特許請求の範囲の請求項4の記載における「予め定められた温度」の一例である。
ローラ温度制御機能部100fは、第二の温度センサ350sの検出温度T2がこの定着ローラ310の許容温度限界(100℃)より高い温度のときには(ステップS22:YES)、次のステップS23の処理を実行する。
ステップS23で、ローラ温度制御機能部100fは、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を抑制することにより、定着ローラ許容温度限界になった定着ローラ310の端部の領域310tが更に昇温することを防ぐ。
そして、このステップS23で、ローラ温度制御機能部100fは、通紙用モータMtrを制御して、定着ローラ310への記録紙Psへの通紙間隔を通常時の通紙間隔よりも広い通紙間隔にさせる。ここで、通常時の通紙間隔とは、ステップS22でローラ温度制御機能部100fが第二の温度センサ350sの検出温度T2が定着ローラ許容温度限界以下と判定した場合(ステップS22:NO)の時に、通紙がされる間隔である。ローラ温度制御機能部100fは、これにより、温度勾配により端部の領域310tに多く蓄積された熱が(図4下段のグラフのデータSmlTを参照)、中央部の領域310cへ移ることができる時間を長くしてやることにより、端部の領域310tから中央部の領域310cへ熱を移させるとともに、小さな記録紙Psが通紙され、小さな記録紙Psに定着処理を実行するために多くの熱量の必要な中央部の領域310cに、端部の領域310tから熱を補給させる。
ローラ温度制御機能部100fは、第二の温度センサ350sの検出温度T2が上述した定着ローラ許容温度限界(100℃)以下となるまで、誘導加熱部320による誘導加熱を停止させると共に、定着ローラ310への次の記録紙Psの通紙をさせず、通紙間隔を広げさせることにより、定着ローラ310の温度勾配を解消させつつ、端部の領域310tの温度を許容温度レベル(200℃)以下とさせる。
図8の下段のタイミングt3〜t4では、ローラ温度制御機能部100fが、かかる図8のステップS2の処理を繰り返し実行することにより(ステップS2r:NO)、第二の温度センサ350sの検出温度T2が100℃近辺で推移し、これにより端部の領域310tの温度が許容温度レベルを超えないときのことを示している。そして、このときには、上述したように、ローラ温度制御機能部100fにより通紙間隔が長くされて、端部の領域310tおよび中央部の領域310cの温度勾配が解消されているので、タイミングt3〜t4の上段の温度T1に示されているように、継続して中央部の領域310cの温度が定着温度(180℃)に維持される。
図9は、サーモスタット350Swの動作を示すフローチャートである。
図9を参照して、サーモスタット350Swの動作について詳しく説明する。
図6のタイミングt4は、たとえば定着ローラ310と通紙用モータMtr(図4)との間にあるギア等がロックすることなど、定着ローラ310の駆動機構でロックが生じて、定着ローラ310が停止したタイミングを示している。
このときには、定着ローラ310が停止しているので、第一の温度センサ310sの検出温度T1が低下する。この温度低下の一例を、図7上段(A)のタイミングt4〜t5に示した。
サーモスタット350Swは、このときに、このような検出温度の低下につれて、定着ローラ310の温度を回復させるべく誤って複写機1において誘導加熱部320が定着ローラ310の誘導加熱を続けたタイミングt4以降の図7下段(B)に示す、当該サーモスタット350Swの温度上昇により、自己の温度つまり自己の検出温度T2が、先述した安全装置動作温度(図6では125℃)になると(タイミングt5、ステップS31:YES)、誘導加熱部320による定着ローラ310への誘導加熱を停止させる(ステップS32)。サーモスタット350Swは、サーモスタット350Swの検出温度T2が安全装置動作温度の間は、継続して、誘導加熱を停止させ続ける(ステップS3r:NO、ステップS31:YES)。
サーモスタット350Swには、安全装置動作温度として、タイミングt4〜t5の期間に示したように、ロックにより定着ローラ310が誤って停止して、第一の温度センサ310sの検出温度T1が下がることから(図6上段(A))、無闇に誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱が続けられた結果、当該誘導加熱と同時の模擬発熱部300bの誘導発熱により模擬発熱部300bがなる温度(たとえば125℃:図6下段(B)参照)が選ばれている。
特許請求の請求項2の記載における「(通電が切られる)温度」は、かかるサーモスタット350Swの安全装置動作温度に設定される温度により、一例が示される。
なお、サーモスタット350Swは、当該サーモスタット350Swの検出温度がこの安全装置動作温度となると(ステップS31:YES)、第一の温度センサ310sの検出温度T1が定着温度(180℃)以下でも(図6のタイミングt3〜t4を参照)、かかる第一の温度センサ310sの検出温度に応じた制御部100の動作等に拘わらずに、誘導加熱部320の誘導加熱を停止させるものとする。
最後に、他の実施形態について説明する。
(A)サーモスタット350Swに代えて、温度ヒューズを用いるものとしてもよい。この温度ヒューズも、第一および第二の加熱コイル320c,350cに対して直列に接続され、そして、上述したサーモスタット350Swの場合と同様に、そのサーモスタット350Sw自身の温度が安全装置動作温度になると(ステップS31:YES)、誘導加熱部320による誘導加熱を停止させるものとする(ステップS32)。
(B)ローラ温度制御機能部100fが、図9の説明におけるサーモスタット350Swの安全装置動作温度に基づいて、定着ローラ310の温度制御をしてもよい。たとえば、ローラ温度制御機能部100fは、第一の温度センサ310sの検出温度T1が定着温度180℃より低くとも(図6上段(A)のタイミングt4〜t5など)、第二の温度センサ350sの検出温度T2が、この安全装置動作温度以上であると(図9のステップS31:YES参照)、高周波ON/OFF回路100xにより、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を停止させるものとする(図9のステップS32参照)。こうすれば、サーモスタット350Swが誘導加熱を停止させる場合と異なり、停止される温度を、ローラ温度制御機能部100fの設定によって容易に変更して微調整などの調整を容易に行なうことができる。
なお、サーモスタット350Swの安全装置動作温度を、図8の説明で述べた定着ローラ許容温度限界にしてもよい。そして、このサーモスタット350Swは、制御部100によるスイッチ操作などにより、小サイズの紙が通紙されているときのみ、配線Cに接続されて(図8のステップS21参照)、誘導加熱部320による定着ローラ310の誘導加熱を停止可能になるものとする。こうすれば、サーモスタット350Swにより、簡便に、温度勾配が生じることを抑制することができる。