以下,本発明にかかる画像形成装置を具体化した第1の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式の画像形成機能を備えたプリンタに本発明を適用したものである。
本形態のプリンタ100は,図1に示すように,印刷前のシートSを収容する給紙トレイ11と,印刷済みのシートSを収容する排紙トレイ12と,シートSにトナー像を形成するプロセス部5と,トナー像をシートSに定着させる定着部8と,を備えている。また,プリンタ100は,給紙トレイ11からプロセス部5と定着部8とを経由して排紙トレイ12へ至る,シートSの経路であるシート搬送路13を有している。
そして,プリンタ100は,シート搬送路13に沿ってシートSを搬送するための各種の搬送部材を備えている。プリンタ100は,図1に示すように,シートSを搬送する搬送部材として,ピックアップローラ21と,レジストローラ22と,排紙ローラ23と,を備える。
ピックアップローラ21は,ピックアップモータ25(図3参照)によって回転駆動され,給紙トレイ11から1枚のシートSを引き出し,シート搬送路13へ送り出す。レジストローラ22および排紙ローラ23は,メインモータ26(図3参照)によって回転駆動される。レジストローラ22は,プロセス部5のトナー像形成動作とタイミングを合わせて,ピックアップローラ21によって引き出されたシートSをプロセス部5へ向けて搬送する。排紙ローラ23は,印刷済みのシートSを排紙トレイ12へ排出する。
なお,プロセス部5および定着部8に含まれる各種の回転部材や各種の搬送部材のうち,少なくともシート搬送路13に沿って配置されている部材の回転軸の方向は,互いに平行であり,図1の紙面に直交する方向である。つまり,シート搬送路13に沿って配置されている回転部材は,いずれも,回転軸の方向がシートSの搬送方向に直交する方向となるように配置されている。
また,プリンタ100は,シート搬送路13上に,シートの通過を検知するための各種のシート検知部材を備えている。具体的に,シート検知部材には,シートセンサ71が含まれる。シートセンサ71は,シートの搬送方向において,ピックアップローラ21よりも下流側で,レジストローラ22よりも上流側に配置される。シートセンサ71は,検知箇所におけるシートの有無に応じて異なる信号を出力する。
プロセス部5は,電子写真方式によりトナー像を形成し,シート搬送路13を搬送されるシートSにトナー像を転写する。プロセス部5は,図1に示すように,感光体51と,帯電部52と,露光部53と,現像部54と,転写部55と,クリーナ56と,を有している。感光体51は,図1中で時計回り方向に回転され,帯電部52,露光部53,現像部54,転写部55,クリーナ56は,感光体51の周りに,感光体51の回転方向についてこの順で配置されている。
帯電部52は,例えば,スコロトロン帯電器であり,感光体51の表面をほぼ均一に帯電させる。露光部53は,例えば,レーザ露光器であり,感光体51にレーザ光を照射して部分的に露光し,感光体51上に画像データに基づく静電潜像を形成させる。現像部54は,トナーを収容し,感光体51上の静電潜像にトナーを供給することで現像し,感光体51上にトナー像を形成させる。転写部55は,感光体51上のトナー像を電気的に引き寄せ,シートSに転写させる。クリーナ56は,例えば,スポンジローラであり,転写後も感光体51上に残るトナー等を感光体51から除去する。
定着部8は,シート搬送路13を挟んで両側に配置されている加熱部材81と加圧ローラ82とを備える。加熱部材81と加圧ローラ82とが互いに圧接されることにより,加熱部材81と加圧ローラ82との間に定着ニップが形成される。定着部8は,プロセス部5によってトナー像が転写されたシートSを,定着ニップにて加熱しつつ搬送することにより,トナー像をシートSに熱定着させる。
加熱部材81は,ヒータ810を備え,そのヒータ810によってその表面が加熱されることによって,定着ニップを通過するシートSを加熱する部材である。加熱部材81としては,例えば,ローラ部材,無端状のベルト部材を適用できる。また,ヒータ810としては,例えば,ハロゲンヒータ,セラミックヒータ,IHヒータ(誘導加熱部材)を適用できる。ヒータ810は,加熱部材81の表面を加熱できればよく,加熱部材81の内側に配置されて加熱部材81を内側から全体的に加熱してもよいし,加熱部材81の外側に配置されて加熱部材81の表面を直接加熱してもよい。
加圧ローラ82は,耐熱性を有するゴムローラであり,例えば,金属製の軸心に,シリコーンゴム等による弾性層と,離型性を有する離型層と,が被覆されたものである。加圧ローラ82は,不図示の押圧部材によって加熱部材81に向けて押圧されている。また,加圧ローラ82は,シートの搬送時,図1中で反時計回りに回転駆動され,加熱部材81は,加圧ローラ82の回転に従動して,図1中で時計回りに回転される。なお,加熱部材81が駆動側であってもよい。
プリンタ100は,シートSの搬送方向に直交する方向,つまり各搬送部材の軸方向に平行な方向について,複数種類の大きさのシートSへの印刷が可能である。以下では,シートSのうち,その搬送方向に直交する方向の長さを,シートSの幅とする。そして,プリンタ100では,シートSを,いわゆる中央寄せで搬送する。つまり,図2に示すように,定着部8にて搬送されるシートSは,幅の大きいシートS2であっても,幅の小さいシートS1であっても,加熱部材81や加圧ローラ82の軸方向について中央寄りの位置を通過する。なお,加熱部材81および加圧ローラ82の軸方向の長さは,印刷可能な最大の大きさのシートSの幅よりも大きい。
また,定着部8は,図2に示すように,加熱部材81の温度を検知するためのセンサとして,センターサーミスタ811と,サイドサーミスタ812と,を備えている。サイドサーミスタ812は,温度センサの一例である。センターサーミスタ811とサイドサーミスタ812とは,それぞれの検知箇所の表面温度に応じて異なる信号を出力する。センターサーミスタ811は,通紙領域の表面温度を検出するために用いられ,サイドサーミスタ812は非通紙領域の表面温度を検出するために用いられる。そして,プリンタ100は,例えば,センターサーミスタ811の出力信号に基づいて,定着ニップの温度が目標定着温度となるように,ヒータ810へ供給する電力を制御する。
具体的に,プリンタ100では,前述したように中央寄せでシートSを搬送することから,センターサーミスタ811は,加熱部材81の軸方向について中央部であって,各種の幅のシートSがいずれも通過する通紙領域内の表面温度に応じて異なる信号を出力する。また,サイドサーミスタ812は,加熱部材81の軸方向について端部であって,各種の幅のシートSがいずれも通過しない非通紙領域内の表面温度に応じて異なる信号を出力する。
なお,シートSの搬送位置は,中央寄せに限らず,左寄せや右寄せであってもよい。その場合でも,センターサーミスタ811の検知箇所は,各種のシートSの通紙領域内であり,サイドサーミスタ812の検知箇所は,各種のシートSの非通紙領域内であればよい。また,サーミスタの数は2個に限るものではなく,加熱部材81の軸方向に,3個以上配置されていてもよい。各サーミスタは,加熱部材81に対して接触する接触式であっても,加熱部材81に対して接触しない非接触式であってもよい。
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。本形態のプリンタ100は,図3に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,を含むコントローラ30を備えている。また,プリンタ100は,プロセス部5と,定着部8と,ピックアップモータ25と,メインモータ26と,シートセンサ71と,ネットワークインターフェイス(ネットワークIF)37と,操作パネル40と,を備え,これらがコントローラ30に電気的に接続されている。
ROM32には,プリンタ100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種の設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種の制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM34は,各種の設定値や累計値等が記憶される記憶領域として利用される。
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素を制御する。CPU31は,制御部の一例である。また,コントローラ30が制御部であってもよい。なお,図3中のコントローラ30は,CPU31等,プリンタ100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にプリンタ100に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
ピックアップモータ25は,ピックアップローラ21を回転駆動する。メインモータ26は,レジストローラ22等のピックアップローラ21以外の搬送部材と,プロセス部5の各回転部材と,定着部8の加圧ローラ82と,を回転駆動する。なお,ピックアップローラ21も,メインモータ26によって駆動されてもよい。
ネットワークIF37は,ネットワークを介して接続された外部装置と通信を行うためのハードウェアである。プリンタ100は,ネットワークIF37を介して,例えば,外部装置から印刷ジョブを受信する。ネットワークIF37による通信方法は,無線でも有線でもよい。また,プリンタ100は,ネットワークIF37以外にも,USBインターフェース等の外部装置との通信手段を有していてもよい。
操作パネル40は,ユーザに対する報知の表示と,ユーザによる指示入力の受け付けとを担うハードウェアである。操作パネル40は,例えば,液晶ディスプレイと,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群とを備える。プリンタ100は,操作パネル40を介しても印刷ジョブを受け付けることができる。
続いて,プリンタ100によるシートSの搬送制御について説明する。定着部8では,シートSが定着ニップを通過する際,シートSが定着ニップから熱を奪うことから,加熱部材81の通紙領域の表面温度が下がり易い。そのため,シートSの連続搬送中,プリンタ100では,通紙領域を目標定着温度にするために加熱部材81の加熱が頻繁に行われる。一方,非通紙領域ではシートSが熱を奪わないことから,加熱部材81が加熱されることでその表面温度が上昇し続け易い。
プリンタ100は,例えば,サイドサーミスタ812の出力信号に基づいて,加熱部材81の非通紙領域の表面温度が上限温度を超えた場合に,ヒータ810への電力供給を停止する。ヒータ810への電力供給を停止した場合,シートの連続搬送を継続できなくなることから,生産性が著しく低下する可能性がある。なお,以下では,加熱部材81の非通紙領域の表面温度を「端部温度」,加熱部材81の通紙領域の表面温度を「中央部温度」とする。
そこで,プリンタ100は,端部温度が,上限温度より小さい所定の高温閾値に達した場合,紙間を大きくする。本明細書でいう「紙間」とは,シートSの連続搬送の継続中におけるシートSの搬送方向について,先行するシートSの後端と後続するシートSの先端との距離を意味する。紙間は,通紙間隔の一例であり,高温閾値は,第1高温閾値の一例である。
紙間では,通過するシートSが無いため定着部8の熱が奪われ難い。このことから,ヒータ810による加熱が殆ど行われず,非通紙領域と通紙領域との温度差によって非通紙領域の熱が通紙領域に移動する。そのため,非通紙領域の温度が下がり,非通紙領域と通紙領域との温度差が小さくなる。つまり,プリンタ100は,紙間を大きくするほど,非通紙領域の過昇温を抑制できる。
プリンタ100は,設定した紙間でシートの連続搬送を行う。プリンタ100は,シートセンサ71からの出力信号に基づいて,シートSの有から無への変化を検知することにより,先行するシートSの後端がシートセンサ71の検知箇所を通過したタイミングを取得する。そして,プリンタ100は,その通過タイミングから,紙間に応じた時間である間隔時間が経過した後に,後続するシートSの搬送を開始する。具体的には,プリンタ100は,後続するシートSをピックアップローラ21によりピックし,シート搬送路13へ送り出す。つまり,プリンタ100は,間隔時間を切り換えることにより,紙間を切り換える。
そして,プリンタ100は,端部温度に関して複数の閾値を備え,端部温度と各閾値との比較結果に基づいて,紙間を切り換える。前述したように,プリンタ100は,例えば,端部温度が高温閾値より高くなった場合には,紙間を大きくすることにより,表面温度の低下を図る。その一方,紙間を大きくするほど,単位時間あたりのシートSの搬送枚数が低下し,生産性が低下してしまう。そこで,プリンタ100は,端部温度の閾値として,前述した高温閾値に加え,高温閾値よりも低い所定の低温閾値を備える。そして,プリンタ100は,紙間を大きくした後,端部温度が低温閾値より低くなった場合,紙間を小さくすることにより,生産性の向上を図る。低温閾値は,第1低温閾値の一例である。
ただし,単に,高温閾値を超えた場合に紙間を大きくし,低温閾値を下回った場合に紙間を小さくすることを繰り返すと,シートSの連続搬送中,紙間の変更を頻繁に繰り返すことになる可能性がある。本形態のプリンタ100は,紙間を大きくした後,端部温度が低温閾値より低くなった場合,紙間を,前回大きくした後の紙間より小さく,かつ,前回大きくする前の紙間より大きくする。
本形態のプリンタ100による,端部温度の変化と紙間の変化との関係の例を図4に示す。図4の例では,プリンタ100は,時刻taから紙間DaでのシートSの連続搬送を開始する。連続搬送の開始後,端部温度は上昇する。端部温度が高温閾値を超えた時刻tbにて,プリンタ100は,紙間を,紙間Daより大きい紙間Dbに変更し,シートSの連続搬送を継続する。紙間を大きくしたことで,時刻tb以後,端部温度は下降する。
端部温度が低温閾値より低くなった時刻tcにて,プリンタ100は,紙間を,紙間Dbより小さく,かつ,紙間Daより大きい,紙間Dcに変更し,シートSの連続搬送を継続する。紙間を小さくしたことで,時刻tc以後,端部温度は上昇する。ただし,今回の紙間Dcは,紙間Daよりも大きいことから,紙間Daによる連続搬送時に比較して,温度の上昇速度は遅い。図4の例では,時刻taと時刻tbとの間の端部温度の傾きに比較して,時刻tc以後の端部温度の傾きは小さい。
時刻tc以後もシートSの連続搬送を継続すると,時刻tdにて,端部温度が再び高温閾値を超える。そこで,プリンタ100は,時刻tdにて,紙間を,紙間Dcよりも大きい紙間Ddに変更して,シートSの連続搬送を継続する。時刻tc以後の端部温度の傾きが小さいことから,時刻tcから時刻tdまでの経過時間は,時刻taから時刻tbまでの経過時間に比較して長い。つまり,2回目以降に紙間を変更する頻度は,連続搬送の開始からの初期よりも低くなる。
なお,時刻tdにて変更される紙間Ddは,図4に示したように,紙間Dcよりも大きく,かつ,紙間Dbよりも小さい値とするとよい。このようにすれば,時刻td以後の端部温度の下降する傾きは,時刻tbと時刻tcとの間の傾きよりも小さく,端部温度が再び低温閾値より低くなるまでの時間が長い。従って,紙間を変更する頻度をさらに下げることができる。
続いて,上述したシートSの搬送制御を実現するシート搬送処理の手順について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。シート搬送処理は,シートSの搬送を行っていない状態で印刷ジョブに基づく印刷指示を受け付けたことを契機に,CPU31によって実行される。
シート搬送処理では,CPU31は,まず,定着部8の温度制御を開始する(S101)。CPU31は,センターサーミスタ811の出力信号に基づいて,中央部温度を取得し,中央部温度が所定の定着温度範囲内となるように,ヒータ810に供給される電力量を制御する。
また,CPU31は,紙間を所定の初期紙間として,シートSの連続搬送を開始する(S102)。初期紙間は,シートSの連続搬送の開始時に設定される紙間である。初期紙間は,プリンタ100にて適切に印刷可能であって,最大の生産性を実現できる間隔に設定されており,シートSの搬送速度等の印刷条件が変更しない限り最短の紙間である。そのため,CPU31は,紙間を初期紙間より小さい値に設定することはない。なお,プリンタ100は,印刷条件ごとの初期紙間をROM32またはNVRAM34に記憶している。初期紙間は,第1通紙間隔の一例である。
そして,CPU31は,短側限度を初期紙間に設定する(S103)。また,CPU31は,所定の長側限度を最長紙間に設定する(S104)。短側限度と長側限度とは,紙間の設定範囲を限定する仮の限度値である。なお,CPU31は,S102〜S104を,どの順で実行してもよいし,並行して同時に実行してもよい。
最長紙間は,端部温度を低下させるのに十分な長さであると想定できる最長の紙間である。CPU31は,紙間を最長紙間より大きい値に設定することはない。なお,最長紙間は,例えば,加熱部材81の周長に相当する紙間,シートSの長さの半分に相当する紙間である。最長紙間も,印刷条件ごとに異なっていてもよい。プリンタ100は,最長紙間をROM32またはNVRAM34に記憶している。
そして,CPU31は,受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を開始させる(S105)。印刷動作では,プリンタ100は,メインモータ26を駆動して各種の搬送部材を回転させ,シートSの搬送動作を行う。
さらに,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S106)。印刷中のシートSに後続するシートSの搬送を行わない場合,CPU31は,印刷動作を継続しないと判断する。例えば,受け付けた印刷ジョブが1枚のシートSへの印刷のみを行うジョブであって,次の印刷ジョブを受け付けていない場合には,後続するシートSの搬送を開始する必要はないので,印刷動作を継続しないと判断する。そして,印刷動作を継続しないと判断した場合(S106:NO),CPU31は,シート搬送処理を終了する。
一方,印刷動作を継続すると判断した場合(S106:YES),CPU31は,サイドサーミスタ812の出力信号に基づいて,端部温度を取得する(S107)。そして,CPU31は,取得した端部温度が,高温閾値よりも高温であるか否かを判断する(S108)。そして,端部温度が高温閾値よりも高温であると判断した場合(S108:YES),CPU31は,高温側紙間調整処理を実行する(S110)。
次に,高温側紙間調整処理の手順について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。高温側紙間調整処理では,CPU31は,まず,短側限度を,現時点でのシート搬送動作にて設定されている紙間とする(S201)。現時点の紙間でのシートSの連続搬送で端部温度が高温閾値よりも高温となったことから,現時点の紙間では端部温度はさらに上昇する可能性が高い。そこで,CPU31は,実行中のシートSの連続搬送では,紙間を現時点の紙間以下の値に設定しない。
そして,CPU31は,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更する(S202)。長側限度の初期値は,シート搬送処理のS104にて設定した最長紙間である。長側限度は,また,後述する低温側紙間調整処理の実行によって変更される。短側限度は,S201にて現時点の紙間に設定されているので,S202によって,紙間は,現時点の紙間よりも大きい値に変更される。
なお,S202では,CPU31は,紙間を,例えば,短側限度と長側限度との中間値に決定してもよいし,短側限度に所定値(例えば,2mm)を加算した値に決定してもよいし,各短側限度に対応付けて変更後の紙間を記憶する参照テーブルに基づいて決定してもよい。
短側限度と長側限度との中間値に設定する場合の,端部温度と紙間との変化の例を図7に示す。この図の例では,時刻t0に初期紙間にてシートSの連続搬送を開始した後,時刻t1にて端部温度が高温閾値よりも高温となった。これにより,CPU31は,高温側紙間調整処理の実行を開始し,S202にて,紙間を,初期紙間と最長紙間との中間値である紙間d1に変更する。紙間d1は,第2通紙間隔の一例である。
そして,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S203)。S203は,シート搬送処理のS106と同様の処理である。印刷動作を継続しないと判断した場合(S203:NO),CPU31は,高温側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。
印刷動作を継続すると判断した場合(S203:YES),CPU31は,S202にて設定した紙間にて各搬送部材にシートSの連続搬送を行わせ,継続して印刷動作を行わせる。そして,CPU31は,端部温度を取得する(S204)。S204は,シート搬送処理のS107と同様の処理である。CPU31は,S204の実行タイミングを,例えば,前回の温度取得から所定時間後,1枚のシートSへの印刷が終了した後,次のシートSの搬送開始後,としてもよい。
そして,CPU31は,端部温度が前述した上限温度よりも高温であるか否かを判断する(S205)。端部温度が上限温度よりも高温であると判断した場合には(S205:YES),CPU31は,エラーとして(S206),シート搬送処理に戻る。
端部温度が上限温度よりも高温ではないと判断した場合には(S205:NO),CPU31は,端部温度が高温閾値よりも高温であるか否かを判断する(S207)。そして,端部温度が,高温閾値よりも高温ではないと判断した場合(S207:NO),CPU31は,高温側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。図7の例で破線で示すように,時刻t1にて紙間d1に変更したことで,端部温度が下がれば,高温閾値よりも高温ではない状態となる。端部温度が高温閾値以下となった場合には,CPU31は,シート搬送処理に戻って,搬送部材に紙間d1でのシートSの連続搬送を行わせる。
一方,端部温度が,高温閾値よりも高温であると判断した場合(S207:YES),CPU31は,端部温度が,第2高温閾値よりも高温であるか否かを判断する(S208)。第2高温閾値は,高温閾値よりも高温で,かつ,前述した上限温度よりも低温の温度である。端部温度が第2高温閾値よりも高温ではないと判断した場合(S208:NO),CPU31は,S203に戻って,印刷を継続するか否かを判断する。
端部温度が第2高温閾値よりも高温であると判断した場合(S208:YES),CPU31は,S201に戻って,短側限度を現時点の紙間d1とする。紙間d1でのシートSの連続搬送中にもさらに端部温度が上昇したことから,図7中の紙間のグラフにて斜線で示すように,CPU31は,実行中のシートSの連続搬送中に,紙間を現時点の紙間d1以下の値に設定しない。
そして,CPU31は,S202に進み,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更して,搬送部材にシートSの連続搬送を行わせる。図7の例では,CPU31は,紙間を,紙間d1と最長紙間との中間値である紙間d2に変更する。紙間d2は,第5通紙間隔の一例である。端部温度が高温閾値を超え,紙間を初期紙間よりも大きい紙間d1としても,端部温度の上昇が止まらない場合は,より大きな紙間とし,温度上昇の抑制を優先する方が好ましい。
なお,紙間d2は,紙間d1より大きければよく,最長紙間としてもよい。あるいは,紙間を紙間d2としても,端部温度の上昇が止まらない場合には,紙間を最長紙間としてもよい。
そして,CPU31は,印刷を継続しないと判断した場合,または,端部温度が上限温度に達した場合,または,端部温度が高温閾値以下の温度となった場合,の何れかにて,高温側紙間調整処理を終了してシート搬送処理に戻る。これで,高温側紙間調整処理の説明を終了する。
図5のシート搬送処理の説明に戻る。S110の高温側紙間調整処理の後,CPU31は,高温側紙間調整処理のS206にてエラーとしたか否かを判断する(S111)。エラーとしたと判断した場合(S111:YES),CPU31は,シート搬送処理を終了し,シートSの連続搬送を停止させる。紙間を大きくしても端部温度の上昇が止まらず,端部温度が前述した上限温度に達してしまった場合には,シートSの連続搬送を停止させるほうがよい。
エラーではないと判断した場合(S111:NO),CPU31は,S106に戻って,印刷継続するか否かを判断する。なお,高温側紙間調整処理にて印刷動作を継続しないと判断した場合(S203にてNOと判断した),S106にて印刷動作を継続しないと判断することから,CPU31は,シート搬送処理を終了する。
S106にて印刷を継続すると判断した場合,S107にて端部温度を取得し,S108にて取得した端部温度が,高温閾値よりも高温か否かを判断する。そして,取得した端部温度が,高温閾値よりも高温ではないと判断した場合(S108:NO),CPU31は,紙間が初期紙間より大きい紙間であって,かつ,端部温度が低温閾値よりも低温であるか否かを判断する(S109)。低温閾値は,高温閾値より低い温度であり,シート搬送処理の開始時の端部温度よりも高い温度である。
そして,紙間が初期紙間より大きい紙間ではない,または,端部温度が低温閾値よりも低温ではないと判断した場合(S109:NO),CPU31は,S106に戻って,さらに印刷動作を継続するか否かを判断する。シートSの連続搬送中に,端部温度が,連続搬送を開始した時点の温度よりも低下する可能性は小さい。端部温度が低温閾値よりも低温であっても,紙間が初期紙間であれば,搬送開始から端部温度が高温閾値を超えたことがなく,紙間を変更する必要はない。また,紙間が初期紙間より大きい紙間であっても,端部温度が低温閾値よりも低温ではない場合には,紙間を変更する必要はない。端部温度が,高温閾値以下で低温閾値以上の温度範囲であれば,CPU31は,紙間を現時点での大きさに維持したままで,搬送部材にシートSの連続搬送を行わせ,印刷を継続させる。
一方,紙間が初期紙間より大きい紙間であって,かつ,端部温度が低温閾値よりも低温であると判断した場合(S109:YES),CPU31は,低温側紙間調整処理を実行する(S112)。
次に,低温側紙間調整処理の手順について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。低温側紙間調整処理では,CPU31は,まず,長側限度を,現時点でのシート搬送動作にて設定されている紙間とする(S301)。現時点の紙間でのシートSの連続搬送で端部温度が低温閾値よりも低温となったことから,現時点の紙間では端部温度はさらに下降する可能性が高い。つまり,紙間を現時点での紙間よりも少し小さくしてシートSの連続搬送を行っても,端部温度が上がりすぎる可能性は小さい。そこで,生産性を低下させすぎないために,CPU31は,実行中のシートSの連続搬送では,紙間を現時点の紙間以上の値に設定しない。
そして,CPU31は,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更する(S302)。長側限度は,S301にて現時点の紙間に設定されているので,S302によって,紙間は,現時点の紙間よりも小さい値に変更される。
なお,短側限度は,前述した高温側紙間調整処理にて変更されている場合もある。例えば,図7中に破線で示すように,端部温度が一旦高温閾値を超え,紙間が紙間d1に変更された後に,端部温度が低温閾値より低くなった場合には,短側限度は初期紙間である。一方,図7中に実線で示すように,端部温度が第2高温閾値よりも高温となった場合には,短側限度は,初期紙間より大きい値に変更されている。
高温側紙間調整処理にて紙間d1に変更された後,端部温度が低温閾値よりも低温となった場合の,端部温度と紙間との変化の例を図9に示す。この図の例では,プリンタ100は,時刻t0にシートの連続搬送を開始し,時刻t1に紙間を紙間d1に変更した。さらに,紙間d1にてシートSの連続搬送中に,時刻t3にて端部温度が低温閾値よりも低温となった。そこで,CPU31は,時刻t3にて,長側限度を紙間d1とし,紙間を,初期紙間と紙間d1との中間値である紙間d3に変更する。紙間d3は,第3通紙間隔の一例である。
そして,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S303)。S303は,高温側紙間調整処理のS203と同様の処理である。印刷動作を継続しないと判断した場合(S303:NO),CPU31は,低温側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。
印刷動作を継続すると判断した場合(S303:YES),CPU31は,シートSの連続搬送と印刷動作とを継続する。そして,CPU31は,端部温度を取得する(S304)。S304は,高温側紙間調整処理のS204と同様の処理である。
そして,CPU31は,端部温度が低温閾値よりも低温であるか否かを判断する(S305)。そして,端部温度が,低温閾値よりも低温ではないと判断した場合(S305:NO),CPU31は,低温側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。図9の例で破線で示すように,時刻t3にて紙間d3に変更したことで,端部温度が上がり,低温閾値よりも低温ではない状態となった場合には,CPU31は,シート搬送処理に戻って,搬送部材に紙間d3でのシートSの連続搬送を行わせる。
一方,端部温度が,低温閾値よりも低温であると判断した場合(S305:YES),CPU31は,端部温度が,第2低温閾値よりも低温であるか否かを判断する(S306)。第2低温閾値は,低温閾値よりも低温の温度である。端部温度が第2低温閾値よりも低温ではないと判断した場合(S306:NO),CPU31は,S303に戻って,印刷を継続するか否かを判断する。
端部温度が第2低温閾値よりも低温であると判断した場合(S306:YES),CPU31は,S301に戻って,長側限度を現時点の紙間d3とする。紙間d3でのシートSの連続搬送中にもさらに端部温度が下降したことから,図9中に斜線で示すように,CPU31は,実行中のシートSの連続搬送中に,紙間を現時点の紙間d3以上の値に設定しない。
そして,CPU31は,S202に進み,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更する。図9の例では,CPU31は,紙間を,初期紙間と紙間d3との中間値である紙間d4に変更する。紙間d4は,第7通紙間隔の一例である。紙間を,紙間d1より小さい紙間d3に変更しても端部温度がさらに低下する場合は,より小さな紙間d4とし,生産性を優先する方が好ましい。
そして,CPU31は,印刷を継続しないと判断した場合,または,端部温度が低温閾値以上の温度となったと判断した場合に,低温側紙間調整処理を終了してシート搬送処理に戻る。これで,低温側紙間調整処理の説明を終了する。
図5のシート搬送処理の説明に戻る。S112の低温側紙間調整処理の後,CPU31は,S106に戻って,印刷継続するか否かを判断する。なお,低温側紙間調整処理にて印刷動作を継続しないと判断した場合(S303にてNOと判断した),S106にて印刷動作を継続しないと判断することから,CPU31は,シート搬送処理を終了する。
つまり,CPU31は,高温側紙間調整処理や低温側紙間調整処理の実行中に,端部温度が,高温閾値以下で低温閾値以上となった場合,その時点で設定されている紙間にて,搬送部材にシートSの連続搬送を行わせる。一方,端部温度が,高温閾値より高くなった場合や低温閾値より低くなった場合には,CPU31は,紙間を変更して,搬送部材にシートSの連続搬送を行わせる。
例えば,図9中の破線で示したように,紙間を紙間d3に変更した後,端部温度が上昇し,時刻t5にて高温閾値より高くなった場合,CPU31は,紙間を,紙間d1と紙間d3との中間値の紙間d5に変更する。紙間d5は,第4通紙間隔の一例である。この場合,CPU31は,さらに,短側限度を紙間d3とする。
また,例えば,図7中に実線で示したように,紙間を紙間d2に変更した後,端部温度が下降し,時刻t7にて低温閾値より低くなった場合,CPU31は,紙間を,紙間d1と紙間d2との中間値の紙間d7に変更する。紙間d7は,第6通紙間隔の一例である。この場合,CPU31は,さらに,長側限度を紙間d2とする。
また,例えば,図9中に実線で示したように,端部温度が第2低温閾値を下回って,紙間を紙間d4に変更した後,端部温度が上昇し,時刻t6にて高温閾値より高くなった場合,CPU31は,紙間を,紙間d3と紙間d4との中間値の紙間d6に変更する。紙間d6は,第8通紙間隔の一例である。この場合,CPU31は,さらに,短側限度を紙間d4とする。
このように,プリンタ100は,シートの連続搬送中に,端部温度を取得し,取得した端部温度と,高温閾値または低温閾値とを比較した結果に基づいて,紙間を変更する。特に,一旦紙間を変更した後に逆側の閾値を超えた場合,プリンタ100は,元の紙間に戻すのではなく,元の紙間と変更後の紙間との間の大きさの紙間でシートSを搬送する。これにより,例えば,図9中の時刻t3から時刻t5までの時間,または,時刻t4から時刻t6までの時間は,いずれも,時刻t0から時刻t1までの時間よりも長い。つまり,紙間を変更する頻度は,次第に低下している。
以上,詳細に説明したように,第1の形態のプリンタ100によれば,加熱部材81の端部温度の上昇に応じて紙間を大きくすることで,端部の過昇温を抑制できる。また,その後,端部温度が低下した際,紙間を小さくするものの変更前よりも大きくすることで,端部温度の変化の程度を小さくする。つまり,端部温度を収束させるとともに,紙間を変更する頻度を低下させることができる。これにより,ユーザに悪印象を与え難いシートの搬送技術が実現される。
次に,本発明にかかる画像形成装置を具体化した第2の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,第1の形態と同様の構成のプリンタ100にて,第1の形態とは異なる制御を行うものである。第1の形態と同様の構成や処理については,第1の形態と同じ符号を付して,説明を省略する。
第2の形態のプリンタ100は,端部温度と中央部温度との差分を算出し,算出した差分と,所定の高温度差閾値または所定の低温度差閾値と,の比較を実行する点で第1の形態とは異なる。プリンタ100は,シートSの連続搬送を行うことで,端部温度が上昇するとともに,端部温度と中央部温度との差分も上昇する。つまり,プリンタ100は,差分と閾値との比較に基づいて紙間の変更を行っても,紙間を変更する頻度を低下させることができる。比較結果に基づいて紙間を変更する手順は,第1の形態と同様である。
なお,第2の形態のプリンタ100は,高温度差閾値と低温度差閾値とを,ROM32またはNVRAM34に記憶している。高温度差閾値は,第1温度差閾値の一例であり,低温度差閾値は,第2温度差閾値の一例である。また,第2の形態では,サイドサーミスタ812は,第1温度センサの一例であり,センターサーミスタ811は,第2温度センサの一例である。
第2の形態のシート搬送処理の手順について,図10のフローチャートを参照しつつ説明する。シート搬送処理は,シートSの搬送を行っていない状態で印刷ジョブに基づく印刷指示を受け付けたことを契機に,CPU31によって実行される。
シート搬送処理では,CPU31は,まず,定着部8の温度制御を開始する(S101)。また,CPU31は,紙間を所定の初期紙間に設定してシートSの連続搬送を開始する(S102)。そして,CPU31は,短側限度を初期紙間に設定する(S103)。また,CPU31は,所定の長側限度を最長紙間に設定する(S104)。そして,CPU31は,受け付けた印刷ジョブに基づく印刷動作を開始させる(S105)。
さらに,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S106)。そして,印刷動作を継続すると判断した場合(S106:YES),CPU31は,サイドサーミスタ812の出力信号に基づいて,端部温度を取得する(S107)。また,CPU31は,センターサーミスタ811の出力信号に基づいて,中央部温度を取得する(S401)。そして,CPU31は,中央部温度と端部温度との差分を算出する(S402)。
そして,CPU31は,算出した差分が高温度差閾値より大きいか否かを判断する(S403)。算出した差分が高温度差閾値より大きいと判断した場合(S403:YES),CPU31は,高温度差側紙間調整処理を実行する(S405)。なお,高温度差側紙間調整処理は,図6に示した高温側紙間調整処理のうち,端部温度に代えて差分を使用する処理である。高温度差側紙間調整処理の手順については後述する。
さらに,シート搬送処理では,第1の形態と同様に,エラーか否かを判断し(S111),エラーではないと判断した場合(S111:NO),S106に戻って,印刷継続するか否かを判断する。また,算出した差分が高温度差閾値より大きくないと判断した場合(S403:NO),CPU31は,紙間が初期紙間より大きい紙間であって,かつ,S402にて算出した差分が低温度差閾値よりも小さいか否かを判断する(S404)。低温度差閾値は,高温度差閾値より小さく,0より大きい。
紙間が初期紙間より大きい紙間ではないか,または,算出した差分が低温度差閾値より小さくないと判断した場合(S404:NO),CPU31は,S106に戻って,印刷を継続するか否かを判断する。一方,紙間が初期紙間より大きい紙間であって,かつ,算出した差分が低温度差閾値よりも小さいと判断した場合(S404:YES),CPU31は,低温度差側紙間調整処理を実行する(S406)。なお,低温度差側紙間調整処理は,図8に示した低温側紙間調整処理のうち,端部温度に代えて差分を使用する処理である。低温度差側紙間調整処理の手順については後述する。
CPU31は,印刷動作を継続しないと判断した場合(S106:NO),または,エラーとしたと判断した場合(S111:YES),シート搬送処理を終了し,シートSの連続搬送を停止させる。これで,第2の形態のシート搬送処理の説明を終了する。
次に,高温度差側紙間調整処理の手順について,図11のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,図6に示した高温側紙間調整処理と同様の手順については,図11にて同じ符号を付しており,詳細な説明は省略する。
高温度差側紙間調整処理では,まず,短側限度を,現時点でのシート搬送動作にて設定されている紙間とする(S201)。そして,CPU31は,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更する(S202)。さらに,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S203)。
そして,CPU31は,端部温度と中央部温度とを取得して差分を算出する(S501)。具体的には,図10に示したシート搬送処理のS107,S401,S402と同様に,端部温度と中央部温度とを取得し,取得した温度に基づいて差分を算出する。
また,CPU31は,端部温度が前述した上限温度よりも高温であるか否かを判断する(S205)。端部温度が上限温度よりも高温であると判断した場合には(S205:YES),CPU31は,エラーとして(S206),シート搬送処理に戻る。
端部温度が上限温度よりも高温ではないと判断した場合には(S205:NO),CPU31は,算出した差分が高温度差閾値よりも大きいか否かを判断する(S502)。差分が,高温度差閾値よりも大きくないと判断した場合(S502:NO),CPU31は,高温度差側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。
一方,差分が,高温度差閾値よりも大きいと判断した場合(S502:YES),CPU31は,差分が,第2高温度差閾値よりも大きいか否かを判断する(S503)。第2高温度差閾値は,高温度差閾値よりも大きい値である。差分が第2高温度差閾値よりも大きくないと判断した場合(S503:NO),CPU31は,S203に戻って,印刷を継続するか否かを判断する。
差分が第2高温度差閾値よりも大きいと判断した場合(S503:YES),CPU31は,S201に戻って,短側限度を現時点の紙間d1とし,S202に進んで紙間を変更する。そして,CPU31は,印刷を継続しないと判断した場合,または,端部温度が上限温度に達した場合,または,差分が高温度差閾値以下となった場合,の何れかにて,高温度差側紙間調整処理を終了してシート搬送処理に戻る。これで,高温度差側紙間調整処理の説明を終了する。
次に,低温度差側紙間調整処理の手順について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,図8に示した低温側紙間調整処理と同様の手順については,図12にて同じ符号を付しており,詳細な説明は省略する。
低温度差側紙間調整処理では,まず,長側限度を,現時点でのシート搬送動作にて設定されている紙間とする(S301)。そして,CPU31は,紙間を,短側限度より大きく長側限度より小さい値に変更する(S302)。さらに,CPU31は,印刷動作を継続するか否かを判断する(S303)。
そして,CPU31は,端部温度と中央部温度とを取得して差分を算出する(S601)。具体的には,図10に示したシート搬送処理のS107,S401,S402と同様に,端部温度と中央部温度とを取得し,取得した温度に基づいて差分を算出する。
そして,CPU31は,算出した差分が低温度差閾値よりも小さいか否かを判断する(S602)。差分が,低温度差閾値よりも小さくないと判断した場合(S602:NO),CPU31は,低温度差側紙間調整処理を終了して,シート搬送処理に戻る。
一方,差分が,低温度差閾値よりも小さいと判断した場合(S602:YES),CPU31は,差分が,第2低温度差閾値よりも小さいか否かを判断する(S603)。第2低温度差閾値は,低温度差閾値よりも小さい値である。差分が第2低温度差閾値よりも小さくないと判断した場合(S603:NO),CPU31は,S303に戻って,印刷を継続するか否かを判断する。
差分が第2低温度差閾値よりも小さいと判断した場合(S603:YES),CPU31は,S301に戻って,長側限度を現時点の紙間d3とし,S302に進んで紙間を変更する。そして,CPU31は,印刷を継続しないと判断した場合,または,差分が低温度差閾値以上となった場合,の何れかにて,低温度差側紙間調整処理を終了してシート搬送処理に戻る。これで,低温度差側紙間調整処理の説明を終了する。
つまり,第2の形態のプリンタ100は,シートの連続搬送中に,端部温度と中央部温度とを取得して差分を算出し,算出した差分と,高温度差閾値または低温度差閾値とを比較した結果に基づいて,紙間を変更する。そして,第1の形態と同様に,一旦紙間を変更した後に逆側の閾値を超えた場合,プリンタ100は,元の紙間に戻すのではなく,元の紙間と変更後の紙間との間の大きさの紙間でシートSを搬送する。
以上,詳細に説明したように,第2の形態のプリンタ100によっても,第1の形態と同様に,端部温度を収束させるとともに,紙間を変更する頻度を低下させることができる。これにより,ユーザに悪印象を与え難いシートの搬送技術が実現される。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタに限らず,複写機,複合機,FAX装置等,電子写真方式での画像形成機能を備えるものであれば適用可能である。
また,例えば,プリンタ100は,定着部8を通過する際の紙間を調整できればよく,シートセンサ71以外のセンサを用いて紙間を切り換えてもよい。例えば,レジストローラ22にてシートSの搬送タイミングを変更できる場合には,プリンタ100は,レジストローラ22の上流側または下流側のシートセンサを使用して,紙間を切り換えてもよい。あるいは,シートSの定着部8に進入するタイミングを調整できる装置であれば,定着部8の上流側または下流側のシートセンサを使用して,紙間を切り換えてもよい。
また,例えば,紙間d1よりも小さく初期紙間よりも大きい紙間d3にて連続搬送を継続し,端部温度が再び高温閾値を超えた場合(図9中の破線),紙間を紙間d1に戻してもよい。ただし,紙間d1よりも小さく紙間d3よりも大きい紙間d5とすることで,端部温度の上昇速度を低下させることができ,紙間の変更頻度をより抑制できる。
また,例えば,第2高温閾値や第2低温閾値は,なくてもよい。例えば,初回に高温閾値を超えた後の紙間d1を十分に大きくすれば,端部温度が第2高温閾値に達することを抑制できることから,第2高温閾値をなくすことができ,処理が簡易となる。一方,第2高温閾値を備えれば,紙間d1をあまり大きくしなくてもよいことから,生産性が高い。また,紙間d3を初期紙間より大きい範囲内で小さめに設定すれば,端部温度が第2低温閾値より低くなる可能性は小さいことから,第2低温閾値をなくすことができ,処理が簡易となる。ただし,第2低温閾値を備えれば,紙間d3を大きめにできることから,紙間の変更頻度を抑制できる。
また,例えば,第2高温閾値や第2低温閾値に加えて,さらに多くの閾値を備えてもよい。多くの閾値を備えることで,紙間の変更時の変化幅を小さく設定できる。そして,端部温度を収束させることができるので,紙間の変更頻度を抑制できる。
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。