JP4910246B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の摩擦係合要素の係合状態を制御して変速段を自動的に切り換える車両用自動変速機の変速制御装置に係り、特に、変速時のスリップ量を制御する変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機の変速においては、係合側摩擦係合要素の伝達トルクの上昇に合わせて解放側摩擦係合要素の受け持つ伝達トルクを減少する必要がある。ワンウェイクラッチは、この解放側摩擦係合要素の受け持つ伝達トルクを減少するために採用される機構である。一方、近年においては、ワンウェイクラッチを廃止するとともに、同ワンウェイクラッチの機能を摩擦係合要素への油圧制御によって達成する「クラッチ・ツゥ・クラッチ(Clutch to Clutch)」変速制御が採用されて来ている。
【0003】
かかるクラッチ・ツゥ・クラッチ変速制御においては、油圧制御が適切に行われないと、自動変速機のアウトプットトルクが急変して変速フィーリングの悪化を招く。例えば、係合側摩擦係合要素の伝達トルクの上昇に対して解放側摩擦係合要素の伝達トルクの減少が遅れると、所謂インターロック状態が生じてアウトプットトルクが急激に減少する。他方、係合側摩擦係合要素の伝達トルクの上昇に対して解放側摩擦係合要素の伝達トルクの減少が早過ぎると、タービン回転速度が上昇し(タービン回転数が吹き上がり)、このためにアウトプットトルクが急激に減少する。
【0004】
このようなクラッチ・ツゥ・クラッチ変速制御の課題に対処するため、実際のスリップ量を検出し、同検出されたスリップ量が目標値と等しくなるように解放側摩擦係合要素の伝達トルクを制御するスリップ量のフィードバック制御が提案されている。このフィードバック制御によれば、係合側摩擦係合要素の伝達トルクを徐々に上昇させてスリップ量を減少させると、スリップ量を目標値に維持しようとするために解放側摩擦係合要素の伝達トルクが自動的に減少され、この結果、クラッチ・ツゥ・クラッチ変速が容易に達成され得る。また、係るフィードバック制御によれば、係合側摩擦係合要素の伝達トルクの上昇タイミングが油温や経時変化等により変動した場合であっても、同係合側摩擦係合要素の伝達トルクが上昇するまでの間はスリップ量が目標値に維持されるため、上記インターロックやタービン回転速度の上昇が発生しない円滑な変速を行うことができる。
【0005】
図18はこのようなスリップ量フィードバック制御システムの概念を示すブロック図であり、このシステムは、自動変速機100の入力軸回転速度であるタービン回転速度ntから、同自動変速機100の出力軸回転速度nоに変速前のギヤ比G1を乗じた値nо・G1を減じることでスリップ量sp(sp=nt−nо・G1)を求めるとともに、同スリップ量spと目標値rの差Δspを求め、フィードバックコントローラFBCによって同差Δspを小さくするように同自動変速機100の解放側摩擦係合要素の伝達トルクを制御する構成を備えている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のフィードバック制御システムによると、変速時にスリップ量が発散し、大きな変速ショックを招く場合があることが判明した。これは、図19に示したように、解放側摩擦係合要素の伝達トルクを減少させることによりスリップが時刻tsにて発生したとき、出力軸回転速度nоに振動が発生し、実際のタービン回転速度は振動していないにも関わらず、上記求められるスリップ量spに振動が発生することに起因する。この出力軸回転速度nоの振動は、スリップの発生に伴ってタービン回転速度(自動変速機の入力軸回転速度)が上昇すると同時に自動変速機による伝達トルクが減少するため、プロペラシャフト等の動力伝達系に加わっていたトルクが急減して同プロペラシャフト等及びタイヤ等に捩れが発生することに起因するものと推定される。また、同振動は、出力軸回転速度センサがエンジンマウントにより支持されたエンジンと一体的な自動変速機ケースに固定されている場合、前記伝達トルクの急変によりエンジンが振動することに伴って同センサが振動することにも依ると考えられる。
【0007】
そして、上記従来のスリップ量フィードバック制御システムは、求められたスリップ量spの振動に応答して解放側摩擦係合要素の伝達トルクを変更するため、この伝達トルクの変更がタービン回転速度ntに振動を誘発し、更にこのタービン回転速度ntの振動が出力軸回転速度nоを一層振動させるので、最終的にはスリップ量の振動が発散するのである。
【0008】
【発明の概要】
本発明の目的は、上記スリップ量の振動の発散を招くことのない変速制御装置を提供することにあり、その特徴は、複数の摩擦係合要素の各々を係合状態又は解放状態に維持することにより所定の変速段を達成し、一の変速段から他の変速段への変速にあたり同変速前に係合状態にあり同変速後に解放状態とされる解放側摩擦係合要素による伝達トルクを減少させることによりスリップを発生させるとともに、同変速前に解放状態にあり同変速後に係合状態とされる係合側摩擦係合要素による伝達トルクを増大させることにより同変速を行う自動変速機の変速制御装置が、前記自動変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、前記自動変速機の出力軸回転速度を検出する出力軸回転速度検出手段と、前記検出された出力軸回転速度に対し所定の周波数成分を除去するフィルタ処理を施してフィルタ後出力軸回転速度を得る出力軸回転速度フィルタ手段と、前記検出された入力軸回転速度と前記フィルタ後出力軸回転速度とに基いてスリップ量を求めるスリップ量算出手段と、前記求められたスリップ量と目標スリップ量とが等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクを制御するスリップ量フィードバック制御手段とを含んだことにある。
【0009】
これによれば、検出された出力軸回転速度がフィルタ処理されることにより、同出力軸回転速度から所定の周波数成分が除去されたフィルタ後出力軸回転速度が求められる。従って、このフィルタ後出力軸回転速度は、前記所定の周波数成分を適切に選択することで、スリップ開始時において発生するプロペラシャフトの捩り等に起因する振動を実質的に含まない値となり得る。この結果、検出された入力軸回転速度と前記フィルタ後出力軸回転速度とに基いて求められるスリップ量にも前記スリップ開始時の出力軸回転速度の振動が重畳しないので、スリップ量フィードバック制御手段によって前記求められたスリップ量と目標スリップ量とが等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクが制御されるとき、スリップ量が発散せず、円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が達成され得る。
【0010】
本発明の他の特徴は、上記変速制御装置と同様に、スリップを発生させながら変速を行う自動変速機の変速制御装置であって、前記自動変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、前記検出された入力軸回転速度に対し第1周波数以上の成分を除去するフィルタ処理を施してフィルタ後入力軸回転速度を得る入力軸回転速度フィルタ手段と、前記自動変速機の出力軸回転速度を検出する出力軸回転速度検出手段と、前記検出された出力軸回転速度に対し少なくとも前記第1周波数よりも小さな周波数成分を除去するフィルタ処理を施してフィルタ後出力軸回転速度を得る出力軸回転速度フィルタ手段と、前記フィルタ後入力軸回転速度と前記フィルタ後出力軸回転速度とに基いてスリップ量を求めるスリップ量算出手段と、前記求められたスリップ量が目標スリップ量と等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクを制御するスリップ量フィードバック制御手段とを含んだことにある。
【0011】
これによれば、検出された入力軸回転速度がフィルタ処理され、同入力軸回転速度から第1周波数以上の成分が除去されたフィルタ後入力軸回転速度が求められる。また、検出された出力軸回転速度がフィルタ処理され、同出力軸回転速度から前記第1周波数よりも小さな周波数成分が少なくとも除去されたフィルタ後出力軸回転速度が求められる。これにより、前記フィルタ後入力軸回転速度は、高周波ノイズ成分が除去された安定した値となり、前記フィルタ後出力軸回転速度は、スリップ開始時において発生するプロペラシャフトの捩り等に起因する相対的に低周波数の振動を含んでいない安定した値となり得る。従って、フィルタ後入力軸回転速度とフィルタ後出力軸回転速度とに基いて求められるスリップ量には、スリップの開始に伴って出力軸回転速度に重畳する振動が含まれておらず、また、入力軸回転速度に重畳するセンサノイズ等の高周波数の振動も含まれていない。この結果、前記求められたスリップ量と目標スリップ量とが等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクが制御されるとき、スリップ量が発散しないので、円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が達成され得る。
【0012】
これらの変速制御装置において、前記スリップ量算出手段は、前記フィルタ後出力軸回転速度に所定のオフセット量を加えた値に基いて前記スリップ量を求めるように構成されている。
【0013】
フィルタ後出力軸回転速度の位相は、前記出力軸回転速度フィルタ手段のフィルタ処理により、理想的に振動成分のみを除去した出力軸回転速度に対して定常的に遅れている。換言すると、フィルタ後出力軸回転速度は、理想的に振動成分のみを除去した出力軸回転速度に対して所定量だけ小さい値となっている。従って、フィルタ後出力軸回転速度に所定のオフセット量を加えることで、前記位相遅れを補償することができ、その結果、真のスリップ量を精度良く表す値に基くスリップ量のフィードバック制御が達成されるので、円滑な変速が行われ得る。
【0014】
更に、前記オフセット量は、前記検出された入力軸回転速度に応じた値と、前記検出された出力軸回転速度に応じた値に前記自動変速機の前記変速前のギヤ比を乗じた値との差が閾値を超えた時点における出力軸回転速度に応じた値と前記フィルタ後出力軸回転速度の差に基いて設定されることが好適である。
【0015】
この場合「入力軸回転速度に応じた値」は、検出された入力軸回転速度そのものの値でもよく、入力軸回転速度から前記出力軸回転速度フィルタ手段が除去する周波数成分のうちの最小の周波数より大きい周波数(高周波数)帯域の周波数成分(高周波ノイズ)をフィルタにより除去した値(例えば、前記フィルタ後入力軸回転速度)であってもよい。同様に、前記「出力軸回転速度に応じた値」は、検出された出力軸回転速度そのものの値でもよく、出力軸回転速度から前記出力軸回転速度フィルタ手段が除去する周波数成分のうち最小の周波数より大きい周波数(高周波数)帯域の周波数成分(高周波ノイズ)をフィルタにより除去した値であってもよい。
【0016】
前記出力軸回転速度フィルタ手段による位相遅れ分は、入力軸回転速度の変化速度等に応じて変動し得るので、上記のようにオフセット量を決定することにより同オフセット量を変速に応じた適値とすることができ、その結果、スリップ量をより正確に求めることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両用自動変速機の変速制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る自動変速機の変速制御装置を車両に搭載した例を概略的に示している。この車両は、原動機としてのエンジン10と、ロックアップクラッチ付流体式トルクコンバータ20と、自動変速機30と、トルクコンバータ20及び自動変速機30に供給される油の圧力(油圧)を制御するための油圧制御回路40と、油圧制御回路40に制御指示信号を与える電気制御装置50とを含んでいて、図示しないアクセルペダルの操作により増減されるエンジン10の発生トルクを、ロックアップ付トルクコンバータ20、自動変速機30、及び図示しない差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)などを介して駆動輪へ伝達するようになっている。
【0018】
ロックアップ付トルクコンバータ20は、図1及び図2に示したように、エンジン10が発生する動力を流体(作動油)を介して自動変速機30に伝達する流体式伝達機構21と、この流体式伝達機構21に対して並列に連結されたロックアップクラッチ機構22とからなっている。
【0019】
流体式伝達機構21は、エンジン10のクランク軸と一体的に回転するトルクコンバータ入力軸12に連結されたポンプ羽根車21aと、同ポンプ羽根車21aが発生する作動油の流れにより回転されるとともに自動変速機30の入力軸31に連結されたタービン羽根車21bと、ステータ羽根車21c(図1においては省略)とを含んでいる。
【0020】
ロックアップクラッチ機構22は、図2に示したように、ロックアップクラッチ22aを含んで構成されていて、接続された油圧制御回路40による作動油の給排により、トルクコンバータ入力軸12と自動変速機30の入力軸31とを同ロックアップクラッチ22aにより機械的に結合してこれらを一体的に回転させる係合状態と、前記ロックアップクラッチ22aによる機械的な結合を解除する非係合状態とを達成し得るようになっている。
【0021】
自動変速機30は、前進6段後進1段の変速段を達成するものであって、リングギヤR1を有する第1列のシングルピニオンプラネタリギヤG1と、第2列のシングルピニオンプラネタリギヤG2、及び第3列のシングルピニオンプラネタリギヤG3を備えるとともに、摩擦クラッチC1、C2、及びC3と、摩擦ブレーキB1、B2とを摩擦係合要素として備えている。この自動変速機30における各摩擦係合要素の係合・解放(非係合)状態と達成される変速段との関係は下記表1に示す通りである。なお、表1において○は係合状態を、空欄は解放状態を示している。
【0022】
【表1】
Figure 0004910246
【0023】
油圧制御回路40は、図1に示したように、電気制御装置50からの制御指示信号により制御される3個のオン・オフソレノイドバルブ41〜43及び3個のリニアソレノイドバルブ44〜46を含んでいて、前記オン・オフソレノイドバルブ41〜43の作動の組み合わせに基づいてロックアップクラッチ機構22及び自動変速機30の摩擦係合要素に対する油の給排を制御するとともに、前記リニアソレノイドバルブ44〜46を駆動して同給排される油の圧力(油圧)をライン圧以下の範囲内で調整し得るようになっている。
【0024】
電気制御装置50は、何れも図示を省略したCPU、メモリ(ROM,RAM)、及びインタフェースなどから成るマイクロコンピュータであって、スロットル開度センサ61、エンジン回転速度センサ62、タービン回転速度センサ63、及び出力軸回転速度センサ64と接続されていて、これらのセンサ61〜64が発生する信号を入力するようになっている。
【0025】
スロットル開度センサ61は、エンジン10の吸気通路に設けられ図示しないアクセルペダルの操作に応じて開閉されるスロットルバルブ11の開度(以下、「スロットル開度」という。)を検出し、同スロットル開度thを表す信号を発生するようになっている。エンジン回転速度センサ62は、エンジン10の回転速度を検出し、エンジン回転速度neを表す信号を発生するようになっている。タービン回転速度センサ63は、自動変速機の入力軸31の回転速度を検出し、タービン回転速度(自動変速機30の入力軸回転速度)ntを表す信号を発生するようになっている。出力軸回転速度センサ64は、図示しないエンジンマウントにより支持されたエンジン10と一体的な自動変速機ケース(図示省略)に固定されていて、自動変速機の出力軸32の回転速度(アウトプット回転速度)を検出し、同自動変速機30の出力軸回転速度(即ち、車速に比例する値)nоを表す信号を発生するようになっている。
【0026】
上記電気制御装置50は、出力軸回転速度nоとスロットル開度thとで構成される変速マップ及びロックアップクラッチ作動マップをメモリ内に記憶していて、検出された出力軸回転速度nоと検出されたスロットル開度thにより定まる点が変速マップに示された変速線を横切るとき、及び、前記点が前記ロックアップクラッチ作動マップのロックアップ領域内にあるか否かに応じ、油圧制御回路40のオン・オフソレノイドバルブ41〜43及びリニアソレノイドバルブ44〜46を制御して、上記表1に示したように摩擦係合要素の係合・解放状態を変更するとともに、ロックアップクラッチ22aの係合・非係合状態を変更するようになっている。
【0027】
次に、上記のように構成された自動変速機の変速制御装置が、自動変速機30の変速段を2速から3速へ変速する際に実行する「クラッチ・ツゥ・クラッチ制御」について説明する。
【0028】
(概要)
先ず、図3を参照しながら、2速から3速への変速時における油圧制御の概要について説明する。時刻t1において、出力軸回転速度nоとスロットル開度thとで定まる点が2速から3速へのシフトアップ変速線を横切ると、電気制御装置50は解放側摩擦係合要素(ブレーキB1)に対する油圧(以下、「解放側油圧」と云う。)をライン圧PLから急速に減少させる解放初期ランプ制御を行う。これにより、時刻t3にて解放側摩擦係合要素による伝達トルクが減少し、スリップが発生する。次いで、電気制御装置50は後述するスリップ量のフィードバック制御を行う。この結果、時刻t3〜t4においてスリップ量は滑らかに上昇する。
【0029】
一方、電気制御装置50は、時刻t1から所定時間だけ係合側摩擦係合要素(クラッチC3)に対する油圧(以下、「係合側油圧」と云う。)を急激に上昇させるプリチャージ制御を行い、同プリチャージ制御を時刻t2で終了するとスリップが開始するまで係合側油圧を一定値に維持する係合待機圧制御を行う。そして、時刻t3においてスリップが開始すると、時間経過とともに係合側油圧を徐々に上昇させて同係合側摩擦係合要素による伝達トルクを増大させるランプ昇圧制御を開始する。これにより、時刻t4において係合側摩擦係合要素がトルクの伝達を開始し、スリップ量が減少し始める。このとき、電気制御装置50は上記スリップ量のフィードバック制御によりスリップ量を目標値に維持しようとするので、同スリップ量を増大させようとして解放側油圧(解放側摩擦係合要素の伝達トルク)を減少させる。
【0030】
この状態が継続し時刻t5においてスリップ量が消失すると、電気制御装置50は解放側油圧を時間の経過とともに減少させるランプ解放制御を行うともに、係合側油圧をタービン回転速度ntの変化率Δntが目標回転変化率ΔMNTとなるように制御する。そして、時刻t6にてタービン回転速度ntが変速後(この場合は3速)のギヤ比と出力軸回転速度nоとの積に一致すると係合側油圧をライン圧PLまで増大させるとともに、解放側油圧を「0」とする。以上によって変速が終了する。
【0031】
(スリップ量フィードバック制御の原理)
次に、上述した時刻t3〜t5におけるスリップ量フィードバック制御の原理について説明する。先ず、図4に示した規範モデルM(s)を考え、この規範モデルM(s)が、図5に示したように、ステップ状に変化する目標スリップ量rslipに対してオーバーシュートすることなく時間trを経て同目標スリップ量rslipへと移行する応答(挙動)を示すように二項係数tr1を決定し、同規範モデルM(s)の伝達関数を「二項モデル」を用いて決定する。この結果、規範モデルM(s)は、下記数1により表される。ここで、sは微分演算子である。
【0032】
【数1】
M(s)=rslip/(tr1・s+1)2
【0033】
次に、図6に示したように、制御対象P(s)をフィードバックコントローラFBCであるCEMM(s)を用いて制御する閉ループ系を考える。そして、この閉ループ系へ入力として上記目標スリップ量rslipを与えた場合の出力が上記規範モデルM(s)の出力と一致するように、完全モデルマッチング法を用いてコントローラCEMM(s)を求める。具体的には、図4及び図6から下記数2が得られるので、同数2を変形してコントローラCEMM(s)を求めるための下記数3を得て、この数3と上記数1とからコントローラCEMM(s)を決定する。
【0034】
【数2】
M(s)=CEMM(s)・P(s)/{1+CEMM(s)・P(s)}
【0035】
【数3】
EMM(s)=M(s)/{1−M(s)}・P(s)
【0036】
上記の制御対象P(s)は、入力を解放側油圧(ブレーキB1の係合圧)とするとともに出力を実際のスリップ量(実スリップ量)spとして、システム同定の手法を用いて決定したものであり、微分演算子sの多項式で表される。従って、コントローラCEMM(s)も微分演算子sの多項式で表される。このようにして得られたコントローラCEMM(s)を用いて解放側油圧を制御すれば、実スリップ量spは規範モデルの出力のように滑らかに上昇し、従って、自動変速機30のアウトプットトルクの変動が抑制される。
【0037】
また、本実施形態においては、図7に示したように、目標スリップ量(x(t)=rslip)に対する規範モデルM(s)の出力ms(t)と、上記のようにして求めたコントローラCEMM(s)を含む閉ループ系の出力、即ち実スリップ量sp(t)との差eg(t)(モデル誤差量)を求め、これにゲインTを乗じて制御対象P(s)の入力に戻す。即ち、モデル誤差量eg(t)をフィードバックする。
【0038】
これにより、クラッチストロークや油圧制御バルブ特性等のばらつき、油温度変化や油の劣化による油特性の変動、及び摩擦係合要素の摩耗等に起因する外乱(即ち、制御対象P(s)のずれ)の影響を受け難い変速制御を実現することが可能となる。なお、図7に示したシステムでは、破線にて囲んだブロックがフィードバックコントローラFBCを形成している。
【0039】
(実際のスリップ量の求め方)
次に、上記スリップ量のフィードバック制御において使用される実スリップ量sp(t)の求め方について、図8を参照しながら説明する。図8は上記スリップ量のフィードバック制御を行うシステムの概念を示すブロック図であり、このシステムは、自動変速機30の出力軸回転速度nоをローパスフィルタLPFにてフィルタ処理し、同出力軸回転速度nоから所定の周波数(例えば、1Hz)より大きい周波数成分を除去してフィルタ後出力軸回転速度noflt求める。これにより、フィルタ後出力軸回転速度nofltは、スリップの発生に伴って生じるプロペラシャフトやタイヤ等の駆動系部材の捩りに起因する振動が出力軸回転速度nоから除去された値となる。
【0040】
また、このシステムは、オフセット量決定部OFSにより、上記スリップ量のフィードバック制御を開始する時点(入力軸回転速度nt(入力軸回転速度に実質的に応じた値、例えば入力軸回転速度ntを高周波成分除去用のローパスフィルタでフィルタ処理した値でも良い。)と、出力軸回転速度nо(出力軸回転速度に実質的に応じた値、例えば出力軸回転速度nоを高周波成分除去用のローパスフィルタでフィルタ処理した値でも良い。)に変速前のギヤ比を乗じた値、との差が閾値γを超えた時点)における出力軸回転速度nо(又は、出力軸回転速度nоに応じた値、例えば、同出力軸回転速度nоを高周波成分除去用のローパスフィルタでフィルタ処理した値)と上記フィルタ後出力軸回転速度nofltとの差をオフセット量nosa(=nо−noflt)として設定する。そして、定数乗算部APにて、フィルタ後出力軸回転速度nofltとオフセット量nosaの和に自動変速機30の変速前のギヤ比G1を乗じ、これにより得られる積をタービン回転速度ntから減じることでスリップ量sp(t)を求める。即ち、本実施形態においては、スリップ量のフィードバック制御で使用されるスリップ量sp(t)を下記数4に従って求める。フィードバックコントローラFBCは、このように求められたスリップ量sp(t)が目標値(目標スリップ量)rと等しくなるように、自動変速機30の解放側摩擦係合要素の伝達トルク(同摩擦係合要素への供給油圧)を制御する。
【0041】
【数4】
sp(t)=nt−(noflt+nosa)・G1
【0042】
上述したように、数4で使用するフィルタ後出力軸回転速度nofltは、センサノイズ等の高周波成分のみでなく、sスリップを発生させることに伴って生じるプロペラシャフト等の振動成分がローパスフィルタにより除去された値となっている。更に、ローパスフィルタLPFによって生じる出力軸回転速度nоとフィルタ後出力軸回転速度nofltとの位相差は、オフセット量nosaによって補償される。従って、求められるスリップ量sp(t)の値は、安定した値であって真のスリップ量を精度良く表す値となっているので、これを用いたフィードバック制御により更なる振動の励起がもたらされることはなく、円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速を達成することができる。
【0043】
(具体的作動)
次に、上記自動変速機の変速制御装置の2速から3速への変速時における具体的な作動について説明する。電気制御装置50のCPUは、図9にフローチャートにて示したフィルタリングルーチンを所定時間(例えば5msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ900から処理を開始してステップ905に進み、同ステップ905にてその時点の出力軸回転速度nоを今回の出力軸回転速度nо(k)として設定する。
【0044】
次いで、CPUはステップ910に進み、同ステップ910にて下記数5に従って出力軸回転速度nоをフィルタ処理し、ステップ995にて本ルーチンを一旦終了する。上記ステップ910のフィルタ処理は、カットオフ周波数が所定の低周波数(ここでは、1Hzであり便宜上「第2周波数」と呼ぶ。)であるローパスフィルタ処理である。換言すると、ステップ910の処理によって出力軸回転速度nоから前記所定の周波数(第2周波数)より大きい周波数成分が除去される。前記所定の周波数(第2周波数)は、スリップを発生させた直後において出力軸回転速度nоに重畳する駆動系捩り等に基く振動の周波数より若干だけ小さい値又は同等の値に選ばれている。従って、フィルタ後出力軸回転速度nofltは、出力軸回転速度nоから駆動系捩り等に基く振動が除去された値となる。なお、数5における変数kは、今回の演算により得られた値であることを意味し、変数k−1は前回の本ルーチンの処理により得られた値であることを意味している。また、数5において、n及びmは正の整数である。
【0045】
【数5】
Figure 0004910246
【0046】
一方、CPUは図10にフローチャートにて示した解放側油圧制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで2速から3速のシフトアップタイミングか否かを、出力軸回転速度nоとスロットル開度thにより定まる点が変速マップに示された2速から3速へのシフトアップ変速線を横切ったか否かに基いて判定する。このとき、2速から3速のシフトアップタイミングでなければ、CPUはステップ1005にて「No」と判定してステップ1095に進み本ルーチンを一旦終了する。
【0047】
一方、現時点が2速から3速のシフトアップタイミングであると、CPUはステップ1005にて「Yes」と判定してステップ1010〜ステップ1065に進み、解放初期ランプ制御を開始する。具体的に述べると、CPUはステップ1010にて解放側油圧の指示油圧(解放側油圧)PDをライン圧PLから所定圧SKを減じた値に設定する。これにより、リニアソレノイドバルブ44が駆動されて解放側油圧が所定圧SKだけ減少される(図3の時刻t1参照)。
【0048】
次いで、CPUはステップ1015に進んでタイマT1をリセットしてスタートし(計時を開始し)、ステップ1020にてスリップ量spnamaが閾値γ(例えば、15rpm程度の微小な値)より大きいか(即ち、スリップが開始したか否か)を判定する。ここで、スリップ量spnamaは、その時点のタービン回転速度nt(自動変速機30の入力軸回転速度)、出力軸回転速度nо、及び変速前のギヤ比G1(ここでは、2速のギヤ比)を用いて下記数6に基いて求められる。即ち、このスリップ量spnamaは、出力軸回転速度nоそのものに基いて求められる値である。
【0049】
【数6】
spnama=nt−nо・G1
【0050】
この段階でスリップが発生していると、CPUはステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進み、スリップ量のフィードバック制御を実行する。また、この段階でスリップが発生していなければ、CPUはステップ1020にて「No」と判定してステップ1030に進み、タイマT1の値が所定値TAより大きいか否かを判定する。現時点ではタイマT1は計時を開始した直後であるから、同タイマT1の値は所定値TAより小さい。従って、CPUはステップ1030にて「No」と判定してステップ1035に進み、同ステップ1035にて解放側指示油圧PDの値を所定値αだけ減少させ、続くステップ1040にて先のステップ1035の実行から僅かな時間Δtが経過するのを待ってステップ1020に戻る。このようにして、CPUは時間Δt毎に所定値αだけ解放側指示油圧PDを減少させるとともに、ステップ1020にてスリップの開始をモニタする。従って、タイマT1の値が所定値TAより大きくなる前にスリップが発生すると、CPUはステップ1020にて「Yes」と判定してステップ1025に進む(図3の時刻t3参照)。
【0051】
一方、タイマT1の値が所定値TAより大きくなる前にスリップが発生しなければ、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1045に進み、同ステップ1045にてタイマT1を再びリセットしてスタートする。次いで、CPUはステップ1050に進んで解放側指示油圧PDを所定値αより小さい所定値βだけ減少させ、続くステップ1055にて先のステップ1050の実行から僅かな時間Δtが経過するのを待ってステップ1060に進み、同ステップ1060にてスリップ量spnamaが閾値γより大きいかを判定する。
【0052】
この段階でスリップが発生していれば、CPUはステップ1060にて「Yes」と判定してステップ1025に進む。一方、スリップが発生していなければ、CPUはステップ1060にて「No」と判定してステップ1065に進み、同ステップ1065にてタイマT1の値が所定値TBより大きいか否かを判定する。この場合、タイマT1は先のステップ1045にて計時を開始した直後であるから、同タイマT1の値は所定値TBより小さい。従って、CPUはステップ1065にて「No」と判定してステップ1050に戻る。このようにして、CPUは時間Δt毎に所定値βだけ解放側指示油圧PDを減少させるとともに、ステップ1060にてスリップの開始をモニタする。これにより、タイマT1の値が所定値TBより大きくなる前にスリップが発生すると、CPUはステップ1060にて「Yes」と判定してステップ1025に進む。
【0053】
CPUは上記ステップ1025に進むと、図11に示したスリップ量フィードバック制御ルーチンの処理をステップ1100から開始し、ステップ1105に進んで離散化(Z変換)された前記規範モデルM(z)の係数{am1,am2,bm0,bm1,bm2}を読み込む。次いで、CPUはステップ1110にて離散化された前記フィードバックコントローラCEMM(z)の係数{a1,a2,・・・an,b0,b1,b2,・・・bn:nはCEMM(z)の次数}を読み込み、ステップ1115にて誤差フィードバックゲインTを読み込む。
【0054】
次いで、CPUはステップ1120に進み、同ステップ1120にて出力軸回転速度nоとフィルタ後出力軸回転速度noflt(k)との差をオフセット量nosaとして設定し、続くステップ1125にて上記数4に従う下記数7により今回のスリップ量sp(k)を求める。なお、オフセット量nosaは、出力軸回転速度nоとフィルタ後出力軸回転速度noflt(k)の差に基いていればよく、例えば同差に所定の定数を乗じた値であってもよい。
【0055】
【数7】
sp(k)=nt−(noflt(k)+nosa)・G1
【0056】
次いで、CPUはステップ1130にて目標スリップ量x(k)を読み込み、続くステップ1135にて離散化された規範モデルM(z)の出力である規範モデルスリップ量ms(k)(=−am1・ms(k−1)−am2・ms(k−2)+bm0・x(k)+bm1・x(k−1)+bm2・x(k−2))を求める。
【0057】
次に、CPUはステップ1140にて、上記規範モデルスリップ量ms(k)からスリップ量sp(k)を減じてモデル誤差量eg(k)を求め、続くステップ1145にて目標スリップ量x(k)からスリップ量sp(k)を減じて偏差e(k)を求める。次いで、CPUはステップ1150に進み、解放側指示油圧PD(k)を求める。具体的には、下記数8により示される離散化されたコントローラCEMM(k)の出力に、ゲインTとモデル誤差量eg(k)の積を加えることで、解放側指示油圧PD(k)を求める。なお、実際の計算はステップ1150内に示した数式に従う。
【0058】
【数8】
Figure 0004910246
【0059】
次に、CPUはステップ1155にて解放側指示油圧PDを最大値PDmaxと最小値PDminとの間に制限し、ステップ1160にて上記数6によって求められるスリップ量spnamaが「0」以下となったか否かを判定する。この段階ではスリップが開始した直後である。また、後述するように係合側摩擦係合要素に対する供給油圧は小さいので、同係合側摩擦係合要素はトルク伝達を開始していない。従って、スリップ量spnamaは「0」より大きいため、CPUはステップ1160にて「No」と判定してステップ1165に進み、所定時間(ここでは5msec)だけ経過するのを待って上記ステップ1125に戻る。以降、CPUは、スリップ量spnamaが「0」以下となるまで、ステップ1125〜1165を繰り返し実行する。
【0060】
このようにして、スリップ量のフィードバック制御が行われると、図3の時刻t3〜t4に示したように、スリップ量は規範モデルM(s)の出力に略一致するように滑らかに増大して行く。この結果、自動変速機のアウトプットトルクの上下変動は小さく、変速フィーリングが良好なものとなる。
【0061】
他方、電気制御装置50のCPUは、図12にフローチャートにて示した係合側油圧制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行していて、所定のタイミングにてステップ1200から処理を開始し、ステップ1205に進んでステップ1005と同様に2速から3速のシフトアップタイミングか否かを判定する。このとき、2速から3速のシフトアップタイミングでなければ、CPUはステップ1205にて「No」と判定してステップ1295に進み本ルーチンを一旦終了する。
【0062】
また、現時点が2速から3速のシフトアップタイミングであると、CPUはステップ1205にて「Yes」と判定してステップ1210に進み、上記プリチャージ制御を行うために係合側指示油圧PEを所定のプリチャージ圧PRCHに設定する。これにより、図3の時刻t1〜t2に示したように、係合側油圧が上昇して油路等に油が充填される。次に、CPUはステップ1215にてタイマT2をリセットしてスタートし(計時を開始し)、ステップ1220にてタイマT2の値が所定値tprchより大きくなったか否かを判定し、タイマT2の値が所定値tprchより小さければ、同ステップ1220を繰り返し実行する。
【0063】
その後タイマT2の値が所定値tprchより大きくなると、CPUはステップ1225に進んでスリップ量spnamaが閾値γより大きくなったか否かをモニタする。前述したように、この段階では解放側油圧が減少され、図3の時刻t3においてスリップが発生する。このため、CPUはステップ1225にて「Yes」と判定してステップ1230に進み、同ステップ1230にてタイマT2の値を再びリセットしてスタートする。次いで、CPUはステップ1235〜ステップ1260にて係合側油圧を徐々に上昇させるランプ昇圧制御を実行する。
【0064】
即ち、CPUはステップ1235にて係合側指示油圧PEの値を所定値u1だけ増大させ、続くステップ1240にて先のステップ1235の実行から僅かな時間Δtが経過するのを待ってステップ1245に進み、同ステップ1245にてタイマT2の値が所定値Trampより大きいか否かを判定する。現時点では、タイマT2は計時を開始した直後であるので、同タイマT2の値は所定値Tramp以下である。このため、CPUはステップ1245にて「No」と判定してステップ1235に戻る。このようにして、CPUは、タイマT2の値が所定値Trampより大きくなるまで、時間Δt毎に所定値u1だけ係合側指示油圧PEを増大させる。
【0065】
所定の時間が経過してタイマT2の値が所定値Trampより大きくなると、CPUはステップ1245にて「Yes」と判定してステップ1250に進み、同ステップ1250にて係合側指示油圧PEの値を前記所定値u1より大きい所定値u2だけ増大させる。次いで、CPUはステップ1255にて先のステップ1250の実行から僅かな時間Δtが経過するのを待ってステップ1260に進み、同ステップ1260にてスリップ量spnamaが「0」以下となったか否かを判定する。そして、スリップ量spnamaが「0」以下でなければ、CPUはステップ1260にて「No」と判定してステップ1250に戻る。このようにして、CPUは、時間Δt毎に所定値u2だけ係合側油圧を増大させる。この結果、所定の時間が経過すると係合側摩擦係合要素がトルク伝達を開始し、スリップ量が減少し始める(時刻t4)。
【0066】
この間、解放側油圧はコントローラCEMM(s)によるスリップ量のフィードバック制御によってコントロールされている。フィードバック制御は、スリップ量を目標値に維持するように解放側油圧を制御するものであるから、図3の時刻t4以降においてスリップ量が減少し始めると、CPUは同スリップ量を増大させようとして解放側油圧(解放側指示油圧PD)を減少させる。
【0067】
そして、図3の時刻t5に示したように、スリップ量が「0」以下となると、CPUはステップ1260にて「Yes」と判定してステップ1265に進み、トルク相を終了してイナーシャ相に移行するべくタービン回転速度ntの変化率Δntが目標回転変化率ΔMNTとなるように係合側油圧PEを制御する。
【0068】
次いで、CPUはステップ1270に進み、同ステップ1270にてタービン回転速度ntが変速後である3速のギヤ比G2と出力軸回転速度nоの積に一致するか否かを判定し、一致していなければ前記ステップ1265に戻る。その後、タービン回転速度ntが変速後である3速のギヤ比G2と出力軸回転速度nоの積に一致すると、CPUはステップ1270にて「Yes」と判定してステップ1275に進み、同ステップ1275にて係合側指示油圧PEをライン圧PLに設定し、ステップ1295にて本ルーチンを一旦終了する。
【0069】
また、図3の時刻t5に示したように、スリップ量spnamaが「0」以下となると、CPUは図11のステップ1160にて「Yes」と判定し、ステップ1195を経由して図10のステップ1070に戻り、同ステップ1070及びステップ1075により解放側指示油圧PDが「0」以下となるまで同解放側指示油圧PDを所定量ωずつ減少させる。そして、CPUは解放側指示油圧PDが「0」となるとステップ1075にて「Yes」と判定してステップ1095に進み、本ルーチンを終了する。以上によって2速から3速へのクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が終了する。
【0070】
なお、図10の解放側油圧制御において、タイマT1の値が所定値TBより大きくなる前にスリップが発生しなければ、CPUはステップ1065にて「Yes」と判定してステップ1070に直接進む。これは、解放側油圧を十分に減少させたのにも拘らずスリップが発生しないのであるから、スリップを発生させることなく解放側油圧を一挙に低下させても、タービン回転速度ntの吹き上がりが発生しないと考えられるからである。
【0071】
以上説明したように、上記第1実施形態によれば、実際のスリップ量の時間変化が規範モデルM(s)の出力に沿うように完全モデルマッチング法を用いてコントローラCEMM(s)を決定し、このコントローラCEMM(s)を用いてスリップ量のフィードバック制御を行う。この結果、スリップ量が滑らかに変化するとともに、係合側摩擦係合要素のクラッチストロークのばらつきや油圧特性の変化等により同係合側摩擦係合要素による伝達トルクが予定されているタイミングより遅れて上昇する場合であっても、タービン回転速度ntの吹き上がりが回避され得るので、変速フィーリングが良好に維持され得る。また、上記実施形態においては、モデル誤差量eg(k)を求めてフィードバックしているので、入力トルクの変化、油温変化によるシステムの特性変動、クラッチの摩耗や油の劣化等の経年変化によるシステムの特性変化などの外乱の影響を受け難い変速制御を行うことができる。
【0072】
図13は、本実施形態の変速制御装置により、自動変速機30の変速段が2速から3速に変速される際のタービン回転速度nt、出力軸回転速度nоと変速前ギヤ比G1の積、フィルタ後出力軸回転速度nofltと変速前ギヤ比G1の積、及びフィルタ後出力軸回転速度nofltにオフセット量nosaを加えた値と変速前ギヤ比G1の積の実測値を、それぞれ曲線L1、L2、L3、及びL4により示したグラフである。
【0073】
図13から明らかなように、スリップが実際に発生した時点(時刻ts)から、出力軸回転速度nоは曲線L2にて示されたように大きく振動しているが、フィルタ処理後出力軸回転速度nofltは、曲線L3にて示されたように、かかる振動が除去されて安定している。また、フィルタ後出力軸回転速度nofltにオフセット量nosaを加えた値は、曲線L4にて示されたように、ローパスフィルタLPFの位相遅れが適切に補償されている。
【0074】
従って、上記第1実施形態によれば、スリップ開始時において発生するプロペラシャフトの捩り等に起因する出力軸回転速度nоの振動を実質的に含まず、真のスリップ量を適切に表すスリップ量sp(t)(=sp(k))によりスリップ量のフィードバック制御がなされるので、スリップ量の発散を招くことなく円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が達成される。
【0075】
次に、本発明の第2実施形態に係る変速制御装置について説明すると、同変速制御装置は、CPUが図11に代えて図14に示したスリップ量フィードバック制御ルーチンを実行する点においてのみ、第1実施形態と異なっている。従って、以下、図14を参照しながら、第1実施形態との相違点について説明する。
【0076】
図14のフィードバック制御ルーチンは、第1実施形態の規範モデルM(s)を用いたフィードバックコントローラではなく、従来から知られているPI制御コントローラによるフィードバック制御を達成するものである。
【0077】
具体的に述べると、CPUはスリップ量のフィードバック制御の開始とともにステップ1400に進み、次いでステップ1405に進んで離散化(Z変換)されたPIコントローラCPI(z)の係数{a1,a2,・・・an,b0,b1,b2,・・・bn:nはCPI(z)の次数}を読み込み、続くステップ1410にて出力軸回転速度nоとフィルタ後出力軸回転速度noflt(k)との差をオフセット量nosaとして設定する。
【0078】
次いで、CPUはステップ1415に進み、同ステップ1415にて上記数7により今回のスリップ量sp(k)を求め、続くステップ1420にて目標スリップ量x(k)を読み込む。その後、CPUはステップ1425にて目標スリップ量x(k)から前記スリップ量sp(k)を減じて偏差e(k)を求めてステップ1430に進み、同ステップ1430内に示した数式に従って解放側指示油圧PD(k)を求める。
【0079】
次いで、CPUはステップ1435にて解放側指示油圧PDを最大値PDmaxと最小値PDminとの間に制限し、ステップ1440にて上記数6によって求められるスリップ量spnamaが「0」以下となったか否かを判定する。このとき、スリップ量spnamaが「0」より大きければ、CPUはステップ1440にて「No」と判定してステップ1445に進み、所定時間(ここでは5msec)だけ経過するのを待って上記ステップ1415に戻る。以降、CPUは、スリップ量spnamaが「0」以下となるまでステップ1415〜1445を繰り返し実行する。この結果、PIフィードバックコントローラによりスリップ量sp(k)が目標スリップ量x(k)と等しくなるように制御される。また、CPUはスリップ量spnamaが「0」以下となると、ステップ1445にて「Yes」と判定してステップ1495に進み、同ステップ1495を経由して図10のステップ1070に戻ってスリップ量フィードバック制御を終了する。
【0080】
このように、第2実施形態の変速制御装置は、PIコントローラによりスリップ量が目標スリップ量と等しくなるように解放側油圧を制御する。このとき、フィードバック制御に使用されるスリップ量は、第1実施形態と同様、フィルタ後出力軸回転速度nofltに基いて求められる。従って、スリップ量の振動が発散することなく、円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が達成され得る。
【0081】
次に、本発明の第3実施形態に係る変速制御装置について説明すると、同変速制御装置は、CPUが図9に代えて図15に示したフィルタリングルーチンを実行するとともに、図11に代えて図16に示したスリップ量フィードバック制御ルーチンを実行する点においてのみ、第1実施形態と異なっている。従って、以下、図15及び図16を参照しながら、第1実施形態との相違点について説明する。なお、図15及び図16において、それぞれ図9及び図11と同一のステップについては同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
第3実施形態においても第1実施形態と同様に、CPUは図15のフィルタリングルーチンを所定時間(ここでは、5msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ1500から処理を開始してステップ905に進み、同ステップ905にてその時点の出力軸回転速度nоを今回の出力軸回転速度nо(k)として設定する。
【0083】
次いで、CPUはステップ910に進み、同ステップ910にて上記数5に従って出力軸回転速度nоをフィルタ処理する。ここまでの処理は、図9に示したフィルタリングルーチンの処理と同一であり、ステップ910の処理によって出力軸回転速度nоから前記所定の周波数(第2周波数)より大きい周波数成分が除去され、同出力軸回転速度nоから駆動系捩り等に基く振動が除去されたフィルタ後出力軸回転速度noflt(k)が求められる。
【0084】
次いで、CPUはステップ1505に進み、同ステップ1505にてその時点のタービン回転速度(入力軸回転速度)ntを今回のタービン回転速度nt(k)として設定し、続くステップ1510にて下記数9に従ってタービン回転速度ntをフィルタ処理した後、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。なお、数9において、n及びmは正の整数である。
【0085】
【数9】
Figure 0004910246
【0086】
上記ステップ1510のフィルタ処理は、カットオフ周波数が前記第2周波数よりも大きい第1周波数であるローパスフィルタ処理である。換言すると、ステップ1510の処理によってタービン回転速度ntから第1周波数より大きい周波数成分が除去される。前記第1周波数は、タービン回転速度ntに現われるタービン回転速度センサ63のセンサノイズの周波数より若干だけ小さい値又は同等の値に選ばれている。従って、フィルタ後タービン回転速度ntfltは、タービン回転速度ntからセンサノイズ等に基く高周波振動が除去された値となる。
【0087】
一方、CPUはスリップ量のフィードバック制御の開始とともに図16に示したステップ1600に進み、続くステップ1105〜1120の処理を実行することで、離散化された規範モデルM(z)の係数、離散化されたフィードバックコントローラCEMM(z)の係数、及び誤差フィードバックゲインTを読み込むとともに、オフセット量nosaを求める。
【0088】
次いで、CPUはステップ1605に進み、同ステップ1605にて上記フィルタ後タービン回転速度ntflt、上記フィルタ後出力軸回転速度noflt、上記オフセット量nosa、及び下記数10に基いてスリップ量を演算する。
【0089】
【数10】
sp(k)=ntflt(k)−(noflt(k)+nosa)・G1
【0090】
その後、CPUはステップ1130〜1150を順に実行して、目標スリップ量x(k)、規範モデルスリップ量ms(k)、モデル誤差量eg(k)、偏差e(k)、及び指示油圧PD(k)を計算する。次いで、CPUは解放側指示油圧PDを最大値PDmaxと最小値PDminとの間に制限し、続くステップ1610にて下記数11によって求められるスリップ量spnama´が「0」以下となったか否かを判定する。
【0091】
【数11】
spnama´=ntflt−nо・G1
【0092】
そして、CPUはステップ1610の判定結果が「No」であるとき、ステップ1165を実行して5msec後にステップ1605に戻る。他方、CPUは、ステップ1610の判定結果が「Yes」であるとき、ステップ1695を経由して図10のステップ1070に戻り、スリップ量のフィードバック制御を終了する。
【0093】
以上説明したように、第3実施形態によれば、検出されたタービン回転速度(入力軸回転速度)ntがフィルタ処理され、同タービン軸回転速度ntから第1周波数以上の成分が除去されたフィルタ後タービン回転速度ntfltが求められる。また、検出された出力軸回転速度nоがフィルタ処理され、同出力軸回転速度nоから前記第1周波数よりも小さな周波数成分(第2周波数より大きな周波数成分)が少なくとも除去されたフィルタ後出力軸回転速度nofltが求められる。これにより、前記フィルタ後タービン回転速度ntfltは、高周波ノイズ成分が除去された安定した値となり、前記フィルタ後出力軸回転速度nofltは、高周波成分のみでなく、スリップ開始時において発生するプロペラシャフトの捩り等に起因する相対的に低周波数の振動を含んでいない安定した値となる。
【0094】
従って、フィルタ後タービン回転速度ntfltとフィルタ後出力軸回転速度nofltとに基いて求められるスリップ量sp(t)(=sp(k))には、スリップの開始に伴って出力軸回転速度nоに重畳する振動が含まれておらず、また、タービン回転速度ntに重畳するセンサノイズ等の高周波数の振動も含まれていない。この結果、前記求められたスリップ量sp(k)と目標スリップ量x(k)とが等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルク(指示油圧PD(k))が制御されるとき、実際のスリップ量が発散しないので、円滑なクラッチ・ツゥ・クラッチ変速が達成され得る。
【0095】
以上、説明したように、本発明による自動変速機の変速制御装置の各実施形態によれば、スリップの開始に伴って出力軸回転速度nоに重畳する振動をフィルタ処理により除去したフィルタ後出力軸回転速度nofltに基いて、スリップ量フィードバック制御に用いるスリップ量が求められるので、スリップ量が発散することなく安定したクラッチ・ツゥ・クラッチ変速を達成することができる。
【0096】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記ステップ1020、1120、1160、1225、1260、1270、1410、1440、1610等で使用する出力軸回転速度nоは、前記第2周波数よりも大きい第3周波数をカットオフ周波数とするローパスフィルタで処理した値(即ち、センサノイズ等の高周波成分のみを除去した出力軸回転速度)とすることもできる。
【0097】
また、上記各実施形態において、フィルタ後出力軸回転速度nofltは出力軸回転速度noをローパスフィルタ処理したものであったが、スリップ発生に伴う駆動系捩り等に起因する振動成分をノッチフィルタ(所定の周波数帯域成分のみを除去するフィルタ)により除去することでフィルタ後出力軸回転速度nofltを求めてもよい。
【0098】
更に、自動変速機は油圧を用いているが、油圧系の応答遅れ(むだ時間)を考慮する方がより精度のよいフィードバック制御を行うことができるので、図17に示したように、制御対象を無駄時間を含むものとして下記数12により表し、コントローラCEMM(s)に対して下記数13により表されたむだ時間補償器H(s)を追加してもよい。
【0099】
【数12】
P´(s)=P(s)・e-Ls
【0100】
【数13】
H(s)=P(s)・(1−e-Ls
【0101】
これにより、油圧系の応答遅れに対しても十分高い精度でスリップ量を制御することができる。なお、制御対象P´(s)は油温の変化に伴なって大きく変化するから、コントローラCEMM(s)を油温(油温センサにより検出させる)に応じて変更するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る自動変速機の変速制御装置を車両に搭載したシステムの概略図である。
【図2】 図1に示した自動変速機のスケルトン図である。
【図3】 図1に示した自動変速機の変速制御装置により、2速から3速への変速が行われる際のスリップ量、解放側油圧及び係合側油圧を示すタイムチャートである。
【図4】 図1に示した自動変速機の変速制御装置が用いる規範モデルのブロック線図である。
【図5】 図4に示した規範モデルに入力される目標スリップ量と、この入力に対する同規範モデルの出力を示したタイムチャートである。
【図6】 図1に示した自動変速機の変速制御装置の制御対象と同装置が用いるコントローラとの接続関係を示すブロック線図である。
【図7】 図1に示した自動変速機の変速制御装置のブロック線図である。
【図8】 図7に示したフィードバックコントローラが行うスリップ量のフィードバック制御の概念を示すブロック図である。
【図9】 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するプログラム(フィルタリングルーチン)のフローチャートである。
【図10】 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するプログラム(解放側油圧制御ルーチン)のフローチャートである。
【図11】 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するプログラム(スリップ量フィードバック制御ルーチン)のフローチャートである。
【図12】 図1に示した電気制御装置のCPUが実行するプログラム(係合側油圧制御ルーチン)のフローチャートである。
【図13】 第1実施形態に係る自動変速機の変速制御装置により、変速段が2速から3速に変速される際のタービン回転速度、出力軸回転速度と変速前ギヤ比の積、フィルタ後出力軸回転速度と変速前ギヤ比の積、及びフィルタ後出力軸回転速度にオフセット量を加えた値と変速前ギヤ比の積の実測値を示すタイムチャートである。
【図14】 本発明の第2実施形態に係る電気制御装置のCPUが実行するプログラム(スリップ量フィードバック制御ルーチン)のフローチャートである。
【図15】 本発明の第3実施形態に係る電気制御装置のCPUが実行するプログラム(フィルタリングルーチン)のフローチャートである。
【図16】 本発明の第3実施形態に係る電気制御装置のCPUが実行するプログラム(スリップ量フィードバック制御ルーチン)のフローチャートである。
【図17】 本発明による自動変速機の変速制御装置の変形例のブロック線図である。
【図18】 従来のフィードバックコントローラが行うスリップ量のフィードバック制御の概念を示すブロック図である。
【図19】 従来の自動変速機の変速制御装置により、変速段が2速から3速に変速される際のタービン回転速度、出力軸回転速度と変速前ギヤ比の積、出力軸回転速度、及びタービン回転速度から出力軸回転速度と変速前ギヤ比の積を減ずることにより得られるスリップ量を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10…エンジン、12…トルクコンバータ入力軸、20…ロックアップクラッチ付流体式トルクコンバータ、21…流体式伝達機構、22…ロックアップクラッチ機構、30…自動変速機、31…入力軸、32…出力軸、40…油圧制御回路、41〜43…オン・オフソレノイドバルブ、44〜46…リニアソレノイドバルブ、50…電気制御装置、63…タービン回転速度センサ、64…出力軸回転速度センサ。

Claims (3)

  1. 複数の摩擦係合要素の各々を係合状態又は解放状態に維持することにより所定の変速段を達成し、一の変速段から他の変速段への変速にあたり同変速前に係合状態にあり同変速後に解放状態とされる解放側摩擦係合要素による伝達トルクを減少させることによりスリップを発生させるとともに、同変速前に解放状態にあり同変速後に係合状態とされる係合側摩擦係合要素による伝達トルクを増大させることにより同変速を行う自動変速機の変速制御装置であって、
    前記自動変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、
    前記自動変速機の出力軸回転速度を検出する出力軸回転速度検出手段と、
    前記検出された出力軸回転速度に対し所定の周波数成分を除去するフィルタ処理を施してフィルタ後出力軸回転速度を得る出力軸回転速度フィルタ手段と、
    前記検出された入力軸回転速度と前記フィルタ後出力軸回転速度に所定のオフセット量を加えた値に基いてスリップ量を求めるスリップ量算出手段と、
    前記求められたスリップ量と目標スリップ量とが等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクを制御するスリップ量フィードバック制御手段とを含んでなる自動変速機の変速制御装置。
  2. 複数の摩擦係合要素の各々を係合状態又は解放状態に維持することにより所定の変速段を達成し、一の変速段から他の変速段への変速にあたり同変速前に係合状態にあり同変速後に解放状態とされる解放側摩擦係合要素による伝達トルクを減少させることによりスリップを発生させるとともに、同変速前に解放状態にあり同変速後に係合状態とされる係合側摩擦係合要素による伝達トルクを増大させることにより同変速を行う自動変速機の変速制御装置であって、
    前記自動変速機の入力軸回転速度を検出する入力軸回転速度検出手段と、
    前記検出された入力軸回転速度に対し第1周波数以上の成分を除去するフィルタ処理を施してフィルタ後入力軸回転速度を得る入力軸回転速度フィルタ手段と、
    前記自動変速機の出力軸回転速度を検出する出力軸回転速度検出手段と、
    前記検出された出力軸回転速度に対し前記第1周波数よりも小さな周波数成分を少なくとも除去するフィルタ処理を施してフィルタ後出力軸回転速度を得る出力軸回転速度フィルタ手段と、
    前記フィルタ後入力軸回転速度と前記フィルタ後出力軸回転速度に所定のオフセット量を加えた値に基いてスリップ量を求めるスリップ量算出手段と、
    前記求められたスリップ量が目標スリップ量と等しくなるように前記解放側摩擦係合要素による伝達トルクを制御するスリップ量フィードバック制御手段とを含んでなる自動変速機の変速制御装置。
  3. 請求項2に記載の自動変速機の変速制御装置であって、
    前記オフセット量は、前記検出された入力軸回転速度に応じた値と、前記検出された出力軸回転速度に応じた値に前記自動変速機の前記変速前のギヤ比を乗じた値との差が閾値を超えた時点における出力軸回転速度に応じた値と前記フィルタ後出力軸回転速度の差に基いて設定される自動変速機の変速制御装置。
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