概要
本発明は、脳傷害および/またはストレス、ニューロンの障害、器官傷害および/またはストレス、癌および癌治療、ならびに筋肉リハビリテーション/運動過剰訓練において固有に生成され、かつ対象となる同じ器官/組織系の損傷の診断および予後ならびにモニタリングにとって重要である、生物マーカーの信頼性のある検出および同定を提供する。器官または組織およびそれらの内の細胞に損傷をもつ患者における器官に濃縮されたまたは特異的なタンパク質/ペプチドのタンパク質分解生成物または断片のプロファイルが、安価な技術を用いて正常対照から区別される。これらの技術は、神経系への、他の器官への、もしくは複数の器官への損傷またはストレス、様々な癌、癌治療、筋肉リハビリテーション/運動過剰訓練、および主要な器官が生体液を用いて損なわれるもしくは変化する他のヒトの病的またはストレスを加えられた状態を診断することへの単純だが感度の高いアプローチを提供する。
好ましい態様において、本発明は、外傷性脳損傷、ニューロン損傷、神経系障害、脳損傷、薬物またはアルコール中毒による神経損傷、脳または中枢および末梢神経系(CNS、PNS)のような神経系に関連した疾患を示す生物マーカーを提供する。好ましくは、生物マーカーは、例えば、以下のような器官への損傷の結果として活性化されるタンパク質分解酵素である:心臓、脳、肝臓、腎臓、肺、消化管;ニューロン、中枢神経系、末梢神経系、および骨格筋。好ましくは、タンパク質分解酵素は、神経および器官傷害により活性化され、標的タンパク質、ペプチドおよびそれらの断片を切断する。標的タンパク質は、限定されるわけではないが、神経細胞、脳細胞、または脳および中枢神経系、心臓、肝臓、腎臓などのような器官に存在する任意の細胞に関連したタンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む。神経系および/または器官傷害で検出されるタンパク質分解酵素の非限定的例は、以下を含む(アルファベット順に):アクロモペプチダーゼ(Achromopeptidase)、アミノペプチダーゼ、アンクロド、アンギオテンシン変換酵素、ブロメライン、カルパイン、カルパインI、カルパインII、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼG、カルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼW、カルボキシペプチダーゼY、カスパーゼ、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ13、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、キモパパイン、チマーゼ、キモトリプシン、α-クロストリパイン(α-Clostripain)、コラゲナーゼ、補体C1r、補体C1s、補体因子D、補体因子I、ククミシン(Cucumisin)、ジペプチジルペプチダーゼIV、白血球エラスターゼ、膵エラスターゼ、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼAsp-N、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、エンテロキナーゼ、Xa因子、フィシン、フューリン、グランザイムA、グランザイムB、HIVプロテアーゼ、イガーゼ(Igase)、組織カリクレイン、キナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ(一般)、ロイシンアミノペプチダーゼ、サイトゾル、ロイシンアミノペプチダーゼ、ミクロソーム、マトリックスメタロプロテアーゼ、メチオニンアミノペプチダーゼ、ニュートラーゼ(Neutrase)、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロリダーゼ(Prolidase)、プロナーゼE、前立腺特異的抗原、プロテアーゼ、プロテアーゼS、プロテアソーム、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ3、プロテイナーゼA、プロテイナーゼK、プロテインC、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ、レニン、レンニン、トロンビン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、トロポニン、トリプシン、トリプターゼ、ウロキナーゼ。好ましくは、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つもまた検出される。
もう一つの好ましい態様において、タンパク質分解酵素生物マーカーは、例えば、表1に列挙された非限定的例のタンパク質基質に対する、数分間〜数日間後内に傷害またはストレスを受けた器官において(インビボ)、またはインビトロで数分間〜数時間内の時点において1/10,000〜1/20の比率の精製されたプロテアーゼ-基質タンパク質/タンパク質混合物を用いてタンパク分解される基質タンパク質1 mgあたり約1 μg〜約500 μgの比活性を有する。
好ましい態様において、生物マーカーは、例えば、器官、神経細胞の傷害により活性化され、結果として、器官、神経細胞と関連したタンパク質、ペプチドのタンパク分解を生じる。好ましいタンパク質の例は、限定されるわけではないが、以下を含む:例えば、トロポニンI、トロポニン-T、トロポニン-Cのような心臓または筋肉トロポニンのようなトロポニン;限定されるわけではないが、軸索タンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、樹状突起タンパク質、細胞体タンパク質、シナプス前性タンパク質、シナプス後性タンパク質、それらの断片および誘導体。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されたペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定される。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドと約50%相同性であり、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドと約70%相同性であり、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドと約80%相同性であり、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドと約90%、95%、96%、97%、95%、99%または99.9%相同性である。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約10アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約20アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約50アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約80アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約100アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約200アミノ酸長く、好ましくは、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、SEQ ID NO:1〜148により同定されるペプチドのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約400アミノ酸長い。より長いアミノ酸の例は、それらのアクセッション番号と共に、表1に見出される。SEQ ID NO:1〜148により同定される各生物マーカーのN末端またはC末端のいずれかに含まれうる望ましいアミノ酸は、このように、容易に決定される。
好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、NF-200(NF-H)、NF-160(NF-M)、NF-68(NF-L)のような軸索タンパク質、それらのペプチド、断片または誘導体由来である。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質、それらの断片および誘導体のペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば以下のような樹状突起ペプチドである:α-チューブリン(P02551)、β-チューブリン(P0 4691)、MAP-2A/B、MAP-2C、タウ(Tau)、ダイナミン-1(P21575)、ダイナクチン(Q13561)、P24のペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、細胞体ペプチド、例えば:UCH-L1(Q00981)、PEBP(P31044)、NSE(P07323)、Thy 1.1、プリオン、ハンチントン、それらの断片および誘導体のペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、シナプシン-1、シナプシン-2、α-シヌクレイン(P37377)、β-シヌクレイン(Q63754)、GAP43、シナプトフィジン、シナプトタグミン(P21707)、シンタキシン、それらの断片および誘導体のシナプス前性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、PSD95、PSD93、NMDA受容体(すべてのサブタイプを含む)由来のシナプス後性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質、それらの断片および誘導体のペプチドのような脱髄ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、グリアペプチド、例えば、GFAP(P47819)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI-P04785)、それらの断片および誘導体のペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、アセチルコリンエステラーゼ、コリンアセチルトランスフェラーゼ、それらの断片および誘導体のペプチドのようなコリン作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ホスホ-TH、DARPP32、それらの断片および誘導体のペプチドのようなドーパミン作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(DbH)、その断片および誘導体のペプチドのようなノルアドレナリン作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、トリプトファンヒドロキシラーゼ(TrH)、その断片および誘導体のペプチドのようなセロトニン作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素、それらの断片および誘導体のペプチドのようなグルタミン酸作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、GABAトランスアミナーゼ(4-アミノブチレート-2-ケトグルタレートトランスアミナーゼ[GABAT])、グルタミン酸カルボキシラーゼ(GAD25、44、65、67)、それらの断片および誘導体のペプチドのようなGABA作動性ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、β-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、β(2))、α-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、α(2c))、GABA受容体(例えば、GABA(B))、代謝調節型グルタミン酸受容体(例えば、mGluR3)、NMDA受容体サブユニット(例えば、NR1A2B)、グルタミン酸受容体サブユニット(例えば、GluR4)、5-HTセロトニン受容体(例えば、5-HT(3))、ドーパミン受容体(例えば、D4)、ムスカリンAch受容体(例えば、M1)、ニコチンアセチルコリン受容体(例えば、α-7)、それらの断片または誘導体のペプチドのような神経伝達物質ペプチド受容体である。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、好ましくは、例えば、ノルエピネフリン輸送体(NET)、ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)、小胞輸送体タンパク質(VMAT1およびVMAT2)、GABA輸送体小胞阻害性アミノ酸輸送体(VIAAT/VGAT)、グルタミン酸輸送体(例えば、GLT1)、小胞アセチルコリン輸送体、コリン輸送体(例えば、CHT1)、それらの断片または誘導体のペプチドのような神経伝達物質輸送体ペプチドである。
もう一つの好ましい態様において、脳および/もしくはCNS/PNS傷害または神経系障害の診断ならびに検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、限定されるわけではないが、ビメンチン(P31000)、CK-BB(P07335)、14-3-3-イプシロン(P42655)、MMP2、MMP9、それらの断片または誘導体を含む。
もう一つの好ましい態様において、心外傷の診断および検出のためのタンパク質分解酵素生物マーカーについての標的として同定されるペプチドは、例えば、トロポニン-I、トロポニン-Tおよびトロポニン-Cのようなトロポニンである。
もう一つの好ましい態様において、タンパク質分解酵素生物マーカーは、癌、ニューロン傷害、および/または器官傷害を受けやすいまたは患っている患者の試料から検出される。
マーカーは、分子量、酵素消化フィンガープリントにより、およびそれらの公知のタンパク質アイデンティティにより特徴付けられる。マーカーは、様々な分画技術、例えば、質量分析法と一体となったクロマトグラフィー分離法を用いることにより、または従来のイムノアッセイにより、試料において他のペプチドから分解されうる。好ましい態様において、分解の方法は、質量分析プローブの表面がマーカーを結合する吸着剤を含む、表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)質量分析法を含む。
もう一つの好ましい態様において、特定のタンパク質分解酵素生物マーカーの存在は、CNS/PNSおよび/または脳傷害の程度を示す。例えば、1つまたは複数の樹状突起損傷マーカー、細胞体傷害マーカー、脱髄マーカー、軸索傷害マーカーの検出は、CNS傷害を示し、1つまたは複数の存在は、神経傷害の程度を示すものと考えられる。
もう一つの好ましい態様において、特定の分解された神経タンパク質の存在は、タンパク質分解酵素活性を示し、神経学的障害を示す、すなわち、樹状突起損傷マーカー、細胞体傷害マーカー、脱髄マーカー、軸索傷害マーカー、シナプス終末マーカー、シナプス後性マーカーである。
CNS/PNSおよび/または脳傷害の検出ならびに診断のための好ましい方法は、被験体試料において少なくとも1つまたは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーを検出する段階、および;1つまたは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーの検出をCNSおよび/または脳傷害の診断と相関させる段階であって、相関が、正常な被験体と比較した、各診断における1つまたは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーの検出を考慮する、段階を含む。好ましくは、タンパク質分解酵素生物マーカーは、例えば、ニューロンのタンパク質、腫瘍抗原に特異的であり、1つまたは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーは、以下のものから選択されるタンパク質を分解する:例えば、軸索タンパク質−NF-200(NF-H)、NF-160(NF-M)、NF-68(NF-L);アミロイド前駆体タンパク質;樹状突起タンパク質−α-チューブリン(P02551)、β-チューブリン(P0 4691)、MAP-2A/B、MAP-2C、タウ、ダイナミン-1(P21575)、ダイナクチン(Q13561)、P24;細胞体タンパク質−UCH-L1(Q00981)、PEBP(P31044)、NSE(P07323)、Thy 1.1、プリオン、ハンチントン;シナプス前性タンパク質−シナプシン-1、シナプシン-2、α-シヌクレイン(P37377)、β-シヌクレイン(Q63754)、GAP43、シナプトフィジン、シナプトタグミン(P21707)、シンタキシン;シナプス後性タンパク質−PSD95、PSD93、NMDA受容体(すべてのサブタイプを含む);脱髄生物マーカー−ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質;グリアタンパク質−GFAP(P47819)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI-P04785);神経伝達物質生物マーカー−コリン作動性生物マーカー:アセチルコリンエステラーゼ、コリンアセチルトランスフェラーゼ;ドーパミン作動性生物マーカー−チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ホスホ-TH、DARPP32;ノルアドレナリン作動性生物マーカー−ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(DbH);セロトニン作動性生物マーカー−トリプトファンヒドロキシラーゼ(TrH);グルタミン酸作動性生物マーカー−グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素;GABA作動性生物マーカー−GABAトランスアミナーゼ(4-アミノブチレート-2-ケトグルタレートトランスアミナーゼ[GABAT])、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD25、44、65、67);神経伝達物質受容体−β-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、β(2))、α-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、(α(2c))、GABA受容体(例えば、GABA(B))、代謝調節型グルタミン酸受容体(例えば、mGluR3)、NMDA受容体サブユニット(例えば、NR1A2B)、グルタミン酸受容体サブユニット(例えば、GluR4)、5-HTセロトニン受容体(例えば、5-HT(3))、ドーパミン受容体(例えば、D4)、ムスカリンAch受容体(例えば、M1)、ニコチンアセチルコリン受容体(例えば、α-7);神経伝達物質輸送体−ノルエピネフリン輸送体(NET)、ドーパミン輸送体(DAT)、セロトニン輸送体(SERT)、小胞輸送体タンパク質(VMAT1およびVMAT2)、GABA輸送体小胞阻害性アミノ酸輸送体(VIAAT/VGAT)、グルタミン酸輸送体(例えば、GLT1)、小胞アセチルコリン輸送体、コリン輸送体(例えば、CHT1)のような神経タンパク質;他のタンパク質生物マーカーは、限定されるわけではないが、ビメンチン(P31000)、CK-BB(P07335)、14-3-3-イプシロン(P42655)、MMP2、MMP9を含む。
もう一つの好ましい態様において、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープに結合する。
もう一つの好ましい態様において、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定される配列と約50%相同性であるエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定される配列と約70%相同性であるエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定される配列と約80%相同性であるエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定される配列と約90%、95%、96%、97%、95%、99%または99.9%相同性であるエピトープに結合する。
もう一つの好ましい態様において、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約10アミノ酸長いエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約20アミノ酸長いエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約50アミノ酸長いエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約100アミノ酸長いエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約200アミノ酸長いエピトープに結合し、より好ましくは、酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物に特異的な抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなエピトープのN末端および/またはC末端のいずれかにおいて少なくとも約500アミノ酸長いエピトープに結合する。より長いアミノ酸の例は、それらのアクセッション番号と共に表1に見出される。SEQ ID NO:1〜148により同定される各生物マーカーのN末端またはC末端のいずれかにおいて含まれうる望ましいアミノ酸は、このように、容易に決定され、抗体が産生されうる。
もう一つの好ましい態様において、本発明は、被験体において細胞損傷を分析するためのキットを提供する。キットは、好ましくは、以下を含む:(a)SEQ ID NO:1〜148のいずれかにより同定されるような組成物または生物マーカーの一団;(b)損傷した神経細胞を有することが疑われるヒト被験体から単離された生体試料を保持するための基板、(c)タンパク質分解酵素の少なくとも1つまたは複数を特異的に結合する作用物質;および(d)生体試料において少なくとも1つのマーカーの存在または量を検出するために生体試料または生体試料の一部と作用物質を反応させるための印刷された使用説明書。
好ましくは、生体試料は、被験体から単離される前に被験体の神経系と情報交換している液体、例えば、CSFまたは血液であり、作用物質は、タンパク質分解酵素の少なくとも1つまたは複数を特異的に結合する抗体、アプタマー、または他の分子でありうる。キットはまた、作用物質に結合するもの、または作用物質に特異的に結合する物質に結合するもの(例えば、二次抗体)のような検出可能な標識を含みうる。
本発明の他の局面は、下に記載されている。
詳細な説明
本発明は、CNS、筋肉もしくは他の器官の細胞傷害および/またはストレス、および/またはニューロンの障害の診断となる生物マーカーを同定する。本発明の異なる生物マーカーの検出はまた、神経傷害の重症度の程度、傷害に関与する細胞、および傷害の細胞内局在性の診断となる。特に、本発明は、傷害に起因した神経系細胞および/または器官からのペプチドの存在により活性化される1つまたは複数のタンパク質分解酵素の存在または量を相関させる段階を用いる。タンパク質分解酵素の存在は、神経細胞および/もしくは器官の傷害の重症度ならびに/または型と相関する。タンパク質分解酵素の活性および組織タンパク質分解生成物の産生は、損傷がより重症であれば、次にはより多量の神経または細胞性ペプチドを生体試料(例えば、CSF)に蓄積させる細胞数が多くなり、それにより、タンパク質分解酵素を活性化させるように、神経組織および/または器官傷害の重症度に直接的に関連する。
定義
本発明を説明する前に、下記に用いられる特定の用語の定義を説明することがその理解の助けになりうる。
本発明との関連における「マーカー」は、対照被験体(例えば、陰性診断をもつ人、正常または健康な被験体)から採取された比較試料と比較して、神経系傷害および/またはニューロンの障害をもつ患者から採取された試料において異なって存在するポリペプチド(特定の見かけの分子量の)を指す。
酵素の「活性」は、一定の温度およびpHにおいて単位時間あたりに産生される生成物の量である。
酵素の「比活性」は、1 mgのタンパク質につき単位時間あたりに産生される生成物の量である。
「基質」は、酵素が触媒する標的タンパク質である。International Union of Biochemistry (I.U.B.)は、酵素名が作用される基質および触媒される反応の型の両方を示すことを推奨した酵素命名法の規格を開始した。例えば、このシステムの下では、酵素ウリカーゼは尿酸:O2オキシドレダクターゼと呼ばれ、酵素グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)は、L-アスパラギン酸:2-オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼと呼ばれる。
本発明の関連における「相補的な」とは、いっしょに検出される場合、1つの生物マーカーのみの検出と比較して感度および特異性の増加を与える少なくとも2つの生物マーカーの検出を指す。
句「異なって存在する」とは、対照被験体と比較した、例えば、神経傷害をもつ患者から採取された試料に存在するマーカーの量および/または頻度における違いを指す。例えば、マーカーは、対照被験体の試料と比較して、神経傷害をもつ患者の試料において上昇したレベルで、または減少したレベルで、存在するポリペプチドでありうる。または、マーカーは、対照被験体の試料と比較して、患者の試料において、より高い頻度で、またはより低い頻度で検出されるポリペプチドでありうる。マーカーは、量、頻度または両方に関して異なって存在しうる。
ポリペプチドは、一方の試料におけるポリペプチドの量が、他方の試料におけるポリペプチドの量と統計学的に有意に異なる場合には、2つの試料間で異なって存在する。例えば、ポリペプチドは、それが他方の試料に存在しているよりも、それが少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%、多く存在する場合または、一方の試料において検出され、他方において検出可能でない場合には、2つの試料間で異なって存在する。
代替としてまたは追加として、ポリペプチドは、神経傷害および/またはニューロンの障害を患っている患者の試料においてポリペプチドを検出する頻度が対照試料においてより統計学的に有意に高いまたは低い場合には、試料の2セット間で異なって存在する。例えば、ポリペプチドは、それが、試料の一方のセットにおいて、試料の他方のセットより、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%、多い頻度でまたは少ない頻度で観察される場合には、試料の2つのセット間で異なって存在する。
「診断の」とは、病的状態の存在または性質を同定することを意味する。診断方法は、それらの感度および特異性において異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性と出た罹患した個体のパーセンテージである(「真の陽性」のパーセント)。アッセイにより検出されなかった罹患した個体は「偽陰性」である。罹患しておらず、かつアッセイで陰性と出た被験体は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1マイナス(minus)偽陽性率であり、「偽陽性」率は、検査で陽性と出た疾患をもたないものの割合として定義される。特定の診断方法は、状態の明確な診断を提供しない場合があるが、方法が診断の助けとなる陽性表示を提供する場合には、それは十分である。
マーカーの「検査量」は、検査されることになっている試料に存在するマーカーの量を指す。検査量は、絶対量(例えば、μg/ml)でかまたは相対量(例えば、シグナルの相対的強度)でかのいずれかでありうる。
マーカーの「診断量」は、神経傷害および/またはニューロンの障害の診断と一致している被験体の試料におけるマーカーの量を指す。診断量は、絶対量(例えば、μg/ml)でかまたは相対量(例えば、シグナルの相対的強度)でかのいずれかでありうる。
マーカーの「対照量」は、マーカーの検査量に対して比較されることになっている任意の量または量の範囲でありうる。例えば、マーカーの対照量は、神経傷害および/またはニューロンの障害をもたない人におけるマーカーの量でありうる。対照量は、絶対量(例えば、μg/ml)でかまたは相対量(例えば、シグナルの相対的強度)でかのいずれかでありうる。
「プローブ」は、気相イオン分光計へ除去可能に挿入できる装置を指し、検出のためにマーカーを提示するための表面を有する基板を含む。プローブは、単一の基板または複数の基板を含みうる。
「基板」または「プローブ基板」は、吸着剤が提供されうる(例えば、付着、沈着などにより)固相を指す。
「吸着剤」は、マーカーを吸着することができる任意の物質を指す。用語「吸着剤」は、マーカーが曝される単一の物質(「一重吸着剤」)(例えば、1つの化合物または官能基)、およびマーカーが曝される複数の異なる物質(「多重吸着剤」)の両方を指すように本明細書において用いられる。多重吸着剤における吸着物質は「吸着剤の種類」を指す。例えば、プローブ基板上のアドレス指定できる位置が、異なる結合特性をもつ多くの異なる吸着剤の種類(例えば、陰イオン交換物質、金属キレート剤、または抗体)を特徴とする多重吸着剤を含みうる。基板物質自身はまた、マーカーを吸着することに寄与しうり、「吸着剤」の一部とみなされる場合がある。
「吸着」または「保持」は、溶離液(選択性閾値調節剤)または洗浄溶液での洗浄前か後のいずれかでの吸着剤とマーカーの間の検出可能な結合を指す。
「溶離液」または「洗浄溶液」は、マーカーの吸着剤への吸着を仲介するために用いられうる作用物質を指す。溶離液および洗浄溶液はまた、「選択性閾値調節剤」とも呼ばれる。溶離液および洗浄溶液は、プローブ基板表面から結合していない物質を洗浄および除去するために用いられうる。
「分解する(resolve)」、「分解(resolution)」、または「マーカーの分解」は、試料における少なくとも1つのマーカーの検出を指す。分解は、分離およびその後の示差的検出による試料における複数のマーカーの検出を含む。分解は、混合物におけるすべての他の生体分子からの1つまたは複数のマーカーの完全な分離を必要としない。むしろ、少なくとも1つのマーカーと他の生体分子の間での区別を可能にする任意の分離で十分である。
「気相イオン分光計」とは、試料が揮発させられ、イオン化される場合に形成されるイオンの質量対電荷比へ変換されうるパラメーターを測定する機械を指す。一般的に、対象となるイオンは、単一の電荷を有し、質量対電荷比は、しばしば、単に質量と呼ばれる。気相イオン分光計は、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、および総イオン電流測定装置を含む。
「質量分析計」とは、吸気装置、イオン化源、イオン光学アセンブリー、質量分析器、および検出器を含む気相イオン分光計を指す。
「レーザー脱離質量分析計」は、分析物を脱離させ、揮発させ、かつイオン化するための手段としてレーザーを用いる質量分析計を指す。
「検出する」とは、検出されるべき対象の存在、非存在、または量を同定することを指す。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において交換可能に用いられる。その用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の類似体または模倣体であるアミノ酸ポリマーに、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。ポリペプチドは、例えば、糖タンパク質を形成するための糖質残基の付加により、修飾されうる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、糖タンパク質および非糖タンパク質を含む。
「検出可能な部分」または「標識」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出できる組成物を指す。例えば、有用な標識は、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に用いられるような)、ビオチン-ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン(dioxigenin)、ハプテンおよび抗血清もしくはモノクローナル抗体が入手できるタンパク質、または標的に相補的な配列をもつ核酸分子を含む。検出可能な部分は、しばしば、試料において結合した検出可能な部分の量を定量化するために用いられうる、放射性、色素生産性、または蛍光性シグナルのような測定可能なシグナルを発生する。シグナルの定量化は、例えば、シンチレーション計数、濃度測定、またはフローサイトメトリーにより達成される。
「抗体」は、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合し、かつ認識する、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされるポリペプチドリガンドまたはその断片を指す。認められている免疫グロブリン遺伝子は、κおよびλ軽鎖定常領域遺伝子、α、γ、δ、εおよびμ重鎖定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体は、例えば、無傷免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼでの消化により生成されるいくつかのよく特徴付けられた断片として存在する。これは、例えば、Fab'およびF(ab)'2断片を含む。本明細書において用いられる場合の用語「抗体」はまた、抗体全体の改変により生成される抗体断片か、または組換えDNA方法を用いて新たに合成されたものかのいずれかを含む。それはまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または一本鎖抗体を含む。抗体の「Fc」部分は、1つまたは複数の重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2、およびCH3、を含むが、重鎖可変領域を含まない、免疫グロブリン重鎖のその部分を指す。
「イムノアッセイ」は、抗原(例えば、マーカー)を特異的に結合する抗体を用いるアッセイである。イムノアッセイは、抗原を単離する、標的にするおよび/または定量化する特定の抗体の特異的結合性質の使用により特徴付けられる。
タンパク質またはペプチドに言及する場合、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」、または「特異的(または選択的)免疫反応性の」という句は、タンパク質の不均一な集団および他の生物製剤においてそのタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定された抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、特定のタンパク質に結合し、かつ試料に存在する他のタンパク質に有意な量で実質的には結合しない。そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質へのそれの特異性について選択される抗体を必要としうる。例えば、ラット、マウスまたはヒトのような特定の種由来のマーカーNF-200に対して産生されたポリクローナル抗体は、マーカーNF-200と特異的免疫反応性であり、かつマーカーNF-200の多型変異体および対立遺伝子を除いて、他のタンパク質と免疫反応性ではないポリクローナル抗体のみを得るように選択されうる。この選択は、他の種からマーカーNF-200分子と交差反応する抗体を引き出すことにより達成されうる。様々なイムノアッセイ型が、特定のタンパク質と特異的免疫反応性である抗体を選択するために用いられうる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的免疫反応性である抗体を選択するために日常的に用いられる(特異的免疫反応性を測定するために用いられうるイムノアッセイの型および条件の説明について、例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照)。典型的には、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、およびより典型的には、バックグラウンドの10倍より多く100倍までである。
「エネルギー吸収分子」または「EAM」は、質量分析計においてイオン化源からエネルギーを吸収し、それによりプローブ表面からマーカーのような分析物の脱離を助ける、分子を指す。分析物のサイズおよび性質に依存して、エネルギー吸収分子は任意で用いられうる。MALDIに用いられるエネルギー吸収分子は、しばしば、「マトリックス」と呼ばれる。桂皮酸誘導体、シナピン酸(sinapinic acid)(「SPA」)、シアノヒドロキシ桂皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸は、しばしば、生物有機分子のレーザー脱離においてエネルギー吸収分子として用いられる。
「試料」は、それの最も広い意味において、本明細書において用いられる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体、それらの断片および誘導体を含む試料は、体液;細胞調製物の可溶性画分、細胞が増殖した培地;細胞から単離または抽出された染色体、細胞小器官、または膜;溶液中または基板に結合した、ゲノムDNA、RNAまたはcDNA、溶液中または基板に結合したポリペプチドもしくはペプチド;細胞;組織;組織プリント;フィンガープリント、皮膚または毛髪;それらの断片および誘導体を含みうる。
「実質的に精製された」とは、それらの天然の環境から取り出され、単離または分離され、かつそれらが天然で付随している他の成分を少なくとも約60%含まない、好ましくは約75%含まない、および最も好ましくは約90%含まない、核酸分子またはタンパク質を指す。
「基板」とは、核酸分子またはタンパク質が結合する任意の剛体または半剛体の支持体を指し、ウェル、溝、ピン、チャネル、および孔を含む様々な表面型をもつ、膜、フィルター、チップ、スライド、ウェハー、繊維、磁気または非磁気ビーズ、ゲル、キャピラリーまたは他の管類、プレート、ポリマー、および微粒子を含む。
本明細書において用いられる場合、核酸配列、遺伝子またはポリペプチドに適用されるような用語「断片またはセグメント」とは、長さが普通は少なくとも約5個の連続した核酸塩基(核酸配列または遺伝子について)またはアミノ酸(ポリペプチドについて)、典型的には少なくとも約10個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、より典型的には少なくとも約20個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、通常は少なくとも約30個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、好ましくは少なくとも約40個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、より好ましくは少なくとも約50個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、およびよりいっそう好ましくは少なくとも約60〜80個またはそれ以上の連続した核酸塩基またはアミノ酸である。本明細書において用いられる場合の「重複する断片」とは、核酸またはタンパク質のアミノ末端から始まり、核酸またはタンパク質のカルボキシ末端で終わる連続した核酸またはペプチド断片を指す。各核酸またはペプチド断片は、次の核酸またはペプチド断片と共通の少なくとも約1個の連続した核酸またはアミノ酸位置、より好ましくは共通の少なくとも約3個の連続した核酸塩基またはアミノ酸位置、最も好ましくは共通の少なくとも約10個の連続した核酸塩基またはアミノ酸位置を有する。
核酸関係における有意な「断片」とは、少なくとも17個のヌクレオチド、一般的には少なくとも20個のヌクレオチド、より一般的には少なくとも23個のヌクレオチド、普通は少なくとも26個のヌクレオチド、より普通は少なくとも29個のヌクレオチド、多くは少なくとも32個のヌクレオチド、より多くは少なくとも35個のヌクレオチド、典型的には少なくとも38個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも41個のヌクレオチド、通常は少なくとも44個のヌクレオチド、より通常は少なくとも47個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも53個のヌクレオチドの連続したセグメントであり、および特に好ましい態様において、少なくとも56個またはそれ以上のヌクレオチドである。
本明細書において用いられる場合、用語「ポリペプチド」または「ペプチド」とは、本明細書に列挙された完全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を含む。
本明細書において用いられる場合、「より長いアミノ酸配列をもつペプチドまたはエピトープ」は、本明細書に列挙された完全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を含む。好ましくは、産生された抗体は、少なくとも約3アミノ酸長を含むエピトープを結合する。他の好ましい態様において、用語「酵素生物マーカーのタンパク質分解生成物は、SEQ ID NO:1〜148により同定されているようなエピトープより少なくとも約10アミノ酸長いエピトープに結合する」は、所望のペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端に10アミノ酸のアミノ酸鎖を含む。より長いアミノ酸の例は、それらのアクセッション番号と共に表1に見出される。SEQ ID NO:1〜148により同定された各生物マーカーのN末端またはC末端のいずれかに含まれうる望ましいアミノ酸は、このように、容易に決定される。
本明細書において用いられる場合、ポリペプチドの「変異体」または「誘導体」は、1個または複数のアミノ酸残基により変化しているアミノ酸配列を指す。変異体は、「保存的」変化を有しうり、置換されたアミノ酸は、類似した構造的または化学的性質をもつ(例えば、ロイシンのイソロイシンとの置換)。よりまれには、変異体は、「非保存的」変化を有しうる(例えば、グリシンのトリプトファンとの置換)。類似の軽微な変異体はまた、アミノ酸欠失または挿入、または両方を含みうる。生物活性を消失させることなく、どのアミノ酸残基が、置換、挿入または欠失されうるかを決定する際の手引きは、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)、を用いて見出されうる。
結果として生じるポリペプチドは、一般的に、お互いに比較して有意なアミノ酸同一性を有すると考えられる。多型変異体は、所定の種の個体間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列における変異である。多型変異体はまた、ポリヌクレオチドが1塩基だけ異なる「一塩基多型(single nucleotide polymorphisms)」(SNP)または一塩基突然変異を含みうる。
「ストリンジェンシー」は、温度、イオン強度およびホルムアミドのような添加物の濃度のような二重鎖を解離させる、核酸が曝されている条件の組み合わせを意味する。二重鎖を解離させる可能性がより高い条件は、「より高いストリンジェンシー」と呼ばれ、例えば、より高い温度、より低いイオン強度およびホルムアミドのより高い濃度である。
高い選択性を必要とする適用について、典型的には、ハイブリッドを形成しうる相対的にストリンジェントな条件を用いることが望まれ、例えば、約50℃〜約70℃の温度で約0.02 M〜約0.10 M NaClにより提供されるような、相対的に低い塩および/または高い温度条件が選択される。
特定の適用について、より低いストリジェンシー条件が必要とされることは認識されている。これらの条件下で、プローブおよび標的鎖の配列が完全には相補的ではなく、1つまたは複数の位置においてミスマッチしているにしても、ハイブリダイゼーションは起こりうる。条件は、塩濃度を増加させるおよび温度を減少させることにより、より低いストリンジェント性にされうる。例えば、中位のストリンジェンシー条件は、約37℃〜約55℃の温度における約0.1 M〜0.25 M NaClにより提供されうるが、低ストリンジェンシー条件は、約20℃から約55℃までの範囲である温度で約0.15 M〜約0.9 M 塩により提供されうる。このように、ハイブリダイゼーション条件は、所望の結果に依存して容易に操作されうる。
維持時間と共に用いられる場合の句「ハイブリダイズする条件」およびその文法的相当語句は、反応物の濃度の関係におけるハイブリダイゼーション反応混合物および混合物における添加試薬を、ポリヌクレオチドプローブが標的配列とアニールすること、典型的には核酸二重鎖を形成することを可能にするのに十分な時間、温度、pH条件に曝すことを示す。ハイブリダイゼーションを伴うのに必要とされるそのような時間、温度およびpH条件は、当技術分野において周知であるように、ハイブリダイズされるべきポリヌクレオチドプローブの長さ、ポリヌクレオチドプローブと標的の間の相補性の程度、ポリヌクレオチドのグアニジンおよびシトシン含有量、望まれるハイブリダイゼーションのストリンジェンシー、ならびにハイブリダイゼーションの動力学に影響を及ぼしうるようなハイブリダイゼーション反応混合物における塩または追加の試薬の存在に依存する。所定のハイブリダイゼーション反応混合物についてのハイブリダイゼーション条件を最適化するための方法は、当技術分野において周知である。
本明細書において用いられる場合、用語「傷害または神経系傷害」は、CNSまたはPNSの正常な機能に直接的または間接的に影響を及ぼす損傷を含むことを意図される。例えば、傷害は、網膜神経節細胞の損傷;外傷性脳損傷;脳卒中関連傷害;脳動脈瘤関連傷害;多発性硬化症のような脱髄疾患;単麻痺、両麻痺、対麻痺、片麻痺および四肢麻痺を含む脊髄傷害;神経増殖性障害または神経障害性疼痛症候群でありうる。CNS障害または疾患の例は、TBI、脳卒中、震盪症(震盪後症候群を含む)、脳虚血、パーキンソン病、拳闘家認知症、ハンチントン病およびアルツハイマー病のような脳の神経変性疾患、放射能、電離または鉄プラズマへの曝露、神経系に作用する因子、シアン化物、毒性濃度の酸素により引き起こされる発作の次の脳傷害、CNSマラリアまたは抗マラリア剤での処置、マラリア病原体による神経毒性、トリパノゾーマによる傷害、ならびに他のCNS外傷を含む。PNS傷害または疾患の例は、毒素(例えば、癌化学療法剤)、糖尿病のいずれかにより引き起こされる神経障害、末梢性外傷、または末梢神経および/もしくはそれらのミエリン鞘の病的破壊を生じた任意の過程を含む。
本明細書において用いられる場合、用語「脳卒中」は、当技術分野において認められており、突然の意識、感覚の減退または喪失、および恍惚または脳の動脈の閉塞(例えば、血餅による)により引き起こされる随意運動を含むことが意図される。
本明細書において用いられる場合、用語「外傷性脳損傷」は、技術分野において認められており、頭への外傷性打撃が、しばしば頭蓋骨を貫通することなく、脳へ損傷を引き起こす状態を含むことが意図される。通常には、最初の外傷は、結果として、拡大する血腫、クモ膜下出血、脳水腫、頭蓋内圧亢進(ICP)、次に低脳血流(CBF)による重篤な二次事象へと導きうる脳低酸素症を生じうる。
本明細書において定義される場合の「神経系細胞」は、限定されるわけではないが、神経細胞、グリア細胞、乏突起膠細胞、小グリア細胞または神経幹細胞を含む、脳、中枢および末梢神経系に存在する細胞である。
「ニューロン特異的またはニューロン濃縮化タンパク質」とは、神経系細胞に存在し、かつ、例えば、心筋細胞、骨格筋における筋細胞、肝細胞、腎細胞、および精巣における細胞のような非神経細胞に存在しないタンパク質として本明細書において定義される。ペプチドが、例えば、酵素分解により引き出されうる神経タンパク質の非限定的例は、下の表1に示されている。
本明細書において用いられる場合の「神経の(ニューロンの)欠陥、障害または疾患」は、限定されるわけではないが、中枢神経系の神経変性障害(パーキンソン;アルツハイマー)または自己免疫疾患(多発性硬化症);記憶喪失;長期および短期記憶障害;学習障害;自閉症、鬱病、良性健忘症、児童学習障害、閉鎖性頭部損傷(close head injury)および注意力欠如障害;脳の自己免疫疾患、ウイルス感染に対するニューロンの反応;脳損傷;鬱病;躁鬱病、統合失調症のような精神障害;ナルコプレシー/睡眠障害(概日リズム障害、不眠症およびナルコレプシーを含む);神経の切断または神経損傷;脳脊髄神経索(CNS)の切断および脳または神経細胞への任意の損傷;AIDSに関連した神経学的欠損;チック(例えば、ジャイルズデラトゥレット症候群(Giles de la Tourette's syndrome));ハンチントン舞踏病、統合失調症、外傷性脳損傷、耳鳴り、神経痛、特に三叉神経痛、神経障害性疼痛、糖尿病のような疾患における神経知覚不全を結果として生じる不適当なニューロン活性、MSおよび運動ニューロン疾患、運動失調、筋固縮(痙攣)および顎関節機能不全;対象における報酬欠乏症候群(Reward Deficiency Syndrome)(RDS)行動を含む、任意の神経学的障害を指す。
本明細書において用いられる場合、「RDS」行動は、不安、怒りまたは物質に対する渇望を伴う個体の幸福の感情に関連した1つまたは複数の行動障害として現れる行動である。RDS行動は、アルコール依存症、SUD、喫煙、BMIまたは肥満症、病的賭博、炭水化物過食症、軸椎骨11診断、SAB、ADD/ADHD、CD、TS、SUDの家族歴、および肥満症を含む。すべてのこれらの行動、およびRDS行動、またはRDSに関連した神経学的経路に関与する遺伝子に関連しているとして本明細書において記載された他のものは、本発明の一部として、RDS行動として含まれる。さらに、RDS障害である多くの特定の障害について本明細書において用いられる臨床的用語の多くは、Diagnostic Criteria From DSM-IV(商標)、The American Psychiatric Association, Washington, D.C., 1994に見出される。
大鬱病および双極性躁鬱病を含む情動障害は、一次臨床症状として気分の変化により特徴付けられる。大鬱病は、最も一般的な重大な精神病であり、正常な悲嘆、悲しみおよび失望、ならびに内科的疾患にしばしば伴う関連した不快または士気喪失と臨床的に区別されなければならない。鬱病は、激しい悲しみおよび絶望の感情、精神的緩慢さおよび集中力の喪失、悲観的心配、動揺および自己卑下により特徴付けられる。肉体的変化もまた生じ、不眠、食欲不振および体重減少、エネルギーおよび***の減少、ならびにホルモンの概日リズムの崩壊を含む。
鬱病と同様に躁病も、一次症状として気分の変化により特徴付けられる。気分のこれらの2つの極端な状態のどちらも、混乱した思考および妄想知覚をもつ精神病と同時に起こりうる。精神病は、二次症状として、気分の変化を有しうり、診断における大きな混同を引き起こすのは、この鬱病との重複である。精神病を含まない激しい気分の変化は、鬱病において頻繁に起こり、しばしば、不安を伴う。
特定の病因とは無関係のパーキンソン病は、通常、人生の後半数十年に知らぬ間に現れる、慢性進行性中枢神経系障害である。その疾患は、徐々に増加する、意図的な動きにおける能力の欠如を生じる。それは、ふるえ、運動緩慢、硬直および姿勢の障害の4つの主要な臨床的特徴により特徴付けられる。しばしば、患者は付随する認知症をもつ。特発性パーキンソン病において、通常、黒質、青斑における細胞、および他の脳の色素性ニューロンの損失、ならびに黒質から突き出す細胞の神経軸索末端におけるドーパミン含有量の減少がある。パーキンソン病がドーパミン欠乏の症候群であるという理解、およびその疾患の処置についての重要な薬物としてレボドパの発見は、薬物処置の原理としての役割を果たす、一連の関連した基本的かつ臨床的観察の論理的集大成であった。
用語「アルツハイマー病」は、中年後半に始まり、典型的には5年〜10年間で死に至る、記憶喪失、錯乱および見当識障害を呈する進行性精神衰退を指す。病理学的には、アルツハイマー病は、細胞内神経原線維、神経原線維濃縮体、およびアミロイドコアをもつ顆粒状または繊維状好銀性塊から構成される老人斑の肥厚、膠着ならびにゆがみにより特徴付けられうる。Diagnosing Alzheimer's Disease: the National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke-Alzheimer's Disease and the Alzheimer's Disease and Related Disorders Association (NINCDS-ADRDA)基準が、アルツハイマー病を診断するために用いられうる(McKhann et al., 1984, Neurology 34:939-944)。患者の認知機能は、Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscaleにより評価されうる(ADAS-cog; Rosen et al., 1984, Am. J. Psychiatry 141:1356-1364)。
本明細書において用いられる場合、用語「自閉症」は、病的な自己専念、社会的落伍、言語発達遅滞、常同的行為に特徴付けられる精神的内向型の状態を指す。
本明細書において用いられる場合、用語「鬱病」は、処置の非存在下において少なくとも2週間続く、持続性の悲しい気分または活動における興味の喪失を含む臨床的症候群を指す。
本明細書において用いられる場合、用語「良性健忘症」は、一度、理解され、覚えられ、かつ記憶に保存された情報を引き出すまたは思い出すことができない(例えば、自分が自分の鍵を置いた、または自分の車を駐車した場所を思い出すことができないこと)軽い傾向を指す。良性健忘症は、典型的には、年齢40歳後に個体に影響を及ぼし、Wechsler Memory Scaleのような標準評価手段により認知されうる(Russell, 1975, J. Consult Clin. Psychol. 43:800-809)。
本明細書において用いられる場合、用語「児童学習障害」は、特定の子どもにより経験されるような、正常に機能しない学習能力を指す。
本明細書において用いられる場合、用語「閉鎖性頭部損傷」は、状態が認知および記憶障害により特徴付けられうる、頭傷害または外傷後の臨床的状態を指す。
本明細書において用いられる場合、用語「注意力欠如障害」は、最も一般的には子どもに現れ、運動活動の増加および注意持続時間の減少により特徴付けられうる障害を指す。注意力欠如障害(「ADD」)は、学校活動および家族関係に有害に影響を及ぼす、子どもにおいてよくある行動的学習障害である。症状および徴候は、活動過多(例えば、ADDHおよびAD/HD、DSM-IV)、衝動性、情動不安定、運動協調不能およびいくつかの知覚困難を含む。処置は、精神刺激薬を含んでいるが、それは、効果があるとはいえ、賛否両論であり、かつ不快、頭痛および発育遅延のような厄介な副作用を引き起こしうる。三環系抗鬱薬を含む他の薬物は、注意力を向上させるように思われるが、精神刺激薬より効果は少ない可能性がある。
本明細書において用いられる場合、「細胞内局在性」とは、単一の神経細胞内の確定した細胞内構造を指す。これらの細胞内で確定した構造は、例えば、樹状突起、軸索、髄鞘、シナプス前終末およびシナプス後部位由来の固有の神経タンパク質と適合している。それゆえに、これらの領域のそれぞれに固有のペプチドの放出をモニターすることにより、脳傷害後の細胞内損傷をモニターかつ限定することができる。さらに、成熟ニューロンは、コリン作動性(ニコチン性およびムスカリン性(mucarinic))、グルタミン酸作動性、gaba作動性、セロトニン作動性、ドーパミン作動性のような一次神経伝達物質を融合する専用サブタイプに分化する。このニューロンサブタイプのそれぞれは、各固有の神経伝達物質系の合成、代謝ならびに輸送体および受容体に向けられるもののような固有の神経タンパク質を発現させる(下の表1)。
本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される」成分とは、妥当な利益/リスク比と釣り合った、過度の副作用(毒性、刺激およびアレルギー性応答)なしのヒトおよび/または動物での使用に適しているものである。
用語「患者」または「個体」は、本明細書において交換可能に用いられ、処置されるべき哺乳動物被験体を表すつもりであり、ヒト患者が好ましい。一部の場合では、本発明の方法は、実験動物に、獣医学適用に、ならびに、限定されるわけではないが、マウス、ラットおよびハムスターを含む齧歯類;鳥、魚、爬虫類ならびに霊長類を含む、疾患についての脊椎動物モデルの開発に使用を見出す。
本明細書において用いられる場合、「寛解する」または「処置」は、標準化された値にほぼ等しい、例えば、標準化された値と50%未満異なる、好ましくは、標準化された値と約25%未満異なる、より好ましくは、標準化された値と10%未満異なる、およびさらにより好ましくは、日常的な統計学的検定を用いて決定されるような標準化された値と有意には異ならない、症状を指す。例えば、鬱病の寛解または処置は、例えば、限定されるわけではないが、気分の変化、激しい悲しみおよび絶望の感情、精神的緩慢、集中力の喪失、悲観的心配、動揺および自己卑下を含む鬱病の症状の軽減を含む。不眠、食欲不振および体重減少、エネルギーおよび***の減少を含む肉体的変化もまた、軽減されうり、正常なホルモンの概日リズムが回復する。もう一つの例、本明細書において用いられる場合、用語「パーキンソン病を処置する」または「寛解させる」を用いる時、限定されるわけではないが、ふるえ、動作緩慢、硬直および姿勢の障害を含むパーキンソン病の症状の軽減を意味する。
タンパク質分解マーカー
この開示は、器官傷害または腫瘍後の診断および処置を目的として、組織、血液、脳脊髄液(CSF)および他の生体液(汗、尿、唾液)に検出されうるタンパク質分解マーカーの新規かつ非常に実際的な使用を記載する。プロテアーゼは、細胞が傷害を受ける、ストレスを加えられる、または化学的に刺激される場合、固有に活性化される。これらのプロテアーゼの過剰活性化は、しばしば、アポトーシスおよび腫瘍症(または腫脹壊死)を含む細胞死表現型に寄与する(例えば、図1参照)。例えば、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、および腎虚血の後、カルパインIおよびIIは活性化し、結果として腫脹およびアポトーシスの細胞死に寄与する。その上、活性化されたカスパーゼ3、8および9は、これらの同じ疾患状態においてアポトーシスを促進する。実際、器官傷害後に活性化される多くのプロテアーゼがあり、それらの一部は、カテプシンB、LおよびD、MMP2、9および13、UCH-L1、ユビキチン結合プロテアーゼ(UBP'S)、チマーゼ、トリプターゼならびにプロテアソームサブユニットを含む(表1参照)。表1は、可能性のあるタンパク質分解酵素およびプロテアーゼ感受性組織タンパク質マーカーの非限定的例を示す。表1における各組織タンパク質マーカーは、酵素により切断される場合、タンパク質分解生物マーカーを生成しうる。下の表2は、プロテアーゼ攻撃により生成された、自明でない固有の組織タンパク質切断部位の非限定的例を示す。例えば、好ましい態様において、本発明は、外傷性脳損傷、ニューロンの損傷、神経系障害、脳損傷、薬物またはアルコール依存症による神経損傷、脳または中枢および末梢神経系(CNS、PNS)のような神経系に関連した疾患を示す生物マーカーを提供する。好ましくは、生物マーカーは、例えば、以下のような器官への損傷の結果として活性化されるタンパク質分解酵素である:心臓、脳、肝臓、腎臓、肺、消化管;ニューロン、中枢神経系、末梢神経系、および骨格筋。好ましくは、タンパク質分解酵素は、神経系および器官傷害により、活性化され、標的タンパク質、それらのペプチドおよび断片を切断する。標的タンパク質は、限定されるわけではないが、神経細胞、脳細胞、または脳および中枢神経系、心臓、肝臓、腎臓などの器官に存在する任意の細胞に関連したタンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む。神経系および/または器官傷害で検出されるタンパク質分解酵素の非限定的例は以下を含む(アルファベット順に):アクロモペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、アンクロド、アンギオテンシン変換酵素、ブロメライン、カルパイン、カルパインI、カルパインII、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼG、カルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼW、カルボキシペプチダーゼY、カスパーゼ、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ13、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、キモパパイン、チマーゼ、キモトリプシン、α-クロストリパイン、コラゲナーゼ、補体C1r、補体C1s、補体因子D、補体因子I、ククミシン、ジペプチジルペプチダーゼIV、白血球エラスターゼ、膵エラスターゼ、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼAsp-N、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、エンテロキナーゼ、Xa因子、フィシン、フューリン、グランザイムA、グランザイムB、HIVプロテアーゼ、イガーゼ、組織カリクレイン、キナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ(一般)、ロイシンアミノペプチダーゼ、サイトゾル、ロイシンアミノペプチダーゼ、ミクロソーム、マトリックスメタロプロテアーゼ、メチオニンアミノペプチダーゼ、ニュートラーゼ、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロリダーゼ、プロナーゼE、前立腺特異的抗原、プロテアーゼ、プロテアーゼS、プロテアソーム、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ3、プロテイナーゼA、プロテイナーゼK、プロテインC、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ、レニン、レンニン、トロンビン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、トロポニン、トリプシン、トリプターゼ、ウロキナーゼ。好ましくは、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つもまた検出される。
これらを始めとするプロテアーゼの過剰活性化を追跡することにより、限定されるわけではないが、脳卒中または脳傷害、腎不全、肺疾患、心臓発作および白内障形成を含む器官疾患を診断し、かつそれらの治療的処置を助けることができる。癌性腫瘍の場合、その急速な増殖により、活性腫瘍内に細胞死の増加が存在する可能性が高い。細胞死はまた、目的が腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することである癌治療(例えば、化学療法)中に有意に上昇する。従って、(細胞死の指標として)プロテアーゼ活性化を測定することは、腫瘍増殖の進行および癌の処置における特定の治療的処置の成功を追跡する際に有用なツールであると考えられる。
疾患または医療的に誘導されたプロテアーゼ活性化を測定する2つのアプローチが用いられる。第一は、タンパク質分解酵素の活性化を直接的に追跡することである。大部分のプロテアーゼは、完全に活性化される前にタンパク質分解のプロセシングを起こすため、切断部位が同定されうる。この知識を用いて、それらの活性化を検出するために特定のツールを構築することができ、例えば、本発明者らは、抗活性化カルパインI抗体を使用してこの型のテクノロジーをすでに用いている。このツールは、プロテアーゼが対象となる別個の器官において特異的にまたは高度に発現される場合には特に効果的である。第二のテクノロジーのアプローチは、活性化されたプロテアーゼにより切断される基質を調べることである(表1参照)。例えば、活性化されたカルパインは、αII-スペクトリン、β1-スペクトリン、MAP2A/2B、シナプトタグミン、タウ、神経フィラメントH、MおよびL、ならびにミエリン塩基性タンパク質を含むいくつかのタンパク質を切断する。正確な基質切断部位の知識を用意して、断片特異的抗体が開発されうる。また、公知の組織特異的基質が切断される場合、この技術の力は特に注目に値し、なぜなら、この切断生成物が、その組織型の生物マーカーとしての役割を果たすことができるからである。
疾患状態においてタンパク質分解マーカーを測定する利点には3つの側面がある。I)過度のプロテアーゼ活性化の概念は、癌において、ならびに、限定されるわけではないが、脳、肝臓、腎臓および心臓を含む、多くの組織および器官傷害において、共通のテーマである。II)活性化プロテアーゼの多くのタンパク質分解生成物は、血液、CSF、尿、汗および唾液のような生体液へ放出される。それらの濃度は、発生源の傷害を受けた組織内で直接的に見出されるレベルより低いが、それらはなお、(抗体または他の捕獲剤を用いて)検出され、定量化され、他の結果測定値と相関されうる。III)患者を診断、処置および追跡するために相対的非侵襲性手順を用いる能力は、疾患状態においてタンパク質分解マーカーを用いるもう一つの強力な有用性である。
好ましい態様において、1つまたは複数の切断生成物を分解するタンパク質分解酵素の検出は、神経の損傷および/またはニューロンの疾患の診断となる。検出されるタンパク質分解酵素の基質の例は、限定されるわけではないが、例えば、軸索ペプチド−NF-200(NF-H)、NF-160(NF-M)、NF-68(NF-L);アミロイド前駆体ペプチド;樹状突起ペプチド−α-チューブリン(P02551)、β-チューブリン(P0 4691)、MAP-2A/B、MAP-2C、タウ、ダイナミン-1(P21575)、ダイナクチン(Q13561)、P24;細胞体ペプチド−UCH-L1(Q00981)、PEBP(P31044)、NSE(P07323)、Thy 1.1、プリオン、ハンチントン;シナプス前性ペプチド−シナプシン-1、シナプシン-2、α-シヌクレイン(P37377)、β-シヌクレイン(Q63754)、GAP43、シナプトフィジン、シナプトタグミン(P21707)、シンタキシン;シナプス後性ペプチド−PSD95、PSD93、NMDA受容体(すべてのサブタイプを含む);脱髄生物マーカー−ミエリン塩基性ペプチド(MBP)、ミエリンプロテオリピドペプチド、グリアペプチド−GFAP(P47819)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼペプチド(PDI-P04785);神経伝達物質生物マーカー−コリン作動性生物マーカー:アセチルコリンエステラーゼペプチド、コリンアセチルトランスフェラーゼペプチド;ドーパミン作動性生物マーカー−チロシンヒドロキシラーゼペプチド(TH)、ホスホ-THペプチド、DARPP32ペプチド;ノルアドレナリン作動性生物マーカー−ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼペプチド(DbH);セロトニン作動性生物マーカー−トリプトファンヒドロキシラーゼペプチド(TrH);グルタミン酸作動性生物マーカー−グルタミナーゼペプチド、グルタミン合成酵素ペプチド;GABA作動性生物マーカー−GABAトランスアミナーゼペプチド(4-アミノブチレート-2-ケトグルタレートトランスアミナーゼ[GABAT])、グルタミン酸カルボキシラーゼペプチド(GAD25、44、65、67);神経伝達物質受容体−β-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、β(2))、α-アドレナリン受容体サブタイプ(例えば、α(2c))、GABA受容体のペプチド(例えば、GABA(B))、代謝調節型グルタミン酸受容体のペプチド(例えば、mGluR3)、NMDA受容体サブユニットペプチド(例えば、NR1A2B)、グルタミン酸受容体サブユニットペプチド(例えば、GluR4)、5-HTセロトニン受容体のペプチド(例えば、5-HT(3))、ドーパミン受容体のペプチド(例えば、D4)、ムスカリンAch受容体のペプチド(例えば、M1)、ニコチンアセチルコリン受容体のペプチド(例えば、α-7);神経伝達物質輸送体−ノルエピネフリン輸送体のペプチド(NET)、ドーパミン輸送体のペプチド(DAT)、セロトニン輸送体のペプチド(SERT)、小胞輸送体ペプチド(VMAT1およびVMAT2)、GABA輸送体小胞阻害性アミノ酸輸送体のペプチド(VIAAT/VGAT)、グルタミン酸輸送体のペプチド(例えば、GLT1)、小胞アセチルコリン輸送体のペプチド、コリン輸送体のペプチド(例えば、CHT1)のような神経ペプチドを含む。他のペプチド生物マーカーは、限定されるわけではないが、ビメンチンペプチド(P31000)、CK-BBペプチド(P07335)、14-3-3-イプシロン(P42655)ペプチド、MMP2ペプチド、MMP9ペプチドを含む。
もう一つの好ましい態様において、タンパク質分解酵素生物マーカーは、神経タンパク質、例えば表1に列挙された非限定的な例に対して基質タンパク質の1 mgあたり約1 μg〜約500 μgの比活性を有する。
酵素の量が一定に保たれ、かつ基質濃度がその後徐々に増加する場合に、反応速度は最大に達するまで増加することは、実験的に示されている。この点の後は、基質濃度における増加は、速度を増加させない(ΔA/ΔT)。この最大速度に達した場合、有効な酵素の全部がES、つまり酵素基質複合体へ変換されていることが理論化される。グラフ上のこの点は、V
maxと名付けられる。この最大速度および平衡状態(7)を用いて、ミカエリスは測定可能な実験データからの反応速度によって酵素活性を計算するための1セットの数値式を展開した。
ミカエリス定数Kmは、最大速度1/2における基質濃度として定義される。この定数およびKmがまた以下として定義されうるという事実を用いる。
K
+1、K
-1およびK
+2は平衡状態(7)からの速度定数である。ミカエリスは以下を展開した。
[S]=この時点における基質濃度
V
max=このセットの実験条件(pH、温度など)下での最大
Km=調べられることになっている特定の酵素についてのミカエリス定数
ミカエリス定数は、一般に用いられる酵素の大部分について決定されている。小さなKmは、酵素が飽和されるのに少量の基質のみを必要とすることを示す。これゆえに、最大速度は、相対的に低い濃度で達せられる。大きなKmは、最大反応速度を達成するための高基質濃度の必要性を示す。
酵素が触媒として働く最低Kmを有する基質は、これがすべての酵素について当てはまるわけではないが、しばしば、酵素の天然の基質であると想定される。
理論により結びつけられることを望むわけではないが、傷害により、細胞膜ならびに血液脳関門の構造的および機能的完全性が損なわれる。脳特異的および脳濃縮化タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片は、細胞外間隙へ放出され、その後CSFおよび血液へ放出される。これらの基質に特異的なタンパク質分解酵素は活性化され、基質を切断する。これらのタンパク質分解酵素生物マーカーの1つまたは複数の検出により、神経系および/または器官傷害が示唆される。
好ましい態様において、CSF、血液または他の生体液における傷害された神経系細胞および/または器官により放出された神経ペプチドに特異的な少なくとも1つのタンパク質分解酵素の検出は、脳傷害の重症度の診断となる、および/または治療の経過のモニタリングである。好ましくは、タンパク質分解酵素マーカーは、傷害の初期段階中に検出される。神経系傷害、ニューロンの障害を患っている患者におけるタンパク質分解酵素マーカー断片、またはそれらの誘導体の量が、正常な健康個体と比較して増加していることは、神経系傷害および/またはニューロンの障害の診断となる。
好ましい態様において、本発明は、外傷性脳損傷、CNSまたはPNSへのニューロンの損傷、神経系障害、脳損傷、薬物またはアルコール依存症による神経系損傷、脳または中枢神経系のような神経系に関連した疾患を示す生物マーカーを提供する。好ましくは、生物マーカーは、例えば、以下のような器官への損傷の結果として活性化されるタンパク質分解酵素である:心臓、脳、肝臓、腎臓;ニューロン、中枢神経系、末梢神経系。好ましくは、タンパク質分解酵素は、神経系および器官傷害により、活性化され、標的タンパク質、それらのペプチドおよび断片を切断する。標的タンパク質は、限定されるわけではないが、神経細胞、脳細胞、または脳および中枢神経系、心臓、肝臓、腎臓などのような器官に存在する任意の細胞と関連したタンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む。神経系および/または器官傷害で検出されるタンパク質分解酵素の非限定的例は、以下を含む(アルファベット順に):アクロモペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、アンクロド、アンギオテンシン変換酵素、ブロメライン、カルパイン、カルパインI、カルパインII、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼG、カルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼW、カルボキシペプチダーゼY、カスパーゼ、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ13、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、キモパパイン、チマーゼ、キモトリプシン、α-クロストリパイン、コラゲナーゼ、補体C1r、補体C1s、補体因子D、補体因子I、ククミシン、ジペプチジルペプチダーゼIV、白血球エラスターゼ、膵エラスターゼ、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼAsp-N、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、エンテロキナーゼ、Xa因子、フィシン、フューリン、グランザイムA、グランザイムB、HIVプロテアーゼ、イガーゼ、組織カリクレイン、キナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ(一般)、ロイシンアミノペプチダーゼ、サイトゾル、ロイシンアミノペプチダーゼ、ミクロソーム、マトリックスメタロプロテアーゼ、メチオニンアミノペプチダーゼ、ニュートラーゼ、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロリダーゼ、プロナーゼE、前立腺特異的抗原、プロテアーゼ、プロテアーゼS、プロテアソーム、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ3、プロテイナーゼA、プロテイナーゼK、プロテインC、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ、レニン、レンニン、トロンビン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、トロポニン、トリプシン、トリプターゼ、ウロキナーゼ。
もう一つの好ましい態様において、CSF、血液または他の生体液における、基質として神経ペプチドを有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素の検出は、例えば、脳卒中、脊髄損傷、またはアルコールもしくは薬物乱用(例えば、エクスタシー、メタンフェタミンなど)により引き起こされる神経毒症状のような様々なCNS傷害後の傷害の重症度の診断となる。
CNSは、脳傷害、神経系傷害、神経系障害の診断におけるタンパク質分解酵素生物マーカーについての好ましい基質である多くの脳特異的および脳濃縮化ペプチド、それらの断片ならびに誘導体を含む。タンパク質分解酵素の基質の非限定的例は、表1に示されている。表2は、プロテアーゼ攻撃により生じる、自明でない固有の組織タンパク質切断部位の非限定的例を示す(例えば、SEQ ID NO:1〜148)。例えば、タンパク質分解酵素生物マーカーは神経の特定のタンパク質に特異的であり、神経フィラメント-重(NF-200)、神経フィラメント-中(NF-160)、神経フィラメント-軽(NF-68)のような軸索ペプチド、およびアミロイド前駆体ペプチド;α-チューブリン、β-チューブリン、MAP-2A/B/C、タウ、ダイナミン-1、ダイナクチンのような樹状突起ペプチド;ならびにユビキチンC末端ヒドロラーゼL1ペプチド(UCH-L1)、PEBPペプチド、ニューロン特異的エノラーゼペプチド(NSE)、NeuNペプチド、Thy 1.1ペプチド、プリオンおよびハンチントンペプチドを含む体(細胞体)に見出されるペプチドを含みうる。シナプス前性およびシナプス後性に見出されるペプチドもある。さらに、異なる型のニューロンは、ペプチドが同定された、別個の神経伝達物質特異的酵素経路タンパク質を示す。例えば、アセチルコリンエステラーゼは、コリン作動性ニューロンにおいてのみ見出され、一方、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、ドーパミン作動性ニューロンのみに限定されている。他の神経伝達物質特異的酵素経路ペプチドは、ノルアドレナリン作動性ニューロンにおけるドーパミンβヒドロキシラーゼペプチド(DbH)、セロトニン作動性ニューロンにおけるトリプトファンヒドロキシラーゼペプチド(TrH)、グルタミン酸作動性ニューロンにおけるグルタミナーゼおよびグルタミン合成酵素のペプチド、GABA作動性ニューロンにおけるGABAトランスアミナーゼペプチドおよびグルタミン酸デカルボキシラーゼペプチドを含む。さらに、GFAPおよびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)のようなタンパク質由来のペプチドは、CNSのグリア細胞においてのみ合成され、CNSへの損傷の程度をさらに理解するために利用されうる特徴である。それゆえに、1つまたは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーの検出は、傷害を受けた細胞、傷害の重症度、および傷害の型を示す。例えば、腫瘍脱落抗原、これらの抗原に特異的なタンパク質分解酵素の活性化は、腫瘍および腫瘍の型の診断となる。
もう一つの好ましい態様において、本発明は、細胞内レベルにおけるCNS、PNSへの損傷および/または脳傷害の定量的検出を提供する。傷害の型および重症度に依存して、ニューロンは、特定の細胞領域に損傷を起こしうる。例えば、例として軸索ペプチド、それらの断片および誘導体のような、特定のポリペプチドに特異的なタンパク質分解酵素は、限定されるわけではないが、NF-200(NF-H)、NF-160(NF-M)、NF-68(NF-L)のペプチド、またはそれらの断片および誘導体を含み、軸索損傷と樹状突起損傷とを区別する。樹状突起ペプチド、それらの断片および誘導体のような、タンパク質分解酵素生物マーカーについての基質の非限定的例は、限定されるわけではないが、以下を含む:α-チューブリン(P02551)、β-チューブリン(P0 4691)、MAP-2A/B、MAP-2C、タウ、ダイナミン-1(P21575)、ダイナクチン(Q13561)、P24。さらに、異なる生物マーカーの検出は、例えば、軸索損傷または樹状突起損傷とを区別するだけでなく、シナプス性病態、シナプス前終末およびシナプス後肥厚のエレメントへの特定の傷害の評価を可能にする。
もう一つの好ましい態様において、ニューロンおよびグリアは別個のタンパク質を有するため、特定のタンパク質分解酵素生物マーカーの検出は、傷害後に冒された特定の細胞型の診断となる。例えば、グリアタンパク質、それらのペプチド、断片および誘導体に特異的なタンパク質分解酵素は、グリア細胞損傷の診断となる。グリアペプチドの例は、限定されるわけではないが、以下を含む:GFAP(P47819)のペプチド、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼペプチド(PDI-P04785)。
CNS傷害後にこれらのタンパク質分解酵素生物マーカーのレベルの検出およびモニターする能力は、臨床医が(1)様々なCNS傷害を有する患者において傷害重症度のレベルを測定すること、(2)これらの細胞性変化を誘発しうる二次CNS傷害の徴候について患者をモニターすること、および(3)CSFまたは血液におけるこれらのペプチドの検査により治療の効果をモニターすること、を可能にすることにより診断的能力の向上を提供する。代理生物マーカーの迅速な診断法が、疾患を処置するために採られた手順にとって非常に有益であることがわかっている他の器官に基づいた疾患とは異なり、傷害の重症度、傷害の解剖学的および細胞的病態、ならびに適切な医学的管理および処置の履行を測定するのを助けるための定量化可能な神経化学的マーカーを医師に提供しうるような迅速、明確な診断検査は、外傷性または虚血性脳傷害について存在しない。
現在存在している製品と比較して、本発明は、いくつかの優れた利点および利益を提供する。第一に、ニューロンの生物マーカーの同定は、コンピュータ断層撮影法(CT)および磁気共鳴映像法(MRI)のような既存の診断装置より迅速かつ安価な傷害重症度の診断を提供する。本発明はまた、細胞内レベル(すなわち、軸索対樹状突起)におけるCNSへの損傷の定量的検出および高満足度の評価を可能にする。本発明はまた、冒された特定の細胞型(例えば、ニューロン対グリア)の同定を可能にする。さらに、これらの脳特異的および脳濃縮化ペプチドのレベルは、市場に出ているものより傷害重症度のレベルに関して、より正確な情報を提供する。
もう一つの好ましい態様において、被験体における神経細胞損傷は、(a)損傷した神経細胞を有することが疑われる被験体から単離された生体試料を供給する段階;(b)1つもしくは複数の神経タンパク質から選択される少なくとも1つのマーカーの存在または量を試料において検出する段階;および(c)マーカーの存在または量を、被験体における神経細胞損傷の存在または型と相関させる段階により分析される。
タンパク質分解酵素生物マーカーの検出および同定は、当技術分野において公知の様々な方法により検出できる。例えば、蛍光発生アッセイ法または比色アッセイ法である。異なる酵素の検出のためのアッセイ法は市販されている。例は、Proteus BioSciences Inc.(San Diego, CA)、Sigma(St. Louis, MO)からの蛍光発生アッセイ法である。活性カスパーゼ-1タンパク質の蛍光検出についての例。AFC(7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン*)は、酵素により加水分解され蛍光計または分光光度計を用いて測定されうる生成物を生じる合成の蛍光発生性化合物である。プレートは、色素生産性についてA380で、または蛍光発生検出についてEm510-540(390〜400 nmでの励起)で読み取られうる。
タンパク質分解酵素を発現するまたは産生する任意の動物が好ましい。好ましくは、被験体は、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、霊長類、ラットまたはマウスのような哺乳動物;鳥、魚および爬虫類のような脊椎動物である。より好ましくは、被験体はヒトである。特に好ましいのは、外傷性傷害(銃創、自動車事故、スポーツ事故、揺さぶられっ子症候群)により引き起こされる脳傷害、虚血性事象(例えば、脳卒中、脳出血、心臓停止)、神経変性障害(アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病;プリオン関連疾患;認知症の他の型のような)、癲癇、薬物乱用(例えば、アンフェタミン、エクスタシー/MDMA、またはエタノールから)、ならびに糖尿病性神経障害、化学療法による神経障害および神経障害性疼痛のような末梢神経系病態の患者のような、外傷性もしくは非外傷性神経系傷害を有することが疑われる、または発症するリスクを有する被験体である。
(表1)タンパク質分解攻撃に対して脆弱な新規の組織タンパク質の例
上記のように、本発明は、1つもしくは複数のタンパク質分解酵素生物マーカーの存在または量を神経細胞傷害の重症度および/または型と相関させる段階を提供する。好ましい態様において、タンパク質分解酵素生物マーカーの検出は、生物マーカーが、好ましくは、数分間〜数日間後内に傷害またはストレスを受けた器官において(インビボ)、またはインビトロで数分間〜数時間内の時点において1/10,000〜1/20の比率の精製されたプロテアーゼ-基質タンパク質/タンパク質混合物を用いてタンパク分解される基質タンパク質1 mgあたり約1 μg〜約500 μgの比活性を有する基質タンパク質の存在と相関しうる。例えば、神経ペプチドの量は、損傷がより重度であれば、多量の神経ペプチドを生体試料(例えば、CSF)に蓄積させる神経細胞の数を多くするように神経組織傷害の重症度と直接的に関連している。神経細胞傷害がアポトーシス性の細胞死、腫脹性(壊死性)の細胞死、または2型(自己貧食性)細胞死のいずれを引き起こすのかは、異なる細胞死表現型に応答して生体液へ放出されたペプチドに対して高比活性を有する固有のタンパク質分解生物マーカーを調べることにより決定されうる。ペプチドはまた、神経系を含む多くの細胞型から検出されうる。例えば、アストログリア、乏突起膠細胞、ミクログリア細胞、シュワン細胞、線維芽細胞、神経芽細胞、神経幹細胞および成熟ニューロン。さらに、成熟ニューロンは、コリン作動性(ニコチン性およびムスカリン性)、グルタミン酸作動性、gaba作動性、セロトニン作動性、ドーパミン作動性のような一次神経伝達物質を融合する専用サブタイプへ分化する。このニューロンサブタイプのそれぞれは、各固有の神経伝達物質系の合成、代謝ならびに輸送体および受容体に向けられるもののような固有の神経タンパク質を発現させる(表1)。最後に、単一神経細胞内において、固有の神経タンパク質(樹状突起、軸索、髄鞘、シナプス前終末およびシナプス後肥厚)に適合した細胞内に確定した構造がある。これらの領域のそれぞれに固有のペプチドの放出をモニターすることにより細胞内損傷はモニターされ、限定され、脳傷害後のタンパク質分解酵素生物マーカーの検出と相関されうる。
本発明の生物マーカーは、任意の手段により試料において検出されうる。例えば、イムノアッセイは、限定されるわけではないが、ウェスタンブロットのような技術を用いる競合ならびに非競合アッセイ系、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、蛍光イムノアッセイ、それらの断片または誘導体を含む。そのようなアッセイ法は、当技術分野において日常的であり、かつ周知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照、それは、全体が参照として本明細書に組み入れられている)。
もう一つの好ましい態様において、心外傷は、例えば、トロポニンIのような心臓性トロポニンにおける増加により測定される。心臓性細胞損傷および死の間、心臓性トロポニンIのような細胞内容物は、血流へ放出される。
「Methods for the Assay of Troponin I and T and Selection of Autoantibodies for use in Immunoassays」というタイトルの米国特許第5,795,725号は、心筋梗塞の指標として体液における心臓特異的トロポニンIおよびトロポニンTの検出ならびに定量化のためのアッセイ法および抗体を開示する。
新しいマーカーの同定
好ましい態様において、生体試料は、神経系傷害をもつ患者から得られる。他の患者および対照被験体(すなわち、類似した年齢、性別、身体的状態の正常な健康個体)由来の生物マーカーを含む生体試料は、比較として用いられる。生体試料は、上で考察されているように抽出される。好ましくは、試料は、生物マーカーの検出の前に調製される。典型的には、調製は、試料の分画、および生物マーカーを含むことが決定された画分の収集を含む。事前分画の方法は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逐次抽出、ゲル電気泳動および液体クロマトグラフィーを含む。分析物はまた、検出の前に修飾されうる。これらの方法は、さらなる分析のために試料を単純化するために有用である。例えば、分析の前に血液からアルブミンのような高存在量のタンパク質を除去するために有用でありうる。
一つの態様において、試料は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて試料におけるタンパク質のサイズによって事前分画されうる。利用できる試料の量が少ない生体試料について、好ましくは、サイズ選択スピンカラムが用いられる。一般的に、カラムから溶出される第一画分(「画分1」)は、最高パーセンテージの高分子量タンパク質を有する;画分2は、より低いパーセンテージの高分子量タンパク質を有する;画分3はよりいっそう低いパーセンテージの高分子量タンパク質を有する;画分4は最低量の大きなタンパク質を有する;など。各画分は、その後、マーカーの検出のために、イムノアッセイ、気相イオン分光測定法、それらの断片および誘導体、により分析されうる。
もう一つの態様において、試料は、陰イオン交換クロマトグラフィーにより事前分画されうる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、それらの電荷特性に従っておおむね試料におけるタンパク質の事前分画を可能にする。例えば、Q陰イオン交換樹脂が用いられうり(例えば、Q HyperD F, Biosepra)、試料は、異なるpHを有する溶離液で連続的に溶出されうる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、より負に帯電している試料における生物マーカーの、他の型の生物マーカーからの分離を可能にする。高pHをもつ溶離液で溶出されるタンパク質は、弱く負に帯電している可能性が高く、低pHをもつ溶離液で溶出される画分は、強く負に帯電している可能性が高い。従って、試料の複雑性を低減することに加えて、陰イオン交換クロマトグラフィーは、それらの結合特性に従ってタンパク質を分離する。
さらにもう一つの態様において、試料は、ヘパリンクロマトグラフィーにより事前分画されうる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ヘパリンとの親和性相互作用および電荷特性に基づいて、同様に、試料におけるマーカーの事前分画を可能にする。ヘパリン、硫酸化ムコ多糖、は正に帯電した部分をもつマーカーを結合し、試料は、異なるpHまたは塩濃度をもつ溶離液で連続的に溶出されうる。低pHをもつ溶離液で溶出されたマーカーは、弱く正に帯電している可能性がより高い。高pHをもつ溶離液で溶出されたマーカーは、強く正に帯電している可能性がより高い。従って、ヘパリンクロマトグラフィーもまた、試料の複雑性を低減し、それらの結合特性に従ってマーカーを分離する。
さらにもう一つの態様において、試料は、特定の特性を有する、例えば、グリコシル化されている、タンパク質を単離することにより事前分画されうる。例えば、CSF試料は、レクチンクロマトグラフィーカラム(糖への高親和性を有する)に試料を通すことにより分画されうる。グリコシル化タンパク質は、レクチンカラムに結合し、非グリコシル化タンパク質は、流れを通過する。グリコシル化タンパク質は、その後、糖、例えば、N-アセチル-グルコサミン、を含む溶離液でレクチンカラムから溶出され、さらなる分析に利用できる。
このように、試料におけるタンパク質の結合性質、または試料におけるタンパク質の特性に基づいて試料の複雑性を低減させるための多くの方法がある。
さらにもう一つの態様において、試料は、逐次抽出プロトコールを用いて分画されうる。逐次抽出において、試料は、試料から異なる型の生物マーカーを抽出するために一連の吸着剤に曝される。例えば、試料は、特定のタンパク質を抽出するために第一吸着剤に適用され、非吸着性タンパク質(すなわち、第一吸着剤に結合しなかったタンパク質)を含む溶離液が収集される。その後、画分は、第二吸着剤に曝される。これはさらに、画分から様々なタンパク質を抽出する。この第二画分は、その後、第三吸着剤に曝されるなどする。
任意の適した材料および方法が、試料の逐次抽出を行うために用いられうる。例えば、異なる吸着剤を含む一連のスピンカラムが用いられうる。もう一つの例において、底に異なる吸着剤を含むマルチウェルが用いられうる。もう一つの例において、逐次抽出は、気相イオン分光計における使用に適応したプローブ上で行われうり、プローブ表面は、生物マーカーを結合するための吸着剤を含む。この態様において、試料は、プローブ上の第一吸着剤に適用され、その後、溶離液で洗浄される。第一吸着剤に結合しないマーカーは、溶離液で除去される。画分にあるマーカーは、プローブ上の第二吸着剤に適用されうるなどする。気相イオン分光計プローブ上で逐次抽出を行う利点は、逐次抽出プロトコールのあらゆる段階における様々な吸着剤に結合するマーカーが、気相イオン分光計を用いて直接的に分析されうることである。
さらにもう一つの態様において、試料における生物マーカーは、高分解能電気泳動、例えば、一次元または二次元ゲル電気泳動、により分離されうる。マーカーを含む画分は、単離され、気相イオン分光測定法によりさらに分析されうる。好ましくは、二次元ゲル電気泳動が、1つまたは複数のマーカーを含む生物マーカーのスポットの二次元アレイを作成するために用いられうる。例えば、Jungblut and Thiede, Mass Spectr. Rev. 16:145-162 (1997)を参照。
二次元ゲル電気泳動は、当技術分野において公知の方法を用いて行われうる。例えば、Deutscher ed., Methods In Enzymology vol. 182を参照。典型的には、試料における生物マーカーは、試料における生物マーカーが、例えば、それらの正味荷電がゼロであるスポット(すなわち、等電点)に達するまで、pH勾配において分離される等電点電気泳動法により、分離される。この第一分離段階は、結果として、生物マーカーの一次元アレイを生じる。一次元アレイにおける生物マーカーは、第一分離段階に用いられたものとは一般的に異なる技術を用いてさらに分離される。例えば、第二次元において、等電点電気泳動法により分離された生物マーカーは、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)のようなポリアクリルアミドゲルを用いてさらに分離される。SDS-PAGEゲルは、生物マーカーの分子量に基づいたさらなる分離を可能にする。典型的には、二次元ゲル電気泳動法は、複雑な混合物内の1000 Da〜200,000 Daの範囲である分子量において化学的に異なる生物マーカーを分離できる。
二次元アレイにおける生物マーカーは、当技術分野において公知の任意の適した方法を用いて検出されうる。例えば、ゲルにおける生物マーカーは、標識または染色されうる(例えば、クマーシーブルーまたは銀染色)。ゲル電気泳動が本発明の1つまたは複数のマーカーの分子量に対応するスポットを生じる場合には、スポットは、濃度測定分析または気相イオン分光測定法によりさらに分析されうる。例えば、スポットは、ゲルから切除され、気相イオン分光測定法により分析されうる。または、生物マーカーを含むゲルは、電界を加えることにより不活性膜へ転移されうる。その後、マーカーの分子量におよそ対応する膜上のスポットは、気相イオン分光測定法により分析されうる。気相イオン分光測定法において、スポットは、MALDIまたはSELDIのような任意の適した技術を用いて分析されうる。
気相イオン分光測定法分析の前に、スポットにおける生物マーカーを、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)のような切断試薬を用いてより小さな断片へ切断することが望ましくありうる。生物マーカーの小さな断片への消化は、必要に応じてマーカーのアイデンティティを決定するために用いられうる、スポットにおける生物マーカーの質量フィンガープリントを提供する。
さらにもう一つの態様において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、試料における生物マーカーの混合物を極性、電荷およびサイズのようなそれらの異なる物理的性質に基づいて分離するために用いられうる。HPLC機器は、典型的には、移動相の容器、ポンプ、注射器、分離カラム、および検出器からなる。試料における生物マーカーは、カラム上に試料のアリコートを注入することにより分離される。混合物における異なる生物マーカーは、移動性液体相と固定相の間でのそれらの分配する挙動における違いにより異なる速度でカラムを通過する。1つまたは複数のマーカーの分子量および/または物理的性質に対応する画分が収集されうる。画分は、その後、マーカーを検出するために気相イオン分光測定法により分析されうる。
任意で、マーカーは、その分解能を向上させるため、またはそのアイデンティティを決定するために、分析の前に修飾されうる。例えば、マーカーは、分析の前にタンパク質分解消化を受けうる。任意のプロテアーゼが用いられうる。マーカーを別々の数の断片へ切断する可能性が高いトリプシンのようなプロテアーゼが特に有用である。消化の結果として生じる断片は、マーカーについてのフィンガープリントとして機能し、それにより、それらの検出を間接的に可能にする。これは、問題になっているマーカーについて混同される可能性がある類似した分子量をもつマーカーがある場合、特に有用である。また、タンパク質分解断片化は、より小さなマーカーが質量分析法により、より容易に分解されるため、高分子量マーカーについて有用である。もう一つの例において、生物マーカーは、検出分解能を向上させるために修飾されうる。例えば、ノイラミニダーゼは、陰イオン性吸着剤への結合を向上させるために、および検出分解能を向上させるために、糖タンパク質から末端シアル酸残基を除去するために用いられうる。もう一つの例において、マーカーは、分子マーカーに特異的に結合し、さらにそれらを区別する、特定の分子量のタグの付着により修飾されうる。任意で、そのような修飾されたマーカーを検出した後に、マーカーのアイデンティティは、タンパク質データベース(例えば、SwissProt、MASCOT)において、修飾されたマーカーの物理的および化学的特徴を合わせることによりさらに決定されうる。
調製後、試料における生物マーカーは、典型的には、検出のための基板上に捕獲される。従来の基板は、続いてタンパク質の存在について探索される、抗体コーティング化96ウェルプレートまたはニトロセルロース膜を含む。好ましくは、生物マーカーは、上記のようなイムノアッセイを用いて同定される。しかしながら、好ましい方法はまた、バイオチップの使用を含む。好ましくは、バイオチップは、タンパク質の捕獲および検出のためのタンパク質バイオチップである。多くのタンパク質バイオチップは、当技術分野において記載されている。これらは、例えば、Packard BioScience Company(Meriden CT)、Zyomyx(Hayward, CA)およびPhylos(Lexington, MA)により製造されたタンパク質バイオチップを含む。一般的に、タンパク質バイオチップは、表面を有する基板を含む。捕獲試薬または吸着剤は、基板の表面に付着している。しばしば、表面は、複数のアドレス指定できる位置を含み、それらの位置のそれぞれは、捕獲試薬がそこに結合されている。捕獲試薬は、ポリペプチドまたは核酸のような生体分子でありうり、特異的様式で他の生物マーカーを捕獲する。または、捕獲試薬は、陰イオン***換物質または親水性物質のようなクロマトグラフィーの物質でありうる。そのようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または特許出願に記載されている:米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip, 「Use of retentate chromatography to generate difference maps」、2001年5月1日)、国際公開WO 99/51773 (Kuimelis and Wagner、「Addressable protein arrays」、1999年10月14日)、国際公開WO 00/04389(Wagner et al.、「Arrays of protein-capture agents and methods of use thereof」、2000年7月27日)、国際公開WO 00/56934(Englert et al.、「Continuous porous matrix arrays」、2000年9月28日)。
一般的に、生物マーカーを含む試料は、結合を可能にするのに十分な時間、バイオチップの活性表面上に置かれる。その後、結合していない分子は、適した溶離液を用いて表面から洗浄される。一般的に、溶離液がストリンジェントであればあるほど、タンパク質は、洗浄後保持されるためにしっかりと結合していなければならない。保持されたタンパク質生物マーカーは、次に、適切な手段により検出されうる。
タンパク質バイオチップの表面上に捕獲された分析物は、当技術分野において公知の任意の方法により検出されうる。これは、例えば、質量分析法、蛍光、表面プラズモン共鳴法、偏光解析法、および原子間力顕微鏡法を含む。質量分析法、および特にSELDI質量分析法は本発明の生物マーカーの検出に特に有用な方法である。
好ましくは、レーザー脱離飛行時間型質量分析計が本発明の態様に用いられる。レーザー脱離質量分析法において、マーカーを含む基板またはプローブが吸気装置へ導入される。マーカーは、イオン化源からのレーザーにより、脱離され、気相へイオン化される。発生したイオンは、イオン光学アセンブリーにより収集され、その後、飛行時間型質量分析器において、イオンは短い高電圧場を通って加速され、高真空チャンバーへ流れ込むようにされる。高真空チャンバーの遠端において、加速されたイオンは、異なる時間で高感度の検出器表面に衝突する。飛行時間は、イオンの質量の関数であるから、イオン形成とイオン検出器衝撃の間の経過時間は、特定の質量対電荷比のマーカーの存在または非存在を同定するために用いられうる。
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法、すなわち、MALDI-MS、はタンパク質をプローブ表面から無傷で脱離させるための、しばしば、マトリックスと呼ばれる、エネルギー吸収分子の使用を含む質量分析の方法である。MALDIは、例えば、米国特許第5,118,937号(Hillenkamp et al.)および米国特許第5,045,694号(Beavis and Chait)に記載されている。MALDI-MSにおいて、試料は、典型的には、マトリックス材料と混合され、不活性プローブの表面上に置かれる。例示的なエネルギー吸収分子は、桂皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノヒドロキシ桂皮酸(「CHCA」)およびジヒドロキシ安息香酸を含む。他の適したエネルギー吸収分子は、当業者に公知である。マトリックスは乾燥し、分析物分子をカプセル化する結晶を形成する。その後、分析物分子は、レーザー脱離/イオン化質量分析法により検出される。MALDI-MSは、試料の複雑性が上記の調製方法を用いて実質的に低下している場合には、本発明の生物マーカーを検出するために有用である。
表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法、すなわちSELDI-MS、は複雑な混合物においてタンパク質のような生体分子の分画および検出についてMALDIに対して改善を示す。SELDIは、タンパク質のような生体分子が、タンパク質バイオチップの表面上に、そこに結合している捕獲試薬を用いて捕獲される、質量分析の方法である。典型的には、結合していない分子は、取り調べの前にプローブ表面から洗浄される。SELDIは、例えば、以下に記載されている:米国特許第5,719,060号(「Method and Apparatus for Desorption and Ionization of Analytes」、Hutchens and Yip、1998年2月17日)、米国特許第6,225,047号(「Use of Retentate Chromatography to Generate Difference Maps」、Hutchens and Yip、2001年5月1日)、およびEncyclopedia of Analytical Chemistry, R.A. Meyers, ed., pp 11915-11918 John Wiley & Sons Chichesher, 2000におけるWeinberger et al.、「Time-of-flight mass spectrometry」。
基板表面上のマーカーは、気相イオン分光測定法を用いて、脱離され、イオン化されうる。基板上のマーカーが分解されるのを可能にする限り、任意の適した気相イオン分光計が用いられうる。好ましくは、気相イオン分光計はマーカーの定量化を可能にする。
一つの態様において、気相イオン分光計は、質量分析計である。典型的な質量分析計において、表面上にマーカーを含む基板またはプローブは、質量分析計の吸気装置へ導入される。マーカーは、その後、レーザー、高速原子衝撃、高エネルギープラズマ、エレクトロスプレーイオン化、サーモスプレーイオン化、液体二次イオンMS、電界脱離などのような脱離源により脱離される。発生、脱離、揮発した種は、脱離事象の直接的結果としてイオン化される、前もって形成されたイオンまたは中性からなる。発生したイオンは、イオン光学的アセンブリーにより収集され、その後、質量分析器は、通過したイオンを分散させて、分析する。質量分析器から出たイオンは、検出器により検出される。検出器は、その後、検出されたイオンの情報を質量対電荷比へ変換する。マーカーまたは他の物質の存在の検出は、典型的には、シグナル強度の検出を含む。これは、次に、基板に結合したマーカーの量および特性を反映することができる。質量分析計の構成要素(例えば、脱離源、質量分析器、検出器など)のいずれも、本発明の態様において、本明細書に記載された他の適した構成要素または当技術分野において公知の他のものと組み合わせられうる。
もう一つの態様において、イムノアッセイが、試料においてマーカーを検出および分析するために用いられうる。この方法は以下の段階を含む:(a)マーカーへ特異的に結合する抗体を供給する段階;(b)試料を抗体と接触させる段階;および(c)試料におけるマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する段階。
マーカーへ特異的に結合する抗体を調製するために、精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列が用いられうる。マーカーについての核酸およびアミノ酸配列は、これらのマーカーのさらなる特徴付けにより得られうる。各マーカーからの消化断片の分子量は、様々な酵素により生成された消化断片の分子量に合う配列について、SwissProtデータベースのようなデータベースを検索するために用いられうる。この方法を用いて、他のマーカーの核酸およびアミノ酸配列は、これらのマーカーがデータベースにおいて既知のタンパク質であるかどうかを同定されうる。
または、タンパク質は、タンパク質ラダーシークエンシングを用いてシークエンシングされうる。タンパク質ラダーは、例えば、分子を断片化し、断片を酵素的消化にかけること、または逐次的に、断片の末端から単一アミノ酸を除去する他の方法により、作製されうる。タンパク質ラダーを調製する方法は、例えば、国際公開WO 93/24834(Chait et al.)および米国特許第5,792,664号(Chait et al.)に記載されている。ラダーは、その後、質量分析法により分析される。ラダー断片の質量における差は、分子の末端から除去されたアミノ酸を同定する。
マーカーがデータベースにおいて既知のタンパク質ではない場合には、核酸およびアミノ酸配列は、マーカーのアミノ酸配列の一部の知識ででも決定されうる。例えば、変性したプローブは、マーカーのN末端アミノ酸配列に基づいて作製されうる。これらのプローブは、その後、マーカーが最初に検出された試料から作成されたゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いられうる。陽性クローンが同定、増幅され、それらの組換えDNA配列が、周知である技術を用いてサブクローニングされうる。例えば、Current Protocols for Molecular Biology(Ausubel et al., Green Publishing Assoc. and Wiley-Interscience 1989)およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版(Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, NY 2001)を参照。
精製されたマーカーまたはそれらの核酸配列を用いて、マーカーへ特異的に結合する抗体が、当技術分野において公知の任意の適した方法を用いて調製されうる。例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988); Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版、1986); およびKohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975)を参照。そのような技術は、限定されるわけではないが、ファージまたは類似したベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製、加えてウサギまたはマウスを免疫することによるポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製を含む(例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989)参照)。
抗体が供給された後、マーカーは、当技術分野において公知の適した免疫学的結合アッセイ法のいずれかを用いて検出および/または定量化されうる(例えば、米国特許第4,366,241号;第4,376,110号;第4,517,288号;および第4,837,168号参照)。有用なアッセイ法は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のような酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイを含む。これらの方法はまた、例えば、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, 37巻(Asai ed. 1993); Basic and Clinical Immunology (Stites & Terr, eds., 第7版, 1991); およびHarlow & Lane、前記に記載されている。
一般的に、被験体から得られた試料は、マーカーを特異的に結合する抗体と接触させられうる。任意で、抗体は、抗体を試料に接触させる前に、洗浄およびその後の複合体の単離を容易にするために固体支持体に固定されうる。固体支持体の例は、例えば、マイクロタイタープレート、棒、ビーズもしくはマイクロビーズの形をとったガラスまたはプラスチックを含む。抗体はまた、上で記載されたプローブ基板またはタンパク質チップアレイに付着しうる。試料は、好ましくは、被験体から採取された生体液試料である。生体液試料の例は、脳脊髄液、血液、血清、血漿、神経細胞、組織、尿、涙、唾液などを含む。好ましい態様において、生体液は、脳脊髄液を含む。試料は、試料を抗体に接触させる前に、適した溶離液で希釈されうる。
試料を抗体とインキュベートした後、混合物は洗浄され、形成された抗体-マーカー複合体が検出されうる。これは、洗浄された混合物を検出試薬とインキュベートすることにより達成されうる。この検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識されている二次抗体でありうる。例示的な検出可能な標識は、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAに一般的に用いられる他のもの)、およびコロイド金または色ガラスまたはプラスチックビーズのような比色標識を含む。または、試料におけるマーカーは、例えば、二次標識抗体が結合したマーカー特異的抗体を検出するように用いられる間接的アッセイ法を用いて、および/または、例えば、マーカーの明確なエピトープに結合するモノクローナル抗体が混合物と同時にインキュベートされる、競合もしくは阻害アッセイ法において、検出されうる。
アッセイを通して、インキュベーションおよび/または洗浄段階は、試薬の各結合後に必要とされうる。インキュベーション段階は、約5秒間から数時間まで、好ましくは約5分間から約24時間まで、変わりうる。しかしながら、インキュベーション時間は、アッセイ形式、マーカー、溶液の容量、濃度、それらの断片および誘導体に依存する。通常、アッセイは、それらが10℃〜40℃のような温度の範囲に渡って行われうるとはいえ、周囲温度で行われるものである。
イムノアッセイは、試料におけるマーカーの存在または非存在、および試料におけるマーカーの量を測定するために用いられうる。第一に、試料におけるマーカーの検査量は、上記のイムノアッセイ法を用いて検出されうる。マーカーが試料に存在する場合には、それは、上記の適したインキュベーション条件下でマーカーを特異的に結合する抗体との抗体-マーカー複合体を形成する。抗体-マーカー複合体の量は、標準と比較することにより決定されうる。標準は、例えば、試料に存在することが知られている既知の化合物または別のタンパク質でありうる。上で述べられているように、マーカーの検査量は、測定の単位が対照と比較されうる限り、絶対的単位で測定される必要はない。
試料においてこれらのマーカーを検出するための方法は、多くの適用を有する。例えば、1つまたは複数のマーカーは、脊髄傷害、脳傷害、傷害の程度、ニューロンの障害、アルコールおよび薬物乱用による神経系傷害、妊娠中の母親によるアルコールおよび/または薬物乱用による胎児の傷害などの診断を助けるために測定されうる。もう一つの例において、マーカーの検出のための方法は、処置に対する被験体における応答をモニターするために用いられうる。もう一つの例において、マーカーを検出するための方法は、インビボまたはインビトロでこれらのマーカーの発現を調節する化合物をアッセイするおよび同定するために用いられうる。
マーカーの脱離および検出により生じたデータは、任意の適した手段を用いて解析されうる。一つの態様において、データは、プログラム可能なデジタルコンピュータの使用で解析される。コンピュータプログラムは、一般的に、コードを保存する読み取り可能な媒体を含む。特定のコードは、プローブ上の各フィーチャーの位置、そのフィーチャーにおける吸着剤の同定、および吸着剤を洗浄するために用いられる溶出条件を含むメモリーに当てられうる。コンピュータはまた、プローブ上の特定のアドレス指定できる位置から受け取られた様々な分子量におけるシグナルの強度に関するデータを入力として受けるコードを含む。このデータは、各マーカーにより発生したシグナルの強度を含む、検出されたマーカーの数を示しうる。
データ解析は、検出されたマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ)を決定する段階、および「アウトライアー」(あらかじめ決定された統計学的分布からはずれたデータ)を除去する段階を含みうる。観察されたピークは標準化されうる、何かの参照に対する各ピークの高さが計算される過程でありうる。例えば、参照は、尺度においてゼロとして設定される、機器および化学物質(例えば、エネルギー吸収分子)により発生したバックグラウンドノイズでありうる。その後、各マーカーまたは他の生体分子について検出されたシグナル強度は、望まれる尺度(例えば、100)における相対的強度の形で表示されうる。または、標準物質(例えば、CSFタンパク質)は、標準物質由来のピークが、検出される各マーカーまたは他のマーカーについて観察されるシグナルの相対的強度を計算するための参照として用いられうるように、試料と共に入れられうる。
コンピュータは、結果として生じたデータを表示のために様々な形式へ変換しうる。「スペクトルビューまたは保持マップ」と呼ばれる一つの形式において、標準スペクトルビューが表示されうり、ビューは、各特定の分子量において検出器に達したマーカーの量を描く。「ピークマップ」と呼ばれるもう一つの形式において、ピークの高さおよび質量情報のみが、スペクトルビューから保持され、よりきれいな画像を生じ、ほとんど同一の分子量をもつマーカーがより容易に見られるのを可能にする。「ゲルビュー」と呼ばれるさらにもう一つの形式において、ピークビューからの各質量は、各ピークの高さに基づいた濃淡画像へ変換されうり、結果として、電気泳動ゲル上のバンドに類似した外観を生じる。「3Dオーバーレイ」と呼ばれるさらにもう一つの形式において、いくつかのスペクトルが、相対的ピークの高さにおけるわずかな変化を研究するためにオーバーレイされうる。「差マップビュー」と呼ばれるさらにもう一つの形式において、2つ以上のスペクトルが比較されて、便利なことに、固有のマーカーおよび試料間で上方または下方制御されるマーカーを強調しうる。任意の2つの試料からのマーカープロファイル(スペクトル)は、視覚的に比較されうる。さらにもう一つの形式において、Spotfire Scatter Plotが用いられうり、検出されるマーカーが、プロットにおける点としてプロットされており、プロットの一方の軸は、検出されたマーカーの見かけの分子量を示し、もう一つの軸は、検出されたマーカーのシグナル強度を示す。各試料について、検出されるマーカーおよび試料に存在するマーカーの量は、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されうる。このデータは、その後、対照(例えば、対照、例えば、神経系傷害が検出されない正常な健康被験体、に検出されるマーカーのプロファイルまたは量)と比較されうる。
相同性タンパク質分解生物マーカーの同定のための代替方法
ヒトタンパク質分解マーカー遺伝子の対立遺伝子変異体および他の種(例えば、マウス)由来の相同体のクローニングに関して、単離されたタンパク質分解マーカー遺伝子配列は、標識され、対象となる生物体(例えば、マウス)由来の適切な細胞または組織(例えば、脳組織)から得られるmRNAから構築されたcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いられうる。用いられるハイブリダイゼーション条件は、cDNAライブラリーが、標識された配列が由来している生物体の型とは異なる生物体由来である場合、低い方のストリンジェンシーであるべきである。
または、標識された断片は、再び、適切にストリンジェントな条件を用いて、対象となる生物体由来のゲノムライブラリーをスクリーニングするために用いられうる。低ストリンジェントな条件は、当業者に周知であり、ライブラリーおよび標識された配列が由来している特定の生物体に依存して予想どおりに変化する。そのような条件に関する手引きについては、例えば、Sambrook, et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, N.Y.; およびAusubel, et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
さらに、タンパク質分解マーカー遺伝子対立遺伝子変異体は、パン特異的プローブを用いてPCRを行うことにより、例えば、ヒト核酸から単離されうる。例えば、反応についての鋳型は、タンパク質分解マーカー遺伝子またはその対立遺伝子変異体を発現させることが知られているまたは推測される、ヒトもしくは非ヒトの細胞系または組織から調製されるmRNAの逆転写により得られるcDNAでありうる。好ましくは、対立遺伝子変異体は、ニューロンの障害を有する個体から単離される。
PCRテクノロジーはまた、完全長cDNA配列を単離するために利用されうる。例えば、RNAは、適切な細胞または組織源(すなわち、例えば、生検または死後を通して得られる脳組織試料のようなタンパク質分解マーカー遺伝子を発現させることが知られているまたは推測されるもの)から標準的手順に従って単離されうる。逆転写反応は、第一鎖合成のプライミングのための増幅された断片の最も5'末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてRNAにおいて行われうる。結果として生じたRNA/DNAハイブリッドは、その後、標準末端転移酵素反応を用いてグアニンで「尾を付けられ」うり、ハイブリッドは、RNアーゼHで消化され、第二鎖合成は、その後、ポリ-Cプライマーでプライミングされうる。従って、増幅された断片の上流cDNA配列は、容易に単離されうる。用いられうるクローニングストラテジーの概説として、例えば、Sambrook et al., 1989, 下記を参照されたい。
もう一つの好ましい方法はSAGEを含む。遺伝子発現の連続分析(Serial Analysis of Gene Expression、SAGE)は、遺伝子セグメントに対応する転写産物の部分的な確定した配列の同定および特徴付けに基づいている。これらの確定した転写産物配列「タグ」は、例えば、細胞、組織または抽出物に発現されている遺伝子のマーカーである。
SAGEは、いくつかの原理に基づいている。第一に、短いヌクレオチド配列タグ(9〜10 bp)は、それが転写産物内の確定した位置から単離されているという条件で、転写産物を一意的に同定するのに十分な情報内容を含む。例えば、9 bpほどの配列は、タグ部位におけるランダムなヌクレオチド分布を仮定すれば約262,144個の転写産物を区別することができるが、見積りではヒトゲノムは約80,000〜約200,000の転写産物をコードすることが示唆される(Fields, et al., Nature Genetics, 7:345 1994)。タグのサイズは、例えば、ゲノムによりコードされる転写産物の数がより少ない、低級真核生物または原核生物についてより短くありうる。例えば、6〜7 bpほどのタグは、酵母において転写産物を区別するために十分でありうる。
第二に、タグのランダム二量化は、偏り(増幅および/クローニングにより引き起こされる)を低減するための手順を可能にする。第三に、これらの短い配列タグの連結は、単一のベクターまたはクローン内で複数タグをシークエンシングすることによる連続様式で転写産物の効率的分析を可能にする。情報がデータの連続ストリングとして送信されるコンピュータによる連続通信と同様に、配列タグの連続分析は、各タグの登録および境界を確立するための手段を必要とする。本発明に従って配列から確定したタグを引き出す概念は、試料のタグを配列データベースに一致させる際に有用である。好ましい態様において、コンピュータ方法は、試料配列を既知の配列と一致させるために用いられる。
本明細書において用いられるタグは、遺伝子を一意的に同定する。これは、それらが引き出される遺伝子におけるそれらの長さ、およびそれらの特定の位置(3')による。完全長遺伝子は、タグを遺伝子データベースメンバーに一致させることにより、またはタグ配列を、以前に同定されなかった遺伝子をcDNAライブラリーから物理的に単離するためのプローブとして用いることにより、同定されうる。DNAプローブを用いて遺伝子がライブラリーから単離される方法は、当技術分野において周知である。例えば、Veculescu et al., Science 270:484 (1995)およびSambrook et al. (1989), MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第2版 (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)を参照。いったん遺伝子または転写産物が同定されたならば、データベース登録に一致させるか、または物理的にcDNA分子にハイブリダイズさせるかのいずれかにより、転写産物におけるハイブリダイズするまたは一致する領域の位置が決定されうる。タグ配列がSAGEタグを作製するために用いられた制限酵素に直接隣接した3'末端にない場合には、偽の一致がなされた可能性がある。SAGEタグの同定の確認は、特定の細胞型においてタグの転写レベルと同定された遺伝子のレベルとを比較することによりなされうる。
遺伝子発現の分析は上の方法に限定されず、当技術分野において公知の任意の方法を含みうる。これらの原理のすべては、独立して、組み合わせて、または配列同定の他の公知の方法と組み合わせて、適用されうる。
当技術分野において公知の遺伝子発現分析の方法の例は、DNAアレイまたはマイクロアレイ(Brazma and Vilo, FEBS Lett., 2000, 480, 17-24; Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16)、SAGE(遺伝子発現の連続分析)(Madden, et al., Drug Discov. Today, 2000, 5,415-425)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅)(Prashar and Weissman,Methods Enzymol., 1999, 303, 258-72)、TOGA(全遺伝子発現分析)(Sutcliffe, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2000, 97, 1976-81)、タンパク質アレイおよびプロテオミクス(Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Jungblut, et al., Electrophoresis, 1999, 20, 2100-10)、発現遺伝子配列断片(EST)シークエンシング(Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Larsson, et al., J. Biotechnol., 2000, 80, 143-57)、引き算RNAフィンガープリンティング(SuRF)(Fuchs, et al., Anal. Biochem., 2000, 286, 91-98; Larson, et al., Cytometry, 2000, 41, 203-208)、引き算クローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)(Jurecic and Belmont, Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3, 316-21)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(Carulli, et al., J. Cell Biochem. Suppl., 1998, 31, 286-96)、FISH(蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)技術(Going and Gusterson, Eur. J. Cancer, 1999, 35, 1895-904)、および質量分析方法((To, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2000, 3,235-41)に概説されている)を含む。
好ましい態様において、発現遺伝子配列断片(EST)はまた、神経細胞において過剰発現されている核酸分子を同定するために用いられうる。様々なデータベースからのESTが同定されうる。例えば、好ましいデータベースは、例えば、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)、Cancer Genome Anatomy Project(CGAP)、GenBank、EMBL、PIR、SWISS-PROTなどを含む。疾患と関連した遺伝的突然変異のデータベースであるOMIMは、一部、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のために開発された。OMIMは、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/Omin/におけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。癌細胞の分子解剖学を解読するために必要とされる情報および技術的ツールを確立するための学際的プログラムである、CGAP。CGAPは、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/ncicgap/におけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。これらのデータベースの一部は、完全または部分的ヌクレオチド配列を含みうる。さらに、代替の転写産物型もまた、私的遺伝子データベースから選択されうる。または、核酸分子は、入手可能な刊行物から選択されうるか、または特に本発明に関連した使用のために決定されうる。
代替の転写産物型は、連続した配列を作成するコンピュータソフトウェアにより各データベース内にある個々のESTから作成されうる。本発明のもう一つの態様において、核酸分子のヌクレオチド配列は、複数の重複ESTを構築することにより決定される。当業者にとって公知で利用できるESTデータベース(dbEST)は、約500個から1000個までのヌクレオチドを含むおよそ百万個の異なるヒトmRNA配列、およびいくつかの異なる生物体由来の様々な数のESTを含む。dbESTは、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/dbEST/index.htmlにおけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。これらの配列は、ゲノムシークエンシングのためのcDNA発現クローンを用いるクローニングストラテジーから導かれる。ESTは、新しい遺伝子の発見、ゲノムのマッピング、およびゲノム配列におけるコード領域の同定に用途を有する。急速に利用可能になっているEST配列情報のもう一つの重要な特徴は、組織特異的遺伝子発現データである。これは、治療的介入のために選択的遺伝子を標的にする際に極めて有用である。EST配列は比較的短いため、それらは、完全な配列を提供するために構築されなければならない。あらゆる利用できるクローンはシークエンシングされているため、それは結果として、データベースに報告されることになっているいくつかの重複領域を生じる。最終結果は、例えば、免疫細胞および神経細胞からの代替転写産物型の導出である。
5'および3'方向の両方に沿って伸長された重複ESTの構築は、結果として、完全長「仮想転写産物」を生じる。結果として生じた仮想転写産物は、すでに特徴付けられた核酸を示す可能性があるか、または既知の生物学的機能をもたない新規な核酸である可能性がある。当業者にとって公知で利用できる、The Institute for Genomic Research(TIGR) Human Genome Index(HGI)データベースは、ヒト転写産物のリストを含む。TIGRは、例えば、tigr.orgにおけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。転写産物は、仮想転写産物を構築するためのエンジンであり当業者にとって公知で利用できるTIGR-Assemblerを用いてこの様式で作成されうる。TIGR-Assemblerは、EST、BACまたは小さなゲノムのような重複配列データの大きなセットを構築するためのツールであり、真核生物または原核生物配列を構築するために用いられうる。TIGR-Assemblerは、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、Sutton, et al., Genome Science & Tech., 1995, 1, 9-19に記載されており、例えば、tigr.org/pub/software/TIGR.assemblerにおけるインターネットのファイル転送プログラムを通してアクセスされうる。さらに、当業者にとって公知で利用できるGLAXO-MRCは、仮想転写産物を構築するためのもう一つのプロトコールである。PHRAPは、Find Neighbors and Assemble EST Blast内の配列構築のために用いられる。PHRAPは、例えば、chimera.biotech.washington.edu/uwge/tools/phrap.htmにおけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。ESTの同定および完全長RNA分子を形成するための連続したESTの作成は、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願第09/076,440号に詳細に記載されている。
上で述べられているように、タンパク質分解マーカー遺伝子配列は、突然変異したタンパク質分解マーカー遺伝子対立遺伝子を好ましくはヒト被験体から単離するために用いられうる。そのような突然変異した対立遺伝子は、アルツハイマー病またはパーキンソン病のようなニューロンの障害の症状に寄与する遺伝子型を有することが知られているかまたは提案されているかのいずれかの個体から単離されうる。
タンパク質分解マーカー遺伝子の突然変異した対立遺伝子変異体のcDNAは、例えば、当業者に周知である技術であるPCRを用いることにより単離されうる。この場合、第一cDNA鎖は、突然変異したタンパク質分解マーカー対立遺伝子を有すると推定される個体において発現されることが知られているかまたは推測される組織から単離されたmRNAにオリゴ-dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、および逆転写酵素で新しい鎖を伸長させることにより合成されうる。cDNAの第二鎖は、その後、正常な遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて合成される。これらの2つのプライマーを用いて、生成物は、その後、PCRにより増幅され、適したベクターへクローニングされ、当業者に周知の方法を通してDNA配列分析にかけられる。突然変異したタンパク質分解マーカー対立遺伝子のDNA配列を正常なタンパク質分解マーカー対立遺伝子のそれと比較することにより、突然変異したタンパク質分解マーカー遺伝子産物の機能の喪失または変化の原因である突然変異が確認されうる。
正常なおよび罹患した個体のリンパ球または他の免疫細胞から単離されたゲノムDNAもまた、PCR鋳型として用いられうる。正常および罹患した個体由来のPCR産物は、一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)突然変異検出技術によるか、および/またはシークエンシングによるかのいずれかにより比較される。
本発明のもう一つの態様において、タンパク質分解マーカーをコードする上記の核酸配列は、天然に存在するゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製するために、および神経系欠陥または疾患を患っている、または、に罹りやすい個体に存在する遺伝子の対立遺伝子変異体を個体または個体の群において検出するために、用いられうる。配列は、特定の染色体へ、染色体の特定の領域へ、または人工染色体構築物、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1構築物、または単一染色体cDNAライブラリーへマッピングされうる(例えば、Harrington et al., 1997, Nat Genet. 15:345-355; Price, 1993, Blood Rev. 7:127-134; およびTrask, 1991, Trends Genet. 7:149-154を参照)。
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)は、他の物理的染色体マッピング技術および遺伝子マップデータと相互に関連づけられうる(例えば、Heinz-Ulrich et al., 1995, Meyers, 前記, pp. 965-968参照)。遺伝子マップデータの例は、様々な科学雑誌において、またはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)サイトにおいて見出されうる。本発明のヌクレオチド配列は、個体において、耐性、感受性または対立遺伝子の変異体間での遺伝子配列における差を検出するために用いられうる。
染色体調製物のインサイチューハイブリダイゼーションおよび確立された染色体マーカーを用いる連鎖解析のような物理的マッピング技術が、遺伝子マップを拡張するために用いられうる。しばしば、マウスのような別の哺乳動物種の染色体上における遺伝子の配置は、特定のヒト染色体の数または腕が知られていない場合でさえも、関連したマーカーを明らかにする場合がある。新しい配列は、物理的マッピングにより染色体腕に割り当てられうる。これは、位置クローニングまたは他の遺伝子発見技術を用いて本発明の遺伝子について探索する研究者に価値のある情報を提供する。いったん遺伝子が遺伝子連鎖によりおおざっぱに特定のゲノム領域へ、例えば毛細血管拡張性運動失調症を11q22-23へ、限局化されたならば、任意の配列のその領域へのマッピングは、さらなる調査のために関連または制御遺伝子を表しうる(例えば、Gatti et al., 1988, Nature 336:577-580参照)。特定のゲノム領域の他の例は、限定されるわけではないが、19q13.3-13.4への白血球受容体クラスターを含む。本発明のヌクレオチド配列もまた、正常なまたは罹患した個体の間で、転座、反転などによる染色***置における違いを検出するために用いられうる。
個体から同定された遺伝子は、PCRにより増幅され、かつ当技術分野において周知の方法によりシークエンシングされる。これらの核酸配列は、その後、同定された遺伝子の配列を、例えば、正常な個体と比較したアルツハイマー病を患っている個体のパーセンテージと相互に関連づけるために、実施例ならびに材料および方法に記載されたアッセイに用いられる。より多くの遺伝子配列およびそれらのアミノ酸配列が同定されているので、脳を含む神経系の細胞におけるタンパク質分解マーカーの発現と、神経系疾患または欠陥に罹りやすい個体の間の相関を可能にする。
さらにもう一つの局面において、異なるハプロタイプの、および/または神経系欠陥を患っているもしくは罹りやすい個体由来の免疫細胞において同定されるような核酸分子の変異体は、神経細胞において免疫関連分子の対立遺伝子変異を検出するために用いられうる。「対立遺伝子」または「変異体」は、遺伝子の代替型である。本発明において特に有用であるのは、本発明の方法により同定された神経系における任意の可能性のある免疫関連分子をコードする遺伝子の変異体である。変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異に起因しうり、結果として、mRNAの変化を生じうるか、または構造もしくは機能が変化する場合もあるし変化しない場合もあるポリペプチドを生じうる。任意の与えられる天然または組換え遺伝子は、対立形質がない、1つの対立形質がある、または多くの対立形質がある。変異体を生じるありふれた突然変異的変化は、一般的に、ヌクレオチドの天然の欠失、付加または置換とされている。これらの型の変化のそれぞれは、与えられた配列において、単独でまたは他のものと組み合わせて、1回または複数回起こりうる。
例えば、早期アルツハイマー病を検出できる変異体核酸分子をさらに同定するために、核酸分子は、例えば、相同性によってセットへグループ化されうる。1セットの核酸分子のメンバーが比較される。好ましくは、核酸分子のセットは、核酸の代替転写産物型のセットである。好ましくは、核酸の代替転写産物型のセットのメンバーは、疾患状態または生物学的状態に関連している、またはコードされたタンパク質がこれに関連している、少なくとも1つのメンバーを含む。例えば、正常なおよび罹患した個体由来の脳細胞ならびに神経細胞からのタンパク質分解マーカー分子のセットが比較される。核酸分子代替転写産物型のセットのメンバーの少なくとも1つは、上記のように、例えば、アルツハイマー病または任意の他の神経系欠陥と関連しうる。従って、核酸分子のセットのメンバーの比較は結果として、疾患状態または生物学的状態に関連している、またはコードされたタンパク質がこれに関連している、核酸分子の少なくとも1つの代替転写産物型の同定を生じる。本発明の好ましい態様において、核酸分子のセットのメンバーは共通の遺伝子由来である。本発明のもう一つの態様において、核酸分子のセットのメンバーは複数の遺伝子由来である。本発明のもう一つの態様において、核酸分子のセットのメンバーは、異なる分類学的種由来である。異なる分類学的種由来の複数の核酸のヌクレオチド配列は、配列類似性検索、オーソログ検索、または両方を行うことにより同定されうり、そのような検索は当業者に公知である。
配列類似性検索は、手作業で、または当業者に公知のいくつかの利用可能なコンピュータプログラムを用いることにより行われうる。好ましくは、当業者にとって利用可能かつ公知である、BlastおよびSmith-Watermanアルゴリズムなどが用いられうる。Blastは、ヌクレオチドおよびタンパク質配列データベースの解析を支援するために設計されたNCBIの配列類似性検索ツールである。Blastは、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/におけるインターネットのワールドワイドウェブを通してアクセスされうる。GCG Packageは、公開ドメインデータベースかまたは任意のローカルで利用できる検索可能なデータベースかのいずれかと共に用いられうるBlastのローカルバージョンを提供する。GCG Package v9.0は、編集、マッピング、比較および整列することにより配列の解析を可能にする100個を超える相互関係のあるソフトウェアプログラムを含む、市販のソフトウェアパッケージである。GCG Packageに含まれる他のプログラムは、例えば、RNA二次構造予測、核酸断片構築、および進化的解析を促進するプログラムを含む。さらに、最も有名な遺伝子データベース(GenBank、EMBL、PIRおよびSWISS-PROT)が、GCGT Packageと共に配布され、データベース検索および操作プログラムで完全にアクセスできる。GCGは、例えば、http://www.gcg.com/におけるインターネットを通してアクセスされうる。Fetchは、アクセッション番号に基づいてGenBankレコードにアノテーションを付けることができるGCGで利用可能なツールであり、Entrezと類似している。もう一つの配列類似性検索は、PangeaからのGeneWorldおよびGeneThesaurusで行われうる。GeneWorld 2.5は、ポリヌクレオチドおよびタンパク質配列の解析のための自動化された、フレキシブルな、高処理量のアプリケーションである。GeneWorldは、配列の自動解析およびアノテーションを可能にする。GCGのように、GeneWorldは、相同性検索、遺伝子解析、複数配列アラインメント、二次構造予測、およびモチーフ同定のためのいくつかのツールを組み込む。GeneThesaurus 1.0(商標)は、複数の源からの情報を提供する、公開およびローカルのデータのためのリレーショナルデータモデルを提供する、配列およびアノテーションデータの会員制サービスである。
もう一つの代替の配列類似性検索は、例えば、BlastParseにより行われうる。BlastParseは、上記のストラテジーを自動化するUNIXプラットフォーム上で作動するPERLスクリプトである。BlastParseは、対象となる標的アクセッション番号のリストを取り上げ、すべてのGenBankフィールドを、フレキシビリティを提供するより容易な検索および解析のための「リレーショナルデータベース」型にその後保存されうる「タブ区切りの」テキストに構文解析する。最終結果は、容易にソート、フィルターおよびクエリされうる一連の完全に解析されたGenBankレコード、加えてアノテーション-リレーショナルデータベースである。
好ましくは、上記配列類似性検索のように、標的核酸と相同性を有する異なる分類学的種由来の複数の核酸が、そこに標的核酸のオーソログを見出すようにさらに詳細に描写される。オーソログは、生物体の文脈内において、配列類似性を有し、かつ類似した機能を行う、広く分岐した生物体における2つの遺伝子に言及するための遺伝子分類で定義される用語である。対照的に、パラログは、遺伝子重複により生じるが進化した新しい機能をもつ種内の遺伝子であり、アイソタイプとも呼ばれる。任意で、パラログ検索もまた行われうる。オーソログ検索を行うことにより、できる限り多様な生物体からの相同配列の完全なリストが得られる。その後、これらの配列は、オーソログであることの基準に適合する最良の代表的な配列を選択するように解析される。オーソログ検索は、例えば、Compareを含む当業者に利用可能なプログラムにより行われうる。好ましくは、オーソログ検索は、各配列についての完全かつ解析されたGenBankアノテーションにアクセスして行われる。現在、GenBankから得られるレコードは「フラットファイル」であり、自動化解析に理想的には適していない。好ましくは、オーソログ検索は、Q-Compareプログラムを用いて行われる。好ましいQ-Compareプロトコールの段階は、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,221,587号に示されたフローチャートに記載されている。
好ましくは、種間配列比較は、当業者に利用できて公知であるCompareを用いて行われる。Compareは、ウィンドウ/ストリンジェンシー基準を用いる配列のペア-ワイズ比較を可能にするGCGツールである。Compareは、特定された質の一致が見出される点を含む出力ファイルを作成する。これらは、もう一つのGCGツール、DotPlotでプロットされうる。
本発明のポリヌクレオチドは、実験の項に記載された技術を用いて単離されうるか、またはPCRを用いて複製されうる。PCRテクノロジーは、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号および第4,683,202号の主題であり、PCR: The Polymerase Chain Reaction (Mullis et al., eds, Birkhauser Press, Boston (1994))またはMacPherson et al., (1991)および(1994)、前記、ならびにそれらに引用された参照文献に記載されている。または、当業者は、本明細書に提供された配列、およびDNAを複製するための市販のDNA合成機を用いることができる。従って、本発明はまた、ポリヌクレオチドの直鎖状配列、ヌクレオチド、適切なプライマー分子、酵素のような化学物質、およびそれらの複製についての使用説明書を供給し、かつポリヌクレオチドを得るように化学的に複製するまたは正しい配向でヌクレオチドを連結することによる、本発明のポリヌクレオチドを得るためのプロセスを提供する。別の態様において、これらのポリヌクレオチドはさらに単離される。なおさらに、当業者は、複製および増幅のために、ポリヌクレオチドを適した複製ベクターへ挿入し、そのベクターを適した宿主細胞(原核生物または真核生物)へ挿入しうる。そのように増幅されたDNAは、当業者に周知の方法により細胞から単離されうる。この方法によりポリヌクレオチドを得るためのプロセスは、そのように得られたポリヌクレオチドと同様に、本明細書にさらに提供されている。
本発明の態様において、細胞から単離された、1つまたは複数のタンパク質分解マーカー核酸分子の存在は、正常な被験体、および神経系障害を患っているか、または、神経系障害に罹りやすい被験体の神経細胞試料と相互に関連づけられる。試料は、好ましくは、神経または脳細胞障害をもつのではないかと疑われる哺乳動物から得られる。好ましくは、タンパク質分解マーカー分子を示し、かつ神経系細胞に検出される核酸分子は、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つと少なくとも約50%配列同一性を有する配列を含み、より好ましくは、タンパク質分解マーカー分子を示し、かつ神経系細胞に検出される核酸分子は、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つと少なくとも約70%配列同一性を有する配列を含み、より好ましくは、タンパク質分解マーカー分子を示し、かつ神経系細胞に検出される核酸分子は、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つと少なくとも約80%配列同一性を有する配列を含み、より好ましくは、タンパク質分解マーカー分子を示し、かつ神経系細胞に検出される核酸分子は、SEQ ID NO:1〜148のいずれか1つと少なくとも約90%、95%、96%、97%、95%、99%または99.9%配列同一性を有する配列を含む。
2つの配列(核酸またはポリペプチド)間のパーセント同一性および類似性は、数学的アルゴリズムを用いて決定されうる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照)。
2つのアミノ酸配列の、または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較を目的として整列される(例えば、ギャップが、最適なアラインメントのために第一および第二アミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入され、非相同性配列は比較を目的として無視されうる)。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数および2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある各ギャップの長さを考慮に入れた、その配列に共有される同一の位置の数の関数である。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが、それぞれその後比較される。第一配列における位置が、第二配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合、分子は、その位置において同一である(本明細書において用いられる場合、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等価である)。
「比較ウィンドウ」とは、配列が連続した位置の同じ数の参照配列と、その2つの配列が最適に整列された後に比較されうる、約25個から約600個まで、通常は約50個〜約200個、より通常は約100個〜約150個からなる群より選択される連続した位置の数のいずれか1つのセグメントを指す。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野において周知である。
例えば、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて入手可能)におけるGAPプログラムの一部であるNeedlemanおよびWunschアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48):444-453, 1970)を用いて、Smith & Watermanの局所的相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482, 1981)により、Pearson & Lipman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)およびAltschul, et al.(Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997)の類似性の検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行により(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wisから入手できる)GAP、BESTFIT、FASTA、およびBLAST)、または手作業のアラインメントおよび視覚的洞察(例えば、Ausubel et al., 前記を参照)により、決定されうる。ギャップパラメーターは、ユーザーの要求に合う様に改変されうる。例えば、GCGソフトウェアパッケージを用いる場合、NWSgapdna.CMP行列ならびに40、50、60、70または80のギャップウエイト、および1、2、3、4、5または6の長さのウエイトが用いられうる。Blossom 62行列またはPAM250行列を用いる例示的なギャップウエイトは、16、14、12、10、8、6または4であり、例示的な長さのウエイトは1、2、3、4、5または6である。GCGソフトウェアパッケージは、核酸配列間のパーセント同一性を決定するために用いられうる。2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性はまた、PAM120ウエイト残基表、12のギャップ長さペナルティおよび4のギャップペナルティを用いる、ALIGNプログラム(バージョン2.0)へ組み入れられているE. MyersおよびW. Millerのアルゴリズム(CABIOS 4:11-17, 1989)を用いて決定されうる。
本発明の核酸およびタンパク質配列はさらに、例えば、他のファミリーのメンバーまたは関連した配列を同定するために、配列データベースに対して検索を実行するためのクエリ配列として用いられうる。そのような検索は、Altschul, et al. (J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行われうる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子と相同的な、または十分なパーセント同一性をもつヌクレオチド配列を得るように、例示的なスコア=100およびワード長=12を以て、NBLASTプログラムで行われる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質と十分に相同的な、または十分な%同一性をもつアミノ酸配列を得るように、例示的なスコア=50およびワード長=3を以て、XBLASTプログラムで行われうる。比較を目的としてギャップドアラインメントを得るために、ギャップドBLASTは、Altschul et al.(Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997)に記載されているように用いられうる。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが用いられうる。
本発明はまた、表現型的にサイレントである保存的置換を含む核酸分子産物に対応する、神経系細胞におけるポリペプチドを含む。そのような置換は、ポリペプチドにおける所定のアミノ酸を、同様の特性をもつもう一つのアミノ酸により置換するものである。表現型的にサイレントである可能性が高いアミノ酸変化に関する手引きは、例えば、Bowie et al., Science 247:1306-1310, 1990に見出されうる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野において周知であり(例えば、Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919, 1992)、下の表に記載される。
本発明に従って、当技術分野の技術内に、用いられる通常の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が存在しうる。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (本明細書では「Samrook et al., 1989); DNA Cloning: A Practical Approach, I巻およびII巻 (D.N. Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization [B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)]; Transcription And Translation [B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984)]; Animal Cell Culture [R.I. Freshney, ed. (1986)]; Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press, (1986)]; B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F.M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照。
本明細書において用いられる場合、核酸配列、遺伝子またはポリペプチドに適用される「断片またはセグメント」という用語は、長さが、普通には少なくとも約5個の連続した核酸塩基(核酸配列または遺伝子について)またはアミノ酸(ポリペプチドについて)、典型的には少なくとも約10個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、より典型的には少なくとも約20個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、通常には少なくとも約30個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、好ましくは少なくとも約40個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、より好ましくは少なくとも約50個の連続した核酸塩基またはアミノ酸、およびよりいっそう好ましくは少なくとも約60個〜80個またはそれ以上の連続した核酸塩基またはアミノ酸である。本明細書において用いられる場合、「重複する断片」とは、核酸またはタンパク質のアミノ末端から始まり、核酸またはタンパク質のカルボキシ末端で終わる連続した核酸またはペプチド断片を指す。各核酸またはペプチド断片は、次の核酸またはペプチド断片と共通の少なくとも約1個の連続した核酸またはアミノ酸位置、より好ましくは共通の少なくとも約3個の連続した核酸塩基またはアミノ酸位置、最も好ましくは共通の少なくとも約10個の連続した核酸塩基またはアミノ酸位置を有する。
核酸関連における有意な「断片」とは、少なくとも17個のヌクレオチド、一般的には少なくとも20個のヌクレオチド、より一般的には少なくとも23個のヌクレオチド、普通には少なくとも26個のヌクレオチド、より普通には少なくとも29個のヌクレオチド、多くは少なくとも32個のヌクレオチド、より多くは少なくとも35個のヌクレオチド、典型的には少なくとも38個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも41個のヌクレオチド、通常には少なくとも44個のヌクレオチド、より通常には少なくとも47個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも53個のヌクレオチドの連続したセグメントであり、および特に好ましい態様において、少なくとも56個またはそれ以上のヌクレオチドである。追加の好ましい態様は、それらの数を超えた長さ、例えば、63個、72個、87個、96個、105個、117個などを含む。それらの断片は、位置のいずれの対においてでもよいが、特に構造ドメイン、例えば膜全域部分の間の境界において、末端を有しうる。
比較される場合、相同性核酸配列は、有意な配列同一性または類似性を示す。核酸における相同性についての標準は、配列比較によるか、またはハイブリダイゼーション条件に基づくかのいずれかでの、当技術分野において一般的に用いられる相同性についての測定である。ハイブリダイゼーション条件は、下により詳細に記載されている。
本明細書において用いられる場合、核酸配列比較の関連における「実質的相同性」は、比較された場合、セグメントかまたはそれらの相補鎖のいずれかが、適切なヌクレオチド挿入または欠失を以て最適に整列される場合、ヌクレオチドの少なくとも約50%、一般的には少なくとも56%、より一般的には少なくとも59%、普通には少なくとも62%、より普通には少なくとも65%、多くは少なくとも68%、より多くは少なくとも71%、典型的には少なくとも74%、より典型的には少なくとも77%、通常には少なくとも80%、より通常には少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%〜98%またはそれ以上において、および特定の態様において、約99%またはそれ以上のヌクレオチドが同一であることを意味する。または、実質的相同性は、セグメントが、典型的には例えば神経系または脳細胞に由来する断片を用いて、鎖またはそれの相補体に選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合に存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも約14個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、および最も好ましくは少なくとも約90%のひと続きの配列に対して少なくとも約55%相同性がある場合に起こる。Kanehisa (1984) Nucl. Acids Res. 12:203-213を参照。記載されているように、相補性比較の長さは、より長いひと続きの配列に対してでありうり、特定の態様において、少なくとも約17個のヌクレオチド、通常には少なくとも約20個のヌクレオチド、より通常には少なくとも約24個のヌクレオチド、典型的には少なくとも約28個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも約40個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約50個のヌクレオチド、およびより好ましくは少なくとも約75個〜100個またはそれ以上のヌクレオチドのひと続きに対してである。セグメントの終点は、多くの異なる対組み合わせにおいてでありうる。染色体シンテニーは、例えば、哺乳動物種間で、比較されることになっているゲノム間に十分な進化的保存性がある場合、相同遺伝子間をさらに区別するために用いられうる。「シンテニーの相同体」は、参照遺伝子との配列同一性を有する、および密接に連鎖した遺伝子と関連した対応する染色***置を有することの両方である。シンテニーの相同体は、遺伝子発現の空間的および時間的局在性を共有すること、ならびに等価な生物学的役割を果たすタンパク質をコードすることの高い確率をもつ。
ハイブリダイゼーションの関連における相同性の言及において、ストリンジェントな条件は、塩、温度、有機溶媒、および他のパラメーター、典型的にはハイブリダイゼーション反応において制御される条件の、ストリンジェントな組み合わされた条件である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃を超える、より通常には約37℃を超える、典型的には約45℃を超える、より典型的には約55℃を超える、好ましくは約65℃を超える、およびより好ましくは約70℃を超える温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、普通には約1000 mM未満、通常には約500 mM未満、より通常には約400 mM未満、典型的には約300 mM未満、好ましくは約200 mM未満、およびより好ましくは約150 mM未満である。しかしながら、パラメーターの組み合わせは、任意の単一のパラメーターの測定よりもさらに重要である。例えば、Wetmur and Davidson (1968) J. Mol. Biol. 31:349-370を参照。
神経系傷害の診断
もう一つの局面において、本発明は、1つまたは複数のマーカーを用いてヒト神経系傷害および/または神経系障害診断を助けるための方法を提供する。例えば、数分間〜数日間後内に傷害またはストレスを受けた器官において(インビボ)、タンパク質分解されることによる基質タンパク質の1 mgあたり約1 μg〜約500 μgの、またはインビトロで数分間〜数時間内の時点において1/10,000〜1/20の精製されたプロテアーゼ-基質タンパク質/タンパク質混合物の比率を用いる、表1に同定されたタンパク質、それらのペプチド、断片もしくは誘導体、および/またはSEQ ID NO:1〜148により同定されるものに対する比活性をもつタンパク質分解酵素生物マーカー。これらのマーカーは、単独で、または他のタンパク質分解酵素マーカー、もしくはタンパク質分解酵素生物マーカーおよび神経ペプチドの組み合わせと共に、用いられうる。マーカーは、ヒト患者、例えばTBI患者、および神経系傷害が検出されない正常な被験体の試料に異なって存在する。例えば、マーカーの一部は、正常な被験体においてより神経系傷害および/もしくはニューロンの障害をもつヒト患者において、上昇したレベルで発現される、ならびに/またはより高い頻度で存在する。それゆえに、人におけるこれらのマーカーの1つまたは複数の検出は、人が神経系傷害および/またはニューロンの障害をもつという確率に関する有用な情報を提供する。
本発明の組成物(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび/またはアゴニストもしくはアンタゴニスト)で処置、予防および/または診断されうる、神経系疾患、ニューロンの障害および/または状態は、限定されるわけではないが、神経系傷害、ならびに結果として、軸索の断絶、ニューロンの減少もしくは変性、または脱髄のいずれかを生じる疾患、障害および/または状態を含む。本発明により患者(ヒトおよび非ヒト哺乳動物患者を含む)において処置、予防および/または診断されうる神経系病変は、限定されるわけではないが、中枢神経系(脊髄、脳を含む)かまたは末梢神経系のいずれかの以下の病変を含む:(1)脳梗塞もしくは虚血、または脊髄梗塞もしくは虚血を含む、神経系の一部における酸素の不足が結果としてニューロンの傷害または死を生じる、虚血性病変;(2)物理的傷害により引き起こされたまたは手術に関連した病変を含む外傷性病変、例えば、神経系の一部を切断する病変、または圧縮性傷害;(3)神経系関連悪性腫瘍かまたは非神経系組織由来の悪性腫瘍のいずれかである悪性組織により神経系の一部が破壊または傷害されている悪性病変;(4)例えば、膿瘍による、または、ヒト免疫不全ウイルス、帯状ヘルペスもしくは単純ヘルペスウイルスによる感染またはライム病に関連した、感染の結果として、神経系の一部が破壊または傷害されている感染性病変;(5)限定されるわけではないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病または筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連した変性を含む、変性過程の結果として、神経系の一部が破壊または傷害されている変性病変;(6)限定されるわけではないが、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ウェルニッケ病、タバコ-アルコール性弱視、マルキアファーヴァ-ビニャーミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール依存性小脳変性を含む栄養障害または代謝の障害により、神経系の一部が破壊または傷害されている、栄養上の疾患、障害および/または状態に関連した病変;(7)限定されるわけではないが、糖尿病(糖尿病性神経障害、ベル麻痺)、全身性エリテマトーデス、癌腫またはサルコイドーシスを含む全身性疾患に関連した神経学的病変;(8)アルコール、鉛または特定の神経毒を含む毒性物質により引き起こされる病変;ならびに(9)限定されるわけではないが、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス関連脊髄症、横断性脊髄症または様々な病因、進行性多病巣性白質脳症、および橋中央ミエリン溶解を含む、脱髄性疾患により、神経系の一部が破壊または傷害されている脱髄化病変。
従って、本発明の態様は、以下の段階を含む、ヒト神経系傷害および/またはニューロンの障害の診断を助けるための方法を含む:(a)試料において少なくとも1つのタンパク質分解酵素生物マーカーを検出する段階、および(b)マーカーの検出を、ヒト神経系傷害および/またはニューロンの障害または心臓のような器官傷害の推定診断と相関させる段階。相関は、マーカーの対照量(マーカーの上方または下方制御)(例えば、ヒト神経系傷害が検出されない正常な被験体における)と比較した試料におけるマーカーの量を考慮に入れうる。相関は、検査試料におけるマーカーの存在または非存在、対照における同じマーカーの検出の頻度を考慮に入れうる。相関は、被験体が神経系傷害をもっているかどうか、神経系傷害の重症度の程度、および傷害の細胞内の位置の測定を促進するためにそのような因子の両方を考慮に入れうる。
任意の適した試料は、マーカーを検出されるべき被験体から得られうる。好ましくは、試料は、被験体由来の脳脊髄液試料である。必要に応じて、試料は、マーカーの検出能を増強するために上記のように調製されうる。例えば、マーカーの検出能を増加させるために、被験体由来の血清は、好ましくは、例えば、シバクロンブルー(Cibacron blue)アガロースクロマトグラフィーおよび一本鎖DNAアフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、それらの断片および誘導体により、分画されうる。事前分画プロトコールのような試料調製は、任意であり、用いられる検出の方法に依存してマーカーの検出能を増強させる必要はない場合がある。例えば、試料調製は、マーカーを特異的に結合する抗体が、試料においてマーカーの存在を検出するために用いられる場合には、不必要でありうる。
任意の適した方法が、試料においてマーカーを検出するために用いられうる。例えば、蛍光発生アッセイ法または気相イオン分光測定法が、上記のように用いられうる。これらの方法を用いて、1つまたは複数のマーカーが検出されうる。好ましくは、試料は、複数のマーカーの存在について検査される。単一のマーカー単独よりむしろ、複数のマーカーの存在を検出することは、診断医により多くの情報を提供する。具体的には、試料における複数のマーカーの検出は、真の陽性および真の陰性診断のパーセンテージを増加させ、偽陽性または偽陰性診断のパーセンテージを減少させる。
マーカーの検出は、その後、神経系傷害および/またはニューロンの障害の推定診断と相関させられる。いくつかの態様において、マーカーの量を定量化することなく、単なるマーカーの存在または非存在の検出が有用であり、神経系傷害および/またはニューロンの障害の推定診断と相関されうる。
他の態様において、マーカーの検出は、マーカーの検出を、神経系傷害の推定診断、神経系傷害の重症度の程度、神経系障害の診断、それらの断片および誘導体と相関させるためにマーカーを定量化する段階を含みうる。従って、検査されることになっている被験体において検出されるマーカーの量が対照量と比較してより高い場合には、検査されることになっている被験体は、そのような傷害および/または神経系障害をもつ、より高い確率を有する。
同様に、もう一つの態様において、マーカーの検出はさらに、マーカーの検出を、神経系傷害の推定診断、神経系傷害の重症度の程度、神経系障害の診断と相関させるためにマーカーを定量化する段階であって、マーカーが、正常な被験体の血清試料においてより、患者由来のCSFまたは血清試料において、より低い量で存在する段階を含みうる。従って、検査されることになっている被験体において検出されるマーカーの量が対照量と比較してより低い場合には、検査されることになっている被験体は、神経系傷害、器官傷害および/または神経系障害をもつ、より高い確率を有する。
マーカーが定量化される場合、それは対照と比較されうる。対照は、例えば、神経系傷害および/または神経系障害が検出されない正常な被験体の比較できる試料に存在するマーカーの平均または中央値量、でありうる。対照量は、検査量を測定する際と同じ、または実質的に類似した、実験条件下で測定される。例えば、検査試料が、被験体の脳脊髄液および/または血清試料から得られ、マーカーが特定のプローブを用いて検出される場合には、マーカーの対照量は、好ましくは、同じプローブを用いて患者の血清試料から測定される。マーカーの対照量は、それがその集団におけるマーカー量の変動を反映するように、神経系傷害および/またはニューロンの障害をもたない正常な被験体由来の試料の有意な数に基づいて決定されることが好ましい。
質量分析法により生じたデータは、その後、コンピュータソフトウェアにより解析されうる。ソフトウェアは、質量分析計からのシグナルをコンピュータ読み取り可能な形へ変換するコードを含みうる。ソフトウェアはまた、本発明のマーカー、または他の有用なマーカーに対応するシグナルにおいてシグナルが「ピーク」を表すかどうかを決定するためのシグナルの解析にアルゴリズムを適用するコードを含みうる。ソフトウェアはまた、検査試料からのシグナルを「正常」およびヒト神経系傷害の典型的シグナル特性と比較し、その2つのシグナル間の適合の近似性を決定するアルゴリズムを実行するコードを含みうる。ソフトウェアはまた、検査試料がどれに最も近いかを示すコードを含みうり、それにより有望な診断を与える。
好ましい態様において、生物マーカーは、例えば、哺乳動物、鳥、魚、爬虫類のような幅広い範囲の種において検出される。例えば、シナプトタグミン-1は、多くの種に見出され、高く保存されている。下記は、シナプトタグミン-1分類学的データの例である。
切断生成物を検出するための抗体の産生
それらの基質のタンパク質分解酵素生物マーカーの酵素活性による切断生成物もまた、検出されうる。様々な神経系傷害、傷害の重症度の程度、ニューロンの障害、それらの断片および誘導体を患っている患者における試料から得られる切断生成物は、上記のように調製されうる。さらに、切断生成物は、ペプチド対タンパク質全体に存在しうる異なる抗原性エピトープに対する抗体の産生のために生物マーカーの断片またはペプチドを得るように酵素的消化にかけられうる。抗原性エピトープは、例えば、エピトープを特異的に結合するモノクローナル抗体を含む抗体を産生させるために有用である。抗原性エピトープは、イムノアッセイにおける標的分子として用いられうる。(例えば、Wilson et al., Cell 37:767-778 (1984); Sutcliffe et al., Science 219:660-666 (1983)参照)。
好ましい態様において、抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定される生物マーカーを特異的に結合する。SEQ ID NO:1〜148により同定されるエピトープは、少なくとも約3アミノ酸長ほどでありうる。SEQ ID NO:1〜148に方向づけられた抗体はまた、SEQ ID NO:1〜148により同定される生物マーカーのN末端およびC末端領域に向けられるエピトープを含みうる。完全長タンパク質および/またはSEQ ID NO:1〜148により同定されるものよりも長い断片は、より長い断片に対する抗体の産生のために、アクセッション番号を含め、表1に開示されている。抗体は、SEQ ID NO:1〜148により同定されるようなより長いN末端および/もしくはC末端断片、ならびに/または同定された切断部位(表2参照)に渡るエピトープに方向づけられうり、わずか3アミノ酸長ほどから500アミノ酸長まででありうる。完全長タンパク質のアイデンティティについて、例えば、表1を参照されたい。例は、限定されるわけではないが、以下を含む:アクロモペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、アンギオテンシン変換酵素、ブロメライン、カルパイン、カルパインI、カルパインII、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼG、カルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼW、カルボキシペプチダーゼY、カスパーゼ、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ13、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、キモパパイン、チマーゼ、キモトリプシン、α-クロストリパイン、コラゲナーゼ、補体C1r、補体C1s、補体因子D、補体因子I、ククミシン、ジペプチジルペプチダーゼIV、白血球エラスターゼ、膵エラスターゼ、エンドプロテアーゼArg-C、エンドプロテアーゼAsp-N、エンドプロテアーゼGlu-C、エンドプロテアーゼLys-C、エンテロキナーゼ、Xa因子、フィシン、フューリン、グランザイムA、グランザイムB、HIVプロテアーゼ、イガーゼ、組織カリクレイン、キナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、ミクロソーム、マトリックスメタロプロテアーゼ、メチオニンアミノペプチダーゼ、ニュートラーゼ、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロリダーゼ、プロナーゼE、前立腺特異的抗原、プロテアーゼ、プロテアーゼS、プロテイナーゼ、プロテイナーゼ3、プロテイナーゼA、プロテイナーゼK、プロテインC、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ、トロンビン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、トロポニン、トリプシン、トリプターゼ、ウロキナーゼ;およびSEQ ID NO:1〜148により同定される少なくとも1つまたは複数のペプチド。
切断生成物は、例えば、当技術分野において周知の方法により抗体を誘導するために、用いられうる。(例えば、Sutchliffe et al., 前記; Wilson et al., 前記; Chow et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:910-914; およびBittle et al., J. Gen. Virol. 66:2347-2354 (1985)を参照)。1つまたは複数の免疫原性エピトープを含む切断された神経ポリペプチドは、アルブミンのような担体タンパク質と共に動物系(ウサギまたはマウスのような)へ抗体応答を誘発するために提示されうる、または、ポリペプチドが十分な長さ(少なくとも約25アミノ酸)である場合には、ポリペプチドは担体なしで提示されうる。しかしながら、わずか8〜10アミノ酸を含む免疫原性エピトープは、最低限でも変性ポリペプチドにおける(例えば、ウェスタンブロッティングにおいて)線状エピトープに結合する能力がある抗体を産生させるのに十分であることが示されている。
本発明のエピトープ所有ポリペプチドは、限定されるわけではないが、インビボ免疫化、インビトロ免疫化、およびファージディスプレイ方法を含む当技術分野において周知の方法により抗体を誘導するために用いられうる。例えば、Sutcliffe et al., 前記; Wilson et al., 前記; およびBittle et al., J. Gen. Virol., 66:2347-2354 (1985)を参照。インビボ免疫化が用いられる場合には、動物は遊離ペプチドで免疫されうる;しかしながら、抗ペプチド抗体力価は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドのような高分子担体へペプチドを連結することによりブーストされうる。例えば、システイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを用いる担体に連結されうり、他のペプチドは、グルタルアルデヒドのようなより一般的な連結剤を用いる担体に連結されうる。ウサギ、ラットおよびマウスのような動物は、遊離ペプチドかまたは担体連結ペプチドのいずれかで、例えば、約100 μgのペプチドまたは担体タンパク質およびフロイントのアジュバントまたは免疫応答を刺激することについて公知の任意の他のアジュバントを含む乳濁液の腹腔内および/または皮内注射により、免疫される。数回のブースター注射は、例えば、固体表面に吸着した遊離ペプチドを用いるELISAアッセイ法により、検出されうる抗ペプチド抗体の有用な力価を与えるために、例えば、約2週間の間隔で、必要とされうる。免疫された動物由来の血清における抗ペプチド抗体の力価は、例えば、当技術分野において周知の方法に従ったペプチドの固体支持体上への吸着および選択された抗体の溶出による、抗ペプチド抗体の選択により増加されうる。
核酸切断生成物エピトープはまた、発現されたポリペプチドの検出および精製を助けるためにエピトープタグ(例えば、ヘマグルチニン(「HA」)タグまたはフラグタグ)として対象となる遺伝子と再結合されうる。例えば、Janknecht et al.により記載された系は、ヒト細胞系に発現された非変性融合タンパク質の即座の精製を可能にする(Janknecht et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系において、対象となる遺伝子は、遺伝子のオープンリーディングフレームが6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳で融合されるように、ワクシニア組換えプラスミドへサブクローニングされる。タグは、融合タンパク質についてのマトリックス結合ドメインとしての役割を果たす。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物は、Ni2+ニトリロ酢酸-アガロースカラム上へ添加され、ヒスチジンタグ付きタンパク質は、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出されうる。
本発明の抗体は、当技術分野において公知の任意の適した方法により作製されうる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体を調製する方法は当業者に公知である(Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (全体として参照により本明細書に組み入れられている、Cold spring Harbor Laboratory Press, 第2版 (1988))。例えば、本発明のポリペプチドは、限定されるわけではないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む様々な宿主動物に、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の生成を誘導するように投与されうる。本発明のポリペプチドの投与は、免疫剤、および必要に応じてアジュバント、の1回または複数回の注入を必要としうる。様々なアジュバントが、宿主種に依存して免疫学的応答を増加させるために用いられうり、限定されるわけではないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)のような有用である可能性のあるヒトアジュバントを含む。そのようなアジュバントもまた、当技術分野において周知である。本発明の目的のために、「免疫剤」は、異種性ポリペプチドとの融合体および本明細書に記載されうるようなポリペプチドの他の型に加えて、断片、変異体および/または誘導体を含む、本発明のポリペプチドと定義されうる。
典型的には、免疫剤および/またはアジュバントは、複数回の皮下または腹腔内注射により動物に注入されるが、それらはまた、筋肉内におよび/または静脈内を通して与えられうる。免疫剤は、本発明のポリペプチド、それらの融合タンパク質もしくは変異体を含みうる。ポリペプチドの性質(すなわち、パーセント疎水性、パーセント親水性、安定性、正味荷電、等電点など)に依存して、免疫されることになっている哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を結合させることが有用でありうる。そのような結合は、共有結合が形成されるように活性化学官能基を本発明のポリペプチドおよび免疫原性タンパク質の両方へ誘導することによる化学的結合か、または融合タンパク質に基づいた方法もしくは当業者に公知の他の方法を通してかのいずれかを含む。そのような免疫原性タンパク質の例は、限定されるわけではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンおよびダイズトリプシンインヒビターを含む。様々なアジュバントが、宿主種に依存して免疫学的応答を増加させるために用いられうり、限定されるわけではないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルブムのような有用である可能性のあるヒトアジュバントを含む。用いられうるアジュバントの追加の例は、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫化プロトコールは、過度の実験なしに当業者により選択されうる。
本発明の抗体はまた、モノクローナル抗体を含みうる。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)および米国特許第4,376,110号により、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold spring Harbor Laboratory Press, 第2版, (1988)により、Hammerling, et al., Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsevier, N.Y., (1981))により記載されたもののようなハイブリドーマ方法、または当業者に公知の他の方法を用いて調製されうる。モノクローナル抗体を作製するために用いられうる方法の他の例は、限定されるわけではないが、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030) およびEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)を含む。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらのサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスでありうる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養されうる。インビボでのモノクローナル抗体の高力価の産生は、これを産生の現在好ましい方法にさせている。
ハイブリドーマ方法において、マウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系をもつマウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、典型的には、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生する能力があるリンパ球を誘発するように免疫剤で免疫される。または、リンパ球はインビトロで免疫されうる。
免疫剤は、典型的には、神経ポリペプチド、それらの断片または融合タンパク質を含む。一般的に、ヒト起源の死亡が望ましい場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が用いられるか、または非ヒト哺乳動物源が望ましい場合には脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が用いられるかのいずれかである。リンパ球は、その後、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールのような適した融合剤を用いて不死化細胞系と融合される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986), pp. 59-103)。不死化細胞系は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、齧歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞、である。通常には、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞系が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適した培地において培養されうる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠損する場合には、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、物質がHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含む。
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定的な高レベル発現を維持し、かつHAT培地のような培地に感受性があるものである。より好ましい不死化細胞系は、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif.およびAmerican Type Culture Collection, Manassas, Vaから入手されうるマウス骨髄腫系である。明細書中を通して推論されるように、ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)。
ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、その後、本発明の神経ポリペプチドに対して方向づけられたモノクローナル抗体の存在についてアッセイされうる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイ法により、測定される。そのような技術は当技術分野において公知であり、当業者の技術範囲内である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollart, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)分析により測定される。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈手順によりサブクローニングされ、標準的方法(Goding、前記)により増殖されうる。この目的のための適した培地は、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地およびRPMI-1640を含む。または、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物における腹水のようなインビボで増殖されうる。
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーのような通常の免疫グロブリン精製手順により培地または腹水から単離または精製されうる。
当業者は、様々な方法がモノクローナル抗体の産生について当技術分野に存在しており、従って、本発明は、それらのただ1つの、ハイブリドーマにおける産生に限定されないことを認識しているものと思われる。例えば、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載されたもののような組換えDNA方法により作製されうる。このような関係において、用語「モノクローナル抗体」は、単一の真核生物、ファージまたは原核生物のクローン由来の抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の手順(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖、またはヒト、ヒト化もしくは他の起源由来のそのような鎖をコードする遺伝子に特異的に結合する能力があるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)を用いて、容易に単離かつシークエンシングされうる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源としての役割を果たす。いったん単離されたならば、DNAは、発現ベクターへ配置されうり、その後、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得るように、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞へ形質転換される。
ハイブリドーマテクノロジーを用いて特定の抗体について産生およびスクリーニングするための方法は、日常的で、当技術分野において周知である。非限定的例において、マウスは、生物マーカーポリペプチドまたはそのようなペプチドを発現させる細胞で免疫されうる。いったん免疫応答が検出されたならば、例えば、抗原に特異的な抗体が、マウス血清に検出され、マウス脾臓が採取されて、脾細胞が単離される。脾細胞は、その後、周知の方法により任意の適した骨髄腫細胞、例えばATCCから入手できる細胞系SP20由来の細胞、に融合される。ハイブリドーマは、限界希釈により選択かつクローニングされる。ハイブリドーマクローンは、その後、本発明のポリペプチドを結合する能力がある抗体を分泌する細胞について当技術分野において公知の方法によりアッセイされる。一般的に高レベルの抗体を含む腹水が、陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫することにより産生されうる。
従って、本発明は、モノクローナル抗体を作製する方法、加えて、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養する段階であって、ハイブリドーマが、本発明の抗原で免疫されたマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合することにより作製されている段階、およびその後、本発明のポリペプチドを結合する能力がある抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合の結果生じたハイブリドーマをスクリーニングする段階を含む方法により産生される抗体を提供する。切断生成物、それらのペプチドおよび誘導体を検出する抗体は、新しい切断生成物を同定するためのイムノアッセイ法および他の方法に用いられうる、ならびに、神経系傷害、傷害の重症度の程度および/または神経学的障害の診断に用いられうる。
他の方法もまた、切断生成物特異的抗体の大量生産に用いられうる。例えば、抗体はまた、当技術分野において公知の様々なファージディスプレイ方法を用いて作製されうる。ファージディスプレイ方法において、機能性抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特定の態様において、そのようなファージは、レパートリーまたは組み合わせの抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインをディスプレイするために利用されうる。対象となる抗原を結合する抗原結合ドメインを発現させるファージは、抗原で、例えば、標識された抗原、または固体もしくはビーズに結合もしくは捕獲された抗原を用いて、選択または同定されうる。これらの方法に用いられるファージは、典型的には、Fab、Fv、またはファージ遺伝子IIIもしくは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え的に融合されたジスルフィド安定化Fv抗体ドメインをもつファージから発現されるfdおよびM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。本発明の抗体を作製するために用いられうるファージディスプレイ方法の例は、Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182:41-50 (1995); Ames et al., J. Immunol. Methods 184:177-186 (1995); Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24:952-958 (1994); Persic et al., Gene 187 9-18 (1997); Burton et al., Advances in Immunology 57:191-280 (1994); PCT出願第PCT/GB91/01134号; PCT公開 WO 90/02809; WO 91/10737; WO 92/01047; WO 92/18619; WO 93/11236; WO 95/15982; WO 95/20401; および米国特許第5,698,426号; 第5,223,409号; 第5,403,484号; 第5,580,717号; 第5,427,908号; 第5,750,753号; 第5,821,047号; 第5,571,698号; 第5,427,908号; 第5,516,637号; 第5,780,225号; 第5,658,727号; 第5,733,743号および第5,969,108号;それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられている、に開示されたものを含む。
本発明の抗体は様々な有用性をもつ。例えば、そのような抗体は、試料において本発明のポリペプチドの存在または定量化を検出するための診断アッセイ法に用いられうる。そのような診断アッセイ法は、少なくとも2段階を含みうる。第一に、試料を抗体にさらす段階であって、試料が組織(例えば、ヒト、動物など)、生体液(例えば、血液、尿、痰、***、羊水、唾液など)、生物学的抽出物(例えば、組織または細胞のホモジネートなど)、タンパク質マイクロチップ(例えば、Arenkov P, et al., Anal Biochem., 278(2):123-131 (2000)参照)、またはクロマトグラフィーカラムなどである、段階。および、基質に結合した抗体の定量化を含む第二段階。または、方法は、追加として、抗体を固体支持体へ、共有結合的に、静電気的に、または可逆的にかのいずれかで、付着させる第一段階、および結合した抗体を、上記および本明細書の他の場所で定義されているような、試料にさらす第二段階を含みうる。
競合結合アッセイ法、直接または間接サンドイッチアッセイ法、不均一または均一な相のいずれかにおいて行われる免疫沈降アッセイ法のような様々な診断アッセイ技術は、当技術分野において公知である(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc., (1987), pp. 147-158)。診断アッセイ法に用いられる抗体は、検出可能な部分で標識されうる。検出可能な部分は、検出可能なシグナルを直接的にかまたは間接的にかのいずれかで、発生する能力があるべきである。例えば、検出可能な部分は、2H、14C、32Pまたは125Iのような放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリンのような蛍光または化学ルミネセンス化合物、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、または西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素でありうる。抗体を検出可能な部分に結合させるための当技術分野において公知の任意の方法が用いられうり、Hunter et al., Nature, 144:945 (1962); David et al., Biochem., 13:1014 (1974); Pain et al., J. Immunol. Methods, 40:219 (1981); およびNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)により記載された方法を含む。
キット
さらにもう一つの局面において、本発明は、神経系傷害、傷害の重症度の程度、細胞内局在性および/またはニューロンの障害の診断を助けるためのキットであって、キットが本発明のマーカーを検出するために用いられうる、キットを提供する。例えば、キットは、マーカーが患者および正常な被験体の試料において異なって存在する、本明細書に記載されたマーカーの任意の1つまたは複数を検出するために用いられうる。本発明のキットは多くの適用を有する。例えば、キットは、被験体が、例えば、樹状突起と対比して、軸索傷害をもつか、または陰性診断をもつかを区別するために用いられうり、それに従って、ニューロンの傷害診断を助ける。もう一つの例において、キットは、処置の効果を測定するためのインビトロまたはインビボの動物モデルにおいて、マーカーの1つまたは複数の発現を調節する化合物を同定するために用いられうる。
一つの態様において、キットは、(a)組成物または生物マーカーの一団;(b)タンパク質基質;および(c)検出試薬を含む。そのようなキットは、上記の材料から調製されうり、材料(例えば、抗体、検出試薬、固定化支持体など)に関する前の考察は、この項へ完全に適用でき、繰り返されることはないと考えられる。任意で、キットはさらに、事前分画スピンカラムを含みうる。いくつかの態様において、キットはさらに、ラベルまたは別個の挿入物の形で、適した操作パラメーターについての使用説明書を含みうる。
好ましい態様において、組成物または生物マーカーの一団は、SEQ ID NO:1〜148により同定される任意のひとつの生物マーカーから選択される少なくとも1つの生物マーカーを含む。好ましくは、生物マーカーの一団は、SEQ ID NO:1〜148から選択される少なくとも2つの生物マーカーからSEQ ID NO:1〜148から選択される145個の生物マーカーまでを含む。
追加の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドの抗原を含む血清をスクリーニングするのに用いる診断キットを含む。診断キットは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド抗原と特異的免疫反応性の、実質的に単離された抗体、およびポリヌクレオチドまたはポリペプチド抗原の抗体への結合を検出するための手段を含む。一つの態様において、抗体は固体支持体に付着している。特定の態様において、抗体はモノクローナル抗体でありうる。キットの検出手段は、第二の標識されたモノクローナル抗体を含みうる。代替として、または追加として、検出手段は、標識された競合抗原を含みうる。
一つの診断構成において、検査血清は、本発明の方法により得られる表面結合した抗原を有する固相試薬と反応させられる。特異的な抗原抗体で試薬に結合させ、洗浄により結合していない血清成分を除去した後、試薬は、固体支持体上の結合した抗-抗原の抗体の量に比例してレポーターを試薬に結合させるように、レポーター標識抗ヒト抗体と反応させられる。試薬は、結合していない標識抗体を除去するために再び洗浄され、試薬と会合したレポーターの量が測定される。典型的には、レポーターは、適した蛍光定量的、ルミネセンスの、または比色定量の基質の存在下で固相をインキュベートすることにより検出される酵素である(Sigma, St. Louis, Mo.)。
上記アッセイ法における固体表面試薬は、タンパク質材料を、重合ビーズ、ディップスティック、96ウェルプレートまたはフィルター材料のような固体支持体材料へ付着させるための公知の技術により調製される。これらの付着方法は、一般的に、タンパク質の支持体への非特異的吸着、または、典型的には、遊離アミノ基を通しての、活性化カルボキシル基、ヒドロキシル基もしくはアルデヒド基のような固体支持体上の化学反応性基へのタンパク質の共有結合性付着を含む。または、ストレプトアビジンコーティング化プレートが、ビオチン化抗原と共に用いられうる。
任意で、キットはさらに、試料で検出されたマーカーの検査量が、神経系傷害、傷害の重症度の程度、細胞内局在性、ニューロンの障害および/または患者への処置の効果の診断と一致した診断量であるかどうかを決定するために対照情報標準と検査試料が比較されうるように、標準または対照情報を含みうる。
もう一つの態様において、キットは以下を含む:(a)吸着剤がマーカーを結合するのに適している、上に吸着剤を含む基板、(b)SEQ ID NO:1〜148により同定される生物マーカーから選択される任意の1個の生物マーカーから145個までの生物マーカー、および(c)試料を吸着剤と接触させ、吸着剤により保持されたマーカーを検出することによりマーカーを検出するための使用説明書。いくつかの態様において、キットは、溶離液(選択肢として、または使用説明書と組み合わせて)または溶離液を作製するための使用説明書を含みうり、吸着剤および溶離液の組み合わせが、気相イオン分光測定法を用いるマーカーの検出を可能にする。そのようなキットは、上記の材料から調製されうり、これらの材料(例えば、プローブ基板、吸着剤、洗浄溶液など)の前の考察がこの項へ完全に適用でき、繰り返されることはないと考えられる。
もう一つの態様において、キットは、上に吸着剤を含む第一基板(例えば、吸着剤で官能性をもたせた粒子)、および第一基板が気相イオン分光計へ取り外し可能に挿入できるプローブを形成するように配置されうる、第二基板を含みうる。他の態様において、キットは、基板の上に吸着剤をもつ取り外し可能に挿入できるプローブの形をとる単一の基板を含みうる。さらにもう一つの態様において、キットはさらに、事前分画スピンカラム(例えば、シバクロンブルーアガロースカラム、抗HSAアガロースカラム、サイズ排除カラム、Q-陰イオン交換スピンカラム、一本鎖DNAカラム、レクチンカラムなど)を含みうる。
任意で、キットはさらに、ラベルまたは別個の挿入物の形で、適した操作パラメーターについての使用説明書を含みうる。例えば、キットは、試料がプローブ上に接触した後にプローブを洗浄する方法を消費者に知らせる標準的な使用説明書を有しうる。もう一つの例において、キットは、試料においてタンパク質の複雑性を低減するために試料を事前分画することについての使用説明書を有しうる。もう一つの例において、キットは、分画または他の過程を自動化することについての使用説明書を有しうる。
以下の実施例は、限定としてではなく、例証として、提供される。特定の例が提供されているが、上の記載は例証するものであり、制限するものではない。前に記載された態様の特徴の任意の1つまたは複数は、本発明における任意の他の態様の1つまたは複数の特徴と任意の様式で組み合わせられうる。さらになお、本発明の多くのバリエーションが、本明細書の検討により当業者に明らかになるものと思われる。本発明の範囲は、それゆえに、上記の記載を参照してではなく決定されるべきで、その代わりとして、添付された特許請求の範囲をそれらの等価物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。
本出願に引用されたすべての刊行物および特許文書は、あたかも各個々の刊行物または特許文書がそのように個々に示されているのと同じ程度で、すべての目的のために全体として参照により組み入れられている。本文書における様々な参照文献の引用により、出願人らは、任意の特定の参照文献が彼らの発明の「先行技術」であることを認めない。
実施例
材料および方法
脳傷害モデルのインビボモデル
制御皮質衝撃(controlled cortical impact)(CCI)装置が、ラットにおいてTBIのモデルを作り、脳組織およびCSF試料を作製するために用いられる。成体雄(280〜300 g)Sprague-Dawleyラット(Harlan: Indianapolis, IN)を1:1 O2/N2Oの同伴ガス中の4%イソフルランで麻酔をかけ(4 min.)、続いて、同じ同伴ガス中の2.5%イソフルランで麻酔状態を維持する。コア身体温度は、直腸サーミスタプローブにより連続的にモニターされ、ラットの下に調節可能温度制御加温パッドを置くことにより37±1℃に維持される。動物は、腹臥位で定位固定フレームに乗せられ、耳および切歯バーにより固定される。正中頭蓋切開がなされ、軟組織が映し出され、片側(衝撃の部位と同側の)開頭(7 mm直径)が、中央縫合線に隣接した、ブレグマと人字縫合の中間で行われる。硬膜は皮質の上で無傷のままにしておかれる。脳外傷は、5 mm直径アルミニウム衝撃部材チップ(空気圧シリンダーに格納された)で、3.5 m/sの速度で、1.6 mm 圧縮および150 ms 滞留時間(圧縮持続時間)で、右皮質(同側皮質)に衝撃を与えることにより生じさせられる。これらの傷害は、局所性皮質挫傷およびより広汎性軸索損傷の異なる大きさに関連している。速度は、空気圧シリンダーへ供給される圧力(圧縮N2)を調整することにより制御される。速度および滞留時間は、記憶トレースオシロスコープ(BK Precision, model 2522B; Placentia, CA)により記録されるアナログシグナルを発生する線速度変位変換器(Lucas Shaevitz(商標)モデル500 HR; Detroit, MI)により測定される。偽性傷害対照動物は、衝撃傷害を受けないことを除いて、同一の外科的手順を受ける。適切な傷害前および傷害後管理は、University of Florida Institutinal Animal Care and Use Committeeにより示されたガイドラインおよびGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに詳述されたNational Institutes of Healthガイドラインの遵守を保証するように維持される。異なる脳組織領域、CSFおよび血清試料は、下記のように、CCI後、7連携点(6、12および24時間、ならびに2、3、7および14日間)の最大7点において収集される。
同様に、多器官傷害が、当技術分野において周知の方法を用いてラットにおける敗血症により引き起こされうる。
脳組織収集および調製
傷害後の適切な時点(6、12、24、48および72時間目、5および7日間目)において、動物に麻酔をかけ、すぐに断頭により屠殺する。器官組織をすぐに取り出し、氷冷したPBSでリンスし、二等分する。異なる領域(必要に応じて)を、素速く切開し、氷冷したPBS中でリンスし、液体窒素中で急速凍結し、用いるまで-80℃で凍結する。ウェスタンブロット分析のために、脳試料を、ドライアイス上に置かれた小さな乳鉢-乳棒(pastel)で微粉末へ粉砕する。粉砕された脳組織粉末を、その後、4℃で、50 mM トリス(pH 7.4)、5 mM EDTA、1%(v/v)トリトンX-100、1 mM DTT、1× プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Biochemicals)で90 min、溶解させる。脳可溶化液を、その後、透明にしてかつ不溶性細片を除去するために4℃で8000 g、5 min遠心分離し、急速凍結し、用いるまで-85℃で保存する。
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動および電気転写
組織可溶化物およびCSFのタンパク質濃度は、アルブミン標準でのビシンコニン酸微小タンパク質アッセイ法(Pierce Inc., Rockford, IL, USA)により測定される。タンパク質平衡試料は、0.25 M トリス(pH 6.8)、0.2 M DTT、8% SDS、0.02% ブロモフェノールブルーおよび蒸留H2O中の20% グリセロールを含む2倍ローディング緩衝液におけるドデシル硫酸-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)のために調製される。レーンあたり20マイクログラム(20 μg)のタンパク質が、200 Vで2 hの6.5% トリス/グリシンゲル上のSDS-PAGEにより日常的に分解される。電気泳動後、分離されたタンパク質は、セミドライ転写ユニット(Bio-Rad)において4℃で2 h、20 Vの定電圧で0.500 M グリシンおよび0.025 M トリス-HCl(pH 8.3)10%メタノールを含む転写緩衝液中でポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜へ横方向に転写される。
サンドイッチELISA
抗生物マーカー特異的ウサギポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は実験室において作製される。抗体の反応性および特異性を測定するために、組織パネルがウェスタンブロットにより探索される。間接的ELISAは、アッセイに用いられる抗体の最適な濃度を決定するためにELISAプレートに付着した組換え生物マーカータンパク質と共に用いられる。このアッセイは、アッセイに用いられる抗生物マーカーの堅調な濃度を決定する。96ウェルマイクロプレートウェルは、50 ng/ウェルでコーティングされ、ウサギおよびマウス抗生物マーカー抗体は、アッセイに用いられうる最適な濃度を決定するために1:250希釈から始め、1:10,000に至るまで段階的に希釈される。二次抗ウサギ(またはマウス)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識検出抗体およびUltra-TMBが、その結果を評価するための検出基質として用いられる。
いったん最大シグナルについての抗体の濃度が決定されたならば、各抗体についての間接的ELISAの最大検出限界が決定される。96ウェルマイクロプレートは、50 ng/ウェルから<1 pg/ウェルまで段階希釈された濃度でコーティングされる。検出について、抗体は、上で決定された濃度まで希釈される。これは、生物マーカーELISAアッセイについての感度範囲を提供し、どの抗体が捕獲および検出抗体として選択されるべきかを決定する。
サンドイッチELISAにおけるシグナルの最適化および増強:検出抗体は、いずれの交差反応性も避けるために、および非常に感度の高い増幅系でシグナルを増強することができるように、HRPで直接的に標識される。この形式は、すべての生物マーカーを検出する際に用いられる。96ウェルプレートのウェルは、精製された抗体(〜250 ng/ウェル)の飽和濃度でコーティングされ、生物マーカー抗原の濃度は、50 ng/ウェルから<1 pg/ウェルの範囲であり、検出抗体は上記で決定された濃度である。最初に、複合体は、SW ELISA形式を確認するためにHRP標識二次抗体で検出され、検出系は、HRP標識検出抗体に取って代わられる。
生物マーカーの標準曲線ならびに対照および傷害された動物由来の試料が用いられる。これはまた、血清試料と標準曲線の間の平行度を測定する。血清試料は、標準曲線と類似した、各生物マーカーの段階希釈でスパイクされる。平行した結果は、80%〜100%回収に等しい。任意の高濃度の血清が妨害物質を有する場合には、必要とされる最小希釈は、妨害を除去するように決定される。アッセイは、長い期間をかけて経過観察される異なる大きさの傷害を有する傷害された動物由来の血清において生物マーカーレベルを評価するために用いられる。
免疫ブロッティング分析
電気転写後、ブロッティング膜を、TBSおよび0.05% ツイーン-2(TBST)における5% 脱脂乳において周囲温度で1 h、ブロッキングし、その後、4℃で一晩、5%ミルクを含むTBST中の一次モノクローナルまたはポリクローナル抗体(下のリスト参照、製造会社により推奨されているように1/1000〜1/3,000希釈で)においてインキュベートされ、続いて、TBSTでの4回の洗浄、および西洋ワサビペルオキシダーゼに連結した二次抗体(増強化学ルミネセンス(ELC)法)かまたはビオチン化二次抗体(Amersham)のいずれかとの周囲温度で2時間のインキュベーション、続いてストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼとの30 minのインキュベーション(比色定量法)を行う。ECL試薬(Amersham)は、X線フィルム上で免疫標識を可視化するために用いられる。または、比色定量発色は、1段階BCIP試薬(Sigma)で行われる。無傷タンパク質およびそれらの可能性のある分解生成物(BDP)の分子量は、側面の虹色分子量標準(Amersham)に沿って走らせることにより評価される。タンパク質およびBDPのレベルの半定量的評価は、コンピュータ支援濃度測定スキャニング(Epson XL3500高解像度フラットベッドスキャナー)およびImage Jソフトウェア(NIH)での画像解析により行われる。
インビボ切断部位同定:各タンパク分解を起こしやすい軸索およびミエリン構造タンパク質の主要なインビボ切断部位を同定するために、脳組織を、主要なBDPを最適に生成する時点において傷害されたラットからプールする。最大収量を得るために、組織試料採取は、同側皮質、皮質下白質、および脳梁を組み合わせる。トリトンX-100を用いてプールされた脳可溶化液を「Brain tissue collection and preparation(脳組織収集および調製)」において記載されているように調製する(上記参照)。可溶化液(5 mgタンパク質)を、BioRad Dualflow Biologicalシステムを用いて強陰イオン交換クロマトグラフィー(1.0 mm直径、10 cm長)にかける。結合したタンパク質を、NaCl勾配(20〜500 mM)で溶出し、30〜50個の画分を収集する。対象となる特定のタンパク質および断片を含む画分を、各画分の20マイクロリットルをSDS-PAGEウェスタンブロット分析にかけることにより、測定する。この様式において、無傷タンパク質基質およびそれの主要なBDPの両方が単離される。これらのタンパク質を、その後、さらに、SDS-PAGEにより分離し、PVDF膜へ電気転写する。直ちに分離されたBDPおよび無傷タンパク質バンドを、クマーシーブルー染色(80%メタノール、5%酢酸および0.05%クマーシーブリリアントブルーR250、1分間)で可視化する。BDPバンドを切り出し、それを新しいN末端と同定するために、N末端マイクロシークエンシングまたはトリプシン処理、および質量分光測定分析にかける。MASCOTのような生物情報学的ツールで、プロテオミクス分析から作成された配列をラットプロテオームデータベースにおける完全長タンパク質配列と適合させることにより、タンパク質基質の主要な切断部位が同定されうる。この方法を用いて、対象となるタンパク質からの切断部位は、同定されている(表1および表2参照)。
インビトロプロテアーゼ消化および切断部位同定
精製された組織タンパク質(10〜50 μg)の、精製されたプロテアーゼ(0.1〜2.5 μg)(ヒトカルパイン-1およびブタカルパイン-2(Calbiochem)、組換えヒトカスパーゼ-3、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-7(Chemicon)、ウシカテプシンB(Sigma)、ならびにヒトMMP-2およびMMP-9(Chemicon))でのインビトロプロテアーゼ消化を、1/200〜1/40の基質対プロテアーゼ比で、2時間〜一晩、カテプシンB(それと共に本発明者らは100 mM MES、pH 5.5を用いる)を除いた50 mM HEPES(pH 7.4)を含む緩衝液中で行う。10 mM ジチオスレイトールをまた、MMPのためではなく、システインプロテアーゼ(カルパイン、カスパーゼおよびカテプシンB)のために、添加した。さらに、1 mM EDTAをカスパーゼのために添加し、2 mM過剰CaCl2を添加する。プロテアーゼ反応をプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)の添加により停止させる。消化された脳可溶化液を、上記のように、免疫沈降法および切断部位同定にかける。対象となる特定の軸索またはミエリンタンパク質のインビトロ切断パターンを、ウェスタンブロット分析(10 μg)によるインビボTBI誘発切断パターンと並列比較する。
新規な断片特異的抗体の調製ならびにELISA発現および利用
(a)断片特異的ポリクローナル抗体の作製
いったんBDPの新しいN末端が同定されることができたならば、本発明者らの確立した独特の技術を用いて断片特異的抗体を産生させることは可能である。
例としてタウタンパク質を用いるが、タウは、固有の切断部位(ARVAGVS
121 ∧K
122DRTGN)(表2)を有し、2つのタウ-BDP-26kDaの新しいC末端またはN末端に基づいた合成ペプチドNH2-Cys-C
6-ARVAGVS
-COOHおよび(
NH2-KDRTGNDE-C
6-Cys-OH)がカスタム作製される(California Peptide, Napa, CA)。C
6リンカーおよびC末端システイン[C]を、その後の、スルホ連結架橋試薬(Pierce)を用いるペプチドのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)タンパク質へのカップリングのために導入する。カップリング効率測定後、ペプチドを透析して、濃縮し、複合タンパク質の2 mgを2羽のウサギへの複数抗原注入に用いる。3ヶ月後、ウサギ由来の血清試料を収集し、スルホ連結樹脂(Pierce)にカップリングしたNH
2-Cys-C
6-ARVAGVS
-COOHまたは(
NH2-KDRTGNDE-C
6-Cys-OH)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにかける。アフィニティー精製された抗体をTBS(20 mM トリス-HCl、pH 7.4、150 mM NaCl)に対して透析して、濃縮し、-20℃で50%グリセロール中に保存する。タウ-BDP-26kDaに対する抗体の特異性の確認は、軽度および中程度のTBIをもつラットの曝露後、全αII-スペクトリンに対するモノクローナル抗体で評価されたBDP、加えて異なるプロテアーゼ(カルパインまたはカスパーゼのような)により消化された細胞または脳可溶化液とのウェスタンブロット比較、本発明者らが前に用いた技術、を用いる。同様に、モノクローナル抗体も作製されうる。
(b)断片特異的ELISAの発現および利用
断片特異的酵素結合免疫測定法(ELISA)を作製する方法を例証するために、タウ-BDP-26kDaが例として用いられる:第一に、ウェスタンブロッティングが、ラットのタウおよびそのBDP(Cedarlane、クローンタウ-1)を認識する市販のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗タウ-BDP-26kDa抗体の免疫反応性を確認するために用いられる。ポリクローナル抗タウ-BDP-26kDa抗体の10 μg/mlが、0.1 M 炭酸塩-重炭酸塩緩衝液pH 9.8において、一晩、96ウェルELISAマイクロプレートをコーティングするための捕獲抗体として用いられる。各ウェルを0.05%ツイーン20を含む200 μL PBSで3回リンスした後、非特異的部位を、ブロッキング緩衝液(PBS中0.1%BSA、0.05%ツイーン20)で、室温で1時間ブロッキングする。対照およびTBI動物由来の脳組織可溶化液(1〜25 μg)またはCSF試料(2.5〜10 μl)を、ブロッキング緩衝液で100 μlまで希釈し、各ウェルへ添加する。プレートを150 rmp、26℃で30分間〜2時間、振盪機上でインキュベートする。各ウェルを0.05%ツイーン20を含む200 μL PBSで3回、リンスした後、ウェルを、ブロッキング緩衝液(100 μl)での1 μg/mlにおける、ラットのタウおよびそれのBDP断片特異的抗体を認識する検出する市販のモノクローナル抗体で探索し、150 rpm、26℃で30〜60分間、インキュベートする。洗浄段階を繰り返し、プレートをHRP結合二次抗体(1/20,000)(Pierce)で探索し、150 rpm、26℃で5〜30分間インキュベーションして100 μlのTMB基質溶液(Ultra-sensitive ABC peroxidase Reagent, Pierce)(Pierce製品番号34028)で発現させる前に再び洗浄する。50-μlの停止溶液(1N H2SO4)の各ウェルへの添加後(5 min)、プレートを分光光度計でOD450 nmにおいて読み取る。このサンドイッチELISA形式は、生体試料に存在する、タウ-BDP-26kDaを選択的に検出するが、無傷タウまたは他のBDPを検出しない。
実施例1:ラットにおける外傷性脳損傷(TBI)後48時間目のタンパク質分解攻撃に曝された神経タンパク質の検出
TBIは、上記のように齧歯類に引き起こされた。TBIもしくは偽手術後48時間目またはナイーブのラットにおいて、CSFの試料を収集し、5つの新規な神経タンパク質マーカーの存在について分析した。NF-H(A)、NF-L(B)、タウ(C)、APP(D)およびβII-スペクトリン(E)(図2)は、内因性タンパク質分解攻撃に対して脆弱であり、同側海馬において主要な分解生成物(BDP)を生じることが同定された。同側皮質試料もまた分析され、それらは、タンパク質分解の非常に類似したパターンを示した。CSFおよび血液のような生体液に蓄積される場合のこれらの固有のBDPは、ウェスタンブロットまたはELISAのような免疫学的技術により容易に検出されうり、従って、器官特異的(脳または脊髄または末梢神経)傷害またはストレスについての優れた診断マーカーである(図1)。
実施例2:ラットにおける外傷性脳損傷(TBI)後48時間目のタンパク質分解攻撃に曝されたミエリンタンパク質の検出
TBIは、上記のように齧歯類に引き起こされた。TBIもしくは偽手術後48時間目またはナイーブのラットにおいて、CSFの試料を収集し、2つの新規なミエリン鞘タンパク質マーカーの存在について分析した。MBPおよびMOSP(図3)は、内因性タンパク質分解攻撃に対して脆弱であり、同側海馬において主要な分解生成物(BDP)を生じることが同定された。同側皮質試料もまた分析され、それらは、タンパク質分解の非常に類似したパターンを示した。MBPにおける固有の切断部位(DENPVVHFF114 ∧K115NIVTPP(SEQ ID NO:148))に基づいて、本発明者らは、12 kDaおよび10 kDaのMBP-BDPの新しいN末端(NH2-KNIVTPP(SEQ ID NO:149))を特異的に検出するポリクローナルおよびモノクローナルを作製した(図4)。CSFおよび血液のような生体液に蓄積される場合のこれらの固有のBDPは、器官特異的(脳または脊髄または末梢神経)傷害またはストレスについての優れた診断マーカーであり、ウェスタンブロットまたはELISAによる図4に記載されたもののような断片特異的抗体ツールを用いる技術により検出されうる。
実施例3:ラットにおけるTBI後48時間目のラット皮質および/または海馬において分解されることになっているシナプスタンパク質(シナプトタグミンおよびシナプトジャニン-1)の検出
TBIは、上記のように齧歯類に引き起こされた。TBIもしくは偽手術後48時間目またはナイーブのラットにおいて、CSFの試料を収集し、5つの新規なシナプスタンパク質マーカーの存在について分析した。シナプトタグミン(上部)およびシナプトジャニン-1(下部)(図5)は、内因性タンパク質分解攻撃に対して脆弱であり、同側海馬において主要な分解生成物(BDP)を生じることが同定された。同側皮質試料もまた分析され、それらは、タンパク質分解の非常に類似したパターンを示した。CSFおよび血液のような生体液に蓄積される場合のこれらの固有のBDPは、ウェスタンブロットまたはELISAのような免疫学的技術により検出されうり、従って、器官特異的(脳または脊髄または末梢神経)傷害またはストレスについての優れた診断マーカーである(図1)。
実施例4:カルパイン-2およびカスパーゼ-3プロテアーゼにより切断され、固有の分解生成物を生じる主要な心臓性トロポニン-T2およびトロポニン-I32の検出
心臓性ストレス、心不全または心虚血は、カルパインおよびカスパーゼ-3のようなプロテアーゼの過剰活性化を引き起こす。ここで、本発明者らは、精製されたヒト心臓性トロポニンT2およびトロポニン-I3のアイソフォームを用い、それらをカルパインおよび/またはカスパーゼ-3とのインビトロインキュベーションに曝した。本発明者らは、両方のトロポニンがタンパク質分解攻撃に脆弱であり(図6)、その過程において主要な分解生成物(BDP)を生じることを見出した。本発明者らは、同じBDPが、心臓性傷害またはストレスを受けた動物およびヒトにおいて生成されるだろうことを予想する。血液のような生体液に蓄積される場合のこれらの固有のBDPは、ウェスタンブロットまたはELISAのような免疫学的技術により容易に検出されうり、従って、器官特異的(心臓)傷害またはストレスについての優れた診断マーカーである(図1)。
実施例5:ストレスもしくは傷害を受けた動物における、またはインビトロのプロテアーゼインキュベーション中における、主要な器官または組織タンパク質の自明でない、固有の切断部位の検出
上記で記載され、実施例1〜3で概略が説明されたのと類似した方法を用いて、主要な器官または組織タンパク質の少なくとも43個の自明でない、固有の切断部位(表2;SEQ ID NO:1〜148)が同定された。正確な切断部位は、新しいC末端または新しいN末端エピトープを模倣するペプチドの合成を可能にし、これらは、その後、断片特異的抗体または他の捕獲もしくは検出作用物質を作製するために用いられうる。血液のような生体液に蓄積される場合のこれらの固有のBDPは、本明細書に記載された方法、例えば、ウェスタンブロットまたはELISAのような免疫学的技術、により容易に検出されうり、従って、器官特異的(心臓)傷害またはストレスについての優れた診断マーカーである(図1)。
他の態様
本発明は、その詳細な説明と共に記載されているが、前の説明は、例証することを意図され、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲の範囲により定義される。他の局面、利点および改変は、特許請求の範囲の範囲内である。
(表2)プロテアーゼ攻撃により生じる自明でない、固有の組織タンパク質切断部位の例
本発明の前の説明は、単にその例証となるにすぎず、バリエーションおよび改変が、特許請求の範囲に示されているような発明の範囲の真意から逸脱することなくもたらされうることは、理解されている。