JP4877677B2 - 家禽卵性質改善剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として家禽用飼料に添加して用いる家禽卵性質改善剤に関し、詳しくは、卵白の濃厚卵白部分の粘りが高くなり、卵白の起泡性が高く、生成した気泡の保持力が高く、泡戻りの少ない鶏卵等の家禽卵を得ることのできる、しかも卵黄部分の重量が重く、その盛り上がりが長期間保持され、卵重量の減少の少ない家禽卵を得ることのできる家禽卵性質改善剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
家禽卵は、全卵のまま或いは卵黄と卵白とに分離して多種の加工食品の原料として広く利用されている。
【0003】
卵白は、菓子類、パン類、食肉及び水産練成品を始めとする加工食品の原料とされ、これら加工食品の製造において、該卵白の起泡力が利用されている。起泡力は卵白の重要な機能の一つであって、生成した泡のボリュームが単に大きいだけでなく、その泡が丈夫であり、加工する際、気泡の保持力が大であることが求められている。
【0004】
そこで、様々な手段によって卵白の起泡性を高める方法が提案されている。例えば、加工食品に使用する卵白を長期保持するために、卵白を乾燥する手法が用いられている。この際、殺菌を兼ねてエージングすることによって、卵白の起泡性を強化することが知られている。
【0005】
また、ポリフェノール等の添加により卵白の起泡性を向上させること(特開平8−266230号公報)が提案されている。しかし、ポリフェノールを飼料へ添加した場合、卵白の透明度及び起泡力を高める効果は認められるが、気泡の保持力の向上までには至っていない。
【0006】
ところで、鶏卵では、飼料中の物質の一部又は全部が、細胞たる卵黄に移行する現象が知られており、これを利用した様々な技術が提案されている。しかしながら、卵白への物質の移行は未だ明確に把握されておらず、生細胞としての卵黄への物質の移行と、細胞ではない卵白への物質の移行とを、同列に考えることはできない。
【0007】
また、界面活性剤と抗生物質とを同時に家禽に摂取させると、高価な抗生物質の薬効が向上することが知られている(例えば、特開昭57−177654号公報及び特開昭57−165322号公報)ものの、界面活性剤の摂取が産卵される卵の特性に直接的に与える影響については何ら検証されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、エージング等の必要がなく、産卵直後でも卵白の起泡性が高く、生成した気泡の保持力が高く、泡戻りが少なく、且つ卵黄部分の重量が重く、その盛り上がりが長期間保持され、卵重量の減少の少ない家禽卵を得ることができる家禽卵性質改善剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、家禽に界面活性剤を与えた場合、界面活性剤が卵中に単純に移行するのではなく、移行したとしても微量であり、量を定量することはできないが、卵白の特性が界面活性剤を添加しない場合に比べて著しく向上することを知見した。即ち、界面活性剤を含有する飼料で生育させた家禽が生む卵は、起泡性が高く、更に気泡の保持力が極めて高く、泡戻りが非常に少ないこと知見した。
更に本発明者らは、界面活性剤を含有する飼料で生育させた家禽が産む卵は、卵自体の重量も重くなり、卵黄の重量が重く、しかも卵黄の盛り上がりは長期間保存しても保持され、卵重量の減少の少ないことを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、家禽卵の卵白の起泡性、生成した気泡の保持力、卵黄の割合及び保存中の卵重量の減少を改善するための家禽卵性質改善剤であって、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上の界面活性剤を、界面活性剤純分として75〜100重量%含有してなる家禽卵性質改善剤を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の家禽卵性質改善剤について詳細に説明する。
本発明の家禽卵性質改善剤に用いられる界面活性剤としては、特に限定されず、イオン系でも非イオン系でも使用することができるが、特に、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、大豆リン脂質等が好ましい。また、純分が50重量%以上の未蒸留の界面活性剤を用いることもできる。これらの界面活性剤は、食品添加物として認可されている物質又は天然物であり、消費者の自然志向にも合致しやすく好ましい。
更に、これらの中でも、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルは、得られる卵白の起泡性を一層高くすることができるため好ましい。
【0012】
界面活性剤としては、上記の好ましいものの他、例えば、高級アルコールアルキルエステル、高級アルコールアルキルエステルエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコールアルキルエステル、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、ソジウムラウリルサルフェート等も使用することができる。
これらの界面活性剤は1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0013】
界面活性剤のHLB(Hidrophlic Lipophilic Balance )は、特に限定されない。HLBの高いものであれば、水に溶解して必要量を与えても良いし、HLBの低いものであれば、ブレンダー等で細かくして、餌に混合しても良く、更には油脂に溶解させ、その油脂を細かく分散して、餌に混合したり、餌の表面に薄くコーティングすることもできる。
【0014】
界面活性剤の含有量は、本発明の家禽卵性質改善剤中、界面活性剤純分として、好ましくは75〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%である。
【0015】
本発明の家禽卵性質改善剤には、上記の界面活性剤の他、必要に応じ、飼育の条件にあわせて、食用油脂、抗生物質、酵素、ビタミン、薬品、カルシウム等の無機質、糖類等の調味剤等を含有させることができる。
【0016】
本発明の家禽卵性質改善剤は、家禽類に経口投与させることが好ましい。経口投与の方法としては、特に限定されないが、家禽卵性質改善剤の状態(ペレット、粉末、液体等)に応じて適宜選択される。家禽卵性質改善剤が固体の場合は、これを細かく裁断し、飼料中に均一になるように混合して投与することができる。また、家禽卵性質改善剤が水に溶解する場合は、水の中に添加して投与しても良い。また、家禽卵性質改善剤が油脂に溶解する場合は、油脂に溶解して飼料に添加しても良く、或いは油脂に溶解して飼料をコーティングしても良い。また、家禽卵性質改善剤をそのまま経口投与しても良いが、必要量を摂取させるためには、飼料又は水に添加し、飼料又は水と共に摂取させた方が良い。また、静脈注射、腹膣注射による投与でもよいが、このような投与方法は実用的ではない。
【0017】
本発明の家禽卵性質改善剤の家禽への投与量は、家禽の種類や大きさ、その他の飼育条件により異なるが、産卵家禽の一日に与える飼料又は水に対して、界面活性剤が純分として0.05〜5重量%となる量が好ましい。
【0018】
本発明の家禽卵性質改善剤を飼料に配合する場合に使用される飼料としては、一般的に用いられているものを使用でき、例えば、とうもろこし、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類、米ぬか、ふすま、麦ぬか等のぬか類、大豆油粕、コーングルテンミール、糖蜜等の製造粕類、魚粉、脱脂粉乳、ホエー、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類、ビタミン類、無機質等の栄養素材配合物等が挙げられる。
【0019】
飼料の代表的配合例(配合物;配合量)は、大略下記の通りである。
とうもろこし;20〜80重量%、マイロ;0〜40重量%、大豆油粕;0〜40重量%、魚粉;0〜10重量%、コーングルテンミール;0〜10重量%、アルファルファミール;0〜10重量%、肉骨粉;0〜10重量%、ミネラル;0〜3重量%、ビタミン;0〜3重量%、飼料添加物;0.5〜20重量%。
【0020】
更に、この他にも飼育の条件にあわせて、抗生物質、生理活性物質、薬品等を飼料に配合することも可能である。
【0021】
本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料は、家禽飼育業の一般的な分野の改善に適するものである。特に、産卵家禽の飼育、例えば、鶏、アヒル、ウズラ、チャボ、烏骨鶏、合鴨等の飼育に好ましく適用できる。ダチョウ等の大型の鳥は家禽には分類されないが、卵を採取する目的で飼育している鳥類であれば、これらも含まれる。
【0022】
また、本発明の家禽卵性質改善剤は、メス鳥の成熟途中の段階で与えてもよいが、成熟し産卵開始若しくは目的の卵取得の1週間前から与えることが好ましく、2週間前から与えることが更に好ましい。
【0023】
本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料は、無添加の場合と比べて摂取量の変化は認められない。従って、本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料を家禽類に摂餌させるための特別な対策は不要である。但し、家禽卵性質改善剤の形状が固形やペレット等のように飼料より大きい塊の場合、家禽が食べ残すことがあるため、飼料程度の大きさに細かくすることが好ましい。また、家禽の飼育期間中は通常の場合と同様の管理で何ら問題は認められない。
【0024】
本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料を家禽に連続的に与えれば、起泡性の高い良好な卵白を含有する家禽卵が得られる。
【0025】
本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料を家禽に与えてから、起泡性が高く、気泡保持力の高い卵が得られる(産卵する)までの日数は、天然物であるため家禽の健康状態等によっても変化するが、概ね14日後以降である。
【0026】
本発明の家禽卵性質改善剤を含有する飼料で育成した家禽から得られる家禽卵は、従来の卵と全く同様の用途に使用できる。
即ち、上記家禽卵は、生食用には勿論、各種加工原料として用いることができ、特に鶏卵に適用した場合は、製菓原料、特に卵白を起泡させて使用する場合、例えば、砂糖を加えたメレンゲとして好適に用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例により何等制限されるものではない。下記の実施例4〜6は参考例である。
尚、起泡性試験及び気泡保持性試験(泡戻り)の試験方法は以下の通りである。
【0028】
<起泡性試験>
産卵後24時間未満の卵及び1週間経過後の卵から得た、卵白450gを20℃に調温し、ホバートミキサーにD型ワイヤーホイッパーを付け、中速90秒、次いで高速90秒間泡立てた後、生成した気泡の比重を測定した。
【0029】
<気泡保持性試験(泡戻り)>
産卵後24時間未満及び1週間経過後の卵から得た、液卵白450gを20℃に調温し、ホバートミキサーにD型ワイヤーホイッパーを付け、中速90秒、次いで高速90秒間泡立てた後、そのまま30分間静置し分離した液部の容量をメスシリンダーで測定した。
【0030】
〔実施例1〜6〕
市販の配合飼料に、グラインダーで細かく細断した界面活性剤(表1に示す)からなる家禽卵性質改善剤を5重量%添加し、これを餌として産卵鶏(白色レグホン)に1日あたり120g与えた。餌を投与しはじめてから2週間後以降、産卵した鶏卵を採取し、卵黄と卵白とを分離し、卵白の起泡性試験及び泡戻り試験を行った。その結果を表1に示す。尚、ここで使用される界面活性剤は、何れも純分100重量%である。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜6の家禽卵性質改善剤によって、卵白の起泡性が高く、泡戻りの少ない鶏卵が得られることが判る。
また、実施例1〜6で得た鶏卵について、それぞれ10個ずつの卵黄の重量割合を測定した。その結果を表2に示す。実施例1〜6で得た本発明の鶏卵は、ブランクの鶏卵に比べて卵黄の割合が2〜6重量%重かった。更にそれぞれの鶏卵を20個ずつ1ヶ月間保存し、鶏卵の重量変化率を測定したところ、実施例1〜6で得た本発明の鶏卵は、ブランクの鶏卵に比べてその重量減少が少なかった。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
本発明の家禽卵性質改善剤によれば、エージング等の必要がなく、産卵直後でも卵白の起泡性が高く、生成した気泡の保持力が高く、泡戻りが少なく、且つ卵黄部分の重量が重く、その盛り上がりが長期間保持され、卵重量の減少の少ない家禽卵を得ることができる。
Claims (3)
- 家禽卵の卵白の起泡性、生成した気泡の保持力、卵黄の割合及び保存中の卵重量の減少を改善するための家禽卵性質改善剤であって、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上の界面活性剤を、界面活性剤純分として75〜100重量%含有してなる家禽卵性質改善剤。
- 請求項1記載の家禽卵性質改善剤を家禽に投与し、該家禽が産卵する家禽卵の卵白の起泡性、生成した気泡の保持力、卵黄の割合及び保存中の卵重量の減少を改善する、家禽卵性質改善方法。
- 請求項2記載の家禽卵性質改善方法により得られた家禽卵。
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