以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るインク供給装置11が適用されるインクジェット記録装置10の概略構成及びその動作について説明する。ここに、図1は、インクジェット記録装置10の内部機構を示す模式断面図であり、図2は、図1の記録ユニット14を詳細に示す要部拡大図である。なお、図2(a)は、バルブ37の開口42が閉塞された状態を示し、図2(b)は、バルブ37の開口42が開放された状態を示す。
インクジェット記録装置10は、5色のインク、すなわち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、及び、顔料インクであるブラック(Bk)を用いてカラー画像或いはモノクロ画像を記録用紙(被記録媒体の一例)に記録する。図1に示されるように、当該インクジェット記録装置10は、大別して、給紙装置12、搬送装置13、記録ユニット14、インク供給装置11を備える。インクジェット記録装置10の底面には、給紙トレイ16が設けられている。給紙トレイ16に積載された記録用紙は、給紙装置12によって搬送路18へ送給される。
搬送路18は、断面視で略横向きのU字形状に形成されている。この搬送路18に搬送装置13が配設されている。搬送装置13は、搬送ローラ対13Aと排紙ローラ対13Bとを有する。搬送ローラ対13Aは、記録ユニット14の搬送方向上流側(図1の紙面右側)に設けられている。また、排紙ローラ対13Bは、記録ユニット14の搬送方向下流側(図1の紙面左側)に設けられている。
搬送路18に送給された記録用紙は、搬送ローラ対13Aによってプラテン19へ向けて搬送される。プラテン19の上方には記録ユニット14が配設されている。この記録ユニット14によって、プラテン19上を通過する記録用紙に画像が記録される。記録用紙の先端が排紙ローラ対13Bに到達すると、該排紙ローラ対13Bは、記録用紙の先端を狭持して該記録用紙の搬送を開始する。記録用紙の後端が搬送ローラ対13Aを通過するまでは、搬送ローラ対13A及び排紙ローラ対13Bの双方によって記録用紙は搬送される。記録用紙の後端が搬送ローラ対13Aを通過した後は、排紙ローラ対13Bのみによって記録用紙は搬送される。搬送路18の最下流側に排紙トレイ17が設けられいる。画像が記録された記録用紙は、排紙ローラ対13Bによって排紙トレイ17に排出される。
記録ユニット14は、その筐体を兼ねるキャリッジ30と、サブタンク21と、ヘッド制御基板27と、記録ヘッド26とを備える。キャリッジ30は、図示しない支持レールなどによって図1の紙面に垂直な方向にスライド可能に支持されている。このサブタンク21には、記録ヘッド26へ供給されるインクが貯留される。サブタンク21は、インクジェット記録装置10で用いられるインクの色に対応して設けられている。したがって、本実施形態では、キャリッジ30に、5つのサブタンク21が設けられている。
記録ヘッド26は、ノズル28を備える。ヘッド制御基板27に入力された画像信号に基づいて、ノズル28から記録用紙に向けてインクが吐出される。なお、インクジェット記録装置10には、当該装置を統括的に制御する主制御部(不図示)が設けられており、上記画像信号は、上記主制御部から出力されてヘッド制御基板27へ入力される。
図2に示されるように、キャリッジ30の側面には、チューブ継手33が設けられている。このチューブ継手33に、インクチューブ32(本発明のチューブの一例)が接続される。チューブ継手33及びインクチューブ32は、インクジェット記録装置10で用いられるインクの色に対応して設けられている。したがって、本実施形態では、5色のインクが用いられるため、チューブ継手33及びインクチューブ32は、5つ設けられている。キャリッジ30の内部には、チューブ継手33からサブタンク21の底面へ延びる流路34が形成されている。
キャリッジ30には、バルブ37が設けられている。このバルブ37が切り換えられることにより、開口42が開閉される。バルブ37は、図2に示されるように、サブタンク21内に連通するシリンダ39と、コイルバネ41と、ピストン40とからなるピストン式のバルブである。コイルバネ41は、シリンダ39に収容されている。また、ピストン40は、コイルバネ41を収縮した状態でシリンダ39内に収容されている。したがって、ピストン40は、常時、コイルバネ41によって一方向(図2の紙面に対して下方向)に付勢されている。ピストン40には、外力を伝達するためのロッド43が連結されている。このロッド43は、シリンダ39に設けられた開口42に挿通されて外部に延びている。上記開口42は、上記ロッド43に外力が加えられない限り、図2(a)に示されるように、ピストン40によって閉塞されている。
図2(b)に示されるように、ロッド43からピストン40へ外力が加えられると、ピストン40は、コイルバネ41の付勢力に抗してシリンダ39内を移動する。具体的には、図2において、ロッド43が下方から上方へ押圧されると、コイルバネ41の付勢力に抗してピストン40が押し上げられる。このとき、開口42が開放される。これにより、サブタンク21の内部と大気とが開口42及びシリンダ39を介して連通する。言い換えれば、サブタンク21の内部が大気と連通する。なお、開口42は、インクチューブ32を通じてサブタンク21にインクが流出入されるときに開放される。一方、インクジェット記録装置10が作動していない状態、所謂、待機状態のときは、インクの蒸発を防止するために開口42は閉塞される。
図1に示されるように、インク供給装置11は、カートリッジ装着部200(本発明のカートリッジ収容部の一例)と、インクカートリッジ50と、インクチューブ32と、サブタンク21とを備えて構成される。カートリッジ装着部200にインクカートリッジ50が装着される。本実施形態では、インクカートリッジ50は、カートリッジ装着部200に対して着脱可能に構成されている。インクカートリッジ50はメインタンク70を備える。メインタンク70及びサブタンク21は、いずれも、インクが貯留される容器である。メインタンク70とサブタンク21とは、インクチューブ32で接続されている。本実施形態では、インクジェット記録装置10で用いられるインクの色ごとに応じて1本のインクチューブ32がメインタンク70及びサブタンク21間に設けられている。インクチューブ32を通じて、メインタンク70とサブタンク21との間をインクが双方向に流通するようになっている。インクチューブ32は、合成樹脂からなり、可撓性を有する。したがって、キャリッジ30がスライド移動しても、インクチューブ32はキャリッジ30に追従する。
本実施形態では、上述したように、インクジェット記録装置10にインク供給装置11が設けられているため、メインタンク70とサブタンク21との間でインクを双方向に流通させることができる。したがって、インク供給装置11によって、サブタンク21からメインタンク70へインクを戻すことで、サブタンク21やインクチューブ32の気泡をメインタンク70内でインクから分離させて除去することができる。また、メインタンク70からサブタンク21へインクを供給することで、サブタンク21内のインクがメインタンク70に貯留されていたインクに入れ替えられる。これにより、メインタンク70のインクとサブタンク21のインクとが混合されてインク粘度が均一になる。以下に、本実施形態に係るインク供給装置11を構成する各要素について詳細に説明する。
まず、図3から図9を参照して、インクカートリッジ50の外観構成及び内部構成について説明する。ここに、図3は、インクカートリッジ50の外観構成を示す斜視図であり、図3(a)は、ケース52が組み立てられた状態を示し、図3(b)は、ケース52が分解された状態を示す。図4は、インクカートリッジ50の外観構成を示す斜視図である。図5は、インクカートリッジ50の内部構成を示す斜視図である。図6は、図5の矢視VIから見た側面図であり、インクカートリッジ50の内部構成が示されている。図7は、図5の切断線VII−VIIの断面図である。図8は、インクカートリッジ50の分解断面図である。図9は、図8の切断線IX−IXの部分断面図である。なお、図8においては、ケース52が省略されている。
図3及び図4に示されるように、インクカートリッジ50は、ケース52を備える。このケース52の内部に、インクカートリッジ50を構成する各要素が収容されている。ケース52は、幅方向(図中のY軸方向)に細く、高さ方向(鉛直方向、図中のZ軸方向)に長く、奥行き方向(図中のX軸方向)が上記高さ方向よりもさらに長い略直方体形状に形成されている。したがって、インクカートリッジ50の外観は略直方体形状を呈する。このような形状のインクカートリッジ50であれば、カートリッジ装着部200(図17参照)におけるインクカートリッジ50の平面的な配置スペースを省減することができる。特に、インクジェット記録装置10が複数のインクカートリッジ50を搭載する場合に、上記形状は好適である。もちろん、インクカートリッジ50は上記形状に限定されない。なお、図中のX軸方向は、カートリッジ装着部200に対するインクカートリッジ50の装着方向と一致する。また、図中のX軸とY軸とで形成される平面(以下「X−Y平面」と称する。)が水平面である。このインクカートリッジ50は、図3(a)に示される姿勢、すなわち、上記X−Y平面に起立した姿勢で、カートリッジ装着部200に装着される。
図3(b)に示されるように、ケース52は、第1ケース部材53と第2ケース部材54とを有する。ケース52は、インクカートリッジ50の長手方向(図中のX軸方向及びZ軸方向)に沿って第1ケース部材53と第2ケース部材54との2つに分離可能である。第1ケース部材53と第2ケース部材54は略同形状に形成されている。第1ケース部材53及び第2ケース部材54は、いずれも、合成樹脂で構成され、例えば射出成形によって得られる。
ケース52には、3つの開口56,57,58が設けられている。開口56は、ケース52の上面59から背面60(インクカートリッジ50の装着方向前方側の面)に渡って設けられている。この開口56は、第1ケース部材53及び第2ケース部材54それぞれに形成された切り欠き61によって形成される。開口56に、後述のラックギヤ185(図6参照)が挿通される。開口57は、上記背面60の下部に設けられている(図4参照)。この開口57は、第1ケース部材53及び第2ケース部材54それぞれに形成された半円状の切り欠き(不図示)によって形成される。開口57に、後述のインク供給バルブ130がケース52の内側から嵌め入れられて、外部に露出される。また、開口58は、上記背面60において、開口56と開口57との中間付近に設けられている(図4参照)。この開口58は、第1ケース部材53及び第2ケース部材54それぞれに形成された矩形状の切り欠き62(図4参照)によって形成される。開口58から、後述の検出部75(図6参照)が外部に露出される。
図5から図7に示されるように、ケース52の内部には、メインタンク70と、ポンプ170と、大気連通バルブ110と、インク供給バルブ130とが配設されている。本実施形態では、メインタンク70、ポンプ170、大気連通バルブ110、インク供給バルブ130はいずれも、合成樹脂で構成されている。
メインタンク70は、その略全体がケース52に覆われている。したがって、メインタンク70は、ケース52に対応して、幅方向(Y軸方向)に細く、高さ方向(鉛直方向、Z軸方向)に長く、奥行き方向(装着方向、X軸方向)に長い形状を呈する。このメインタンク70には、サブタンク21へ供給されるインクが貯留される。メインタンク70は、半透明のフレーム71と、フレーム71の両側面に溶着される透明のフィルム81(図9参照)とを備える。フレーム71によって、インクが貯留されるインク室73が区画される。なお、フィルム81は、本来、図6の側面図に現れるが、同図ではフィルム81を省略している。
メインタンク70は、図5から図8に示されるように、インク注入部72を有する。インク注入部72は、フレーム71と一体に成形されている。インク注入部72は、図5に示されるように、略円筒形状に形成されている。メインタンク70の前面80に注入口82が設けられている。インク注入部72は、注入口82から図中のX軸方向へ延設されている。注入口82からインク注入部72を経てメインタンク70のインク室73に所定量(本実施形態では、概ねインク室73の8割程度の量)のインクが注入される。これにより、メインタンク70の上層部に空気層83(本発明の第1空気層に相当、図10参照)が形成される。図10に、インク室73に所定量のインクが注入された状態を示す。なお、インク注入部72は、インクが注入された後に樹脂製の栓部材が注入口82から圧入されることにより封じられる。そのため、インク注入後は、インク室73は実質的に密封される。したがって、空気層83は気密状態となる。これにより、注入口82からインクや空気が外部へ漏れ出すことはない。
図7及び図8に示されるように、メインタンク70の前面80の上部に、円形の開口84が設けられている。開口84に連続してメインタンク70の内部に円筒状のバルブ収容室85が形成されている。バルブ収容室85に大気連通バルブ110が収容される(図7参照)。バルブ収容室85は、開口84から図中のX軸方向に沿ってメインタンク70の内側に延設されている。バルブ収容室85の奥面には、インク室73に通じる孔100が形成されている。具体的には、孔100は、インク室73の上層部に通じている。すなわち、バルブ収容室85は、孔100を介してインク室73の上層部に連通している。より詳細には、バルブ収容室85は、孔100を介してインク室73の上層部に形成される空気層83(図10参照)に連通している。孔100に、後述の大気連通バルブ110のロッド117(図11参照)が挿通される。孔100は、ロッド117の径よりも大きく形成されている。そのため、孔100にロッド117が挿通されても孔100は塞がらない。したがって、孔100にロッド117が挿通された状態で、バルブ収容室85とインク室73との間における空気の流通は阻害されない。また、ロッド117は、図11に示されるように、長手方向に直交する方向の断面が略十字形状に形成されているため、ロッド117のV字形状の谷部117B(図11参照)に空気の流路が形成される。したがって、孔100にロッド117が挿通された状態であっても、空気は谷部117Bを通って円滑に流通する。また、バルブ収容室85の内周面には、メインタンク70の外部に通じる孔101が形成されている。孔101と孔100との間に形成される空間的な流路は、大気連通バルブ110によって接続または遮断される。
図7から図9に示されるように、メインタンク70の背面79(メインタンク70における装着方向の前方側の面)の下部には、円形の開口87が設けられている。開口87に連続して円筒状のバルブ収容室88が形成されている。バルブ収容室88にインク供給バルブ130が収容される(図7参照)。バルブ収容室88は、開口87から図中のX軸方向に沿ってメインタンク70の内側に延設されている。バルブ収容室88の奥面に、孔89が形成されている。バルブ収容室88は、孔89を介してインク室73に連通している。
図7から図9に示されるように、メインタンク70は、バルブ収容室88からインク室73へ延設された2系統の流路91,92を有する。流路91は、インク室73の下層部から、孔89を経て図中のX軸方向へ延び、バルブ収容室88に至る。流路92は、バルブ収容室88から図中のZ軸方向へ延び、後述のバッファ室90を経てインク室73の上層部に至る。したがって、流路92の終端の開口94は、インク室73の上層部、言い換えれば、インク室73の上層部に形成される空気層83(図10参照)に開放されている。流路92の上方側は、図7及び図8に示されるように、インク室73の上層部に達した後に垂直に折り曲げられている。なお、流路91,92は、いずれも、フレーム71や該フレーム71に設けられたリブなどによって形成されている。
流路92には、バッファ室90が設けられている。バッファ室90は、バルブ収容室88の直上に配置されている。このバッファ室90は、図9に示されるように、メインタンク70の幅方向、すなわち、図中のY軸方向に延びる円筒形状を呈する。
バッファ室90には、図9中のY軸方向の中間付近に逆止弁93が設けられている。この逆止弁93は、バルブ収容室88に対してインク室73が負圧となったときに開放され、逆に、バルブ収容室88に対してインク室73が正圧となったときに閉塞する。流路91には、孔89を開閉するための逆止弁95が設けられている。この逆止弁95は、バルブ収容室88に対してインク室73が正圧となったときに開放され、逆に、バルブ収容室88に対してインク室73が負圧となったときに閉塞する。したがって、外部からバルブ収容室88にインクが流入すると、バルブ収容室88がインク室73よりも正圧となるため、逆止弁93が開放され、逆止弁95は閉塞される。一方、インク室73に空気が送り込まれるなどして該インク室73が加圧されると、インク室73がバルブ収容室88よりも正圧となる。このとき、逆止弁93は閉塞され、逆止弁95が開放される。このような逆止弁93,95が設けられているため、外部からバルブ収容室88にインクが流入した場合は、そのインクは、バルブ収容室88からバッファ室90を経て流路92の上方へ流れる。また、インク室73に空気が送り込まれた場合は、インク室73に貯留されたインクは、インク室73から孔89を通じてバルブ収容室88へ向かう方向へ流れる。このように、流路92に逆止弁93が設けられ、流路91に逆止弁95が設けられているため、メインタンク70内では、図8の破線の矢印86に示されるように、インクを一方向に流通させる循環流路が形成される。
メインタンク70の上面78には、図8に示されるように、ポンプ170を取り付けるためのスペース96が確保されている。このスペース96の周辺に、ポンプ170を上記スペース96に固定するための取付座98,99が設けられている。具体的には、取付座98は、メインタンク70の前面80側であって、バルブ収容室85の奥部の壁面を構成するフレーム71に設けられている。また、取付座99は、メインタンク70の背面79側であって、上面78に立設されている。これらの取付座98,99は、フレーム71と一体に成形される。
取付座99は、ポンプ170を構成するシリンダ171の外径よりもやや大きいサイズの孔102を有する。孔102は、図中のX軸方向に貫通している。この孔102にシリンダ171が挿嵌されることで、シリンダ171の後端が取付座99に固定される。また、シリンダ171の先端は、取付座98に固定される。これにより、ポンプ170は、メインタンク70と一体となって緩みなく確実に取り付けられる。なお、取付座98には、インク室73に通じる孔103が設けられており、この孔103を通じてシリンダ171の内部空間171A(本発明の第2空気層に相当)とインク室73とが連通する。
メインタンク70は、図6から図8に示されるように、検出部75を備える。この検出部75は、インク室73に貯留されているインクの残量を検出するためのものである。検出部75は、メインタンク70の背面79の中段付近からX軸方向外側へ突出している。検出部75は、フレーム71と一体に成形される。したがって、検出部75は、フレーム71と同じ材質、すなわち、半透明の合成樹脂で構成される。検出部75は、後述するように、光センサ203(図19参照)によって光が透過される。本実施形態では、検出部75を半透明の材質で構成することとしたが、光透過性(透明性)を有するものであれば、如何なる材質で構成されていてもよい。したがって、光の透過性を向上させるために、検出部75を完全に透明にしてもかまわない。
検出部75は、図7から図9に示されるように、高さ方向(Z軸方向)へ延びる側面視でコの字形状の空洞部76を有する。この空洞部76は、インク室73に連続している。空洞部76に、後述のセンサーアーム150(本発明のアーム部材の一例)の遮蔽部157(本発明の被検出子の一例)が進入或いは退出する。空洞部76に進入した遮蔽部157は、検出部75の内側の底面(下面)を構成する支持壁74に当接して、それ以上の進入が阻止される。一方、空洞部76から退出した遮蔽部157は、図7に示されるように、空洞部76から少し隔てた所定の位置で静止する。
メインタンク70は、支持部97を備える。支持部97は、後述のセンサーアーム150を揺動可能に支持する。支持部97は、フレーム71と一体に設けられている。支持部97は、センサーアーム150の連結軸158(図8参照)を把持するようにして軸支する。
以下、適宜図面を参照して、メインタンク70に取り付けられるセンサーアーム150、大気連通バルブ110、ポンプ170、インク供給バルブ130について詳細に説明する。
まず、図8を参照して、センサーアーム150の構成について説明する。なお、図8には、センサーアーム150の外観が詳細に示されている。このセンサーアーム150は、インク室73に貯留されたインクの残量を検出するための部材である。センサーアーム150は、合成樹脂から構成されており、射出成形により得られる。図8に示されるように、センサーアーム150は、バランス部152と、連結部153と、アーム部154とを有する。
連結部153には、連結軸158が形成されている。この連結軸158が、フレーム71に設けられた支持部97(図8参照)に軸支される。これにより、センサーアーム150は、支持部97で揺動可能に支持される。
バランス部152は、連結部153から連結軸158に直交する方向へストレートに延設されている。バランス部152は、その平均比重が、インクの比重よりも軽くなるよう成形されている。具体的には、バランス部152の内部が空洞化されている。したがって、インク中において、バランス部152は浮力体の役割を担う。なお、バランス部152をアーム部154及びインクよりも小さい比重の材質で構成してもかまわない。
図8に示されるように、アーム部154は、第1アーム155と、第2アーム156と、遮蔽部157とを有する。第1アーム155は、連結部153からバランス部152に対して略垂直をなす方向(図8の紙面の上方向)に延びている。第1アーム155の先端から連続して第2アーム156が形成されている。この第2アーム156は、第1アーム155の先端を起点として、バランス部152から遠ざかる方向へ延びている。第2アーム156の先端、すなわち、センサーアーム150の先端に遮蔽部157が形成されている。
本実施形態では、アーム部154は、バランス部152よりも重量が小さい。したがって、空気中においては、バランス部152はアーム部154よりも重い。そのため、インク室73にインクが入っていない状態では、センサーアーム150は、バランス部152の重力方向に引っ張られる。これにより、センサーアーム150は、連結軸158を中心にして左回り(図7の矢印162で示す方向)に回動する。このとき、遮蔽部157は検出部75の空洞部76から退出する。なお、バランス部152の下端がメインタンク70の底面に当接すると、センサーアーム150の回動が停止する。このとき、遮蔽部157は、図7に示されるように、検出部75から退出した所定の位置で静止する。
一方、図10に示されるように、インク室73に上記所定量のインクが注入された状態では、バランス部152はインクに浸かる。このとき、バランス部152に、アーム部154よりも大きい浮力が発生する。この浮力によって、バランス部152とアーム部154との重量の均衡が逆転する。すなわち、インク中では、バランス部152の重力方向に働く力はアーム部154の重量方向に働く力よりも小さい。したがって、センサーアーム150は、アーム部154の重力方向へ引っ張られる。これにより、センサーアーム150は、連結軸158を中心にして右回り(図10の矢印163で示す方向)に回動する。このとき、遮蔽部157は検出部75の空洞部76に進入する。なお、遮蔽部157の下端が支持壁74に当接すると、センサーアーム150の回動が停止して、その姿勢を維持する。
次に、図11及び図12を参照して、大気連通バルブ110の詳細な構成について説明する。ここに、図11は、大気連通バルブ110の構成部品を示す分解斜視図である。図12は、大気連通バルブ110の断面構造を示す部分拡大図であり、図12(a)は、ピストン116が位置P1で静止した状態を示し、図12(b)は、ピストン116が位置P2で静止した状態を示す。
大気連通バルブ110は、孔101を開閉して、メインタンク70のインク室73に形成された空気層83(図10参照)を大気に開放するためのバルブである。大気連通バルブ110は、図11及び図12に示されるように、キャップ111と、コイルバネ112と、ピストンバルブ113と、バルブ座114とを備える。大気連通バルブ110は、これら各要素(キャップ111、コイルバネ112、ピストンバルブ113、バルブ座114)がその順序で順次連結されて構成されている。上記各要素のうち、コイルバネ112、ピストンバルブ113、及びバルブ座114がバルブ収容室85(図8参照)に収容され、キャップ111は、開口84(図8参照)の周縁に装着される。
コイルバネ112は、バルブ収容室85に収容されたピストンバルブ113をバルブ収容室85の奥行き方向(図8のX軸方向)へ弾性的に付勢するものである。コイルバネ112は、樹脂或いは金属からなる。コイルバネ112は、予め収縮された状態でバルブ収容室85に収容される。したがって、バルブ収容室85内において、コイルバネ112は、常に、伸長する方向の付勢力を発生している。なお、本実施形態ではコイルバネ112を用いたが、コイル状のバネに限られず、コイルバネ112に代えて、例えば、板バネを用いてもよい。また、バルブ収容室85を上記奥行き方向へ弾性的に付勢する部材であれば如何なる材質、形状、構成のものであってもコイルバネ112と置き換えることができる。もちろん、インク供給バルブ130に適用される後述のバネユニット134(図14参照)を用いてもよい。
キャップ111は、奥面を形成する奥壁119と、奥壁119の周縁から立設されて側面を形成する筒状の側壁118とを有する。奥壁119は、コイルバネ112を受けるバネ座を兼ねる。側壁118には、複数(本実施形態では2つ)の長孔120が形成されている。開口84(図8参照)の周縁に図示しない突起片が設けられており、この突起片が上記長孔120に挿嵌される。これにより、開口84の周縁に対してキャップ111が固定される。
ピストンバルブ113は、円筒状のピストン116と、該ピストン116に一体に形成されたロッド117とを備える。このピストン116は、コイルバネ112を受けるバネ座を兼ねる。ピストン116は、コイルバネ112によって図中のX軸方向に弾性的に付勢される。ピストンバルブ113は、バルブ収容室85の内周面に摺動可能に設けられている。ピストン116の外周面とバルブ収容室85の内周面との間には、オーリング121が設けられている。具体的には、ピストン116の外周面に形成された溝122にオーリング121が嵌め入れられている。これにより、ピストンバルブ113は、バルブ収容室85の内周面との間に形成された隙間を密封した状態でバルブ収容室85内を摺動する。なお、上記オーリング121に代えて、ゴムなどの弾性体を上記溝122に嵌め入れてもよい。
バルブ座114は、コイルバネ112によって図中のX軸方向へ付勢されたピストン116を受け止めるものである。バルブ座114は、バルブ収容室85(図8参照)の奥底に配置される。バルブ座114は、バルブ収容室85の内径に対応して円環状に形成されている。バルブ座114の中心には、円形の孔115が形成されている。孔115に、ピストンバルブ113のロッド117が挿通される。バルブ座114は、ゴムなどの弾性部材で構成されている。したがって、ピストン116がコイルバネ112によって弾性的に付勢されることにより、バルブ座114とピストン116とが隙間なく密着する。
図12(a)に示されるように、ロッド117に外力が加えられていない状態では、ピストンバルブ113は、コイルバネ112によって付勢されることにより、ピストン116がバルブ座114に当接した位置P1で静止する。これにより、ピストン116とバルブ座114とが密着され、さらに、バルブ座114とバルブ収容室85の奥面とが密着される。その結果、メインタンク70のインク室73から孔115及び孔100を介してバルブ収容室85へ通じる流路が閉塞される。
図12(b)に示されるように、ロッド117に対して矢印123の方向に外力が加えられると、コイルバネ112の付勢力に抗してピストンバルブ113が矢印123の方向へ後退し、ピストン116がバルブ座114から離反する。このとき、ピストンバルブ113は、ピストン116がキャップ111の奥壁119に当接する位置P2まで後退する。これにより、孔101が開口される。その結果、インク室73から、孔100、孔115、バルブ収容室85、そして孔101を経て大気へ通じる流路(図12の矢印124を参照)が開放される。言い換えれば、インク室73は、孔100、孔115、バルブ収容室85、そして孔101を経て、大気と連通する。なお、ロッド117に加えられる外力は、後述のポンプ170において、プランジャ172がシリンダ171の奥部まで押し込まれた際に、ピストン181によって入力される。
次に、図13を参照して、ポンプ170の詳細な構成について説明する。ここに、図13は、ポンプ170の断面構造を示す部分拡大図である。
ポンプ170は、インク室73に空気を供給し、若しくはインク室73からインクを吸引するものである。ポンプ170は、インク室73の空気層83(図10参照)への空気の供給とインク室73の空気層83からの空気の吸引を交互に行うことにより、空気層83の体積を増減させる。すなわち、空気層83に空気が供給されると、空気層83内の空気圧が上昇して、インクが低圧方向へ流出する。その結果、空気層83の体積が増す。一方、空気層83から空気が吸引されると、空気層83内の空気圧が低下して、インクが低圧方向へ流出する。その結果、空気層83の体積が減少する。
ポンプ170は、図13に示されるように、メインタンク70の上面78に設けられている。ポンプ170は、大別して、シリンダ171とプランジャ172とを備えて構成されている。要するに、ポンプ170は、シリンダ171とプランジャ172とを有するピストンポンプ(またはプランジャポンプ)である。シリンダ171及びプランジャ172は、合成樹脂を射出成形することにより得られる。
シリンダ171は、メインタンク70の上面78に固定されている。シリンダ171は、その中心軸が、メインタンク70の奥行き方向(図中のX軸方向)に沿うように上面78に配置されている。シリンダ171は、その外壁によって内部空間171Aを区画している。内部空間171Aにプランジャ172が挿入される。シリンダ171にプランジャ172が挿入される方向(挿入方向)を基準にして、当該シリンダ171は、上記挿入方向の奥側の端部に壁面179を有する。この壁面179に孔173が形成されている。シリンダ171内の空気は、孔173を通じてインク室73へ流出入する。上記挿入方向を基準にして、シリンダ171の手前側の端部には開口174が設けられている。この開口174は、シリンダ171の内径と同じサイズを有する。開口174からシリンダ171内にプランジャ172が挿入される。孔173及び開口174は、シリンダ171の両端部それぞれに、同軸上に配置されている。以下、シリンダ171の両端部のうち、孔173が設けられた側の端部を先端175と称し、開口174が設けられた側の端部を後端176と称する。
シリンダ171の先端175には、円環状の取付具177が設けられている。この取付具177は、一部が先端175に埋設されており、残りの部分が露出されている。したがって、図13に示されるように、取付具177は、断面視で先端175からシリンダ171の軸方向に突出している。取付座98には図示しない取付溝が形成されており、該取付溝に取付具177が嵌め入れられる。これにより、シリンダ171の先端175が取付座98に固定される。また、取付具177には、ゴム質のコーティングが施されている。そのため、取付具177と取付座98とが隙間なく密着される。したがって、シリンダ171の内部空間171Aからインク室73に至る経路は気密状態に維持されるため、当該経路で空気の混入や空気漏れが生じることはない。なお、上述したように、取付座98は、メインタンク70の前面80側であって、バルブ収容室85の奥部の壁面を構成するフレーム71に設けられている。そのため、シリンダ171は、先端175を上記前面80側にして上面78に固定される。
シリンダ171の後端176には、シリンダ171の径方向に突出する座178が設けられている。シリンダ171の先端175が取付座99の孔102に挿入され、その後にシリンダ171の後端176が取付座99に到達すると、座178が孔102の周縁に当接する。これにより、シリンダ171の更なる挿入が制止される。上述したように、取付座99は、メインタンク70の背面79側に設けられている。したがって、シリンダ171は、後端176を上記背面79側にして上面78に固定される。
プランジャ172は、ピストン181と、ロッド182(本発明のロッドの一例)とを有する。ピストン181及びロッド182は、一体に形成されている。ピストン181は、シリンダ171の内周面に対して摺動可能に設けられている。ピストン181の外周面とシリンダ171の内周面との間には、オーリング183が設けられている。具体的には、ピストン181の外周面に形成された溝184に円環状のゴム部材からなるオーリング183が嵌め入れられている。これにより、ピストン181は、シリンダ171の内周面との間に形成された隙間を密封した状態でシリンダ171内を摺動する。
ロッド182には、ラックギヤ185が形成されている。ラックギヤ185は、ロッド182の上側に形成されている。ラックギヤ185に、後述の駆動伝達機構220(図17参照)のピニオンギヤ221が噛み合わさる。これにより、シリンダ171の軸方向(図中のX軸方向)へピストン181を摺動させる駆動力がロッド182を介してピストン181に伝達される。上記駆動力を受けて、図13の紙面左方向にピストン181が摺動すると、シリンダ171の内部空間171Aの体積が減少して、その減少分の空気が孔173及び孔103を通じてインク室73へ流出する。また、上記駆動力を受けて、図13の紙面右方向にピストン181が摺動すると、シリンダ171の内部空間171Aの体積が増加して、その増加分に相当するインク室73内の空気が孔103及び孔173を通じてシリンダ171内に流入する。
ポンプ170は、インク供給バルブ130から導出されてサブタンク21へ接続されたインクチューブ32(図1及び図2参照)の容積に、サブタンク21(図1及び図2参照)の容積を加算した容積(以下「合算容積」と称する。)以上の容量を有する。一般に、上述の如く構成されたポンプ170は、シリンダ171の断面積とピストン181のストロークとによってその容量(所謂、ポンプ容量)が決定される。したがって、シリンダ171は、少なくとも上記合算容積を満足する断面積及び全長を要する。なお、本実施形態では、上記合算容積と同等の容量を有するポンプ170が採用されている。
本実施形態では、後述の駆動伝達機構220(図17参照)によってピストン181が一定のストロークで摺動する。したがって、ポンプ170は、インク室73に対して、常に、一定量の空気を供給し、若しくは一定量の空気を吸引する。
次に、図14及び図15を参照して、インク供給バルブ130の詳細な構成について説明する。ここに、図14は、インク供給バルブ130の構成部品を示す分解斜視図である。図15は、インク供給バルブ130の断面構造を示す部分拡大図である。
インク供給バルブ130は、メインタンク70のインク室73に貯留されたインクを外部へ流出入させるためのバルブである。このインク供給バルブ130は、バルブ収容室88に収容されて、メインタンク70にインクチューブ32(図1及び図2参照)を接続するための接続口の役割を担う。インク供給バルブ130は、図14及び図15に示されるように、キャップ131と、ジョイント132と、ピストンバルブ133と、バネユニット134とを備える。インク供給バルブ130は、これら各要素(キャップ131、ジョイント132、ピストンバルブ133、バネユニット134)がその順序で連結されて構成されている。上記各要素のうち、ピストンバルブ133及びバネユニット134がバルブ収容室88に収容される。また、ジョイント132は、開口87(図8参照)を栓するように開口87に嵌め入れられる。また、キャップ131は、ジョイント132を介して開口87の周縁に装着される。
ジョイント132は、メインタンク70の外部からバルブ収容室88にインク抽出管149(図15参照)を挿通するものである。なお、インク抽出管149は、インクチューブ32(図1参照)の先端に設けられた針状の管である。ジョイント132は、合成樹脂で構成されている。ジョイント132は、バルブ収容室88の内径及び開口87(図8参照)の形状に合わせて、円環状に形成されている。詳細には、ジョイント132は、バルブ収容室88の内周面に嵌め入れられる第1円柱部135と、開口87の周縁に当接される第2円柱部136とを有する。また、ジョイント132には、第1円柱部135及び第2円柱部136の中心を貫通する孔137が形成されている。孔137にインク抽出管149が挿通される。孔137は、インク抽出管149の外径よりもやや小さく形成されている。したがって、孔137にインク抽出管149が挿通されると、インク抽出管149の外周面が孔132の内面を押圧して密着する。これにより、インク抽出管149は、バルブ収容室88と外部との密封状態を維持したまま、バルブ収容室88へ挿通される。
キャップ131は、開口87(図8参照)を覆うとともにインク抽出管149(図15参照)をバルブ収容室88へ導くものである。キャップ131は、奥面を構成する円盤状の奥壁129と、奥壁129に形成された孔138と、キャップ131の側面を形成する筒状の側壁139とを有する。側壁139には複数の長孔140(本実施形態では2つ)が形成されている。開口87の周縁に図示しない突起片が設けられており、この突起片が上記長孔140に挿嵌される。これにより、開口87の周縁に対してキャップ131が固定される。
バネユニット134は、バルブ収容室88に収容されたピストンバルブ133をバルブ収容室88の奥行き方向(図8のX軸方向)へ弾性的に付勢するものである。バネユニット134は、弾性を有する樹脂で構成された第1バネ144及び第2バネ145と、バルブ収容室88の奥行き方向に摺動可能なスライダ146とを有する。第1バネ144及び第2バネ145は、お碗形状或いは中空円錐形状に形成されており、荷重が付加されたときにその側面が撓む。第1バネ144及び第2バネ145には、図14に示されるように孔144A,145Aが形成されており、お碗形状の内部を通って孔144A,145Aを抜ける経路(図15の太線矢印164参照)でインクが流通する。スライダ146には、第1バネ144及び第2バネ145を収容する図示しない収容室が設けられており、該収容室に第1バネ144及び第2バネ145が収容される。
バネユニット134は、予め収縮された状態でバルブ収容室88に収容される。したがって、バルブ収容室88内において、バネユニット134は、常に、伸長する方向の付勢力を発生する。スライダ146には、ピストンバルブ133とバネユニット134とを連結するためのリブ147が設けられている。このリブ147にピストンバルブ133の爪143が掛け止められる。なお、本実施形態ではバネユニット134を用いたが、バルブ収容室88を上記奥行き方向へ弾性的に付勢する部材であれば如何なる材質、形状、構成のものであってもバネユニット134に置き換えることができる。もちろん、バネユニット134に代えて、大気連通バルブ110に適用されるコイルバネ112(図11参照)を用いてもよい。
ピストンバルブ133は、円盤状の奥壁141と、奥壁141の周縁から立設された筒状の側壁142とを有する。奥壁141には、複数の開口141A(本実施形態では4つ)が周方向に設けられている。奥壁141は、バネユニット134の付勢力を受ける座を兼ねる。側壁142には、複数の爪143(本実施形態では2つ)が設けられている。この爪143がバネユニット134のリブ147に掛け止められることで、ピストンバルブ133とバネユニット134とが連結される。ピストンバルブ133は、バルブ収容室88の奥行き方向(図8のX軸方向)へスライド可能に設けられている。このピストンバルブ133は、側壁142とバルブ収容室85の内面との間に所定寸法の間隙148を形成しつつスライドする。この隙間148は、インクの流通が可能な寸法に設定されている。
上述の如く構成されたインク供給バルブ130において、図15に示されるように、インク抽出管149が孔138及び孔137を経てバルブ収容室88内に挿入されると、インク抽出管149の先端がピストンバルブ133の奥壁141をバネユニット134の付勢力に抗して押圧する。このとき、ピストンバルブ133が押し下げられる。これにより、奥壁141がジョイント132から離反する。インク抽出管149の先端部の側面には、インクが流出入される流出入口149Aが設けられている。したがって、奥壁141がジョイント132から離反すると、流出入口149Aを通じてバルブ収容室88とインク抽出管149とが連通する。
インク供給バルブ130内では、次の経路に沿ってインクが流れる。インク室73からサブタンク21へインクを供給する場合は、インク室73から逆止弁95を通ってバルブ収容室88へインクが流入すると、インクはバネユニット134の内部とその外周の間隙148を通り抜けて、開口141Aから流出する(図15の太線矢印164参照)。一方、サブタンク21からインク室73にインクを吸引する場合は、流出入口149Aを通じてバルブ収容室88に吸引されたインクはバッファ室90へ流入し、逆止弁93を経て流路92から空気層83へ流出する(図15の太線矢印165参照)。
次に、図16から図19を参照して、カートリッジ装着部200の構成について詳細に説明する。ここに、図16及び図17は、カートリッジ装着部200の外観構成を示す斜視図であり、図16は、カートリッジ装着部200からインクカートリッジ50が取り外された状態を示し、図17は、カートリッジ装着部200にインクカートリッジ50が装着された状態を示す。図18は、図17の矢視XVIIIから見たカートリッジ装着部200の側面図である。図19は、図17の切断線XIX−XIXの断面図である。
カートリッジ装着部200は、5色のインク、すなわち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、及び、顔料インクであるブラック(Bk)の各色に対応する5つのインクカートリッジ50を保持する。このカートリッジ装着部200は、インクジェット記録装置10の内部に収容されている。
カートリッジ装着部200は、図16に示されるように、カートリッジケース201を備える。カートリッジケース201の前面に開口202が設けられている。この開口202からインクカートリッジ50が挿入される。カートリッジケース201に挿入されたインクカートリッジ50が、その挿入方向(図中のX軸方向)へ押圧されると、カートリッジケース201の奥部に配置されたインク抽出管149(図15参照)がインク供給バルブ130に挿入される。これにより、カートリッジケース201に対するインクカートリッジ50の装着が完了する。なお、カートリッジケース201は、インクカートリッジ50が挿抜可能なように構成されている。
図19に示されるように、カートリッジケース201の奥部には、光センサ203が設けられている。この光センサ203は、発光素子と受光素子とを有し、発光素子から受光素子へ出射された光の輝度に基づいて所定のセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)を出力するものである。光センサ203の代表例が、透過型のフォトインタラプタである。光センサ203は、インクカートリッジ50に対応して設けられている。したがって、本実施形態では、光センサ203は5つ設けられている。光センサ203の発光素子と受光素子との間に形成された検出領域に、検出部75が進入するように、光センサ203が配置されている。センサーアーム150の遮蔽部157が検出部75に進入した状態では、上記検出領域は遮蔽部157で遮蔽される。このとき、インクジェット記録装置10では、「インク残量あり」と判断される。一方、遮蔽部157が検出部75から退出した状態では、上記検出領域は遮蔽されない。このとき、インクジェット記録装置10では、「インク残量なし」と判断される。
カートリッジ装着部200の背面側には、駆動伝達機構220が設けられている。駆動伝達機構220は、5つのピニオンギヤ221と、軸222と、リンクロッド223と、軸224と、第1伝達ギヤ225と、第2伝達ギヤ226とを備える。
ピニオンギヤ221は、インクカートリッジ50がカートリッジケース201に装着された状態で、ラックギヤ185と噛み合わされる。本実施形態では、インクカートリッジ50の5つのプランジャ172に対応して5つのピニオンギヤ221が配設されている。ピニオンギヤ221は、図16及び図17に示されるように、略半円形状に形成されている。ピニオンギヤ221の円弧部228にギヤが形成されている。
5つのピニオンギヤ221は、一軸構成の軸222に固定されている。したがって、軸222が回転すると、全てのピニオンギヤ221がその回転方向と同方向に同じ回転速度で回転する。軸222の一端に、リンクロッド223が連結されている。このリンクロッド223によって、所定の駆動力が軸222に伝達される。リンクロッド223は、軸224にも連結されている。要するに、リンクロッド223の一方端が軸222に連結され、他方端が軸224に連結されている。軸224には、第1伝達ギヤ225が固定されている。そして、この第1伝達ギヤ225に第2伝達ギヤ226が噛み合わされる。
第2伝達ギヤ226は、モータなどの駆動源に連結されている。上記駆動源は、インクジェット記録装置10を構成する給紙装置12や搬送装置13などの駆動系にも連結されている。上記駆動源は、インクジェット記録装置10を統括的に制御する主制御部(不図示)によって所定の動作を行うように制御される。
上記駆動源から所定の駆動力が第2伝達ギヤ226に伝達されると、その駆動力は第1伝達ギヤ225、軸224、リンクロッド223、軸222、ピニオンギヤ221を介して、ラックギヤ185に伝達される。これにより、ラックギヤ185とともにピストン116がシリンダ171内を往復するようにスライドする。
以下、図20を参照して、本実施形態に係るインク供給装置11によるインクの供給動作について説明する。ここに、図20は、インクの供給動作を説明するための模式図である。なお、図20においては、センサーアーム150は省略されている。
上述の如く本実施形態に係るインク供給装置11が構成されているため、次の要領でメインタンク70からサブタンク21へインクが供給される。なお、サブタンク21へのインクの供給は、バルブ37(図1参照)を開けてサブタンク21内を大気に開放させた状態で行われる。
図20(a)に示されるように、プランジャ172がシリンダ171から最大限に引き出された状態からシリンダ171内にプランジャ172を押し込む方向へ上記駆動源を作動させると、シリンダ171内の空気が孔173及び孔103(図13参照)を経てメインタンク70のインク室73へ送り込まれる。これにより、インク室73の空気層83の圧力が上昇する。空気層83の圧力がバルブ収容室88(図15参照)の圧力よりも高くなると、逆止弁95(図15参照)が孔89を開放する。孔89の開放によって、図20(b)の実線の矢印23に示される流路を通ってインクがメインタンク70からサブタンク21へ供給される。より詳細には、まず、孔89が開放されたことによって、インク室73内に貯留されたインクが孔89(図15参照)を経てバルブ収容室88へ流出する。このとき、空気層83の体積がシリンダ171から流入した空気量に相当する分量だけ増加する。バルブ収容室88に流入したインクは、バネユニット134の内部及び周囲を通り、インク抽出管149の流出入口149A(図15参照)からインクチューブ32に流入する。そして、インクチューブ32を通じてインクがサブタンク21へ供給される。プランジャー172がシリンダ171の奥部まで押し込まれると、図20(c)に示されるように、サブタンク21及びインクチューブ32にインクが満たされる。
また、本実施形態に係るインク供給装置11において、サブタンク21からメインタンク70へのインクの吸引は、次の要領で行われる。なお、メインタンク70へのインクの吸引は、バルブ37を開けてサブタンク21内を大気に開放させた状態で行われる。
図20(c)に示されるように、プランジャ172がシリンダ171の奥部まで押し込まれた状態からプランジャ172をシリンダ171から引き出す方向へ上記駆動源を作動させると、インク室73の空気層83の空気が孔103及び孔173(図13参照)を経てシリンダ171内に吸い込まれる。これにより、インク室73の空気層83の圧力が低下する。空気層83の圧力がバルブ収容室88(図15参照)の圧力よりも低くなると、逆止弁93(図15参照)が流路92を開放する。これにより、図20(b)の破線の矢印24に示される流路を通ってインクがサブタンク21からメインタンク70へ戻される。より詳細には、まず、流路92が開放されたことによって、バルブ収容室88内のインクが流路92を通って上方へ運ばれる。流路92を通って上方へ運ばれたインクは、開口94からインク室73へ流入する。一方、インクがインク室73に流入したことに伴い、サブタンク21内のインクがインクチューブ32を通じてインク供給バルブ130に流入する。
図20(a)に示されるように、プランジャー172がシリンダ171から最大限に引き出されると、空気層83の体積がシリンダ171へ戻された空気量に相当する分量だけ減少する。このとき、サブタンク21及びインクチューブ32内の全てのインクがインク室73に戻される。サブタンク21からメインタンク70のインク室73にインクが流入した際に、インクチューブ32或いはサブタンク21内の気泡がインクとともにインク室73に流入する。インク室73に流入した気泡は、流路92を通ってセンサーアーム150(図7参照)を迂回するようにインク室73の上層部まで上昇し、空気層83に到達する。これにより、サブタンク21やインクチューブ32内に発生していた気泡をインクと分離して除去することができる。なお、全てのインクがインク室73に戻された後に、上述の如く、メインタンク70からサブタンク21へインクを供給することにより、気泡を含まないインクがインクチューブ32を介してサブタンク21へ供給される。これにより、サブタンク21内の全てのインクがインク室73内に貯留されていたインクに入れ替えられるため、サブタンク21内のインクの粘度がメインタンク70内のインクの粘度と同等となる。
また、本実施形態に係るインク供給装置11では、空気層83の圧力変化に伴いその体積を増減させるポンプ170を採用している。そのため、ポンプ170に空気が流入することがあってもインクが流入することはない。したがって、インクの流入によるポンプ170の故障が減少する。その結果、ポンプ170の信頼性が向上する。
なお、上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更することができる。上述の実施形態では、インクカートリッジ50のメインタンク70からインクチューブ32を通じてサブタンク21との間でインクを流出入する機構に本発明を適用した例について説明した。これに対して、例えば、キャリッジ30が所定の位置に移動されたときに、インクジェット記録装置10に搭載されたメインタンク70にサブタンク21が連結することによりメインタンク70とサブタンク21との間でインクを流出入する機構にも本発明は適用可能である。