JP4865863B2 - 制止された保護位置を有する針保護装置 - Google Patents

Description

本発明は、注射装置に取り付けられているか又は取り付けることができる針ガード装置に関する。同針ガード装置は、自己投与用の薬剤の投与、例えばインスリンの投与に使用されるのが望ましく、具体的には、自己注射、即ち患者が関連薬剤を自分で投与するというやり方で使用することができる。注射装置は、単純なシリンジの場合もあれば、一度使用したら廃棄されるシリンジの場合もある。その様な用途では、針ガード装置は、注射装置と別に製造され投与準備の段階で注射装置に接続される場合もあれば、注射装置と一体の部分になっていて一緒に廃棄される場合もある。しかしながら、注射装置は繰り返し使用するように設計されたものであるのがより望ましく、投与される製品について用量を設定することができるようにした注射装置であるのがなお一層望ましい。具体的には、注射装置は、例えば、糖尿病を治療するのに用いられる型式のペン型注射器であり、その様な注射器は最近は他の治療にも用いられている。

注射装置を取り扱う際には、患者又は医療従事者が、先の尖った注射針で傷つく危険性、及び既に使用された注射針に触れて感染する危険性がある。これを未然に防ぐという観点から、変位させることができる針ガードを備えた針ガード装置が開発されている。注射する場合、針ガード装置を装着した注射装置の、針ガードを皮膚に押し付ける。圧力によって、注射装置は、注射針が針ガードから遠位方向に突き出て針ガードに対し遠位方向に動くので、注射針が皮膚を刺す。その際、針ガードは、注射装置に対し近位方向に解放位置まで移動し、その位置で、注射針は、皮膚に刺さる注射部分が針ガードより遠位側に突き出た状態になる。注射針が皮膚から引き抜かれると、針ガードは、跳ね返り要素の弾性力を受けて再び遠位方向に、針ガードが針先端を含めて注射針より先まで伸張した状態になるガード位置まで移動する。ガード位置に達すると、針ガードは、注射針に対して再び近位方向に戻ることができないように、自動的に係止される。その様な針ガード装置は、米国特許第６，７７３，４１５Ｂ２号並びに国際特許第０１／９１８３７Ａ１号の特許明細書から既知である。引き戻し運動の終点で、針ガードは不可逆的係止状態に入り、その結果、針ガードは遠位方向に動いて初期位置に戻ることはもはやできなくなり、自由な状態に放置されると、即ち外力が取り除かれると、ガード位置に入ることしかできなくなる。

米国特許第６，７７３，４１５Ｂ２号 国際特許第０１／９１８３７Ａ１号

本発明の１つの目的は、製造が簡単で、注射後に使用者を注射針との接触から確実に守る針ガード装置を提案することである。

本発明は、注射装置に取り付けられているか又は取り付けられるように設計されているか或いは注射装置の一体部分である針ガード装置に基づく。針ガード装置は、遠位方向に突き出ている注射針と、針ガードをばね力によって、直接的に又は随意的には単一又は幾つかの介在要素を介して、遠位方向に付勢するばね要素を有している。針ガード装置は、更に、針ホルダーから、望ましくは同様に遠位方向に突き出ている係止機構を有している。係止機構は、注射器の長手方向部分を周方向に囲む中空の輪郭であるかその様な輪郭を備えているのが望ましい。更に、針ガード装置の部品として針ガードがあり、同針ガードは、遠位側の初期位置から半径方向に近位方向に、注射針を解放する解放位置まで動かし、遠位方向に、解放位置を出て、針先端を含めて注射針を取り囲む保護位置まで動かすことができるようになっている。係止機構と針ガードは、針ガードが、確実にガード位置に係止され、再び近位方向に動くことが防止される、即ち、針ガードがガード位置に到達すると直ちにそこに係止されるやり方で、協働する。針ガードは、ガード位置では注射針を取り囲んでいるので、注射針へのアクセスは確実に防止される。針ガードは、少なくとも周方向に伸張している、少なくとも基本的には閉じたスリーブの形態で提供されているのが望ましい。とはいえ、原理的には、針ガードは、ガード位置でそのガード機能を果たし、即ち、使用者を針刺しによる傷害から守ることができれば、より大きいオリフィスを有していてもよい。

本発明により提案されているように、針ガードは「早期始動式」設計である。これは、係止機構が、注射針がその全注射長さ分だけ針ガードを越えて伸張している解放位置に到達するまでは勿論のこと、針ガードが初期位置を出て解放位置に入る解放ストロークのほんの僅かな部分しか進んでいない状態で自由な状態に放置された、即ち、解放位置に向かう方向に作用する外力が取り除かれた状況でも、針ガードをガード位置に係止しないことを意味する。圧力が解放された後、確実に、係止されていない初期位置に後戻りできないようにするためには、針ガードを初期位置と解放位置の間に位置する始動位置に動かすだけでよい。早期始動式システムのおかげで、注射中に針ガードが完全に解放位置に入らなかったか、例えばうっかり取り扱われた場合など他の理由で注射針が針ガードの解放位置に相当する針の長さの一部しか引き出されていない状況での、汚れた注射針による汚染も未然に防ぐことができる。

始動位置は、針ガードが、解放ストロークの最大でも半分を進んだら、針ガードが始動位置に到達しているように選択されるのが望ましい。始動位置は、針ガードの初期位置から解放ストロークの最大でも３分の１に相当する距離に位置しているのが更に望ましい。好適な実施形態では、針ガードが初期位置から始動位置まで行うストロークは非常に短いので、針ガードがその始動位置を取っている時、注射針の先端はまだ針ガードを越えて突き出ていない。

針ガードは、係止機構と直接、望ましくは案内接触式に係合するようになっていてもよく、そうすれば、針ガードは、始動位置に到達した後、係止されていない初期位置に戻ることはできず、係止接続状態に入り、而して、ガード位置を取る。例えば、針ガードと係止機構の一方が位置決め要素を構成し、他方が、針ガードが初期位置から解放位置へ動く時に、位置決め要素を案内して案内接触状態にするカムガイドを構成していてもよい。ガイドは、針ガードが解放位置に達するまで位置決め要素を案内する連続した主分岐と、主分岐から分岐している副分岐を有しており、針ガードが事前に少なくとも始動位置に到達した後、遠位方向に戻る運動中に、針ガードは副分岐の中に入っていく、即ち、副分岐は始動位置で主分岐から分岐している。

しかしながら、好適な実施形態では、針ガード装置は、係止部材も有しており、係止部材は、針ホルダー又は係止機構の少なくとも一方に対して動かして、一方では針ガードを解放位置に動かすことができるだけでなく、針ガードが事前に始動位置に到達しておれば、初期位置に戻る運動を防ぐこともできる。係止部材は、針ホルダー又は係止機構に対して、望ましくは針ホルダー及び係止機構に対して、第１位置から第２位置まで動くことができる。針ガードがその初期位置に配置されている時はいつでも、係止部材は、第１位置を取る。針ガードが初期位置から始動位置に到着すると、係止部材１は第２位置を取る。好適な第１の実施形態では、針ガードが初期位置を出て始動位置に入っていない限り、係止部材は、針ガードがガード位置へ入る動きを防止する。他方、第２位置では、その様な実施形態では、係止部材は係止接続状態へ入る動き、即ち、ガード位置へ入る動きを許容する。或る好適な第２の実施形態では、係止部材は、針ガードの係止接続が、ガード位置で、直接にか又は少なくとも協働的配列によるかの何れかのやり方で解放され、その結果として、針ガードがガード位置から出て解放位置に向かう方向に動けるようにするのを防止する。更に、係止部材が、第２位置での前記機能の両方を果たすこと、換言すれば、ガード位置に入る動きが係止部材に対して起きることを許容すると共に、係止接続自体に関与することが可能になる。

第１の実施形態では、針ガードは位置決め要素を有し、係止部材は位置決め相補要素を有し、針ガードが初期位置に在る時、位置決め要素は、位置決め相補要素と遠位方向への当接を確立している。注射器の長手方向を横断して延びる方向を見ると、係止要素は、位置決め相補要素に加え、注射針の長手方向に伸張している通路も有している。代わりに、通路は、針ガード側に、位置決め要素に追加して設けられていてもよい。針ガードは、針ガードが始動位置へ動くことによって、針ガードと係止部材の間に横方向への相対運動が生じるように、係止部材と連結されている。この横方向運動により、位置決め要素と位置決め相補要素は、それらが重なり合った状態になっている位置から、而して、当接状態から脱して、これらの要素の一方が通路と重なる位置まで動く。通路は、針ガードの位置決め要素が、軸方向に通路と重なる位置まで動くと、針ガードがそのガード位置まで動くことができるように、係止部材側に設けられているのが望ましい。通路が針ガード側に設けられているか、更に望ましくは係止部材側に設けられているかにもよるが、通路と位置決め要素又は位置決め相補要素の間には、近位方向に伸張している分離要素、例えば、係止部材又は針ガードと一体成形されている分離要素が設けられているのが望ましい。長手方向に測定した分離要素の長さは、針ガードが、初期位置から始動位置へ動く間に進むストロークに一致している。従って、分離要素の軸方向長さは、初期位置までのストロークの長さを画定する。このストローク中に、分離要素−針ガードの位置決め要素と係合した状態であるのが望ましい−は、始動位置に到達する以前の横方向への前記相対運動を防止する。

１つの開発では、針ガード装置は係止部材のためのカムガイドを有している。カムガイドは、注射針の長手方向に対し傾斜している少なくとも１つのガイドと、ガイドに沿って案内接触状態で案内される少なくとも１つの位置決め要素を備えている。傾斜は、摩擦が起こらないように選択されている。傾斜は、長手方向軸とガイド又は長手方向軸上のガイドの平行突起によって定められる角度として測定して最大で７０°であるのが望ましい。ガイド又は位置決め要素の一方は、係止部材に対し静止しており、他方は、針ホルダー又は係止機構の少なくとも一方に対し静止している。従って、それらの一方、望ましくは位置決め要素は、係止部材側に直接配置されており、例えば、係止部材と一体に成形されており、他方、望ましくはガイドは、針ホルダー側に配置されており、具体的には針ホルダーと一体に成形されているのが望ましい。針ガードは、針ガードが始動位置まで動く間に係止部材に力を加え、この力によって、係止部材は、位置決め要素とガイドが案内接続状態になった時に第２位置まで動かされるように、係止部材と連結されている。

特に、カムガイドが設けられている実施形態では、係止部材は、注射針周りを回転できるように取り付けられている。係止部材の第１位置を出て第２位置へ入る運動は、注射針に沿った並進運動と注射針を中心とする回転運動を重ね合わせたものであるのが望ましい。

針ガードは、始動位置への運動中に、ばね要素を介して、係止要素に近位方向に作用する力を働かせ、係止要素を第１位置から第２位置へ動かすように、ばね要素を介して係止部材と連結されているのが好都合である。ばね要素は、針ガードが解放位置に向けた方向に動くと、針ガードと係止部材の間で付勢されるか又は少なくとも張るのが望ましい。ばね要素は、針ガードと係止部材に直接支持されているのが更に望ましい。

第２の実施形態では、係止部材は注射針及び係止機構に対して、近位側の位置、即ち、初期状態を取っている第１位置から、遠位方向に第２位置まで動くことができる。遠位方向の運動は、針ガードがガード位置へ動く際、始動位置に到達することによって引き起こされる。針ガードは、係止部材を同伴してガード位置まで駆動する。この駆動作動を実現するために、針ガードは位置決め要素を有し、係止部材は位置決め相補要素を有し、それらは、針ガードが近位方向に動かされて始動位置に入るか又は始動位置を越えると互いに駆動係合状態になる。駆動接続は、位置決め要素が遠位方向に関して位置決め相補要素の後ろに位置するキャッチ接続であるのが望ましい。

係止部材を設けることは、余分な要素を使用しなければならないことを意味するが、それにもかかわらず、一方では針ガード又は係止機構の形状を、そして他方では特に針ホルダーの形状を単純にすることができる。半径方向に入れ子状の配列であるため、針ガードを係止し駆動接続を確立するために必要とされる成形加工要素は簡単に製作することができる。係止部材を針ガードと注射針の間に半径方向に設けると、半径方向には追加の剛性が付与される。

係止部材は、近位方向への運動時、針ガードを滑動接触式に案内する。係止機構と係止部材はそれらの間に環状間隙を形成しており、その中を針ガードは内側面と外側面の両方で滑動接触式に案内される。その様な環状間隙内には、針ガードのための機械的な戻しばねが設けられているのも好都合であり、同環状間隙は戻しばねを軸方向に案内するのにも好都合である。代わりに、環状の間隙は、気密環状チャンバの形態で設けられていてもよく、その場合、正圧又は負圧を発生させることによって針ガードを遠位方向に戻すための弾性力を生み出すために、チャンバの体積は針ガードの運動によって増減される。

第２の実施形態では、針ガードの位置決め要素は、係止部材を駆動する手段として機能するだけでなく、二重機能として、針ガードをガード位置に制止する。その様な実施形態では、針ガードがガード位置に在る時、位置決め要素は近位方向に動いて係止機構の係止停止部と接触した状態になり、即ち、針ガードの近位方向への運動は、位置決め要素の当接によって阻止される。ガード位置でその様な係止を得る上で、係止部材による針ガードの半径方向剛性補強は特に好都合であり、というのも、位置決め要素がガード位置で半径方向内向きに、即ち注射針に向かって、動くのを制止するために、係止要素が位置決め要素に半径方向の支持を提供することができるからである。結果として、位置決め要素が偶発的にせよ故意にせよ係止停止部との係止係合から脱することは起こり得ない。

針ガードが始動位置に入ると、位置決め要素は、望ましくは跳ね返り弾性力に対抗して反対の半径方向外向きに進められ、弾性力によって駆動接続状態になる。駆動接続状態では、位置決め要素は、注射前の初期状態を取っていた位置より半径方向に更に外側の位置を取るのが望ましい。前記２つの位置は、針ガードをガード位置に係止させる好適な実施形態の位置決め要素が、針ガードがガード位置に入った後、駆動接続状態の前記係止機構の係止停止部を通り越すことができ、なお且つ軸方向に確実に動かされて係止機構の係止停止部と接触することができる位置である。

特に第２の実施形態では、係止機構の係止停止部は、跳ね返り弾性力に逆らって半径方向外向きに動かすことができる。例えば、係止停止部は、弾性的に撓むことができるラグであってもよい。係止機構のラグが遠位方向に突き出ており、従って自由遠位端を有していれば好都合である。自由遠位端は、係止停止部を構成しているのが望ましい。

剛性を有する係止停止部は、同様に好適な選択肢であり、具体的には第１の実施形態の針ガード装置に設けることができる。針ガードと係止機構の係止係合が取り扱い操作によって解除され、針ガードがガード位置から脱することができるようになるのを防ぐことにおいては、剛性を有する、撓まない停止部係止は特に信頼できる。係止停止部が針ガードの位置決め要素と協働せず、その代わり、位置決め要素に加えて、第１の実施形態の変型事例の場合には好適なように、係止係合のための少なくとも１つの係止要素が針ガード側に設けられている場合は特に、剛性を有する係止停止部を得ることができる。係止要素は、具体的には弾性を有するスナップ要素であってもよい。係止機構は、係止係合状態では係止要素を包み込んでいる。

第２実施形態では、係止部材は、針ガードの位置決め要素のためのガイドを形成している。針ガードが近位方向、即ち、解放位置に向かう方向に動くと、位置決め要素は、跳ね返り弾性力に逆らって半径方向外向きに動かされ、最終的に駆動接続状態にパチンと嵌り込むのが望ましい。ガイドは、その軸方向伸張部を横切る向きに見て近位−遠位軸に対し傾斜している。傾斜は、連続していなければならず、即ち、常に微分可能でなくてはならない。例えば、傾斜は一定であってもよいし、又は近位方向に減少していてもよいし、又は望ましくは近位方向に増加していて、増分が最も大きい個所はその軸方向伸張部を２つに割った場合の後の近位側半分又は３つに割った場合の最後の近位側３分の１部分に在るのが望ましい。位置決め要素が弾性的に撓むことができるラグを構成することができる形状を有している場合には、このラグは、近位方向に突き出ておらねばならず、その場合、ラグは自由近位端を有している。

早期始動式針ガード装置の好適な特徴については、独国特許出願第１０２００６０４１１２８号に開示されており、同特許を参考文献としてここに援用する。
好都合な特徴については、更に、特許請求の範囲に記載の各請求項及びそれらの組み合わせの中に記載されている。

針ガード装置の或る実施形態の第１例を示している。 組み立てられた状態に在る第１の実施形態に基づく針ガード装置の斜視図である。 初期状態に在る針ガード装置を示している。 初期状態に在る針ガード装置を示している、図３とは異なる長手方向断面である。 針ガードが始動位置に在る時の針ガード装置を示している。 針ガードが解放位置に在る時の針ガード装置を示している。 針ガードがガード位置に在る時の針ガード装置を示している。 第２の実施形態に基づく針ガード装置を示している。 第２の実施形態の係止機構を示している。 第２の実施形態の遠位側針ガードを示している。 第２の実施形態の針ホルダーを示している斜視図である。 針ホルダーの長手方向断面を示している。 第２の実施形態の係止部材を示している斜視図である。 係止部材の遠位方向から見た平面図である。 第２の実施形態の近位側針ガードを示している。 注射前の初期状態に在る第２の実施形態に基づく順序制御部を示している。 注射後の終了状態に在る順序制御部を示している。 初期状態に在る第２の実施形態に基づく針ガード装置を示している。 始動段階開始時の針ガード装置を示している。 始動段階終了時の針ガード装置を示している。 針ガードが解放位置に在る時の針ガード装置を示している。 針ガードがガード位置に在る時の針ガード装置を示している。 第３の実施形態に基づく針ガード装置を示している。 第３の実施形態に基づく針ガード装置を示している。 第３の実施形態に基づく針ガード装置を示している。

本発明を、或る実施形態の或る例に関連付けて以下に説明する。説明されている実施形態から自明になる特徴は、特許請求の範囲に記載の主題を、個別的に及び特徴の全ての組み合わせにおいての両方で構成しており、上で説明した各実施形態を好都合に補完するものである。

図１と図２は、注射装置の遠位端に装着することができる針ガード装置を示す斜視図である。注射装置は、インシュリンの様な注射可能な製品の一定の用量を設定することができ、設定された用量を繰り返し計量分注することができるようになっているものであるのが望ましい。更に、注射の度に用量を設定し直すことができるものであるのも望ましい。或る好適なやり方では、注射装置は、例えば、糖尿病治療で薬剤を自己投与するのに広く使用されている型式のペン型注射器である。従って、同注射装置は、複数回注射することができるように、望ましくは長い期間に亘って使用できるように、設計されている。他方で、注射装置の注射針１を取り囲んでいる針ガード装置は、１回の注射にしか使えないように、即ち、１回限りの使用に合わせて設計されている。使い易いように、針ガード装置は、注射装置の遠位端に、例えば、ねじ込んで取り付けられ、或いは、一例として説明している実施形態の場合は、遠位端に被せて圧入装着され、注射後、取り外して廃棄される。

上で述べた様に、針ガード装置は、注射針１と、針ホルダー２と、入れ子式針ガードを形成する２つのスリーブ形状の構造体、即ち、外スリーブ３と内スリーブ６とを備えている。内スリーブ６は、外スリーブ３に対し、特に注射針１に対し軸方向に動くことができる。図２は、内スリーブ６が外スリーブ３より遠位側の位置を取っている初期状態の針ガード装置を示しており、この状態の時、内スリーブは注射針１をその針先端より先まで覆っており、而して視認制止ガードを形成している。内スリーブ６は、従って、針ガード６と呼ぶことにする。外スリーブ３は、注射後に、針ガード６を係止する手段の役目を果たすので、以下、係止機構３と呼ぶことにする。

図３も、初期状態に在る針ガード装置を示している。長手方向断面に加えて、横断面も示している。長手方向断面Ａ−Ａの位置は、横断面を示している図に表わされている。
係止機構３は、針ガード装置を注射装置に取り付けるための近位側固定部を有している。針ホルダー２は、スリーブ形状の係止機構３に挿入され、挿入された状態で係止機構３に接続されるので、軸方向に動くことも長手軸方向軸Ｌ周りに回転することもできなくなる。係止機構３の機能、即ち、注射針１に対する保護に関する限り、係止機構３は針ホルダー２と一体に成形してもよい。しかしながら、針ガード装置の組み立てに関しては、針ガード装置を針ホルダー２とは別々に製造するのが好都合である。針ホルダー２は、基部２ａを有しており、その中心の領域からは、注射針１を保持する部分が遠位方向に突き出ている。注射針１の長手方向軸Ｌは、近位−遠位軸と一致している。好適な場合として、注射装置が注射される製品を往復運動式プランジャによって運ぶ場合は、軸方向がプランジャの前進駆動方向と一致しているのが好都合である。注射針１は、針ホルダー２の保持部分に軸方向に固定されている。注射針１は、針ホルダー２の保持部分を貫通して伸張している。注射針は、壁に取り囲まれている固定部分のチャンバの中へと近位方向に伸張しているが、壁の近位側縁部より後ろに着座している。このチャンバは、針ホルダー２の近位端の壁に固定されたフィルムによって、無菌状態に保たれるよう密封されている。針ガード装置が注射装置に取り付けられると、フィルムは破壊され、注射針の近位側の尖った端が、製品が充填された容器の遠位端を密封している膜を突き刺す。その結果として、針ガード装置を注射装置に取り付ける過程で、同時に注射針１と製品容器の間に流れ接続が確立される。

遠位端に向かって見ていくと、注射針１は針先端を組み込んだ注射部分を有している。注射針の長さは、皮下注射に合わせた寸法を有している。従って、注射部は、皮膚を穿刺し、更に皮下注射点に達するまで皮膚を貫く。注射部は、自由針先端から、係止機構３の遠位端の軸方向レベルまで、近位方向に伸張している。初期状態では、針ガード６は、係止機構３の停止部４と針ガード６の相補停止部７の協働により予め画定された最遠位位置を取っている。停止部４は、係止機構３から半径方向内向きに突き出ている肩部によって形成されており、相補停止部７は、針ガード６から半径方向外向きに突き出ている肩部によって形成されている。

針ガード装置は、更に戻し要素９を有しており、これは一例として図示している実施形態では機械的圧縮ばねである。戻し要素９は、針ガード６に遠位方向に作用する弾性力を働かせ、それによって、相補停止部７を停止部４に押し付ける。戻し要素９は、係止機構６と針ホルダー２上に軸方向に支持されている。

針ガード装置は、更に、針ガード６用の係止部材１０を有している。係止部材１０は、針ホルダー２の保持部分より遠位側に伸張している。係止部材は、筒状の外側面、一例として図示されている実施形態では円筒形の外側面を有しており、同外側面は、筒状の内側面、一例として例示されている実施形態では或る距離を空けて平行に配置されている係止機構３の円形の内側面に向かい合って位置している。係止部材１０の外側面と係止機構３の内側面は、針ガード６を挿入して動かすことができる軸方向に伸張する環状の間隙を、半径方向に境界を定めている。環状空間内には戻し要素９も配置されている。環状空間の境界を相互に定めている内側面と外側面は、針ガード６が滑動接触状態で動く間、針ガードを案内し、更に、一例として図示されている実施形態では、戻し要素９が伸び縮みする際、戻し要素を案内する。

係止部材１０の外側面は、針ガード６のためのガイド１２を形成しており、一例として図示されている実施形態では滑動ガイドである。ガイド１２は、係止部材１０の遠位端部分を形成している。ガイド１２は、長手方向軸Ｌ周りに周方向に伸張している滑らかな面である。それは、係止部材１０の遠位端から近位方向に伸張しており、半径方向外向きに傾斜している。係止部材１０は、その外側面が徐々に、即ち、遠位端から近位方向に行くにつれて厚くなり、長手方向軸Ｌ周りに周方向に伸張している肩部の厚くなった領域又は幅広になった領域の近位端で、突然そうでなくなって、係止部材１０の外側円筒形部分となっている。ガイド１２よりも長いこの部分に隣接して、係止部材１０の近位端には、厚くなった端部が設けられている。中間部と近位端部の間の移行も急激であり、肩部の形態をしている。ガイド１２は、その遠位端からその近位端、即ち肩部１１まで連続的に湾曲している。一例として図示されている実施形態では、ガイド１２の傾斜は、その遠位端から近位方向に肩部に近づくにつれ連続的に更に顕著になっていく。あまり好適とは言えないが、ガイド１２は、代わりに、一定の傾斜又は近位方向に行くにつれ徐々に緩くなる傾斜を有していてもよい。

針ガード６は、それぞれガイド１２の一方と協働する２つの位置決め要素８を有している。図３の断面では、一方の位置決め要素８しか見えていない。他方の位置決め要素８は、図示されているものと同じ形状であり、他方のガイド１２と協働する仕方も同じである。位置決め要素８は、針ガード６のケーシングの根元領域から近位方向に伸張している可撓性を有する弾性ラグの形態で設けられており、その近位端には、半径方向内向きに突き出ている肩部を有している。肩部は、結果的に、位置決め要素８の近位端の内向きに突き出たカムになっている。このカムは、ガイド１２に滑動接触式に着座している。針ガード６が近位方向に動くと、カムは、位置決め要素８が、ガイド１２の傾斜した輪郭によって、弾性的に外向きに少しずつ徐々に曲がっていくように、ガイド１２上を滑動する。ガイド１２の近位端の肩部は、位置決め要素８それぞれに対する位置決め相補要素１１を構成している。

係止部材１０は、例えば、普通は移送中又は取り扱い中に起こる様な振動又は衝撃を受けた場合の加速度によって、図２に示されている位置を離れることが無いように、十分にしっかりと針ホルダー２に接続されている。しかしながら、接続は解除することができるようになっている。接続は、針ホルダー２、即ちその保持部分と係止部材１０との摩擦接触により確立されている。この摩擦接触で協働する着座面は、遠位方向に行くにつれて円錐形状に先細りになっている。

摩擦接触接続が解除されると、係止部材１０は、注射針１に対して遠位方向に滑動する。注射針１は、係止部材１０を貫通して伸張しており、このために、係止部材は、中央内径部を有している。

係止部材１０は、全体として細いボルトの形状を有している。これにより、針ガード６、特にその位置決め要素８に半径方向の剛性を付与している。
係止機構３の１つの基本的機能は、針ガード６が遠位側ガード位置に配置されている時に近位方向に動くのを防ぐために、針ガード６との係止接続を確立することである。ガード位置では、針ガード６は、軸Ｌに関して、図３に示されている初期位置で取ったのと同じ位置を取る。しかしながら、針ガード６は、ガード位置に在る時は近位方向に動けないようになっており、これは係止機構３によって動けないようにされているのである。係止機構３は、係止機能を果たすことができるように、２つの係止要素５を有している。係止要素５は、それぞれ、可撓性を有する弾性ラグの形態で設けられている。係止要素５は、係止機構３のスリーブケーシング内に配置されており、それぞれが、近位側の根元領域から遠位方向に伸張している。従って、係止要素５はそれぞれ自由な遠位端を有している。係止要素５の遠位側端面は、針ガード６がガード位置に在る時は、軸方向に相対して位置している位置決め要素８の近位側端面に対する停止面として働いている。従って、針ガード６をガード位置に係止するために、係止要素５はそれぞれ係止停止部として働き、位置決め要素８はそれぞれ係止相補停止部として働く。ガード位置では、針ガードは、注射針１の注射部をその針先端より先まで取り囲んでいる。

図３に示されている初期状態では、係止要素５の係止停止部と位置決め要素８の係止相補停止部は係合していない。位置決め要素８は、近位方向に伸張して、ガイド１２の直ぐ手前で終わっているか、少なくとも基本的には張力の働いていない状態でガイド１２の遠位端に着座している。針ガード６を中に動かすと、位置決め要素は、この位置から半径方向内向きに動かされ、妨げられずに係止要素５を通過させることができる。同じことが、周方向に１８０°ずれた係止要素５と位置決め要素８から成る対にも当てはまる。針ガード装置は、協働する要素５と８の対を数対有しているのが望ましく、それらは、軸Ｌを中心に対称的に配置されているのが好都合ではあるが、一対の要素５、８でも、係止を確立するには十分である。

注射中に起きる順序を説明するため、これより図４から図７を参照しながら記述する。
上で説明した様に、使用者が針ガード装置を注射装置に取り付けると、注射針１の準備が整う。使用者は、次に、注射する用量を選択する。使用者は、用量を選択したら、針ガード６の遠位側端面を皮膚の所望の注射点に当てて注射器を配置し、注射装置を皮膚に押し付ける。この遠位方向への押し付け動作により、針ガード６は、係止機構３と係止部材１０の間の環状間隙を通り戻し要素９の弾性力に逆らって軸方向に動く。針ガード６は、係止機構３に対し軸方向に案内されるが、回転することはできない。第１遠位運動部分に相当する部分では、位置決め要素８は、ガイド１２に沿って滑動する。ガイド１２は、位置決め要素８が半径方向内向きに動いて協働する各係止要素５を難なく通り越すことができるようにする形状を有しているか又はそうできるように半径方向に互いに間隔を空けて配置されている。係止機構３は、その係止要素５の周方向領域が、位置決め要素８がガイドと係止要素の間で実質的に妨げられずに、また理想的な状況では係止要素５が変形することなく、外向きに曲げられることが可能な程度まで、近位方向に向かうにつれ内側に広くなっている。ガイド１２の近位端では、位置決め要素８は、位置決め相補要素１１の遠位側境界を定めている縁部をこの時点で越えて、それらの自然な跳ね返り弾性力によって内向きに動き、その結果、位置決め相補要素１１にパチンと嵌り込む。位置決め要素８と位置決め相補要素１１はここで互いに引っ掛かり合って対毎に駆動接続状態になる。

上で説明した様に、ガイド１２に面している係止要素５の内側面は、針ガード６の全ストロークに亘って内側面とガイド１２の間に、位置決め要素８が係止要素５に如何なる圧力も加えないか又は係止要素５に少なくとも外向きの圧力は加えないだけの広い間隔が空いたまま残る形状を有している。更に、位置決め相補要素１１とガイド１２は、初期位置では、位置決め要素８が駆動接続状態でその遠位側の初期位置から外向きに曲がり、その結果、駆動接続状態の時の方が遠位側の初期位置に在る時よりも長手方向中心軸Ｌからの距離が長くなる形状を有している。駆動接続状態の時、係止要素５に面している位置決め要素８の外側面は、係止要素５の遠位側領域の内側面よりも、中心の長手方向軸Ｌからの距離が長くなっている。

図４は、使用前、針ガード６が遠位側の初期位置を取っている初期状態の針ガード装置を示している。初期位置で、針ガード６は、協働する停止部４と７（図３）によって係止機構３に保持されている。２つの位置決め要素８は、ガイド１２の遠位側のガイドの直前の位置にあり、弛緩している。軸方向圧力が針ガード６に近位方向へ加えられると、針ガード６は、係止機構３に対し、またその近位側初期位置に配置されている係止部材１５に対し、近位方向に動く。初期又は始動ストロークＹの後、運動開始と同じくして、位置決め要素８はガイド１２と案内接触状態に入り、ガイド１２の傾斜に沿って半径方向外向きに曲がっていく。位置決め要素８は、係止部材１５と係止要素５の間の間隙をガイド１２に沿って動き、半径方向外向きに一定の割で徐々に大きく曲げられていき、最終的にガイド１２の近位端に到達すると、位置決め要素自体の弾性的な跳ね返り力によって位置決め相補要素１１の後ろに半径方向内向きにパチンと嵌り込み、それによって駆動接続が確立される。中間位置又は始動位置Ｙからは、針ガードは、外部押圧力から開放され、而して自由な状態に放置されると、係止されていない初期位置に戻ることはできない。

図５は、針ガード６が始動位置Ｙに在る針ガード装置を示している。位置決め相補要素１１が遠位方向に更に前方に押し出された位置に在ることにより、駆動接続は、注射針１の先端が遠位方向に針ガードより先まで伸張する以前に既に確立されている。一例として図示されている実施形態では、針先は、針ガード６から後ろに僅かな距離だけ更に後退して配置されている。針ガード６に更に圧力が加えられると、針ガード６は、ばね要素９の力に逆らって更に係止機構３の中まで進められる。この様に更なる引き戻し運動の間、位置決め要素８は、位置決め相補要素１１に隣接している、軸方向に真っ直ぐな、つまりこの実施形態では円筒形状の円周面を近位方向に縦断する。

図６は、解放ストロークＸを行った後で、針ガード６が解放位置に在る状態の針ガード装置を示している。針ガード６は、針ガードの全長が係止機構３と軸方向に重なり合った状態になるまで動かされている。この完全に引き戻された状態では、係止機構３と針ガード６と係止部材１０の遠位側端面は、同じ軸方向レベルに配置されている。注射針１は、その注射部分全体が、これらの共通の端部を越えて伸張しており、即ち、注射針１が、皮膚とその下層の皮下組織を、注射針１に沿って測定される注射針１の所望の穿刺深さ分だけ穿刺しているので、設定された用量が計量分注されることになる。計量分注時、必要なことは、戻し要素９の跳ね返り弾性力を打ち負かすのに必要な圧力を加えることだけである。設定された用量が計量分注されると、使用者は、針ガード６から外部圧力が取り除かれるように注射装置を軸方向に注射点から近位方向に向けて離す。

針ガード６から外力が取り除かれると、針ガード６はばね要素９の跳ね返り力によって自動的に再度遠位方向に前進し、最終的に位置決め要素８と位置決め相補要素１１が当接する。初期位置（図４）での、位置決め相補要素１１の着座位置の針ホルダ２の接触面からの距離は、係止部材１０が、この時には位置決め要素８と位置決め相補要素１１によって駆動接続が再度確立された状態で針ガード６と共に遠位方向に駆動されるように寸法設定されている。始動位置Ｙで針ガード６から外力が取り除かれた時にも同じことが起こる。針ガード６と係止部材１５の一体運動が進行している間、位置決め要素８は係止機構３の係止要素５前方を遠位方向に動く。位置決め要素８は、例えば置かれているその端部が、針ガード６が初期位置にある場合より更に半径方向外側にある。外向き運動の間、係止要素５は、従って半径方向外向きに曲げられ、位置決め要素８を通過すると直ちに、自身の自然な弾性的跳ね返り力によって、半径方向内向きにパチンと戻って嵌り込む。

図７は、注射後、針ガード６が最遠位位置にある針ガード装置を示している。針ガード６の遠位方向への運動が終了すると、針ガード装置は、この最遠位位置がここで針ガード６の係止後のガード位置となるように、協働する位置決め要素８と係止要素５によって自動的に係止される。

係止部材１０は、位置決め要素８が係止要素５との係止接続から脱することがないように、位置決め要素を半径方向内向きに支持する。係止要素５と位置決め要素８とガイド１２は、針ガード６の運動中、係止要素５が遠位方向に妥当なだけ弾性的に付勢されるようにする好都合な形状を有している。引き戻し運動中に外向きに曲がる位置決め要素８は、最大でも、係止要素５をほんの僅かしか曲げないのがよい。係止要素５は、引き戻し運動中は、全く付勢されないのが望ましい。一例として図示されている実施形態では、これは、長手方向断面で確認できるように係止要素５とガイド１２の内側面の傾斜している輪郭と細い位置決め要素８とによって実現されている。

位置決め相補要素１１は、針ガード６がガード位置に在る時、軸方向に関して、位置決め相補要素１１に係止機構３が軸方向に重なり合うように配置されているので、係止機構３は、位置決め要素８を駆動接続から外す動きを引き起こしかねない位置決め要素８の操作を阻止する。

注射後、使用者は、針ガード装置を注射装置から取り外して廃棄する。新たに注射する場合は、図３及び図４に示されている初期状態の新しい針ガード装置を注射装置に取り付ける。

図８は、第２の実施形態に基づく針ガード装置を示しており、構成要素は、組み立てられる順に中心長手方向軸Ｌに沿って並んでいる。針ガード装置は、第１の実施形態の場合と同じ様に針ホルダー２によって保持されている注射針１と、針ガード装置を注射装置の遠位端に取り付けるための固定及び案内機構を有し、針ガード６の非回転式軸方向ガイドを形成している係止機構３と、ばね要素９ａと、係止部材１０を備えている。針ガード装置は、更に、遠位側の針ガード６を有している。

針ホルダー２は、スリーブ形の係止機構３内に挿入され、動くことができないように固定される。針注射部１ａは、皮下注射を打つのに適した長さだけ遠位方向に係止機構３を超えて突き出ている。近位側領域では、係止機構３は、針接続部分１ｂを取り囲み、それを越えて近位方向に突き出ている。針ガード６は、初期位置では、係止機構３に対して、係止部材１０によってばね要素９ａの力に逆らって保持されている。

図９は、係止機構３を、互いに９０°ずらした２つの長手方向断面と、斜視図とで示している。係止機構３は、長手方向軸Ｌの周りに周方向に沿って伸張している内側面の遠位端に２つのポケット形状の陥凹部３ａを有している。陥凹部３ａは、何れの場合も、近位端の急勾配の肩部を介して内側面に繋がっている。２つの肩部は、それぞれ、遠位方向を向いた並進停止部３ｂを形成している。針ガード６が確実に真っ直ぐに案内されるようにするため、陥凹部３ａの側部には、それぞれ軸方向に伸張するガイド３ｅが配置されている。他に２つのポケット形状の陥凹部３ｃが、係止機構３の遠位端の同じ内側面に、何れの場合も内側面の周囲に沿って陥凹部３ａから９０°ずらして設けられている。陥凹部３ｃは、それぞれ、遠位端で、勾配の急な肩部を介してケーシングの内側面と繋がっている。２つ肩部は、それぞれ、近位方向を向いた並進停止部３ｄを形成している。更に、遠位端部分では、係止機構３は、係止部材１０の並進停止部３ｆとして働く。並進停止部３ｂと３ｄは、針ガード６のガード位置を画定している。並進停止部３ｄは、再度の引き出しを防ぐ係止を確立し、並進停止部３ｂは、引き戻しを防止する係止を確立し、而して第１実施形態の係止要素５の係止停止部に取って代わっている。

図１０は、針ガード６を示している。針ガード６は軸方向ガイド６ｅを有しており、軸方向ガイドは、係止機構３のガイド３ｅと協働し、それらと共に、針ガード６を直線的に但し針ガードが回転しないように案内する。針ガード６は、その近位端に、周方向に互いに１８０°ずらされた２つの係止要素６ｂを有しており、それらは一例として図示している実施形態では弾性ラグの形態で設けられている。係止要素６ｂは、近位方向に外向きに傾斜している。最後に、外側に突き出したカムの形態をした２つの位置決め要素６ｄが、針ガード６の外周の同じくその近位端に、周方向に互いに１８０°ずらして設けられている。位置決め要素６ｄは、長手方向軸Ｌ周りの周方向に向いている面が長手方向軸Ｌに対して傾斜していて、各位置決め要素６ｄが関係する側面に斜面を形成するようになっている。

図１１と図１２は、第２の実施形態の針ホルダー２を示している。針ホルダー２は、基部２ａと、基部２ａから伸張している注射針１のための中心保持領域を有している。基部２ａには２つの通路２ｂが設けられており、針ガード２１は、それらを通って近位方向に引き戻されて近位側ガード位置に入ることができ、通路は、針ガード２１をそのガード位置に係止する手段にもなっている。基部２ａからは、保持領域に隣接してその外側に、２つの突起が長手方向軸周りの周方向に互いに１８０°ずれて突き出ており、突起のそれぞれは、係止部材１０用の各傾斜ガイド２ｃを形成するために遠位側が斜面形状に傾斜している。斜面形状に傾斜したガイド２ｃに面して、別の突起２ｄがそれぞれ基部２ａから遠位方向に伸張している。図１２に示している断面図の面は、長手方向軸Ｌ、及び、ガイド２ｃを形成している突起の内の一方と各ガイド２ｃに面している突起２ｄの間の間隙を通って伸びている。

図１３は、係止部材１０の斜視図である。図１４は、係止部材１０の底面の平面図、即ち、遠位方向から見た図である。係止部材１０は中空筒状である。係止部材１０のケーシングには、円周方向に互いに１８０°ずれた２つの切抜１３が成形されており、同切抜はケーシングを貫通して伸張し、それぞれに、一方の側が周方向に傾斜したトラック１４を形成している。突起１５は、係止部材１０の遠位側の周辺帯状部分から近位方向に各切抜１３の中へ伸張している。２つの切抜１３は、係止部材１０のケーシングによって周方向に枠が画定されており、軸方向に伸張している通路１６が、ケーシング内側面に突起１５に隣接してトラック１４の前方遠位方向にそれぞれ形成されており、係止部材１０の遠位端から各切抜１３まで途切れなく伸張している。針ガード装置が組み立てられると、２つの通路１６を有する係止部材１０は、位置決め要素６ｄが協働する各切抜１３の中に入るように、針ガード６の位置決め要素６ｄを縦断する。位置決め要素６ｄは、次いで、なお組み立て工程中に、係止部材１０を回すことによって、各突起１５の後ろを周方向領域１７へと動かされるので、位置決め要素６ｄは、周方向領域１７内で係止部材１０の遠位縁部の後ろに位置付けられる。２つの周方向領域１７は、それぞれ、並進停止部を形成しており、この意味では、協働する各位置決め要素６ｄ用の位置決め相補要素１７を形成している。針ガード６は、このように当接した状態で、ばね要素９及び９ａに逆らって、係止機構３側に保持される。突起１５は、注射針１の長手方向に対して横方向に伸張する方向に、通路１６と位置決め相補要素１７の間に配置される。位置決め要素６ｄと案内接触状態に在る時、それらは通路１６を協働する各位置決め相補要素１７から分離するので、位置決め要素６ｄは、係止部材１０が第１位置に在る時には位置決め相補要素１７と重なるか、係止部材１０が第２位置に在る時には通路１６と重なるか、のどちらかとなる。突起１７は、分離要素の機能を果たす。

係止部材１０は、針ホルダー２と係止機構３に対して、軸方向に前進及び後退することができ、且つ長手方向軸Ｌ周りに回転することができる。
係止部材１０は、その底面側については、そのケーシングの近位端に半径方向内向きに伸張している環状基部１８と、基部１８から近位方向に突き出ている合計２つの位置決め要素１９を有しており、それら位置決め要素１９は互いに周方向に１８０°ずれている。基部１８には、近位側ガード２１のための２つの通路２０が、周方向に互いに１８０°ずらして設けられている。

図１５は、近位側針ガード２１を示している。針ガード２１は、遠位端の環状基部と、基部から近位方向に長手方向軸Ｌの方向に向けて弾性的に伸張している可撓性を有するレッグ又はフィンガ２１ａを有している。突起２１ｂは、何れの場合も、フィンガ２１ａの外側面に設けられている。突起２１ｂは、近位方向に行くにつれ先が矢状に細くなっており、それぞれが、遠位方向に向いた針ガード２１のための停止部を形成している。

図１６は、針ガード２１を係止するために協働する構成要素を示しており、針ガード２１は、遠位側の初期位置を取っているが、この位置は、同時に針ガード２１の解放位置でもある。初期位置では、針ガード２１は、注射針１の接続部分１ｂの遠位方向後方に完全に着座している。針ガードは、更に、針ホルダー２の基部２ａよりも後ろに着座しており、即ち、初期位置では、ばね要素９ａが針ガード２１を近位方向に基部２ａに押し付けている。フィンガ２１ａは、係止部材１０の通路２０（図１４）を通って伸張している。針ガード装置が初期状態に在る時は、通路２０と針ホルダー２の通路２ｂは、周方向に互いにずれている。係止部材１０の位置決め要素１９は、軸方向には針ホルダー２のガイド２ｂに面して配置されている。ばね要素９ａは、針ガード６を介して、係止部材１０を、図１６に示されている遠位側の初期位置に保持しており、この位置では、針ガード６は、針ガードを遠位側の初期位置に引っ張り込む位置決め要素６ｄによって、周方向領域１７内で係止部材１０の後ろに位置付けられている。この初期位置は、図１８にも示されている。

針ホルダー２と係止部材１０は、針ガード６がその初期位置を脱し、少なくとも始動位置に動かされ、その後、近位方向への運動を引き起こす外力が取り除かれた時に、針ガードをガード位置に係止するため、針ガード６を係止する場合の順次制御部としても働く。

図１７は、針ガード装置と、近位側のガード位置に配置されている針ガード２１を示している。同様に、図２２も、この最終の状態にある針ガード装置全体を示している。
第２の実施形態に基づく針ガード装置がどの様に作動するかを、これより、図１８から図２２、並びに図８から図１７、特に図１６と図１７を参照しながら説明する。

針ガード装置は、図１８に示されている初期状態で注射装置に接続され、例えば、ねじ込まれるか挟み付けられる。こうなると、針接続部１ｂは薬剤貯留具の密閉膜を刺す。針ガード２１の運動は、装着中はまだ起こらない。

次いで、使用者は、皮膚の所望の注射点を注射針１で刺し、皮下組織を貫いて穿刺する。そうすると、針ガード６は、針ホルダ２に対し近位方向に動くので、反対に、針注射部分１ａが前方に突き出る。図２１は、薬剤が投与されている間穿刺状態に在る針ガード装置を示している。

針ガード６は、外力が針ガード６に近位方向に作用していることによって、ばね要素９ａの跳ね返りばね力に逆らって、針ホルダー２に対しまた係止部材１０に対しても近位方向に動く。針ガード２１を取り囲んでいる別のばね要素９は、近位方向には針ホルダー２側で支持され、遠位方向には針ガード６側で、即ち、一例として図示されている実施形態ではその近位端に、支持されている。従って、引き戻されていく針ガード６は、ばね要素９を介して係止部材１０を近位方向に押す。位置決め要素６ｄは、運動の開始時は、まだ、協働する各突起１５と案内接触しており、針ガード６は、直線的に案内され、回転が防止されているので、係止部材１０はまだ回転することができない。始動ストロークが終わって、始動位置Ｙに達すると、針ガード６の位置決め要素６ｄは、係止部材１０の突起１５と軸方向に重なり合った状態から脱する。突起１５の軸方向の長さは、同時に、始動ストロークＹの長さ、即ち、初期位置を参照した始動位置Ｙも画定する。位置決め要素６ｄが、協働する各突起１５の近位端を通過し、従って位置決め要素６ｄと突起１５の案内接触が解除されると直ちに、位置決め要素１９はガイド２ｃ上を滑動することができる。これで位置決め要素１９とガイド２ｃの案内接触が確立されてしまったので、係止部材１０は、ガイド２ｃの傾斜方向に従って長手方向軸Ｌ周りに、針ホルダー２と係止機構３に対し、そして針ガード６に対しても回転し、図１６に示されている第１位置を出て、図１７に示されている第２位置に入り、そこで、位置決め要素６ｄは通路１６と軸方向に整列する。図１９と図２０は、回転運動の開始時及び終了時の係止部材１０を示している。外力の作用を受けると、針ガード６は、ばね要素９そして更にはばね要素９ａの力にも逆らって解放位置に向けて更に進み続ける。こうなると、係止部材１０の角回転の位置は変わらない。

並進運動が回転運動に重なり、係止部材１０の位置決め要素１９が、協働する各ガイド２ｃ上を滑動させられる。並進及び回転運動は、位置決め要素１９と突起２ｄの当接によって制約される。突起２ｄは、回転運動に対する停止部として働く。フィンガ２１ａが通路２０を通って伸張しているので、係止部材１０は、回転運動中は針ガード２１を同伴して駆動する。係止部材１０が、図１７に示されているその中立位置に到達すると直ちに、係止部材１０の通路２０（図１４）は針ホルダ２の通路２ｂ（図１１及び図１２）と重なり合うので、針ガード２１のフィンガ２１ａは、ばね要素９ａの力により通路２ｂを通り抜けることができる。フィンガ２１ａは、ばね要素９ａによって、注射装置の遠位端の或る地点、例えば、装置自体又は薬剤貯留具の遠位側の或る地点まで押される。フィンガ２１ａは、針ホルダー２の通路２ｂに入ると、係止部材１０が初期位置（図１６）に後戻りするのを防止する。

注射針１が組織から取り出され、結果として針ガード６が圧力から解放されると、ばね要素９と９ａは、針ガード６を遠位方向に動かす。２つの突起１５の周方向位置は、針ガード６が遠位方向に動くにつれて、位置決め要素６ｄが通路１６の中へ入っていき、その結果、針ガード６が最終的に係止部材１０によって解放され、係止要素６ｂが係止機構３の陥凹部３ａ（図９及び図１０）の中に入って、係止停止部３ｂとの係止接続によって針ガード６をその遠位側ガード位置に係止し、近位方向の運動を防止することができるように選択されている。位置決め要素６ｄは、停止部３ｄと協働することで、針ガード６が、係止機構３から完全に脱して遠位方向に動くのを防止する。

針ガード６がガード位置に係止されると、針ガード装置は注射装置から切り離される。ばね要素９ａの作用を受けて、近位側針ガード２１は針ホルダー２に対し近位方向に動き、図２２に示されているガード位置に入る。ガード位置では、フィンガ２１ａは、針接続部分１ｂの先端を越えて近位方向に突き出ている。針ガード２１は、その突起２１ｂと針ホルダー２の基部２ａとの係止接続によって係止されるので、遠位方向に戻る運動は阻止される。針ガード２１は、遠位方向には、針ホルダー２の環状基部によって支持される。

図２３は、第３の実施形態に基づく針ガード装置を示している。第３の実施形態は、第２の実施形態に変更を加えたものである。近位側針ガード２１は省かれている。従って、ばね要素９ａも不要である。針ホルダー２と係止部材１０については、針ガード２１のフィンガ２１ａのための通路は不要である。他の点では、第３の実施形態は、第２の実施形態と同じであり、特にその制御順序は同じやり方で進行する。

図２４と図２５は、第３の実施形態に基づく針ガードを、互いに９０°ずらした２つの長手方向断面で示している。図２４と図２５では、針ガード６は、係止されていない初期位置を取っている。ばね要素９は、第２の実施形態と同じ様に、近位方向には係止部材１０の基部に支持されているが、遠位方向には、針ガード６のその遠位端近くに支持されているという点で、第２の実施形態のばね要素９より長くなっている。注射中に起こる動作の順序、具体的には、針ガード６の早期始動を発生させるための構成要素の協働の詳細は、第２の実施形態に関連して述べた説明を参照されたい。

１ 注射針
２ 針ホルダー
２ａ 基部
２ｂ 通路
２ｃ ガイド
２ｄ 突起
３ 係止機構
３ａ 陥凹部
３ｂ 係止停止部、係止相補要素
３ｃ 陥凹部
３ｄ 陥凹部
３ｅ ガイド
３ｆ 停止部
４ 停止部
５ 係止相補要素
６ 針ガード
６ｂ 係止要素
６ｄ 位置決め要素
６ｅ ガイド
７ 相補停止部
８ 位置決め要素
９ ばね要素
９ａ ばね要素
１０ 係止部材
１１ 位置決め相補要素
１２ ガイド
１３ 切抜
１４ トラック
１５ 突起、分離要素
１６ 通路
１７ 位置決め相補要素
１８ 基部
１９ 位置決め要素
２０ 通路
２１ 近位側針ガード
２１ａ フィンガ
２１ｂ 突起
Ｌ 長手方向、長手方向軸
Ｘ 解放ストローク、解放位置
Ｙ 始動ストローク、始動位置

Claims (6)

1. 注射装置に使用されるか又は装着される針ガード装置であって、
   ａ）注射針（１）と、
   ｂ）前記注射装置に取り付けられているか又は取り付けることのできる針ホルダー（２）であって、そこから前記注射針（１）が遠位方向に伸張している針ホルダーと、
   ｃ）ばね要素（９）と、
   ｄ）針ガード（６）であって、外力によって前記ばね要素（９）のばね力に逆らって近位方向に、前記針ガードが前記注射針（１）を針先端を越えて取り囲む遠位側初期位置から、前記注射針（１）を解放する解放位置まで解放ストローク（Ｘ）だけ動かし、遠位方向に、前記解放位置を出て、前記針ガードが前記注射針（１）を同じく前記針先端を越えて取り囲むガード位置まで動かすことができる、針ガードと、
   ｅ）前記針ガード（６）を係止接続により前記ガード位置に係止し、近位方向への運動を阻止する係止機構（３）と、を備えている、針ガード装置において、
   ｆ）前記針ガード（６）は、前記針ガード（６）が前記初期位置を出て、前記解放ストローク（Ｘ）の僅かなストローク部分だけ動かされて、少なくとも始動位置（Ｙ）に入り、前記始動位置（Ｙ）で前記外力が取り除かれると、前記ばね力によって係止接続状態になり、
   前記針ガード装置においてさらに、係止部材（１０）が設けられており、前記係止部材（１０）は前記針ホルダー（２）と前記係止機構（３）の少なくとも一方に対し動くことができ、前記針ガード（６）は、前記始動位置（Ｙ）に到達すると前記係止部材（１０）と係合（８、１１；６ｄ、１６）し、それによって、前記針ガード（６）は、前記針ガード（６）から前記外力が取り除かれるか又は前記針ガード（６）が前記ガード位置への運動を阻止する前記係止部材（１０）との係合（６ｄ、１７）から解放されると、前記ガード位置まで動かされ、
   前記針ガード（６）は位置決め要素（８）を有し、前記係止部材（１０）は位置決め相補要素（１１）を有し、それらは、前記針ガード（６）が前記始動位置（Ｙ）に到達すると、互いに駆動接続状態になり、前記針ガード（６）は、遠位方向に動く際、前記係止部材（１０）を、駆動接続状態で同伴して駆動し、
   前記位置決め要素（８）は、前記針ガード（６）が前記ガード位置に在る時は、近位方向に動いて前記係止機構（３）の係止停止部（５）と接触状態になる、ことを特徴とする、針ガード装置。
2. 前記注射針（１）の長手方向（Ｌ）に延びる可撓性弾性ラグが前記位置決め要素（８）を構成することを特徴とする、請求項１に記載の針ガード。
3. さらに追加のラグが前記係止停止部（５）を構成することを特徴とする、請求項２に記載の針ガード。
4. 前記係止部材（１０）は、前記ガード位置で、前記位置決め要素（８）の半径方向内向きの運動を制止するために、前記位置決め要素（８）を半径方向内向きに支持することを特徴とする、請求項１乃至３の何れかに記載の針ガード装置。
5. 前記係止部材（１０）は、前記始動位置（Ｙ）への運動中に、前記位置決め要素（８）を半径方向外向きに反らすために、半径方向外向きに傾斜しながら近位方向に伸張している、前記位置決め要素（８）のためのガイド（１２）を有していることを特徴とする、請求項１乃至４の何れかに記載の針ガード装置。
6. 前記ガイド（１２）は、前記位置決め相補要素（１１）を形成するために、近位端が半径方向内向きに窄んでいることを特徴とする、請求項５に記載の針ガード装置。

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