コネクタの移動範囲内で、そのコネクタに携帯音楽機器の端末側コネクタを接続することにより、充電台用コネクタの位置において、携帯音楽機器に電力を充電したり、その携帯音楽機器から音声信号を出力して音質の良い音楽を再生したりすることができる音楽機能付きクレードル装置を、簡単な構成によって実現した。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図28は、本発明の実施の形態の例を説明するものである。即ち、図1は本発明の音楽機能付きクレードル装置を備えた音響システムの全体構成を示す説明図、図2は本発明の音楽機能付きクレードル装置の第1の実施の例を分解して示す説明図、図3は音楽機能付きクレードル装置の背面を示す斜視図、図4は音響システムの回路構成を示すブロック図、図5はDCケーブルに対する音楽データの重畳の説明図、図6は本発明の音楽機能付きクレードル装置に厚みの薄い携帯音楽機器を装着した説明図、図7は同じく厚みの厚い携帯音楽機器を装着した説明図、図8は厚みの薄い携帯音楽機器を示す斜視図、図9は同じく厚みの厚い携帯音楽機器を示す斜視図である。
また、図10は本発明の音楽機能付きクレードル装置の第1の実施の例を構成物品毎に分解した説明図、図11は音楽機能付きクレードル装置の上部ケースと充電台カバーを取り除くと共に厚みの薄い携帯音楽機器を装着した状態の要部平面図、図12は同じく要部正面図、図13は同じく中央部断面図、図14は同じく厚みの厚い携帯音楽機器を装着した状態の要部平面図、図15は同じく要部正面図、図16は同じく中央部断面図、図17は音楽機能付きクレードル装置のサポートバーを前進させた状態の要部平面図、図18は同じく要部正面図、図19は同じく中央部断面図、図20はサポートバーを後退させた状態の要部平面図、図21は音楽機能付きクレードル装置のコネクタを充電台の中央の第1の位置に配置した状態の要部平面図、図22は同じく断面図、図23はコネクタを充電台の第2の位置に移動した状態の要部平面図、図24は同じく要部正面図、図25はシャーシとスライドベースと段付きねじとの関係を示す説明図、図26A〜Cはシャーシとスライドベースと鋼球と板ばねとの関係を示す説明図、図27A〜Cは支持部材の動作を説明する説明図、図28A〜Cは支持部材の第2〜第4の実施の例を示す説明図である。
(1)音響システムの全体構成
図1において、符号1は、全体として2.1チャンネルの音響システムを示している。この音響システム1は、音楽再生機能付き携帯電話機(後述する)を充電するメインユニットである音楽機能付きクレードル装置2と、その音楽機能付きクレードル装置2に対して所定電圧レベルの直流電力を供給するための電源アダプタであるAC(Alternating Current)アダプタ3と、そのACアダプタ3と音楽機能付きクレードル装置2を電気的に接続するDC(Direct Current)ケーブル4によって構成されている。
ACアダプタ3は、図示しない商用交流電源に接続されたACプラグ5から供給されるAC100[V]をDC12[V]に変換し、そのDC12[V]の直流電力をDCケーブル4経由で音楽機能付きクレードル装置2へ供給することにより、その音楽機能付きクレードル装置2を動作させるようになされている。
(2)音楽機能付きクレードル装置の構成及び作用
次に、音楽機能付きクレードル装置2について詳細に説明する。この音楽機能付きクレードル装置2は、図1〜3に示すように、本体部10と充電台12とコネクタ13等を備えて構成されている。本体部10は、前述したように上部ケース11と下部ケース23と左右の側部ケース24A,24Bとシャーシ55等を備えて構成されている。そして、上部ケース11と下部ケース23と左右の側部ケース24A,24Bとによって三角柱状の中空の筐体からなる外装ケースが構成されている。
上部ケース11は、前方に傾斜した前面部11aと後方に傾斜した後面部11bとを有しており、前面部11aの長手方向の略中央下部には、開口された下面に連通される切欠き部56が設けられている。上部ケース11の切欠き部56は、ドーム状に切除された凹部として形成されており、この切欠き部56には充電台12の充電台カバー61が装着される。充電台カバー61の下面には、下部ケース23に設けたテラス部57が重ね合わされる。図10に示すように、下部ケース23は、略長方形をなす薄い板状の部材からなり、その幅方向の一側であって長手方向の略中央に、略半円形をなして側方に突出するテラス部57が設けられている。
この下部ケース23の外縁に、上部ケース11の前後の下端縁と左右の側部ケース24A,24Bの下端縁と充電台カバー61の下端縁とが重ね合わされる。これらの各ケースを図示しない複数の固定ねじで締め付け固定することにより、外装ケースが組立・分解可能に構成されている。上部ケース11及び左右の側部ケース24A,24Bの材質としては、例えば、ステンレス合金やアルミニウム合金等の金属が好適であるが、エンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論である。また、下部ケース23の材質としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等のエンジニアリングプラスチックが好適であるが、ステンレス合金やアルミニウム合金等の金属を用いることもできる。
図10等に示すように、下部ケース23の上面には、周囲を縁取るようにして凹陥部23aが設けられている。この凹陥部23aには、金属製の薄い板材からなるシャーシ55が載置されている。シャーシ55は、中央部に設けた充電台支持部58と、この充電台支持部58の左右に連続させて対称形状に設けた左右のスピーカ取付部59L,59Rとを有している。充電台支持部58と左右のスピーカ取付部59L,59Rには、シャーシ55を下部ケース23にねじ止めするためのねじ孔59aがそれぞれ設けられている。これらのねじ孔59aに対応して下部ケース23には、シャーシ55にねじ止めするための挿通孔23bが同数設けられている。
シャーシ55のスピーカ取付部59L,59Rには、前述した左右のスピーカ14,15が載置されており、図示しない複数の固定ねじでそれぞれ締付固定されている。また、充電台支持部58は、シャーシ55の長手方向の中央において幅方向の一側へ突出するように設けられている。この充電台支持部58には、スライドベース63が摺動可能に支持されていると共に、ガイドブロック64が固定されている。
スライドベース63は、略長方形をなす薄い板状の部材からなっている。このスライドベース63には、真っ直ぐな第1の辺63aと、この第1の辺63aと平行をなす摺動動作の基準となる2つのガイド穴65,65と、1つの保持穴66とが設けられている。保持穴66には、スライドベース63がスライド動作する際のクリック感を生じさせる球体の一具体例を示す鋼球67が転動自在に収納されている。球体の材質として、この実施例で示した鋼材に限られるものではなく、他の金属を用いることができることは勿論のこと、十分な強度を有するものであればエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
スライドベース63の2つのガイド穴65,65は、摺動方向へ所定の間隔をあけて横並びに設けられている。2つのガイド穴65,65には、2つの段付きねじ68の各軸部がそれぞれ摺動可能に嵌合されている。これら3つの段付きねじ68は、充電台支持部58に設けた3つのねじ孔69にねじ軸を螺合することによって締付固定されている。この3つの段付きねじ68にガイドされてスライドベース63は、ガイド穴65に嵌合されている2つの段付きねじ68が移動可能な範囲内で、シャーシ55の長手方向(本体部10の左右方向)へスライド動作可能とされている。
スライドベース63には、コネクタ13が実装された配線基板71が搭載されている。配線基板71には、上方へ接続口を突出させた状態でコネクタ13が固定されており、その配線基板71に形成された配線回路にコネクタ13の充電台用接続端子が接続され、電気的に導通可能とされている。コネクタ13は、シャーシ55の充電台支持部58と反対側へ所定角度(例えば、10〜30度。但し、本発明は、この傾斜角度に限定されるものではない。)傾くように設けられている。
更に、コネクタ13には、エスカッション72が着脱可能に装着されている。エスカッション72は、コネクタ13の基部を囲うように覆う角錐形状をなすスカート部72aと、このスカート部72aの下端から側方へ突出するように形成された枠状のフランジ部72bとを有している。
また、スライドベース63の保持穴66は、2つのガイド穴65,65の間であって、第1の辺63aからガイド穴65までの距離よりも離れた位置に設けられている。この保持穴66に対応するシャーシ55の、スライドベース63の摺動方向の両端における保持穴66と対向する位置には、鋼球67の移動によってクリック感を生じさせる2つの長穴74,74が設けられている。
シャーシ55の充電台支持部58の先端縁は、下部ケース23のテラス部57に対応させて円弧状に形成されている。この充電台支持部58において、スライドベース63と反対側には、ガイドブロック64が2本の固定ねじ91,91で締め付けられてシャーシ55に固定されている。そのため、充電台支持部58の所定位置には、固定ねじ75が螺合される2つのねじ孔76,76が設けられている。
ガイドブロック64は、支持部材の第1の具体例を示すサポートバー81を、スライドベース63のスライド方向と直交する方向(本体部10の前後方向)へ進退移動可能に支持する部材である。また、サポートバー81は、コネクタ13に接続された携帯音楽機器を、側方である背面側から支えるように支持する部材である。このサポートバー81は、ガイドブロック64によって本体部10の前後方向へ摺動可能に支持されるガイド部82と、このガイド部82に連続して設けられると共にそのガイド部82から離れた位置で携帯音楽機器に側方から接触してその携帯音楽機器を支える接触部83と、を有している。
サポートバー81のガイド部82は、互いに平行に配置された2本のガイド軸82,82とされている。この2本のガイド軸82,82の先端(一端)に逆V字形に形成された接触部83の一具体例を示す折り曲げ軸83が連続して設けられている。折り曲げ軸83は、2本のガイド軸82,82の軸方向と交差する方向に所定の角度で傾斜されている。この折り曲げ軸83が2本のガイド軸82,82となす傾斜角度は、コネクタ13の傾斜角度と同等の角度に設定することが好ましい。この実施例では、接触部である折り曲げ部83の先端は、携帯音楽機器の背面に点接触することになる。なお、折り曲げ軸83は、この実施例では逆V字形状に形成したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、逆U字形状、ペン先形状、その他の形状を適用できることは勿論である。
また、サポートバー81は、この実施例では、断面形状が円形をなす針金状の部材を折り曲げることによって形成したが、その断面形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形、四角形、六角形、八角形その他各種形状のものを適用することができる。更に、支持部材は、針金状の部材を折り曲げて形成したサポートバー81に限定されるものでもなく、例えば、ブックエンドのような板状の部材を用いることができることは勿論である。なお、サポートバー81の材質としては、例えば、鋼材等の金属に防錆のメッキ処理を施したものが好適であるが、メッキ処理のない金属であってもよく、また、強度が十分に高いものであれば、エンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
ガイドブロック64は、左右対称をなす形状とされており、2本のガイド軸82,82が摺動可能に挿通される2つの軸受部84,84と、両軸受部84,84間を連結して一体に設けられた連結部85とを有している。2つの軸受部84,84は、それぞれ前後方向に所定の隙間をあけて設けた前軸受片84a及び後軸受片84bを有している。これら前後の軸受片84a,84bには、それらの軸心線を共通にする軸受穴86が前後方向へ貫通するように設けられている。更に、各軸受部84には、軸受穴86と直交する方向に延在された挿通穴87がそれぞれ設けられている。これらの挿通穴87に挿通される固定ねじ91のねじ軸部をシャーシ55のねじ孔76に螺合して締め付けることにより、ガイドブロック64がシャーシ55に固定されている。
ガイドブロック64の連結部85は、前後の軸受片84a,84bよりは高くないが、軸受部84の固定部よりも高く形成されている。この連結部85には、軸受穴86と直交する方向に延在された2つのねじ穴88が設けられている。これらのねじ穴88に螺合される固定ねじ92によって付勢部材の一具体例を示す板ばね95がガイドブロック64に締付固定されている。板ばね95は、ガイドブロック64に固定するための固定部95aと、この固定部95aの長手方向両側に連続して設けた軸付勢部95b,95bと、固定部95aの長手方向と直交する幅方向の一側に連続して設けた球付勢部95cとを有している。
板ばね95の固定部95aは、ガイドブロック64の連結部85に見合う大きさとされており、固定ねじ92によってガイドブロック64に固定されている。このとき、固定部95aの両側に形成された2つの軸付勢部95b,95bは、ガイドブロック64の各軸受部84の前後の軸受片84a,84b間に介在されている。そして、前後の軸受片84a,84bを前後方向に貫通するサポートバー81の2本のガイド軸82,82をそれぞれ上方から下方へ向けて付勢している。この板ばね95の軸付勢部95bの付勢力に基づくガイド軸82と前後の軸受片84a,84bの軸受穴86,86との間に生じる摩擦力により、サポートバー81がその位置で固定される。
また、板ばね95の球付勢部95cは、ガイドブロック64に固定した状態において、2つの前軸受片84a,84a間に介在される。球付勢部95cは、断面形状がL字状をなしており、先端側の平面部がスライドベース63の保持穴66を覆い、その保持穴66内に収納されている鋼球67を上方から下方へ向けて付勢している。
充電台カバー61は、下部ケース23のテラス部57の上に重ね合わされる略半円形をなすベース部101と、このベース部101の背面側に連続された衝立部102とを有している。ベース部101の略中央には、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6B等の携帯音楽機器が載置される載置部101aが設けられている。載置部101aは、コネクタ13の傾斜角度と略同程度の角度によって後方へ傾斜されており、コネクタ13に装着された携帯音楽機器の下面の広い部分と接触可能に構成されている。この載置部101aには、シャーシ55の充電台支持部58に設置されたコネクタ13が貫通する貫通穴103が設けられている。
充電台カバー61のベース部101に設けた貫通穴103は、スライドベース63の移動距離に対応して本体部10の左右方向へ延びる長穴として形成されている。この貫通穴103には、コネクタ13に装着されたエスカッション72のスカート部72aが貫通されている。そして、エスカッション72のスカート部72aを貫通して、コネクタ13の先端部がベース部101の上方へ突出している。この貫通穴103の領域内においてコネクタ13が本体部10の左右方向へ移動可能であって、第1の位置と第2の位置とを選択的に取り得るようになっている。
第1の位置は、コネクタ13がベース部101の略中央に配置される位置である。また、第2の位置は、第1の位置から左右方向へ所定距離だけ移動した位置である。この実施例では、第2の位置は、音楽機能付きクレードル装置2を正面から見て、第1の位置の左側に設定されている。このようにコネクタ13を第1の位置と第2の位置とに選択可能に移動可能に構成した理由は、端末用接続端子を有する端末用コネクタの取付位置が携帯音楽機器によって異なることによるものである。
前記ガイドブロック64と板ばね95とにより、コネクタ13に対してサポートバー81を進退移動可能であって任意の位置で固定可能な自在鉤機構が構成されている。
図8は、本発明に用いて好適な携帯音楽機器の第1の具体例を示すもので、携帯音楽プレーヤ6Aを底面側から見た斜視図である。この携帯音楽プレーヤ6Aは、厚みT1が比較的薄く形成された略直方体をなす中空の筐体からなる外装ケース201を備えている。外装ケース201の正面部201aには、アイコンやウインドウその他を画面に表示する表示装置202と、その表示装置202に表示されたアイコンやウインドウ等を選択する円盤型の操作キー203が配置されている。また、外装ケース201の底面部201bには、携帯音楽プレーヤ6Aと外部の携帯音楽機器(例えば、本発明の音楽機能付きクレードル装置2等)と電気的に接続するための端末用コネクタ28Aが配置されている。
携帯音楽プレーヤ6Aの端末用コネクタ28Aは、音楽機能付きクレードル装置2の充電台用コネクタ13と接続可能な雌型コネクタである。この端末用コネクタ28Aは、外装ケース201の底面部201bにおいて、その中央から長手方向の一側へ距離eだけ偏倚した位置に配置されている。この偏倚量eは、コネクタ13の移動量に対応しており、略同一長さに設定されている。このように端末用コネクタ28Aの取付位置が携帯音楽プレーヤ6Aの中心から偏倚している理由は、外装ケース201が薄型であって収納スペースが狭いために、バッテリー装置やその他の装置を収納するスペースとの関係から生じたものである。
この携帯音楽プレーヤ6Aを音楽機能付きクレードル装置2に装着(セット)する場合には、そのコネクタ13を、中央から一側へ偏倚した第2の位置に移動させる。このように、コネクタ13を第2の位置にセットすることにより、端末用コネクタ28Aが中心から偏倚している携帯音楽プレーヤ6Aであっても、これを音楽機能付きクレードル装置2の略中央にセットすることができ、セット時に、携帯音楽プレーヤ6Aが中心から偏倚していることによる見た目のアンバランスを解消することができる。
図9は、本発明に用いて好適な携帯音楽機器の第2の具体例を示すもので、音楽再生機能付き携帯電話機6Bを底面側から見た斜視図である。この音楽再生機能付き携帯電話機6Bは、厚みT2が比較的厚く形成された略直方体をなす中空の筐体からなる外装ケース211を備えている。外装ケース211の正面部211aには、アイコンやウインドウ、入力情報その他を画面に表示する表示装置212と、その表示装置212に表示されたアイコンやウインドウ等を選択したり所望の情報を入力するテンキー213が配置されている。また、外装ケース211の底面部211bには、音楽再生機能付き携帯電話機6Bと外部の携帯音楽機器(例えば、本発明の音楽機能付きクレードル装置2等)と電気的に接続するための端末用コネクタ28Bが配置されている。
音楽再生機能付き携帯電話機6Bの端末用コネクタ28Bは、音楽機能付きクレードル装置2の充電台用コネクタ13と接続可能な雌型コネクタである。この端末用コネクタ28Bは、外装ケース211の底面部211bにおいて、その中央と略一致するように中央位置に配置されている。このように端末用コネクタ28Bの取付位置が音楽再生機能付き携帯電話機6Bの中心と一致している理由は、外装ケース211が厚型であって収納スペースが広いために、バッテリー装置やその他の装置を収納するスペースに比較的余裕があるからである。
この音楽再生機能付き携帯電話機6Bを音楽機能付きクレードル装置2に装着(セット)する場合には、そのコネクタ13を、中央に設定された第1の位置に移動させる。このように、コネクタ13を第1の位置にセットすることにより、端末用コネクタ28Bが中心と一致している音楽再生機能付き携帯電話機6Bを音楽機能付きクレードル装置2の略中央にセットすることができ、セット時に、音楽再生機能付き携帯電話機6Bが中心から偏倚していることによる見た目のアンバランスが生ずるのを防止することができる。
また、充電台カバー61の衝立部102は、上部ケース11の切欠き部56に見合う形状とされている。即ち、衝立部102は、上部ケース11への組立時、その切欠き部56を同様の面形状によって塞ぐことができる形状とされている。具体的には、衝立部102は、上部ケース11の前面部11aと同じ曲面によって後方へ傾斜されている。衝立部102の背面には、前面部11aに設けた切欠き部56の縁を衝立部102との間で保持する保持部105が設けられている。
更に、衝立部102には、サポートバー81の2本のガイド軸82,82が挿通される2つのガイド穴106,106が設けられている。2つのガイド穴106,106は、2本のガイド軸82,82の間隔と略同じ距離を保って平行に設けられている。この2つのガイド穴106,106の高さは、ガイドブロック64に設けた左右2組の軸受穴86,86の高さと略同一の高さに設定されている。
下部ケース23と充電台カバー61とエスカッション72の材質としては、例えば、ABS等のエンジニアリングプラスチックが好適であるが、アルミニウム合金や鉄鋼その他の金属を用いることもできる。シャーシ55とスライドベース63の材質としては、例えば、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC),ステンレス鋼板(SUS),構造用鋼板等の金属が好適であるが、ABS等のエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。段付きねじ68とサポートバー81と板ばね95の材質としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)が好適である。また、ガイドブロック64の材質としては、例えば、ポリアセタール(POM)等のエンジニアリングプラスチックが好適である。
次に、前述したような構成を有する音楽機能付きクレードル装置2の組立工程を説明する。この音楽機能付きクレードル装置2は、例えば、次のような工程を経ることによって簡単に組み立てることができる。まず、シャーシ55の充電台支持部58にスライドベース63を取り付ける。スライドベース63には、予め配線基板71を取り付けておき、その配線基板71にはコネクタ13を実装しておくようにする。そして、充電台支持部58にスライドベース63を載置した後、スライドベース63の2つのガイド穴65,65にそれぞれ段付きねじ68のねじ軸部を差し込み、先端のねじ部をねじ孔76にそれぞれ螺合させて締付固定する。
これと共に、第3の段付きねじ68を、充電台支持部58の先端側に位置するねじ孔76に螺合し、ねじ軸部の外周面をスライドベース63の第1の辺63aに接触させる。これにより、スライドベース63がシャーシ55に対して、予め設定された所定の範囲内で直線的にスライド可能に支持される。そして、スライドベース63の保持穴66に鋼球67を収納する。
次に、充電台支持部58のスライドベース63の背面側に、ガイドブロック64を配置し、2本の固定ねじ91,91で締付固定する。これは、ガイドブロック64の2つの軸受部84,84に設けた挿通穴87に固定ねじ91のねじ軸部を挿通し、その先端をねじ孔76に螺合させて締付固定することによってなされる。その後、ガイドブロック64に板ばね95を重ね合わせ、この板ばね95の両側部に設けた2つの軸付勢部95b,95bを各軸受部84に設けた前後の軸受片84a,84b間に介在させると共に、先部に設けた球付勢部95cでスライドベース63の保持穴66を塞ぐようにする。これにより、保持穴66に保持されている鋼球67が、球付勢部95cの付勢力によってシャーシ55に押圧される。
この際、充電台支持部58の鋼球67と対応する位置には2つの長穴74,74が所定間隔をあけて設けられている。そのため、鋼球67は2つの長穴74,74のいずれか一方に嵌まり込み、スライドベース63を適度な力でロックしている。この2つの長穴74,74の位置が、コネクタ13を所定の力で保持する第1の位置及び第2の位置となっている。そして、鋼球67が1つの長穴74を飛び出して他の長穴74に入り込む際の力により、第1の位置と第2の位置との間でコネクタ13の位置を切り替える際のクリック感を生じさせている。
次に、スライドベース63とガイドブロック64が組み立てられたシャーシ55を、下部ケース23の凹陥部23a内に収納する。そして、スライドベース63に固定されているコネクタ13にエスカッション72を装着した後、テラス部57に充電台カバー61を重ね合わせる。この重ね合わせの状態で、下部ケース23を上部ケース11に組み立てる。この際、上部ケース11の内部には、左右のスピーカ14,15と、所定の制御回路が実装されている配線基板110その他の必要な装置、機構等を予め収納しておくようにする。
その後、図2に示すように、上部ケース11の下方に下部ケース23を臨ませ、充電台カバー61の衝立部102を上部ケース11の切欠き部56に嵌め合わせる。そして、所定の数の固定ねじを用いて下部ケース23と上部ケース11を、下部ケース23の下側から締付固定する。これにより、図1に示すように、前面の略中央に充電台を設けた音楽機能付きクレードル装置2の組立作業が完了する。
このように組み立てられた音楽機能付きクレードル装置2は、例えば、図6及び図7に示すようにして使用することができる。図6は、図8に示したような構成を有する携帯音楽プレーヤ6Aを、音楽機能付きクレードル装置2の充電台12に設けたコネクタ13に接続した状態を示すものである。この場合、携帯音楽プレーヤ6Aの端末側コネクタ28Aは、外装ケース201の中心から幅方向の一側へ距離eだけ偏倚した位置に設けられている。そのため、充電台12のコネクタ13は、充電台12の中心から一側へ偏倚した位置である第2の位置に移動させておくようにする。
これにより、コネクタ13とコネクタ28Aの結合位置は充電台12の中心から一側へ距離eだけ偏倚しているが、外装ケース201を充電台12の中心、即ち、音楽機能付きクレードル装置2の中央に配置することができる。そのため、充電台12への装着時における、見た目のアンバランスが生ずるのを防止して、携帯音楽プレーヤ6Aを音楽機能付きクレードル装置2の中央にバランスよくセットすることができる。
また、図7は、図9に示したような構成を有する音楽再生機能付き携帯電話機6Bを、音楽機能付きクレードル装置2の充電台12に設けたコネクタ13に接続した状態を示すものである。この場合、音楽再生機能付き携帯電話機6Bの端末側コネクタ28Bは、外装ケース211の中心と略一致した位置に設けられている。そのため、充電台12のコネクタ13は、中央の第1の位置に移動させて同じく充電台12の中心にセットしておくようにする。
これにより、充電台12の中心に音楽再生機能付き携帯電話機6Bを配置することができる。そのため、充電台12への装着時における、見た目のアンバランスが生ずるのを防止して、音楽再生機能付き携帯電話機6Bを音楽機能付きクレードル装置2に対してバランスよくセットすることができる。
これらの場合において、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bの背面は、図11〜図16で示すように、支持部材の一具体例を示すサポートバー81の接触部である折り曲げ部83で背面側から支えるようにする。この場合、充電台12に装着される携帯音楽機器が、例えば、外装ケースの厚みが薄い携帯音楽プレーヤ6Aである場合には、図13に示すように、サポートバー81を前進させ、折り曲げ部83の略全体が携帯音楽プレーヤ6Aの背面の略全体に接触するようにサポートバー81の固定位置を調整する。また、充電台12に装着される携帯音楽機器が、例えば、外装ケースの厚みが厚い音楽再生機能付き携帯電話機6Bである場合には、図16に示すように、サポートバー81を後退させ、折り曲げ部83の略全体が音楽再生機能付き携帯電話機6Bの背面の略全体に接触するようにサポートバー81の固定位置を調整する。
このように、充電台12に載置される携帯音楽機器の厚さが異なっている場合や、携帯音楽機器のコネクタから支持される背面までの距離が異なる場合、或いは携帯音楽機器の外形に対して接続コネクタの左右方向の位置が異なる場合の複数機種を載置する場合においても、支持部材の調整が容易であって、デザイン的にも優れた音楽機能付きクレードル装置を提供することができる。
図11〜図13は、充電台12に携帯音楽プレーヤ6Aを載置した状態を示している。この場合、携帯音楽プレーヤ6Aの厚みT1は薄く、しかも、コネクタ13の中心から外装ケース201の背面までの距離S1が短くなっている。更に、外装ケース201の中心TCに対してコネクタ13の中心C0が、距離eだけ左側に偏倚(オフセット)している。図17〜図19は、図11〜図13に対応しており、支持部材であるサポートバー81の動作を説明する図である。即ち、図17は、シャーシ55に固定されたガイドブロック64と、このガイドブロック64に摺動可能に支持されたサポートバー81と、このサポートバー81の2本のガイド軸82,82を付勢する板ばね95を表した平面図である。また、図18は、同じくガイドブロック64とサポートバー81と板ばね95を表した正面図、図19は同じく側面図である。
また、図14〜図16は、充電台12に音楽再生機能付き携帯電話機6Bを載置した状態を示している。この場合、音楽再生機能付き携帯電話機6Bの厚みT2は厚く(T2>T1)、しかも、コネクタ13の中心から外装ケース211の背面までの距離S2が長くなっている(S2>S1)。一方、外装ケース211の中心TCに対してコネクタ13の中心C0が一致している。図20は、図14〜図16に対応しており、支持部材であるサポートバー81を後退させた状態を示す平面図である。
次に、図17〜図20を参照して、サポートバー81の動作について説明する。サポートバー81の2本のガイド軸82,82は、ガイドブロック64の2つの軸受部84,84の前後の軸受片84a,84bによってそれぞれ摺動可能に支持されている。これと同時に、板ばね95の2つの軸付勢部95b,95bによって付勢力PSが加えられている。そのため、サポートバー81が摺動するときには、ガイド軸82と2つの挿通孔86,86との間の摩擦係数μ1と、ガイド軸82と板ばね95の軸付勢部95bとの間の摩擦係数μ2とによって抗力FRが発生する。
いま、図19に示すように、サポートバー81の2本のガイド軸82,82付近に、矢印A方向又は矢印B方向に力FA又は力FBを加えるものとする。この場合には、サポートバー81は、適度な大きさの摩擦抵抗によるロスを保ちつつ、容易に移動して、任意の位置に位置調整することができる。
ここで、図12及び図15に示すように、充電台側のコネクタ13に携帯音楽プレーヤ6A又は音楽再生機能付き携帯電話機6Bを接続し、その背面をサポートバー81の接触部である折り曲げ部83によって側方から支持する。そして、携帯音楽プレーヤ6A及び音楽再生機能付き携帯電話機6Bの上部に設けられている操作キー203又は213を操作するために押圧したものとする。そうすると、後述する理由によって、サポートバー81の2本のガイド軸82,82は、ガイドブロック64の2つの軸受部84,84の前後の軸受片84a,84bによって、いわゆる「食い込み」状態になり、強固に固定される。
その結果、携帯音楽プレーヤ6A等の操作キー203等を押圧した力は、サポートバー81によって確実に受け止められ、携帯音楽プレーヤ6A等を後方へ移動することなく、操作キー203等を操作する力として使われる。そのため、操作キー203等を確実に操作できると共に、操作フィーリングを非常に良いものとすることができる。また、携帯音楽プレーヤ6A等の下部に内蔵されている端末側コネクタ28A又は28Bに対して無理な機械的力が作用しないため、そのコネクタ28A等の破損を防ぐことができる。
今、仮にサポートバー81が無い状態を考えると、携帯音楽プレーヤ6Aの操作キー203を押圧した力は、携帯音楽プレーヤ6Aを後方へ移動させることに使われる。そのため、操作キー203を押圧したとしても、携帯音楽プレーヤ6Aを後方へ移動させるのみで終わってしまうか、或いは、場合によっては携帯音楽プレーヤ6Aを後方へ移動させつつ、かろうじて操作キー203を押圧する力として使われる。その結果、非常に操作フィーリングの悪いものになってしまう。しかも、端末側コネクタ28Aに対して無理な機械的力が作用するので、充電台側コネクタ13や端末側コネクタ28Aの破損を招くおそれも考えられる。
このように、本発明の音楽機能付きクレードル装置2によれば、支持部材であるサポートバー81の位置を調整するときは、サポートバー81のガイド部である2本のガイド軸82,82の近傍を操作することにより、そのサポートバー81を任意の位置に容易に移動することができる。また、携帯音楽プレーヤ6A等を充電台12に載置支持したときにはサポートバー81が強固に固定され、携帯音楽プレーヤ6A等の操作キー203等を押圧操作したときにはコネクタ13,28A,28Bに無理な力を作用させることがない。そのため、コネクタ13,28A,28Bの破損を防ぐことができると共に、フィーリング良く操作キー203,213を押圧操作することを可能とすることができる。
次に、サポートバー81やガイドブロック64等の各部材に加わる力量関係について物理的に説明する。今、説明を簡略化するために、本来サポートバー81の左右2箇所にあるガイド軸82を1箇所にあるものと考える。サポートバー81の左右2つのガイド部の支持構造は同一であるため、その部分の力量関係は、左右の軸受部に挿通している2つのガイド軸82,82に、サポートバー81全体に加わる半分の力が作用していると考えることができる。
以後、特別に説明のない限り、力量関係の説明については軸受部の1箇所について説明する。
今、サポートバー(支持部材)81に力2FAが加わるとすると、一方のガイド軸82には力FAが加わる。
ここで、説明を容易にするために、サポートバー81に加わる力の作用を3種類に分けて説明する。その1は、ガイド軸82の軸受穴86の中心線上に力を加える場合(回転モーメントが発生しない場合)、その2は、ガイド軸82の軸受穴86の中心線から離れた位置に力を加える場合(回転モーメントが発生する場合、そのうち、その1において板ばねのばね力が無い場合)、その3は、ガイド軸82の軸受穴86の中心線から離れた位置に力を加える場合(回転モーメントが発生する場合、そのうち、その2において板ばねのばね力が有る場合)である。
その1.ガイド軸82の軸受穴86の中心線上に力を加える場合(回転モーメントが発生しない場合)
図19及び図27Aにおいて、サポートバー81の下部に、ガイドブロック64の前後の軸受片84a,84bに設けた各軸受穴86,86の中心線の延長線上に矢印Aの方向に向かう力FAを加えると、その力FAが抗力FR以上である場合、サポートバー81は矢印A方向に移動する。
この場合、図27Aにおいて、サポートバー81の支持部には、板ばね95によるガイド軸82に対する付勢力PSと、サポートバー81の自重Wが軸受穴86の下面に加わっている。このときガイドブロック64は、付勢力PSと自重Wを受けても下方に移動することがなく釣り合っているため、それぞれの軸受穴86の下面には反力R1及び反力R2が加わっている。この反力R1及びR2は、R1+R2=PS+Wとなる。
また、ガイド軸82と軸受穴86との間に生ずる摩擦係数をμ1とし、ガイド軸82と板ばね95との間に生ずる摩擦係数をμ2とすると、抗力FRは、
FR=μ1・R1+μ1・R2+μ2・PS
=μ1(R1+R2)+μ2・PS
となる。ここで、R1+R2=PS+Wであるから、
FR=μ1(PS+W)+μ2・PS
となる。
自重Wよりも板ばね95による付勢力PSが遥かに大きい場合は、W<<PSとなって、
FR=PS(μ1+μ2) ・・・・・(1)
となるので、抗力FRは、板ばね95による付勢力PSと摩擦係数μ1,μ2によって決まる。
実際の作用においては、サポートバー81を携帯音楽機器の外形に合わせて調整する場合、サポートバー81の下部を押し引きすることによって、サポートバー81を容易に任意の位置に移動することが可能となる。しかも、板ばね95によって発生する摩擦抵抗に基づく適度なロスにより、調整時に移動し過ぎることもない。更に、調整を終了した場合に、そのままの状態を維持し続ける効果も合わせて持っているので、従来例に比べて非常に調整がし易いという効果がある。
その2.ガイド軸82の軸受穴86の中心線から離れた位置に力を加える場合(回転モーメントが発生する場合、そのうち、その1において板ばねのばね力が無い場合)
実際の具体的実施例では、回転モーメントM1と板ばね95の作用が関係しているが、ここでは理解を容易にするため、板ばね95の無い状態を考え、回転モーメントM1のみの作用を考える。
図27Bにおいて、サポートバー81のガイド軸82を支持する軸受穴86の中心線から距離L1だけ離れた位置に力FCを加えると、回転モーメントM1が発生する。サポートバー81は、ガイド軸82が軸受穴86によって軸方向へ摺動自在に支持されている一方、回転方向には2箇所の軸受部84,84によって規制されているので、サポートバー81が回転することはない。従って、サポートバー81には、回転モーメントM1と同等の回転モーメントMRが2箇所の軸受部84,84に発生し、その反力によって釣り合いが保たれている、と考えられる。
このとき、外部から加えた力FCによって発生する回転モーメントM1は、
M1=FC・L1
であり、前後に位置する2つの軸受穴86,86の間に、仮に回転中心Oを考える。そして、2つの軸受穴86,86の間の距離をL2、前側軸受穴86と回転中心Oとの距離をX、回転中心Oと後側軸受穴86との距離をL2−Xとすると、各軸受穴86,86における反力R1及び反力R2による回転モーメントMRは、
MR=X・R1+(L2−X)・R2
となる。
また、ガイドブロック64は移動しないので、反力R1と反力R2は釣り合っている。即ち、
R1=R2
である。よって、
MR=L2・R1=L2・R2
である。これが回転モーメントM1と釣り合っているから、
M1=MR
M1=L2・R1=L2・R2
である。よって、
R1=R2=M1/L2=(L1/L2)FC
となる。
更に、ガイド軸82と軸受穴86との間に生ずる摩擦係数をμ1とすると、
FR=μ1・R1+μ1・R2
=2μ1・R1
=2μ1(L1/L2)FC
となる。よって、2μ1(L1/L2)が1以上であると、外部から力FCを加えれば加える程、サポートバー81が動かなくなる。いわゆる「食い込み現象」が起きて、サポートバー81は外部からの力FCによっては動かなくなる。
ここで、L1=L2の場合を考えると、
R1=R2=FC
FR=2μ1・FC
となる。従って、摩擦係数μ1の値が0.5以上であると、サポートバー81は、食い込み現象が生じて動かなくなる。
その3.ガイド軸82の軸受穴86の中心線から離れた位置に力を加える場合(回転モーメントが発生する場合、そのうち、その2において板ばねのばね力が有る場合。これにより、自在鉤機構の機能が発揮される。)
その2の状態から、更に、板ばね95による付勢力PSを加えた場合を考える。
図27Cにおいて、サポートバー81のガイド軸82を支持する前後2つの軸受穴86,86の中間地点に板ばね95による付勢力PSが付加されたとする。この場合、回転モーメント的には、その2で説明している2つの軸受穴86,86の間の回転中心Oを板ばね95による付勢力PSの印加点と考えると、この板ばね95の付勢力PSによる回転モーメントは考えなくてよくなり、結果としてその2の場合と同じになる。
更に、サポートバー81のガイド軸82を支持する前後2つの軸受穴86,86の中間地点には、板ばね95による付勢力PSが加わっており、各軸受穴86にはそれぞれPS/2の力が加わる。このとき、後側の反力R2にはPS/2が加わり、一方、前側の反力R1にはPS/2が差し引かれる。そのため、付勢力PSが印加された後の反力を、それぞれR1´、R2´とすると、
R1´=R1−PS/2
R2´=R2+PS/2
となる。
ここで、ガイド軸82と板ばね95との間に生ずる摩擦係数をμ2とすると、抗力FRは、
FR=(μ1・R1´)+(μ1・R2´)+μ2・PS
=μ1・R1+μ1・R2+μ2・PS
=2μ1・R1+μ2・PS
=2μ1(L1/L2)FC+μ2・PS
となる。
従って、この場合には、その2の状態よりも更に食い込み易い条件となる。これにより、自在鉤機構の機能が発揮される。
次に、充電台用コネクタ13の動作について、図21〜図26を参照して詳細に説明する。図21及び図22は、スライドベース63に搭載されたコネクタ13が、音楽機能付きクレードル装置2を正面から見て右側に移動し、音楽機能付きクレードル装置2の略中央に設けた充電台12の中心SCとコネクタ13の中心COが一致した状態を示している。また、図23及び図24は、コネクタ13が、音楽機能付きクレードル装置2を正面から見て左側に移動し、充電台12の中心SCに対してコネクタ13の中心COが距離eだけ左にずれた(オフセット)状態を示している。
図25に示すように、シャーシ55の充電台支持部58には、段付きねじ68が螺合される雌ねじ部121aを有する突起部121が3箇所に設けられている。各突起部121の雌ねじ部121aに段付きねじ68のオスねじ部68aを螺合することにより、3個の段付きねじ68がシャーシ55の所定位置に固定されている。段付きねじ68には、水平ガイド部122aと上ガイド部122bが設けられている。2つの段付きねじ68の水平ガイド部122aは、スライドベース63のガイド穴65に摺動可能に挿通されている。また、突起部121の上面からなる下ガイド部121bと、段付きねじ68の上ガイド部122bとがおりなす間隔Vは、スライドベース63の板厚Uよりも若干大きめに形成されている。
このスライドベース63が、上下方向に所定の隙間をあけて拘束されつつ、左右方向に摺動可能とされている。このスライドベース63のガイド穴65と段付きねじ68との組み合わせを2箇所に設け、スライドベース63の1つのガイドエッジ部である第1の辺63aと段付きねじ68との組み合わせを1箇所に設けることにより、スライドベース63が、上下方向(図25においてz方向)及び前後方向(図25においてy方向)における位置規制と、x軸、y軸及びz軸回りの回転が規制され、左右方向(図25においてx方向)のみ移動可能に構成されている。
同じく、シャーシ55の充電台支持部58には、2つの長穴74,74が設けられている。そして、スライドベース63には保持穴66が設けられており、このスライドベース63が左方向に移動したときに、保持穴66の中心が左側に位置する長穴74の中心と一致するようになされている。また、スライドベース63が右方向に移動したときには、保持穴66の中心が右側に位置する長穴74の中心と一致するようになされている。この保持穴66に、前述した鋼球67が収納されている。
保持穴66の直径は鋼球67の直径よりも若干大きく形成されており、保持穴66内で鋼球67が、回転したり上下方向へ移動したりできるようになっている。これに対して、2つの長穴74,74の幅は、鋼球67の直径よりもある程度小さく形成されており、保持穴66の中心と長穴74の中心が一致した場合にも、鋼球67が長穴74内に入り込まないようになされている。
このような構成において、ガイドブロック64に固定された板ばね95の球付勢部95cが保持穴66の上方に延在されている。この板ばね95の球付勢部95cは、鋼球67の上部に当接され、その鋼球67をシャーシ55側へ付勢している。このとき、鋼球67は、シャーシ55に設けた長穴74の縁に係止され、板ばね95の付勢力によってスライドベース63が停止された状態にある。そのため、この状態では、スライドベース63は左右方向へ移動することができない。
この状態から、スライドベース63に、例えば、右方向(x方向)の力を加えて移動しようとすると、保持穴66に僅かながらのクリアランスを持って嵌合されている鋼球67にも右方向に向かう力が加わる。このとき鋼球67は、板ばね95の球付勢部95cにより押圧されてシャーシ55の一方の長穴74に係合されて停止しているが、鋼球67に側方(右方向)からの力が加えられることにより、板ばね95の付勢力に抗して上方へ移動しつつ右方向にも移動する。図26A及び図26Bは、この状態を示している。
更に、右方向の力を加えてスライドベース63を右方向へ移動させると、今度は、他方の長穴74の位置に鋼球67が来たときに、板ばね95の付勢力によって鋼球67は、あたかも長穴74に自ら入って行くかのようにその長穴74に係合される。このように鋼球67は、スライドベース63を移動させつつ、保持穴66の中心と長穴74の中心が一致する位置まで移動し、その位置で停止される。図26B及び図26Cは、この状態を示している。このような鋼球67の動作により、スライドベース63を移動させる際のクリック感が得られ、スライドベース63の移動を明確に認識することができる。
このような動作は、スライドベース63を逆方向(左方向)へ移動させる場合も同様である。そして、同様にして鋼球67が、スライドベース63の保持穴66と共に一方の長穴74から他方の長穴74へと移動する。その結果、同じく良好なクリック感を生じさせて、スライドベース63の移動を明確に認識することができる。そして、節度良い動きと相まって、心地よいクリック感を伴った操作感を得ることができる。
かくして、図14〜図16及び図21に示す状態では、充電台側コネクタ13の中心COと音楽機能付きクレードル装置2の中心SCが一致している。このように、音楽再生機能付き携帯電話機(携帯音楽機器)6Bの端末側コネクタ28Bの中心TCが音楽機能付きクレードル装置2の本体部10の中心SCに合っている場合には、この位置でコネクタ13を使用することにより、見た目上のアンバランスを生ずることなく、デザイン上の美しさを維持することができる。
また、図11〜図13及び図23に示す状態では、充電台側コネクタ13の中心COが、音楽機能付きクレードル装置2の中心SCに対して距離eだけ左にずれている(オフセット)。このように、携帯音楽プレーヤ(携帯音楽機器)6Bの端末側コネクタ28Aの中心TCが音楽機能付きクレードル装置2の本体部10の中心SCに対して左に距離eだけずれている場合においても、このずれた位置でコネクタ13を使用することにより、見た目上のアンバランスを生ずることなく、デザイン上の美しさを維持することができる。
なお、図11〜図16において、充電台カバー61には角型の貫通穴103が設けられており、その貫通穴103を貫通するコネクタ13が左右方向へ移動可能な構成となっている。この場合、コネクタ13よりも貫通穴103の方が大きいため、コネクタ13が移動すると、その反対側に穴が開いてしまうことになる。これを防ぐための部材がエスカッション72である。このエスカッション72は、コネクタ13の移動範囲よりも大きなフランジ部72bを有している。このエスカッション72がコネクタ13と一緒に移動するため、コネクタ13が移動したときにも貫通穴103を完全に閉じることができ、内部を常に隠すことができる。
また、図21及び図23に示すように、シャーシ55には、スライドベース63の移動を検出する位置検出器130が設けられている。この位置検出器130のプローブ(検出部)131は、スライドベース63の移動方向の一端に臨むように配置されている。今、図21に示すように、スライドベース63が右に移動すると、プローブ131が押圧されてスイッチがオン(ON)になる。また、図23に示すように、スライドベース63が左に移動すると、プローブ131の押圧が解除され、スイッチがオフ(OFF)に切り替わる。この位置検出器130から発生するスライドベース63の位置情報に基づいて、例えば、充電台12に装着される携帯音楽機器の種類を音楽機能付きクレードル装置2で表示するように構成することにより、携帯音楽機器の種類を視覚によって認識することが可能となる。この位置情報の使用形態は、この実施例に限定されるものでないことは勿論である。
図28A〜28Cは、本発明の音楽機能付きクレードル装置に係る支持部材の第2から第4までの実施の例を示している。図28Aに示す支持部材141は、支持部材の第2の実施の例を示すもので、2本のガイド軸142,142からなるガイド部と、平板状の支持板143からなる接触部とから構成されている。2本のガイド軸142,142は、所定の距離を隔てて互いに平行に配置されており、それぞれの一端に支持板143の下端部が連結されている。2本のガイド軸142,142の一端には、その先端から適度な長さの位置で折り曲げることによって連結部142aが形成されている。この2本のガイド軸142,142の各連結部142aに、支持板143が一体的に固定されている。支持板143は、比較的幅の広い長方形の板体からなり、広い面積で携帯音楽機器と接触できるようにしている。
図28Bに示す支持部材151は、支持部材の第3の実施の例を示すもので、3本のガイド軸152,152,152からなるガイド部と、小片状の支持片153からなる接触部とから構成されている。3本のガイド軸152,152,152は、所定の距離を隔てて互いに平行に配置されており、それぞれの一端に支持片153の下端部が連結されている。3本のガイド軸152,152,152は、その略中間の位置で折り曲げることによって略L字状に形成されている。そして、3本のガイド軸152,152,152の各連結部152aの先端に、支持片153が一体的に固定されている。
図28Cに示す支持部材161は、支持部材の第4の実施の例を示すもので、2本のガイド脚162,162からなるガイド部と、平板状の支持板163からなる接触部とから構成されている。2本のガイド脚162,165と支持板163は、一体物の長い板体によって形成されている。そして、長方形をなす支持板163の一辺から2本のガイド脚162,165が、所定の距離を隔てて互いに平行に突出されている。更に、2本のガイド脚162,165は、支持板163が延在する方向と交差する方向(傾斜角度は、80〜60度程度が好ましいが、これに限定されるものではない。)に折り曲げられ、全体として略L字状に形成されている。また、2本のガイド脚162,165は、その断面形状が四角形とされている。
このような構成を有する支持部材141,151,161によっても、本発明によれば、前記実施例と同様の効果を得ることができる。この場合、接触部である支持板143、支持片153及び支持板163は、携帯音楽機器の背面に面接触又は線接触して当該携帯音楽機器を支えることになる。なお、支持部材141のガイド軸142及び支持部材151のガイド軸152の材質としては、例えば、ステンレス鋼等の金属が好適であるが、エンジニアリングプラスチックを用いることもできる。更に、支持部材141の支持板143及び支持部材151の支持片153の材質としては、例えば、エンジニアリングプラスチックが好適であるが、アルミニウム合金等の金属を用いることもできる。また、支持部材161の材質としては、例えば、エンジニアリングプラスチックを用いることができ、また、アルミニウム合金等の金属を用いることもできる。
(3)ACアダプタの外観構成
図1に示すように、ACアダプタ3は、その断面が台形状でなる四角柱の本体部31を有している。本体部31の内部には、電源アンプ部32とサブウーファー33が設けられている。更に、本体部31の前面31aには、電源のオンオフを切り換える電源スイッチ34と、内部に隠蔽されたサブウーファー33のための発音ポート35が設けられている。発音ポート35によってサブウーファー33から出力される低音域を一段と増大させた状態で出力することにより、音楽機能付きクレードル装置2の左用スピーカ14及び右用スピーカ15から出力される中高音域に対して低音域を補うようになされている。
このACアダプタ3は、サブウーファー33によって低音域をカバーするだけで中高音域を出力する必要がない。そのため、本体部31の表面からサブウーファー33を外部へ露出することのない隠蔽構造とすることができ、これにより、ACアダプタ3にサブウーファー33が内蔵されていることをユーザに対して意識させることがないようになされている。因みにACアダプタ3は、サブウーファー33のウーファー前面を本体部31によって隠蔽した、いわゆるケルトン方式のスピーカ装置を構成しているが、ケルトン方式に限らず、バスレフ型やダブルバスレフ型等その他種々のスピーカ装置を構成するようにしても良い。
(4)音楽機能付きクレードル装置の外観構成
図1に示すように、音楽機能付きクレードル装置2は、三角柱状をなす中空の本体部10を有している。この本体部10の長手方向における略中央部分から側方に、半円形の薄板状に形成された充電台12が突出している。この充電台12には、雄形のコネクタ13が設けられている。このコネクタ13には、後述する音楽再生機能付き携帯電話機や携帯音楽プレーヤ等の携帯音楽機器の端末用接続端子を有する雌形のコネクタが着脱可能に接続される。
また、音楽機能付きクレードル装置2は、充電台12の両側に、主に中高音域を出力する左用スピーカ14と右用スピーカ15が配置されている。これら左用スピーカ14及び右用スピーカ15が、本体部10の内部に収納されている。本体部10は、山形をなす上部ケース11と、この上部ケース11の下方に開口した下面を覆う下部ケース23と、これら上部ケース11及び下部ケース23の左右に開口した側面をそれぞれ覆う左右の側面ケース24A,24Bとを有している。上部ケース11は、前方に傾斜した前面部11aと、後方に傾斜した後面部11bと、を有している。そして、前面部11aには、その略全面に亘って多数の小さな孔が設けられている。多数の小さな孔は、左右のスピーカ14,15から出力された音を外部に放出することを主目的とするものである。
更に、音楽機能付きクレードル装置2には、上部ケース11の右側上端部にファンクションスイッチ16と、ボリュームのアップボタン17及びダウンボタン18が設けられている。ファンクションスイッチ16とアップボタン17及びダウンボタン18は、適当な間隔をあけて横並びに配置されている。また、上部ケースの左側上端部には、電源投入状態を示すパワー表示LED(Light Emitting Diode)19と、外部の携帯音楽機器からライン入力端子(後述する)を介して接続されたことを示すラインイン表示LED20と、赤外線リモコン(図示せず)を介してサラウンド機能がオン状態になったことを示すサラウンド表示LED21が設けられている。
なお、音楽機能付きクレードル装置2には、上部ケース11の内側に赤外線リモコン用の受光部22が設けられている。この受光部22が赤外線リモコンからの制御命令を受光することにより、その制御命令に基づいて上述のサラウンド機能をオン状態にし得るようになっている。
また、図3に示すように、音楽機能付きクレードル装置2は、上部ケース11の背面右側下端部に、ACアダプタ3からDCケーブル4を介してDC12[V]の直流電力の供給を受けるためのDC入力端子25が設けられている。そして、DC入力端子25の隣に、外部の図示しない携帯音楽機器から音楽信号を入力するためのライン入力端子26が設けられている。これにより、音楽機能付きクレードル装置2は、ACアダプタ3からDCケーブル4を介してDC12[V]の直流電力の供給を受けている。
この状態で、充電台12のコネクタ13に、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6B等の携帯音楽機器が載置される。この場合、例えば、図6に示すように、充電台12のコネクタ(雄コネクタ)13に携帯音楽プレーヤ6Aの下端部に設けられているコネクタ(雌コネクタ)28Aを接続すると、コネクタ13の充電台用接続端子とコネクタ28Aの端末用接続端子とが電気的に接続される。これにより、携帯音楽プレーヤ6Aに内蔵されている電源装置への充電が開始される。また、図7に示すように、充電台12のコネクタ(雄コネクタ)13に音楽再生機能付き携帯電話機6Bの下端部に設けられているコネクタ(雌コネクタ)28Bを接続すると、コネクタ13の充電台用接続端子とコネクタ28Bの端末用接続端子とが電気的に接続される。これにより、音楽再生機能付き携帯電話機6Bに内蔵されている電源装置への充電が開始される。
このように携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bの端末用接続端子と充電台12の充電台用接続端子とが電気的に接続された場合、音楽機能付きクレードル装置2には、携帯音楽プレーヤ6A等が内部メモリ等から再生した音楽信号が充電台用接続端子を経由して入力される。その結果、左用スピーカ14及び右用スピーカ15から、それぞれ入力された音楽信号に基づいて音楽が出力される。
(5)音楽機能付きクレードル装置及びACアダプタの回路構成
次に、音楽機能付きクレードル装置2及びACアダプタ3の回路構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4に示すように、音楽機能付きクレードル装置2は、MPU(Micro Processing Unit)40によって全体を統括制御している。このMPU40が、ACアダプタ3からDCケーブル4を介して供給される直流電力に基づいて全体を動作させるようになされている。
音楽機能付きクレードル装置2は、充電台用接続端子を有するコネクタ13を介して接続された携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bの端末用接続端子を有するコネクタ28A(又は28B)から供給される音楽信号をインプットセレクタ41に入力するようになされている。また、ライン入力端子26を介して接続された外部の携帯音楽機器56から供給される音楽データもまた、インプットセレクタ41に入力される。
インプットセレクタ41は、デフォルトとしてコネクタ13を介して携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bから供給される音楽信号を優先的に選択してA/D(Analog/Digital)コンバータ42へ送出するようになされている。また、MPU40は、ファンクションスイッチ16に対するユーザの押下操作に応じて入力されるキー信号S1に基づき、外部の携帯音楽機器6Cから供給される音楽信号を優先的に選択してA/Dコンバータ42へ送出することができるようになされている。即ち、音楽機能付きクレードル装置2は、ファンクションスイッチ16に対する押下操作に応じて携帯音楽プレーヤ6A等からの音楽信号若しくは外部の携帯音楽機器56からの音楽信号の何れかを選択的に切り換え得るようになされている。
A/Dコンバータ42は、音声信号をデジタルの音楽データMD1に変換し、その音楽データMD1をデジタルシグナルプロセッサ43へ送出する。デジタルシグナルプロセッサ43は、音楽データMD1に対して所定のデジタル信号処理を施した後、D級アンプ44及びデジタルインタフェーストランスミッタ45へ送出する。D級アンプ44は、デジタル信号処理の施された音楽データMD1に対して増幅処理を施し、その結果得られる左チャンネル用音楽信号及び右チャンネル用音楽信号に応じた音を左用スピーカ14及び右用スピーカ15からそれぞれ出力する。
デジタルインタフェーストランスミッタ45は、デジタル信号処理の施された音楽データMD1をシリアルデータ形式の音楽データSMD1に変換し、これを重畳回路46へ送出する。なお、音楽機能付きクレードル装置2のMPU40は、ボリュームのアップボタン17及びダウンボタン18に対するユーザの押下操作に対応して入力される制御信号S2に基づき、デジタルシグナルプロセッサ43から出力される音声データMD1の音量レベルを調整し得るようになされている。因みに、MPU40は、音楽機能付きクレードル装置2の動作状態に応じたLED制御信号S3を出力することにより、パワー表示LED19とラインイン表示LED20とサラウンド表示LED21を点灯制御し得るようになされている。
また、ACアダプタ3は、商用交流電源から供給されるAC100[V]の交流電力を電源アンプ部32のスイッチング電源回路50に入力する。スイッチング電源回路50は、AC100[V]の交流電力をDC12[V]の直流電力DPに変換し、その直流電力DPを分離回路51を介してMPU52とレシーバ53とD級アンプ54に供給する。
更に、ACアダプタ3は、スイッチング電源回路50から供給されるDC12[V]の直流電力DPを、分離回路51を介してDC端子55からDCケーブル4及びDC入力端子25を経由して直流電力DPを音楽機能付きクレードル装置2に供給する。これにより、コネクタ13(充電台用接続端子)13を介して携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bが充電されるようになっている。
ところで、音楽機能付きクレードル装置2は、ACアダプタ3からDCケーブル4を経由して直流電流を受け取る一方、重畳回路46によりその直流電流に対して音楽データSMD1を重畳させてACアダプタ3へ伝送するようになされている。この場合、図5に示すように、音楽機能付きクレードル装置2では、コンデンサC1を介して音楽データSMD1をDCケーブル4経由で伝送し、ACアダプタ3ではDCケーブル4経由で伝送された音楽データSMD1をコンデンサC2を介して分離回路51に入力するようになされている。
このようにしてACアダプタ3は、コンデンサC1及びコンデンサC2によって音楽機能付きクレードル装置2からDCケーブル4を介して音楽データSMD1を受け取ることができる。これにより、ACアダプタ3は、分離回路51によって直流電流と音楽データSMD1とを分離して当該音楽データSMD1だけを抽出し、これをレシーバ53へ送出する。レシーバ53は、音楽データSMD1を復調処理する等して元の音楽データMD1を復元し、その復元した音楽データMD1のうち低周波成分だけをフィルタリングする。これにより低音域成分MD1Lを得ることができ、この低音域成分MD1LをD級アンプ54へ送出する。D級アンプ54は、低音域成分MD1Lを増幅し、その低音域成分MD1Lに応じた低音をサブウーファー33から出力するようになされている。
更に、音楽機能付きクレードル装置2は、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bによって再生されて供給された音楽データMD1をデジタルシグナルプロセッサ43によってデジタル信号処理し、その後、メモリ47に蓄積し得るようになされている。これにより、音楽機能付きクレードル装置2は、メモリ47から音楽データMD1を読み出して音楽データMD1に応じた音を、D級アンプ44を介して左用スピーカ14及び右用スピーカ15から出力することもできるようになされている。
このように音楽機能付きクレードル装置2は、メモリ47に多くの種類の音楽データMD1を蓄積し、その音楽データMD1を再生して左用スピーカ14と右用スピーカ15から出力することができる。そのため、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bが接続されていない場合でも、音楽機能付きクレードル装置2は、それ自体が音楽データMD1の再生手段でかつ音声出力手段にもなり得るようになされている。
また、音楽機能付きクレードル装置2は、コネクタ(充電台用接続端子)13を介して接続された音楽再生機能付き携帯電話機6Bに着呼があったことをMPU40が検出し得るようになされている。その結果、音楽データMD1を再生して左用スピーカ14及び右用スピーカ15から出力中に音楽再生機能付き携帯電話機6の着呼を検出した場合、デジタルシグナルプロセッサ43を介して音楽データMD1の音量レベルを強制的に下げると共に、着信音を左用スピーカ14及び右用スピーカ15から出力し得るようになされている。その後、音楽機能付きクレードル装置2では、ハンズフリー状態に遷移させ、着信音の出力後、相手音声についても左用スピーカ14及び右用スピーカ15から出力し得るようになされている。
以上の構成において、音響システム1では、音楽機能付きクレードル装置2のコネクタ13を介して接続された携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bにより再生された音楽データMD1に対応する音の中高音域を左側スピーカ14及び右側スピーカ15から出力すると共に、音楽データMD1に対応する音の低音域をACアダプタ3のサブウーファー33から出力することができるので、左側スピーカ14及び右側スピーカ15だけからでは出力できない低音域をサブウーファー33で十分にカバーすることができる。
このとき音響システム1では、左側スピーカ14及び右側スピーカ15の搭載された音楽機能付きクレードル装置2を、例えばテーブルの上に設置し、本体部31の内部にサブウーファー33が収納されたACアダプタ3をテーブルの下に設置することにより、見かけ上もユーザに対してサブウーファー33の存在を一切感じさせることなく低音域から中高音域までの豊かな音響環境を提供することができる。
特に、ACアダプタ3は、サブウーファー33が指向性のない低音域だけを出力するようになされているため、そのサブウーファー33を本体部31の内部に隠蔽することができ、これによりユーザに対して、あたかも音楽機能付きクレードル装置2の左側スピーカ14及び右側スピーカ15だけで低音域から中高音域までの音を出力しているかのように体感させることができる。
なお、ACアダプタ3は、ポート35でチューニングした低音域成分MD1Lの音しか出力せず、またサブウーファー33を本体部31により全て覆うようにしたことにより、デジタルフィルタリングによってフィルタリングし切れなかった中高音域がサブウーファー33から仮に出力されてしまっても、その中高音域が本体部31から外部へ殆ど漏れてしまうことがなく、機械的なフィルタリング構造によって低音域だけを確実に出力することができる。
また、音響システム1では、電源供給ラインであるDCケーブル4によりACアダプタ3から音楽機能付きクレードル装置2へ直流電力DPを供給することができるだけでなく、その音楽機能付きクレードル装置2からACアダプタ3へ音楽データSMD1を伝送することができる構造としたことにより、直流電力DP用の電源ラインと音楽データSMD1用の信号線とを2つ設ける必要がなく、全体としての構造を簡素化することができる。従って、音響システム1では、一般的なDCケーブル4によって音楽機能付きクレードル装置2とACアダプタ3とを接続することができるため、ACアダプタ3を用いるのではなく、サブウーファー33が搭載されていない一般的なACアダプタ(図示せず)をDCケーブル4によって接続することも可能であり、使い勝手を一段と向上させることができる。
以上の構成によれば、音響システム1では、音楽機能付きクレードル装置2の左用スピーカ14及び右側スピーカ15により中高音域を出力すると共に、ACアダプタ3に収納されたサブウーファー33により低音域を出力することができるので、音楽機能付きクレードル装置2をサブウーファー33によって大型化することなく、かつユーザに対してサブウーファー33の存在を感じさせることなく、表現豊かなリスニング環境を提供することができる。
(6)その他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、携帯音楽プレーヤ6Aや音楽再生機能付き携帯電話機6Bによって再生される音楽信号に基づく音を音楽機能付きクレードル装置2の左側スピーカ14及び右側スピーカ15と、ACアダプタ3のサブウーファー33から出力させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、半導体メモリ内蔵型又はハードディスク内蔵型の携帯オーディオプレーヤや、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯音楽機器によって再生される音楽信号やラジオ番組の音を音楽機能付きクレードル装置2の左側スピーカ14及び右側スピーカ15と、ACアダプタ3のサブウーファー33とから出力させるようにしても良い。
また、上述の実施の形態においては、2.1チャンネルの音響システム1における音楽機能付きクレードル装置2に対して左用スピーカ14及び右側スピーカ15を2個設け、ACアダプタ3にサブウーファー33を1個設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、音楽機能付きクレードル装置2に対して2個以上の複数個のスピーカを設けたり、ACアダプタ3に対して複数個のザブウーファーを設けるようにしても良い。
更に、外部の携帯音楽機器56としてはノートブック型パーソナルコンピュータやPDA等の携帯音楽機器を用いることができる。この場合、ノートブック型パーソナルコンピュータやPDAが有するスピーカから出力する音に加えて、ACアダプタ3のサブウーファー33によって低音域を出力することができる。これによりその、低音域が十分に出力された表現豊かな音響空間を提供することができる。
また、上述の実施の形態においては、電源アダプタとしてACアダプタ3を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限定されることがなく、電源アダプタとして音楽機能付きクレードル装置2に対して所定電圧レベルの直流電力を供給するDC−DCアダプタを用いるようにしても良い。
更に、上述の実施の形態においては、音楽機能付きクレードル装置2がライン入力端子26を介して外部の携帯音楽機器を接続し、当該外部の携帯音楽機器から音楽信号を入力し得るようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、音楽機能付きクレードル装置2に対して着脱自在なメモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)メモリを介して音楽信号を入力するようにしても良い。
以上説明したが、本願発明によれば、携帯音楽プレーヤや音楽再生機能付き携帯電話機等(携帯音楽機器)を接続するためのコネクタと、それら携帯音楽機器を載置するための充電台或いは筐体を備え、コネクタが左右に移動可能となるので、コネクタの左右の位置が異なった複数の携帯音楽機器を音楽機能付きクレードル装置に載置する場合でも、その音楽機能付きクレードル装置の中心と載置される携帯音楽機器の中心を一致させることが可能となった。また、中心のみならず、デザイン上必要とされる相対位置に、音楽機能付きクレードル装置と携帯音楽機器を配置することが可能となった。
また、携帯音楽プレーヤや音楽再生機能付き携帯電話機等(携帯音楽機器)を接続するためのコネクタと、それら携帯音楽機器を背面から支えるための支持部材(サポートバー)を備え、支持部材が前後に移動可能となるので、携帯音楽機器の外形が異なる場合や、携帯音楽機器の外形に対してのコネクタの位置が異なる場合でも、携帯音楽機器の背面をしっかりと支えることが可能となる。そのため、携帯音楽機器の前面にある操作キーや操作ボタン等を操作した場合の携帯音楽機器のぐらつきを抑えることが可能となり、操作感の向上を図り、コネクタの損傷を防止することが可能となる。
更に、音楽機能付きクレードル装置において、支持部材を筐体に対して前後に摺動可能とするガイド部分を備え、支持部材の携帯音楽機器の背面を支える部分とガイド部分との位置を離すことにより、携帯音楽機器の操作キーや操作ボタン等を押圧した場合でも、支持部材が移動せず、また、支持部材を前後に移動したい場合には、支持部材のガイド部分付近を操作することによって、支持部材を移動自在とすることが可能となる。そのため、特別なストッパねじの操作やその他の支持部材のロック、アンロック等の操作を必要とせず、簡単に支持部材を前途に移動可能としながらも、携帯音楽機器の前面にある操作ボタン等を操作した場合は、しっかりと携帯音楽機器を支持することが可能となった。
また、音楽機能付きクレードル装置において、コネクタの左右の移動を検出するスイッチ或いは位置検出装置等を備え、携帯音楽機器を接続する際にコネクタの位置を左右に移動したことを検出することができる。そのため、接続している携帯音楽機器の種類を判別することが可能となり、充電台或いは筐体に接続している携帯音楽機器の種類の表示を音楽機能付きクレードル装置に表示することができる。更に、接続している携帯音楽機器の特性に合わせて音楽機能付きクレードル装置の音響特性を変化させることも可能となる。更にまた、これらのみならず、信号処理の方法(例えば、デジタルとアナログ、映像を出す場合と音を出す場合など)や、プレイモードの変化(例えば、1曲から100曲までを順番に流す、1曲を繰り返すなど)等の応用が可能である。
1…音響システム、 2…音楽機能付きクレードル装置、 3…ACアダプタ、 4…DCケーブル、 5…ACプラグ、 6A…携帯音楽プレーヤ(携帯音楽機器)、 6B…音楽再生機能付き携帯電話機(携帯音楽機器)、 10…本体部、 11…上部ケース、 11a…前面部、 12…充電台、 13…充電台用コネクタ、 14…左用スピーカ、 15…右用スピーカ、 28A,28B…端末側コネクタ、 55…シャーシ、 61…充電台カバー、 63…スライドベース、 64…ガイドブロック、 65…ガイド穴、 66…保持穴、 67…鋼球(球体)、 68…段付きねじ、 71…配線基板、 72…エスカッション、 74…長穴、 81…サポートバー(支持部材)、 82…ガイド軸(ガイド部)、 83…折り曲げ軸(接触部)、 84…軸受部、 95…板ばね(付勢部材)、 95b…軸付勢部、 95c…球付勢部、 101…ベース部、 102…衝立部、 141,151,161…支持部材、 203,213…操作キー