===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
対応する補正値の順に所定方向に沿って複数の補正用パターンを印刷し、
各前記補正用パターンの一部分を検査して、この検査結果に基づいて複数の前記補正用パターンの中から第1の補正用パターンを選択し、
各前記補正用パターンの前記一部分とは別の部分を検査して、この検査結果に基づいて複数の前記補正用パターンの中から第2の補正用パターンを選択し、
前記第1の補正用パターンの対応する補正値と、前記第2の補正用パターンの対応する補正値との間から印刷時に用いられる補正値を決定する
補正値の決定方法であって、
前記第1の補正用パターンを選択する際に2以上の補正用パターンが候補になる場合には、前記所定方向の一方側の補正用パターンを優先して選択し、
前記第2の補正用パターンを選択する際に2以上の補正用パターンが候補になる場合には、前記所定方向の逆側の補正用パターンを優先して選択する。
このような補正値の決定方法によれば、印刷に適した補正値を決定することができる。
また、前記補正用パターンは、第1パターン・第2パターン・第3パターン及び第4パターンから構成され、前記第1の補正用パターンを選択する際には、各前記補正用パターンの前記第1パターンと前記第2パターンとの境界が検査され、前記第2の補正用パターンを選択する際には、各前記補正用パターンの前記第3パターンと前記第4パターンとの境界が検査されることが望ましい。また、前記補正用パターンが印刷されるとき、(1)媒体を搬送方向の所定の位置に搬送し、(2)所定間隔で並ぶ複数のノズルからなるノズル列の搬送方向上流側のノズルによって前記第1パターンを前記媒体に形成し、(3)前記第1パターンの形成後、前記ノズル列の前記搬送方向の長さよりも短い目標搬送量にて前記媒体を前記搬送方向に搬送し、(4)前記ノズル列の搬送方向下流側のノズルによって前記第1パターンと境界を形成する前記第2パターンを前記媒体に形成するとともに、前記ノズル列の搬送方向上流側のノズルによって前記第3パターンを前記媒体に形成し、(5)前記第2パターンの形成後、前記ノズル列の前記搬送方向の長さよりも短い目標搬送量にて前記媒体を前記搬送方向に搬送し、(6)前記ノズル列の搬送方向下流側のノズルによって前記第3パターンと境界を形成する第4パターンを前記媒体に形成することが望ましい。このように形成された補正用パターンによれば、目標搬送量に対応する補正値を決定することができる。
また、前記第1パターンが形成されてから前記第4パターンが形成されるまでの間の前記媒体の搬送量が前記ノズル列の前記搬送方向の長さよりも長いことが望ましい。このような場合に特に有効である。
また、前記第1パターンを形成するノズルと前記第3パターンを形成するノズルとが共通し、前記第2パターンを形成するノズルと前記第4パターンを形成するノズルとが共通することが望ましい。これにより、第1パターンと第2パターンの境界と、第3パターンと第4パターンの境界を、同様に形成することが可能になる。
また、前記第1パターン、前記第2パターン、前記第3パターン及び前記第4パターンは、複数のドット列から構成されており、前記境界は、前記ドット列の方向と交差する方向であることが望ましい。これにより、境界の状態の判断が容易になる。また、前記第1パターンと前記第2パターンとの境界の方向と、前記第3パターンと前記第4パターンとの境界の方向は、交差することが望ましい。これにより、ノズルのインク吐出速度に差があっても、適した補正値を決定することができる。
また、前記補正用パターンの前記一部分及び前記別の部分の検査には、前記所定方向に移動可能なセンサが用いられ、前記第1の補正用パターンを選択する際には、前記センサが前記所定方向の一方向へ移動し、前記第2の補正用パターンを選択する際には、前記センサが前記所定方向の逆方向へ移動することが望ましい。これにより、検査速度を高めることができる。
対応する補正値の順に所定方向に沿って複数の補正用パターンを印刷し、
各前記補正用パターンの一部分を検査して、この検査結果に基づいて複数の前記補正用パターンの中から第1の補正用パターンを選択し、
各前記補正用パターンの前記一部分とは別の部分を検査して、この検査結果に基づいて複数の前記補正用パターンの中から第2の補正用パターンを選択し、
前記第1の補正用パターンの対応する補正値と、前記第2の補正用パターンの対応する補正値との間から印刷時に用いられる補正値を決定し、
印刷を行うため前記媒体を搬送する際に、目標搬送量を補正し、補正された前記目標搬送量に応じて前記媒体を搬送する
印刷方法であって、
前記第1の補正用パターンを選択する際に2以上の補正用パターンが候補になる場合には、前記所定方向の一方向側の補正用パターンを優先して選択し、
前記第2の補正用パターンを選択する際に2以上の補正用パターンが候補になる場合には、前記所定方向の逆方向側の補正用パターンを優先して選択する。
このような印刷方法によれば、高品質が印刷を行うことができる。
===印刷システムの構成===
次に、印刷システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態の記載には、コンピュータプログラム、及び、コンピュータプログラムを記録した記録媒体等に関する実施形態も含まれている。
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを備えている。プリンタ1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。
コンピュータ110にはプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置120にユーザインタフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、媒体に画像を印刷する装置を意味し、例えばプリンタ1が該当する。また、「印刷制御装置」とは、印刷装置を制御する装置を意味し、例えば、プリンタドライバをインストールしたコンピュータが該当する。また、「印刷システム」とは、少なくとも印刷装置及び印刷制御装置を含むシステムを意味する。
===プリンタの説明===
<インクジェットプリンタの構成について>
図2は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図3Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図3Bは、プリンタ1の全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
本実施形態のプリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、紙Sをプリンタの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモータ32によって駆動される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
検出器群50には、リニアエンコーダ51、ロータリーエンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニアエンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリーエンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙中の紙の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、紙の有無を検出する。そして、光学センサ54は、キャリッジ31によって移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況に応じて、紙の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。例えば、CPU62は、目標搬送量をユニット制御回路64へ指令し、この指令に基づいてユニット制御回路64は搬送ユニット20の搬送モータ22を駆動する。
<印刷動作について>
図4は、印刷時の処理のフロー図である。以下に説明される各処理は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
印刷命令受信(S001):まず、コントローラ60は、コンピュータ110からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ110から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙処理・搬送処理・ドット形成処理等を行う。
給紙処理(S002):給紙処理とは、印刷すべき紙をプリンタ内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラ23まで送る。続いて、コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、紙と対向している。
ドット形成処理(S003):ドット形成処理とは、移動方向に沿って移動するヘッドからインクを断続的に吐出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31を移動方向に移動させる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッドからインクを吐出させる。ヘッド41から吐出されたインク滴が紙上に着弾すれば、紙上にドットが形成される。移動するヘッド41からインクが断続的に吐出されるので、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドット列(ラスタライン)が形成される。なお、このドット形成処理のことを「パス」とも言う。また、n回目のドット形成処理のことを「パスn」とも言う。
搬送処理(S004):搬送処理とは、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータを駆動し、搬送ローラを回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
排紙判断(S005):コントローラ60は、印刷中の紙の排紙の判断を行う。印刷中の紙に印刷すべきデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に紙に印刷する。
排紙処理(S006):印刷中の紙に印刷すべきデータがなくなれば、コントローラ60は、排紙ローラを回転させることにより、その紙を排紙する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
印刷終了判断(S007):次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の紙に印刷を行うのであれば、印刷を続行し、次の紙の給紙処理を開始する。次の紙に印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
===搬送処理時の搬送誤差とその補正===
<紙の搬送について>
図5は、搬送ユニット20の構成の説明図である。図面に示されるように、インクジェットヘッド41の移動方向は図中の左右方向で、紙Sはそれと交差する上流側から下流側の方向(搬送方向)に搬送される。
搬送ユニット20は、コントローラ60からの搬送指令に基づいて、所定の駆動量にて搬送モータ22を駆動させる。搬送モータ22は、指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。搬送モータ22は、この駆動力を用いて搬送ローラ23を回転させる。つまり、搬送モータ22が所定の駆動量を発生すると、搬送ローラ23は所定の回転量にて回転する。搬送ローラ23が所定の回転量にて回転すると、紙は所定の搬送量にて搬送される。
紙の搬送量は、搬送ローラ23の回転量に応じて定まる。本実施形態では、搬送ローラ23が1回転すると、紙が1.25インチ搬送されるものとする(つまり、搬送ローラ23の周長は、1.25インチである)。このため、搬送ローラ23が半回転すると、紙が0.625インチ搬送される。
したがって、搬送ローラ23の回転量が検出できれば、紙の搬送量も検出可能である。そこで、搬送ローラ23の回転量を検出するため、ロータリーエンコーダ52が設けられている。
ロータリーエンコーダ52は、スケール521と検出部522とを有する。スケール521は、所定の間隔毎に設けられた多数のスリットを有する。このスケール521は、搬送ローラ23に設けられている。つまり、スケール521は、搬送ローラ23が回転すると、一緒に回転する。そして、搬送ローラ23が回転すると、スケール521の各スリットが検出部522を順次通過する。検出部522は、スケール521と対向して設けられており、プリンタ本体側に固定されている。ロータリーエンコーダ52は、検出部522をスリット521が通過する毎に、パルス信号を出力する。搬送ローラ23の回転量に応じてスリット521が順次検出部522を通過するので、ロータリーエンコーダ52の出力に基づいて、搬送ローラ23の回転量が検出される
そして、例えば搬送量1.25インチで紙を搬送する場合、搬送ローラ23が1回転したことをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、コントローラ60が搬送モータ22を駆動する。このように、コントローラ60は、目標とする搬送量(目標搬送量)に応じた回転量になることをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、搬送モータ22を駆動して、紙を目標搬送量にて搬送する。
<搬送誤差について>
ところで、ロータリーエンコーダ52は、直接的には搬送ローラ23の回転量を検出するのであって、厳密にいえば、紙Sの搬送量を検出していない。このため、搬送ローラ23の回転量と紙Sの搬送量が一致しない場合、ロータリーエンコーダ52は紙Sの搬送量を正確に検出することができず、搬送誤差(検出誤差)が生じる。搬送誤差としては、DC成分の搬送誤差及びAC成分の搬送誤差の2種類がある。
DC成分の搬送誤差とは、搬送ローラが1回転したときに生じる一定量の搬送誤差のことである。このDC成分の搬送誤差は、製造誤差等によって搬送ローラ23の周長が個々のプリンタ毎に異なることが原因と考えられる。つまり、DC成分の搬送誤差は、設計上の搬送ローラ23の周長と実際の搬送ローラ23の周長が異なるために生じる搬送誤差である。このDC成分の搬送誤差は、搬送ローラが1回転するときの開始位置に関わらず、一定になる。
AC成分の搬送誤差とは、搬送時に用いられる搬送ローラの周面の場所に応じた搬送誤差のことである。AC成分の搬送誤差は、搬送時に用いられる搬送ローラの周面の場所に応じて、異なる量になる。つまり、AC成分の搬送誤差は、搬送開始時の搬送ローラの回転位置と搬送量に応じて、異なる量になる。
図6は、AC成分の搬送誤差の説明用グラフである。横軸は、基準となる回転位置からの搬送ローラ23の回転量である。縦軸は、累積搬送誤差を示す。このグラフを微分すれば、その回転位置で搬送ローラが搬送しているときに生じる搬送誤差が導き出される。ここでは、基準位置における累積搬送誤差をゼロとし、DC成分の搬送誤差もゼロとしている。
搬送ローラ23が基準位置から1/4回転すると、δ_90の搬送誤差が生じ、紙は1.25/4インチ+δ_90にて搬送される。但し、搬送ローラ23が更に1/4回転すると、-δ_90の搬送誤差が生じ、紙は1.25/4インチ−δ_90にて搬送される。
AC成分の搬送誤差が生じる原因としては、例えば、以下の3つが考えられる。
まず第1に、搬送ローラの形状による影響が考えられる。例えば、搬送ローラが楕円形状や卵型である場合、搬送ローラの周面の場所に応じて、回転中心までの距離が異なっている。そして、回転中心までの距離が長い部分で媒体を搬送する場合、搬送ローラの回転量に対する搬送量が多くなる。一方、回転中心までの距離が短い部分で媒体を搬送する場合、搬送ローラの回転量に対する搬送量が少なくなる。
第2に、搬送ローラの回転軸の偏心が考えられる。この場合も、搬送ローラの周面の場所に応じて、回転中心までの長さが異なっている。このため、たとえ搬送ローラの回転量が同じであっても、搬送ローラの周面の場所に応じて、搬送量が異なることになる。
第3に、搬送ローラの回転軸と、ロータリーエンコーダ52のスケール521の中心との不一致が考えられる。この場合、スケール521が偏心して回転することになる。この結果、検出部522が検出するスケール521の場所に応じて、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が異なることになる。例えば、検出されるスケール521の場所が搬送ローラ23の回転軸から離れている場合、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が少なくなるため、搬送量が少なくなる。一方、検出されるスケール521の場所が搬送ローラ23の回転軸から近い場合、検出されたパルス信号に対する搬送ローラ23の回転量が多くなるため、搬送量が多くなる。
上記の原因のため、AC成分の搬送誤差は、図6に示す通り、ほぼサインカーブになる。
<搬送誤差の補正について>
図7は、搬送誤差を補正するための補正値の設定処理のフロー図である。これらの処理は、プリンタの製造時に製造工場内の検査工程において行われる。なお、このとき、検査の対象となるプリンタは、工場内の検査用コンピュータに接続されている。
まず、プリンタは、補正値設定用のテストシートを印刷する(S101)。このテストシートには、複数の補正用パターンが形成される。この補正用パターンは、「パッチパターン」とも呼ばれる。各補正用パターンは、特定の補正値と対応付けられており、形状がそれぞれ異なっている。このテストシートについては、後述する。
次に、検査者は、テストシートを検査し、テストシートの中の複数の補正用パターンの中から最適な形状の補正用パターンを選択する(S102)。検査者は、選択した補正用パターンの番号を、プリンタに接続されたコンピュータに入力する。コンピュータは、選択された補正用パターンの番号に基づいて補正値を決定(S103)し、プリンタのメモリに補正値を記録する(S104)。
これにより、製造工場で製造されたプリンタ毎に、各プリンタに適した補正値が各プリンタのメモリに記録される。そして、補正値をメモリに記憶したプリンタは、梱包されて、出荷される。
そして、プリンタを購入したユーザーの下で印刷が行われる際に、コントローラ60は、メモリから補正値を読み出し、目標搬送量を補正値に基づいて補正し、補正された目標搬送量に基づいて搬送処理を行う。これにより、紙が目標搬送量通りに搬送されるので、印刷画像の画質が向上する。
===参考例===
図8は、参考例のテストシートの印刷の説明図である。この参考例では、ヘッドの搬送方向の長さは1.25インチであり、搬送ローラ23の周面の長さと一致しているものとする。
この参考例のテストシートは、目標搬送量Fに対する補正値を取得するためのものである。ここで、目標搬送量Fは、1.25インチであり、搬送ローラ23の周面の長さと同じである。このため、このテストシートは、搬送ローラ23が1回転したときに生じる搬送誤差(DC成分の搬送誤差)を検出するものでもある。
図中の左側の6つの長方形は、パス1〜パス6のときの紙に対するヘッドの位置を示している。ヘッドの位置を示す長方形の中の数字は、パスの番号を示している。図ではヘッドが移動しているように描かれているが、実際には、紙が搬送されることによって、紙に対するヘッドの位置が変化する。パス1とパス2との間では、目標搬送量F+2Cの搬送処理が行われている。但し、搬送誤差がある場合、図中の目標搬送量通りに紙は搬送されていない。
図中の右側には、テストシートに形成される5個の補正用パターンP1〜P5が描かれている。各補正用パターンは、2個のブロックパターンを有する。あるパスにおいてヘッドの搬送方向上流側ノズルにより上側のブロックパターンが形成され、次のパスにおいてヘッドの搬送方向下流側ノズルにより下側のブロックパターンが形成される。補正用パターン毎に、上側のブロックパターンが形成されてから、下側のブロックパターンが形成されるまでの間に行われる搬送処理の目標搬送量が異なっている。例えば、補正用パターンP1では、2個のブロックパターンを形成する間に目標搬送量F+2Cの搬送処理が行われており、補正用パターンP2では、目標搬送量F+Cの搬送処理が行われている。このため、各補正用パターンは、それぞれ、2個のブロックパターンの間隔が異なっている。
2個のブロックパターンが離れて形成されると、2個のブロックパターンの間の境界に白スジが発生する。一方、2個のブロックパターンが重なって形成されると、2個のブロックパターンの間に黒スジが発生する。
仮に、目標搬送量通りに紙が搬送されたならば、補正用パターンP3には白スジも黒スジも発生しないはずである。しかし、図中のテストシートによれば、目標搬送量Fで紙を搬送したとき、搬送誤差によって目標搬送量Fよりも短く搬送されたため、補正用パターンP3には黒スジが発生している。
検査者は、テストシートを検査する際に、2個のブロックパターンの境界に注目する。そして、検査者は、白スジも黒スジもない補正用パターンP2を、最適な補正用パターンとして選択する。これにより、プリンタのメモリには、補正値として「+1」が記録される。
ユーザー下で印刷が行われる際に、コントローラ60は、目標搬送量Fにて搬送処理を行う場合、メモリに記録されている補正値「+1」に基づいて、目標搬送量をF+Cに補正する。補正された目標搬送量F+Cにて搬送処理が行われれば、搬送誤差によって目標搬送量よりも短く搬送されるため、紙は搬送量Fにて搬送される。すなわち、補正前の目標搬送量通りに紙を搬送することができる。
===本実施形態のヘッドの構成===
前述の参考例では、ヘッドの搬送方向の長さは1.25インチであり、搬送ローラ23の周面の長さと一致していた。しかし、以下に説明する通り、本実施形態のヘッドの搬送方向の長さは、搬送ローラ23の周面の長さよりも短い。
図9は、ヘッドのノズル配置の説明図である。ヘッド41の下面には、4つのノズル列(A列〜D列)が設けられている。各列には、ノズルが90個ずつ設けられている。
各ノズル列の90個のノズルは、搬送方向に沿って、1/120インチの間隔(ノズルピッチ)で並んでいる。A列のノズルに対して、B列のノズルは1/360インチだけ搬送方向上流側に位置している。また、C列及びD列のノズルは、B列のノズルに対して1/360インチだけ搬送方向上流側に位置している。
各ノズル列のノズルは、搬送方向下流側ほど小さい番号が付されている(♯1〜♯90)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯90よりも搬送方向の下流側に位置している。
各ノズルには、それぞれインクチャンバー(不図示)と、ピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張し、ノズルからインク滴が吐出される。
A列のノズルからはシアンインクが吐出され、B列のノズルからはマゼンタインクが吐出され、C列のノズルからはイエローインクが吐出され、D列のノズルからはブラックインクが吐出される。但し、プリンタ製造工場においてテストシートを印刷するときには、検査用のライトマゼンタインクがB列に供給され、B列のノズルからライトマゼンタインクが吐出されて、テストシートが印刷される。
1回のドット形成動作でパターンを形成可能な幅のことを「ヘッドの搬送方向の長さ」と呼んでいる。つまり、「ヘッドの搬送方向の長さ」は、インクを吐出するノズル列の長さを意味し、「ノズルピッチ×ノズル数」として表される。テストシートを印刷する場合のヘッドの搬送方向の長さは、B列のノズル列の長さを意味し、0.75インチ(=1/120インチ×90)である。
このため、本実施形態では、ヘッドの搬送方向の長さ(0.75インチ)は、搬送ローラの周面の長さ(1.25インチ)よりも短い。
===種々の問題点に対する本実施形態の対策===
<ヘッド長さがローラ周面長さよりも短いことによる問題>
図10Aは、ヘッド長さがローラ周面長さよりも短いことによる問題の説明図である。
DC成分の搬送誤差を補正するためには、ヘッドの搬送方向上流側のノズルによりブロックパターンを形成し、搬送ローラ23の1回転分の搬送処理を行い、ヘッドの搬送方向下流側のノズルによりブロックパターンを形成して、補正用パターンを形成する必要がある。
しかし、ヘッドの搬送方向の長さが搬送ローラの周面の長さよりも短い場合、2個のブロックパターンを近接して形成することができない。このため、参考例のように、2個のブロックパターンの間に、検査者が検査すべき境界を形成することができない。また、2個のブロックパターンの間隔は搬送誤差を反映しているが、図に示すように2個のブロックパターンが離れていると、2個のブロックパターンの間隔を判定することも困難である。
図10Bは、この問題に対する本実施形態の対策の説明図である。
本実施形態では、パターンAを形成した後、搬送ローラ23の半回転分の搬送処理を行い、パターンBを形成し、更に搬送ローラ23の半回転分の搬送処理を行い、パターンCを形成し、パターンA〜パターンCからなる補正用パターンを形成している。この補正用パターンであっても、DC成分の搬送誤差を補正するために必要な、搬送ローラ23の1回転分の搬送処理の前後の2個のパターン(パターンA及びパターンC)を有している。
更に、本実施形態によれば、パターンAとパターンBとを近接させて形成でき、パターンBとパターンCとを近接させて形成できる。これにより、パターンAとパターンBとの間や、パターンBとパターンCとの間に、検査者が検査すべき境界を形成することが可能になる。そして、本実施形態によれば、パターンAとパターンBとの間の境界に基づいてパターンAとパターンBとの位置関係を検査でき、パターンBとパターンCとの間の境界に基づいてパターンBとパターンCとの位置関係が検査できるので、間接的にパターンAとパターンCとの位置関係を判定することが可能になる。
<パターンBのAC成分搬送誤差の問題>
DC成分の搬送誤差は、搬送ローラが1回転するときの開始位置に関わらず、一定になる。このため、搬送ローラの1回転分の搬送処理の前後に形成されるパターンAとパターンCとの位置関係は、パターンAを形成したときの搬送ローラの回転位置に影響されることはない。
しかし、本実施形態では、パターンAを形成した後、搬送ローラを1回転させる前に、パターンBを形成している。このため、パターンAとパターンBとの位置関係は、パターンAを形成したときの搬送ローラの回転位置に影響される。
図11Aは、各パターン形成時のAC成分の搬送誤差の説明図である。図11Bは、AC成分の搬送誤差によるパターンBの形成位置の影響の説明図である。
パターンAの形成時の搬送ローラの回転位置が基準位置の場合、搬送ローラを半回転したとき、AC成分の搬送誤差が生じない状態で紙を搬送できる。このため、パターンBは、AC成分の搬送誤差の影響のない状態で形成できる。
一方、パターンAの形成時の搬送ローラの回転位置が基準位置から1/4回転した位置の場合、搬送ローラが半回転したとき、AC成分の搬送誤差の影響によって、目標搬送量よりも少ない搬送量で紙が搬送される。この結果、パターンBは、パターンAに近づいて形成される。また、更に搬送ローラが半回転したとき、AC成分の搬送誤差の影響によって、目標搬送量よりも多い搬送量で紙が搬送される。この結果、パターンCは、パターンBから離れて形成される。
このように、AC成分の搬送誤差の影響のため、図11BのパターンBは、上下に(搬送方向の下流側又は上流側に)位置を変化させることになる。(但し、パターンA及びパターンCの位置関係はAC成分の影響を受けないので、図11BにおいてパターンA及びパターンCの位置は変化しない。)そして、パターンBの搬送方向の位置が変化すると、パターンAとパターンBとの間の境界の状態や、パターンBとパターンCとの間の境界の状態も変化する。
一方、本実施形態では、搬送ローラ23の相対的な回転量はロータリーエンコーダ52により検出できるが、搬送ローラ23が基準位置にあることを検出する原点センサのようなものはなく、搬送ローラ23の絶対的な回転位置は検出していない。このため、本実施形態では、パターンBが上下のいずれに位置を変化させているのか未知の状態で、補正用パターンを判定する必要がある。
このような状況下でDC成分の搬送誤差を補正する補正値を決定するため、本実施形態では、パターンAとパターンBとの間の境界が最適な補正用パターンを選択し、更に、パターンBとパターンCとの間の境界が最適な補正用パターンを選択し、選択された2つの補正用パターンに基づいて補正値を決定する。これにより、パターンBの搬送方向の位置が変化しても、DC成分の搬送誤差に応じた補正値を決定できるようにしている。
<2つのパターンの境界の形状の問題>
参考例の補正用パターンでは、2つのブロックパターンによって境界を形成している。この2つのブロックパターンは、微視的に見ると、移動方向にドットが並ぶ複数のラスタラインから構成されている。このため、2つのブロックパターンの境界は、ラスタラインと平行である。
図12A及び図12Bは、2つのブロックパターンの境界付近の説明図である。図中の実線は、ラスタラインを示しており、実際にはドットが並ぶことにより形成されている。図12Aでは、2つのブロックパターンが近づいて形成された結果、黒スジが生じている。図12Bでは、2つのブロックパターンが離れて形成された結果、白スジが生じている。いずれの境界も、ラスタラインと平行である。そして、前述の参考例では、このような境界において黒スジや白スジの存在を判断することになる。
ところで、ブロックパターンを構成するラスタラインは、ノズルの製造ばらつきや、インクの飛翔方向の乱れ等の影響によって、搬送方向の位置がずれて形成されることがある。この結果、ラスタライン毎に、隣接するラスタラインとの間隔が若干異なることになる。
図12C及び図12Dは、ラスタラインの間隔にばらつきが生じたときの境界付近の説明図である。図12Cでは、2つのブロックパターンが近づいて形成されており、図12Dでは、2つのブロックパターンが離れて形成されている。
ラスタラインの間隔にばらつきが生じると、ブロックパターンの内部にも、ラスタラインが近づいて形成されて黒スジのように見える場所が生じたり、ラスタラインが離れて形成されて白スジのように見える場所が生じたりする。この結果、境界の位置を特定することが困難になり、仮に境界の位置を特定することができても、2つのブロックパターンの境界において黒スジや白スジの存在を判断することが困難になる。また、境界付近のラスタラインの搬送方向の位置のばらつき方によって、境界における黒スジや白スジの存在の判断が異なったものになってしまう。
図12E及び図12Fは、この問題に対する本実施形態の対策の説明図である。図12Eでは、2つのパターンが近づいて形成された結果、黒スジが生じている。図12Fでは、2つのパターンが離れて形成された結果、白スジが生じている。
本実施形態では、2つのパターンの境界の方向を、搬送方向及び移動方向と交差する方向にしている。巨視的に見ると、本実施形態では、2つのパターン(例えばパターンAとパターンB)にそれぞれ斜辺が形成され、この斜辺同士が近接して形成されることによって境界が形成されている。
このように形成することにより、境界は、一方のパターンを構成する複数のラスタラインと、他方のパターンを構成する複数のラスタラインとから構成される。このため、ラスタラインの搬送方向の位置にばらつきが生じても、境界における黒スジや白スジの存在の判断を安定して行うことができる。つまり、これにより、検査者がテストシートを検査し易くなる。
以下、本実施形態について詳述する。
===本実施形態のテストシート===
<テストシートの構成について>
図13は、本実施形態のテストシートの説明図である。
本実施形態のテストシートには、9個の補正用パターンが移動方向に並んで形成されている。各補正用パターンには、それぞれ特定の補正値が対応付けられており、各補正用パターンの上(紙の上端側)には補正値を示す数字が印刷されている。以下の説明において、「補正用パターン(n)」とは、補正値nが対応付けられた補正用パターンを意味する。
<補正用パターンの構成について>
図14は、本実施形態の補正用パターンの説明図である。
各補正用パターンは、パターンA、パターンB及びパターンCから構成され、全体としてはほぼ長方形状である。
パターンAは、台形パターンA1及び逆台形パターンA2から構成される。台形パターンA1及び逆台形パターンA2は、補正用パターンの上側(搬送方向下流側)の2角にそれぞれ形成される。台形パターンA1及び逆台形パターンA2において、上底と下底との間の2辺の一方は、上底及び下底と直角をなし、補正用パターンの側方の一辺を構成する。また、台形パターンA1及び逆台形パターンA2において、上底と下底との間の2辺の他方は、斜辺となる。この斜辺は、搬送方向及び移動方向と交差する方向である。台形パターンA1の斜辺と逆台形パターンA2の斜辺とは、互いに平行である。なお、パターンAの詳細な構成は、後述する。
パターンBは、傾斜パターンB1、長方形パターンB2及び傾斜パターンB3から構成される。傾斜パターンB1は、長方形パターンB2の上側に形成され、平行四辺形状をしている。この平行四辺形の1辺は、補正用パターンの上側の辺を構成する。この辺を挟む2つの平行な辺は、前述の台形パターンA1及び逆台形パターンA2の斜辺と平行である。長方形パターンB2は、補正用パターンの中央部に位置する。この長方形パターンB2の2辺は、補正用パターンの側方の2辺を構成する。傾斜パターンB3は、長方形パターンB2の下側(搬送方向上流側)に形成され、平行四辺形状をしている。この平行四辺形の1辺は、補正用パターンの下側の辺を構成する。この辺を挟む2つの平行な辺は、後述する逆台形パターンC1及び台形パターンC2の斜辺と平行である。傾斜パターンB1と傾斜パターンB3とを比較すると、傾斜する方向が逆になっている。なお、パターンBの詳細な構成は、後述する。
パターンCは、逆台形パターンC1及び台形パターンC2から構成される。逆台形パターンC1及び台形パターンC2は、補正用パターンの下側(搬送方向上流側)の2角にそれぞれ形成される。逆台形パターンC1及び台形パターンC2において、上底と下底との間の2辺の一方は、上底及び下底と直角をない、補正用パターンの側方の一辺を構成する。また、逆台形パターンC1及び台形パターンC2において、上底と下底との間の2辺の他方は、斜辺となる。この斜辺は、搬送方向及び移動方向と交差する方向である。逆台形パターンC1の斜辺と台形パターンC2の斜辺とは、互いに平行である。但し、逆台形パターンC1及び台形パターンC2の斜辺は、台形パターンA1及び逆台形パターンA2の斜辺と交差する方向に形成される。なお、パターンCの詳細な構成は、後述する。
パターンAとパターンBとの間には、境界A1B1、境界A2B1及び境界A1B2が形成される。境界A1B1は、パターンAの台形パターンA1と、パターンBの傾斜パターンB1との間で形成される境界である。境界A2B1は、パターンAの逆台形パターンA2と、パターンBの傾斜パターンB1との間で形成される境界である。境界A1B2は、パターンAの台形パターンA1と、パターンBの長方形パターンB2との間で形成される境界である。境界A1B1及び境界A2B1は、搬送方向と交差する方向に沿って形成され、かつ、移動方向と交差する方向に沿って形成される。一方、境界A1B2は、移動方向に沿って形成されている。なお、後述する通り、検査者は、境界A1B1及び境界A2B1に注目して検査を行うが、境界A1B2には注目しない。
パターンBとパターンCとの間には、境界C1B3、境界C2B3及び境界C1B2が形成される。境界C1B3は、パターンCの逆台形パターンC1と、パターンBの傾斜パターンB3との間で形成される境界である。境界C2B3は、パターンCの台形パターンC2と、パターンBの傾斜パターンB3との間に形成される境界である。境界C1B2は、パターンCの逆台形パターンC1と、パターンBの長方形パターンB2との間に形成される境界である。境界C1B3及び境界C2B3は、搬送方向と交差する方向に沿って形成され、かつ、移動方向と交差する方向に沿って形成される。但し、境界C1B3及び境界C2B3の方向は、境界A1B1及び境界A2B1とも交差する方向である。なお、後述する通り、検査者は、境界C1B3及び境界C2B3に注目して検査を行うが、境界C1B2には注目しない。
いずれの補正用パターンにおいても、パターンAの形成後、紙は搬送ローラの約半回転分の搬送量にて搬送され、パターンBが形成される。但し、補正用パターン毎に、パターンAの形成からパターンBの形成までの間に行われる搬送処理の目標搬送量が異なる。また、パターンBの形成後、紙は搬送ローラの約半回転分の搬送量にて搬送され、パターンCが形成される。但し、補正用パターン毎に、パターンBの形成からパターンCの形成までの間に行われる搬送処理の目標搬送量が異なる。このため、各補正用パターンに応じて、パターンAに対するパターンBの位置関係や、パターンBに対するパターンCの位置関係が異なっている。つまり、各補正用パターンに応じて、パターンAとパターンCとの位置関係が異なっている。
この結果、補正用パターン毎に、各境界の状態が異なることになる。2つのパターンが重なる状態の境界では、境界が濃く視認される(黒スジとして視認される)。一方、2つのパターンが離れる状態の境界では、境界が淡く視認される(白スジとして視認される)。
次に、各補正用パターンのパターンA〜パターンCの印刷方法について説明し、その後、全補正用パターンの印刷方法について説明する。なお、各パターンは、360dpi(移動方向)×240dpi(搬送方向)の解像度にて形成される。ラスタラインを構成するドットの直径は1/240インチであるため、この解像度でパターンを形成すれば、各パターンを構成するラスタライン同士の間に隙間が生じている。
<パターンAの印刷方法について>
図15は、パターンAの印刷方法の説明図である。パターンAは、2回のパスによって形成される。図中の左側には、1回目及び2回目のパスにおける紙に対するヘッドの位置(B列の位置)が示されている。パターンAの形成時には、ノズル♯76〜ノズル♯87からインクが吐出される。インクを吐出するノズルは、1回目のパスでは黒丸で示され、2回目のパスではハッチングで示されている。ヘッドは移動方向に往復移動可能であるが、パターンAを形成するときには、ヘッドは一方の方向にしか移動していない。ここでは、ヘッドが図中の左から右へ移動するときに、パターンAが形成されるものとする。
図中の右側には、パターンAを構成するラスタラインが示されている。1回目のパスにより形成されるラスタラインは黒で示されており、2回目のパスにより形成されるラスタラインはハッチングで示されている。
1回目のパスでは、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯76〜ノズル♯87からインクが吐出される。ノズル♯76は、台形パターンA1を構成する4/360インチのラスタラインを形成し(つまり、4個のドットを形成し)、60/360インチの空走区間の後、逆台形パターンA2を構成する96/360インチのラスタラインを形成する(つまり、96個のドットを形成する)。そして、各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ長いラスタラインを形成して台形パターンA1を構成するラスタラインを形成し、60/360インチの空走区間の後、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ短いラスタラインを形成して逆台形パターンA2を構成するラスタラインを形成する。これにより、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯76〜ノズル♯87からのインクの吐出が停止される。
1回目のパスの後、ノズルピッチの半分に相当する目標搬送量18/4320インチ(1/240インチ)の搬送処理が行われる。なお、この搬送量は微小量なので、搬送誤差も極めて微小である(搬送誤差は無視できる)。
2回目のパスでは、1回目のパスにより形成されたラスタラインの間に、ラスタラインが形成される。2回目のパスでも、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯76〜ノズル♯87からインクが吐出される。ノズル♯76は、台形パターンA1を構成する8/360インチのラスタラインを形成し(つまり、8個のドットを形成し)、60/360インチの空走区間の後、逆台形パターンA2を構成する92/360インチのラスタラインを形成する(つまり、92個のドットを形成する)。そして、各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ長いラスタラインを形成して台形パターンA1を構成するラスタラインを形成し、60/360インチの空走区間の後、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ短いラスタラインを形成して逆台形パターンA2を構成するラスタラインを形成する。これにより、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯76〜ノズル♯87からのインクの吐出が停止される。
台形パターンA1を構成する24本のラスタラインの右端の移動方向の位置は、4/360インチずつ徐々に変化している。これにより、台形パターンA1を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。また、逆台形パターンA2を構成する24本のラスタラインの左端の移動方向の位置も、4/360インチずつ徐々に変化している。これにより、逆台形パターンA2を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。
<パターンBの印刷方法について>
図16は、パターンBの印刷方法の説明図である。パターンBも、2回のパスによって形成される。図中の左側には、1回目及び2回目のパスにおける紙に対するヘッドの位置(B列の位置)が示されている。パターンBの形成時には、ノズル♯1〜ノズル♯87からインクが吐出される。インクを吐出するノズルは、1回目のパスでは黒丸で示され、2回目のパスではハッチングで示されている。ヘッドは移動方向に往復移動可能であるが、パターンBを形成するときには、ヘッドは一方の方向にしか移動していない。ここでは、ヘッドが図中の左から右へ移動するときに、パターンBが形成されるものとする。
図中の右側には、パターンBを構成するラスタラインが示されている。1回目のパスにより形成されるラスタラインは黒で示されており、2回目のパスにより形成されるラスタラインはハッチングで示されている。
1回目のパスでは、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯13〜ノズル♯75からインクが吐出される。ノズル♯13〜ノズル♯75は、長方形パターンB2を構成する160/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯13〜ノズル♯75がインクを吐出してから4/360インチ移動した後に、ノズル♯1からインクが吐出され、ノズル♯1は60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯1〜ノズル♯12の各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルがインクを吐出してから8/360位置移動した後にインクを吐出して、60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯1〜ノズル♯12が形成したラスタラインは、傾斜パターンB1を構成する。また、ノズル♯13〜ノズル♯75がインクを吐出してから4/360インチ移動した後に、ノズル♯87からインクが吐出され、ノズル♯87は60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯76〜ノズル♯87の各ノズルは、搬送方向上流側に隣接するノズルがインクを吐出してから8/360位置移動した後にインクを吐出して、60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯76〜ノズル♯87が形成したラスタラインは、傾斜パターンB3を構成する。
1回目のパスの後、ノズルピッチの半分に相当する目標搬送量18/4320インチ(1/240インチ)の搬送処理が行われる。なお、この搬送量は微小量なので、搬送誤差も極めて微小である(搬送誤差は無視できる)。
2回目のパスでは、1回目のパスにより形成されたラスタラインの間に、ラスタラインが形成される。2回目のパスでも、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯13〜ノズル♯75からインクが吐出される。ノズル♯13〜ノズル♯75は、長方形パターンB2を構成する160/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯13〜ノズル♯75がインクを吐出してから8/360インチ移動した後に、ノズル♯1からインクが吐出され、ノズル♯1は60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯1〜ノズル♯12の各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルがインクを吐出してから8/360位置移動した後にインクを吐出して、60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯1〜ノズル♯12が形成したラスタラインは、傾斜パターンB1を構成する。また、ノズル♯13〜ノズル♯75がインクを吐出してから8/360インチ移動した後に、ノズル♯87からインクが吐出され、ノズル♯87は60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯76〜ノズル♯87の各ノズルは、搬送方向上流側に隣接するノズルがインクを吐出してから8/360位置移動した後にインクを吐出して、60/360インチのラスタラインを形成する。ノズル♯76〜ノズル♯87が形成したラスタラインは、傾斜パターンB3を構成する。なお、傾斜パターンB3は、ノズル♯76〜ノズル♯87により形成されるので、パターンAを形成するノズルと同じノズルによって形成される。
傾斜パターンB1を構成する24本のラスタラインの左端の移動方向の位置は、4/360インチずつ徐々に変化している。傾斜パターンB1を構成する24本のラスタラインの右端の移動方向の位置も、4/360インチずつ徐々に変化している。これにより、傾斜パターンB1を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。また同様に、傾斜パターンB3を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。
<パターンCの印刷方法について>
図17は、パターンCの印刷方法の説明図である。パターンCも、2回のパスによって形成される。図中の左側には、1回目及び2回目のパスにおける紙に対するヘッドの位置(B列の位置)が示されている。パターンCの形成時には、ノズル♯1〜ノズル♯12からインクが吐出される。インクを吐出するノズルは、1回目のパスでは黒丸で示され、2回目のパスではハッチングで示されている。ヘッドは移動方向に往復移動可能であるが、パターンCを形成するときには、ヘッドは一方の方向にしか移動していない。ここでは、ヘッドが図中の左から右へ移動するときに、パターンCが形成されるものとする。
図中の右側には、パターンCを構成するラスタラインが示されている。1回目のパスにより形成されるラスタラインは黒で示されており、2回目のパスにより形成されるラスタラインはハッチングで示されている。
1回目のパスでは、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯1〜ノズル♯12からインクが吐出される。ノズル♯1は、逆台形パターンC1を構成する96/360インチのラスタラインを形成し(つまり、96個のドットを形成し)、60/360インチの空走区間の後、台形パターンC2を構成する4/360インチのラスタラインを形成する(つまり、4個のドットを形成する)。そして、各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ短いラスタラインを形成して逆台形パターンC1を構成するラスタラインを形成し、60/360インチの空走区間の後、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ長いラスタラインを形成して台形パターンC2を構成するラスタラインを形成する。これにより、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯1〜ノズル♯12からのインクの吐出が停止される。
1回目のパスの後、ノズルピッチの半分に相当する目標搬送量18/4320インチ(1/240インチ)の搬送処理が行われる。なお、この搬送量は微小量なので、搬送誤差も極めて微小である(搬送誤差は無視できる)。
2回目のパスでは、1回目のパスにより形成されたラスタラインの間に、ラスタラインが形成される。2回目のパスでも、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯1〜ノズル♯12からインクが吐出される。ノズル♯1は、逆台形パターンC1を構成する92/360インチのラスタラインを形成し(つまり、92個のドットを形成し)、60/360インチの空走区間の後、台形パターンC2を構成する8/360インチのラスタラインを形成する(つまり、8個のドットを形成する)。そして、各ノズルは、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ短いラスタラインを形成して逆台形パターンC1を構成するラスタラインを形成し、60/360インチの空走区間の後、搬送方向下流側に隣接するノズルよりも8/360インチ長いラスタラインを形成して台形パターンC2を構成するラスタラインを形成する。これにより、ヘッドが移動方向の所定の位置に到達したとき、ノズル♯1〜ノズル♯12からのインクの吐出が停止される。なお、パターンCは、ノズル♯1〜ノズル♯12により形成されるので、パターンBの傾斜パターンB1を形成するノズルと同じノズルによって形成される。
逆台形パターンC1を構成する24本のラスタラインの右端の移動方向の位置は、4/360インチずつ徐々に変化している。これにより、逆台形パターンC1を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。また、台形パターンC2を構成する24本のラスタラインの左端の移動方向の位置も、4/360インチずつ徐々に変化している。これにより、台形パターンC2を巨視的に見たとき、搬送方向にも移動方向にも交差する方向の斜辺が形成される。
なお、逆台形パターンC1の24本のラスタラインでは、搬送方向上流側ほど短くなっている。一方、台形パターンA1の24本のラスタラインでは、搬送方向上流側ほど長くなっている。このため、巨視的に見たときに、逆台形パターンC1の斜辺は、台形パターンA1の斜辺と交差する方向になる。また、台形パターンC2の24本のラスタラインでは、搬送方向上流側ほど長くなっている。一方、逆台形パターンA2の24本のラスタラインでは、搬送方向上流側ほど短くなっている。このため、巨視的に見たときに、台形パターンC2の斜辺は、逆台形パターンA2の斜辺と交差する方向になる。
<全補正用パターンの印刷方法について>
図18は、テストシートの印刷方法の説明図である。
図中の右側には、テストシートに形成される9個の補正用パターンが描かれている。
図中の左側には、各パスにおける紙に対するヘッドの位置(B列の位置)が示されている。ヘッドの位置を示す長方形の中には、2個の数字と、A〜Cの記号が記入されている。一番上の数字は、パスの番号を示している。中央の数字は、そのパスにおいて形成する補正用パターンの番号を示している。一番下の記号は、そのパスにおいて形成するパターン名を示している。例えば、一番左の長方形は、最初のパス(パス1)のときの紙に対するヘッドの位置を示し、そのパスにおいて、補正用パターン(−8)のパターンAが形成される。
図中の上側の表には、各パスにおいて形成する補正用パターンの番号及びパターン名と、各パスの間に行われる搬送処理の目標搬送量が示されている。この表からも、最初のパス(パス1)において補正用パターン(−8)のパターンAが形成されることが示されている。また、この表から、パス1とパス2との間に行われる搬送処理において、媒体が目標搬送量18/4320インチにて搬送されることが示されている。
パス1〜パス18では、各補正用パターンのパターンAが形成される。各補正用パターンのパターンAは、2回のパスによって形成される。例えば、補正用パターン(0)のパターンAは、パス9及びパス10によって形成される。このため、補正用パターン(0)のパターンAにおいて、図15の「1回目のパス」はパス9に相当し、「2回目のパス」はパス10に相当する。パターンAを形成する2回のパスの間では、目標搬送量18/4320インチの搬送処理が行われる。ある補正用パターンのパターンAの形成後、目標搬送量18/4320インチの搬送処理が行われ、次の補正用パターンのパターンAが形成される。このため、ある補正用パターンのパターンAは、その直前に形成された補正用パターンのパターンAと比較して、36/4320インチだけ搬送方向上流側に形成される。
パス18の後、パス35までの間、目標搬送量132/4320インチの搬送処理が繰り返し行われる。なお、パス19〜パス35では、形成すべきパターンがないので、インクの吐出やヘッドの移動は行われずに、省略される。パス35とパス36との間では、目標搬送量142/4320インチの搬送処理が行われる。
パス36〜パス53では、各補正用パターンのパターンBが形成される。各補正用パターンのパターンBは、2回のパスによって形成される。例えば、補正用パターン(0)のパターンBは、パス44及びパス45によって形成される。このため、補正用パターン(0)のパターンBにおいて、図16の「1回目のパス」はパス44に相当し、「2回目のパス」はパス45に相当する。パターンBを形成する2回のパスの間では、目標搬送量18/4320インチの搬送処理が行われる。ある補正用パターンのパターンBの形成後、目標搬送量20/4320インチの搬送処理が行われ、次の補正用パターンのパターンBが形成される。このため、ある補正用パターンのパターンBは、その直前に形成された補正用パターンのパターンBと比較して、38/4320インチだけ搬送方向上流側に形成される。この結果、ある補正用パターンのパターンAとパターンBとの位置関係は、その直前に形成された補正用パターンと比較すると、2/4320インチだけ離れている。
パス53の後、パス70までの間、目標搬送量132/4320インチの搬送処理が繰り返し行われる。なお、パス54〜パス70では、形成すべきパターンがないので、インクの吐出やヘッドの移動は行われずに、省略される。パス70とパス71との間では、目標搬送量126/4320インチの搬送処理が行われる。
パス71〜パス88では、各補正用パターンのパターンCが形成される。各補正用パターンのパターンCは、2回のパスによって形成される。例えば、補正用パターン(0)のパターンCは、パス79及びパス80によって形成される。このため、補正用パターン(0)のパターンCにおいて、図17の「1回目のパス」はパス79に相当し、「2回目のパス」はパス80に相当する。パターンCを形成する2回のパスの間では、目標搬送量18/4320インチの搬送処理が行われる。ある補正用パターンのパターンCの形成後、目標搬送量22/4320インチの搬送処理が行われ、次の補正用パターンのパターンCが形成される。このため、ある補正用パターンのパターンCは、その直前に形成された補正用パターンのパターンCと比較して、40/4320インチだけ搬送方向上流側に形成される。この結果、ある補正用パターンのパターンBとパターンCとの位置関係は、その直前に形成された補正用パターンと比較すると、2/4320インチだけ離れている。
===補正用パターンの特性===
<搬送誤差がDC成分及びAC成分とも無い場合>
図19は、搬送誤差がDC成分及びAC成分とも無い場合の補正用パターンの状態の説明図である。図19では、説明のため、各パターンの輪郭を線で示しており、パターンの内部が空白になっている。しかし、実際の補正用パターンは、巨視的には図13に示すように塗りつぶされたパターンであり、微視的には図15〜図17に示すようにラスタラインから構成されたパターンである。また、図19では、パターン同士が重なる部分を黒く塗りつぶしている。
補正用パターン(0)では、台形パターンA1を構成する24本のラスタライン、傾斜パターンB1を構成する24本のラスタライン、及び、逆台形パターンA2を構成する24本のラスタラインは、全て搬送方向の位置が同じになる。また、台形パターンA1を構成する24本のラスタラインの右端と、逆台形パターンA2を構成する24本のラスタラインの左端との間に、ちょうど傾斜パターンB1を構成する24本のラスタラインが位置する。この結果、台形パターンA1を構成する24本のラスタライン、傾斜パターンB1を構成する24本のラスタライン、及び、逆台形パターンA2を構成する24本のラスタラインは、24本の160/360インチのラスタラインのようにそれぞれつながる。つまり、台形パターンA1及び傾斜パターンB1がぴったりつながり、逆台形パターンA2及び傾斜パターンB1もぴったりつながる。
このため、補正用パターン(0)では、境界A1B1及び境界A2B2は、視認することができない。同様に、境界C1B3及び境界C2B3も、視認することができない。
マイナスの番号の付された補正用パターンでは、パターンAに対してパターンBが搬送方向下流側にずれて形成される。つまり、マイナスの番号の付された補正用パターンのパターンAとパターンBとの位置関係が、補正用パターン(0)のパターンAとパターンBとの位置関係と比較して、近づく。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が離れ、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1は重なる。
このため、マイナスの番号の付された補正用パターンでは、境界A1B1は淡く視認されて白スジが生じ、境界A2B1は濃く視認されて黒スジが生じる。同様に、境界C1B3は淡く視認されて白スジが生じ、境界C2B3は濃く視認されて黒スジが生じる。
さらに、大きなマイナスの番号が付された補正用パターンほど、パターンAとパターンBが大きく近づき、パターンBとパターンCが大きく近づく。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が大きく離れ、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1は大きく重なる。このため、大きなマイナスの番号が付された補正用パターンほど、白スジや黒スジが、はっきり視認される。
プラスの番号の付された補正用パターンでは、パターンAに対してパターンBが搬送方向上流側にずれて形成される。つまり、プラスの番号の付された補正用パターンのパターンAとパターンBとの位置関係が、補正用パターン(0)のパターンAとパターンBとの位置関係と比較して、離れる。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が重なり、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1が離れる。
このため、プラスの番号の付された補正用パターンでは、境界A1B1は濃く視認されて黒スジが生じ、境界A2B1は淡く視認されて白スジが生じる。同様に、境界C1B3は濃く視認されて黒スジが生じ、境界C2B3は淡く視認されて白スジが生じる。
さらに、大きなプラスの番号が付された補正用パターンほど、パターンAとパターンBが大きく離れ、パターンBとパターンCが大きく離れる。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が大きく重なり、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1は大きく離れる。このため、大きなプラスの番号が付された補正用パターンほど、白スジや黒スジが、はっきり視認される。
なお、本実施形態では、パターンAとパターンBとの間に、2つの境界(境界A1B1及び境界A2B1)が形成されている。そして、境界A1B1では、パターンAの台形パターンA1がパターンBの傾斜パターンB1よりも搬送方向上流側に位置し、境界A1B2では、パターンBの傾斜パターンB1がパターンAの逆台形パターンA2よりも搬送方向上流側に位置する。このように構成することにより、パターンAとパターンBとの位置関係が変化したときに、パターンAとパターンBとの境界に白スジと黒スジの両方を発生させることができる。これにより、検査者の視認性が良くなる。
同様に、本実施形態では、パターンBとパターンCとの間に、2つの境界(境界C1B3及び境界C2B3)が形成されている。そして、境界C1B3では、パターンBの傾斜パターンB3がパターンCの逆台形パターンC1よりも搬送方向上流側に位置し、境界C2B3では、パターンCの台形パターンC2がパターンBの傾斜パターンB3よりも搬送方向上流側に位置する。このように構成することにより、パターンBとパターンCとの位置関係が変化したときに、パターンBとパターンCとの境界に白スジと黒スジの両方を発生させることができる。これにより、検査者の視認性が良くなる。
また、本実施形態では、境界A1B1及び境界A2B1が平行になっている。これにより、パターンAとパターンBとの位置関係がいずれの方向へ変化しても、白スジ及び黒スジが同じ程度の幅で発生するので、検査者の視認性が良い。同様に、境界C1B3及び境界C2B3が平行になっているので、検査者の視認性が良い。
<DC成分の搬送誤差がある場合>
次に、DC成分の誤差のみが生じた場合について説明する。ここでは、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される場合について説明する。
図20Aは、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される場合の補正用パターン(0)の状態の説明図である。
ここでは目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送されているので、補正用パターン(0)のパターンAを形成するパス10からパターンBを形成するパス44までの間に行われる搬送処理の搬送量は、目標搬送量よりも多くなる。このため、補正用パターン(0)のパターンBは、搬送誤差が無い場合と比較して、搬送方向上流側にずれて形成される。つまり、目標搬送量よりも多く紙が搬送される結果、パターンAとパターンBとの位置関係が離れる。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が重なり、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1が離れる。このため、補正用パターン(0)では、境界A1B1は濃く視認されて黒スジが生じ、境界A2B1は淡く視認されて白スジが生じる。同様に、補正用パターン(0)では、境界C1B3は濃く視認されて黒スジが生じ、境界C2B3は淡く視認されて白スジが生じる。
つまり、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される場合における補正用パターン(0)の境界は、搬送誤差が無い場合におけるプラスの番号の付された補正用パターンの境界に近似した状態である。
図20Bは、この場合の9個の補正用パターンの状態の説明図である。
ここでは目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送されているので、各補正用パターンのパターンAとパターンBとの位置関係は、搬送誤差が無い場合と比較して、離れる。この結果、マイナスの番号の付された補正用パターンの白スジや黒スジが軽減される。
そして、搬送ローラ23の半回転中に、例えば目標搬送量よりも4/4320インチだけ多い搬送量で紙が搬送されるのであれば、補正用パターン(0)よりもパターンAとパターンBとの位置関係が4/4320インチだけ近づいている補正用パターン(−4)において、境界A1B1及び境界A2B1が見えにくくなる。同様に、搬送ローラ23の半回転中に、例えば目標搬送量よりも4/4320インチだけ多い搬送量で紙が搬送されるのであれば、補正用パターン(0)よりもパターンBとパターンCとの位置関係が4/4320インチだけ近づいている補正用パターン(−4)において、境界C1B3及び境界C2B3が見えにくくなる。
言い換えると、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される場合、境界A1B1及び境界A2B1が見え難い補正用パターンは、マイナスの番号が付された補正用パターンになる。同様に、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される場合、境界C1B3及び境界C2B3が見え難い補正用パターンは、マイナスの番号が付された補正用パターンになる。
逆に、目標搬送量よりも少ない搬送量にて紙が搬送される場合、境界A1B1及び境界A2B1が見え難い補正用パターンは、プラスの番号が付された補正用パターンになる。同様に、目標搬送量よりも少ない搬送量にて紙が搬送される場合、境界C1B3及び境界C2B3が見え難い補正用パターンは、プラスの番号が付された補正用パターンになる。
このように、DC成分の誤差のみが生じた場合、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンは、同じになる。また、DC成分の誤差が大きいほど、境界の最も見え難い補正用パターンは、補正用パターン(0)から離れた位置の補正用パターンになる。
従って、DC成分の誤差のみが生じた場合、境界の最も見え難い補正用パターンの番号は、DC成分の搬送誤差を反映し、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値に対応する値にもなる。
<AC成分誤差がある場合>
次に、AC成分の誤差のみが生じた場合について説明する。ここでは、図11AのようなAC成分の搬送誤差が生じるものとし、パターンAの形成時の搬送ローラの回転位置が、基準位置から1/4回転した位置であるものとする。つまり、パターンAの形成とパターンBの形成の間に行われる搬送処理では、目標搬送量よりも少ない搬送量にて紙が搬送され、パターンBの形成とパターンCの形成の間に行われる搬送処理では、目標搬送量よりも多い搬送量にて紙が搬送される。
図21Aは、AC成分の誤差が生じた場合の補正用パターン(0)の状態の説明図である。
補正用パターン(0)のパターンBは、目標搬送量よりも少ない搬送量にて紙が搬送された後に形成されるので、搬送誤差が無い場合と比較して、搬送方向下流側にずれて形成される。このため、パターンAとパターンBとの位置関係は近づく。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が離れ、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1が重なる。このため、補正用パターン(0)では、境界A1B1は淡く視認されて白スジが生じ、境界A2B1は濃く視認されて黒スジが生じる。つまり、この場合における補正用パターン(0)の上部の境界は、搬送誤差が無い場合におけるマイナスの番号の付された補正用パターンの上部の境界に近似した状態である。
一方、AC成分の搬送誤差はほぼサインカーブになるため、パターンBの形成からパターンCの形成までの間に行われる搬送ローラ半回転分の搬送量には、パターンAの形成からパターンBの形成までの間に行われる搬送ローラ半回転分の搬送量に含まれる搬送誤差と逆の搬送誤差が含まれている。このため、パターンBとパターンCとの位置関係は、パターンAとパターンBとの位置関係とは逆に、離れる。この結果、逆台形パターンC1と傾斜パターンB3が重なり、台形パターンC2と傾斜パターンB3は離れる。このため、補正用パターン(0)では、境界C1B3は濃く視認されて黒スジが生じ、境界C2B3は淡く視認されて白スジが生じる。つまり、この場合における補正用パターン(0)の下部の境界は、搬送誤差が無い場合におけるプラスの番号の付された補正用パターンの上部の境界に近似した状態である。
図21Bは、この場合の9個の補正用パターンの状態の説明図である。
各補正用パターンのパターンAとパターンCとの位置関係に注目すると、ここではAC成分の誤差のみが生じておりDC成分の誤差は生じていないので、図19のパターンAとパターンCとの位置関係と同じである。但し、パターンBは、パターンA及びパターンCに対して、AC成分の誤差の影響で搬送方向下流側にずれている。
各補正用パターンのパターンAとパターンBとの位置関係は、搬送誤差が無い場合と比較して近づいているので、プラスの番号の付された補正用パターンの白スジや黒スジが軽減される。逆に、各補正用パターンのパターンBとパターンCとの位置関係は、搬送誤差が無い場合と比較して離れているので、マイナスの番号の付された補正用パターンの白スジや黒スジが軽減される。
仮に、AC成分の影響のため、パターンBがパターンA及びパターンCに対して搬送方向下流側に4/4320インチだけ位置を変化させたとする。この場合、境界A1B1及び境界A2B1は、補正用パターン(0)よりもパターンAとパターンBとの位置関係が4/4320インチだけ離れている補正用パターン(+4)において、最も見え難くなる。一方、境界C1B3及び境界C2B3は、補正用パターン(0)よりもパターンBとパターンCとの位置関係が4/4320インチだけ近づく補正用パターン(−4)において、最も見え難くなる。
このように、AC成分の誤差のみが生じた場合、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、補正用パターン(0)を挟んで反対側になる。言い換えると、補正用パターン(0)は、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に位置する。また、AC成分の誤差が大きいほど、境界の最も見え難い補正用パターンは、補正用パターン(0)から離れた位置の補正用パターンになる。
なお、DC成分とAC成分の誤差が両方生じた場合、前述の図20Bの状態と図21Bの状態とを重ね合わせた状態になる。すなわち、この場合、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンを挟んで反対側になる。言い換えると、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンがある。
<着弾位置ずれがある場合>
図22は、各ノズルのインク吐出速度Vmの説明図である。各ノズルのインク吐出速度Vmは、ヘッドの製造ばらつき等の影響により、異なっている。隣接するノズル同士では近似したインク吐出速度になるが、離れたノズル同士ではインク吐出速度Vmが大きく異なることがある。ここでは、搬送方向下流側のノズル(ノズル♯1付近のノズル)は、搬送方向上流側のノズル(ノズル♯90付近のノズル)と比較して、インク吐出速度が速い。
移動方向に移動する各ノズルからインクを吐出した場合、インク吐出速度の速いノズルから吐出されたインク滴ほど早く着弾するため、インク吐出速度の速いノズルにより形成されたドットは、インク吐出速度の遅いノズルにより形成されたドットと比べて、移動方向の上流側に形成される。このため、搬送方向下流側のノズル(ノズル♯1付近のノズル)により形成されるパターンは、搬送方向上流側のノズル(ノズル♯90付近のノズル)により形成されるパターンと比べて、移動方向上流側に位置する。
図23Aは、インク吐出速度Vmが異なる場合の補正用パターン(0)の状態の説明図である。
台形パターンA1及び逆台形パターンA2は搬送方向上流側のノズル(ノズル♯76〜ノズル♯86)により形成され、傾斜パターンB1は搬送方向下流側のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯12)により形成される。このため、台形パターンA1及び逆台形パターンA2は、傾斜パターンB1に対して相対的に、移動方向下流側に(図中の右側に)位置する。この結果、台形パターンA1と傾斜パターンB1が重なり、逆台形パターンA2と傾斜パターンB1が離れる。このため、補正用パターン(0)では、境界A1B1は濃く視認されて黒スジが生じ、境界A2B1は淡く視認されて白スジが生じる。つまり、この場合における補正用パターン(0)の境界A1B1及び境界A2B1は、搬送誤差が無い場合におけるプラスの番号の付された補正用パターンの境界A1B1及び境界A2B1に近似した状態である(但し、境界A1B2は異なる状態である)。
一方、逆台形パターンC1及び台形パターンC2は搬送方向下流側のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯12)により形成され、傾斜パターンB3は搬送方向上流側のノズル(ノズル♯76〜ノズル♯86)により形成される。このため、逆台形パターンC1及び台形パターンC2は、傾斜パターンB3に対して相対的に、移動方向上流側に(図中の左側に)位置する。この結果、逆台形パターンC1と傾斜パターンB3が離れ、台形パターンC2と傾斜パターンB3が重なる。このため、補正用パターン(0)では、境界C1B3は淡く視認されて白スジが生じ、境界C2B3は濃く視認されて黒スジが生じる。つまり、この場合における補正用パターン(0)の境界C1B3及び境界C2B3は、搬送誤差が無い場合におけるマイナスの番号の付された補正用パターンの境界C1B3及び境界C2B3に近似した状態である(但し、境界C1B2は異なる状態である)。
なお、パターンAを形成するノズルと、傾斜パターンB3を形成するノズルは、同じである。また、各補正用パターンにおいて、傾斜パターンB1を形成するノズルと、パターンCを形成するノズルは、同じである。このため、傾斜パターンB1に対するパターンAの相対的な位置関係の変化量と、パターンCに対する傾斜パターンB3の相対的な位置関係の変化量とは、同じになる。言い換えると、パターンAが傾斜パターンB1に対して右側に位置がずれた分だけ、パターンCが傾斜パターンB3に対して左側に位置がずれる。
図23Bは、この場合の9個の補正用パターンの状態の説明図である。
各補正用パターンのパターンAは、パターンBの傾斜パターンB1に対して相対的に、移動方向下流側に(図中の右側に)位置する。また、各補正用パターンのパターンBの傾斜パターンB3は、パターンCに対して相対的に、移動方向上流側に(図中の右側に)位置する。
マイナスの番号の付された補正用パターンでは、補正用パターン(0)と比較して、パターンAとパターンBとの位置関係が近づく。このため、マイナスの番号の付された補正用パターンでは、補正用パターン(0)と比較して、境界A1B1の黒スジ及び境界A2B1の白スジが軽減される。
プラスの番号の付された補正用パターンでは、補正用パターン(0)と比較して、パターンB及びパターンCとの位置関係が離れる。このため、プラスの番号の付された補正用パターンでは、補正用パターン(0)と比較して、境界C1B3の白スジ及び境界C2B3の黒スジが軽減される。
そして、各補正用パターンでは、パターンAが傾斜パターンB1に対して右側に位置がずれた分だけ、パターンCが傾斜パターンB3に対して左側に位置がずれている。このため、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、補正用パターン(0)を挟んで反対側になる。言い換えると、補正用パターン(0)は、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に位置する。例えば図中では、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターン(−4)と、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターン(+4)とは、補正用パターン(0)を挟んで反対側になっている。なお、ノズルのインク吐出速度の差が大きいほど、境界の最も見え難い補正用パターンは、補正用パターン(0)から離れた位置の補正用パターンになる。
なお、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターン(−4)の境界A1B2には、黒スジが生じている。また、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターン(+4)の境界C1B2には、白スジが生じている。但し、後述するように、境界A1B2及び境界C1B2は、検査時には用いられない。
DC成分の搬送誤差が生じた場合であってノズルのインク吐出速度の差がある場合、前述の図20Bの状態と図23Bの状態とを重ね合わせた状態になる。すなわち、この場合、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンを挟んで反対側になる。言い換えると、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンがある。
また、AC成分の搬送誤差が生じた場合も、ノズルのインク吐出速度の差がある場合も、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンを挟んで反対側になる。このため、AC成分の搬送誤差が生じた場合であってノズルのインク吐出速度の差がある場合において、前述の図21Bの状態と図23Bの状態とが重ねあわされても、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとは、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンを挟んで反対側になる。言い換えると、この場合にも、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンがある。
図24Aは、比較例の補正用パターンの説明図である。比較例の補正用パターンでは、傾斜パターンB3の斜辺の方向が傾斜パターンB1の斜辺の方向と同じになっている。
図24Bは、比較例の9個の補正用パターンの状態の説明図である。ここでは、説明のため、搬送誤差はDC成分及びAC成分とも無い状態であり、ノズルのインク吐出速度の差だけがある状態である。図に示すように、この場合、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンは、同じになる。このような状態でDC成分及びAC成分の誤差が生じると、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとの中間に、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンがあることが保障されない。
===テストシートの検査方法===
図25は、テストシートの検査方法のフロー図である。図26は、テストシートの検査手順の説明図である。以下、これらの図を用いて、本実施形態のテストシートの検査方法を説明する。
まず、検査者は、左の補正用パターンから順に、補正用パターンの上部(搬送方向下流側)に位置する境界A1B1及び境界A2B1を検査する(図25のS121、図26の丸1参照)。最初に検査される補正用パターン(−8)では、境界A1B1で白スジが生じており、境界A2B1で黒スジが生じている。そして、補正用パターン(−8)よりも右側の補正用パターンほど、境界A1B1の白スジや境界A2B1の黒スジが軽減されてくる。なお、補正用パターンの上部の境界の検査の際には、境界A1B2(移動方向に沿った境界)の状態は無視される。
そして、検査者は、最適な境界A1B1及び境界A2B1の補正用パターンを選択する(図25のS122、図26の丸2参照)。ここでは、境界A1B1及び境界A2B1が最も視認し難い補正用パターン、すなわち、補正用パターンの上部において斜めの白スジ及び黒スジが見え難い補正用パターンが、最適な境界A1B1及び境界A2B1の補正用パターンとして選択される。この場合、検査者は、補正用パターン(+2)を選択するであろう。(補正用パターン(+2)よりも右側の補正用パターンでは、境界A1B1で黒スジが生じ、境界A2B1で白スジが生じている。)なお、境界A1B2に白スジや黒スジが生じていても、最適な境界A1B1及び境界A2B1の判断には何ら影響を与えない。
次に、検査者は、右の補正用パターンから順に、補正用パターンの下部(搬送方向上流側)に位置する境界C1B3及び境界C2B3を検査する(図25のS123、図26の丸3参照)。最初に検査される補正用パターン(+8)では、境界C1B3で黒スジが生じており、境界C2B3で白スジが生じている。そして、補正用パターン(+8)よりも左側の補正用パターンほど、境界C1B3の黒スジや境界C2B3の白スジが軽減されてくる。なお、補正用パターンの下部の境界の検査の際には、境界C1B2(移動方向に沿った境界)の状態は無視される。
そして、検査者は、最適な境界C1B3及び境界C2B3の補正用パターンを選択する(図25のS124、図26の丸4参照)。ここでは、境界C1B3及び境界C2B3が最も視認し難い補正用パターン、すなわち、補正用パターンの上部において斜めの白スジ及び黒スジが見え難い補正用パターンが、最適な境界C1B3及び境界C2B3の補正用パターンとして選択される。この場合、検査者は、補正用パターン(−6)を選択するであろう。(補正用パターン(−6)よりも左側の補正用パターンでは、境界C1B3で白スジが生じ、境界C2B3で黒スジが生じている。)なお、境界C1B2に白スジや黒スジが生じていても、最適な境界C1B3及び境界C2B3の判断には何ら影響を与えない。
次に、検査者は、S122で選択された補正用パターンの番号と、S124で選択された補正用パターンの番号との中央値を算出する(S125)。この場合、S122で補正用パターン(+2)が選択され、S124で補正用パターン(−6)が選択されるので、中央値として「−2」が算出される。
この中央値は、DC成分の搬送誤差を示す値になる。なお、この中央値の番号の補正用パターン(−2)が、最適な境界の補正用パターン(+2)及び補正用パターン(−6)と異なっている理由は、AC成分の搬送誤差の影響や、ノズルのインク吐出速度の影響によるものである。言い換えると、AC成分の搬送誤差の影響や、ノズルのインク吐出速度の影響を受けても、最適な境界の補正用パターン(+2)の番号と補正用パターン(−6)の番号の中央値は、DC成分の搬送誤差を示す値になる。
この後、検査者は、算出された中央値を、プリンタに接続された検査用コンピュータに入力する。検査用コンピュータは、入力された中央値に基づいて補正値を決定(S103)し、プリンタのメモリに補正値を記録する(S104)。この補正値は、DC成分の搬送誤差を補正するためのものである。すなわち、この補正値は、目標搬送量が搬送ローラの1回転分の1.25インチのときの補正量を示すものである。
これにより、製造工場で製造されたプリンタ毎に、各プリンタに適した補正値が各プリンタのメモリに記録される。
そして、プリンタを購入したユーザーの下で印刷が行われる際に、コントローラ60は、搬送ローラの1回転分の目標搬送量を補正値に基づいて補正し、補正された目標搬送量に基づいて搬送処理を行う。これにより、紙が目標搬送量通りに搬送されるので、印刷画像の画質が向上する。
<比較例の検査方法>
図27は、比較例の検査手順の説明図である。比較例では、前述の検査方法のフローのS123において、右からではなく、左から順に検査を行っている(図中の丸3参照)。
ここでは、図26のときよりもAC成分の搬送誤差が若干少ないため、補正用パターンの上部の境界A1B1及び境界A2B1の判断の際に、補正用パターン(0)と補正用パターン(+2)との間で優劣の判断がつかない状態である。同様に、補正用パターンの下部の境界C1B3及び境界C2B3の判断の際に、補正用パターン(−6)と補正用パターン(−4)との間で優劣の判断がつかない状態である。
このようなときに、補正用パターンの上部の境界の判断順序の方向(図中の丸1参照)と、補正用パターンの下部の境界の判断順序の方向(図中の丸3参照)とを一致させると、選択される補正用パターンが左寄りになり、補正用パターン(0)と補正用パターン(−6)とが選択される。この結果、中央値の値が「−3」と算出され、実際のDC成分の搬送誤差に対してマイナス側に大きく評価されてしまう。
このため、本実施形態では、S121では左から順に補正用パターンの上部の境界を検査し、S123では右から順に補正用パターンの下部の境界を検査し、両者の検査順序を逆方向にしている。これにより、実際のDC成分の搬送誤差に対応する中央値を算出することができる。つまり、境界A1B1及び境界A2B1が最も見え難い補正用パターンと、境界C1B3及び境界C2B3が最も見え難い補正用パターンとが、DC成分の搬送誤差に対応する番号の補正用パターンを挟んで反対側になるような本実施形態の場合には、両者の境界をそれぞれ逆方向から順番に検査すれば、実際のDC成分の搬送誤差に対応する中央値を算出することができる。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、記録装置、液体の吐出装置、印刷方法、記録方法、液体の吐出方法、印刷システム、記録システム、コンピュータシステム、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体、印刷物の製造方法、等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<境界の検査について>
前述の実施形態では、補正用パターンの各境界の検査を、プリンタ製造工場の検査工程の検査者が行っている。しかし、プリンタを購入したユーザーが、プリンタにテストシートを印刷させて、補正用パターンの各境界の検査を行っても良い。
なお、人間が補正用パターンの各境界の検査を行うのではなく、センサを用いても良い。例えば、テストシートをスキャナで読み取っても良い。また、プリンタのキャリッジ31に設けられている光学センサ54を用いて、コントローラ60がテストシートの検査を行っても良い。
<補正用パターンの形状について1>
前述の実施形態では、傾斜パターンB1と傾斜パターンB3は、パターンBとして一体的に形成されていた。しかし、このような補正用パターンに限られるものではない。例えば、長方形パターンB2を形成せず、傾斜パターンB1と傾斜パターンB3とを分離して形成しても良い。
<補正用パターンの形状について2>
前述の実施形態では、パターンAとパターンBとの間に、2つの境界(境界A1B1及び境界A2B1)が形成され、2つの境界において、2つのパターンの搬送方向上流・下流の関係が逆になっている。
しかし、これに限られるものではない。例えば、パターンAの逆台形パターンA2をなくして、パターンAとパターンBとの間の境界を1つにしても良い。また、パターンCの台形パターンC2をなくして、パターンBとパターンCとの間の境界を1つにしても良い。このような場合であっても、2つのパターンの間の位置関係が変化したときに、白スジ又は黒スジの一方は発生するので、これに基づいて境界の状態を検査できる。
<補正用パターンの形状について3>
前述の実施形態では、パターンAとパターンBの境界が搬送方向及び移動方向と交差する方向になっていた。しかし、このような補正用パターンに限られるものではない。
図28Aは、別の実施形態の補正用パターンの説明図である。
この補正用パターンのパターンAは、ノズル♯76〜ノズル♯87によって2回のパスにより形成され、160/360インチの24本のラスタラインから構成される。パターンBは、前述の長方形パターンB2と同様に、ノズル♯13〜ノズル♯75によって2回のパスにより形成され、124本のラスタラインから構成される。パターンCは、ノズル♯1〜ノズル♯12によって2回のパスにより形成され、160/360インチの24本のラスタラインから構成される。
この補正用パターンでは、搬送方向上流側のノズルによって形成されたパターンAと、搬送方向下流側のノズルによって形成されたパターンBとの上部との間で、境界が形成される。また、この補正用パターンでは、搬送方向上流側のノズルによって形成されたパターンBの下部と、搬送方向下流側のノズルによって形成されたパターンCとの間で、境界が形成される。
図28Bは、この実施形態の9個の補正用パターンの説明図である。各補正用パターンのパターンAとパターンCとの間隔は、補正用パターンの番号に応じて異なっている。また、パターンBの搬送方向の位置は、AC成分の搬送誤差によって、上下することになる。
このような補正用パターンであっても、パターンAとパターンBとの間の境界が最適な補正用パターンを選択し、パターンBとパターンCとの間の境界が最適な補正用パターンを選択し、選択された補正用パターンの番号の中間値を算出すれば、その中間値はDC成分の搬送誤差を示す値になる。なお、この場合、補正用パターン(−4)と補正用パターン(0)が選択されて、中間値が「−2」と算出され、この値に応じた補正値がプリンタのメモリに記憶されることになる。
===まとめ===
(1)前述の実施形態では、プリンタが、対応する補正値の順に移動方向に沿って9個の補正用パターンを印刷する。そして、検査者は、補正用パターンの上部の境界(境界A1B1及び境界A2B1)の白スジや黒スジの状態を検査し、白スジや黒スジの最も視認し難い補正用パターンを選択する。また、検査者は、補正用パターンの下部の境界(境界C1B3及び境界C2B3)の白スジや黒スジの状態を検査し、白スジや黒スジの最も視認し難い補正用パターンを選択する。そして、検査者は、選択された2つの補正用パターンのそれぞれの番号の中央値を算出する。各補正用パターンのそれぞれの番号は、各補正用パターンの対応する補正値を示すものなので、算出された中央値は、選択された補正用パターンの対応する補正値の間の値でもある。前述の実施形態では、このようにして、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値を決定している(図25及び図26参照)。
ところで、図27に示すように、AC成分の搬送誤差の状態によっては、補正用パターンの上部の境界A1B1及び境界A2B1の判断の際に、2以上の補正用パターンが候補になる場合がある。同様に、補正用パターンの下部の境界C1B3及び境界C2B3の判断の際に、2以上の補正用パターンが候補になる場合がある。この場合に、図27に示すように左側の補正用パターンを優先させて選択してしまうと、実際のDC成分の搬送誤差に対してマイナス側に評価されてしまう。つまり、選択された2つの補正用パターンの対応する補正値の間から印刷時に用いられる補正値を決定する場合において、選択される2つの補正用パターンが左寄りになってしまうと、決定される補正値が、実際のDC成分の搬送誤差に対してマイナス側に評価されてしまう。
そこで、本実施形態では、まず、左から順に補正用パターンの上部の境界を検査することにより、補正用パターンの上部の境界A1B1及び境界A2B1の判断の際に2以上の補正用パターンが候補になる場合、左側の補正用パターンが優先して選択されるようにしている。また、右から順に補正用パターンの下部の境界を検査することにより、補正用パターンの下部の境界C1B3及び境界C2B3の判断の際に2以上の補正用パターンが候補になる場合、右側の補正用パターンが優先して選択されるようにしている。この結果、実際のDC成分の搬送誤差に対応する中央値を算出することができる。
(2)前述の実施形態では、補正用パターンは、パターンA(第1パターンの一例)、パターンBの上部パターン(第2パターンの一例)、パターンBの下部パターン(第3パターンの一例)及びパターンC(第4パターンの一例)から構成されている(図14、図28参照)。そして、最初の補正用パターンを選択する際には、パターンAとパターンBの上部パターンとの境界が検査される。また、次に補正用パターンを選択する際には、パターンBの下部パターンとパターンCとの境界が検査される。
但し、補正用パターンの構成は、これに限られるものではない。要するに、選択された2つの補正用パターンの対応する補正値の間から印刷時に用いられる補正値を決定するようなテストシートであれば、補正用パターンの構成に関わらず、適した補正値を決定することができる。
(3)前述の実施形態では、プリンタのコントローラ60は、まず、紙(媒体の一例)を搬送方向の所定の位置に搬送して、搬送方向上流側のノズル♯76〜ノズル♯87によってパターンA(第1パターンの一例)を形成する(図10B、図14、図15、図18参照)。次に、コントローラ60は、ノズル列の搬送方向の長さよりも短い約0.625インチ相当の目標搬送量にて紙を搬送方向に搬送する(図10B、図14、図18参照)。なお、このときの目標搬送量は、補正用パターンによってそれぞれ異なる。そして、コントローラ60は、搬送方向下流側のノズル♯1〜ノズル♯12によってパターンAと境界を形成する傾斜パターンB1を形成するとともに、搬送方向上流側のノズル♯76〜ノズル♯87によって傾斜パターンB3を形成することにより、パターンBを形成する(図10B、図14、図16、図18参照)。この後、コントローラ60は、ノズル列の搬送方向の長さよりも短い約0.625インチ相当の目標搬送量にて紙を搬送方向に搬送する(図10B、図14、図18参照)。そして、コントローラ60は、搬送方向下流側のノズル♯1〜ノズル♯12によって傾斜パターンB3と境界を形成するパターンCを形成する(図10B、図14、図17、図18参照)。このように形成された補正用パターンによれば、目標搬送量に対応する補正値を決定することができる。
但し、補正用パターンの対応する補正値の目的は、これに限られるものではない。目標搬送量を補正するための補正用パターンではなく、例えばインク吐出のタイミングを補正するための補正値でも良い。要するに、選択された2つの補正用パターンの対応する補正値の間から印刷時に用いられる補正値を決定するようなテストシートであれば、補正用パターンの目的に関わらず、適した補正値を決定することができる。
(4)前述の実施形態によれば、パターンAが形成されてからパターンCが形成されるまでの間の紙の搬送量(約1.25インチ)が、ノズル列の搬送方向の長さ(約0.75インチ)よりも長い。このような場合、パターンAとパターンCとの間に境界を形成することができず、図10に示すような補正用パターンでは、パターンAとパターンCとの間隔を判定することができない。一方、本実施形態によれば、間接的にパターンAとパターンCとの位置関係を判定することが可能になる。
(5)前述の実施形態では、パターンAを形成するノズルと、傾斜パターンB3を形成するノズルは、ともにノズル♯76〜ノズル♯87である。また、前述の実施形態では、傾斜パターンB1を形成するノズルと、パターンCを形成するノズルは、ともにノズル♯1〜ノズル♯12である。これにより、パターンAとパターンBの境界と、パターンBとパターンCの境界を、ほぼ同様な形状に形成することが可能になる。
但し、これに限られるものではない。例えば、パターンAを形成するノズルをノズル♯76〜ノズル♯87とし、傾斜パターンB3を形成するノズルをノズル♯76〜ノズル♯90としても良い。しかし、この場合、境界A1B1及び境界A2B1の視認性と、境界C1B3及び境界C2B3の視認性とが異なることになる。一方、本実施形態において図26の丸5に示すように中央値を算出することを考慮すると、両者の視認性は均等であることが望ましい。
(6)前述の実施形態では、パターンAとパターンBの境界及びパターンBとパターンCの境界は、ともに移動方向と交差する方向に形成されている(図12E、図12F、図13、図14参照)。これにより、ラスタラインの搬送方向の位置にばらつきが生じて、各パターンの内部でラスタライン同士の間隔が若干異なることがあっても、境界における黒スジや白スジの存在の判断を安定して行うことができる。
但し、例えば図28に示すように、境界が移動方向に沿っていても良い。このような場合であっても、ノズル列の搬送方向の長さよりも長い目標搬送量を補正する補正用パターンを形成することができる。しかし、この場合、各パターンを構成するラスタラインの間隔にばらつきが生じると、各パターンの内部で白スジや黒スジのように見える場所が生じるため、境界において黒スジや白スジの存在を判断することが困難になる。
(7)前述の実施形態では、境界A1B1及び境界A2B1の方向と、境界C1B3及び境界C2B3の方向が、交差している(図13、図14参照)。これにより、搬送方向上流側のノズルと、搬送方向下流側のノズルとの間でインク吐出速度に差があっても、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値を決定することができる。
但し、例えば図24A及び図24Bに示すように、パターンAとパターンBの境界の方向と、パターンBとパターンCの境界の方向とが平行であっても良い。このような場合であっても、搬送方向上流側のノズルと、搬送方向下流側のノズルとの間でインク吐出速度に差がなければ、DC成分の搬送誤差を補正するための補正値を決定することができる。
(8)前述の実施形態では、補正用パターンの各境界の検査を、プリンタ製造工場の検査工程の検査者が行っている。しかし、プリンタのキャリッジ31に設けられている光学センサ54を用いて、コントローラ60がテストシートの検査を行っても良い。
この場合、コントローラ60は、補正用パターンの上部の境界を検査する際には、キャリッジ31を左から右へ移動させて、光学センサ54を用いて境界の濃度を検査する。センサの移動中に境界の濃度が所定の閾値に達したことを検知した後、コントローラ60は、そのときの補正用パターンの番号をメモリに記憶し、補正用パターンの上部の境界の検査を終了する。そして次にコントローラ60は、キャリッジ31を右から左に移動させて、光学センサ54を用いて補正用パターンの下部の境界の濃度を検査する。そして、センサの移動中に境界の濃度が所定の閾値に達したことを検知した後、コントローラ60は、そのときの補正用パターンの番号を記憶し、補正用パターンの下部の境界の検査を終了する。そして、コントローラは、メモリに記憶された2つの番号の中央値を算出し、その値を補正値として記憶する。
このような形態によれば、境界の検査の終了を早めることができるので、有利である。
(9)なお、前述の実施形態の全ての構成要素を含めば、全ての効果を奏することができるので、望ましい。但し、必ずしも前述の実施形態の全ての構成要素が必要なわけではない。
(10)上記のように補正値を決定した後、そのテストシートを印刷したプリンタのメモリに補正値に関する情報が記憶される。そして、そのプリンタを購入したユーザー下で印刷を行うとき、コントローラ60は、目標搬送量を補正値に基づいて補正し、補正された目標搬送量に応じて搬送ローラを回転させて、紙を搬送する。これにより、補正前の目標搬送量に応じた搬送量にて紙を搬送することができるので、高品質な印刷を行うことができる。