JP4838591B2 - シリコン凝固用鋳型及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン融液を凝固させる際に用いるシリコン凝固用鋳型、及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、太陽電池用の基板等を製造するための多結晶シリコンを得るために用いる鋳型、及びその製造方法に関する。
太陽電池に使用されるシリコン(Si)については、一般に99.9999%(6N)程度の純度が必要とされ、各種の金属不純物が0.1質量ppm以下であり、ボロン(B)が少なくとも0.3質量ppm以下であることが必要であるとされている。この条件を満たすシリコンとしては、シーメンス法を用いて製造した半導体用シリコン、すなわち、シリコン塩化物を蒸留後に熱分解して得られる高純度シリコンがある。しかしながら、このシーメンス法はコストが嵩むため、大量のシリコンを必要として低コスト性が要求される太陽電池用のシリコンを製造するのには不向きである。
そこで、太陽電池に使用可能な安価なシリコンを製造する技術が各種研究され、BとPを除く、Fe、Al、Ca等の各種金属不純物は、一方向凝固法で除去することが一般的に行なわれている。この一方向凝固法は、溶融状態のシリコン融液が固化する際、共存する溶融シリコンに金属不純物が多く分配し、固化したシリコンには金属不純物はわずかしか取り込まれないという現象を利用したものである。この一方向凝固法をはじめ、太陽電池に使用可能な安価なシリコンを製造するための各種技術では、シリコンを溶解・凝固させる工程が不可欠とされる場合が多々ある。
従来において、シリコン融液を凝固させる際には、シリコンへの不純物混入のおそれが少ないとされる石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型が主に使用されている。ところが、これらの鋳型にシリコン融液を注湯すると、固化したシリコン塊が鋳型に固着してしまい、シリコンの回収歩留まりが低下するといった問題がある。また、石英製や黒鉛製の鋳型は、通常、製作には専門業者による作業を必要とし、かつ、2週間〜1ヶ月程度の長い製作時間を要するために非常に高価であり、一度使用した鋳型を繰り返し使用できずに廃棄してしまうのは不経済であるといった問題もある。
そこで、上記のような問題を解決するために、組み立て・分解が可能な黒鉛製の鋳型であって、シリコン融液が接触する鋳型の内壁面に離型剤を塗布して離型層を形成することで、シリコンが固化した後に鋳型を分解してシリコン塊を取り出す方法が検討されている。例えば、黒鉛製の組立鋳型の内壁面をシリコンの酸化物、窒化物又は炭化物で被覆しておくことで、鋳型を傷つけることなくシリコン塊を取り出す方法が提案されている(特許文献1及び2)。ところが、この(特許文献1及び2)では、黒鉛製の鋳型の内壁面をシリコンの酸化物等で被覆する具体的手段が説明されていない。
また、窒化珪素粉末と有機バインダーを溶剤中に溶解したスラリーで鋳型の内壁面をコーティングして離型層を形成する方法が提案されている(特許文献3)。この方法を開示する(特許文献3)では、有機バインダーとしてポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート又はポリビニルブチレートを挙げるが(公報第4欄58〜60行)、これらはシリコンの融点以下の高温で離型層から脱離するものであり、なかでもポリビニルアルコールについては低温で脱離するため好ましいとしている(同第5欄9〜11行)。しかしながら、実際には、有機バインダーが離型層から脱離してしまうと、残された窒化珪素粉末同士はごく緩く焼結しているため、離型層自体の強度は弱く、離型層が破損する危険がある。離型層が破損すれば、その部分についてはシリコンが鋳型に固着してしまうという問題がある。離型層自体の強度を上げるためには、窒化珪素粉末よりも強固に焼結する粉末を選定することも考えられるが、焼結が強固になると、逆に焼結によって離型層に収縮が生じ、結果としてクラックが発生するおそれがあるため実用的ではない。すなわち、焼結し易い粉末は使用できないのが実情である。
更には、離型剤中に含まれる粉末の粒度の改善や、離型剤の組成比の改善、あるいは分散剤を添加する等によりシリコンの固着を防いだり、鋳型の繰り返し利用を可能にする方法が提案されている(特許文献4〜12)。しかしながら、これらの方法は、いずれも、本質的には粉末と有機バインダーを用いるものであり、使用される有機バインダーは高温にて離型層から脱離してしまう危険性は残る。例えば、上記の(特許文献11)では、450〜600℃でバインダーを脱脂することを特徴とし、バインダーとしては、前記したようなポリビニルアルコールであるのが好ましいとする。また、シリコンへの炭素取り込みを防止する観点から、バインダーは離型層より完全に除去するのがよいとする(特許文献11の段落[0007]〜[0011])。しかしながら、バインダーが除去されれば、当然ながら離型層自体の強度は低下し、破損するおそれが生じる。離型層が一部でも破損すると、そこからシリコンが鋳型に固着してしまい、シリコン回収の歩留まりが低下するとともに、これらの方法が目標とする鋳型の繰り返し使用も困難になる。
更にまた、鋳型の内壁面に離型剤を塗布して離型層を設ける際、この離型層の密度を鋳型側よりもシリコン融液と接触する側の方を高くする方法(特許文献13)や、窒化珪素、酸化珪素、又はこれらの混合物に金属シリコンを添加した離型剤からなる下地層と、窒化珪素、酸化珪素、又はこれらの混合物からなる離型剤によって形成した表面層との2層構造の離型層を設ける方法(特許文献14)が提案されている。しかしながら、これらいずれの方法も、プラズマ照射による離型層の形成を要するため、コストが高く、作業性に劣り、更には高価な黒鉛製の鋳型を使用しなければならないといった問題がある。
特開昭62−108515号公報 特開昭62−260710号公報 米国特許5431869号公報 特開平6−144824号公報 特開平7−206419号公報 特開平9−175809号公報 特開平10−182133号公報 特開2001−198648号公報 特開2002−239682号公報 特開2002−292449号公報 特開2002−321037号公報 特開2003−64388号公報 特開2005−46851号公報 特開2005−46866号公報
元来、溶融したシリコンを鋳型に注ぎ込む際にはシリコン融液が鋳型の内壁面と衝突するため、鋳型に離型層を設ける場合には、離型層自体が強固であって、かつ、鋳型に対して強く固着していることが必要とされる。しかしながら、上記で説明した通り、離型層について種々の検討がなされているものの、これらは未だ十分であるとは言えない。そこで、本発明者等は、特に離型層がなくても、シリコンへの不純物混入のおそれを石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型と同等レベルで排除でき、更には、簡便かつ短期間で作製できる鋳型について鋭意検討した結果、鋳型本体を実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とから形成することによって、シリコン融液と接触する面を強固にすることができると共に、シリコン融液との塗れ性が悪くシリコンの固着を防ぐことができ、且つ、シリコンへの不純物拡散性が石英や黒鉛製の鋳型と少なくとも同等の性能を有し、更には、石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型に比べて簡便にかつ短期間で鋳型を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明の目的は、特に離型層を設けなくてもシリコンの固着を防ぐことができると共に、シリコンへの不純物混入のおそれを石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型と同等レベルで排除でき、尚且つ、特に専門業者による作業を必要としなくても簡便に短期間で製造することができるシリコン凝固用鋳型を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、特に離型層を設けなくてもシリコンの固着を防ぐことができると共に、シリコンへの不純物混入のおそれを石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型と同等レベルで排除でき、尚且つ、特に専門業者による作業を必要としなくても簡便に短期間で得ることができるシリコン凝固用鋳型の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、シリコン融液を凝固させる際に用いる鋳型であって、鋳型本体が、実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とからなることを特徴とするシリコン凝固用鋳型である。
また、本発明は、シリコン融液を凝固させる際に用いる鋳型の製造方法であって、フェノール樹脂とシリカガラスとを混合した鋳型材料を200〜250℃の温度で熱硬化処理し、所定の形状の鋳型本体を得ることを特徴とするシリコン凝固用鋳型の製造方法である。
以下では、本発明のシリコン凝固用鋳型の製造方法について説明しながら、あわせてシリコン凝固用鋳型について説明する。
本発明においては、フェノール樹脂とシリカガラスとを混合した鋳型材料を200〜250℃の温度で熱硬化処理することにより、所定の形状の鋳型本体を得る。鋳型材料を形成するシリカガラスについては、粒径45〜150μmのシリカガラスが全シリカガラスに対して95質量%以上含まれるのが好ましい。シリカガラスの粒径が45μmより小さいと、フェノール樹脂との混合が均一にならないおそれがあり、反対に150μmより大きくなると、鋳型本体を得た際に鋳型本体の表面の空隙が大きく、ポーラス状になりやすい。そのため、シリコン融液を注湯したときにシリコン融液が含浸して固着しやすくなる。また、粒径45〜150μmのシリカガラスが全シリカガラスに対して95質量%未満であると、鋳型材料を形成する上でシリカガラスとフェノール樹脂との均一な混合物が得にくく、また、鋳型本体を形成した際に表面の空隙が大きくなってポーラス状になるおそれがあり好ましくない。
また、上記シリカガラスについては、粒径45μm未満のシリカガラスが全シリカガラスに対して5質量%未満含まれているのが更に好ましい。本発明によって得た鋳型本体は、実際にシリコン融液を注湯してシリコンを凝固させる際には、通常、鋳型本体を予め1550℃前後まで予熱するが、鋳型本体が1300℃前後になると、図1(b)に示すような、隣接した粒径45〜150μmのシリカガラス同士が結合するネッキング現象を発現する(この温度を「ネッキング開始温度」と呼ぶ場合がある)。この際、粒径45μm未満のシリカガラスが存在していると、粒径45〜150μmのシリカガラスの隙間に粒径45μm未満のシリカガラスが入り込み〔図1(a)で示す状態〕、ネッキング補助材として機能する。すなわち、より強固なネッキングを得ることができる。粒径45μm未満のシリカガラスが全シリカガラスに対して5質量%以上含まれると、鋳型本体を予熱した際に、シリカガラスが焼結し過ぎて、鋳型本体が収縮してしまうため好ましくない。一方で、粒径45μm未満のシリカガラスが全シリカガラスに対して3質量%より少ない場合には、ネッキング補助材として実質的に作用し難くなる。尚、図1中、1aが粒径45〜150μmのシリカガラスを表し、1bが粒径45μm未満のシリカガラスを表す。
また、本発明においては、鋳型材料が、シリカガラス100質量部に対して1〜10質量部のフェノール樹脂を含むのが好ましい。フェノール樹脂の含有量が1質量部より少ないと、鋳型本体の成型性に問題が生じるおそれがあり、反対に10質量部よりも多くなると、シリカガラスのネッキングが効率よく発現せず、シリコン融液を注湯してシリコンを凝固させる際に、保型性に問題を生じるおそれがある。
鋳型材料に用いるフェノール樹脂については、一般的に使用される公知の樹脂を用いることができ、いわゆるノボラック型のものであってもよく、レゾール型のものであってもよい。このフェノール樹脂は、常温で固形のものを鋳型材料として混合するようにしてもよく、通常使用される公知の溶媒を含んだフェノール樹脂溶液の状態で、鋳型材料として混合するようにしてもよい。
鋳型材料を形成するフェノール樹脂が溶媒を含んだフェノール樹脂溶液の場合には、フェノール樹脂溶液の粘度については、25℃において2〜10Pa・Sであるのが好ましい。すなわち、粘度が2Pa・Sより小さいと、フェノール樹脂に対して溶媒の量が相対的に多いことを意味するため、後に鋳型材料を熱硬化処理する際、溶媒が揮発し難くなって熱硬化処理が必要以上に時間を要してしまう。反対に、10Pa・Sより大きくなると、粘性が高すぎてシリカガラスと均一に混合されなくなるおそれがある。
また、上記フェノール樹脂については、固体のフェノール樹脂の場合にはフェノール樹脂中の固定炭素が80質量%以上であるのが好ましく、一方、上記フェノール樹脂溶液を用いる場合には、フェノール樹脂溶液中の固定炭素が40質量%以上となるようにするのが好ましい。後述するように、鋳型材料を所定の温度で熱硬化処理すると、フェノール樹脂は硬化してフェノール樹脂硬化物となり、3次元ネットワークを形成するものと考えられる。そして、使用時の予熱で鋳型本体が1000℃前後になると、今度はフェノール樹脂硬化物の炭化が開始すると考えられる。したがって、固定炭素の割合が、それぞれ上記範囲未満であると、使用時の予熱で鋳型本体が更に1300℃前後まで熱せられた際に、残存するフェノール樹脂硬化物の量(すなわち、残炭率)が少なくなって、シリカガラス同士の焼結が進行し過ぎ、鋳型本体が収縮変形してしまうおそれがある。尚、固定炭素の量については、それぞれ示差熱・熱重量分析によって求めることができる。
また、本発明において、鋳型材料に用いるフェノール樹脂が、加熱してもそれ自身では硬化しないフェノール樹脂である場合には、鋳型材料に、フェノール樹脂100質量部に対して硬化剤を20質量部以上添加するようにしてもよい。硬化剤の量が20質量部より少ないと、フェノール樹脂の全てが硬化しない可能性がある。硬化剤の種類については、フェノール樹脂の硬化剤として使用されるものであれば制限はなく、具体例としてはヘキサミンを挙げることができる。尚、添加する硬化剤の量が30質量部を超えると、その効果が飽和するため、この値を上限とするのがよい。
上記鋳型材料を、本発明においては、200〜250℃の温度で熱硬化処理し、所定の形状の鋳型本体を得る。熱硬化処理の温度が200℃より低いと、鋳型材料中のフェノール樹脂の熱硬化が十分になされない可能性があり、反対に250℃より高くなってもその効果は飽和する。尚、熱硬化処理の時間については、形成する鋳型本体の形状等に応じて、適宜選択すればよい。
上記熱硬化処理によって、鋳型材料を形成するフェノール樹脂は、熱硬化してフェノール樹脂硬化物となり(硬化剤を用いた場合には、フェノール樹脂と硬化剤とが反応してフェノール樹脂硬化物となり)、3次元ネットワークを形成するものと考えられる。一方、シリカガラスについては、熱硬化処理の温度ではネッキング等の変化は生じないものと考えられる。つまり、熱硬化処理して得た鋳型本体は、実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とからなる。ここで、実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とからなるとは、鋳型本体の保型性を維持する上で影響を及ぼさない程度に、熱硬化されずに残ったフェノール樹脂や硬化剤が含まれていてもよいことを意味する。また、鋳型本体が本発明における作用効果を奏する上で影響を及ぼさない程度であれば、その他第三成分が含まれていてもよいことを意味する。尚、熱硬化されないフェノール樹脂が影響を及ぼさない程度に残っていたとしても、鋳型本体を使用する際に、鋳型本体が予熱されるため、特に問題は生じない。
既に説明した内容と一部重複するが、熱硬化処理して得た、本発明の鋳型本体の好ましい形態は、シリカガラス100質量部に対して1〜10質量部のフェノール樹脂硬化物からなるのがよく、粒径45〜150μmのシリカガラスが全シリカガラスに対して95質量%以上含まれるのがよく、粒径45μm未満のシリカガラスが全シリカガラスに対して5質量%未満含まれるのがよい。
また、本発明においては、例えば、次のような方法で鋳型材料を成型した上で、熱硬化処理するのがよい。
例えば、上部が開口して箱状に形成された箱状型枠と、この箱状型枠内に収容される中子との隙間に鋳型材料を充填して、鋳型材料を所定の形状に保持した上で、熱硬化処理を行えば、所定の形状の鋳型本体を成型することができる。この際、箱状型枠と中子の形状は、必要とする鋳型本体の形状に応じて適宜設計すればよい。
別の例としては、板状体を成型可能な板用型枠内に鋳型材料を充填したものを熱硬化処理することにより、所定の形状の板状鋳型部材を必要な枚数作製し、得られた板状鋳型部材を、鋳型本体の底面部及び側壁部に対応するように箱状に組み立てれば、所定の形状の鋳型本体を得ることができる。この際、板状鋳型部材の形状や必要枚数については、必要とする鋳型本体の形状に応じて適宜設計すればよい。
上記箱状型枠、中子、及び板用型枠の材質については、一般的に使用される金型、合成樹脂型等を挙げることができるが、寸法精度や汚染安定性等の観点から、好ましくは合成樹脂型であるのがよい。尚、これらの型枠は割り型が一般的であり、脱型を容易にするためにテトラフルオロエチレン等の離型剤をスプレーコーティングしてもよい。あるいは、型枠自体をテトラフルオロエチレンから形成してもよい。
また、得られた鋳型本体の側面を形成する側壁部の厚みについては、好ましくは10〜15mmとなるようにするのがよい。厚みが10mmより薄いと鋳型の側面からの抜熱が大きくなり、製品として良好な柱状結晶のシリコンを得づらくなり、反対に、15mmより厚くなると抜熱に関する効果は変わらないため経済的ではない。一方、鋳型本体の底面となる底面部の厚みについては、2〜5mmとするのがよい。2mmより薄いと強度的に弱くなり、反対に5mmを超えると抜熱しにくくなる。
また、本発明においては、少なくともシリコン融液と接触する鋳型本体の内壁面(側壁部及び底面部の内側表面)に、窒化珪素を含んだ窒化珪素溶液を塗布し、乾燥させて実質的に窒化珪素からなる離型層を形成してもよい。鋳型本体自体が、シリコン融液と塗れ性が悪いため、シリコンを凝固させた後のシリコンの固着は十分に防止できるが、離型層を設けることでより確実にシリコンを離型できる。また、本発明の鋳型内壁面に形成された離型層は、親和性が良好なため、破損しにくい。万が一、離型層が破損し、シリコン融液が鋳型本体側に含浸したとしても、鋳型本体自体がシリコンの固着を防ぐことができるため問題はなく、離型層を設けることで、シリコンの固着を防ぐことができる効果を更に一層向上させることができる。尚、この離型層については、シリコンへの不純物混入等において影響を及ぼさない程度であれば、窒化珪素以外の成分が含まれていても問題はない。
窒化珪素溶液とする溶媒については、水やエタノール等の通常用いられるものを挙げることができ、また、窒化珪素については、好ましくは粒径が50μm以下のものであるのがよい。粒径が50μmより大きなものであると、離型層における空隙が大きくなりすぎて、シリコン融液が含浸し易くなってしまう。そのため、離型層を設ける場合には、その効果を十分に発揮せしめるために、上記粒径の窒化珪素を用いるのが好ましい。
本発明のシリコン凝固用鋳型は、鋳型本体が実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とからなり、シリカガラスは比較的熱膨張率が小さいため、シリコンを凝固させる際に高温状態に晒されても、シリコン融液と接触する面を強固な状態のまま維持することができる。また、このシリコン融液と接触する面は、シリコン融液との塗れ性が悪くシリコンの固着を防ぐことができる。更には、シリコンへの不純物汚染を石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型と同等に排除することができる。
また、本発明においては、所定の鋳型材料を熱硬化処理することによって、所定の形状の鋳型本体を得ることが可能なため、石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型に比べて短期間にかつ簡便に鋳型を製造することができて、石英製鋳型や黒鉛製鋳型等と比べても低コストで製造することができる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
図2は、上部が開口して箱状に形成された箱状型枠3と中子4とを用いて鋳型材料2を所定の形状に保ち、この鋳型材料2を熱硬化処理して成型することにより鋳型本体5を得る手順(概略)を示す断面説明図である。先ず、特定の粒径を有したシリカガラスとフェノール樹脂とをそれぞれ所定量用意し、これらを図示外のミキサーを用いて15〜20分間程度混合し、鋳型材料2を得る。尚、この鋳型材料2は、通常、粘土状の混練物になる。この際に用いるフェノール樹脂については、常温で固形のものを使用してもよく、例えばフェノール、エチレングリコール等の通常使用される公知の溶媒を含んだフェノール樹脂溶液の状態のものを使用してもよい。また、フェノール樹脂が自己硬化しないものを使用する場合には、別途、ヘキサミン等の硬化剤を添加するようにしてもよい。
次いで、上記で得た鋳型材料2の一部を、鋳型本体5の底面部5aの厚さに相当する量となるように、箱状型枠3の底の部分に敷設し〔図2(1)の状態〕、この鋳型材料2の上に中子4を載せる。この際、中子4の側面と箱状型枠3の内壁面との間に、全て、所定の隙間(鋳型本体5の側壁部5bの厚みに相当する隙間)が形成されるようにする。次いで、上記箱状型枠3と中子4との隙間に鋳型材料2を充填して、鋳型本体5の形状となるように鋳型材料2の形状を保持させる〔図2(2)の状態〕。
上記のようにして準備した鋳型材料2を、箱状型枠3と中子4ごと図示外のオーブンに入れ、大気雰囲気下にて200〜250℃の温度で焼成する熱硬化処理を行う。熱硬化処理の時間については、鋳型本体5の形状にもよるが、通常4〜6時間かけて行うのがよい。熱硬化処理が終了したら、室温まで冷却させ、その後、中子4及び箱状型枠3を取り除けば、箱状の鋳型本体5からなるシリコン凝固用の鋳型を製造することができる〔図2(3)の状態〕。なお、必要に応じて、この鋳型本体5の内壁面に窒化珪素を含んだ窒化珪素溶液を刷毛やスプレー等の公知の方法を用いて塗布し、乾燥させることによって、実質的に窒化珪素からなる離型層6を設けたシリコン凝固用鋳型としてもよい。
一方、図3は、板状体を成型可能な板用型枠11を用いて、これに鋳型材料2を充填し、熱硬化処理することで板状鋳型部材12を作製し、複数用意した板状鋳型部材12を箱状に組み立てることによって、鋳型本体13を製造する工程を示す断面説明図である。先ず、上記と同様にして得た鋳型材料2を板用型枠11内に充填し〔図3(1)の状態〕、これを板用型枠11ごと図示外のオーブンに入れ、上記と同様の熱硬化処理を行う。熱硬化処理が終了した後、室温まで冷却し、板用型枠11を取り外せば1枚の板状鋳型部材12を得ることができる。同様の作業を必要な分だけ行い、所定枚数(この場合は合計5枚)の板状鋳型部材12を作製する〔図3(2)の状態〕。
次に、上記で得た5枚の板状鋳型部材12を鋳型本体13の底面部13a及び側壁部13bに対応するように箱状に組み立てれば〔図3(3)の状態〕、鋳型本体13からなるシリコン凝固用鋳型を製造することができる。この際、鋳型本体13の側壁部13bに対応する板状鋳型部材12は、その自重によって箱状に組み立てた状態を維持することはできるが、板状鋳型部材12の接合部分を液状の速乾性フェノール樹脂等の接着剤を用いて固定するようにしてもよく、あるいは、側壁部13bに対応する板状鋳型部材12が倒れないように、箱状に組み立てた後に、側壁部13bに対応する板状鋳型部材12を黒鉛製の紐で縛って固定するようにしてもよい。更には、図3(3)の実線で囲んだ中に示すように、板状鋳型部材12の接合部分を互いに相補的な形状にしておくことで、箱状に組み立てた状態が維持され易くなるようにしてもよい。尚、箱状に組み立てた鋳型本体13の内壁面には、先の図2の場合で説明したように、離型層を形成するようにしてもよい。
ところで、鋳型本体を使用してシリコンを凝固させる際には、鋳型本体の外壁面外側に抵抗式ヒーター等を配置して、予め1450℃程度まで予熱しておくことが一般的である。この際、1000℃前後では鋳型本体を形成するフェノール樹脂硬化物の炭化が開始するが、そのほとんどは残炭すると考えられ、更に1300℃前後からは、その残炭率は徐々に低下していくものと考えられる。一方、シリカガラスについては、1300℃程度でシリカガラス同士が結合するネッキングが開始すると考えられるため、図3を用いて説明したように、板状鋳型部材12を箱状に組み立てて鋳型本体13を形成する場合には、板状鋳型部材12の接合部分は、このシリカガラスのネッキングによって接着する。そのため、板状鋳型部材12を用いて鋳型本体13を形成する場合には、板状鋳型部材12を組み立てた際に、箱状の状態がある程度維持できるのであれば特に問題は生じない。
ところで、図2においては一体型の鋳型本体5を用いて説明し、図3においては、板状鋳型部材12を合計5枚用意して箱状に組み立てた組み立て型の鋳型本体13を用いて説明しているが、本発明における鋳型本体は、これらの形状のものに限定されるものではない。すなわち、上部が開口してシリコン融液を流し込むことができるものであれば、鋳型本体の形状に特に制限はなく例えば、鋳型本体の底面部が、矩形のものであったり、円形、楕円形、三角形以上の多角形等の形状のものであってもよい。また、鋳型本体の側壁部の形状についても、任意の形状を選択することができ、凝固させて得るシリコン塊が必要な形状となるように、適宜設計することができる。
[鋳型の製造]
シリカガラス、フェノール樹脂、及び硬化剤を、それぞれ表1に示す量となるように用意し、これらをミキサーでおよそ20分間混練し、粘土状の鋳型材料2を得た。シリカガラスについては、篩を使用して粒径45〜150μmのシリカガラスと、粒径45μm未満のシリカガラスを準備し、全シリカガラスに対して、粒径45〜150μmのシリカガラスが95質量%、及び粒径45μm未満のシリカガラスが5質量%となるようにした。また、フェノール樹脂としては、フェノールにフェノール樹脂が溶けたフェノール樹脂溶液を用いた。このフェノール樹脂溶液は、固定炭素が40質量%含まれており、25℃における粘度は5Pa・Sであった。更に、硬化剤としてはヘキサミン(純度99.5%)を使用し、シリカガラス100質量部に対して0.35質量部となるようにした。
次いで、上記で得た鋳型材料2を、図2に示すような箱状型枠3と中子4を用いて鋳型本体5の形状に保持した。箱状型枠3はテフロン(登録商標)樹脂製であって、上部が開口した立方体形状をした箱状の型枠であり、開口部分が400mm×400mm、及び深さが400mm(ともに内径)である。また、中子4はテフロン(登録商標)樹脂製であって、一辺の長さと高さがともに370mmの立方体である。先ず、箱状型枠3の底の部分に、厚さ2mmとなるように鋳型材料2の一部を敷設した。次に、この鋳型材料2の上に中子4を載せ、中子4の側面と箱状型枠3の内壁面との間に全て15mmの隙間を設けるようにした。次いで、中子4の側面と箱状型枠3の内壁面との間に形成された隙間を全て埋めるように鋳型材料2を充填し、箱状型枠3及び中子4ごと図示外のオーブンに入れて、鋳型材料2を200℃で4時間加熱する熱硬化処理を行った。
熱硬化処理が終了した後、室温まで放冷して、中子4と箱状型枠3を取り外すことで、外径が縦400mm×横400mm×高さ400mm、及び内径が370mm×370mm×深さ398mmの鋳型本体5を得て、シリコン凝固用鋳型を完成した。この実施例1においては、シリコン凝固用鋳型の製造に要した時間は6時間であった。
[性能評価]
上記で得た鋳型本体5を、誘導加熱式の溶解炉を有するチャンバーの中に設置し、チャンバー内をアルゴンガスで置換した。チャンバー内がアルゴンガス大気圧に置換された後、溶解炉では高純度シリコン(99.999999999質量%以上)1000kgを1550℃で溶解し、鋳型本体5については抵抗式ヒーターにて、毎分5℃の昇温速度で1550℃まで加熱した。次いで、溶解炉内の溶融シリコン(シリコン融液)100kgを鋳型本体5内へ傾注し、その後、鋳型本体5の温度を徐々に下げて、シリコンを下方から徐々に凝固させた。シリコン全体が凝固した後に、抵抗式ヒーター等の電源を切り、室温まで炉冷した。室温まで冷却した後、鋳型本体5と凝固したシリコンとを分離させたところ、鋳型本体5には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型本体5とシリコンとは容易に剥離し、鋳型本体5へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。
また、得られたシリコン塊の中心部分から分析用サンプルを採取し、ICP−AES(ICP-発光)分析法による定性分析を行った。その結果、Fe、Al、B、及びPは検出されず、これらの金属不純物による汚染は無いことが確認された。尚、上記ICP−AES分析法における検出限界値は、Fe:0.02質量ppm、Al:0.02質量ppm、B:0.05質量ppm、及びP:0.05質量ppmである。
上記の性能評価の結果をまとめて表2に示す。
Figure 0004838591
Figure 0004838591
[鋳型の製造]
フェノール樹脂として固形状のもの(固定炭素85%)を用い、表1に示す量のシリカガラス、フェノール樹脂、及び硬化剤を使って、実施例1と同様にして、外径が縦400mm×横400mm×高さ400mm、及び内径が370mm×370mm×深さ398mmの鋳型本体5を得た。次いで、この鋳型本体5の内壁面(鋳型本体5の底面部5a及び側壁部5bの内側表面)に、粒径50μmの窒化珪素を50質量部、及びエタノールを50質量部含んだ窒化珪素溶液を約0.3mmの厚さの塗布量となるように刷毛を用いて塗布し、25℃で1時間乾燥させて窒化珪素からなる離型層6を形成し、シリコン凝固用鋳型を完成させた。この実施例2において、シリコン凝固用鋳型の製造に要した時間は6.5時間であった。
[性能評価]
上記で得たシリコン凝固用鋳型の性能評価について、実施例1と同様にして行なったところ、凝固したシリコンが取り除かれた後の鋳型本体5には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型本体5とシリコンとは容易に剥離し、鋳型本体5へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。更には、ICP−AES分析法による定性分析の結果、不純物金属による汚染は無かった。
結果を表2に示す。
[鋳型の製造]
図3に示すような板用型枠11を5つ用意した。このうちの4つは、内径が400mm×400mm×深さ15mmのテフロン(登録商標)製の板用型枠11であり、鋳型本体13の側壁部13bに対応する板状鋳型部材12を作製するためのものである。残りの1つは、内径が400mm×400mm×深さ2mmのテフロン(登録商標)製の板用型枠11であり、鋳型本体13の底面部13aに対応する板状鋳型部材12を作製するためのものである。これらの板用型枠11内に、それぞれ実施例1と同様にして用意した鋳型材料2を充填し、鋳型材料2が充填された板用型枠11をまとめて図示外のオーブンに入れて、鋳型材料2を200℃で4時間加熱する熱硬化処理を行った。熱硬化処理後は、それぞれの板用型枠11から板状鋳型部材12を取り出し、鋳型本体13の底面部13a及び側壁部13bに対応するように、板状鋳型部材12を箱状に組み立てた。このようにして、外径が縦400mm×横400mm×高さ400mm、及び内径が370mm×370mm×深さ398mmの鋳型本体13を作製し、シリコン凝固用鋳型を完成させた。この実施例3においては、シリコン凝固用鋳型の製造に要した時間は6.5時間であった。
[性能評価]
上記で得たシリコン凝固用鋳型の性能評価について、実施例1と同様にして行なったところ、凝固したシリコンが取り除かれた後の鋳型本体13には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型本体13とシリコンとは容易に剥離し、鋳型本体5へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。更には、ICP−AES分析法による定性分析の結果、不純物金属による汚染は無かった。
結果を表2に示す。
[鋳型の製造]
実施例3と同じ板用型枠11を5つ用意し、この板用型枠11内に実施例2と同じ鋳型材料を充填し、実施例3と同様にして、外径が縦400mm×横400mm×高さ400mm、及び内径が370mm×370mm×深さ398mmの鋳型本体13を作製した。次いで、この箱状に組み立てた鋳型本体13の側壁部13bに対応する4つの板状鋳型部材12の外周を、黒鉛製の紐でくくり固定した。そして、この鋳型本体13の内壁面に、粒径50μmの窒化珪素を50質量部、及びエタノールを50質量部含んだ窒化珪素溶液を約0.3mmの厚さの塗布量となるようにスプレーを用いて塗布し、25℃で1時間乾燥させて窒化珪素からなる離型層を形成し、シリコン凝固用鋳型を完成させた。この実施例4のシリコン凝固用鋳型を製造するのに要した時間は7時間であった。
[性能評価]
上記で得たシリコン凝固用鋳型の性能評価について、実施例1と同様にして行なったところ、凝固したシリコンが取り除かれた後の鋳型本体13には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型本体13とシリコンとは容易に剥離し、鋳型本体5へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。更には、ICP−AES分析法による定性分析の結果、不純物金属による汚染は無かった。
結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1で得た鋳型本体と同じ形状であって、黒鉛製の鋳型本体を用意した。窒化珪素100質量部、ポリビニルアルコール5質量部、及び純水100質量部からなる窒化珪素溶液を、上記黒鉛製鋳型の内壁面に厚さ約0.3mmとなるように刷毛を用いて塗布し、20℃で24時間乾燥させて離型層を形成し、比較例1に係る鋳型を完成させた。尚、上記黒鉛製の鋳型本体を製造するには専用の製造装置と技術者を要し、離型層の形成を含めると、鋳型の完成までには1週間を要した。
比較例1に係る鋳型の性能評価を、実施例1と同様にして行なった。室温まで冷却された凝固シリコンと黒鉛製鋳型とを分離したところ、鋳型の側壁部での離型が悪く、各側壁部の内側表面にはシリコンの固着が確認された。鋳型側壁部にシリコンが固着した部分を観察したところ、離型層が剥離していることが確認された。シリコンが固着した部分については、鋳型を昇温させた際に、離型層中のポリビニルアルコールが分解し、気化しため、離型層が機能を発揮しなかったことが予想される。このため、鋳型の損傷が確認され、溶融シリコンの液漏れも認められた。また、得られたシリコン塊は、四角柱の状態では取り出すことはできず、鋳型に固着したシリコンは回収不能であった(回収率87%)。尚、ICP−AES分析法による定性分析の結果では、不純物金属による汚染は無かった。
結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例1で得た鋳型本体と同じ形状であって、石英製の鋳型本体を用意した。窒化珪素100質量部、ポリビニルアルコール5質量部、及び純水100質量部からなる窒化珪素溶液を、上記黒鉛製鋳型の内壁面に厚さ約0.3mmとなるようにスプレーを用いて塗布し、20℃で24時間乾燥させて離型層を形成し、比較例2に係る鋳型を完成させた。尚、上記黒鉛製の鋳型本体を製造するには専用の製造装置と技術者を要し、離型層の形成を含めると、鋳型の完成まで4週間を要した。
比較例2に係る鋳型の性能評価を、実施例1と同様にして行なったところ、凝固したシリコンが取り除かれた後の鋳型には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型とシリコンとは容易に剥離し、鋳型へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。更には、ICP−AES分析法による定性分析の結果、不純物金属による汚染は無かった。
結果を表2に示す。
[比較例3]
一般耐火用であるシリカ−マグネシア系キャスタブルを用いて、実施例1で得た鋳型本体と同じ形状の鋳型本体を作製した。また、この鋳型本体の内壁面に、比較例1と同様にして離型層を形成し、比較例3に係る鋳型を完成させた。尚、この鋳型を作製するのには2日間を要した。
比較例3に係る鋳型の性能評価を、実施例1と同様にして行なったところ、凝固したシリコンが取り除かれた後の鋳型には何ら損傷は認められず、溶融シリコンの液漏れもなかった。また、凝固したシリコンを取り出す際には鋳型とシリコンとは容易に剥離し、鋳型へのシリコンの固着は無く、370mm×370mm×高さ約310mmのシリコン塊を得ることができた(回収率99%)。しかしながら、ICP−AES分析法による定性分析の結果、シリコン中には、Al:200質量ppm、P:15質量ppm、B:10質量ppm、及びFe:150質量ppmの各濃度での不純物金属による汚染が確認された。
結果を表2に示す。
本発明におけるシリコン凝固用鋳型は、シリコン融液が接触又は衝突する面が強固であって、シリコンを凝固させた際に石英製の鋳型や黒鉛製の鋳型と同程度に不純物汚染を回避することができ、また、鋳型本体の表面はシリコン融液との塗れ性が悪いため、シリコンの固着を可及的に防ぐことができる。そのため、一方向凝固法等を利用して太陽電池用の基板等に用いる多結晶シリコンを製造する鋳型として好適である。また、本発明によれば、上記のようなシリコン凝固用鋳型を、石英製鋳型や黒鉛製鋳型と比べて簡便にかつ短期間で製造することができるため、コストや作業性の面においても工業的に極めて有利である。
図1(a)は、本発明の鋳型本体を形成するシリカガラスの様子を示す模式図であり、図1(b)は、鋳型本体にシリコンを流し込み、シリコンを凝固させる使用時にシリカガラス同士が結合する様子を示す模式図である。 図2は、型枠と中子を用いて鋳型材料を熱硬化処理し、鋳型本体を製造する工程(概略)を示す断面説明図である。 図3は、板用型枠を用いて複数枚の板状鋳型部材を作製し、これらを箱状に組み立てて、鋳型本体を製造する工程(概略)を示す断面説明図である。
符号の説明
1:シリカガラス、1a:シリカガラス(粒径45〜150μm)、1b:シリカガラス(粒径45μm以下)、2:鋳型材料、3:箱状型枠、4:中子、5,13:鋳型本体、5a,13a:底面部、5b,13b:側壁部、6:離型層、11:板用型枠、12:板状鋳型部材。

Claims (19)

  1. シリコン融液を凝固させる際に用いる鋳型であって、鋳型本体が、実質的にシリカガラスとフェノール樹脂硬化物とからなることを特徴とするシリコン凝固用鋳型。
  2. 鋳型本体が、シリカガラス100質量部に対して1〜10質量部のフェノール樹脂硬化物からなる請求項1に記載のシリコン凝固用鋳型。
  3. 鋳型本体の側面を形成する側壁部の厚みが10〜15mmである請求項1又は2に記載のシリコン凝固用鋳型。
  4. 粒径45〜150μmのシリカガラスが、全シリカガラスに対して95質量%以上含まれる請求項1〜3のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型。
  5. 粒径45μm未満のシリカガラスが、全シリカガラスに対して5質量%未満含まれる請求項4に記載のシリコン凝固用鋳型。
  6. 鋳型本体の内壁面には、実質的に窒化珪素からなる離型層が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型。
  7. 窒化珪素の粒径が50μm以下である請求項6に記載のシリコン凝固用鋳型。
  8. シリコン融液を凝固させる際に用いる鋳型の製造方法であって、フェノール樹脂とシリカガラスとを混合した鋳型材料を200〜250℃の温度で熱硬化処理し、所定の形状の鋳型本体を得ることを特徴とするシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  9. 上部が開口して箱状に形成された箱状型枠とこの箱状型枠内に収容された中子との隙間に鋳型材料を充填し、この鋳型材料を熱硬化処理して鋳型本体を得る請求項8に記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  10. 板状体を成型可能な板用型枠内に鋳型材料を充填し、この鋳型材料を熱硬化処理することで所定の枚数の板状鋳型部材を作製し、これらの板状鋳型部材を鋳型本体の底面部及び側壁部に対応するように箱状に組み立てて鋳型本体を得る請求項8に記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  11. 鋳型材料が、シリカガラス100質量部に対して1〜10質量部のフェノール樹脂を含む請求項8〜10のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  12. 粒径45〜150μmのシリカガラスが全シリカガラスに対して95質量%以上含まれる請求項8〜11のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  13. 粒径45μm未満のシリカガラスが、全シリカガラスに対して5質量%未満含まれる請求項12に記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  14. フェノール樹脂が溶媒を含んだフェノール樹脂溶液の場合、フェノール樹脂溶液の25℃における粘度が2〜10Pa・Sである請求項8〜13のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  15. フェノール樹脂が溶媒を含んだフェノール樹脂溶液の場合、フェノール樹脂溶液中の固定炭素が40質量%以上である請求項8〜14のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  16. フェノール樹脂が固体のフェノール樹脂の場合、フェノール樹脂中の固定炭素が80質量%以上である請求項8〜13のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  17. 鋳型材料が、フェノール樹脂100質量部に対して硬化剤を20質量部以上含む請求項8〜16のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  18. 鋳型本体の内壁面に窒化珪素を含んだ窒化珪素溶液を塗布し、乾燥させて実質的に窒化珪素からなる離型層を形成する請求項8〜17のいずれかに記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
  19. 窒化珪素の粒径が50μm以下である請求項18に記載のシリコン凝固用鋳型の製造方法。
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