JP4834321B2 - 構造体 - Google Patents

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本発明は、多孔質体と、蓋部材と、蓋部材により多孔質体に保持された物質と、多孔質体と蓋部材を接続する接続部材とを有する構造体及びその構造体に関する。
近年、外部からの刺激(例えば、光照射,電場印加,温度変化,pH変化,化学物質の添加等)の入力(環境変化)に応じて、形状や物性を変化することで機能を発揮する刺激応答材料について研究が盛んである。刺激応答材料は、上記のような特性を利用して外部から機能発現を制御できるという点において多くの分野での応用が期待されている。刺激応答材料の応用分野の一つとして、例えば、ドラッグデリバリー技術への応用が挙げられる。
従来、一般的な薬剤は、注射、服用、塗布等の方法により体内に投与され、目標となる部位まで体内を循環しながら到達する。しかしながら、これらの方法によると目的の部位に至る途中で、薬剤化合物が目的の患部以外の組織に広く拡散したり、消化管などから吸収・分解されたりして、最終的に患部に到達できる量(濃度)は投与量と比較してかなり低くなるのが一般的である。その為、本来必要な薬剤量以上を投与する必要がある。
このような課題に対して、薬剤化合物の吸収・分解に係わる部位を、薬剤効果を下げることなく、吸収・分解の対象となる化学構造と異なる構造に修飾する方法や薬剤運搬体を利用する方法がある。特に、薬剤運搬体を用いて目標とする患部または標的物質(例えば、臓器や組織、細胞、病原体等)に薬剤を集中的に運び込む技術は、ドラックデリバリーシステム(以下、DDS)と呼ばれ、このDDS技術を用いることで、薬剤の治療効果を高めると共に投与量を削減することでの副作用の軽減も期待されている。現在検討されている薬剤運搬体の例として、リポソームやリピッドマイクロスフェアー等が挙げられる。
リポソームは、親水基と疎水基から構成される脂質の集合体からなり、疎水基の内側に配置した二重層を有する球形を、外部の水環境に対して形成することにより安定に存在できるものである。例えば、レシチン、コレステロールなどの天然に存在する脂質を有機溶媒に溶解し、超音波処理などで水に拡散させ、安定な二重膜構造を有するリポソームが形成される際に、被運搬体である薬剤をリポソーム内に封入させることができる。薬剤が疎水性の高い化合物である場合は二重膜内部に保持され、親水性の高い物質の場合はリポソームの二重膜の内水相に保持されていると考えられている。
リピッドマイクロスフェアーは、薬剤を内包した大豆油をレシチンとともに水に懸濁したものであり、レシチンがその表面にあり、内部に薬剤を含んだ大豆油が封入されている。このようなリピッドマイクロスフェアーに各種抗炎症性薬物などを封入した製剤が臨床応用されている。特開平05−221852号公報は、脂溶性制ガン剤を脂肪酸エステルに溶解し、リン脂質等の界面活性剤を加えてホモジナイズすることで脂肪酸エステルからなる微少粒子表面を被覆することによりリピッドマイクロスフェアーを形成する方法を開示している。しかしながら、上記リポソームは血液中に存在する脂質成分やタンパク質成分との接触により構造が破壊されやすく、体内においての長時間安定性は十分であるとは言いがたい。
安定性の向上を目的としたポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームや、多糖類修飾リポソームなども検討されているが、十分な安定性は得られていない場合が多い。また、リピッドマイクロスフェアーを採用するには、薬剤が脂溶性物質である必要がある。更に、リポソーム同様に血液中で安定性が低く、細網内皮系への移行しやすい等の指摘もあり、薬剤運搬体としては更なる改良が必要とされる。
上記のような薬剤運搬体の血中での安定性に関して、ポリエチレングリコール(親水性部位)及びポリアミノ酸(疎水性部位)からなるブロック共重合体が、水溶液またはリン酸緩衝液中においてミセル様の安定な構造を形成することを利用して、この構造体中に抗ガン剤等の薬剤を内包する技術により血液中での安定性が向上する点の報告がある(Drug Delivery System Vol.6(2)、pp77、1991)。
また、米国特許第3,854,480号明細書は、長期間にわたって制御された速度で薬剤を放出するドラッグデリバリーデバイスを開示している。この明細書は、血液等の体液に対して不溶性材料(例えば、ポリエチレン、及びエチレンとビニルアセテートの共重合体)からなる膜中に薬剤が分散したマトリックス(例えば、ポリジメチルシロキサン)のコア部を設けた構造とし、このコア部及び膜から拡散によって薬剤を外部に透過放出させることができる技術を開示している。
しかしながら、これらの文献には、患部に対して集中的に薬剤を放出するための技術に関しての開示はない。薬剤の治療効果を高め、且つ副作用を低減するためには、投与後の血液中などの体内や、皮膚などの体表面での安定性に加えて、必要な箇所において薬物放出が可能であるという放出制御機能までも兼ね備えた薬物運搬体の開発が望まれている。
このような要望に対して、血液等の体液中でも安定なシリカ系多孔質材料に薬剤等の化合物を内包させて、外部から刺激により化合物の放出を制御できる技術が開示されている(J.AM.CHEM.Soc.、Vol.125、pp4451、2003)。この文献には、薬物を内包する材料として、2−(propyldisulfanyl)ethylamineで修飾したメソポ−ラスシリカ(MCM−41)(平均粒径:200nm、平均孔径:2.3nm、以下シリカ構造体)が開示されている。ここでは、シリカ構造体を化合物(ATP、バンコマイシン)水溶液に浸漬し、酢酸チオールで修飾したCdS(平均粒径:2.0nm)を更に添加することで、シリカ構造体表面に配置されたアミノ基とCdS表面のカルボキシル基との間に化学結合による架橋を施すことでシリカ構造体をCdSでキャップして、薬剤を内包した構造体を作製している。また、シリカ構造体に内包した化合物の放出方法としては、DTTやメルカプトエタノール等の還元剤により処理することで、前述のdisulfanyl基のSS結合を開裂させ、CdSがメソポーラスシリカから分離されることによって内包された化合物を外部に放出できる方法が開示されている。
また、J.Material.Biomed Mater Res,51,pp293,(2000)においては、N−イソプロピルアクリルアミド―アクリルアミド共重合体(NIPAAm−AAm)のハイドロゲルをコアとして金にて被覆したナノ粒子が、800乃至1200nmの範囲の近赤外光を吸収し、光熱変換反応にてコアであるNIPAAm−AAmが膨潤し、微粒子構造が壊れる技術を開示している。更に、NIPAAm−AAmに薬剤を懸濁もしくは溶解させた場合の光応答による薬剤放出の可能性を示している。800乃至1200nmの近赤外光は人体の組織を透過し、無害であるあることから有用である。しかしながら、コア材料であるNIPAAm−AAmは、人体等の組織に対して安全性の面で十分であるとは言い難い。
先に挙げた方法によれば、患部に薬剤を内包したシリカ構造体と還元剤を共存させたり、金被覆NIPAAm−AAm微粒子を使用することにより、薬剤の放出制御が可能となると考えられるが、患部のみに還元剤を存在させる方法やその安全性等について未だ解決すべき技術的な課題が残る。
特開平05−221852号公報 米国特許第3,854,480号明細書 Drug Delivery System Vol.6(2)、pp77、1991 J.AM.CHEM.Soc.、Vol.125、pp4451、2003 J.Material.Biomed Mater Res,51,pp293,(2000)
本発明は、薬剤などの物質の放出制御が可能な構造体に関する従来技術に対する要求を満足すべくなされたものであり、所定部位での確実な薬剤などの物質の放出制御が可能である構造体を提供するものである。
上述のような課題を解決すべく本発明者らは鋭意研究の結果、以下の構造体の構成が好適であることを見出した。
すなわち、本発明の構造体の第一の形態は、化合物を内部に保持する構造体であって、
前記構造体が、
多孔質体と、蓋部材と、前記蓋部材と前記多孔質体とを接続する接続部材とを有し、
前記接続部材のうちの前記蓋部材との接続部分が、前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体を含み、
前記蓋部材の少なくとも一部が金で構成され、
前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体が金を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域を有する捕捉体であることを特徴とする。
本発明の構造体の第二の形態は、化合物を内部に保持する構造体であって、
前記構造体が、
多孔質体と、蓋部材と、前記蓋部材と前記多孔質体とを接続する接続部材とを有し、
前記接続部材のうちの前記蓋部材との接続部分が、前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体を含み、
前記蓋部材の少なくとも一部が酸化珪素で構成され、
前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体が酸化珪素を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域を有する捕捉体であることを特徴とする
本発明の構造体が示す効果の一つは、一以上の物質を保持するにあたって、多孔質体の表面(外表面及び細孔内表面を含む)、好ましくは、少なくとも細孔内表面とその開口周縁部で放出用の物質を保持することにより、単位体積あたりの表面積の大きな多孔質体の特徴を最大限に活用することが可能である点にある。また、蓋部材を使用することによって、多孔質体に保持した物質が自然拡散することを抑制することが可能となる。更には、蓋部材が、多孔質体表面と物理的または化学的に接続せしめられることによってその安定性をより向上させることが可能である。
以下、本発明に係る最良の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。尚、未実施形態に関わる要項については後述する。
(構造体)
本発明の構造体は、一以上の物質を放出可能に保持するものであって、多孔質体と、蓋部材と、多孔質体と蓋部材とを物理的または化学的に接続せしめる生体高分子化合物(以下『接続部材』と称することもある)を含み構成される有機化合物からなる接合部材と、を含み構成されている。
構造体の大きさは、基材となる後述する多孔質体の大きさに応じて規定され、用途によって選択して設計することが可能である。例えば、DDS用途で使用する場合は、粒径または粒子の最大長が200nm以下であることが好ましく、より細部の毛細血管への運搬を目的とする場合はより好ましくは50nm以下である。なお、その下限は特に限定されないが、取り扱い性を考慮した場合は、粒径または粒子の最大長を5nm以上とするとよい。物質は多孔質体の外部表面、細孔内部空間及び多孔質体の内部表面すなわち細孔の内壁から成る群から選択される少なくとも一つに保持される。物質は、外部表面若しくは内部表面に保持されることが好ましく、少なくとも内部表面と細孔の開口周縁部に保持されていることがさらに好ましい。
(多孔質体)
本発明の構造体に用いる多孔質体は、本発明の効果を発揮する為に、単位体積中の表面積すなわち比表面積が大きいものである。更に、この多孔質体に設けられた細孔は、本発明の効果を奏する為に、構造体外の環境と接するものであり、構造体表面から外界に通じている。細孔の形状は、放出可能に細孔内に保持される物質や外部環境すなわち物質が懸濁または溶解されている分散液または溶液の特性に応じて選択する。細孔は多孔質体を貫通するものであることが好ましい。細孔径としては1nm乃至10μmが好適であるが、より好ましくは50nm乃至1000nmである。
本発明に用いる多孔質体の材質は、本発明の構造体を形成しうるものであれば従来の既知の材料から適宜選択して用いることができる。具体的には、金属、金属酸化物、無機半導体、有機半導体、天然高分子化合物、合成高分子化合物、プラスチック、パルプ、(不)織布等の何れか1以上或いはその複合体を含んでなることができる。具体的な材料例としては、金属としては、金、銀、プラチナ、アルミ、銅等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化珪素、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、マグネタイト、フェライト、NbTa複合酸化物、WO3、In23、InSnO、MoO3、V25、SnO2、等、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムゲル等の不溶性無機塩等が挙げられる。有機高分子化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、などの従来既知のスチレン系重合性モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどの従来既知のメタクリル系重合性モノマー、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の従来既知のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル等の従来既知のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン等の従来既知のビニルケトン類などのビニル系重合性モノマー、からなる群より選択される重合性モノマーを重合または共重合させて製造された有機高分子化合物を挙げることができる。
その他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセテート、トリセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックからなるフィルム、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン等からなる多孔性高分子膜、木板、ガラス板、シリコン基板、木綿、レーヨン、アクリル、絹、ポリエステルなどの布、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、ダンボール紙、レジンコート紙などの紙を用いて、膜状やシート状とすることもできるが、勿論、これらに限定されるものではない。
上記材料群の中で、ドラッグデリバーなどの薬物運搬体としての応用用途を考えると血液を始めとする体液中での安定性、生体適合性、多孔質体の製造コストの考えた上では金属酸化物が好ましい。例えば、酸化珪素、酸化アルミ、酸化鉄及びフェライト等が挙げられる。
その中でも、光/磁気を用いた構造体が保持した物質の放出の制御を考えた場合、多孔質体の構成材料が信号となる光を吸収したり、磁気により影響を受ける材料であることは望ましくない。そのような観点から考えて、酸化珪素が最も好適な多孔質体構成材料である。
一方、多孔質体の形状としては、以下の構造を有するものを用いることが可能である。
・中空カラム状構造:任意の形状をした筒が多数並んでいる多孔質体(図14(d))
・多孔構造:任意の形状の穴がランダムに多数あいている多孔質体(図14(a))
・オパール構造:球状のものが最密に堆積した多孔質体(図14(b))
・逆オパール構造:オパール構造体において物質/細孔が逆になった多孔質体(図14(c))
・凹状構造:基板に複数の凹状の穴が存在している多孔質体(図14(f))
更に、凸状構造(図14(e))、)突起状構造体(図14(g))及び繊維状構造体(図14(h))などを挙げることができる。
多孔質体は、適当な支持基板上に設けたものであっても、多孔質体のみであっても構わない。本発明の構造体において、支持基材を用いる場合、その用途に応じて支持基材は従来既知の材料から選択して用いることができる。例えば、金属、金属酸化物、プラスチック、それら複合体などから選択して用いることができる。
多孔質体の好ましい形成方法としては、上記から選択した材料を用いて、その材料に応じた従来既知の加工方法によって形成することが好ましい。形成方法の一例としては、フォトリソグラフ、エッチング、サンドブラスト、FIB加工等が挙げられる。また、アルミニウム材に多孔質体を設ける場合、陽極酸化法などの電気化学的な手法で形成することも可能である。
また、材料が酸化珪素の場合は、ゾルゲル法を用いた形成方法が知られている。この方法によれば、平均孔径:約2乃至20nmを有する平均粒径:約200nm前後の多孔質体を作製することも可能である。同方法の一例を以下に述べる。酸性条件下で、界面活性剤を添加したアルコキシシラン溶液を用いて、塗布層を形成し、35℃にて20時間反応させ、その後、80℃で48時間加熱することにより、界面活性剤相が網目状に混在する酸化珪素層を形成させる。次に、層内に混在している界面活性剤相を取り除く(例えば、加熱による場合、500℃にて6時間)ことにより、かかる界面活性剤相が占めていた領域が、孔径1nm〜1000nmの細孔構造として残される多孔質材料層を得る手法を利用することができる。上記の工程により作製した酸化珪素−界面活性剤複合体から界面活性剤を取り除く方法としては、前記の加熱方法以外に、有機溶媒処理して、界面活性剤を溶出除去する手法等が挙げられる。いずれの手法を採用するかは、使用する基板の物性、例えば、耐熱性、溶剤耐性等に応じて、適宜選択する。
この方法によれば、平均孔径:約2乃至20nmを有する平均粒径:約200nm前後の多孔質体を作製することも可能である。
(蓋部材)
蓋部材は、本発明の構造体が保持する化合物が自然拡散などにより、消失するのを防ぐと共に、外部からの光または磁場変化などの入力信号を受信することにより、前記蓋部材が前記構造体から脱離することにより、構造体内に保持されていた化合物を前記構造体外部に放出するものである。更には、蓋部材は、光または磁場変化を与えられることによりその周縁において温度変化を生じることが望ましい。
このような蓋部材に好適な材料としては、金や銀、銅、白金、亜鉛、アルミニウム、アルミニウム、シリコンなどの金属の他に、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性を帯びる金属及びそれらの酸化物が挙げられる。好ましくは吸収した光や磁場を熱に変換しやすい金や銀、銅、プラチナなどが挙げられるが、本発明では蓋部材の少なくとも一部に金または酸化珪素が用いられる
蓋部材の大きさは、特に制限はないが多孔質体の孔径に対して、著しく小さい場合、本発明の多孔質体に保持した物質が細孔壁面と蓋部材との間隙から拡散する恐れがある。また、蓋部材が多孔質体よりも著しく大きい場合は、蓋部材が複数の細孔の開口部を不完全に覆う等するために蓋部材としての十分な機能を果たすことができない。上述の、好適な1nm乃至10μmという細孔径を考慮して、或いは、多孔質体の直径を考慮して、蓋部材の好ましい径は1乃至100nm、より好ましくは2乃至50nmである。
このような中で、金を蓋材表層の一部として用いることが最も好適である。例えば、シリカをコア部材として、金により被覆した微粒子(粒径:1nm乃至100nm)は、800nm乃至1200nmの光を吸収し、発熱することが知られている。この発熱により、後述の生体高分子化合物と蓋部材の結合を脱離させることが可能である。
(生体高分子化合物)
接続部材を構成する生体高分子化合物は、多孔質体と蓋部材を物理的/化学的に接続せしめるものである。生体高分子化合物は、好ましくは、多孔質体表面との結合部位及び蓋部材との結合部位を有し、より好ましくは、これらの結合部位の少なくとも一つが抗体の可変領域の少なくとも一部を含み構成されている。
ここで、本発明における「抗体」とは、すべての脊椎動物のリンパ系細胞で産出される抗体及び、抗体としての所望の機能を維持し得る範囲内でその抗体を構成するアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、その元の抗体と構造・機能において関連を維持しているタンパク質である。 多孔質体表面または/及び蓋部材表面に対して結合性を有する部分である接続部材の結合部位は、抗体のフラグメントやドメイン及びそれらの部分(以下、「抗体部分」と称する)であってよい。結合部位であり得る抗体部分の例としては、可変領域VHまたはVL、またはこれらの複合体たとえばFv及びVHとVLが数個のアミノ酸からなるペプチドを介して連結した一本鎖FvであるscFv(,すなわちsingle chain Fv)、及びそれらの一部が挙げられる。
蓋部材の表面の少なくとも一部に金が含まれていて接続部材がその金部分と結合する結合部位を有している場合は、そのような接続部材は金結合性タンパク質を含み構成していてよい。金結合性タンパク質としては、抗体部分を含み構成されていてよく、特にFab'、(Fab')2、Fd及びFv、またはそれらの一部を含み構成していてよい。
scFvを接続部材の構成に用いる場合、scFvを形成するVHとVLとの間(順不同)に一以上のアミノ酸からなるリンカーを設けることが望ましい。アミノ酸リンカーの残基長は、VHまたはVLと抗原との結合に必要な構造の形成を妨げないように設計することが重要である。アミノ酸リンカー長は5乃至18残基が一般的で、15残基が最も多く用いられ又検討されてきている。
以上述べてきたような接続部材の構成部分は、遺伝工学的な手法により得ることが可能である。
また、生体高分子化合物の有する多孔質体表面との結合部位及び蓋部材表面との結合部位は、両結合部位が抗体部分であっても良いし、一方が抗体部分、他方が5以上のアミノ酸からなるペプチド鎖であってもよいし、両結合部位が5以上のアミノ酸からなるペプチド鎖であってもよい。以下、蓋部材表面との結合部位である抗体部分を構成する抗体ドメインを第一ドメイン、多孔質体表面との結合部位である抗体部分を構成する抗体ドメインを第二ドメインと称する。
抗体ドメインである場合を図4A乃至4Dに模式的に示す。各図において第一ドメインを1、第二ドメインを2とする。図4Aは第一及び第二ドメインの両方がVHの場合、図4Bは第一ドメインがVHで第二ドメインがVLの場合、図4Cは第一ドメインがVLで第二ドメインがVHの場合、そして図4Dは第一及び第二ドメインの両方がVLの場合である。第一ドメインと第二ドメインとは互いに相補的な結合部位を形成しないことが望ましい。接続部材は、第一ドメインと第二ドメインとの間がポリペプチド鎖以外の構成部分で構成されていても、両ドメインが直接に或いは介在するペプチド鎖で以って連続して結合されていてもよい。ポリペプチド鎖で以って連続して結合している構造が、それぞれの機能の発現及び製造工程の簡略化の点において、好ましい。介在するペプチド鎖は一個以上のアミノ酸からなるリンカでよい。リンカは1乃至10個のアミノ酸が望ましい。より好ましくは1乃至5個のアミノ酸からなるものである。リンカーのアミノ酸長が11乃至15であると両ドメインはそれぞれ配置の自由度が増し、そのためドメイン間で相補的結合を形成(scFv化)してしまって蓋部材及び多孔質体と結合しない場合がある。また、その形態については、各ドメインが結合する標的物質を互いに結合し易い形状を呈するように設計されたものであることが二次構造を有するものであっても構わない。
第一及び第二ドメインを含み構成される生体高分子化合物は、VHの少なくとも一部及び/またはVLの少なくとも一部を含む別のドメインすなわち第三ドメイン及び/又は第四ドメインを更に有するものでもよい。第三ドメインは第一ドメインと複合体を形成し、第四ドメインは第二ドメインと複合体を形成する。例えば、第一ドメインがVHである場合、第三ドメインは第一ドメインとFvを形成し得るVLであり、形成された複合体はその第一ドメイン部分と第三ドメイン部分とで連合して蓋部材表面との結合部位を形成する。また、第二ドメインがVLである場合、第四ドメインは第二ドメインとFvを形成し得るVHであり、形成された複合体はその第二ドメイン部分と第四ドメイン部分とで連合して多孔質体表面との結合部位を形成する。
第一ドメイン1と第三ドメイン3が複合体を形成している様子を図5、6、7、11、12及び13に、第二ドメイン2と第四ドメイン4が複合体を形成している様子を図8、9、10、11、12及び13に、それぞれ模式図で示す。複合体を形成することにより、構造的により安定化し、構造変化による機能低下を抑制することが期待できる。そのような複合体は連合して蓋部材表面若しくは多孔質体表面との結合部位を形成することが、より好ましい。連合して結合部位を形成することにより、結合速度の向上や解離速度の抑制といった結合能を向上することが期待できるからである。このように、多孔質材料表面及び蓋部材表面に対してそれぞれのドメイン及びドメイン複合体の結合能が発揮されるように適宜その構成を決定することができる。
第一ドメイン及び第二ドメインからなるポリペプチド鎖と第一ドメイン及び第三ドメインからなるポリペプチド鎖とから成り、第一ドメインと第三ドメインとが複合体を形成している、図7の模式図に示すような構成も可能である。この構成においては、第一ドメインと第三ドメインから形成されるFvまたはFv様の複合体は蓋部材表面と結合し、2つの第二ドメインが多孔質体と結合することで蓋部材のアンカー(anchor biting the 多孔質体)として機能する。同様に、第一ドメイン及び第二ドメインからなるポリペプチド鎖と第一ドメイン及び第四ドメインからなるポリペプチド鎖とから成り、第二ドメインと第四ドメインとが複合体を形成している、図10の模式図に示すような構成も可能である。この構成においては、第二ドメインと第四ドメインから形成されるFvまたはFv様の複合体は多孔質体表面と結合し、2つの第一ドメインが蓋部材と結合することで多孔質体のアンカー(anchor biting the 蓋部材)として機能する。
複合体を形成しているドメインの対は、それぞれ独立したポリペプチド鎖として設けても、直接に或いはリンカにより繋がることで連鎖してなるポリペプチド鎖であってもよい。複合体のドメイン同士を繋ぐリンカは、蓋部材及び多孔質体との結合部位を有する両ドメインを繋ぐ上述のリンカと同様の理由で、1乃至10個、より好ましくは1乃至5個のアミノ酸が連なったものが好ましいが、構造上必要であればその長さに限られない。例えば、以下に述べる図13のような場合は、第一及び第二のドメイン間、及び、第三及び第四のドメイン間は1乃至5アミノ酸であり、第二及び第三のアミノ酸のドメイン間は15乃至25アミノ酸であってよい。図6は第一ドメインと第三ドメインが、図9及び13は第二ドメインと第四ドメインとがリンカによりつながったポリペプチド鎖となっている様子を模式的に示している。図6、9及び13では第一ドメインと第二ドメイン同士もリンカにより繋がっており、図13においてはさらに第三ドメインと第四ドメインもリンカにより繋がっているので、図6では第二ドメイン−第一度メイン-第三ドメイン、図9では第一ドメイン-第二ドメイン-第四ドメイン、図13では第一ドメイン-第二ドメイン-第四ドメイン-第三ドメインから成る一連のポリペプチド鎖となっている。これら一本鎖ポリペプチド内における各ドメインの配列は、金またはターゲットに対する結合性、及び本金結合性タンパク質の長期安定性等、所望の特性に応じて適宜選択して決定することが可能である。
更に、抗体フラグメントから構成される生体高分子化合物において、上記のように結合部位を形成する上記ドメイン複合体の組み合わせ(例えば、第一のドメインと第三のドメイン、または第二のドメインと第四のドメイン)において、結合性特性の向上、及び安定性の向上を図ることを目的として、所望の結合能に影響の大きくない部分の一部を遺伝的に改変することも可能である。例えば、上記ドメイン間の接合界面にてジスフィルド結合を形成できるようにする方法が挙げられ、例えば、前記したドメイン複合体(例えば、第一のドメインと第三のドメイン、または第二のドメインと第四のドメイン)の接合界面部の所望の部位にシステイン残基を導入する方法が利用できる。また、リンカー内に二つのシステインを設けることにより、同じ結合部位を形成するドメイン複合体の形成補助や、安定性を向上させる方法も利用可能である。
接続部材に用いる抗体可変領域は、配列番号:1乃至57のアミノ酸配列の少なくともいずれか一つは有していることが望ましい。可変領域は、それら57種類のアミノ酸配列のいずれかから一個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されて成るアミノ酸配列から成る群から選択された一以上のアミノ酸配列を有するものであっても、接続部材がその機能を発揮できれば、構わない。配列番号:1乃至57のアミノ酸配列を有する抗体可変領域のアミノ酸配列を、配列番号:58乃至77に例示する。なお、配列番号58乃至77のコードを次のように設定する(例えば、配列番号:58のコード7s1は"58:7s1"というように表記する):
58: 7s1、59:7s2、60:7s4、61:7s7、62:7s8、63:7p2、64:7p3、65:7p4、66:7p7、67:7p8、68:10s1、69:10s2、70:10s3、71:10s4、72:10s5、73:10p1、74:10p2、75:No.4、76:No.7、及び77:No.10.。
接続部材を構成するこのような生体高分子化合物は、タンパク質として遺伝子工学的に作製が可能である。たとえば、生体高分子化合物をコードした核酸を種々の発現ベクターに導入、発現・精製することにより生体高分子化合物を融合タンパクとして得ることができる。一本のポリペプチド鎖として作製することも可能である。
一本鎖として形成する場合、例えば、抗体可変領域をコードする核酸の5'末端(または3'末端)に親和性ペプチドをコードする核酸を挿入することにより、可変領域のN末端(またはC末端)に基板親和性ペプチドを融合したタンパクをコードした核酸を得ることができる。この場合、抗体断片コードする核酸と親和性ペプチドをコードする核酸の間に上述したリンカー配列をコードする核酸すことも挿入することも可能である。更には、複数のポリペプチド鎖の複合体によって構成されるように作製しても、接続部材に求められる機能を損なわないものであればその形態は問題ではない。
たとえば、本発明の接続部材が有する、多孔質体及び蓋部材に対する結合部位の一方が抗体フラグメント、他方が親和性ペプチドからなる場合、上記抗体可変領域またはその複合体のN末端またはC末端に上記親和性ペプチドを融合したタンパク質を形成することも可能である。これら蓋部材親和性ペプチド鎖は、従来既知のファージディスプレー法に代表されるペプチド提示によるスクリーニング法や、計算化学を用いた設計等からその結合性において選択し、好適なものを用いることができる。また、従来公知であるペプチドのアミノ酸配列(Nature Materials、Vol.2、pp577、2003)を参考に候補ライブラリーを作製し、スクリーニングを行うことも可能である。多孔質体として酸化珪素系材料特にSBA-15を用いた場合、配列番号:80または81を用いることが好適である。
また、結合部位を形成するscFvの組み合わせ(例えば、上記第一のドメインと上記第三のドメイン、または上記第二のドメインと上記第四のドメイン)において、結合性特性の向上、及び安定性の向上を図ることを目的として、所望の結合能に影響の大きくない部分の一部を遺伝的に改変することも可能である。例えば、上記scFv間の接合界面にてジスフィルド結合を形成できるようにする方法が挙げられ、例えば、scFv(例えば、上記第一のドメインと上記第三のドメイン、または上記第二のドメインと上記第四のドメイン)の接合界面部の所望の部位にシステイン残基を導入する。また、上記リンカー内に二つのシステインを設けることにより、同じ結合部位を形成するscFv形成補助や、安定化する方法も可能である。
上記のような生体高分子化合物をコードした核酸を種々の発現ベクターに導入、発現・精製することにより生体高分子化合物を融合タンパクとして得ることができる。
タンパク質発現用ベクターとしては、選択する既知の宿主細胞に応じて既知のプロモーター等の生体高分子化合物をコードする導入遺伝子を発現させるために必要な構成等に組み込むことより、設計及び構築することができる。大腸菌等を宿主細胞として用いる場合、外来遺伝子産物であるタンパク質またその構成物を速やかに細胞質外に除外することで、プロテアーゼによる分解を少なくすることが可能である。また、この外来遺伝子産物が菌体にとって毒性である場合でも、菌体外へ分泌することによりその影響を小さくすることができることが知られている。通常、既知の細胞質膜あるいは内膜を通過して分泌されるタンパク質の多くがその前駆体のN末端にシグナルペプチドを有し、分泌過程においてシグナルペプチダーゼにより切断され、成熟タンパク質となる。多くのシグナルペプチドはそのN末に塩基性のアミノ酸、疎水性アミノ酸、シグナルペプチダーゼによる切断部位と配置されている。
目的とするタンパク質をコードする核酸の5'側にシグナルペプチドの一つとされているpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより分泌発現させることができる。
また、生体高分子化合物が複数のポリペプチド鎖の複合体として形成される場合。個々のポリペプチドを別個のベクターにて作製することも可能であるが、ひとつのベクター中に複数のポリペプチド鎖を作製できるように構成することも可能である。この場合、各ドメインまたはポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、分泌を促すことができる。更に、または一以上のドメインからなるポリペプチド鎖として発現させる場合、前記ポリペプチド鎖の5'末端に同様にしてpelBをコードする核酸を配置することにより分泌を促すことができる。このようにシグナルペプチドをN末端に融合したタンパク質は、ペリプラズマ画分及び培地上清から精製することができる。
また、発現させたタンパク精製時の作業の簡便さを考慮して、抗体分子、または独立した各抗体フラグメントもしくは複数の抗体フラグメントが連続して結合して形成されたポリペプチド鎖のNまたはC末端に精製用のタグを遺伝子工学的に配置することが可能である。例えば、前記精製用タグとしては、ヒスチジンが6残基連続したヒスチジンタグ(以下、His×6)やグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)のグルタチオン結合部位などが挙げられる。前記タグの導入方法としては、前記発現用ベクターにおける金結合性タンパク質をコードする核酸の5'または3'末端に精製タグをコードする核酸をベクター内の所定の位置に挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用するなどが挙げられる。
以下に、上記発現ベクターを用いた生体高分子化合物の製造方法例について述べる。
生体高分子化合物であるタンパク質、またはその構成要素となるポリペプチド鎖は、従来既知のタンパク発現用の宿主細胞に、宿主細胞に応じて設計した上記タンパク質発現用ベクターを形質転換し、宿主細胞内のタンパク合成システムを用いて、宿主細胞内に合成される。その後、宿主細胞内に蓄積された、または細胞質外に分泌された目的タンパク質をそれぞれ細胞内部画分または細胞培養上清から精製することにより得ることができる。例えば、大腸菌を宿主細胞として用いる場合、金結合性タンパク質をコードする核酸の5'側にpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより細胞質外に分泌発現するように試みることができる。
ひとつの発現用ベクターに金結合性タンパク質を構成要素となるポリペプチド鎖を複数コードすることも可能である。その場合、構成要素となる各ポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、発現時に細胞質外への分泌を促すことができる。
このようにシグナルペプチドをN末端に融合した金結合性タンパク質は、ペリプラズマ画分及び培地上清画分から精製することができる。
精製方法としては、上記画分から硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を濃縮した後に再度適当なバッファーに懸濁し、例えば、前記精製タグがHisタグの場合はニッケルキレートカラムで、精製タグがGSTの場合はグルタチオン固定化カラムを使用すること等により目的のタンパク質を精製することができる。
また、菌体内に発現した金結合性タンパクを不溶性顆粒で得ることも可能である。この場合、培養液から得られた菌体をフレンチプレスや超音波により破砕した細胞破砕液から前記不溶性顆粒を遠心分離することができる。得られた不溶性顆粒画分を尿素、塩酸グアニジン塩を含むの従来既知の変性剤を含んだ緩衝溶液で可溶化した後に、変性条件下で前記同様なカラム精製することができる。得られたカラム溶出画分は、リフォールディング作業により、変性剤除去と活性構造再構築を行うことができる。リフォールディング方法としては、従来既知の方法から適宜用いることも可能である。例えば、段階透析法や希釈法など従来既知の方法を目的のタンパクに応じて用いることが可能である。
金結合タンパク質の各ドメインまたは各ポリペプチド鎖は、同一宿主細胞内で発現させることも可能であるし、別の宿主細胞を使用して発現した後に共存させて、複合体化させることも可能である。
更に、金結合性タンパク質をコードする核酸を含む上記ベクターを、細胞抽出液を用いて生体外での目的のタンパク質発現をすることも可能であることが知られている。好適に用いられる細胞としては、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等が挙げられる。しかしながら、上記無細胞抽出液によるタンパク合成は還元条件下で行われることが一般的である。その為に、抗体フラグメント中のジスルフィド結合を形成させるために従来既知のリフォールディング処理を行なうことがより好ましい。
更に、また、前述の生体高分子化合物の多孔質体表面または蓋部材表面と結合する結合部位の何れか一方が、前記生体高分子化合物化学修飾基を導入することが可能である。
例えば、蓋部材表面の少なくとも一部に金が露出している場合、多孔質体表面に結合性を有する生体高分子化合物の多孔質体表面との結合部位以外にSH基を末端部に有する導入基を導入することにより、本発明の生体高分子化合物とすることができる。また、金に対して結合部位を有する生体高分子化合物にシラノール基やアルコシキシランを有するような官能基を導入することも可能である。
接続部材の多孔質体との結合部位は、多孔質体に対する結合性を有するペプチドからなる部分を含んでなるものとして形成することができる。多孔質体の表面の少なくとも一部が金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含んでいる場合は、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含んでなる部分に対して接続部材の結合部位が結合するように構成することができる。更に、多孔質体の表面の少なくとも一部が酸化珪素を含んでおり、金属及び金属酸化物の少なくとも一方を含んでなる部分に対して接続部材の結合部位が結合する構成を用いることもできる。また、接続部材の多孔質体に対する結合部位としては、
(1)配列番号:80のアミノ酸配列及び
(2)配列番号:81のアミノ酸配列に対して、一個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された酸化珪素に対する結合性を維持しているアミノ酸配列
からなる群から選択された2以上のアミノ酸配列を有するものを用いることができる。
(放出用物質)
本発明に用いられる構造体に保持する物質としては、構造体の用途に応じて選択され、各種の化合物など各種広範なものから選択して用いることができる。例えば、水溶性薬物、脂溶性薬物なども利用可能である。
(化合物放出制御)
本発明にかかる構造体からの物質の放出制御は、構造体での保持及び構造体からの物質の放出を外部からの刺激、すなわち外部信号の負荷により制御する技術である。
外部信号としては、光、磁気、電気等が挙げられる。DDSという用途を考えた場合、光、磁気(磁界の変化)が好ましい。特に、薬物を投与する被投与側に無害であることが望ましい。そのような観点から、光、磁気が好適である。光の場合、波長などの選択は、用いる蓋材、被投与側への影響を鑑み、適宜選択されるものであるが、例えば、上述のように、シリカまたはアクリルアミド系ポリマーをコア(芯材、粒径:5nm〜50nm)として、金により被覆(1〜6nm厚み)した微粒子(粒径:1nm乃至100nm)は、動物体内の組織及び細胞に殆ど害を及ぼさない800nm乃至1200nmの光を吸収し、発熱する。この発熱により、前記生体高分子化合物と蓋部材の結合を脱離させ、多孔質体から蓋部材を離脱することにより化合部を構造体外部に放出することが可能である。
また、蓋部材を金微粒子とした場合、例えば、短波からマイクロウェーブ領域の10MHz乃至2GHzの高周波を与えることに熱を発することが知られている。そのような磁場変化による蓋部材の熱特性変化により本構造体から蓋部材を脱離させることにより本発明の化合物放出制御に応用することも可能である。照射時間は照射に使用する波数に応じて適宜定めることができる。
本発明の放出制御手段に用いる信号入力用装置は、本発明の物質を保持した多孔質体に結合した蓋部材周縁の温度を変化させることができるものであれば限定しない。例えば、800乃至1200nm波長の光線を照射できるランプでもよく、YAGレーザー等であってもよい。更には、種々のマイクロウェーブを発生装置を用いることも可能である。
薬物放出(拡散)のプロセスの一例を図1に模式的に示す。多孔質体の孔11の中に薬物12を保持する(13)。直径30μmのシリカ微粒子に金を厚さt=3nmに被覆した金被覆シリカ微粒子14を準備し、その表面にシリカ親和性ペプチド融合金結合性Fv15を結合させる。孔11の開口部を構成する多孔質体の表面にFvを結合させることにより、Fvを結合した微粒子14で孔を塞ぐように粒子を開口部に保持する(16)。多孔質体を光磁場に置くと微粒子はエネルギ(17)を吸収し発熱する。その結果、Fvは結合を解き、孔を塞いでいた微粒子は開口部から離脱し、孔の中に保持されていた薬物12は孔の外に拡散することで放出される(18)。尚、薬物12は、微粒子により拡散が抑制され得るならば、孔の中でなくとも孔の近傍に保持されていてもよい。
本発明の構造体によれば、更に以下の第2から第7の効果を得ることができる。
本発明の第2の効果としては、接続部材として多孔質体表面及び蓋部材表面に対して結合能を有する生体高分子化合物を含む有機化合物、と特に抗体またはその断片、及びペプチドを用いることにより多孔質体表面及び蓋部材表面に対して特異性の高い接続が可能である。これにより、放出用の物質等の接続部材との結合対象ではない物質に対して接続部材が結合して悪影響を及ぼす相互作用を軽減することが可能となる。従って、生体高分子化合物が多孔質体表面に結合性がある抗体可変領域、または/及び蓋部材表面に対して結合性の抗体可変領域を含んでなる材料であれば、より高い認識特異性が期待できる。
本発明の第3の効果としては、多孔質体の少なくとも一部を金属または金属酸化物にすることにより血液を始めとする体液環境下においても安定に存在することが可能である。更に、多孔質体を酸化珪素、蓋部材を金とすることにより生体適合性を高くすることができる。
本発明の第4の効果としては、外部からの刺激の入力(物質放出用の信号)により蓋部材が多孔質体表面から脱離し、構造体が保持した物質が入力した信号に基づいて構造体から放出されるようにすることで、目的の時間及び部位において放出すべき物質をより確実に多孔質体から放出させることが可能となる。
本発明の第5の効果としては、多孔質体表面と蓋部材表面の物理的または化学的な接続が生体高分子化合物を介して行われる為、構造体を構成する多孔質体、多孔質体に保持された物質、あるいは構造体を作用させるべき治療対象患者の部位やその周縁に対して影響の少ない軽微な温度変化により、蓋部材の脱離に基づく物質の放出が可能である。
本発明の第6の効果としては、物質の放出を誘導するための信号として光及び磁場変化の少なくとも一方を用いることにより蓋部材の少なくとも表面に温度変化を誘起することができる。治療対象の動物や人に投入した際に、治療対象に実質的に害のない領域の光及び磁場を選択することも可能である。これにより、物質放出制御においては特別高価な施設・装置を必要とせず、その応用用途を広げることが可能である。
本発明の第7の効果としては、蓋部材表面の少なくとも一部に金を配置することにより、生体に対して無害な光または磁気変化領域を選択することができるとともに、蓋部材の表面を安定に保持することができ、放出制御機能の長期安定性を付与することができる。
以下の実施例において、多孔質体としてメソポラースシリカ(SBA−15)、蓋部材として金被覆シリカビーズ(金層:1nm、シリカ:10nmφ)、これらを接続する生体高分子化合物として金結合性scFvのC末端にSBA−15親和性ペプチドを融合したタンパク質からなる構造体を作製する。
(実施例1) 多孔質体の作製
多孔質体としてメソポーラス・シリカ(SBA−15)を以下の方法で作製する。
ポリ(エチレンオキサイド)−ポリ(プロピレンオキサイド)−ポリ(エチレンオキサイド);<エチレンオキサイド20単位、プロピレンオキサイド70単位、エチレンオキサイド20単位からなるブロック共重合体、以下、EO20−PO70−EO20>4g、0.041mol テトラエトキシシラン(TEOS)/0.24mol HCl、6.67mol H2Oからなるシリカ反応液を調製する。
このシリカ反応液を、35℃にて20時間反応させ、更に80℃にて48時間反応させた。続いて、500℃にて6時間加熱して、含まれるブロック共重合体樹脂EO20−PO70−EO20を燃焼させることにより、多孔性シリカを得る。
得られた多孔性シリカにおいて、平均孔径は、7.9nmで、孔間のシリカ壁面の平均的な厚さは、3nmである。
(実施例2)
金結合性scFv−SBA−15親和性ペプチド融合タンパクの作製
SBA−15親和性ペプチドIPHVHHKHPHV(配列番号:80)を金scFvのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。
(1)発現ベクター作製
pET−15b(Novagen社)のマルチクローニングサイトをNheI/SacII 及びNotI/SacIIを用いて切断することで予め変更したべクターpUT-XXを図2A及び2Bに示したようにそれぞれ用意し、金結合性scFvの構成要素となるVL(クローン名:VL#No,7、配列番号:76)、VH(クローン名:7s4、配列番号:60をpET−15b(Novagen社)のマルチクローニングサイトを図2(a)及び(b)に示すように変更したべクターに挿入する。得られたベクターをそれぞれpUT−VLNo,7、pUT−7s4とする。次に、VLコード遺伝子、リンカー(GGGGS)×3、VHコード遺伝子、SBA−15親和性ペプチド(以下、図3中で示したように“Si tag”ともいう)、His×6(以下、“His-tag“)が連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターpUT−scFvを以下のように作製した(図3)。
上記で得られたpUT−7s4をテンプレートして以下のプライマーを用い、PCRを行う。
SiscFv−B(配列番号:78)
5'−NNNNNCCATGGCCCAGGTGCAGTTGGTGGAGT−3'
SiscFv−F(配列番号:79)
5'−NNNNNCCGCGGCACGTGGGGGTGCTTGTGGTGCACGTGCATGGGGATAACCATTCAGATCCTCTTCT−3'
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。
その結果得られたPCR産物を2%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約400bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。pUT−VL No.7及び上記で得られたPCR断片を、NotI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。PCR断片の両端にSi tag及びHis-tagを結合してInsert片とする。
上記で得た精製した核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、実施例1と同様にしてライゲーション反応を行う。
以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得れたプラスミドをNotI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。
このプラスミドをpUT−scFvSpとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−scFvSpを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。
ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
(2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行なう。
(3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続する。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行なう。
(4)精製
目的のポリペプチド鎖を不溶性顆粒画分から以下の工程により精製する。
(A)不溶性顆粒の回収
上記(3)で得られた培養液を6000rpm×30minにて遠心し、沈殿を菌体画分として得る。得られた菌体をトリス溶液(20mM トリス/500mM NaCl)15mlに氷中にて懸濁する。得られた懸濁液をフレンチプレスにて破砕し、菌破砕液を得る。次に、菌破砕液を12,000rpm×15minで遠心を行い、上清を除き、沈殿を不溶性顆粒画分として得る。
(B)不溶性顆粒画分の可溶化
(A)で得られた不溶性画分を6M 塩酸グアニジン/トリス溶液 10mLを加えて、一晩浸漬する。次に、12,000rpm×10minで遠心し、上清を可溶化溶液として得る。
(C)金属キレートカラム
金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行う。目的であるHisタグ融合のポリペプチドの溶出は60mMイミダゾール/Tris溶液にて行う。溶出液のSDS−PAGE(アクリルアミド15%)の結果、単一バンドであり、精製されていることを確認する。
(D)透析
上記溶出液に対して、外液を6M 塩酸グアニンジン/Tris溶液として4℃にて透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行い、上記それぞれのポリペプチド鎖溶液を得る。
(E)リフォールディング
上記と同様にして、金結合性Fvと上記ペプチドを融合したscFv-Spのポリペプチド鎖溶液を以下の工程により別個に、脱塩酸グアニンジンを透析(4℃)にて行いながらタンパク質のリフォールディングを行う。
a) 6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用い、それぞれのポリペプチド鎖の盛る急行係数とΔO.D.(280nm−320nm)値から濃度7.5μMのサンプル(希釈後体積10ml)を調整する。次にβ−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μM(タンパク濃度50倍)になるよう添加、室温、暗所で4時間還元を行う。このサンプル溶液を透析バック(MWCO:14,000)に入れ、透析用サンプルとする。
b)透析外液を6M塩酸グアニンジン/トリス溶液として、透析サンプルを浸漬し、緩やかに攪拌しながら6時間透析する。
c)外液の塩酸グアニジン濃度を3M、2Mと段階的に下げる。それぞれの外液濃度において、6時間透析する。
d)酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを 終濃度0.4M)となるようにトリス溶液に加え、上記3)の2Mの透析外液を加え、塩酸グアニジン濃度が1Mとし、pHをNaOHで、pH8.0(4℃)に調整した溶液にて、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
e)上記d)と同様の作業にて塩酸グアニジン濃度0.5Mの含L−Arg トリス溶液を整し、更に12時間透析する。
f)最後にトリス溶液にて12時間透析する。7)透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し凝集体と上清を分離する。上記で得られた溶液に対して、更に外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、上記溶液を用いて、SPR測定を行う。金結合性を確認される。
(実施例3)構造体の作製
(1)実施例1で作製したSBA−15 200mgを3μM ATP/リン酸バッファー:PBS(pH7.4)に一晩浸漬する。
(2)金微粒子(20nm、田中貴金属製、0.15mmol)を0.01mmol ATP/PBSに懸濁する。
(3)次に、実施例2で作製したシリカ親和性ペプチドを融合した1.5μM scFv/PBSを上記(1)の浸浸処理したSBA−15及び(2)の懸濁液と混合して、24時間攪拌する。
(4)続いて、12,000rpm×5minにて遠心を行い、上清を取り除き、沈殿物を得る。この沈殿物を真空乾燥して、構造体を得る。
(実施例4)構造体からの化合物放出制御−1
(1)実施例3で得られた構造体20mgをPBS(pH7.4)で懸濁し、超音波を用いながら溶液中に分散させる。この操作を3回繰り返し、構造体に吸着したATPを洗浄する。
(2)上記構造体をPBSに懸濁した状態で、12時間静置する。静置後、0、4、8、12時間後に、溶液の一部を取り出し、HPLC(C18、逆相カラム)で測定する(検出波長275nm)。経時的にATP量が減少することが確認される。
(3)次に、YAGレーザー(1064nm、164mJ/pulse、7nsec、10Hz)の光を1時間照射する。
(4)レーザー照射後、10分毎に溶液をサンプリングを行い、HPLCにて分析する。経時的にATPが放出されることが確認される。
(実施例5)構造体からの化合物放出制御−2
(1)実施例3で得られた構造体20mgをPBS(pH7.4)で懸濁し、超音波を用いながら溶液中に分散させる。この操作を3回繰り返し、構造体に吸着したATPを洗浄する。
(2)上記構造体をPBSに懸濁した状態で、12時間静置する。静置後、0、4、8、12時間後に、溶液の一部を取り出し、HPLC(C18、逆相カラム)で測定する(検出波長275nm)。経時的にATP量が減少することが確認される。
(3)次に、シンセサイズド信号発生装置(HP社製)にて、0.5GHzの光を10秒間照射/50秒間休止のサイクルで5回繰り返する。
(4)信号照射後の溶液をサンプリングを行い、HPLCにて分析する。上記(2)の溶液中のATP量に対して、信号照射後のATP量が増加し、信号によりATPが放出されることが確認される。
(実施例6)
実施例2において、金結合性scFv−SBA−15親和性ペプチドタンパクのVH(VHクローン名:7s4)の14位のアラニンをプロリンに変更した配列番号82で表されるVH(VHクローン名A14P―7s4、配列番号:83)になるようにタンパク質を作製する。
・発現プラスミドの作製
実施例2で得られるpUT−scFvSpを鋳型として目的箇所へ変異を導入する。変異導入はQuickChangeキット(STRATAGENE社製)を用いて、業者推奨の方法に準じて行う。その際に用いるプライマーは以下のとおり。
A14P−f(配列番号:84)
GAGCAGAGGTGAAAAAGCCAGGGGAGTCTCTGAAG
A14P−r(配列番号:85)
CTTCAGAGACTCCCCTGGCTTTTTCACCTCTGCTC
シークエンスにより、得られるプラスミドが目的の配列番号80で表されるDNAを挿入していることを確認する。
上記作業にて得られたプラスミドpUT−scFv2Spを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、実施例2の(2)乃至(4)と同様の作業により目的のタンパク質を得る。また、得られるタンパク質を用いて実施例3と同様な作業により構造体を得る。更に、実施例4と同様の評価を行い、実施例4と同様にATPが放出することを確認する。
(実施例7)
実施例6において、金結合性scFv−SBA−15親和性ペプチドタンパクのVH(VHクローン名:A14P)の34位バリンをフェニルアラニン、44位グルタミンをグルタミン酸、45位のロイシンをアルギニンに変更した配列番号86で表されるVH(VHクローン名PFER−7s4、配列番号:87)になるようにタンパク質を作製する。
・発現プラスミドの作製
実施例6で得られるpUT−scFv2Spを鋳型として目的箇所へ変異を導入する。変異導入はQuickChangeキット(STRATAGENE社製)を用いて、上記と同様に業者推奨の方法に準じて行う。3回の作業により目的のプラスミドを得る。
用いるプライマーは以下のとおり。
1箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
V37F―f(配列番号:88)
TTACTGGATCAACTGGTTCCGCCAGATGCCCGG
V37F−r(配列番号:89)
CCGGGCATCTGGCGGAACCAGTTGATCCAGTAA
2箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
G44E−f(配列番号:90)
CAGATGCCCGGCAAAGAACTGGAATGGATGGGG
G44E−r(配列番号:91)
CCCCATCCATTCCAGTTCTTTGCCGGGCATCTG
3箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
L45F−f(配列番号:92)
GCCCGGCAAAGAAAGGGAATGGATGGGGATG
L45F−r(配列番号:93)
CATCCCCATCCATTCCCTGCCTTTGCCGGGC
シークエンスにより、得られるプラスミドが目的の配列番号82で表されるDNAを挿入していることを確認する。
上記作業にて得られたプラスミドpUT−scFv2Spを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、実施例2の(2)乃至(4)と同様の作業により目的のタンパク質を得る。また、得られるタンパク質を用いて実施例3と同様な作業により構造体を得る。更に、実施例4と同様の評価を行い、実施例4と同様にATPが放出することを確認する。
本発明は、一以上の化合物を保持した多孔質体を少なくとも含んでなる構造体であって、
(1)前記化合物を前記多孔質体の表面/またはその周縁に保持するための蓋部材、(2)前記蓋部材と前記多孔質体表面を物理的または化学的に接続せしめる為の材料の少なくとも一部が生体高分子化合物からなる有機物を含んでなることを特徴とする構造体を提供する。本発明を適用することで多孔質体中に安定に化合物を保持できる構造体を得ることができる。更に、本発明は前記構造体からの化合物放出を制御する手段を含む。本発明を適用することにより、本発明の構造体から所望のタイミングにおいて本構造体が保持する化合物を放出することが制御できる。
つまり、本発明は、種々の化学反応において適宜目的の物質を供給することが可能となる。また、DDS技術に応用することにより患部においてのみに外部からの信号を付与することにより目的の物質を放出できる。これにより、患者に投与する薬量を最小限にすることが可能となり、副作用等好ましくない効果も抑えることが可能となる。
本発明の構造体及び化合物放出の概略図である。 (a)及び(b)は生体高分子化合物製造用のベクター作製図の一例を示す図である。 生体高分子化合物製造用のベクター作製図の一例を示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 金結合性タンパク質の一例の構成を模式的に示す図である。 さまざまな微小構造体を示す図である。(a)多孔質構造体、(b)オパール構造体、(c)逆オパール構造体、(d)柱状構造体、(e)凸状構造体、(f)凹状構造体、(g)突起状構造体、(h)繊維状構造体をそれぞれ示す。
符号の説明
1: 第一のドメイン
2: 第二のドメイン
3: 第三のドメイン
4: 第四のドメイン
5、6: リンカー

Claims (6)

  1. 化合物を内部に保持する構造体であって、
    前記構造体が、
    多孔質体と、蓋部材と、前記蓋部材と前記多孔質体とを接続する接続部材とを有し、
    前記接続部材のうちの前記蓋部材との接続部分が、前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体を含み、
    前記蓋部材の少なくとも一部が金で構成され、
    前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体が金を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域を有する捕捉体であることを特徴とする構造体。
  2. 前記金を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域が、配列番号:1〜57に示されるアミノ酸配列を一つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  3. 前記金を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域が、配列番号:1〜57に示されるアミノ酸配列のうちの一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  4. 化合物を内部に保持する構造体であって、
    前記構造体が、
    多孔質体と、蓋部材と、前記蓋部材と前記多孔質体とを接続する接続部材とを有し、
    前記接続部材のうちの前記蓋部材との接続部分が、前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体を含み、
    前記蓋部材の少なくとも一部が酸化珪素で構成され、
    前記蓋部材を特異的に認識して捕捉する捕捉体が酸化珪素を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域を有する捕捉体であることを特徴とする構造体。
  5. 前記酸化珪素を特異的に認識して捕捉する抗体可変領域が、配列番号80に示されるアミノ酸配列を有するもしくは配列番号81に示されるアミノ酸配列のいずれか一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を二つ以上有することを特徴とする請求項に記載の構造体。
  6. 外部からの信号としての光もしくは磁場の入力により、前記接続部材から前記蓋部材が脱離することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の構造体。
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