以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
A.システム構成
図1には、本発明の第1の実施形態に係る無線伝送システムの構成を模式的に示している。本システムは、デジタル・カメラ101と、無線通信機能付きメモリ・メディア110と、無線読取装置102と、テレビ106と、赤外線リモコン108で構成される。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、デジタル・カメラ101の専用メモリ・スロットなど(図示しない)に収容され、コネクタ部112経由で接続されている。コネクタ部112は、無線通信機能付きメモリ・メディア110とデジタル・カメラ101との有線通信インターフェースを構成し、例えば、MEMORYSTICK(登録商標)や、PCカード、USBなどいずれかの標準的なインターフェース仕様に準拠するものとする。
デジタル・カメラ101は、ホスト機器に相当し、無線通信機能付きメモリ・メディア110を着脱自在に収容して、撮像した画像データを無線通信機能付きメモリ・メディア110に保存する。デジタル・カメラ101側からは、コネクタ部112経由で、無線通信機能付きメモリ・メディア110内のメモリ/通信制御部113に対してフラッシュ・メモリ114へのアクセス要求を行ない、撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みや、フラッシュ・メモリ114に格納した画像などのデータの読み出しを行なうことができる。また、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、このコネクタ部112経由でデジタル・カメラ101から駆動電力が供給されている。
また、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、無線読取装置102との無線通信インターフェースとしての無線部115を備えている。無線部115は、送信部116及び受信部117を含み、無線読取装置102との間で無線伝送を行なうことができる。例えば、無線読取装置102からは制御信号103が無線送信され、これに応答して、デジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110からは、JPEG画像データなどの応答信号104が無線送信される。
無線部115に適用される無線通信インターフェースとして、例えば無線LANの標準規格であるIEEE802.11や、Bluetooth通信、あるいは反射波伝送などを利用することができる。ここで言う反射波伝送とは、受信電波に対し伝送データに基づいて変調処理を施した反射波信号の送信を行なうバックスキャッタ通信のことである。反射波の変調処理は、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作や、反射信号路における位相差の付与などにより行なうことができる。
無線読取装置102には、ビデオ・ケーブル105経由でテレビ106の外部ビデオ入力端子に接続されており、無線読取装置102及びテレビ106は外部機器に相当する機能を提供する。すなわち、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・メディア110に格納されている画像データを無線読取装置102が無線伝送により取得すると、これをビデオ・ケーブル105経由でテレビ106の外部ビデオ入力端子にビデオ出力してテレビ106の画面上に表示出力することができる。
また、無線読取装置102は、自装置の動作状態などを表示する表示部120を備えている。例えば、表示部120は、ユーザに対して、メモリ・メディア110から無線伝送によりデータを受信していることを示す。
テレビ106並びに無線読取装置102は、赤外線受光部107及び109をそれぞれ備えており、赤外線コマンドを受光し、コマンドに応じた装置動作を実行する。また、赤外線リモコン108は、テレビ106や無線読取装置102に対する制御コマンドを、赤外線からなる制御信号118として赤外線受光部107に与えることができる。赤外線リモコン108は、テレビ106に対する制御コマンドであるビデオのチャネル切り換え制御や音量調整などの一般的な操作コマンドに加え、無線読取装置102による無線通信動作の制御コマンド、さらに無線読取装置102を介してデジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110へのアクセスを指示するための制御コマンドなどを含んでいる。
例えば、ユーザは、赤外線リモコン108を利用して、無線読取装置102に対し、デジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110からの画像データの読み取りとテレビ106へのビデオ出力を指示するとともに、テレビ106に対して、ケーブル105からライン入力された画像データの表示出力を指示することができる。
続いて、無線通信機能付きメモリ・メディア110の内部構成について詳解する。図1に示すように、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、アンテナ111と、無線部115と、フラッシュ・メモリ114と、メモリ/通信制御部113と、コネクタ部112で構成される。
フラッシュ・メモリ114は、無線通信機能付きメモリ・メディア110におけるメモリ空間の実体であり、例えばEPROMやEEPROMなどの電気的に消去書き換えが可能な不揮発性の半導体メモリ装置で構成される。フラッシュ・メモリ114に対するアクセス動作は、メモリ/通信制御部113によって制御される。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、コネクタ部112経由でデジタル・カメラ101に有線接続されている。ホスト機器としてのデジタル・カメラ101は、コネクタ部112経由でメモリ/通信制御部113に対してフラッシュ・メモリ114へのアクセス要求を行ない、撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みや、フラッシュ・メモリ114に格納した画像などのデータの読み出しを行なう。
従来のメモリ・メディアには無線通信機能は実装されていない。また、メモリ/通信制御部113も、フラッシュ・メモリ114へのメモリ・アクセス動作を行なう単なるメモリ制御部となっており(図10を参照のこと)、無線通信機能を制御する機能を装備していない。これに対し、本実施形態に係るメモリ・メディア110はアンテナ111と無線部115からなる無線通信機能を備え、メモリ/通信制御部113はフラッシュ・メモリ114へのメモリ・アクセスに加え、無線部115における無線通信動作の制御も行なう。
フラッシュ・メモリ114に対するデータ書き込みや読み出しなどのアクセス動作は、メモリ/通信制御部113によって制御される。デジタル・カメラ101とメモリ・メディア110とはコネクタ部112経由で有線接続されており、ホスト機器としてのデジタル・カメラ101は、メモリ/通信制御部113によるメモリ・アクセス制御の介在により、撮像画像をフラッシュ・メモリ114へ書き込んだり、フラッシュ・メモリ114に格納した画像データの読み出しを行なったりする。
また、本実施形態では、無線部115は、メモリ/通信制御部113による制御下で無線通信動作を行なうとともに、メモリ/通信制御部113の介在によりフラッシュ・メモリ114へのアクセスを行なうことができる。したがって、外部機器としての無線読取装置102は、アンテナ111及び無線部115を経由して、メモリ/通信制御部113にアクセス要求を行ない、無線通信を利用してフラッシュ・メモリ114にアクセスすることができる。すなわち、メモリ・メディア110は無線通信機能を備えることにより、外部機器へのデータ伝送の度にコネクタの付け替え作業をし、ケーブルを引き回す必要がなくなり、利便性が高い。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、コネクタ部112経由でデジタル・カメラ101から駆動電力が供給されており、この供給電力を用いてフラッシュ・メモリの駆動や、メモリ/通信制御部113によるフラッシュ・メモリ114へのアクセス動作、無線部115による無線通信動作を行なうことができる。
無線部115は、送信部116と受信部117で構成され、例えばISM(Industrial,Scientific and Medical(産業科学医療)バンド)と呼ばれる2.4GHz帯を利用した無線伝送を行なう。送信部116では、送信データを符号化、変調処理を施した後、アナログ信号に変換して無線信号にアップコンバートしてアンテナ111から無線伝送路に送出する。また、受信部117では、アンテナ111で受信した無線信号をダウンコンバータ並びにデジタル信号への変換を行ない、さらに復号化・復調処理して受信データの解析を行なう。
無線部115においてBluetooth通信やIEEE802.11といった通信プロトコルを適用する場合、メモリ・メディア110を装着するデジタル・カメラ101などのホスト機器側にプロトコル動作を実現するためのドライバ・ソフトウェアを情報機器にインストールする必要があり、面倒である。これに対し、本実施形態では、メモリ/通信制御部113は、無線部115による無線通信動作を通じて行なわれるフラッシュ・メモリ114へのアクセス動作を、メモリ・メディア110を装填したデジタル・カメラ101とは独立し(すなわちホスト機器としてのデジタル・カメラ101による制御の外で)、無線接続される無線読取装置102による制御動作により行なう。したがって、デジタル・カメラ101側で通信制御用のデバイス・ドライバを実装しなくとも、フラッシュ・メモリ114から読み出されたデータをメモリ・メディア110と無線読取装置102間で無線伝送することができる。
例えば、無線部115において反射波伝送方式を適用して無線データ送信する場合(後述)、無線読取装置102から送出される電波(無変調キャリア)を受信部117で受信し、送信部116では受信電波に対する反射波に伝送データに基づいて変調処理した反射波信号を送信するようになっている。この場合、メモリ/通信制御部113は、フラッシュ・メモリ114から読み出したデータを反射波に乗せてバックスキャッタ送信すればよく、かかる通信動作はホスト機器の介在なしに実施することができる。
本実施形態に係るメモリ・メディア110は、有線通信路と無線通信路の双方からフラッシュ・メモリ114へアクセスすることができ、これらのアクセス要求が競合するという問題がある。そこで、メモリ/通信制御部113は、いずれかのアクセス動作を択一的に行なうことで、メモリ・アクセス要求を円滑に行なうことを保証するようにしている。具体的には、無線部115により外部機器との無線通信動作を行なっている間は、メモリ/通信制御部113は、ホスト機器としてのデジタル・カメラ101からフラッシュ・メモリ114へのアクセスを禁止するようにしている。また、コネクタ112経由でデジタル・カメラ101からフラッシュ・メモリ114へデータ伝送が行なわれている期間は、無線部115経由でのフラッシュ・メモリ114へのアクセス動作を禁止する。
また、無線部115における無線伝送路は、有線インターフェースと相違し、処理中の通信が途切れる危険があるという問題がある。そこで、本実施形態では、メモリの破壊を防止するために、メモリ/通信制御部113は、無線部115からはフラッシュ・メモリ114への読み出し要求のみを受理し、書き込み要求を許可しないようにしている。
図2には、図1の無線通信機能付きメモリ・メディア110からJPEG若しくはMPEGなどの画像データを受信する無線読取装置102の機能構成を模式的に示している。
無線読取装置200(102)は、無線通信機能付きメモリ・メディア110への制御信号103の送信と、無線通信機能付きメモリ・メディア110から伝送されてきた信号104の受信及び復調を行なう。また、受信データがJPEGやMPEGなどの画像データである場合には、そのデコード処理が必要になる。このため、無線読取装置200は、2.4GHz帯(前述)のアンテナ201と、送受信動作に応じてアンテナ201を択一的に接続するアンテナ・スイッチ202と、受信部203と、送信部204と、通信制御部205、JPEGデコーダ206を備えている。
この他、無線読取装置200には、赤外線リモコン108からの制御信号118を受信するための赤外線受光部209(107)が付加されており、赤外線リモコン108からの制御信号を受信し、通信制御部205に指示を与える。例えば、ユーザは、赤外線リモコン108を利用して、無線読取装置102に対し、デジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110からの画像データの読み取りとテレビ106へのビデオ出力を指示することができる。
無線読取装置200から制御信号を送信するためには、通信制御部205から送信部204に対してQPSKなどの1次変調されたベースバンド信号を与える。送信部204では、この変調信号を2.4GHz帯にアップコンバート並びに増幅し、アンテナ・スイッチ202経由でアンテナ201より送出する。
一方、上述した無線通信機能付きメモリ・メディア110では、メモリ/通信制御部113では、送信データをフラッシュ・メモリ114から読み取ってQPSK変調のベースバンド信号に変換する。そして、送信部116で2.4GHz帯に変換し、アンテナ111から送信する。
無線読取装置200(102)側では、メモリ・メディア110からの送信信号をアンテナ201で受信すると、アンテナ・スイッチ202を経由して受信部203に渡し、さらに通信制御部205で元のデータに復調される。アンテナ・スイッチ202の接点は、送信時には位置aへ、受信時には位置bに、通信制御部205より切り替えられる。
通信制御部205で復調されたデータは、JPEGデコーダ部206で、JPEGデータからアナログAV信号(例えばNTSC信号)に変換され、接続されたテレビ106でその画像を見ることが可能となる。
また、通信制御部205は、無線通信機能付きメモリ・メディア110との通信制御も行ない、送信部204を介して、送達確認情報などの制御信号の送信を行なう。通信制御部205は、メモリ・メディア110から無線伝送によりデータを受信しているステータスを表示部207(120)に示すことができる。
図3には、本実施形態に係る無線伝送システムにおける、制御シーケンスを示している。図示の制御シーケンスは、デジタル・カメラ101並びにこれに装着されている無線通信機能付きメモリ・メディア110、無線読取装置102、テレビ若しくはその他のモニタ・ディスプレイ106、ユーザによって操作される赤外線リモコン108間における通信動作で構成される。
デジタル・カメラ101上では、撮像する度に撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みを行なう。また、撮像した画像をビューア(図示しない)上で表示するときには、フラッシュ・メモリ114に格納した画像などのデータの読み出しを行なう。
ここで、ユーザは、デジタル・カメラ101で撮像した画像をテレビ106で観たいときには赤外線リモコン108の操作を行なう。
赤外線リモコン108は、ビデオ切り換え信号をテレビ106に送る。この赤外線コマンドに応答して、テレビ106は、受信画像の表示モードから外部ビデオ入力モードになる。
赤外線リモコン108は続いて、表示要求信号を無線読取装置102に送る。これに応答して、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・メディア110に転送要求信号を送る。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、転送要求信号を受信すると、フラッシュ・メモリ114へのアクセスの競合を回避するために、デジタル・カメラ101側からコネクタ部112経由でのアクセスを禁止する。そして、内部のフラッシュ・メモリ114から画像データ104を読み出し、無線読取装置102に送る。
無線読取装置102は、画像データを無線通信により受信すると、これを復調し、さらにJPEGデコード並びにアナログ・ビデオ信号への変換を行なった後、ケーブル105経由でテレビ106にビデオ出力する。
あるいは、赤外線リモコン108は、表示要求信号ではなく、どのような画像ファイルが保存されているかを要求する情報要求信号を無線読取装置102に送る。この場合、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・メディア110に情報要求信号を転送し、無線通信機能付きメモリ・メディア110からは画像ファイルの一覧を記述した画像情報信号が返信される。そして、テレビ106上にはファイルのリストが表示され、ユーザは、このファイル一覧から改めて表示要求を行なうことができる。
通信制御部205は、データ受信中には、表示部207を点灯させ、ユーザに電子機器101の操作を避けるように促す。
このように、ユーザは、1つの赤外線リモコン108を用いることで、テレビ106の操作と無線読取装置102とデジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110という複数のデバイスを直接且つ並行して制御を行なうことができるので、操作を簡便にすることが可能となる。
図3に示したシーケンス例では、1枚の画像の転送としたが、この内容は、一覧表示、拡大、縮小、回転などの画像処理の制御でも勿論、構わない。また、ビデオ切り換え信号と表示開始信号と兼用することにより、ビデオ切り換え信号の送信は省略することができる。
B.メモリ・メディアと外部機器間の反射波通信を利用したデータ伝送
上述したように、メモリ・メディア110は無線通信機能を内蔵しており、デジタル・カメラ101などのホスト機器とは独立に、無線読取装置102などの外部機器からメモリ・メディア110内のフラッシュ・メモリ114を読み取る機能が設けられている。すなわち、フラッシュ・メモリ114から読み出されたデータをメモリ/通信制御部113によって無線伝送する無線通信動作は、メモリ・メディア110を装填したデジタル・カメラ101とは独立し、無線接続される無線読取装置102による制御動作により行なうことができる。このような場合、デジタル・カメラ101側で通信制御用のデバイス・ドライバを実装しなくとも、フラッシュ・メモリ114から読み出されたデータをメモリ・メディア110と無線読取装置102間で無線伝送することができる。
無線通信機能付きメモリ・メディア110と無線読取装置102とを接続する無線通信インターフェースとして、例えば無線LANの標準規格であるIEEE802.11や、Bluetooth通信、反射波伝送などを利用することができる。
ここで、無線LANは本来コンピュータでの利用を前提として設計・開発されたものであり、モバイル系機器に搭載する場合、その消費電力が問題となる。現在市販されているIEEE802.11bの無線LANカードの多くは、送信時に800mW以上、受信時に600mW以上の消費電力がある。この消費電力は、バッテリ駆動のポータブル機器にとっては、負担が大きい。無線LAN機能を近距離限定で動作させて、その送信電力を小さくしても、消費電力は大幅には低下することができない。特に、デジタル・カメラなどの画像入力装置から画像表示装置側への伝送は、送信比率が通信全体のほとんど占めるような通信形態となるため、なおさら低消費電力の無線伝送手段が求められている。また、Bluetooth通信に関しては、伝送速度が最大でも720kbpsと低速度であり、昨今の高画質化した画像伝送には時間がかかり不便である。
これに対し、反射器が受信電波に対し変調処理を施した反射波信号をバックスキャッタ送信するという反射波通信方式では、とりわけ反射器側からの送信比率が通信のほとんどを占めるような通信形態において、低消費電力化を実現することができる。
反射波伝送システムは、受信電波に対する反射波に変調処理を施してデータを送信する反射器と、反射器からの反射波信号からデータを読み取る反射波読み取り器で構成される。データ伝送時には、反射波読み取り器が無変調キャリアを送信する。これに対し、反射器は、例えばアンテナの終端のオン/オフなどの負荷インピーダンス操作を用い、無変調キャリアに対し伝送データに応じた変調処理を施すことで、データを送出する。そして、反射波読み取り器側では、この反射波を受信し復調・復号処理して伝送データを取得することができる。
反射器は、例えば、入射する連続波の電波を反射させるアンテナと、送信データの発生回路と、送信データに対応させてアンテナのインピーダンスを変化させるインピーダンス変化回路で構成される(例えば、特開平01−182782号公報を参照のこと)。
反射波伝送システムでは、アンテナの負荷インピーダンスを変化させる(すなわち、反射波の変調を行なう)ためのアンテナ・スイッチは一般的にガリウム砒素のICで構成され、その消費電力は数10μW以下であり、データ伝送を行なうときの平均電力としては、送達確認方式の場合で10mW以下、一方向伝送では、数10μWでデータ伝送が可能である。これは、一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると、圧倒的な性能差である(例えば、特開2005−64822号公報を参照のこと)。したがって、デジタル・カメラなどのバッテリ駆動のモバイル機器に情報格納用端末装置を搭載した場合であっても、データ転送動作時の消費電力を節減することで、バッテリ寿命を大幅に延ばすことができる。
また、メモリ・メディア110と無線読取装置102間の無線通信機能に反射波伝送を用いた場合、メモリ・メディア110内の無線部115は反射器として構成され、無線読取装置102から例えばページ単位で要求されるデータを受信電波に対する変調反射波として返すという単純なデータ送信動作を行なうだけである。
このように受信電波の反射波を反射器が伝送データに基づいて変調する、すなわちデータをバックスキャッタ送信するというデータ伝送動作は、無線読取装置102側の制御下で実現することができ、メモリ・メディア110を収容するホスト機器としてのデジタル・カメラ101の制御が介在しない。言い換えれば、無線部115付きのメモリ・メディア110を装着したデジタル・カメラ101側では、通信プロトコルのバージョン変更などに伴うデバイス・ドライバのインストールやアップデートといった問題から完全に解放される。
以下では、反射波伝送システムを適用した場合における、無線通信機能付きメモリ・メディア110側の無線部115と、無線読取装置200(102)の構成について、詳細に説明する。
図4には、無線通信機能付きメモリ・メディア110側の無線部115の構成を示している。図示の無線部115は、アンテナ111と、アンテナ・スイッチ410と、アンテナ負荷411と、バンド・パス・フィルタ412と、ASK検波部413とで構成される。本実施形態では、無線電波の周波数としてISMと呼ばれる2.4GHz帯を用いる。
例えば、フラッシュ・メモリ114内に保存されている画像データの転送を行なう場合、無線部115の送信部116は、反射波伝送システムにおける反射器として動作する。すなわち、メモリ/通信制御部113によってフラッシュ・メモリ114から読み出された画像データを受け取ると、データのビット・イメージに従ってアンテナ111に接続されたアンテナ・スイッチ410のオン/オフ動作を行なう。例えば、データが1のときはアンテナ・スイッチ410をオンに、データが0のときオフとする。
図示の通り、アンテナ・スイッチ410がオンのときは、アンテナ111は50Ωのアンテナ負荷411で終端され、オフのときは、アンテナ111はオープンとなる。この動作は、転送先としての無線読取装置102(反射波読取器)から到来する電波(無変調キャリア)に対して、オンのときは終端、オフのときは反射の振る舞いをすることから、転送先では、送信電波の反射を検出することによって画像データを読み取ることができる。すなわち、画像データは、基本的に、アンテナ・スイッチ410のオン/オフ操作に伴うアンテナ負荷インピーダンスの変動によって生じる転送先からの電波の反射波として送信されることになる。無線部115からの反射波信号は、ASK変調波と等価である。但し、反射波伝送方式においては、ASK変調以外に、PSK、又はFSK変調方式を適用することも可能である(後述)。
アンテナ・スイッチ410は一般的にガリウム砒素のICで構成され、その消費電力は数10μW以下である。したがって、上述した通信方式によれば、超低消費の無線画像伝送を実現することができる。
バンド・パス・フィルタ(BPF)412並びにASK検波部413は、転送先からASK変調された送達確認信号の受信時に用いるが、この2つのブロックは、伝送の送達確認を行なわない一方向の伝送であれば不要となる。一方、送達確認が行なわれる場合、その制御は、メモリ/通信制御部113で行なわれる。
バンド・パス・フィルタ(BPF)412は、2.4GHz帯の周波数を通過させ、他の周波数帯を減衰される目的で使用される。送達確認を行なう場合に必要なASK検波部413の消費電力は30mW以下で実現することができる。
したがって、図4に示した無線通信装置において画像データなどのデータ伝送を行なうときの平均電力としては、送達確認方式の場合で10mW以下、一方向伝送では、数10μWでデータ伝送が可能である。これは、一般的な無線LANの平均消費電力と比較すると、圧倒的な性能差である。また、無線部115を構成するモジュール面積は、無線LANを採用する場合と比べると、極端に小さくすることができる。
また、図5には、無線通信インターフェースとして反射波伝送を適用した場合における無線読取装置102のハードウェア構成を模式的に示している。
無線読取装置102は、反射器からの反射波信号を読み取るための反射波読取器として構成される。無線機能付きメモリ・モジュール110からの画像データは反射波で伝送されるため、無線読取装置102からは反射波を作り出すための無変調のキャリアを送信する必要がある。無線読取装置102は、2.4GHz帯のアンテナ201と、アンテナ・スイッチに代わるサーキュレータ502と、直交検波部504とAGCアンプ505からなる受信部503と、ミキサ508とパワー・アンプ507からなる送信部506と、周波数シンセサイザ509とを備えている。通信制御部205と、JPEGデコーダ206と、赤外線受光部209と、表示部207の構成並びに動作は上述と同様なので、ここでは説明を省略する。
送信部506から無変調キャリアを送信するためには、通信制御部205からミキサ508に対してある直流電圧を与えることにより実現される。送信する無変調キャリアの周波数は、通信制御部205から制御される周波数シンセサイザの周波数で決まる。本実施形態では、ISMと呼ばれる2.4GHz帯を用いている。ミキサ508から出力される無変調キャリアは、パワー・アンプ507にて所定のレベルまで増幅され、サーキュレータ502経由でアンテナ201より送出される。
無線通信機能付きメモリ・モジュール110からの反射波信号は、無線読取装置200から送信される周波数と同じである。この反射波信号は、アンテナ201で受信され、サーキュレータ502経由で上述した受信部503に入力される。すなわち、直交検波部504には、送信と同じローカル周波数が入力されるため、直交検波部504の出力には、無線部115で掛けられたASK変調波が現れることになる。 但し、受信した信号はローカル信号と位相が異なるため、I軸信号とQ軸信号には、その位相差に応じた変調信号が現われる。
AGCアンプ部505では、最適値にゲインを制御され、その出力信号は、通信制御部205に渡される。通信制御部205では、I軸及びQ軸の各信号よりデジタル・データへの復調を行ない、正しいデータはJPEGでコーダ206により復号化される。その後、復号データは、例えばさらにアナログ・ビデオ信号に変換され、ケーブル105経由でテレビ106にビデオ出力される。あるいは、イメージをレンダリングしたデータがプリンタ(図示しない)へ出力され、用紙上にプリントアウトされる。
無線通信機能付きメモリ・モジュール110からのデータの送達確認を行なう場合、通信制御部205は、受信したパケット・データが正しければ肯定応答のACK(Acknowledgement)を、誤っていれば否定応答のNACK(Negative Acknowledgement)のデジタル・データをミキサ508に転送し、ASK変調をかける。データの正誤は、画像データ・パケットに付加されたCRC(Cyclic Redundancy Check)符号で判断する。
図6には、図4に示した無線通信機能付きメモリ・モジュール110の無線部115と図5に示した無線読取装置102間で反射波伝送による無線データ通信を行なうための制御シーケンスを示している。但し、図示の例では、両装置間で送達確認を行なうことを想定する。以下、この制御シーケンスについて説明する。
(ステップ1)
無線通信機能付きメモリ・モジュール110では、無線読取装置102から制御信号103を受信する、あるいはその他の手続きに従って、コネクタ部112を経由した有線通信モードから無線通信モードに設定される。
(ステップ2)
同様に、無線読取装置102では、赤外線リモコン108からの赤外線コマンドを受信する、あるいはその他に手続きに従って、データ受信待ちモードに設定される。
(ステップ3)
そして、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・モジュール110からの反射波信号を受信すべく、無変調キャリアを送信する。
(ステップ4)
無変調キャリアを受信した無線通信機能付きメモリ・モジュール110の無線部115は、反射波を用いて、データ送信要求を行なう。
(ステップ5)
データ送信要求を受信した無線読取装置102は、ASK変調により送信許可を送信する。
(ステップ6)
無線読取装置102は、データ送信要求されたデータ(例えば、画像データや、送信データ・ファイルの一覧データ)を受信すべく、無変調キャリアを送信する。
(ステップ7)
無変調キャリアを受信した無線通信機能付きメモリ・モジュール110の無線部115は、反射波の変調を利用して、パケット化されたデータの送信を行なう。
(ステップ8)
無線読取装置102は、受信したパケット・データが正しければ、ASK変調で肯定応答のACK(Acknowledgement)を送る。間違っていれば、否定応答のNACK(Negative Acknowledgement)を送信する。ここで、データの正誤は、データ・パケットに付加されたCRC(Cyclic Redundancy Check)符号で判断することができる。
無線読取装置102がACK又はNACKの送達確認信号を送信する際に、同一信号内に無線通信機能付きメモリ・モジュール110に対するコマンドを含めることも可能である。
以降、データの終了まで、ステップ6〜ステップ8の処理は繰り返し実行される。
上述した通信シーケンスでは、画像転送であることから、データの送達確認のため、双方向通信とした。但し、ビデオ・カメラなどのストリーミング・データの転送を行なう際には、一方向の伝送でも構わない。この場合、無線読取装置102からASK変調された送達確認信号は不要となることから、無線通信機能付メモリ・モジュール110側もその受信が不要となり、さらなる低消費電力化を実現することができる。
図7には、TDD(時分割多重)方式を採用した反射波伝送システムの動作例を示している。本システムでは反射を利用するため、反射波読取器(この場合は無線読取装置102)側は、無変調キャリア送信して反射波を受信する状態と、自ら変調波によりデータ送信する状態を繰り返す。また、反射器(この場合は無線通信機能付メモリ・モジュール110)側では、無変調キャリアにデータを乗せた反射波としてバックスキャッタ送信し、次に反射波読取器側からの変調波を受信する状態とを繰り返す。
反射波伝送システムは、反射器から反射波読取器へのアップワードの伝送速度の方が反射波読み取り器から反射器へのダウンワードの伝送速度よりも高速であるという非対称の伝送システムである。したがって、上述したように、無線通信機能付きメモリ・モジュール110すなわち反射器側からの送信比率が通信のほとんどを占めるような通信形態において、伝送効率が高まるとともに、低消費電力データ伝送を実現することができる。
C.メモリ・メディアのアドレス記憶機能
複数の画像ファイルが格納されたメモリ空間を画像探索するという作業では、最後にアクセスされたアドレスは、ユーザが最も見たいファイルであると推定することができる。何故ならば、ユーザは最も見たいファイルを確認(すなわちプレビュー)してからデータ転送を行なう習慣があるからである。
そこで、メモリ・メディア110は最後にアクセスされたフラッシュ・メモリ114内のアドレス情報を格納するアドレス記憶部をさらに備えていてもよい。このような場合、データ転送先となるデジタル・カメラ101や無線読取装置102では、このアドレス記憶部からアドレス情報を取得し、次いで、取得したアドレス情報に基づいて、最後にアクセスされたファイルを特定することによって、所望するファイルを構成するデータをメモリ・メディア110に要求することができる。あるいは、ユーザは、デジタル・カメラ101でデータ転送時には最も見たいファイルを最後に閲覧することにより、無線読取装置102への転送データを指定することもできる。
図11には、この場合の無線伝送システムの構成を模式的に示している。本システムは、図1に示した実施形態と同様に、デジタル・カメラ101と、無線通信機能付きメモリ・メディア110と、無線読取装置102と、テレビ106と、赤外線リモコン108で構成される。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、デジタル・カメラ101の専用メモリ・スロットなど(図示しない)に収容され、コネクタ部112に接続されている。コネクタ部112は、無線通信機能付きメモリ・メディア110とデジタル・カメラ101との有線通信インターフェースを構成し、例えば、MEMORYSTICK(登録商標)や、PCカード、USBなどいずれかの標準的なインターフェース仕様に準拠するものとする。
デジタル・カメラ101側からは、このコネクタ部112経由で、無線通信機能付きメモリ・メディア110内のフラッシュ・メモリ114にアクセスすることができ、撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みや、フラッシュ・メモリ114に格納した画像などのデータの読み出しを行なうことができる。また、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、コネクタ部112経由でデジタル・カメラ101から駆動電力が供給されている。
また、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、無線読取装置102との無線通信インターフェースとしての無線部115を備えている。無線部115は、送信部116及び受信部117を備え、反射波伝送を利用して無線読取装置102との間で無線伝送を行なうことができる。例えば、無線読取装置102からは、制御信号103が無線送信される。これに応答して、デジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110からは、JPEGの画像データなどの応答信号104が無線送信される。
また、無線読取装置102は、ビデオ・ケーブル105経由でテレビ106の外部ビデオ入力端子に接続されている。無線読取装置102は、デジタル・カメラ101から取得した画像データを、ビデオ・ケーブル105経由でテレビ106の外部ビデオ入力端子にビデオ出力することができる。
テレビ106並びに無線読取装置102は、赤外線受光部107及び109をそれぞれ備えており、赤外線コマンドを受光し、コマンドに応じた装置動作を実行する。また、赤外線リモコン108は、テレビ106や無線読取装置102に対する制御コマンドを、赤外線からなる制御信号118として赤外線受光部107に与えることができる。ユーザは、赤外線リモコン108を利用して、無線読取装置102に対し、デジタル・カメラ101内の無線通信機能付きメモリ・メディア110からの画像データの読み取りとテレビ106へのビデオ出力を指示するとともに、テレビ106に対して、ケーブル105からライン入力された画像データの表示出力を指示することができる。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、無線通信機能付きメモリ・メディア110におけるメモリ空間の実体であるフラッシュ・メモリ114の他に、メモリ/通信制御部113と、コネクタ部112と、アンテナ111と、無線部115を備えている。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、コネクタ部112経由でデジタル・カメラ101に有線接続されている。コネクタ部112経由で、データ伝送を行なわれる以外に、デジタル・カメラ101から駆動電力が供給される。
メモリ/通信制御部113は、フラッシュ・メモリ114へのメモリ・アクセスに加え、無線部115における無線通信動作の制御を行なう。具体的には、メモリ/通信制御部113は、フラッシュ・メモリ114から読み出したデータを無線部115から送信する動作を制御する。また、メモリ/通信制御部113には、フラッシュ・メモリ114に最後にアクセスしたアドレス情報を格納するアドレス記憶部113Aを備えている。アドレス情報は、フラッシュ・メモリ114におけるアクセス先の物理ブロック番号及びページ番号からなる。
フラッシュ・メモリ114から読み出されたデータをメモリ/通信制御部113によって無線伝送する無線通信動作は、メモリ・メディア110を装填したデジタル・カメラ101とは独立し、無線接続される無線読取装置102による制御動作により行なうことができる。したがって、デジタル・カメラ101側で通信制御用のデバイス・ドライバを実装しなくとも、フラッシュ・メモリ114から読み出されたデータをメモリ・メディア110と無線読取装置102間で無線伝送することができる。
本発明では、無線通信手段を経由したメモリ・メディア110と無線読取装置102間でのデータ伝送、並びに有線通信手段を経由したメモリ・メディア110とデジタル・カメラ101間でのデータ伝送を行なうデータ通信システムを想定している。ここで、2つの装置間でデータ転送を行なう際、一般に、データ転送元の装置において送信対象となるファイルとファイル転送先を指定してからファイル転送を行なうことになる。例えば、デジタル・カメラ101による撮影画像をPCに転送する場合、撮像画像を保存するメモリ・メディア110をPCに接続した後、転送したいファイルを指定してからPCへの転送処理を行なう。メモリ・メディア110とPC間を上述した反射波伝送路で接続した場合には、ユーザは、両装置間の指向性を調整するための操作と、転送ファイルを指定する操作をともに行なう必要がある。
ところが、ユーザ操作により転送ファイルを指定する場合、ファイルを送る度に、ユーザがメモリ・メディア110内の無線部115の指向性をデータ転送先であるPCの無線読取装置の方向に合わせる作業が発生するため、煩わしい。
これに対し、図11に示した実施形態では、メモリ・メディア110内でフラッシュ・メモリ114へのアクセス動作及びアクセスしたデータの転送動作を制御するメモリ/通信制御部113内に、最後にアクセスされたフラッシュ・メモリ114内のアドレス情報を格納するアドレス記憶部113Aを備えている。最後にアクセスされたアドレスは、ユーザが最も見たいファイルであると推定することができる。何故ならば、ユーザは最も見たいファイルを確認(すなわちプレビュー)してからデータ転送を行なう習慣があるからである。あるいは、ユーザは、データ転送時には最も見たいファイルを最後にアクセスすることにより、転送ファイルを指定するようにしてもよい。
無線読取装置102若しくはデジタル・カメラ101などのデータ転送先では、アドレス記憶部113Aからアドレス情報を取得し、次いで、取得したアドレス情報に基づいて、最後にアクセスされたファイルを特定することによって、所望するファイルを構成するデータをメモリ/通信制御部113経由でメモリ・メディア110に要求することができる。
本実施形態に係る無線伝送システムにおける制御シーケンスは、図3に示した動作シーケンスと類似している。
デジタル・カメラ101上では、撮像する度に撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みを行なう。また、撮像した画像をビューア(図示しない)上で表示するときには、フラッシュ・メモリ114に格納した画像などのデータの読み出しを行なう。
ここで、ユーザは、デジタル・カメラ101で撮像した画像をテレビ106で観たいときには赤外線リモコン108の操作を行なう。
赤外線リモコン108は、ビデオ切り換え信号をテレビ106に送る。この赤外線コマンドに応答して、テレビ106は、受信画像の表示モードから外部ビデオ入力モードになる。
赤外線リモコン108は続いて、表示要求信号を無線読取装置102に送る。これに応答して、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・メディア110に転送要求信号を送る。
無線通信機能付きメモリ・メディア110内のメモリ/通信制御部113は、転送要求信号を受信すると、フラッシュ・メモリ114へのアクセスの競合を回避するために、デジタル・カメラ101側からコネクタ部112を経由したフラッシュ・メモリ114へのアクセスを禁止する。そして、メモリ/通信制御部113は、フラッシュ・メモリ114から画像データ104を読み出し、無線読取装置102に送る。
無線読取装置102は、画像データを無線通信により受信すると、これを復調し、さらにJPEGデコード並びにアナログ・ビデオ信号への変換を行なった後、ケーブル105経由でテレビ106にビデオ出力する。
フラッシュ・メモリ114に格納されているファイルのうちどれを転送すべきか、ファイルの指定方法として、例えば以下の2つを挙げることができる。
(1)無線読取装置102からファイル名を指定して、メモリ・メディア110側でフラッシュ・メモリ114内のファイル構成を認識し、指定ファイルを転送する。すなわち、メモリ・メディア110側でFAT(File Allocation Table)を持ち、ファイルの管理を行なう。
(2)無線読取装置102がメモリ・メディア110内のフラッシュ・メモリ114内のファイル構成を認識し、フラッシュ・メモリ114のブロック番号、ページ番号をメモリ・メディア110に指定して、ファイルを転送する。すなわち、無線読取装置102側でFATを持ち、ファイルの管理を行なう。
いずれのファイル指定方法にせよ、ユーザ操作により転送ファイルを指定する場合、ファイルを送る度に、ユーザがメモリ・メディア110内の無線部115の指向性を無線読取装置102の方向に合わせる作業が発生するため、とても煩わしい。これに対し、図11に示した装置構成では、メモリ/通信制御部113内のアドレス記憶部113Aに保持されている、最後にアクセスされたフラッシュ・メモリ114内のアドレス情報に基づいて、ユーザが最も見たいファイルを推定することができる。あるいは、ユーザは、データ転送時には最も見たいファイルをデジタル・カメラ101で最後にアクセスすることにより、転送データを指定するようにしてもよい。
無線読取装置102若しくはメモリ/通信制御部113は、アドレス記憶部113Aからアドレス情報を取得し、次いで、取得したアドレス情報に基づいて、最後にアクセスされたファイルを特定して、ユーザによる指定操作の介在なしにファイル転送を実行することができる。
勿論、アドレス記憶部113Aに記憶されている最後にアクセスしたアドレスから必ずしも所望のファイルを指定することができないこともある。このような場合、既に述べたように、無線通信機能付きメモリ・メディア110に情報要求信号を転送するようにしてもよい。無線通信機能付きメモリ・メディア110からは画像ファイルの一覧を記述した画像情報信号が返信される。そして、テレビ106上にはファイルのリストが表示され、ユーザは、このファイル一覧から改めて表示要求を行なうことができる。
ここで、後者のファイル指定方法、すなわち無線読取装置102側でFATを持ち、ファイルの管理を行なう場合の無線通信制御の仕組みについて説明する。この場合、無線読取装置102がメモリ・メディア110内のフラッシュ・メモリ114内のファイル構成を認識し、フラッシュ・メモリ114のブロック番号、ページ番号をメモリ・メディア110に指定して、ファイルを転送する。
図12には、無線読取装置102(200)内の通信制御部205の機能構成を模式的に示している。図示の通り、通信制御部205は、通信制御機能部とホスト機能部に大別される。
通信制御機能部は、反射波伝送における送信信号の変調処理を行なう変調機能部1201と、受信信号の復調処理を行なう復調機能部1202と、所定の通信プロトコルに従って反射波通信の接続や切断などのプロトコル制御を行なうプロトコル制御部1203で構成される。
ホスト機能部は、通信制御機能部における通信動作を制御する通信制御部1204の他に、データ制御部1205と、ファイル制御部1206と、マネジメント部1207で構成される。
データ制御部1205は、フラッシュ・メモリ114に対して、セクタあるいはページと呼ばれる、物理アクセスの最小単位(一般的には512バイト)を以ってデータの読み出し並びに書き込み動作を行なうドライバ制御部である。また、ファイル制御部1206は、FATファイル・システムに相当し、ファイル・データすなわちファイル単位でのデータの読み出し及び書き込み動作を行なう。マネジメント部1207は、ユーザからのコマンド入力などホスト機能部におけるユーザ・インターフェースを提供するとともに、ホスト機能部全体の動作を統括的に管理する。マネジメント部1207では、基本的にはデータをファイル単位で扱う。
ホスト機能部から送信されたデータは、変調機能部1201において変調される。そして、変調信号は無変調キャリアに載せられてメモリ・メディア110に送信される。ホスト機器からのダウンリンクには、一般に、メモリ・メディア110側での検波の容易性を考慮してASKが使用される。
図13には、メモリ・メディア110内のメモリ/通信制御部113の機能構成を模式的に示している。図示の通り、メモリ/通信制御部113は、通信制御機能部とメモリ・アクセス機能部に大別される。
通信制御機能部は、反射波伝送における送信信号の変調処理を行なう変調機能部1301と、受信信号の復調処理を行なう復調機能部1302と、所定の通信プロトコルに従って反射波通信の接続や切断などのプロトコル制御を行なうプロトコル制御部1303で構成される。無線部115内の受信部117による受信信号は、復調機能部1302によってデータ復調され、メモリ・アクセス機能部に受信される。
また、メモリ・アクセス機能部1304によってフラッシュ・メモリ114から読み出されたデータは、通信制御機能部の変調機能部1301によって変調される。変調信号は、無線部115内の送信部116において、無変調キャリアを検波して得られる反射波に載せられ、無線読取装置102にバックスキャッタ送信される。無線読取装置102の無線部は、反射波信号を受信し、復調信号を得る。復調信号は復調機能部1202によってデータ復調され、ホスト機能部に受信される。
なお、図13には示していないが、フラッシュ・メモリ114に最後にアクセスしたアドレスを記憶するアドレス記憶部113Aがメモリ・アクセス機能部1304に実装されている。
無線読取装置102(200)側のデータ制御部1205と、メモリ・メディア110側のメモリ・アクセス機能部1304間では、フラッシュ・メモリ114上の物理データに対する読み出し及び書き込みのアクセス動作の制御が行なわれる。また、無線読取装置102(200)側のファイル制御部1206は、データ制御部1205によって読み出し並びに書き込みを行なったデータをファイル・データとして構築するための論理的なファイル・システム制御を行なう。
続いて、無線読取装置102側のホスト機能部が主体となって行なわれるファイル・システム制御について説明する。図14には、フラッシュ・メモリ114としてNAND型フラッシュ・メモリを想定した場合における、フラッシュ・メモリ114の物理記憶領域700とファイル・データ800の構成例を示している。
まず、物理的なアドレス空間について説明する。記憶領域700の物理的なアクセス単位は、「ページ」と呼ばれる512バイトの単位である。但し、記憶デバイスがフラッシュ・メモリではなくハード・ディスクで構成される場合には、物理的なアクセス単位は「セクタ」と呼ばれる。
また、記憶領域700は、複数のページ(一般的には32ページ)のまとまりで「ブロック」と呼ばれる単位を構成する。記憶領域700は物理的にはブロック単位で分割されアドレス管理される。但し、記憶デバイスがフラッシュ・メモリではなくハード・ディスクで構成される場合には、所定数のセクタのまとまりが「クラスタ」を構成し、クラスタ単位でアドレス管理が行なわれる。
続いて論理的なアドレス空間について説明する。記憶領域700は、論理的には、ブート・ブロック71、FATブロック72、ディレクトリ領域73、データ領域74により、ブロック単位で領域分割される。ブート・ブロック71には、記憶領域全体に関わる情報が記憶される。FAT(File Allocation Table)ブロック72には、ファイル・データを構成するブロック毎のアドレス配置情報が記憶される(例えば、 http://home.impress.co.jp/magazine/dosvpr/q−a/0007/qa0007_2.htm/を参照のこと)。ディレクトリ領域73には、全ファイル・データのディレクトリ情報、及び各ファイル・データの先頭アドレス情報が記憶される。データ領域74には、ファイル・データを構成するブロック・データが記憶される。
ファイル・データへのアクセス要求を行なうホスト機能部では、ファイル制御部1206がブート・ブロック71を例えばアドレス記憶部113Aから取得しディレクトリ領域73の情報を得る。次に、ディレクトリ領域73から所望するファイル・データの先頭アドレス情報を得る。次に、FATブロック72からファイル・データを構成するブロックのアドレス情報を得る。そして、データ制御部132は、ファイル・データを構成するブロック・データを順次取得し、これらを連結してファイル・データ800を得る。
以上のように、無線読取装置102(200)は、ブロック・データの単位でファイル・データを処理する。
図15には、無線読取装置102(200)側のホスト機能部からメモリ・メディア110側のメモリ・アクセス機能部1304に対して、ブロック・データ単位でファイル・データに読み出しアクセスする処理シーケンスを示している。
ホスト機能部のマネジメント部1207は、通信制御部1204に対し接続要求を発行する(1501)。通信制御部1204は、通信機能部1201〜1203及び無線部と、メモリ・メディア110の無線部115及び通信機能部1301〜1303を介して、メモリ・アクセス制御部1304との間で反射波伝送路における接続を確立する(1502)。そして、通信制御部1204からマネジメント部1207に対して接続応答が返される(1503)。
また、無線読取装置102(200)側では、メモリ・メディア110内に格納されている所望のファイルに対しページ若しくはセクタ単位でアクセス動作を行なうためには、論理ブロック・アドレス情報と物理ブロック・アドレス情報との対応関係を知っておく必要がある。フラッシュ・メモリ114内の各ページには、当該ページに割り当てられたデータに関する論理アドレス情報が含まれている(後述)。したがって、無線読取装置102(200)は、メモリ・メディア110に対し、各ページ若しくはセクタに関する論理アドレス情報を要求し、受信した論理アドレス情報に基づいて、各ファイルを構成するブロックに関するアドレス変換表を生成することができる。
続いて、マネジメント部1207は、ファイル制御部1206に対して、指定されたファイル・データの読み出し(ファイル・リード)を要求する。例えばメモリ・メディア110側のアドレス記憶部113Aから読み出されたアドレス情報に基づいてファイルを指定することができるが、マネジメント部1207からの指示などその他の方法によってファイルを指定することも可能である。
ファイル指定に応答して、ファイル制御部1206は、先に述べたファイル・システム制御に基づいて、メモリ・メディア110からのブロック・データの読み出し動作を行なう。
メモリ・メディア110内のフラッシュ・メモリ114へのアクセスはページ単位で行なわれる(前述)。本実施形態では、無線読取装置102(200)の主導によりファイル・データの読み出しを行なうために、ファイル制御部1206は、フラッシュ・メモリ114への物理的なアクセス単位であるページ単位でデータを取得する。このために、ファイル制御部1206は、データ制御部1205を介してページ読み出し要求を発行し(1504)、ページ・データの取得を行なったメモリ・アクセス機能部1304からページ読み出し応答を得る(1505)。要求するページのページ番号は、上述したアドレス変換表から得ることができる。ページ読み出し要求1504とページ読み出し応答1505からなるトランザクションは、1ファイル分のページ・データが取得されるまで、繰り返し実行される。
このように、無線読取装置102(200)側では、ファイル単位でデータ要求が発生したときには、ファイル単位でメモリ・メディア110にデータ要求するのではなく、当該ファイルを構成するページ毎にデータを要求し、反射波伝送路を経由して、フラッシュ・メモリ114に対しページ単位でのデータ伝送を順次行なうことで、ファイル全体のデータ要求を実現する。そして、ページ単位で取得されたデータは、ファイル制御部1206により元のファイルに再構成される。この場合、メモリ・メディア110内の記憶領域に対するデータ制御は、メモリ/通信制御部113が反射波伝送路を経由して行なっているが、無線読取装置102(200)からフラッシュ・メモリ114に対してファイル・データの読み出し並びに書き込み制御が直接行なわれることと等価であり、メモリ・メディア110を収容するホスト機器による制御は介在しない。
図16には、メモリ・メディア110内の記憶デバイスとしてのフラッシュ・メモリ114の物理フォーマット及び論理フォーマットの一構成例を示している。
フラッシュ・メモリ114の物理アクセスの単位であるページ・データは、512バイトのデータ領域と16バイトの拡張データ領域の合計528バイトからなる。したがって、フラッシュ・メモリ114へのアクセスに使用されるページ・バッファのサイズは528バイトとなる。
データ領域はペイロードに相当する。拡張データ領域は、オーバーライト・フラグ、管理フラグ、物理ブロックの論理アドレス、フォーマット・リザーブ、ページ・データのエラー検出・訂正用のECC(Error Correctiong Code)からなる。このうち、論理アドレスには、該当する物理ページがファイル・システムの仮想空間上で割り当てられている論理アドレスが格納されている。
無線読取装置102(200)が反射器からなる無線部115付きのメモリ・メディア110と反射波伝送路上での接続を確立した時点では、フラッシュ・メモリ114内のアロケーション情報を不知である。そこで、無線読取装置102(200)は、接続確立時に、拡張データ領域の読み出し要求を行ない、各ページの論理アドレス情報を取得することで、アドレス変換表を生成するようにする。
フラッシュ・メモリ114上では、32ページ(=16キロ・バイト)毎に1ブロックが形成される。各ブロックにはブロック番号が割り当てられている。また、ブロック内の各ページにはページ番号が割り当てられている。したがって、ブロック番号とページ番号を指定することで、フラッシュ・メモリ114の記憶領域から特定のページを要求することができる。さらに、512ブロック(=8メガ・バイト)毎にセグメントが形成され、各セグメントにはセグメント番号が割り当てられている。
無線読取装置102(200)は、反射器付きのメモリ・メディア110に対する物理的なアクセス制御を行なう。制御コマンドに付加された物理ブロック番号とページ番号に対応した512バイト分のページ・データ並びに16バイト分の拡張データがページ・バッファを介して読み出し又は書き込みが行なわれる。
なお、本出願人に既に譲渡されている特願2004−334005号明細書には、反射器を備えたメモリ・メディアに対し反射波伝送路を経由して、ファイルを構成する記録データをページ単位で要求する通信システムについて記載されている。
上述したように、メモリ・メディア110は最後にアクセスしたアドレスを保持しているので、例えばこれを装填したデジタル・カメラ101上でユーザが最後にプレイバックして見た画像を、無線読取装置102(200)側ではユーザによるファイル指定操作なしに読み取ることができる。
図17には、デジタル・カメラ101で最後にプレイバックして見た画像を転送する場合の制御シーケンスを示している。最後にプレイバックして見たファイルに関するアドレス情報(すなわち、フラッシュ・メモリ114の最終リード・ファイルのブロック番号及びページ番号)は、メモリ・メディア110のメモリ/通信制御部113内のアドレス記憶部113Aで記憶されている。このアドレス情報は、ユーザがプレイバックして画像を見る度に更新される。
図示の制御シーケンスは、デジタル・カメラ101並びにこれに装着されている無線通信機能付きメモリ・メディア110、無線読取装置102、テレビ若しくはその他のモニタ・ディスプレイ106、ユーザによって操作される赤外線リモコン108間の通信動作で構成される。
デジタル・カメラ101上では、撮像する度に撮像画像のフラッシュ・メモリ114への書き込みを行なう。その後、ユーザは、テレビ106に表示したい撮像済みの画像をデジタル・カメラ101上でプレイバック表示をする。
この際、メモリ・メディア110のメモリ/通信制御部113は、最後に読み出されたフラッシュ・メモリ114のファイルのアドレス情報(ブロック番号及びページ番号)を内部のアドレス記憶部113Aに記憶させる。
ここで、ユーザは、デジタル・カメラ101に表示されている画像をテレビ106で観たいときには赤外線リモコン108の操作を行なう。
赤外線リモコン108は、ビデオ切り換え信号をテレビ106に送る。この赤外線コマンドに応答して、テレビ106は、受信画像の表示モードから外部ビデオ入力モードになる。
赤外線リモコン108は続いて、表示要求信号を無線読取装置102に送る。これに応答して、無線読取装置102は、無線通信機能付きメモリ・メディア110に最終リード情報要求信号を送る。
無線通信機能付きメモリ・メディア110は、最終リード情報要求信号を受信すると、フラッシュ・メモリ114へのアクセスの競合を回避するために、デジタル・カメラ101側からコネクタ部112経由でのアクセスを禁止する。そして、内部のアドレス記憶部113Aに記憶されている最終リード・ファイルのアドレス情報(すなわち、ブロック番号及びページ番号)を読出し、無線読取装置102に送る。
無線読取装置102は、受信した最終リード情報を基に、メモリ・メディア110内のアドレス変換テーブルを検索し、最終リード・ファイルを特定する。そして、目的のファイルの転送要求を行ない、JPEG画像データを読み出す。このとき、無線読取装置102からフラッシュ・メモリ114に対するアクセス動作がページ単位で行なわれる場合には、要求された画像ファイル分のページに相当する回数だけ、ページ読み出し要求とページ読み出し応答からなるトランザクションが繰り返し実行されることになる(前述、並びに図15を参照のこと)。
無線読取装置102は、目的の画像データを無線通信により受信すると、これを復調し、さらにJPEGデコード並びにアナログ・ビデオ信号への変換を行なった後、ケーブル105経由でテレビ106にビデオ出力する。
このようして、デジタル・カメラ101の表示部にプレイバックされた画像を無線読取装置102から読み出すことが可能となり、無線読取装置102側での画像選択の操作が不要になり、利便性が向上する。
D.ホスト機器側の省電力機能への対応
既に述べたように、無線通信機能付きメモリ・メディア110は、コネクタ部112経由でデジタル・カメラ101から駆動電力が供給されており、この供給電力を用いてメモリ/通信制御部113によるフラッシュ・メモリ114へのアクセス動作や無線部115による無線通信動作を駆動するようになっている。
一方、ホスト機器としてのデジタル・カメラ101はバッテリ駆動のため省電力機能を備えており、メモリ・スロットに収容するメモリ・メディア110において最後にイベントが発生してからの経過時間を計時するタイマがタイムアウトしたことに応答して、コネクタ部112経由での給電を停止するようになっている。
このような状況下では、デジタル・カメラ101による制御の外で、メモリ・メディア110において無線伝送が行なわれている期間中にタイマがタイムアウトしてメモリ・カードへの給電が停止してしまう可能性がある。もしも、通信中のメモリ・メディア110の電源が途中で切断されると、通信も中断を余儀なくされ、その後復帰することができなくなる。
そこで、本実施形態では、ホスト機器側でのタイマがタイムアウトする前にコネクタ部112上で所定のイベントを発生させて、メモリ・メディア110に対する給電の停止を回避するようにしている。
例えば、コネクタ部112には、ホスト機器側からメモリ・メディア110の挿抜を検出するための挿抜検出信号が含まれている。ホスト機器としてのデジタル・カメラ101は、挿抜検出信号上でメモリ・メディア110の抜状態を検出すると給電を停止するが、挿状態で給電を開始するように構成されている。このような場合、メモリ・メディア110側では、デジタル・カメラ101に設定されている省電力用のタイマがタイムアウトする前に、無線部115による無線通信動作を一時的に中断し、無線通信動作が一時中断しているときに、挿抜検出信号上で擬似的に抜状態を形成してデジタル・カメラ101からの給電を一旦停止させ、その後に挿状態に戻してデジタル・カメラ101からの給電を再開させることで、メモリ・メディア110に対する給電の停止を回避することができる。
図18には、デジタル・カメラ101からメモリ・メディア110への給電停止を回避するための仕組みを示している。
同図において、参照番号131は、デジタル・カメラ101から無線通信機能付きメモリ・メディア110へ駆動電力を供給する電源供給ラインVccmである。
また、参照番号132は、メモリ・メディア110のメモリ・スロットへの挿抜を検出するための挿抜検出信号INSである。
参照番号133は、グランド・ラインGNDであり、デジタル・カメラ101及びメモリ・メディア110それぞれの内部でグランドに接続されている。
挿抜検出信号INSは、デジタル・カメラ101内では、参照番号134で示すプルアップ抵抗R1(100kΩ)を介して電源供給ラインVccmによりプルアップされている。また、挿抜検出信号INSは、メモリ・メディア内では、参照番号135で示すプルダウン抵抗R2(1kΩ)を介してグランド・ラインGDNに接続されている。そして、R1>>R2として選択される。
このような場合、挿抜検出信号INSの信号レベルは、メモリ・メディア110が挿入されていないときは、電源供給ラインVccmによりプルアップされてハイ・レベルとなり、メモリ・メディアを挿入するとグランド・ラインGNDによりプルダウンされてロー・レベルとなる。したがって、デジタル・カメラ101側では、挿抜検出信号INSの信号レベルをモニタすることにより、メモリ・メディア110の挿抜を検出することができる構成となっている。
デジタル・カメラ101側では、挿抜検出信号INSの信号レベルを基にメモリ・メディア110の挿抜を検出する挿抜検出機能部と、コネクタ部112を介してメモリ・メディア110側で最後にイベントが発生してからの経過時間を計時するタイマ機能部と、タイマのタイムアウトに応じて電源供給ラインVccmを介したメモリ・メディア110への給電を停止するパワー・コントロール機能部を備えている。
また、メモリ・メディア110内のメモリ/通信制御部113は、デジタル・カメラ101の介在しない、無線部115における無線データ通信を開始してからの経過時間を計時するタイマ機能部と、この経過時間に応じて挿抜検出信号INSの信号レベルを操作するINSコントロール機能部を備えている。INSコントロール機能部は、挿抜検出信号INSの信号レベルを操作することで、デジタル・カメラ101に対し、擬似的な抜状態及び挿状態を形成することができる。
以下では、デジタル・カメラ101にメモリ・メディア110が挿入され、電源Vccmが供給されている状態で、無線部115による無線データ通信が行なわれるときの、メモリ/通信制御部113による処理動作について、図19を参照しながら説明する。
無線部115による無線データ通信が開始すると、メモリ/通信制御部113は、自身のタイマ機能部を起動して、開始からの経過時間を計時する。このときのメモリ/通信制御部113からのINS出力はロー・レベルであり、デジタル・カメラ101側ではメモリ・メディア110の挿状態を正しく認識することができる。
メモリ/通信制御部113のタイマ機能部は、デジタル・カメラ101側で電源供給ラインVccmを介したメモリ・メディア110への給電を停止するためのタイマ(例えば3分)よりも短く設定された2通りのタイムアウト値t1及びt2(但し、t1<t2)を持つ。
まず、t1が満了すると、メモリ/通信制御部113は、無線読取装置102側に通信中断通知を送り、無線通信動作を一時中断する。
次いで、t2が満了すると、メモリ/通信制御部113は、挿抜検出信号INSの信号レベルをハイに転じる。デジタル・カメラ101側では、挿抜検出信号INSのハイ・レベルを検出したことに応答して、メモリ・メディア110が抜き取られたと擬似的に認識するので、所定時間が経過した時刻t3で電源供給ラインVccmをオフにする。
電源供給ラインVccmからの給電がなくなると、メモリ/通信制御部113は動作が停止する。この結果、挿抜検出信号INSは、プルダウン抵抗R2を介してグラントに接続されているので、その出力はロー・レベルに転じる。
デジタル・カメラ101は、挿抜検出信号INSの信号レベルがローになったことを検出すると、メモリ・メディア110が再び挿入されたと擬似的に認識するので、時刻t4において無線通信機能付きメモリ・メディア110への電源Vccmの供給を開始する。
次いで、時刻t5において、無線読取装置102側は、メモリ/通信制御部113に対して通信の再接続を要求し、これに応答して無線通信機能付きメモリ・メディア110は無線通信動作を再開する。
このようにすることで、無線通信機能付きメモリ・メディア110への電源は、一時オフとなるが、再度オンとなり、通信の一時中断並びに再開を行なうことができる。
E.反射波伝送への多値変調方式の適用
反射波伝送システムでは、一般に、ASK(Amplitude Shift Keying)などの比較的ビットレートの低い変調方式が採用されている。例えば、反射器側で指向性アンテナの終端のオン/オフ操作などの負荷インピーダンスを操作することによって信号空間上に0、1の信号を配置することができBPSK変調を簡易に実現することができる。但し、これらの変調方式では伝送速度の面で問題がある。これに対し、例えば、位相差が異なる複数の反射路を設け、伝送データに応じて反射路をスイッチングすることにより、BPSKやQPSK、8相PSK変調など、より高いビットレートの位相変調方式を実現することができる。
図8には、反射器側において、QPSK変調方式を実現する無線部の構成例を示している。図示の無線部は、アンテナ1001と、アンテナ1001に直列に接続された3つの位相器1002、1003、1004と、アンテナ1001と位相器1002の間、位相器1002と1003の間、及び位相器1003と1004の間にそれぞれ接続された高周波スイッチ1005、1006、1007によって構成される。
位相器1002、1003、1004は、受信電波1008の波長λに対し、λ/8となるようなストリップ・ラインなどの線路によって構成される。このとき、ストリップ・ラインの長さLは、基板の誘電率εを考慮して決定され、下式の通りとなる。但し、εeffは基板の実効誘電率である。
また、基板上での信号の伝送速度Sは下式の通りとなる。但し、C0は光速である。
また、受信電波が各位相器を通過するのに要する時間は下式の通りとなる。但し、Tは受信電波の周期である。
ここで、受信電波1008は、各位相器1002、1003、1004を通過することで360/T×T/8だけ位相が回り、それぞれ片道で45度、往復で90度の相違を得る。各位相器1002、1003、1004は、アンテナ1001から直列的に接続されており、高周波スイッチ1005、1006、1007のオン/オフの組み合わせにより短絡点が設けられる。したがって、到来した受信電波1008は短絡点において反射するが、スイッチのオン/オフに応じて往復する信号路に相違を設けることで、反射波に対して4通りの位相差が与えられる。
高周波スイッチ1005のみがオンとなるとき、受信電波の反射は図中a点で起こる。また、高周波スイッチ1006のみがオンとなるとき、受信電波の反射は図中b点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると、位相器12を経由しているので、位相は90度シフトすることになる。また、高周波スイッチ17のみがオンとなるとき、反射は図中c点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると位相器1002と1003を経由しているので、位相は180度シフトすることになる。また、すべての高周波スイッチ1005〜1007がオフとなるとき、反射は図中d点で起こるが、a点での反射波の位相と比較すると位相器1002と1003、1004を経由しているので、位相は270度シフトすることになる。したがって、高周波スイッチ1005、1006、1007を選択的にオンにすることにより、相互に90度ずつ位相の異なる4つの位相を有する反射波を作ることができる。
データ伝送を行なう場合、伝送データを2ビットずつに区切り、2ビットの0と1の組み合わせに応じた位相を割り当てることにより、QPSK変調を実現する。具体的には、送信データを2ビットずつに区切り、00のときは高周波スイッチ15のみをオンに、01のときは高周波スイッチ1006のみをオンに、11のときは高周波スイッチ1007のみをオンに、10のときはすべての高周波スイッチ15〜17をオフにするように動作する。
このようして、データ2ビットの値に従い、相互に90度ずつ位相の異なる4つの位相を有する反射波を作ることが可能で、信号空間上に(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)の4点を配置することができるので、QPSK変調された反射波を作ることができる。
例えば、本出願人に既に譲渡されているWO 2005/36767号公報には、QPSK変調処理を取り入れたバックスキャッタ方式の通信システムについて開示されている。