以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置及びそれを用いた端末装置について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置及びそれを用いた端末装置について説明する。図1は本実施形態に係る液晶表示装置の電圧印加時の状態を示す断面図であり、図2はその構成要素である画素電極及び共通電極間に電圧を印加しないときの液晶分子の配向状態を示す断面図であり、図3は本実施形態に係る液晶表示装置を搭載した端末装置を示す斜視図である。
図1に示すように、本第1実施形態に係る液晶表示装置1は、主基板2aと対向基板2bが微小な間隙を設けて対向配置され、この主基板2aの対向基板2b側の表面には、画素電極3aと共通電極3bの2種類の電極が形成されている。これら2種類の電極は櫛歯状に形成され、この櫛歯の長手方向に対して直交する方向(図1中横方向)に、画素電極3aと共通電極3bが交互に配置されている。これらの電極は、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体により構成されている。更にその対向基板2b側には、液晶分子を初期配向するための配向膜4が形成されている。同様に、対向基板2bの主基板2a側の表面にも、配向膜4が形成されている。主基板2aと対向基板2bとの間には、誘電率異方性が正であるポジ型液晶分子51からなる層が挟持されている。主基板2aと対向基板2bとの間隙、即ちポジ型液晶分子51からなる層の厚さは一例として3μmに設定されている。液晶分子からなる層の厚さを本実施形態ではセルギャップと称する。なお、実際の液晶表示装置においては、液晶表示装置1の両面側に偏光板が設けられるが、図1においては省略してある。
なお、本明細書においては、便宜上、以下のようにXYZ直交座標系を設定する。主基板2aから対向基板2bに向かう方向を+Z方向とし、その反対方向を−Z方向とする。+Z方向及び−Z方向を総称してZ軸方向という。また、図1の横方向をY軸方向とし、特に右方向を+Y方向とし、その反対方向を−Y方向とする。そして、+X方向は、右手座標系が成立する方向とする。即ち、人の右手の親指を+X方向、人差指を+Y方向に向けたとき、中指は+Z方向を向くようにする。
上述の如くXYZ直交座標系を設定すると、画素電極3aと共通電極3bが交互に配置される方向はY軸方向となる。また、画素電極3a又は共通電極3bが延びる方向、即ち櫛歯状電極の櫛歯長手方向はX軸方向となる。また、液晶表示装置1の表示面はXY平面になる。
画素電極3a及び共通電極3bの幅、即ち電極幅は、一例として夫々1μmとなるように形成されている。また、画素電極3aと共通電極3bとの間隔、即ち電極間距離は、一例として6μmに設定されている。上述のように、本実施形態でのセルギャップは3μmに設定されているため、本実施形態では電極幅がセルギャップより小さく設定されていることになる。
前述のように、特許文献1に記載されている従来の第1の液晶表示装置に使用されるIPS方式では、電極構造が平行電極型であり、L/d>1かつL/w>1、即ち電極間距離はセルギャップより大きく、かつ電極間距離は電極幅より大きいものと規定されているが、本実施形態では特にw/d<1、即ち電極幅がセルギャップより小さいという関係を満たすものである。
また、特許文献1に記載されている従来の第2の液晶表示装置に使用されるFFS方式において、特に積層電極型の構造を有する方式に対しては、本実施形態は平行電極型の構造を有するために、電極構造が異なっている。また、FFS方式において特に平行電極型の構造を有する方式に対しては、前述のように平行電極型のFFS方式がL/d<1かつL/w<1、即ち電極間距離がセルギャップ及び電極幅よりも小さいものとして規定されており、本実施形態では電極間距離がセルギャップ及び電極幅より大きく、特に電極幅がセルギャップより小さい点が異なる。
電界に応じて液晶分子の集団が変形するとき、広がり(splay:スプレイ)、ねじり(twist:ツイスト)、曲がり(bend:ベンド)の夫々の歪みに対するスプレイ弾性定数K11、ツイスト弾性定数K22、及びベンド弾性定数K33に応じて弾性力が作用する。
ポジ型液晶分子51は、一例として、波長550nmにおける屈折率異方性Δnが0.1、誘電率異方性Δεが14、液晶の配向ベクトルに平行な方向の誘電率が18.4、弾性定数がK11=11.3[pN](ピコニュートン)、K22=6.9[pN]、K33=11.6[pN]なる物性値を有する。この液晶分子は、ツイスト弾性定数K22がベンド弾性定数K33よりも小さく、ツイスト変形が容易となっている。
図2に示すように、このポジ型液晶分子51の配向状態は、画素電極3a及び共通電極3b間に電圧を印加しない初期状態において、液晶分子の長軸方向がほぼX軸方向となるよう配向処理されている。なお、上述の偏光板は、液晶表示装置1の両面側に配置された2枚のうち1枚が、その吸収軸を液晶分子の長軸方向に合わせて配置され、この偏光板と吸収軸が直交配置するようにして、もう1枚の偏光板が配置されている。
共通電極3bと画素電極3aとの間に±5V・60Hzの矩形波である電圧を印加した場合のポジ型液晶分子51の配向状態は、図1に示すように、電極間の主基板2a又は対向基板2bの界面付近では、配向処理によるアンカリング効果のため、ほぼX軸方向に配向しているが、基板界面から離れるに従い、平行電極により発生する横電界の方向に従って、Y軸方向に配向変化している。一方で、電極上の液晶配向状態は、対向基板2bの界面付近では電極間と同様に初期配向のままであるが、対向基板2bから離れるに従い電極間と同様にY軸方向に配向している。主基板2aの画素電極3a又は共通電極3b付近では、多少Z軸方向への立ち上がりが見られるものの、その部分の液晶層の厚さは1μmよりも小さい。
即ち、特許文献1に記載されている従来の第1の液晶表示装置に使用されるIPS方式では、前述のように、電極の上方に位置する液晶分子はほとんど駆動されないのに対して、本実施形態での電極上の液晶分子は、電極間の液晶分子の配向方向と同様に、Y軸方向に配向変化する点が異なる。
また、特許文献1に記載されている従来の第2の液晶表示装置に使用されるFFS方式では、平行電極型においても、また積層電極型においても、小さな電極間距離により発生したZ方向の強い電界成分によって電極上の液晶分子を配向変化させているが、本実施形態での電極上の液晶分子は、その大部分が電極間の液晶分子の配向変化に追従して、Y軸方向に配向変化している。
図3に示すように、この液晶表示装置1は、例えば、携帯電話9に搭載される。
次に、上述の如く構成された本実施形態に係る液晶表示装置の動作、即ち、本実施形態に係る液晶表示装置の光変調動作について説明する。図4は、共通電極と画素電極との間に電圧を印加しない場合の液晶表示装置の透過率分布を示すための顕微鏡写真であり、図5は、共通電極と画素電極との間に±5V・60Hzの矩形波電圧を印加した場合の液晶表示装置の透過率分布を示すための顕微鏡写真であり、図6は、電極間中央部の直径1μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフであり、図7は、電極上の直径1μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフであり、図8は、この液晶表示装置の電圧印加時の動作原理について解析するため、液晶配向と電界分布、透過率分布をシミュレーションした結果であり、図9は、図8のシミュレーション結果における電極上の液晶配向を示した拡大図であり、図10は電極上及び電極間を含めた直径100μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフである。
図4に示すように、共通電極と画素電極との間に電圧を印加しないときには、液晶分子の長軸方向が偏光板の吸収軸方向と一致し、かつ2枚の偏光板が吸収軸を直交して配置されているため、透過率が非常に小さい、いわゆる黒状態となる。
次に、図5に示すように、共通電極と画素電極との間に電圧を印加した場合には、透過率が大きくなる白状態となるが、本実施形態では電極間の領域だけでなく、特に電極上の領域も透過率が上昇している点が特徴である。この透過率の値について検討するため、電極間中央部の直径1μmの領域において、電圧−透過率特性を測定した結果が図6のグラフであり、同様に電極上の直径1μmの領域において、電圧−透過率特性を測定した結果が図7のグラフである。透過率の値は、偏光板の光学特性の影響を排除するため、2枚の偏光板の吸収軸を平行配置した場合を100%と定義してある。夫々、電圧は0Vから5Vまでを印加している。電極間中央部では、電圧4.5Vにおいて最大透過率64%が得られている。また、電極上では、同様に電圧4.5Vにおいて最大透過率47%が得られている。この電極上の透過率の値は、従来の電極幅が大きなIPS方式よりも大きな値となっている。
電極上の透過率が電圧印加により上昇するためには、電極上の液晶分子の配向方向が、電圧印加により透過率を上昇するように配向変化する必要がある。具体的には、電極間の液晶分子のように、液晶分子の配向ベクトルの向きがY軸方向となるように配向変化していればよい。そこで、この電極上の液晶分子の配向変化について解析するため、市販の液晶配向シミュレータを使用して、液晶分子の挙動と電界分布を検証した。この結果を図8に示すが、これは特にYZ平面について示したものである。また、電界分布は電位の等しい等電位線を示している。図8に示すように、電極間の特に電極間中央付近では、電界の向きはY軸方向となるため、液晶分子はY軸方向に大きく回転している。なお、電極間領域の基板付近では、配向処理によるアンカリング効果のため、液晶分子がY軸方向に回転しない液晶分子が発生するものの、Z軸方向に対するその割合は非常に小さい。一方で、電極上の領域に着目すると、電界はほぼ+Z方向となっているため、電極のごく近傍の液晶分子は発生したZ軸方向の縦電界により若干立ち上がりを見せているが(図9参照)、その角度とZ軸方向に対する割合は小さい。大部分の液晶分子は、電界の方向に従わずに、電極間の液晶分子と同様、Y軸方向に大きく回転していることがわかる。即ち、電極上の電極近傍以外の領域では、液晶分子がZ軸方向の縦電界方向に配向変化せず、電極間の液晶分子配向に追従してY軸方向に回転している。この結果、電極上の透過率が上昇することになる。
電極上の液晶分子が、縦電界に反して電極間の液晶配向に追従する理由としては、まず電極幅がセルギャップより小さい点が挙げられる。これにより電極上の液晶分子は、基板界面に接する領域よりも、電極間の液晶分子に接する領域が大きくなるため、基板界面の初期配向に束縛されるよりも、電極間の液晶配向に追従し易くなる。前述のように、特許文献1に記載の従来のIPS方式では、電極上の液晶分子は、電圧を印加しても初期配向からほとんど配向変化しないが、これは基板界面の束縛の方が大きいためと考えられる。本実施形態では、電極幅がセルギャップより小さく形成されることで、基板界面の束縛が相対的に低下し、電極間の液晶配向に追従し易くなっている。
即ち、電極上の液晶分子は、電界に反して初期配向に留まるよりも、電界に反して電極間の液晶配向に追従してツイスト変形する方が、エネルギー的に安定であることを示している。
更に、電極上の液晶分子が電極間の液晶配向に追従することにより、従来のIPSと比較して電極近傍の液晶分子もツイスト変形し易くなるため、電極間の透過率を向上する効果も得られる。
なお、本実施形態におけるポジ型液晶分子51のように、液晶分子のツイスト弾性定数K22をベンド弾性定数K33よりも小さくすることで、ツイスト変形時の自由エネルギーを小さくできるため、電極上の液晶分子は、電極間の液晶分子に追従してよりツイスト変形し易くなる。これにより、電極上の液晶層の透過率をより効率的に向上できる。
なお、図10に示すように、本実施形態での最大透過率は56%となっており、後述する本発明の第1比較例に示す従来のIPS方式と比較して、1.3倍程度透過率が向上している。
本発明の液晶表示装置によれば、櫛歯状の平行電極を有する横電界モードの液晶表示装置において、電圧印加時に電極上の液晶分子を電極間の液晶分子と同様に配向変化させることができるため、特に電極上の透過率を向上でき、電極間の透過率を含めた液晶表示装置の透過率を大きくすることができる。更に、電極上のみならず、電極間においても、電極近傍の透過率を高めることができる。この効果は、特に電極幅がセルギャップ以上である従来の平行電極型のIPS方式と比べて大きいため、透過率の高い横電界モードの液晶表示装置が実現できる。
また、特に従来の積層電極型のFFS方式と比較した場合、本発明の液晶表示装置は電極を積層しない平行電極型の構造で透過率を高めることができる。これにより、複雑な積層プロセスを使用せずに実現できるため、液晶表示装置の低コスト化が可能になる。
また、特に従来の平行電極型のFFS方式と比較した場合、本発明の液晶表示装置は、画素電極と共通電極との間を大きく設けることができるため、両電極間の短絡の発生確率を低減でき、高歩留まりでの製造が可能となる。
更に、積層電極型又は平行電極型いずれのFFS方式においても、小さな電極間距離により発生したZ方向の強い電界成分によって電極上の液晶分子を配向変化させているのに対して、本発明の液晶表示装置では電極間の液晶配向変化に追従させて電極上の液晶を配向変化させているため、液晶分子のZ軸方向への立ち上がりを抑制できる。この結果、FFS方式と比較して、液晶分子の斜め方向への立ち上がりが抑制できるため、視野角特性を向上することができる。
更にまた、本発明の液晶表示装置では、電極間の液晶分子と電極上の液晶分子の配向方向を揃えることができるため、Y軸方向の屈折率分布を低減でき、これにより回折の発生を抑制できる。回折により斜め方向に進行する光はコントラストを低下させてしまうため、この回折現象を抑制できることにより、高コントラスト化など視野角特性を向上できる。
本発明の液晶表示装置を具備した携帯端末装置は、液晶表示装置の透過率が高いため、高輝度な表示が可能となる。また、従来程度の輝度で使用した場合には、バックライトの光量を抑えることができるため、電力の削減が可能となる。更に、従来程度の輝度で、従来程度の電力が使用できれば、透過率の向上を画素数の増加に振り向けることができるため、より多くの情報を表示できる。これは特に、画面サイズが限定される携帯端末装置に適する。
なお、本実施形態の液晶表示装置は、画素電極及び共通電極がITO等の透明導電体により構成される例について記載したが、本発明はこれに限定されず、光学的に不透明な金属で構成されていても良い。一般的にアルミニウム等の金属はITOよりも加工性が高いため、電極の微細化が容易になる。一方で、電極が不透明化されることにより、電極上の配向が透過率向上に寄与する割合は若干低下するものの、前述のように電極近傍領域でも微細化により透過率を向上する効果が得られるため、総合すると透過率を向上することができる。なお、このように金属で電極を形成する際には電極幅を可能な限り小さくする方が良く、特に1μm未満にするのが好ましい。
また、本実施形態の液晶表示装置では、液晶分子の基板側界面に配向膜を有するものとして記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶分子が所定の方向に配向するように処理されていれば不要となるため、本発明の必須の構成要件ではない。
また、本実施形態の液晶表示装置では、画素電極及び共通電極が同層に形成された場合について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、平行電極型であれば異なる層に形成されていてもよく、またこの異なる電極層の間に絶縁層が形成されていてもよい。特に、アクティブマトリクス型に適用する際には、画素の薄膜トランジスタを形成するゲート電極と、ソース又はドレイン電極を用いて画素電極及び共通電極を形成することができ、平行電極用に新たな層を設ける必要がないため、低コスト化が可能となる。
また、画素電極及び共通電極は、その長手方向がX軸方向であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、X軸方向に対して傾斜して配置されていてもよいし、この傾斜がX軸上の座標により異なる値を有してマルチドメイン化されていても良い。
前述のように、本発明の液晶表示装置は、携帯電話等の携帯端末装置に好適に適用することができる。携帯端末装置としては携帯電話のみならず、PDA(Personal Digital Assistant:個人用情報端末)、ゲーム機、デジタルカメラ及びデジタルビデオカメラ等の各種の携帯端末装置に適用することができる。また、携帯端末装置のみならず、ノート型パーソナルコンピュータ、キャッシュディスペンサ、自動販売機等の各種の端末装置に適用することができる。
次に、本発明の液晶表示装置に対する第1の比較例について説明する。図11は本比較例に係る液晶表示装置の電圧印加時の状態を示す断面図であり、図12は、共通電極と画素電極との間に±5V・60Hzの矩形波電圧を印加した場合の本比較例の液晶表示装置の透過率分布を示すための顕微鏡写真であり、図13は、電極間中央部の直径1μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフであり、図14は、電極上の直径1μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフであり、図15は、この液晶表示装置の電圧印加時の動作原理について解析するため、液晶配向と電界分布、透過率分布をシミュレーションした結果であり、図16は、図15のシミュレーション結果における電極上の液晶配向を示した拡大図であり、図17は電極上及び電極間を含めた直径100μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフである。
図11に示すように、本第1比較例に示す液晶表示装置11は、本第1実施形態における液晶表示装置1と比較して、電極幅が大きく設定されている点が異なる。即ち、本第1実施形態では、画素電極3a及び共通電極3bの電極幅が1μmであったのに対し、本第1比較例では、画素電極31a及び共通電極31bの電極幅が3μmに形成されている。なお、セルギャップの値は本第1実施形態と同様に3μmに設定されているため、本比較例では電極幅とセルギャップが同じになっている。
更に、電圧印加時におけるポジ型液晶分子51の配向状態は、電極間の主基板2a又は対向基板2bの界面付近では、配向処理によるアンカリング効果のため、ほぼX軸方向に配向しているが、基板界面から離れるに従い、平行電極により発生する横電界の方向に従って、Y軸方向に配向変化している。この点では、本第1実施形態と同様である。一方で、電極上の液晶配向状態は、対向基板2bの界面付近では電極間と同様に初期配向のままであり、対向基板2bから離れてもY軸方向に配向せず、初期配向の状態を保っている。即ち、本第1実施形態では、電極上の液晶分子が対向基板2bから離れた部分ではY軸方向に配向変化していたのに対し、本比較例ではY軸方向に変化していない点が異なる。本比較例における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
本第1比較例は、特許文献1に記載されている従来の第1の液晶表示装置に使用されているIPS方式と同様である。即ち、電極幅がセルギャップ以上の値を有し、電極の上方に位置する液晶分子はほとんど駆動されていない場合を示すものである。
次に、上述の如く構成された本第1比較例に係る液晶表示装置の動作について説明する。図12に示すように、共通電極と画素電極との間に電圧を印加した場合には、透過率が大きくなる白状態となるが、本比較例では電極間の領域は透過率が大きくなり、写真では明るく観察されるものの、電極上の領域は暗くなっており、透過率が大きく低下していると考えられる。そこで、この透過率の値について検討するため、電極間中央部の直径1μmの領域において、電圧−透過率特性を測定した結果が図13のグラフであり、同様に電極上の直径1μmの領域において、電圧−透過率特性を測定した結果が図14のグラフである。夫々電圧は0Vから5Vまでを印加している。電極間中央部では、電圧4.1Vにおいて最大透過率59%が得られている。これに対して、電極上では、同様に電圧4.1Vにおいて透過率は最大となり、その値は24%に留まっている。即ち、電極間の透過率の値は、本第1実施形態とほぼ同等の結果が得られているにもかかわらず、電極上の透過率の値は大幅に低下している。
次に、電極上の透過率低下について検討するため、市販の液晶配向シミュレータを使用して、液晶分子の配向、電界分布、透過率分布を解析した。この結果を図15に示す。また図16は、図15の結果において、特に電極上の液晶配向を拡大したものである。図15に示すように、電極間の特に電極間中央付近では、電界の向きはY軸方向となるため、液晶分子はY軸方向に大きく回転しており、この結果透過率は向上している。一方で、電極上の領域では透過率が低下しているが、これは図16に示すように、電極上の液晶分子が電極間の配向変化に殆ど追従せず、初期配向を保っていることが理由である。即ち、従来のIPS方式では、電極の上方に位置する液晶分子が殆ど駆動されず、この結果電極上の透過率が上昇していないことがわかる。
更に、図17に示すように、電極上及び電極間を含めた最大透過率は44%となっており、本第1実施形態と比較して1.3分の1に低下している。このように、従来のIPS方式では、電極上の液晶分子が透過率向上に寄与しないため、液晶表示装置の透過率が低下することが確認できた。
次に、本発明の液晶表示装置に対する第2の比較例について説明する。図18は、本比較例の液晶表示装置について、電極上及び電極間を含めた直径100μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフである。
本第2比較例では、本第1比較例と比べて、電極幅が更に大きく設定されている点が異なる。即ち、本第1比較例における電極幅は3μmであったのに対し、本第2比較例では6μmとなっている。本比較例における上記以外の構成は、前述の第1比較例と同様である。
本比較例においては、図18に示すように、最大透過率が39%に低下している。即ち、セルギャップに対する電極幅を大きくする程、透過率は低下することがわかる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図19は本実施形態に係る液晶表示装置の電圧印加時の状態を示す断面図であり、図20はその構成要素である画素電極及び共通電極間に電圧を印加しないときの液晶分子の配向状態を示す断面図であり、図21は電極上及び電極間を含めた直径100μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフである。
図19に示すように、本第2実施形態に示す液晶表示装置12においては、本第1実施形態における液晶表示装置1と比較して、幅1μmである画素電極3aと共通電極3bの代わりに、幅が1.5μmである画素電極32aと共通電極32bが使用されている。また、画素電極32aと共通電極32bとの間の間隔、即ち電極間距離は3.8μmに設定されている。更に、主基板2aと対向基板2bとの間には、誘電率異方性が負であるネガ型液晶分子52からなる層が挟持されている。主基板2aと対向基板2bとの間隙、即ちネガ型液晶分子52からなる層の厚さは3.5μmに設定されている。即ち、本第2実施形態においては、電極幅、電極間距離、セルギャップの値は本第1実施形態とは異なるものの、電極幅がセルギャップより小さく形成されている点では同じである。
ネガ型液晶分子52は、一例として、波長550nmにおける屈折率異方性Δnが0.1、誘電率異方性Δεが−6.2、液晶の配向ベクトルに平行な方向の誘電率が4.1、弾性定数がK11=14.6[pN]、K22=6.7[pN]、K33=15.7[pN]なる物性値を有する。ネガ型液晶は、液晶の配向ベクトルに平行な方向の誘電率が、配向ベクトルに垂直な方向の誘電率よりも小さな液晶であり、誘電率異方性は負の値を有する。誘電率の大きな方向が配向ベクトルの向きと直交しているため、電界に対して垂直に配向変化する。なお、この液晶分子は、ツイスト弾性定数K22がベンド弾性定数K33よりも小さいため、第1実施形態において説明したように、ツイスト変形が容易となっており、電極上の液晶層の透過率をより効率的に向上できる。
図20に示すように、画素電極32a及び共通電極32b間に電圧を印加しない状態、即ち初期状態としてのネガ型液晶分子52の配向状態は、液晶分子の長軸方向がほぼY軸方向となるように配向処理されている。
共通電極32bと画素電極32aとの間に±6V・60Hzの矩形波である電圧を印加した場合のネガ型液晶分子52の配向状態は、図19に示すように、電極間の主基板2a又は対向基板2bの界面付近では、配向処理によるアンカリング効果のため、ほぼY軸方向に配向しているが、基板界面から離れるに従い、平行電極により発生する横電界の方向と直交するように、X軸方向に配向変化している。一方で、電極上の液晶配向状態は、対向基板2bの界面付近では電極間と同様に初期配向のままであるが、対向基板2bから離れるに従い電極間と同様にX軸方向に配向している。主基板2aの画素電極32a又は共通電極32b付近では、多少Z軸方向への立ち上がりが見られるものの、その部分の液晶層の厚さは1μmより小さく、また本第1実施形態の場合よりも小さい。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第2実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明する。図19に示すように、共通電極と画素電極との間に電圧を印加した場合には、透過率が大きくなる白状態となるが、本実施形態では電極間の領域は透過率が大きくなる。また、電極上の領域においては、本第1実施形態よりも高い透過率を実現することができる。この結果、図21に示すように、電極上及び電極間を含めた最大透過率は77%となっており、本第1実施形態と比較して1.37倍の透過率が得られている。また、本第1比較例に記載の従来のIPS方式と比較すると、1.75倍という高い透過率が得られている。
そこで、ネガ型液晶を使用した際の電極上の透過率及び液晶配向について検討するため、市販の液晶配向シミュレータを使用して、液晶分子の配向、電界分布、透過率分布を解析した。この結果を図22に示す。また図23は、図22の結果において、特に電極上の液晶配向を拡大したものである。図22及び図23に示すように、電極間の特に電極間中央付近では、電界の向きはY軸方向となるため、液晶分子はこの電界と直交する方向であるX軸方向に大きく回転しており、この結果透過率は向上している。なお、電極間領域の基板付近では、配向処理によるアンカリング効果のため、液晶分子がX軸方向に回転しない液晶分子が発生するものの、Z軸方向に対するその割合は非常に小さい。一方で、電極上の領域に着目すると、基板間の中央付近の液晶分子は、電極間の液晶分子の配向変化に追従して、X軸方向に大きく回転しており、この結果透過率は向上している。電極近傍ではZ軸方向の縦電界が発生するが、ネガ型液晶の場合には配向ベクトルの向きと電界が直交するように配向変化するため、電界はX軸方向の回転を妨げることにならない。このため、本第1実施形態のポジ型液晶分子の場合と異なり、電極上の液晶分子はより自由にX軸方向へ回転することができるため、電極上の透過率をより向上することができる。また、液晶分子は縦電界に追従してZ方向に回転することがないため、特に電極近傍の液晶分子の立ち上がりを防止できることも、電極上の透過率を向上できる一因となっている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、電極幅がセルギャップより小さく形成され、かつネガ型の液晶分子が使用されており、電圧印加時に電極上の液晶分子を電極間の液晶分子と同様に配向変化させることができるため、電極上の透過率を向上でき、電極間の透過率を含めた液晶表示装置の透過率を大きくすることができる。特に、ネガ型の液晶分子は電界と直交する方向に配向変化するため、ポジ型の液晶分子を使用した場合よりも縦電界への追従を防止でき、XY平面内での回転をより容易にできる。この結果、ポジ型液晶と比較して電極上の透過率を大幅に向上でき、この結果として電極間の透過率を含めた液晶表示装置の透過率を大きくできる。更に、液晶分子のZ軸方向への立ち上がりを抑制できるため、視野角特性を向上することができる。本第2実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1実施形態と同様である。
次に、本発明の第3の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図24は、本実施形態に係る液晶表示装置の電極上及び電極間を含めた直径100μmの領域において電圧−透過率特性を測定したグラフである。
本第3実施形態に示す液晶表示装置においては、本第2実施形態における液晶表示装置12と比較して、幅1.5μmである画素電極32aと共通電極32bの代わりに、幅が1μmである画素電極と共通電極が使用されている。また、画素電極と共通電極との間の間隔、即ち電極間距離は、本第2実施形態では3.8μmに設定されているのに対し、本実施形態では1μmに設定されている。セルギャップは本第2実施形態と同様、3.5μmである。即ち、本実施形態では電極幅と電極間距離は等しい値に設定されており、かつ電極幅はギャップより小さく、特に電極幅と電極間距離との合計である電極ピッチがセルギャップ以下に設定されている点が異なる。これにより、本実施形態ではL/w≧1、かつw/d<1、かつ(L+w)/d≦1、即ち電極間距離は電極幅以上であり、電極幅はセルギャップより小さく、かつ電極ピッチがセルギャップより小さいという条件を満たすことになる。本実施形態では、電極ピッチがセルギャップ以下になるため、本第2実施形態よりもY軸方向の電界が強くなる。これにより、本実施形態における電圧印加時の液晶配向は、電極上の液晶分子がより多くX軸方向に配向変化したものとなっている。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第2の実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第3実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明する。本第2実施形態の液晶表示装置と同様に、共通電極と画素電極との間に電圧を印加すると、透過率が大きくなる白状態となる。前述のように、このときの電極上の液晶配向は、本第2実施形態よりもより多くの液晶分子がX軸方向に配向変化したものとなるため、より高い透過率が実現できる。図24に示すように、電極上及び電極間を含めた最大透過率は79%となっており、本第1実施形態と比較して1.41倍の透過率が得られている。また、本第1比較例に記載の従来のIPS方式と比較すると、1.8倍という高い透過率が得られている。更に、本第2実施形態において、最大透過率を実現する電圧は5.5Vであったのに対し、本実施形態では5.0Vまで低減することができ、低電力化も可能になる。
なお、本実施形態の液晶表示装置は、画素電極及び共通電極の液晶層側に、平坦化を目的とするオーバーコート層を有していてもよい。上述のように、ネガ型液晶分子を使用する場合には、液晶分子のダイレクタの向きが共通電極と画素電極の配列方向とほぼ平行となるように初期配向する必要があるが、特に電極ピッチがセルギャップより小さくなると、電極の凹凸に沿って液晶分子が配向するようになる。オーバーコートを設けることにより、電極に起因する凹凸を低減できるので、電極ピッチを小さくしても配向性を損なうことがなく、高いコントラスト比が実現できる。
更に、共通電極と画素電極との間にのみ平坦化層が設けられ、共通電極及び画素電極の上には平坦化層が設けられていなくてもよい。これにより、共通電極と画素電極との間の隙間が平坦化層により埋められて平坦化されるため、上述のオーバーコートを設けた場合と同様に配向性を向上できる。更に、電極上には平坦化層が設けられていないため、駆動電圧を低減することができる。本第3実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第2実施形態と同様である。
次に、本発明の第4の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図25は本実施形態に係る液晶表示装置の構造、及びその構成要素である画素電極及び共通電極間に電圧を印加しないときの液晶分子の配向状態を示す断面図であり、図26は本第4実施形態の液晶表示装置の電圧印加時の電界構造と液晶配向を示す断面図であり、特に電界構造と液晶配向、透過率分布の関係をシミュレーションにより示した断面図である。
図25に示すように、本第4実施形態に示す液晶表示装置13は、前述の本発明の第1実施形態における液晶表示装置1と比較して、幅1μmである画素電極3aと共通電極3bの代わりに、幅が0.5μmである画素電極33aと共通電極33bが使用されている。また、画素電極33aと共通電極33bとの間の間隔、即ち電極間距離は2.5μmに設定されている。更に、主基板2aと対向基板2bとの間には、前述の第1実施形態と同じポジ型液晶分子51からなる層が挟持されている。主基板2aと対向基板2bとの間隙、即ちポジ型液晶分子51からなる層の厚さは4μmに設定されている。画素電極33a及び共通電極33b間に電圧を印加しない状態、即ち初期状態としてのポジ型液晶分子51の配向状態は、本第1実施形態の配向状態と同様、液晶分子の長軸方向がほぼX軸方向となるように配向処理されている。上述のように、本第4実施形態における構造の第1の特徴は、電極幅と電極間距離の和が液晶層の厚さ以下となっている点にある。
図26は、本第4実施形態における液晶表示装置の電圧印加時の電界構造と液晶配向を示すため、特に電界構造と液晶分子の配向、透過率分布の関係を市販の液晶配向シミュレータを用いて示した断面図である。共通電極33bと画素電極33aとの間には、±5V・60Hzの矩形波である電圧が印加されている。
図26に示すように、本第4実施形態における構造の第2の特徴は電界構造に関し、対向基板付近における電極間上の電界強度が電極上の電界強度以下である電界領域を有することを特徴とする。更に、本第4実施形態における構造の第3の特徴は液晶配向構造に関し、この電界構造により、電極上の液晶分子が電極間の液晶分子と同様に配向変化し、特に電極上のみならず電極間においても液晶分子のダイレクタ方向が電界方向と異なる領域を有することを特徴とする。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第4実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明するが、まずはじめに本実施形態における構造の第2の特徴である電界構造について説明する。前述のように、本発明の電界構造は、対向基板付近における電極間上の電界強度が電極上の電界強度以下である領域を有することを特徴とする。ここで、図26に示す透過率のシミュレーション結果に着目すると、電極上及び電極間を含めた透過率は83%が得られており、本発明の第1乃至第3実施形態と比較しても、非常に高い透過率が達成されている。この結果について本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポジ型液晶分子を使用した場合でも非常に高透過率が達成できる電界構造を発明するに至った。前述のように、本発明の電界構造の特徴は、対向基板付近における電極間上の電界強度が電極上の電界強度以下である領域を有することであるが、本発明における電極構造のように櫛歯電極を有する場合、この電界構造を導入することにより、電界の非常に弱い弱電界層を対向基板付近の液晶層中に生成することができる。この弱電界層の導入が本実施形態における重要な概念の一つであり、従来のIPS方式、及び前述の第1実施形態とは大きく異なる特徴となっている。本実施形態においては、この弱電界層を導入した電界構造を発明することにより、高透過率の達成が可能となっている。
ここで、弱電界層について説明するため、本第4実施形態におけるシミュレーション結果である図26と、前述の第1比較例に記載の電界構造のシミュレーション結果である図15、及び前述の第1実施形態に記載の電界構造のシミュレーション結果である図8とを比較する。図15に記載の従来の電界構造においては、等電位線は電極間では基板面と垂直方向、即ちZ軸方向に走っている。また、電極上の等電位線は、基板面と略平行な方向、即ち図15の断面図においてはY軸方向に走っている。従来の電界構造においては、電極間は横電界が生成され液晶配向のツイスト変形を実現しているが、電極上には基板面と垂直方向に比較的強い電界が生成され、液晶配向のツイスト変形を妨げていた。この結果、電極上の透過率が低下していた。一方で、図8に記載の本発明の第1実施形態においては、電極上の液晶配向は電極間の液晶配向に追従するために、電極上の透過率は第1比較例より向上するものの、電界構造は第1比較例とほぼ同様となっている。これに対し、本第4実施形態における電界構造では、電極間の主基板側は横電界が生成されているものの、対向基板側ではもはや横電界とは呼称できない方向に電界は走っている。そして、この対向基板付近の電界強度は、前述の第1比較例や本発明の第1実施形態における電界強度よりも弱く、弱電界層が形成されている。更に、電極上の電界構造に着目すると、前述の第1比較例や第1実施形態と同様に基板面と垂直方向に電界は走っているが、その電界強度は比較的弱く、やはり弱電界層が形成されている。そして、対向基板付近における電極間上と電極上の電界強度を比較すると、電極間上の電界強度が電極上の電界強度以下である。即ち、本実施形態における弱電界層とは、対向基板付近に着目して、従来の電界構造よりも非常に弱い電界層が形成されていることを意味する。そして、この弱電界層の電界強度は、電極付近の電界強度よりも非常に弱いものとなっている。
次に、本実施形態における構造の第3の特徴である液晶配向について説明する。前述の本発明の電界構造により、主基板近傍における電極間の液晶分子は、従来同様横電界によりツイスト変形する。一方で、対向基板付近に形成された弱電界層中の液晶分子は、従来よりも電界強度が弱いため、電界と独立して比較的自由に動き易くなる。この結果、この弱電界層中の液晶分子は、電界に追従して配向するよりも、主基板近傍における電極間の液晶分子の配向変化に追従してツイスト変形することになる。これは、液晶分子が弱電界中で従来の配向を保つ状態や、弱垂直電界に従って垂直配向する状態よりも、周囲の液晶分子の配向状態に追従してツイスト変形する方がエネルギー的に安定となるからである。なお、主基板側の電極上の液晶分子は、基板面と垂直方向の電界の作用により多少立ち上がっているが、電極幅そのものが小さいこともあり、周囲のツイスト配向に押され、狭い範囲に留まっている。これにより、液晶配向の効果的なツイスト変形が可能となっている。
更に、前述の本発明の第1実施形態と比較すると、前述の第1実施形態においては、平行電極対で発生する電界により電極間の液晶分子がツイスト変形し、この変形に追従して電極上の液晶分子が電界に反して電極間の液晶分子と同様に配向変化することを特徴としていた。これに対し、本第4実施形態においては、平行電極対で発生する電界により、平行電極対を有する基板側の電極間の液晶分子がツイスト変形し、この変形に追従して電極間上の基板から離れた場所に位置する液晶分子もツイスト変形し、更にこれらの電極間のツイスト変形に追従して電極上の液晶分子もツイスト変形し、平行電極対を有する基板から離れた場所では、電極上のみならず電極間においても電界方向に反して配向変化していることが特徴である。そして、この本実施形態における第3の特徴である液晶配向構造は、前述の本実施形態の第2の特徴である弱電界層という電界構造により実現される。
次に、この弱電界層という本実施形態の第2の特徴を実現する電極構造とその動作、即ち本実施形態における構造の第1の特徴について説明する。前述のように、本実施形態の電極構造は、電極幅と電極間距離の和が液晶層の厚さ以下である点を特徴とする。弱電界層を実現するためには、これよりも電界強度の大きな強電界層を電極付近に閉じ込めれば良いことになる。電界分布の詳細は液晶分子の配向シミュレーションを要するが、簡便的には図26のシミュレーション結果に示すように、強電界領域は液晶層の厚み方向において、電極からW+Sの高さの範囲、即ち電極幅と電極間距離との和の範囲に存在する。したがって、弱電界領域を形成するためには、液晶層の厚みをW+Sの値よりも大きく設定することで可能となる。即ち、d≧W+Sである。本実施形態においては、前述のように電極幅が0.5μm、電極間距離が2.5μm、液晶層の厚みが4μmに設定されており、d≧W+Sの条件を満たしている。
本実施形態においては、弱電界層の導入により、液晶層の大部分がツイスト変形可能となっている。即ち、平行電極対で発生する電界により、平行電極対を有する基板側の電極間の液晶分子がツイスト変形し、この変形に追従して電極間上の基板から離れた場所に位置する液晶分子もツイスト変形し、更にこれらの電極間のツイスト変形に追従して電極上の液晶分子もツイスト変形し、平行電極対を有する基板から離れた場所では、電極上のみならず電極間においても電界方向に反して配向変化する。これにより、従来よりもより多くの液晶分子がY軸方向に配向変化したものとなるため、従来よりも高い透過率が実現できる。
本実施形態の液晶表示装置によれば、弱電界層の導入とこれによる液晶層のツイスト変形メカニズムにより、ポジ液晶を使用しても非常に高い透過率を実現することができる。また、液晶分子のZ軸方向への立ち上がりも抑制できるため、視野角特性を向上することができる。
なお、本実施形態における液晶分子は、液晶分子のツイスト弾性定数K22がベンド弾性定数K33よりも小さい方が好ましい。これによりツイスト変形時の自由エネルギーを小さくできるため、液晶層全体のツイスト変形がより容易となり、透過率をより効率的に向上できる。
また、本実施形態の液晶分子はポジ型の場合について説明したが、本発明の第2又は第3実施形態に記載のネガ型液晶分子を使用することも可能である。ポジ型液晶分子は、屈折率異方性の方向と誘電率異方性の方向が一致しているため、液晶分子の物性を好ましい方向に改善するのが容易である。この結果、低電圧化や高速化などが可能となる。
更に、本実施形態においては、前述の本発明の第1実施形態と同様に偏光板を設けることができるが、前述の第1実施形態と同様、本発明において偏光板は必須の構成ではなく、一例ではレーザ光のように直線偏光の光を入射側に使用し、表示装置を使用する観察者が偏光眼鏡を使用してもよい。
更にまた、本実施形態においては、電極間距離が電極幅以上である場合について説明したが、これは非常に重要なポイントである。電極間距離が電極幅以上である場合は、液晶層のツイスト変形を主流とすることができ、透過率の向上が可能になる。しかし仮に電極幅が電極間距離より大きい場合について考えると、液晶層の主基板側の配向変化に着目した場合、電極間のツイスト変形領域が相対的に小さくなってしまう。この結果、液晶層の対向基板側をツイスト変形する効果が低下し、ツイスト変形が困難になるばかりか、液晶分子の+Z軸方向への立ち上がりが発生してしまい、視野角特性も大幅に悪化することになる。即ち、電極間距離を電極幅以上とするのが重要である。
更にまた、本実施形態においては、画素電極と共通電極が同じ電極幅を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる電極幅とすることもできる。ただし、同じ電極幅とすることで、画素電極と共通電極との間の電界をより均等にすることができ、電界の不均一さに起因する表示不良を低減することができる。
更にまた、本実施形態においては、本発明の第1実施形態と同様に、画素電極及び共通電極が異層に形成されるのを除外するものではなく、薄膜トランジスタを形成するためのゲート電極やソース又はドレイン電極を用いて画素電極又は共通電極を形成してもよい。この場合、画素電極と共通電極を異なる層に形成しても、プロセス数を増加させることなく対応が可能となる。一般的にゲート電極やソース又はドレイン電極は低抵抗性が要求されることから、光学的に不透明な金属で構成されることが多い。また、一般的にアルミニウム等の金属はITOよりも加工性が高いため、電極の微細化が容易になるという効果をもたらす。その反面、外光が金属面で反射されることにより、表示品質が低下するが、本発明では微細な電極を使用できるため、表示品質の低下を抑制することができる。なお、金属電極の観察者側の面が外光の反射を低減するような構造を有していてもよい。一例では、金属電極上に多層低反射膜が形成されていてもよいし、黒色物質が塗布されていてもよい。更には、金属電極での正反射を低減するため、電極に微細な凹凸構造が設けられていてもよい。
更にまた、本発明においては、平行電極対が形成された主基板と対向基板を構成要件として説明したが、対向基板は必ずしも必要な構成要件ではなく、一例では液晶層の上部をUV硬化樹脂等でカバーすることで対応してもよい。このとき、液晶層は対向基板からのアンカリングの影響を低減できるため、配向変形が容易になり、低電圧化やオン時の高速化が可能になるという利点が生じる。
更にまた、本実施形態において主基板はガラス基板に限定されるものではなく、シリコン基板や石英基板を使用することも可能である。特にシリコン基板を使用した場合には、平行電極対の微細化が容易になる。本第4実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1実施形態と同様である。
次に、本発明の第5の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図27は本実施形態に係る液晶表示装置の構造、及びその構成要素である画素電極及び共通電極間に電圧を印加しないときの液晶分子の配向状態を示す断面図であり、図28は本第5実施形態の液晶表示装置の電圧印加時の電界構造と液晶配向を示す断面図であり、特に電界構造と液晶配向、透過率分布の関係をシミュレーションにより示した断面図である。
図27に示すように、本第5実施形態に示す液晶表示装置14は、前述の本発明の第4実施形態における液晶表示装置13と比較して、幅0.5μmである画素電極33aと共通電極33bの代わりに、幅が0.2μmである画素電極34aと共通電極34bが使用されている。また、画素電極34aと共通電極34bとの間の間隔、即ち電極間距離は0.9μmに設定されている。更に、主基板2aと対向基板2bとの間には、前述の第4実施形態と同じポジ型液晶分子51からなる層が挟持されている。主基板2aと対向基板2bとの間隙、即ちポジ型液晶分子51からなる層の厚さは3.5μmに設定されている。このように、本第5実施形態における構造の第1の特徴は、電極幅と電極間距離の和が液晶層の厚みの半分以下となっている点、即ちd≧2(W+S)が成立する点にある。
図28は、本第5実施形態における液晶表示装置の電圧印加時の電界構造と液晶配向を示すため、特に電界構造と液晶分子の配向、透過率分布の関係を市販の液晶配向シミュレータを用いて示した断面図である。共通電極34bと画素電極34aとの間には、±5V・60Hzの矩形波である電圧が印加されている。
図28に示すように、本第5実施形態における構造の第2の特徴は電界構造に関し、電極間の対向基板近傍に垂直電界を有することを特徴とする。更に、本第5実施形態における構造の第3の特徴は液晶配向構造に関し、この電界構造により、電極上の液晶分子が電極間の液晶分子と同様に配向変化し、特に電極上のみならず電極間においても液晶分子のダイレクタ方向が電界方向と異なる領域を有し、この領域が液晶層の厚みの半分以上を有することを特徴とする。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第4の実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第5実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明するが、まずはじめに本実施形態における構造の第2の特徴である電界構造について説明する。前述のように、本発明の電界構造は、電極間の対向基板近傍に垂直電界を有することを特徴とする。ここで、図28に示す透過率のシミュレーション結果に着目すると、電極上及び電極間を含めた透過率は85%が得られており、本発明の第4実施形態と比較しても、より高い透過率が達成されている。この結果について本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、前述の第4実施形態と比較してもより高い透過率が実現できる電界構造を発明するに至った。前述のように、本発明の電界構造の特徴は、電極間の対向基板近傍に垂直電界を有することであるが、本発明における電極構造のように櫛歯電極を有する場合、この電界構造を導入することにより、液晶層の対向基板付近においては、電極上だけでなく電極間上においても垂直電界を生成することができる。従来のIPS方式、及び前述の第1実施形態と比較すると、電極間の対向基板付近には強い横電界が発生し、また前述の第4実施形態においては明確に横電界とは言えない電界を発生させていたのに対し、本実施形態においては、電極間の対向基板近傍に垂直電界を導入した結果、元々存在していた電極上の垂直電界と等電位線がつながり、複数の電極上に跨る等電位線が生成されている点が大きな違いであり、本実施形態における重要な概念の一つとなっている。本実施形態においては、このように垂直電界の等電位線を配置することにより、液晶層の厚み方向中央付近に弱電界層を導入できる。この結果液晶層の対向基板側半分以上がツイスト変形した配向構造を実現することができるため、より高い透過率の達成が可能となっている。
即ち、前述の第4実施形態に記載の弱電界層の存在領域を本実施形態と比較すると、図26に示すように第4実施形態においては、液晶層の対向基板付近に弱電界層が形成されていた。これに対し、図28に示すように、本実施形態においては、液晶層の厚み中央付近より対向基板側に弱電界層が形成されている。この弱電界層は、ほぼ基板面に垂直な方向に電界を有し、その強度は前述の第4実施形態と比較してもより弱いものとなっている。即ち、本実施形態における弱電界層とは、液晶層の厚み中央付近より対向基板側において、従来の電界構造よりも非常に弱い垂直電界層が形成されていることを意味する。
次に、本実施形態における構造の第3の特徴である液晶配向について説明する。主基板近傍における電極間の液晶分子は、従来同様横電界によりツイスト変形するのは、前述の第4実施形態と同様である。本実施形態においては、液晶層の配向手段によるアンカリングが最も弱くなる液晶層の厚み中央付近の電界が弱電界化されているため、液晶分子はより自由に動くことができる点が特徴である。この結果、主基板近傍における電極間の液晶分子がツイスト変形すると、この変形に追従して液晶層の対向基板側半分以上の液晶分子が同様にツイスト変形することになる。これは、液晶分子が弱電界中で従来の配向を保つ状態や、弱垂直電界に従って垂直配向する状態よりも、周囲の液晶分子の配向状態に追従してツイスト変形する方がエネルギー的に安定となるからである。なお、主基板側の電極上の液晶分子は、基板面と垂直方向の電界の作用により多少立ち上がっているが、電極幅そのものが小さいこともあり、周囲のツイスト配向に押され、狭い範囲に留まっている。これにより、液晶配向の効果的なツイスト変形が可能となっている。本実施形態における第3の特徴である液晶配向構造は、前述の本実施形態の第2の特徴である電極間の対向基板近傍に垂直電界を有する電界構造により実現される。
次に、この弱電界層という本実施形態の第2の特徴を実現する電極構造とその動作、即ち本実施形態における構造の第1の特徴について説明する。前述のように、本実施形態の電極構造は、電極幅と電極間距離の和が液晶層の厚さの半分以下である点を特徴とする。前述のように、電界強度の比較的大きな強電界層は、電極の形成された主基板からW+Sの高さの範囲、即ち電極幅と電極間距離との和の範囲に存在する。したがって、液晶層の厚みをW+Sの値の2倍よりも大きく設定することで、液晶層中央付近より+Z方向側の液晶層に弱電界層を生成することが可能となる。即ち、d≧2(W+S)である。なお本実施形態においては、前述のように電極幅が0.2μm、電極間距離が0.9μm、液晶層の厚みが3.5μmに設定されており、d≧2(W+S)の条件を満たしている。
本実施形態においては、弱電界層を液晶層の半分以上の領域に導入することにより、液晶層のツイスト変形をより容易としている。即ち、平行電極対で発生する電界により、平行電極対を有する基板側の電極間の液晶分子がツイスト変形し、この変形に追従して電極間上の液晶層中央付近に位置する液晶分子もツイスト変形し、更にこれらの電極間のツイスト変形に追従して電極上の液晶分子もツイスト変形する。この結果、液晶層の半分以上の領域でツイスト変形が容易となり、平行電極対を有する基板から液晶層の半分以上離れた場所では、電極上のみならず電極間においても電界方向に反して同様にツイスト変化する。これにより、従来よりもより多くの液晶分子がY軸方向に配向変化したものとなるため、従来よりも更に高い透過率が実現できる。
本実施形態の液晶表示装置によれば、弱電界層を液晶層の半分以上の領域に導入することとこれによる液晶層のツイスト変形メカニズムにより、ポジ液晶を使用しても非常に高い透過率を実現することができる。また、液晶分子のZ軸方向への立ち上がりも抑制できるため、視野角特性を向上することができる。
なお、本実施形態における液晶層の厚みは、液晶分子の変形時間を考慮すると、通常の液晶層の厚みである5μm程度以内の範囲に設定するのが好ましい。これは、液晶層の厚みが大きくなると、配向手段のアンカリング作用が弱くなるため、電圧をオフにした際の液晶配向の戻りが悪くなり、オフの応答時間が長くなってしまうからである。即ち、電極幅と電極間距離の和は2.5μm以内に設定するのが好ましい。更に前述のように、電極幅Wは電極間距離Sよりも小さくする必要があり、本実施形態に示すようにW≦S/4の範囲に設定するのが好ましい。即ち、電極幅は0.5μm以下にするのが好ましい。
また、図29に示すように、本実施形態における画素電極及び共通電極の末端部には、液晶分子が望ましくない方向に配向変形するのを防止する逆回転ドメイン防止構造34cを設けるのが好ましい。本発明の第4又は第5実施形態においては、本構造の導入が特に重要となる。これは、通常のIPS方式と比較して、本発明の方式では横電界の割合が小さく、電界印加時の配向変形を電極間の主基板近傍における液晶分子のツイスト変形に依存しているため、櫛歯電極の末端部に発生する異常電界に起因して望ましくない配向変形が誘起されると、この配向変形が伝搬し易く、通常のツイスト変形が困難になるからである。このような逆回転ドメイン防止構造の一例としては、図29に示すように、平行電極対を構成する画素電極及び共通電極の末端部に、ラビング方向と垂直な電極部を形成する方法が挙げられる。
更にまた、本実施形態においては、配向手段として配向膜を有するものとして説明したが、配向手段はこれに限定されるものではなく、特にポジ型液晶を使用する場合には、平行電極対の凹凸構造を配向手段として用いることができる。これにより、配向膜の形成及びラビング処理等の配向処理が不要になるため、装置の低コスト化が可能となる。更に、平行電極対を左右方向、即ち図29におけるY軸方向に微小に屈曲させてもよい。これにより、液晶分子の初期配向方向は平行電極対の延伸方向となり、横電界の基板面内方向は屈曲によりY軸方向と異なる方向になるため、液晶分子と電界との角度を90°以外に設定できる。これにより、電圧印加時の液晶分子のツイスト方向を面内で一様に揃えることが可能となる。なお、微小屈曲のピッチを大きくするに従って、液晶分子と横電界の角度は直交する傾向を示すため、微小屈曲のピッチは平行電極対のピッチ以下に設定することが好ましい。本第5実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第4実施形態と同様である。
次に、本発明の第6の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図30は本実施形態に係る液晶表示装置の構造を示す断面図である。
図30に示すように、本第6実施形態に示す液晶表示装置15は、前述の本発明の第5実施形態と比較して、主基板2a上に反射板5が形成されている点が異なる。なお、液晶表示装置15の観察者側の面には偏光板が設けられていてもよいが、図30においては省略してある。一例では、この偏光板の吸収軸は、液晶分子の短軸方向に合わせて配置されている。即ち、本実施形態における液晶表示装置15は、ノーマリホワイトモードの反射型表示装置として動作する。本第6実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第5実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第6実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明する。まず、画素電極及び共通電極間に電圧を印加しない場合について説明する。偏光板から液晶層に向けて出射された直線偏光は液晶層に入射するが、電圧を印加しない場合、この直線偏光の偏光方向と液晶分子の長軸方向が一致するため、直線偏光はそのままの状態で反射板に到達する。反射板で反射した光は、反射板、液晶層で偏光方向が変化せず、そのままの状態で偏光板から出射することになる。即ち、電圧を印加しない場合には、白表示が実現される。
本発明の第5実施形態に記載のように、画素電極及び共通電極間に電圧が印加された場合には、液晶層が表示面内でほぼ均一なツイスト変形をするため、均一な位相差を与える位相差板を実現することができる。特に、この位相差が1/4波長の場合、偏光板から液晶層に入射した直線偏光は円偏光となって反射板に出射する。反射板は円偏光の偏光方向を180度回転させるため、反射した光は反対方向に回転する円偏光となって液晶層に入射し、入射時とは直交する直線偏光に変換されて、偏光板に向かう。この光は偏光板から出射できないため、電圧を印加することで黒表示が実現される。
本発明の第1比較例に記載のように、液晶層において電圧印加時に電極上と電極間上との液晶配向が大きく異なる場合、この液晶層は均一な位相差板として作用することができない。このため、特にノーマリホワイトモードで使用した場合には黒表示時に光漏れが発生し、表示のコントラスト比を大幅に悪化させることになる。
これに対し、本実施形態に記載のように、液晶層において均一なツイスト配向を実現した場合には、高いコントラスト比を実現することができる。
なお、本実施形態における反射板はアルミニウムや銀等の光に対して高反射率を有する金属を使用することができるが、この場合には画素電極及び共通電極との導通を防止するため、画素電極及び共通電極と反射板との間に絶縁層を設けるのが好ましい。
また、本実施形態における液晶表示装置は反射型表示装置として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、透過型表示装置にも適用することができ、特に半透過型表示装置に好適に使用することができる。この半透過型表示装置においては、透過領域と反射領域とで画素電極を共通化し、透過領域と反射領域の共通電極にそれぞれ異なる電圧を印加し、位相差フィルムを使用しない場合を考えると、透過領域がノーマリブラック、反射領域がノーマリホワイトの特性を示す。透過領域の光学的な動作は本発明の第5実施形態に記載の通りで高い透過率を実現することができ、反射領域の光学的な動作は本実施形態のように高コントラストの反射表示を実現することができる。本第6実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第5実施形態と同様である。
次に、本発明の第7の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図31は本実施形態に係る液晶表示装置の構造を示す断面図である。
図31に示すように、本第7実施形態に係る液晶表示装置16は、レンチキュラレンズ103が具備された立体画像表示装置である。液晶表示装置16においては、各1個の左眼用画素104L及び右眼用画素104Rからなる表示単位としての画素対がマトリクス状に設けられている。レンチキュラレンズ103は、多数のシリンドリカルレンズ103aが一次元配列したレンズアレイであり、その配列方向は左眼用画素104L及び右眼用画素104Rが繰り返し配列される方向、即ち図31におけるY軸方向になっている。シリンドリカルレンズ103aの延伸する方向、即ち長手方向は、表示面内において配列方向と直交する方向であり、図31のX軸方向である。また、Y軸方向における1対の画素対は、一つのシリンドリカルレンズ3aに対応している。左眼用画素104L及び右眼用画素104Rは、本発明の第5実施形態に記載の液晶表示装置に使用の画素と同一の構造を有する。そして、画素電極と共通電極は、図31のY軸方向に繰り返し配置されている。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第5の実施形態と同様である。
次に、上述の如く構成された本第7実施形態に係る液晶表示装置の動作について説明するが、まずはじめにレンチキュラレンズ103の画素拡大動作について説明する。図31に示すように、レンチキュラレンズ103の主点、即ち頂点と画素との間の距離をHとし、レンチキュラレンズ103の屈折率をnとし、レンズピッチをLとする。また、左眼用画素104L又は右眼用画素104Rの各1個のピッチをPとする。このとき、各1個の左眼用画素104L及び右眼用画素104Rからなる表示画素の配列ピッチは2Pとなる。
また、レンチキュラレンズ103と観察者との間の距離を最適観察距離ODとし、この距離ODにおける画素の拡大投影像の周期、即ち、レンズから距離ODだけ離れレンズと平行な仮想平面上における左眼用画素104L及び右眼用画素104Rの投影像の幅の周期を夫々eとする。更に、レンチキュラレンズ103の中央に位置するシリンドリカルレンズ103aの中心から、X軸方向におけるレンチキュラレンズ103の端に位置するシリンドリカルレンズ103aの中心までの距離をWLとし、液晶表示装置の表示画面の中心に位置する左眼用画素104Lと右眼用画素104Rからなる表示画素の中心と、X軸方向における表示画面の端に位置する表示画素の中心との間の距離をWPとする。更にまた、レンチキュラレンズ103の中央に位置するシリンドリカルレンズ103aにおける光の入射角及び出射角を夫々α及びβとし、X軸方向におけるレンチキュラレンズ103の端に位置するシリンドリカルレンズ103aにおける光の入射角及び出射角を夫々γ及びδとする。更にまた、距離WLと距離WPとの差をCとし、距離WPの領域に含まれる画素数を2m個とする。
シリンドリカルレンズ103aの配列ピッチLと画素の配列ピッチPとは相互に関係しているため、一方に合わせて他方を決めることになるが、通常、表示パネルに合わせてレンチキュラレンズを設計することが多いため、画素の配列ピッチPを定数として扱う。また、レンチキュラレンズ103aの材料を選択することにより、屈折率nが決定される。これに対して、レンズと観察者との間の観察距離OD、及び観察距離ODにおける画素拡大投影像の周期eは所望の値を設定する。これらの値を使用して、レンズの頂点と画素との間の距離H及びレンズピッチLを決定する。スネルの法則と幾何学的関係より、下記数式1乃至9が成立する。また、下記数式10及び11が成立する。
本実施形態においては、レンチキュラレンズの頂点と画素との間の距離Hを、レンチキュラレンズの焦点距離fと等しく設定する。このため下記数式16が成立し、レンズの曲率半径をrとすると、曲率半径rは下記数式11により求まる。
ここで、レンチキュラレンズの横倍率は、画素拡大投影像の周期を画素の周期、即ち画素ピッチで除した値と考えることができるので、e/P倍となる。例えば画素の配列ピッチPとして65μmの表示パネルを使用し、画素拡大投影像の周期eを65mmに設定すると、レンチキュラレンズ103は1000倍の横倍率を有することになる。即ち、画素に形成された画素電極や共通電極も1000倍に拡大されて、観察面に投影されることになる。一例では、画素電極又は共通電極部に5μm幅の透過率低下領域が発生すると、観察面では5mm幅の透過率低下領域として観察されることになる。
本発明の第1比較例に記載のように、液晶層において電圧印加時に電極上と電極間上との液晶配向が大きく異なり、X軸方向に大きな透過率分布が発生する場合、この透過率分布はレンチキュラレンズにより拡大されて観察者に観察される。即ち、観察者が表示装置との角度を変えると、表示画像に明暗のムラが重畳して観察されることになるため、観察者は表示画像の品質を低いものとして感じることになる。
一方で、本実施形態に記載のように、液晶層において均一なツイスト配向を実現した場合には、観察者は電極構造に起因する透過率分布を表示画像と重畳して観察することがないため、表示品質が悪いと感じることはない。即ち、本発明では表示品質の向上が可能となる。
本実施形態においては、左眼用画素と右眼用画素とを有する2視点の立体画像表示装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、N視点(Nは自然数)方式の表示装置に対して同様に適用することができる。この場合には、前述の距離WPの定義において、距離WPの領域に含まれる画素数を2m個としたのをN×m個として扱えばよい。なお、Nは1、即ち画素とレンズが1対1に対応していてもよい。この場合、ゲート線やデータ線等の表示に寄与しない領域の影響を低減でき、光の利用効率を向上することができる。
また、本発明は立体画像表示装置に限定されるものではなく、レンチキュラレンズが設けられた表示装置であれば同様に適用することができる。一例では、複数の平面画像を異なる方向に表示するマルチ画像表示装置に対しても、同様に適用することができる。
更に、本発明の画像分離手段はレンチキュラレンズに限定されるものではなく、レンズ要素が二次元配列したフライアイレンズや、スリットが一次元配列した視差バリア、ピンホールが二次元配列した視差バリアについても、同様に適用することができる。即ち、本実施形態は画素を拡大表示する光学手段を設ける場合に好適に使用でき、高画質化が可能となる。
また、透過型液晶表示装置のみならず、反射型液晶表示装置や半透過型液晶表示装置、微反射型液晶表示装置にも同様に適用することができる。
更にまた、本実施形態における画素電極、共通電極はITO等の透明導電体を使用して形成されるのが望ましいが、金属を使用した場合にも改善の効果を出すことができる。これは、金属電極周辺の液晶配向を改善することで、液晶層の透過率における面内均一性を向上することができるからである。本第7実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第5実施形態と同様である。
次に、本発明の第8の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。図32は本実施形態に係る液晶表示装置の構造を示す断面図であり、図33はその構成要素であり光線方向規制素子であるルーバを示す斜視図である。
図32に示すように、本発明の第8実施形態に係る液晶表示装置17は、前述の第5実施形態における液晶表示装置14と比較して、液晶表示装置14の+Z方向側に光線方向規制素子であるルーバ212を有する点を特徴とする。
図33に示すように、ルーバ212は、光を透過する透明領域212aと光を吸収する吸収領域212bとが、ルーバ表面に平行な方向に交互に配置されている。透明領域と吸収領域が交互に配置されている方向は、図32及び図33のY軸方向に設定されている。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第5の実施形態と同様である。
本実施形態においては、ルーバ212に入射する光線のうち、出射面に対する法線方向から角度の大きい成分を吸収して除去する作用を有するため、液晶表示装置17から出射する光線の指向性を高めることができる。これにより、斜め方向からの覗き見を防止することができ、秘密情報の漏洩防止効果を発揮することができる。
ここで、本発明の第1比較例に記載のように、液晶層において電圧印加時に電極上と電極間上との液晶配向が大きく異なり、X軸方向に大きな透過率分布が発生する場合、この透過率分布とルーバ212の吸収領域212bとが干渉し、観察者に画像の表示品質が低下したものとして観察される。
一方で、本実施形態に記載のように、液晶層において均一なツイスト配向を実現した場合には、電極構造に起因する透過率分布とルーバの吸収領域との干渉に起因する画質の低下を防止することができるため、観察者は表示品質が低いと感じることはない。即ち、本発明ではルーバを使用した際の表示品質の向上が可能となる。
なお、本発明における光線方向規制素子であるルーバは、透明領域と吸収領域とが交互に配置される方向がY軸方向であるものとして説明したが、XY平面内において回転配置されていてもよい。
また、本実施形態においては光線方向規制素子であるルーバの例について記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、出射光の指向性を制御するための光学素子に関しても同様に適用することができる。このような例として、バックライトを構成するプリズムシートを挙げることができ、本発明を同様に適用することができる。本第8実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第5実施形態と同様である。
なお、上述の各実施形態はそれぞれ単独で使用しても良いが、適宜組み合わせて使用することも可能である。