図1は、本発明の第1の実施形態を採用した両面印刷装置を示している。同図において両面印刷装置1は、第1の版胴である版胴2、第2の版胴である版胴3、第1のプレスローラであるプレスローラ4、第2のプレスローラであるプレスローラ5、給紙トレイ6、給紙ローラ7、レジストローラ対8、用紙搬送手段9、排紙トレイ10等を有している。
版胴2は図示しない装置本体に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される。版胴2はその外周面上に開閉自在なクランパ11を有しており、版胴2の外周面上には図示しない製版装置で製版された製版済みのマスタ12が巻装されている。マスタ12には、用紙Pの表面に印刷される表面画像に応じた製版画像が形成されている。版胴2の内部には、版胴2の内周面にインキを供給する図示しないインキ供給手段が配設されている。
版胴3も図示しない装置本体に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって版胴2と同期して逆方向に回転駆動される。版胴3はその外周面上に開閉自在なクランパ13を有しており、版胴3の外周面上には図示しない製版装置で製版された製版済みのマスタ14が巻装されている。マスタ14には、用紙Pの裏面に印刷される裏面画像に応じた製版画像が形成されている。版胴3の内部にも、版胴3の内周面にインキを供給する図示しないインキ供給手段が配設されている。
版胴2の下方にはプレスローラ4が配設されている。フッ素樹脂等の撥水性を有する弾性体からなるプレスローラ4は図示しないアーム部材にその両端を回転自在に支持されており、図示しないアーム部材は図示しない揺動手段によって揺動される。これによりプレスローラ4は、その周面が版胴2上の製版済みマスタ12に圧接する図1に示す圧接位置と、その周面が版胴2より離間する離間位置とを選択的に占める。
版胴3の上方にはプレスローラ5が配設されている。裏面印刷用プレスローラとして用いられるプレスローラ5は、図2に示すように、円筒状の弾性体15の表面にガラスビーズ16を接着した樹脂シート17を巻装することにより、その直径が本実施形態においては60mmとなるように構成されており、その表面に複数の微細な凹凸が形成されている。プレスローラ5は、図3に示すように一対のアーム部材18,19に設けられた軸受20,21によりその支軸5aの両端を回転自在に支持されており、各アーム部材18,19は図示しない揺動手段によって揺動される。これによりプレスローラ5は、その周面が版胴3上のマスタ14に圧接する図1に示す圧接位置と、その周面が版胴3より離間する離間位置とを選択的に占める。支軸5aのアーム部材18によって支持された端部にはタイミングプーリ22がピン23によって固設されており、タイミングプーリ22には図示しないタイミングベルトを介して図示しない駆動手段からの回転駆動力が伝達される。図示しない駆動手段はプレスローラ5が離間位置を占めた状態においてのみ作動され、この構成によりプレスローラ5は、圧接位置を占めた際には版胴3の回転力によって従動回転し、離間位置を占めた際には図示しない駆動手段によって従動回転時と同じ回転周速度で回転駆動される。なお、支軸5aと駆動ギヤ22との間に図示しないワンウェイクラッチを介装し、図示しない駆動手段を版胴3の回転時において作動させ続け、プレスローラ5が圧接位置を占めた際にはプレスローラ5の回転力が図示しない駆動手段に伝達されない構成としてもよい。
各アーム部材18,19間であってプレスローラ5の上方に位置する部位には、プレスローラ5のクリーニング行うブラシローラ24が配設されている。ブラシローラ24は、図4に示すように、紙製で円筒状の芯材25と、芯材25の両側端部に圧入された金属製の回転軸26,27と、ブラシ状の表面性状を有するシート材28とを有しており、その軸方向長さがプレスローラ5の軸方向長さと同じとなるように形成されている。芯材25の直径は本形態において18〜24mm程度であり、回転軸26は先端にテーパ面を有する圧入部26aと、芯材25の側端に当接する鍔部26bと、軸部26cとを有している。回転軸27も同様に圧入部(図示せず)と鍔部27bと軸部27cとを有しており、各軸部26c,27cの先端はそれぞれ先細り形状に形成されている。
シート材28は、図5に示すように、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、ナイロン、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の合成樹脂繊維、または綿、羊毛等の天然繊維からなる厚さ0.6〜1.0mm程度の基材28a上に繊維状部材からなるブラシ28bを複数植設して形成されている。ブラシ28bの太さは70〜100デニール(d)/5フィラメント(f)であり、5フィラメント糸で2500〜3000本/inch2の密度でV織りあるいはW織りにより植設されている。シート材28は、本実施形態において幅30mm、厚さ2〜5mmに形成されており、芯材25の周面に螺旋状に巻き付けられて接着されている。これにより、周面に複数のブラシ28bを有するブラシローラ24が形成される。
図3に示すように、アーム部材18には開口18aが形成されており、この開口18aには回転軸27を回転自在に支持する軸受部材29が上下動自在に取り付けられる。軸受部材29は、軸部27cを回転自在に支持する軸受部29aと軸部27cを軸受部29aに案内するガイド部29bとを有しており、軸部27cが接触回転可能となるように含油系焼結部材によって形成されている。軸受部材29は、開口18aに設けられた圧縮ばね30によって図3において下方へ向けて付勢されている。
アーム部材19には、ブラシローラ24が貫通可能な大きさを有する開口19a、タップ19bが形成されていると共に、ガイドピン31が植設されている。ガイドピン31には取付部材32に形成された位置決め穴32aが嵌合し、取付部材32はねじ33をタップ19bに螺合させることによってアーム部材19に固定される。取付部材32には開口32bが形成されており、開口32bには回転軸26を回転自在に支持する軸受部材34が上下動自在に取り付けられている。軸受部材34は、軸部26cを回転自在に支持する軸受部34aを有しており、軸部26cが接触回転可能となるように含油系焼結部材によって形成されている。軸受部材34は、開口32bに設けられた圧縮ばね35によって図3において下方へ向けて付勢されている。
上述の構成より、図3においてアーム部材19の左方より矢印A方向にブラシローラ24を開口19aに挿入し、軸部27cを軸受部29aに嵌合させてブラシローラ24を各アーム部材18,19間に位置させる。この状態より、図3において左方から取付部材32を、位置決め穴32aがガイドピン31に嵌合する状態でねじ33をタップ19bに螺合させることによりアーム部材19に取り付け、この際に軸部26cを軸受部34aに嵌合させる。これによりブラシローラ24が各アーム部材18,19間に回転自在に支持される。このとき、各開口18a,32bは、ブラシローラ24の周面がプレスローラ5の周面に当接するも各軸受部材29,34が各開口18a,32bに接触しない大きさに形成されており、これによりブラシローラ24が各圧縮ばね30,35の付勢力によってプレスローラ5の周面に接触するように構成されている。各圧縮ばね30,35は、ブラシローラ24が所定の圧接力で均等にプレスローラ5の周面に圧接するように、それぞれの材質、ばね定数、及び形状が設定されている。ブラシローラ24は、各ブラシ28bの先端が0.2〜0.5mm程度プレスローラ5の周面に接触するように配置され、プレスローラ5の回転時において従動回転する。
版胴2の右方には給紙トレイ6が配設されている。上面に複数枚の用紙Pを積載する給紙トレイ6は図示しない装置本体に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。図示しない駆動手段によって回転駆動される給紙ローラ7は、図示しない装置本体側板に揺動自在に支持された図示しないブラケットによって回転自在に支持されており、給紙トレイ6が上限位置を占めた際に、給紙トレイ6上の最上位の用紙Pに対して所定の圧接力で圧接する。給紙ローラ7は、図示しない分離部材と協働して給紙トレイ6上の用紙Pを分離給送する。
給紙ローラ7の左方にはレジストローラ対8が配設されている。駆動ローラ及びこれに圧接された従動ローラからなるレジストローラ対8は、図示しない版胴駆動手段からの駆動力を伝達されることにより駆動ローラが版胴2と同期して回転することで、給紙ローラ7によって分離給送された用紙Pを版胴2とプレスローラ4との間に向けて所定のタイミングで給送する。
各版胴2,3間には用紙搬送手段9が配設されている。用紙搬送手段9は、複数の細切れローラからなる駆動ローラ9a及び従動ローラ9b、無端ベルト9c、吸引ファン9d等を有している。各駆動ローラ9aはそれぞれ同一の支軸に固着されており、各従動ローラ9bは各駆動ローラ9aにそれぞれ対応して配置されている。各駆動ローラ9aと各従動ローラ9bとには複数の穴部を有する無端ベルト9cがそれぞれ掛け渡されており、各無端ベルト9cは各駆動ローラ9aが図示しない駆動手段によって回転駆動されることにより図1に矢印で示す方向に移動される。吸引ファン9dは図示しないファン駆動手段によって作動され、各無端ベルト9cが移動される際に空気を吸引して各無端ベルト9c上に用紙Pを吸引する。図示しない駆動手段の作動は図示しない制御手段によって制御され、用紙搬送手段9は版胴2とプレスローラ4とによってその一面に印刷がなされた片面印刷済みの用紙Pを、所定のタイミングで版胴3とプレスローラ5との間に向けて給送する。
排紙トレイ10は、両面に印刷がなされた用紙Pを多数枚積載すべく、用紙搬送経路36の終端に配設されている。排紙トレイ10には、用紙Pの先端が当接する1つのエンドフェンス37と、用紙Pの幅方向の揃えを行う図示しない一対のサイドフェンスとが配設されている。
上述の構成に基づき、以下に両面印刷装置1の動作を説明する。オペレータにより図示しない画像読取装置に印刷すべき原稿がセットされ、図示しない製版スタートキーが押下されると、版胴2に対応した図示しない排版装置及び版胴3に対応した図示しない排版装置が作動して、各版胴2,3の外周面上より使用済みのマスタ12,13がそれぞれ剥離される。その後、各版胴2,3が所定の給版位置を占めた後に各クランパ11,13が開放されると、版胴2に対応した図示しない製版装置及び版胴3に対応した図示しない製版装置が作動して、各版胴2,3の外周面上に原稿画像に対応した製版画像が形成されたマスタ12,14がそれぞれ巻装される。なお、パーソナルコンピュータ等の図示しない外部接続機器より送信された画像情報に基づいて製版動作を行ってもよい。
各版胴2,3上に製版済みの各マスタ12,14が巻装された後、オペレータによって図示しない印刷スタートキーが押下されると、各版胴2,3が図1に矢印で示す方向にそれぞれ回転駆動されると共に、給紙ローラ7が回転して給紙トレイ6上より用紙Pが順次分離給送される。また、版胴3の回転に伴い、離間位置を占めているプレスローラ5も図1において時計回り方向に回転駆動される。分離給送された用紙Pはレジストローラ対8で一時停止された後、マスタ12上に形成された製版画像の先端が用紙Pの画像形成位置と一致する所定のタイミングでレジストローラ対8が回転することにより、スキューを修正された状態で版胴2とプレスローラ4との間に向けて給送される。
レジストローラ対8の作動後、図示しない揺動手段が作動することによりプレスローラ4が圧接位置を占め、給送された用紙Pの一方の面である上面が版胴2上のマスタ12に所定の圧接力で圧接される。この圧接により、図示しないインキ供給手段から版胴2の内周面に供給されたインキが版胴2の開孔部、マスタ12の穿孔部を介して用紙Pの上面に転写される。
上面に印刷画像が転写された用紙Pは用紙搬送手段9に送られ、マスタ14上に形成された製版画像の先端が用紙Pの画像形成位置と一致する所定のタイミングで図示しない駆動手段が作動することにより、用紙搬送手段9によって用紙搬送経路36の下流側へと吸引搬送される。
図示しない駆動手段の作動後、図示しない揺動手段が作動することによりプレスローラ5が圧接位置を占め、給送された用紙Pの他方の面である下面が版胴3上のマスタ14に所定の圧接力で圧接される。この圧接により、図示しないインキ供給手段から版胴3の内周面に供給されたインキが版胴3の開孔部、マスタ14の穿孔部を介して用紙Pの下面に転写される。両面に印刷画像を転写されて両面印刷済みとなった用紙Pは、排出されて排紙トレイ10上に積載される。
上述の両面印刷動作時において、裏面印刷用プレスローラとして用いられるプレスローラ5は、用紙Pの表面印刷後、転写されたインキが完全には乾燥していない状態で用紙Pの表面に接触するため、その周面に用紙Pからのインキが再転写しにくいように微細な凹凸を有する周面のものを採用している。しかし「背景技術」の欄に記載したように、この構成だけでは用紙Pからのインキの再転写を防止することができないため、プレスローラ5に接触してこの周面をクリーニングするクリーニング部材を配置している。
しかも、「発明が解決しようとする課題」の欄に記載したように、クリーニング部材を回転駆動してプレスローラ5との間に速度差を生じさせると、クリーニング部材との速度差が負荷となってプレスローラ5の回転周速度が版胴3の回転周速度よりも遅くなり、プレスローラ5が版胴3上のマスタ14に接触する際に版胴3とプレスローラ5との回転周速度の差によってマスタ14に負荷がかかり、版伸びや画像ゆがみといった不具合が発生してしまうことから、クリーニング部材をプレスローラ5に従動回転させている。
なお、本実施形態ではプレスローラ5を回転駆動させているが、プレスローラ5を回転駆動させた場合であってもプレスローラ5が離間位置を占めた状態においてプレスローラ5の駆動力伝達機構、本実施形態ではタイミングベルトに張力変化が生じ、版胴3との間に若干の周速差が生じてマスタ14に負荷がかかってしまう。またギヤ駆動の場合でも、プレスローラ5が離間位置を占めた状態においてバックラッシュにより版胴3との間に若干の周速差が生じ、マスタ14に負荷がかかることとなる。ただし、プレスローラ5を回転駆動しない場合よりも両者の周速差はかなり小さいので、生じる版伸びや画像ゆがみは微小である。プレスローラ5を回転駆動しない場合は、離間位置を占めた状態においてプレスローラ5は惰性で回転しており、次に圧接位置を占めた際には版胴3との間にある程度の周速差が生じ、クリーニング部材の当接によってプレスローラ5の惰性回転が阻害されることによりさらに周速差が拡大することから、プレスローラ5を回転駆動した場合に比してマスタ14にかかる負荷が増大することとなる。
ここで、微細な凹凸を有するプレスローラ5の周面をクリーニングするクリーニング部材として、ブラシローラ24を選択した経緯を説明する。クリーニング部材としてはブラシローラ24の他、フェルト状あるいはループ状の表面性状を有するシート材によっても、プレスローラ5との間に周速差がある場合にはクリーニングが可能であることが、例えば特開2004−338234号公報に開示されている。そこでクリーニング部材として、ブラシ状の表面性状を有するクリーニングローラを用いた場合、フェルト状の表面性状を有するクリーニングローラを用いた場合、ループ状の表面性状を有するクリーニングローラを用いた場合において、各クリーニングローラをプレスローラ5に従動回転させた場合及び各クリーニングローラを回転駆動した場合のクリーニング性能を実験によりそれぞれ確認した。実験結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、ブラシ状の表面性状を有するクリーニングローラを用いた場合が最もクリーニング性能及び耐久性がよく、この結果に基づいて本発明ではブラシローラ24を採用している。これは、表面がブラシ状となっていることで、プレスローラ5の周面に形成された微細な凹凸の隙間にブラシ28bの先端が入り込み、ブラシ28bによってインキや紙粉が良好に除去されるためであると考えられる。また、本発明のようにプレスローラ5に対してクリーニングローラを従動回転させる場合においては、ブラシ状の表面性状を有するクリーニングローラ以外はすぐにその表面の汚れが飽和してしまい、プレスローラ5の周面にインキ汚れが残り画像汚れが発生してしまうことが判明した。
上述のことから、本発明によれば、その周面に複数の微細な凹凸を有する裏面印刷用プレスローラ5の周面に接触して従動回転するブラシローラ24を用いることにより、プレスローラ5の周面にインキ汚れが残り画像汚れが発生することを効果的に防止できると共に、プレスローラ5の接触時にマスタ14に対して負荷がかかることがないので、版伸びや画像ゆがみの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
上述の構成によれば、ねじ33によって取付部材32をアーム部材19に対して簡単に着脱でき、この着脱に伴いブラシローラ24の装置本体への着脱を簡単に行うことができるので、交換作業の容易化及び交換に要するスペースの小型化を図ることができる。また、ブラシローラ24が、紙製の芯材25と、芯材25の両側に圧入された金属製の回転軸26,27と、ブラシ状の表面性状を有するシート材28とによって構成されているので、金属製の回転軸26,27を取り外すことによって容易に焼却処分することができ、リサイクルにおける分別処理が容易となる。また、ブラシローラ24は汚れがひどくなりクリーニング機能が低下した際に交換される消耗品であるため、安価、軽量、取り扱い易さが求められるが、紙製の芯材25を有するブラシローラ24はその点からも望ましい。さらに、シート材28は芯材25に対して螺旋状に巻き付けられて接着されているので、剥れにくいと共にその全周及び軸方向全体にわたって均一なクリーニング機能を得ることができる。
上述の構成では、各圧縮ばね30,35の付勢力によってブラシローラ24がプレスローラ5の周面に所定の圧接力で圧接する構成とした。ここで、プレスローラ5の周面に対するブラシローラ24の圧接力について説明する。本発明者による実験の結果、プレスローラ5の周面に複数の微細な凹凸があるため、ブラシローラ24の圧接力を強くしすぎるとブラシローラ24が長時間の使用中に剥離したり破損したりし、弱くしすぎるとブラシ28bの先端がプレスローラ5の周面に均一に接触せず、クリーニング効果が失われることが判明した。また、ブラシローラ24の圧接力を強くするとプレスローラ5の回転に対する抵抗力が強くなり、プレスローラ5による版胴3への圧接時において両者間に周速差が生じてしまい、マスタ14に負荷がかかり版伸びや画像ゆがみが発生することが判明した。さらに、本実施形態で示したように、ブラシローラ24を軸方向にスライドさせて各アーム部材18,19間に装着する際に、各圧縮ばね30,35の付勢力が強すぎると装着動作が行いにくいことが判明した。そこで、ブラシローラ24の圧接力を変化させ、画像ゆがみの発生、ブラシローラ24の表面耐久性、装着作業性を調査した。調査結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、ブラシローラ24の圧接力を600gf以上とすると、画像ゆがみの発生、ブラシローラ24の破損、装着作業性の悪化等の不具合が生じることが判明した。また、ブラシローラ24の圧接力を200gf未満とすると、満足なクリーニング効果が得られないことが判った。このことから、プレスローラ5の周面に対するブラシローラ24の圧接力は400gf以下、望ましくは200〜400gfに設定される。
図6は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、第1の実施形態と比較すると、接触部材としての除去部材38を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
除去部材38は、各アーム部材18,19にその両端部近傍を固定されたブラケット39にその基端を接着あるいはテープ等の適宜の手段によって固定されており、その自由端はブラシ28bの先端に接触している。厚さ0.05〜0.2mm程度のポリエチレンテレフタラート製の樹脂薄板からなる除去部材38は、その幅がブラシローラ24の幅よりも若干大きくなるように形成されており、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して圧接する方向とは直交する方向からブラシ28bの先端に接触している。除去部材38の配設位置は、ブラシローラ24の外周面に対してその自由端が0.5〜1.0mm程度重なる(ブラシローラ24の半径方向内側に入り込む)ように設定されている。
この第2の実施形態によれば、除去部材38とブラシ28bとが接触した後、ブラシ28bの弾性変形によってブラシ28bの先端に付着したインキあるいは紙粉が弾き飛ばされるので、ブラシローラ24の耐久性を向上することが可能となる。また、除去部材38が弾性体であり、ブラシ28bとの接触時において除去部材38が弾性変形することによりブラシローラ24の回転に負荷を与えることがなく、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して従動回転することを阻害せず、ブラシローラ24の負荷によりプレスローラ5による版胴3への圧接時において両者間に周速差が生じて、マスタ14に負荷がかかり版伸びや画像ゆがみが発生することを防止できる。さらに、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して圧接する方向とは直交する方向から除去部材38がブラシ28bの先端に接触するので、ブラシローラ24に対して余分な負荷をかけることがなく、ブラシローラ24の負荷によりプレスローラ5による版胴3への圧接時において両者間に周速差が生じて、マスタ14に負荷がかかり版伸びや画像ゆがみが発生することを防止できる。
図7は、本発明の第3の実施形態を示している。この第3の実施形態は、第2の実施形態と比較すると、除去部材38及びブラケット39に代えて接触部材としての除去部材40及び図示しないブラケットを有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
断面形状が星型である金属製あるいは樹脂製の平目ローレットからなる除去部材40は、各アーム部材18,19にその両端部近傍を固定された図示しないブラケットにその支軸40aの両端を回転自在に支持されており、その周面はブラシ28bの先端に接触している。モジュール0.5〜1.0程度の溝ピッチでありその直径が本実施形態においては6〜10mm程度に形成された除去部材40は、その幅がブラシローラ24の幅よりも若干大きくなるように形成されており、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して圧接する方向とは直交する方向からブラシ28bの先端に接触している。除去部材40の配設位置は、ブラシローラ24の外周面に対してその周面が0.5〜1.0mm程度重なるように設定されている。
この第3の実施形態によれば、除去部材40とブラシ28bとが接触した後、ブラシ28bの弾性変形によってブラシ28bの先端に付着したインキあるいは紙粉が弾き飛ばされるので、ブラシローラ24の耐久性を向上することが可能となる。また、除去部材40が回転体であり、ブラシ28bとの接触時において除去部材38が従動回転することによりブラシローラ24の回転に負荷を与えることがなく、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して従動回転することを阻害せず、ブラシローラ24の負荷によりプレスローラ5による版胴3への圧接時において両者間に周速差が生じて、マスタ14に負荷がかかり版伸びや画像ゆがみが発生することを防止できる。さらに、ブラシローラ24がプレスローラ5に対して圧接する方向とは直交する方向から除去部材40がブラシ28bの先端に接触するので、ブラシローラ24に対して余分な負荷をかけることがなく、ブラシローラ24の負荷によりプレスローラ5による版胴3への圧接時において両者間に周速差が生じて、マスタ14に負荷がかかり版伸びや画像ゆがみが発生することを防止できる。さらに除去部材40が金属製あるいは樹脂製の固体であるので、除去部材40の耐久性を第2の実施形態よりも格段に向上できる。
上述した第1ないし第3の各実施形態においては、ブラシローラ24及び各除去部材38,40が適用可能な孔版印刷装置として、2個の版胴2,3とこれに対応して配置された2個のプレスローラ4,5とを有し、版胴2とプレスローラ4とにより用紙Pの一方の面(上面)に表面画像を印刷した後、この表面印刷済みの用紙Pを用紙搬送手段9によって下流へと搬送し、版胴3とプレスローラ5とにより用紙Pの他方の面(下面)に裏面画像を印刷する両面印刷装置1を示したが、ブラシローラ24及び各除去部材38,40を、例えば図8に示すように、特開2003−200645号公報に開示されたものと同様の両面印刷装置41に適用してもよい。以下に、この適用例を第4の実施形態として説明する。
図8において両面印刷装置41は、印刷部42、製版部43、給紙部44、排版部45、排紙部46、画像読取部47、補助トレイ48、再給紙手段49、切替爪50、ブラシローラ51等を有している。
装置本体のほぼ中央に配置された印刷部42は、版胴52とプレスローラ53とを有している。版胴52は装置本体に回転自在に支持されており、図示しない版胴駆動手段によって回転駆動される。版胴52はその外周面上に開閉自在なクランパ54を有しており、版胴52の外周面上には製版部43で製版された分割製版済みマスタ55が巻装されている。分割製版済みマスタ55には、表面画像に応じた製版画像と裏面画像に応じた製版画像とがその周方向に形成されており、各製版画像間には未製版部分が形成されている。分割製版済みマスタ55は、版胴52上において、表面画像に応じた製版画像が図8に示す表面領域に、裏面画像に応じた製版画像が同裏面領域に、未製版部分が同中間領域にそれぞれ対応するように巻装される。
版胴52の下方にはプレスローラ53が配設されている。プレスローラ5と同様に形成されその周面に複数の微細な凹凸を有するプレスローラ53は図示しない一対のアーム部材にその両端を回転自在に支持されており、図示しない各アーム部材が図示しない揺動手段によって揺動されることにより、その周面が版胴52より離間する図8に示す離間位置と、その周面が版胴52上の分割製版済みマスタ55に所定の圧接力で圧接する圧接位置とを選択的に占める。プレスローラ53には図示しないプレスローラ駆動手段が接続されており、プレスローラ53は離間位置を占めたときにこのプレスローラ駆動手段によって版胴52の線速度と同じ線速度で回転駆動される。
プレスローラ53の周面近傍にはブラシローラ51が配設されている。ブラシローラ51はブラシローラ24と同様に構成されており、プレスローラ53を支持する図示しない各アーム部材間に回転自在に支持されている。ブラシローラ51は、そのブラシの先端が0.2〜0.5mm程度プレスローラ53の周面に接触するように配置され、プレスローラ53の回転時において従動回転する。
プレスローラ53の右方近傍には、再給紙手段49から送られた表面印刷済みの用紙Pをプレスローラ53の周面に沿わせて搬送するための再給紙案内部材56が配設されており、プレスローラ53の下方には補助トレイ48上に貯留された表面印刷済みの用紙Pをプレスローラ53の周面に接触させて送り出す再給紙レジストローラ57が配設されている。プレスローラ53の左下方には上面に補助トレイ48を有する再給紙搬送手段58が配設されており、これには再給紙位置決め部材59が一体的に設けられている。再給紙搬送手段58の上方には、補助トレイ48の上面に沿って移動自在な用紙受け板60が配設されている。これら補助トレイ48、再給紙案内部材56、再給紙レジストローラ57、再給紙搬送手段58、再給紙位置決め部材59及び用紙受け板60によって再給紙手段49が構成されている。
版胴52とプレスローラ53との接触位置の左方であって用紙Pの搬送経路上には切替爪50が配設されている。切替爪50はその用紙搬送方向下流側端部を装置本体に回動自在に支持されており、図示しない移動手段によって移動され、図8に実践で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とを選択的に占める。版胴52とプレスローラ53との間を通過した用紙Pは、切替爪50が第1の位置を占めているときに排紙部46へと案内され、切替爪50が第2の位置を占めているときに補助トレイ48へと案内される。
印刷部42の右上方には製版部43が配設されている。製版部43は、マスタ貯容部材、プラテンローラ、サーマルヘッド、マスタ切断手段、マスタストック手段、テンションローラ対、反転ローラ対等を有する周知の構成であり、製版部43では分割製版済みマスタ55が作成される。
製版部43の下方には給紙部44が配設されている。給紙部44は、給紙トレイ61、給紙ローラ62、分離ローラ63、分離パッド64、レジストローラ対65等を有する周知の構成である。
印刷部42の左上方に配設された排版部45も、上排版部材、下排版部材、排版ボックス、圧縮板等を有する周知の構成であり、使用済みの分割製版済みマスタ55を版胴52の周面より剥離して排版ボックスの内部に廃棄する。
排版部45の下方には排紙部46が配設されている。排紙部46は、剥離爪、排紙搬送手段66、排紙トレイ67等を有している。排紙搬送手段66は用紙搬送手段9と同様に構成されており、無端ベルトの上面に印刷済みの用紙Pを吸引しつつ下流側へと搬送する。排紙トレイ67は、1つのエンドフェンス68と一対のサイドフェンス69とを有しており、その上面に印刷済みの用紙Pを積載する。
装置本体の上部には画像読取部47が配設されている。画像読取部47は、原稿を載置するコンタクトガラス、コンタクトガラスに対して接離自在な圧板、原稿画像を走査して読み取る走査ユニット、走査された画像を集束するレンズ、集束された画像を処理する画像センサ等を有している。
上述の構成に基づき、以下に両面印刷装置41の動作を説明する。
画像読取部47に印刷すべき原稿がセットされ、オペレータによって図示しない製版スタートキーが押下されると、画像読取部47において原稿画像の読取動作が行われると共に排版部45が作動して版胴52の外周面から使用済みの分割製版済みマスタ55が剥離される。排版後、製版部43が作動して新たな分割製版済みマスタ55が製版され、これが版胴52に巻装される。
巻装動作が完了して両面印刷装置41が印刷待機状態となった後、各種印刷条件設定後にオペレータによって図示しない印刷スタートキーが押下されると、版胴52が設定速度で回転駆動されると共に、給紙ローラ62及び分離ローラ63が作動して給紙トレイ61上の最上位に位置する用紙Pが1枚給送される。給送された用紙Pはレジストローラ対65で一時停止された後、所定のタイミングで版胴52とプレスローラ53との間に向けて送られる。
版胴52が所定角度まで回転してその表面領域がプレスローラ53と対応する所定位置を占めると、プレスローラ53が圧接位置を占めることにより用紙Pが版胴52上の分割製版済みマスタ55に圧接され、その一方の面に表面画像を転写される。表面印刷済みの用紙Pは版胴52の外周面より剥離された後、第2の位置を占めている切替爪50によって再給紙搬送手段58へと送られる。このとき用紙Pはその先端を用紙受け板60によって受け止められ、後端側から補助トレイ48上に載置される。補助トレイ48上の用紙Pは再給紙搬送手段58によって図8の矢印方向に搬送され、その先端を再給紙位置決め部材59に当接させた状態で一時停止される。
1枚目の用紙Pが補助トレイ48上に案内されている間も版胴52は回転を継続しており、給紙部44からは1枚目の用紙Pと同じタイミングで2枚目の用紙Pが給送される。給送された2枚目の用紙Pは、1枚目の用紙Pと同様にプレスローラ53によってその一方の面に表面画像を転写された後、第2の位置を占めている切替爪50によって再給紙搬送手段58へと送られる。
給紙部44から2枚目の用紙Pが給送された後、版胴52の裏面領域がプレスローラ53と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングで、再給紙レジストローラ57が作動して補助トレイ48上に貯留されている1枚目の用紙Pがプレスローラ53の周面に圧接される。プレスローラ53の周面に圧接された1枚目の用紙Pは、版胴52に圧接して従動回転しているプレスローラ53の回転力によって版胴52との当接部に向けて搬送され、分割製版済みマスタ55に圧接されることによりその他方の面に裏面画像を転写される。このときプレスローラ53は裏面印刷用プレスローラとして機能する。
裏面画像を転写されて両面印刷済み用紙となった1枚目の用紙Pは、第1の位置を占めた切替爪50によって排紙搬送手段66へと案内され、排紙トレイ67上に排出される。以下、上述の動作が設定された印刷枚数を消化するまで繰り返され、設定印刷枚数に到達すると各部位の作動が停止して印刷動作が完了する。
上述した印刷動作時において、プレスローラ53は補助トレイ48上から表面印刷済みの用紙Pが再給紙レジストローラ57によって圧接される際に用紙Pの画像面に接触するが、このときに用紙Pに転写されたインキが未乾燥状態であるためにそのインキが再転写してその周面が汚れてしまう。しかし、ブラシローラ24と同様に構成されたブラシローラ51がプレスローラ53の周面に接触して従動回転することにより、版胴52上の分割製版済みマスタ55に負荷をかけることなくプレスローラ53の周面をクリーニングすることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
この第4の実施形態においても、プレスローラ53に対するブラシローラ51の圧接力は、画像ゆがみの発生、ブラシローラ51の表面耐久性、装着作業性を考慮すると、第1の実施形態と同様に400gf以下、望ましくは200〜400gfに設定される。
第4の実施形態においても、第2及び第3の実施形態で示した除去部材38,40と同様のものを付設することができ、これにより第2及び第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。