JP4811321B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents

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本発明は、車両のボディサイド部と車両用シートとの間でエアバッグを膨張展開させ、車両側方からの衝撃を緩和して乗員を保護するようにしたサイドエアバッグ装置に関するものである。
側突により車両に側方からの衝撃が加わった場合にその衝撃から乗員を保護する装置としてサイドエアバッグ装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。サイドエアバッグ装置は、インフレータ及びエアバッグを備えており、エアバッグが折り畳まれることによりコンパクトにされた状態で車両用シートのシートバック(背もたれ)に収納されている。
上記サイドエアバッグ装置では、車両のボディサイド部に側方から衝撃が加わると、インフレータが作動してガスをエアバッグ内に噴出する。噴出されたガスによりエアバッグが膨張展開し、シートバックを特定の箇所で破断させる。エアバッグは、自身の一部をシートバック内に残した状態で、シートバックの破断箇所から飛び出す。このエアバッグは、車両用シートに着座した乗員とボディサイド部との間の狭い乗員拘束領域において、シートバックから前方へ向けて膨張展開される。この膨張展開したエアバッグが、乗員と車室内に侵入してくるボディサイド部との間に介在して乗員を拘束し、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる側方からの衝撃を緩和する。
ところで、側突では、上記乗員拘束領域が他の衝突形態、例えば前突に比べて非常に狭い。そのため、側突では、乗員を確実に保護する観点から、側突の発生後にエアバッグを、乗員拘束領域において非常に短い時間で膨張展開させることが要求される。この要求に応えるために、側突を検知すると、エアバッグを高速で膨張展開させるようにしているのが実情である。
特開2004−276808号公報
ところが、上記のようにエアバッグを高速で膨張展開させると、側突の発生後に短時間でエアバッグを膨張展開させることができる反面、膨張展開するエアバッグが反力として乗員に与えるエネルギーが高い。そのため、乗員が正規の着座姿勢とは異なる姿勢で着座し、身体の一部がエアバッグの乗員拘束領域に位置しているときには、乗員を好適に拘束することが困難であり、乗員保護性能の点で改良の余地が残る。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、乗員の着座姿勢に拘わらず乗員保護性能の向上を図ることのできるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、前記車両の側突を予測する側突予測手段と、前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段とを備え、前記展開速度低下手段は、前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となる冗長部を有するとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、前記冗長部をたるんだ状態に保持し、かつ前記エアバッグの膨張展開に伴い保持を解除する保持部と、前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段とを備え、前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを要旨とする。
上記の構成によれば、側突予測手段により側突が予測され、かつ乗員検出手段によりエアバッグの乗員拘束領域で乗員の身体の一部が検出されることを「実行条件」とされる。そして、この実行条件の成立状況に応じ、インフレータの作動及びエアバッグの展開速度が互いに異なる内容で制御される。
<実行条件が満たされない場合>
この場合、車両の側突が側突検出手段によって検出されると、その検出に応じてインフレータ制御手段によりインフレータが作動させられ、同インフレータからガスが噴出される。車両用シート内に収納及び固定されたエアバッグに上記のガスが供給される。このガスによりエアバッグが車両用シート内で膨張展開した後、同車両用シートから飛び出し、ボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で速い展開速度で膨張展開する。膨張展開したエアバッグが、乗員と車室内に侵入してくるボディサイド部との間に介在して乗員を拘束し、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる側方からの衝撃を緩和する。
<実行条件が満たされる場合>
ここで、従来のサイドエアバッグ装置では、側突が発生すると、そのことがセンサによって検出される。その検出に応じてインフレータが作動を開始させられ、同インフレータから噴出されるガスによりエアバッグが膨張展開する。これに対し、側突を予測できれば、側突の発生前からインフレータの作動を開始させて、エアバッグを膨張展開させることが可能となり、その分、エアバッグの膨張展開時間に余裕が生まれる。
この点を考慮し、請求項1に記載の発明ではインフレータ制御手段によるインフレータの作動開始時期が、作動開始時期変更手段により、側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早められる。また、この作動開始時期の変更に応じ、エアバッグの展開速度が、展開速度低下手段により、側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開速度よりも低下させられる。この展開速度の低下により、膨張展開するエアバッグが反力として乗員に与えるエネルギーが低下し、乗員が好適に拘束される。
このように請求項1に記載の発明によれば、乗員が正規の着座姿勢で着座しているときには、エアバッグを速く膨張展開させて、乗員を確実に衝撃から保護することができる。また、乗員が身体の一部を乗員拘束領域に位置させた姿勢で着座しているときには、エアバッグをゆっくり膨張展開させて、乗員を好適に保護することができる。乗員の着座姿勢に拘わらず乗員保護性能の向上を図ることができる。
また、上記の構成によれば、サイドエアバッグ装置では、長尺部材の一端部は、車両用シート又はエアバッグに固定されている。長尺部材の他端部は、連結手段の状態(連結状態・連結解除状態)に応じて車両用シートに連結されたり、その連結を解除されたりする。連結状態では、上記他端部は連結手段を介して車両用シートに直接又は間接に連結される。この連結により、長尺部材がその両端部において車両用シートに固定された状態となる。連結解除状態では、上記他端部の車両用シートに対する連結が解除される。この解除により、長尺部材は、その一端部においてのみ車両用シートに固定された状態となる。この連結手段による作用は、請求項1〜4に記載の発明において共通している。
連結手段が連結状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、長尺部材は、エアバッグの膨張展開に伴い引っ張られて緊張するが、保持部が冗長部をたるんだ状態に保持し、エアバッグの膨張展開を妨げようとする。長尺部材の緊張した状態からさらにエアバッグが膨張展開し続けようとすると、エアバッグの膨張展開のエネルギーが保持部による保持を解除させるために消費されて、エアバッグの展開速度が低下させられる。そして、保持部の保持が解除させられると、冗長部をたるんだ状態に保持しようとするものがなくなり、たるみ部分が生ずる。このときエアバッグが引き続き膨張展開すると、冗長部のたるんだ状態が解消されて引き伸ばされ、長尺部材が再び緊張する。
これに対し、連結手段が連結解除状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、上記長尺部材はその一端部においてのみ車両用シートに固定された状態となり、エアバッグの膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このように、連結手段の連結状態及び連結解除状態を切り替えることにより、エアバッグの展開速度を低下させたり、展開速度を低下させないようにしたりすることができる。
求項に記載の発明は、インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、前記車両の側突を予測する側突予測手段と、前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段と
を備え、前記展開速度低下手段は、前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となる冗長部を有するとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材を備え、前記冗長部は、保持部によりたるんだ状態に保持され、かつ前記エアバッグの膨張展開に伴い前記保持部による保持が解除される第1冗長部と、前記保持部による保持が解除される前に前記エアバッグの膨張展開に伴い引き伸ばされる第2冗長部とからなり、さらに、前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段を設け、前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを要旨とする。
上記の構成によれば、エアバッグが収納用形態にあるときには、第2冗長部がたるんだ状態となり、第1冗長部が保持部によりたるんだ状態に保持されている。
連結手段が連結状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、長尺部材は、エアバッグの膨張展開に伴い引っ張られるが、第2冗長部が引き伸ばされるに過ぎず、長尺部材がエアバッグの膨張展開を妨げることはほとんどない。
エアバッグの膨張展開が進行すると、その膨張展開に伴い第2冗長部が引き伸ばされて緊張する。保持部が第1冗長部をたるんだ状態に保持し、エアバッグの膨張展開を妨げようとする。第2冗長部が緊張した状態からさらにエアバッグが膨張展開し続けようとすると、エアバッグの膨張展開のエネルギーが、保持部による保持を解消させるために消費されて、エアバッグの展開速度が低下させられる。そして、保持部による保持が解消させられると、第1冗長部をたるんだ状態に保持しようとするものがなくなり、たるみ部分が生ずる。このときエアバッグが引き続き膨張展開すると、第1冗長部のたるんだ状態が解消されて引き伸ばされ、長尺部材が再び緊張する。
これに対し、連結手段が連結解除状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、上記長尺部材はその一端部においてのみ車両用シートに固定された状態となり、エアバッグの膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このように、連結手段の連結状態及び連結解除状態を切り替えることにより、エアバッグの展開速度を低下させたり、展開速度を低下させないようにしたりすることができる。
なお、展開速度低下手段として、第1冗長部及び保持部の組み合わせを複数用い、第1冗長部毎に保持部の保持強度を異ならせることが有効である。この場合には、エアバッグの膨張に伴い、保持強度の低い保持部を有する第1冗長部から順に、その保持部による保持を解除させることが可能となる。各保持部による保持を解除させる毎にエアバッグの膨張展開のエネルギーを消費させて、エアバッグの展開速度を所定の期間(時間)にわたり低下させ続けることが可能となる。
また、第1冗長部は、長尺部材の一部が折り重ねられ、保持部によって折り重ねられた状態に保持されたものであってもよい。例えば、長尺部材において、折り重ねられた部分は縫製糸によって縫合されたり、接着剤によって接着されたりすることで、折り重ねられた状態に保持される。この場合、縫製糸による縫合部分、及び接着剤による接着部分が保持部に相当する。これらの場合には、エアバッグの膨張展開に伴い、縫合部分や接着部分が破断・切断等されることにより、上記保持が解除される。
また、保持部は、例えば、スナップフィット、スナップボタン、スナップホック等、スナップ式の一対の締結部品によって構成されてもよい。この場合、両締結部品が、長尺部材の折り重ねられた部分において相対向する箇所に設けられる。両締結部品が相互に結合されることにより、長尺部材の一部が折り重ねられた状態に保持される。また、エアバッグの膨張展開に伴い、両締結部品が分離されることにより、上記保持が解除される。
請求項に記載の発明は、インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、前記車両の側突を予測する側突予測手段と、前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段とを備え、前記展開速度低下手段は、前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となり、膨張展開するエアバッグにより緊張させられるとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、前記長尺部材の長さ方向についての途中に設けられ、前記エアバッグの膨張展開に伴い分離される分離予定部と、前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段とを備え、前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを要旨とする。
上記の構成によれば、連結手段が連結状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、長尺部材は、エアバッグの膨張展開に伴い引っ張られて緊張するが、この長尺部材がエアバッグの膨張展開を妨げようとする。ここで、長尺部材では、分離予定部において他の箇所よりも強度が低くされており、同長尺部材にエアバッグの張力等の外力が加わった場合に、分離予定部において長尺部材が分離されやすくなっている。
そのため、長尺部材の緊張した状態からさらにエアバッグが膨張展開し続けようとすると、エアバッグの膨張展開のエネルギーが分離予定部の分離に消費されて、エアバッグの展開速度が低下させられる。そして、上記のように長尺部材が分離予定部において分離されると、その長尺部材によるエアバッグの膨張展開を妨げようとする力がなくなる。
これに対し、連結手段が連結解除状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、上記長尺部材はその一端部おいてのみ車両用シートに固定された状態となり、エアバッグの膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このように、連結手段の連結状態及び連結解除状態を切り替えることにより、エアバッグの展開速度を低下させたり、展開速度を低下させないようにしたりすることができる。
なお、展開速度低下手段として、上記のように分離予定部を有し、かつ長さの異なる長尺部材を複数本用いることが有効である。この場合、分離予定部の強度を一定とすると、エアバッグの膨張に伴い、短い長尺部材から順に、その分離予定部において同長尺部材を分離させることが可能となる。各長尺部材において分離予定部を分離させる毎にエアバッグの膨張展開のエネルギーを消費させて、エアバッグの展開速度を所定の期間(時間)にわたり低下させ続けることが可能となる。
また、分離予定部は、例えば、長尺部材に入れられたミシン目によって構成されてもよい。この場合、ミシン目は、それぞれ所定の長さを有する複数本の切り込みを、所定間隔おきに長尺部材に入れることによって形成される。そして、隣り合う切り込み間の部分が破断されることにより、長尺部材が分離予定部において分離される。
請求項に記載の発明は、インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、前記車両の側突を予測する側突予測手段と、前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段とを備え、前記展開速度低下手段は、前記エアバッグの外部に配置されて、伸縮性を有する素材により形成され、かつ自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、膨張展開するエアバッグにより伸張させられるとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段とを備え、前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを要旨とする。
上記の構成によれば、連結手段が連結状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、長尺部材が、その膨張展開するエアバッグによって引っ張られて緊張状態になる。この長尺部材が伸縮性を有する素材によって形成されていることから、さらにエアバッグが膨張展開すると、その膨張展開が長尺部材を伸張させることにより行われる。長尺部材には弾性復元力があり、この弾性復元力は長尺部材が伸張するに従い増大する。従って、エアバッグの膨張展開のエネルギーが長尺部材の伸張に消費されてエアバッグの展開速度が低下させられる。
これに対し、連結手段が連結解除状態にされているときにエアバッグが膨張展開すると、上記長尺部材はその一端部おいてのみ車両用シートに固定された状態となり、エアバッグの膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このように、連結手段の連結状態及び連結解除状態を切り替えることにより、エアバッグの展開速度を低下させたり、展開速度を低下させないようにしたりすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記車両と側突対象物との側突直前の相対速度を検出する側突速度検出手段をさらに備え、前記作動開始時期変更手段は、前記側突予測手段による側突の予測時に前記側突速度検出手段の検出結果が高速であるときには、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、同検出結果が非高速であるときよりも早めることを要旨とする。
上記の構成によれば、側突が予測されるときに、車両と側突対象物との側突直前の相対速度が高速であると、非高速(中・低速)である場合よりも、インフレータの作動開始時期が早められる。この作動開始時期の変更は、乗員の身体の一部が乗員拘束領域にあってもなくても行われる。
そして、上記のようにインフレータの作動開始時期が早められることで、展開速度が低下された場合であっても低下されない場合であっても、エアバッグの膨張展開の期間が早い側へシフトする。これに伴い、エアバッグによる乗員の拘束がより早い時期から開始されることとなり、この点からも乗員保護性能が向上する。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記車両と側突対象物との側突直前の相対速度を検出する側突速度検出手段と、前記車両用シートにおける前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出手段と、前記側突予測手段による側突の予測時に、前記着座位置検出手段により乗員が正規位置に着座していることが検出され、かつ前記側突速度検出手段の検出結果が低速であるときには、前記作動開始時期変更手段による前記インフレータの作動開始時期の変更を禁止する変更禁止手段とをさらに備えることを要旨とする。
ここで、ガスにより膨張展開するエアバッグの内圧は時間の経過とともに変化する。内圧は、エアバッグの膨張展開の初期には上昇し、膨張展開の完了時に最大となり、その後に下降に転ずる特性を示す。エアバッグによる乗員の拘束は、内圧が最大となったときに行われることが望ましい。
一方、側突の発生後、乗員を拘束するうえで望ましい拘束タイミングは、車両と側突対象物との相対速度(側突速度)に応じて異なる。この望ましい拘束タイミングは、側突速度が速いとき(例えば、中・高速時)には早く、側突速度が遅くなるに従い遅くなる。
また、インフレータの作動開始時期が早められると、エアバッグの膨張展開の期間が早い側へシフトする。これに伴い、エアバッグの内圧の最大となる時期も早くなる。
従って、側突速度が低速であるときにインフレータの作動開始時期が早められると、エアバッグの内圧が最大となるタイミングが、その側突速度に対応した望ましい拘束タイミングよりも早くなるおそれがある。この場合には、内圧の低くなったエアバッグによって乗員を拘束することとなり、乗員の保護性能が充分に発揮されない懸念がある。
この点、請求項6に記載の発明では、乗員が正規位置に着座しており、車両と側突対象物との側突直前の相対速度(側突速度)が低速であると、インフレータの作動開始時期の変更が禁止される。この場合、インフレータの作動開始時期は、車両の側突が側突検出手段によって検出された場合のインフレータの作動開始時期と同じとなる。これに伴い、エアバッグの膨張展開の期間も、車両の側突が側突検出手段によって検出された場合と同じになる。
従って、エアバッグの内圧が最大となるタイミングを、低い側突速度に対応した望ましい拘束タイミングに近づけることが可能となる。側突速度の低いときであっても、エアバッグの内圧が高いときに乗員を適正に拘束することができるようになる。
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、乗員の身体の一部がエアバッグの乗員拘束領域にあるときに車両の側突が予測されると、実際の側突に先立ちインフレータに作動を開始させるとともにエアバッグの展開速度を低減させるようにしている。そのため、膨張展開するエアバッグが反力として乗員に与えるエネルギーを低下させることにより、身体の一部を乗員拘束領域に位置させた姿勢で着座している乗員を好適に拘束することができ、乗員の着座姿勢に拘わらず乗員保護性能の向上を図ることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図21を参照して説明する。
なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方(車両前方)として説明し、車両の後進方向を後方(車両後方)として説明する。また、以下の記載における上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、車両においてボディサイド部21の車内側(図2の上側)の近傍には車両用シート22が配置されている。ここで、ボディサイド部21とは、車両の側部に配置された部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部21は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部21は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
車両用シート22は、シートクッション(座部)23及びシートバック(背もたれ部)24を備えて構成されている。
図2及び図3の少なくとも一方に示すように、シートバック24は、その前部であって、車幅方向における両方の側部26にそれぞれサイドサポート部25を有している。両サイドサポート部25,25は、車両用シート22に着座してシートバック24にもたれた乗員Pの車幅方向の動きを規制するように乗員Pをサポートするためのものである。
次に、シートバック24において、サイドサポート部25を含む車外側の側部26の内部構造について説明する。
シートバック24内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。図3に示すように、シートフレームの周りには、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド27が配置されている。シートフレームの一部はシートバック24の側部26内に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部28」という)は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。
シートパッド27は複数枚の表皮31〜33によって被覆されている。表皮32,33は、サイドサポート部25の側面前部において重ね合わされて縫合されている。この縫合部分34は、シートパッド27に設けられた溝部35に収容されている。縫合部分34は、両表皮32,33の非縫合部分よりも強度が低いことから、後述するエアバッグ44によって破断される破断予定部の一部を構成している。
また、表皮31,32において、サイドサポート部25の付け根部分に対応する箇所は、後方へ折り曲げられて縫合されている。この縫合部分36は、後方へ引っ張られた状態で、シートパッド27の前部に設けられた溝部37内に収容されている。
さらに、表皮32,33及びシートパッド27間であって、サイドフレーム部28及び後述するエアバッグモジュール43の周りに対応する箇所には、2枚の力布38,39が巻き付けられている。両力布38,39は、エアバッグ44の展開性向上を目的として、伸びの少ない材料によってそれぞれ帯状に形成されている。各力布38,39の一方の端部は、上記縫合部分34において表皮32,33と共縫いされている。また、各力布38,39の他方の端部は上記サイドフレーム部28に係止されている。両力布38,39は、エアバッグ44の膨張展開初期に伸長した状態となることにより、所定の展開方向とは異なる方向へのエアバッグ44の膨張を抑制する。また、両力布38,39は、シートパッド27の変形や表皮32,33の伸びを抑制して破断予定部の破断のきっかけとする。
シートパッド27についてサイドフレーム部28の近傍には、エアバッグモジュール43を組み込むための収納空間41が設けられている。
収納空間41の車外側かつ前側の角部からは、表皮32,33の縫合部分34に向けてスリット42が延びている。シートパッド27においてスリット42と縫合部分34との間の箇所は薄肉状をなしており、縫合部分34とともに上記破断予定部を構成している。
上記収納空間41に組み込まれるエアバッグモジュール43は、エアバッグ44と、インフレータアセンブリ47とを主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。なお、図6及び図7は、ガスを充填されることなくエアバッグ44が展開させられた状態のエアバッグモジュール43を模式的に示している。
<エアバッグ44>
図6に示すようにエアバッグ44は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等からなる1枚の基布によって袋状に形成されている。
この形成に際しては、所定形状をなす基布が中央部分で二つ折りされる。この二つ折りに伴い、互いに同一形状をなす表裏一対の重合部44A,44Bが形成される。両重合部44A,44Bは、二つ折りにかかる辺45が車両後方側となるように配置されて使用される。また、両重合部44A,44Bはエアバッグ44が膨張展開を完了したときに、車両用シート22(図1及び図2参照)に着座している乗員Pの腰部Ppから胸部Ptにかけての広い領域をカバーし得る大きさ・形状を有している。この大きさ・形状は一例に過ぎず、エアバッグ44はこれとは異なる大きさ・形状を有していてもよい。例えば、エアバッグ44は、乗員Pの腰部Ppから肩部にかけての領域をカバーし得る大きさ・形状を有したものであってもよい。
なお、一対の重合部44A,44Bは、2枚の基布を重ね合わせることにより形成されるものであってもよい。この場合、各基布が各重合部44A,44Bを構成する。
両重合部44A,44Bは、それらの周縁部に設けられた周縁結合部46において結合されている。第1実施形態では、周縁結合部46は、両重合部44A,44Bの周縁部を縫製糸で縫合することにより設けられている。なお、周縁結合部46は、上記縫製糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって設けられてもよい。
<インフレータアセンブリ47>
インフレータアセンブリ47は、ガス発生源としてのインフレータ48と、そのインフレータ48に装着されたリテーナ49とを備えて構成されている。これらのインフレータ48及びリテーナ49は、エアバッグ44の内部空間において、前後方向についての後部であって、同エアバッグ44内の上下方向についての略中間部分に配置されている。
インフレータ48は略上下方向に細長い略円柱状をなしており、その内部にはガス発生剤(図示略)が収容されている。このタイプのインフレータ48ではガス発生剤の燃焼反応によってガスが生成される。インフレータ48の一方の端部(ここでは下端部)には、生成したガスを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出口51が設けられている。
なお、インフレータ48としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。
一方、リテーナ49は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ48をエアバッグ44と一緒にサイドフレーム部28(図3参照)に固定する機能を有する部材である。リテーナ49は、その大部分が金属板等の板材を曲げ加工等することによって上下方向に細長い略筒状に形成されている。リテーナ49の下端部の前側には、インフレータ48の一部のガス噴出口51をリテーナ49から露出させる窓部52が設けられており、ガス噴出口51からのガスが、この窓部52を通じ車両の概ね前方へ向けて噴出される。図4に示すように、リテーナ49の上記窓部52とは異なる所にはボルト53が植設されており、このボルト53がエアバッグ44に挿通されて、同エアバッグ44の外部に露出している。
ところで、サイドエアバッグ装置では、エアバッグ44が次の工程を経ることにより、上記収納空間41(図3参照)への組み込みに適したコンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされる。まず、図7に示すように、ガスを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグ44が蛇腹折りされる。ここでの蛇腹折りは、エアバッグ44の折り態様の1つであり、同エアバッグ44を、それぞれ略上下方向に延びる複数の折り線54に沿って、車両前方側から車両後方側に向けて、定幅ずつ交互に折り方向を変えながら折り返すというものである。この蛇腹折りが行われることにより、図8(A)に示すように、エアバッグ44は収納用形態とするための途中の形態として、略上下方向に細長い形状となる。
次に、上記のように長尺状にされたエアバッグ44の上部、及び下部が、図8(A)において矢印で示す方向へ、すなわち、上部については時計回り方向へ、また下部については反時計回り方向へそれぞれ折り返される。第1実施形態では、エアバッグ44の上部についても下部についてもそれぞれ1回折り返されているが、これは一例に過ぎず、折り返しの回数は適宜変更可能である。これらの折り返しにより、エアバッグ44は図8(B)に示すように、略上下方向についての長さが短くされている。
そして、上記のように折り畳まれたエアバッグ44は、複数箇所(図8(B)では2箇所)において結束テープ55によって束ねられている。エアバッグ44は、これらの結束テープ55によって、折り畳まれた状態に保持されている。
上記のように構成されたエアバッグモジュール43は、図3に示すように、インフレータアセンブリ47を後ろ側に位置させ、かつエアバッグ44の蛇腹折りされた箇所を前側に位置させた状態で、シートバック24の収納空間41に収容されている。そして、上述したように、エアバッグ44に挿通されたボルト53が、ナット63によりサイドフレーム部28に締結されている。この締結により、インフレータアセンブリ47がエアバッグ44と一緒にサイドフレーム部28に固定されている。
上記エアバッグモジュール43においては、エアバッグ44が、インフレータ48からのガスにより概ね次のように膨張する。詳細については後に詳述する。まず、エアバッグ44はガスの供給開始直後には、収納空間41で膨張展開する。この膨張展開が進行するに従い、エアバッグ44がサイドサポート部25を前方へ押圧して膨らませ始める。サイドサポート部25が前方へ膨らむと、車両用シート22に着座してシートバック24にもたれている乗員Pの背中が前方へ押される。膨張展開するエアバッグ44が、サイドサポート部25を介してではあるが、すなわち間接的であるが、乗員Pを押すようになる。さらに膨張展開が進行すると、エアバッグ44はサイドサポート部25を破断させ、一部を収納空間41に残した状態で車両用シート22の外部へ飛び出す。エアバッグ44は、ボディサイド部21及び車両用シート22間の乗員拘束領域Z1(図2参照)において、同車両用シート22から前方へ向けて膨張展開する。この膨張展開したエアバッグ44は乗員Pを直接押して拘束する。
ここで、エアバッグ44が膨張展開を開始してから完了するまでの全期間を「膨張展開期間」とする。この膨張展開期間は、エアバッグ44が直接又は間接に乗員Pを押して拘束する期間と、拘束しない期間とに分けることができる。上述したように、エアバッグ44がシートパッド27を前方へ押圧して膨らませ始めるタイミングよりも後には、同エアバッグ44が乗員Pを間接又は直接に押圧して拘束する。このシートパッド27を膨らませ始めるタイミングは、膨張展開期間の中間である。そこで、ここでは便宜上、シートパッド27を膨らませ始めるタイミングを基準に、それよりも前の期間を「膨張展開期間の前期」といい、同タイミング以降の期間を「膨張展開期間の後期」というものとする。このように定義すると、「膨張展開期間の前期」が乗員Pを拘束しない期間に相当し、「膨張展開期間の後期」が上記乗員Pを直接又は間接に拘束する期間に相当する。
上記膨張展開期間の前期では、エアバッグ44を従来のサイドエアバッグ装置と同程度の速い展開速度V2で膨張展開させる一方、上記膨張展開期間の後期では、エアバッグ44を従来のサイドエアバッグ装置よりも遅い展開速度V1で膨張展開させるために、次の構成が新たに採用されている。
図4に示すように、エアバッグモジュール43は、前述した基本構成に加え、長尺部材として、布帛、テープ等によって形成されたベルト56を備えている。ベルト56は、膨張展開を完了したエアバッグ44を取り囲むことのできる長さ、より詳しくは、後述する冗長部57が引き伸ばされた状態で、膨張展開を完了したエアバッグ44の周長よりも若干短い長さを有している。この長さは、収納用形態のエアバッグ44を取り囲むために必要な長さよりも長い。そして、ベルト56は、収納用形態にされたエアバッグ44の外部において、同エアバッグ44を略水平方向に取り囲んだ状態で配置されている。なお、ベルト56の長さは、膨張展開を完了したエアバッグ44の周長と同じであってもよいし、長くてもよい。
ベルト56の一方(図4の下方)の端部56Aには上述したリテーナ49のボルト53が挿通されており、同端部56Aがボルト53及びナット63によってサイドフレーム部28に固定されている。このようにして、ベルト56の端部56Aが車両用シート22に固定されている。
図4及び図5(A)に示すように、ベルト56の他方(図4の上方)の端部56Bは、連結手段によって車両用シート22に間接的に連結されている。連結手段は、アンカー部材71及び拘束部材72を備えて構成されている。アンカー部材71はピン等によって形成されており、上記端部56Bに固定されている。拘束部材72は、通電に伴い変形する形状記憶合金によって形成され、上記ベルト56の端部56Aに固定されている。
拘束部材72は、これに通電されないときには、図5(A)に示すように、上記アンカー部材71の周りで略円環状となり、同アンカー部材71を把持する。この把持により、連結手段は、端部56Bが、アンカー部材71、拘束部材72、端部56A、ボルト53及びナット63を介してサイドフレーム部28に連結された状態(連結状態)となる。ベルト56の端部56Aは、常に車両用シート(サイドフレーム部28)に固定されていることから、この連結状態では、ベルト56がその両方の端部56A,56Bにおいて車両用シート22に固定された状態となる。
また、拘束部材72は、これに通電されたときには、図5(B)に示すように、上記アンカー部材71の周りで略円弧状に変形する。この変形により、拘束部材72のアンカー部材71を把持する力が弱まり、連結手段は、上記拘束部材72によるアンカー部材71の連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。この連結解除状態では、ベルト56は、一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となる。
そして、上記連結手段では、後述する制御装置84により拘束部材72に対する通電が制御されることで、上記連結状態及び連結解除状態が切り替えられる。
ベルト56について、収納用形態の上記エアバッグ44の取り囲みに関わらない余剰部分(以下「冗長部57」という)は、たるませられている。冗長部57は、第1冗長部58及び第2冗長部60からなる。ここでは、第1冗長部58及び第2冗長部60がそれぞれ複数ずつ設けられている。
図4及び図9(A)の少なくとも一方に示すように、各第1冗長部58は、膨張展開期間の後期においてエアバッグ44の展開速度を規制して低下させるためのものであり、いずれも同一の構成を有している。図9(B)及び図10の少なくとも一方に示すように、各第1冗長部58は、ベルト56に対し、その長さ方向に略直交する方向(図10の上下方向)に延びる折り線59を偶数本設定し、同ベルト56をそれらの折り線59に沿って折り重ねることによって形成されている。第1実施形態では、第1冗長部58毎に2本の折り線59,59が設定されており、両折り線59,59に沿ってベルト56が交互に折り方向を変えながら折り重ねられている。折り線59が2本であることから、各第1冗長部58では、各折り線59に接する3つの折り片61が形成され、これらの折り片61が重ね合わされている。
各第1冗長部58には、これをたるんだ状態に保持し、エアバッグ44の膨張に伴い保持を解除する保持部62が設けられている。ベルト56の一部を折り重ねて第1冗長部58を構成した第1実施形態では、各第1冗長部58に、3つの折り片61を重ね合わせた状態に保持する保持部62が設けられている。ここでは、各保持部62は、3つの折り片61を、縫製糸によってベルト56の長さ方向に略直交する方向(図10の上下方向)に縫合することによって形成されている。この構成では、縫製糸による縫合部分がエアバッグ44の膨張展開に伴い破断されることで、保持部62による保持が解除される。
また、第1冗長部58毎の保持部62が、その第1冗長部58における3つの折り片61を重ね合わせた状態に保持する強度を保持強度と定義すると、各第1冗長部58では3つの折り片61が、他の第1冗長部58とは異なる保持強度で縫合されている。こうした縫合により、保持強度は第1冗長部58毎に異なっている。
(i)第1冗長部58毎に強度の異なる複数種類の縫製糸を用いて折り片61の縫合を行う。
(ii)第1冗長部58毎に太さの異なる複数の縫製糸を用いて折り片61の縫合を行う。この場合、保持強度は縫製糸が太くなるに従い高くなる。
(iii )第1冗長部58毎に縫合の長さを異ならせる。この場合、保持強度は、縫合の長さが長くなるに従い高くなる。
(iv)第1冗長部58毎に縫合の縫い間隔を異ならせる。一般には、保持強度は、縫い間隔が狭くなるに従い高くなる。
(v)保持部62の数を第1冗長部58毎に異ならせる。この場合、第1冗長部58毎の保持強度は保持部62の数が多くなるに従い高くなる。
一方、各第2冗長部60は、膨張展開期間の前期において、エアバッグ44の速い展開速度での膨張展開を許容するためのものであり、ベルト56において、上記保持部62による保持が解除される前にエアバッグ44の膨張展開に伴い引き伸ばされる箇所である。
そして、上述した複数の第1冗長部58、第1冗長部58毎の保持部62、及び複数の第2冗長部60によって展開速度低下手段が構成されている。この展開速度低下手段では、ベルト56の素材、長さ、幅や、第1冗長部58の数、保持強度等が、次の条件を満たすように設定されている。
条件1:エアバッグ44の上記膨張展開期間の前期には、保持部62がエアバッグ44の膨張展開の妨げとならないこと。
条件2:エアバッグ44の上記膨張展開期間の後期には、保持部62がエアバッグ44の膨張展開の妨げとなって展開速度を低下させ、従来のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグと同程度のタイミングで膨張展開を完了させること。同程度のタイミングとは、側突の発生から所定時間が経過した時期(図12のタイミングt6参照)を指す。
図3に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュール43のほかに、衝撃センサ81、側突予測用センサ82、乗員検出用カメラ83、及び制御装置84を備えている。
衝撃センサ81は、側突検出手段として用いられているものであり、車両のボディサイド部21等に設けられている。衝撃センサ81は、車両に対し側方から所定値以上の衝撃が加わった場合(側突発生時)に、そのことを検出する。
側突予測用センサ82は、側突予測手段の一部及び側突速度検出手段として用いられているものであり、ミリ波レーダ等によって構成されている。ミリ波レーダは、数ミリメートルの波長を有する電波(ミリ波)を車両(自車)の側方へ出射することで、同方向に位置する対象物、主として他の車両(他車)から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差等を基に、側突対象物の位置や車両(自車)との相対速度を測定する。
乗員検出用カメラ83は、乗員拘束領域Z1における乗員Pの身体の一部の有無を検出する乗員検出手段、及び車両用シート22における乗員Pの着座位置を検出する着座位置検出手段として用いられているものであり、CCDカメラ等によって構成されている。乗員拘束領域Z1は、上述したように車両のボディサイド部21及び車両用シート22間においてエアバッグ44が膨張展開する領域である。乗員検出用カメラ83は、この乗員拘束領域Z1と、車両用シート22において乗員Pが着座する領域とを撮像する。
制御装置84は、インフレータ制御手段、側突予測手段の一部、作動開始時期変更手段、及び展開速度低下手段の一部として機能するものであり、マイクロコンピュータを中心として構成されており、上記各種センサ81〜83からの信号に基づき各種演算処理を行う。例えば、乗員検出用カメラ83による撮像データの画像処理を行い、乗員Pの身体の一部がエアバッグ44による乗員拘束領域Z1にあるかどうかを検出するとともに、乗員Pが車両用シート22の正規位置で着座しているかどうかを検出する。正規位置とは、乗員Pがシートクッション23の中央部分に腰掛けていて、シートバック24の中央部分にもたれているときの乗員Pの位置である。
制御装置84は、これらの検出結果と、衝撃センサ81及び側突予測用センサ82による検出結果とに基づき、車両の側突を予測するとともに、その予測結果に応じインフレータ48及び拘束部材72の各作動を制御する。図11は、制御装置84による制御内容の概略を示している。図11中の「着座姿勢」は、車両用シート22に着座している乗員Pの姿勢を意味する。
「着座姿勢」中の「特定姿勢」は、乗員Pが身体の一部を乗員拘束領域Z1に位置させた状態で着座しているときのその乗員Pの着座姿勢である。具体的には、乗員検出用カメラ83による撮像データの画像処理の結果、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1にあることが検出される場合には、乗員Pが車両用シート22の正規位置で着座しているかどうかに拘わらず、乗員Pの着座姿勢が「特定姿勢」とされる。
また、「着座姿勢」中の「正規姿勢」は、乗員Pが身体の一部を乗員拘束領域Z1に位置させずに着座しているときのその乗員Pの着座姿勢である。具体的には、乗員検出用カメラ83による撮像データの画像処理の結果、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1にないことが検出され、かつ乗員Pが車両用シート22の上記正規位置に着座していることが検出された場合、乗員Pの着座姿勢は「正規姿勢」とされる。
図11中の「側突速度」は、上述したように車両(自車)と側突対象物(特に、他車)との側突直前の相対速度のことである。ここでは、側突速度について起こり得る範囲を、低速、中速、高速の3つに分けている。
図11中の作動開始時期は、制御装置84からの着火指令信号に応じてインフレータ48が作動を開始(着火してガスを噴出し始める)する時期のことである。ここでは、作動開始時期として、「通常」と「早期」とが設定されている。衝撃センサ81の検出結果に基づき、実際の側突の発生直後にインフレータ48に作動を開始させる場合の作動開始時期が「通常」になる。これに対し、側突予測用センサ82の検出結果に基づき側突を予測し、実際の側突に先立ちインフレータ48に作動を開始させる場合の作動開始時期が「早期」になる。
さらに、図11中の展開速度は、ガスによってエアバッグ44が膨張展開する際の速度である。ここでは、展開速度として「通常」と「低速」とが設定されている。ベルト56によってエアバッグ44の膨張展開が妨げられない場合の展開速度が「通常」になる。これに対し、ベルト56によってエアバッグ44の膨張展開が妨げられる場合の展開速度が「低速」になる。この「低速」は、展開速度の絶対値が低いという意味での低速ではなく、上記「通常」よりも遅いという意味での低速である。
図11では、(I)着座姿勢が「特定姿勢」である場合、(II)着座姿勢が「正規姿勢」であり、かつ側突速度が「中・高速」である場合、(III )着座姿勢が「正規姿勢」であり、かつ側突速度が「低速」である場合とで、作動開始時期及び展開速度の各制御態様が異ならせられている。
次に、図12、図19及び図20を参照しながら、制御装置84による制御の内容について、上記3つの状況(I)〜(III )に分けて説明する。
なお、図12、図19及び図20は、エアバッグ44の膨張初期における膨張度の時間変化を模式的に示している。ここで、膨張度は、エアバッグ44の膨張がどれだけ進行しているかを示す指標である。この膨張度は、エアバッグ44が膨張していないとき、すなわち収納用形態にあるときに「0%」となる。また、膨張度は、エアバッグ44が採り得る最大の大きさまで膨張したとき、すなわち、膨張を完了して乗員Pを拘束したときに「100%」となる。さらに、単位時間当たりの膨張度の変化量が展開速度に相当する。
状況(I):着座姿勢が「特定姿勢」である場合
制御装置84は、車両の走行中、又は停車中、側突予測用センサ82によって検出された位置や相対速度に基づき、車両の側方の状況(特に側突の可能性)を監視している。
着座姿勢が「特定姿勢」である場合には、この監視の結果、図12のタイミングt4での側突に先立ちタイミングt1で側突が予測されると、側突速度に拘わらず、インフレータ48の作動開始時期を「早期」にし、エアバッグ44の展開速度を「低速」にする。
より詳しくは、インフレータ48の作動開始時期を「早期」にするために、実際の側突の発生(タイミングt4)よりも前のタイミングt2でインフレータ48に着火指令信号を出力する。この着火指令信号によりインフレータ48で着火が行われ、ガス発生剤の燃焼反応によって高温高圧のガスが生成される。このガスは、ガス噴出口51から、リテーナ49の窓部52を通じて噴出される(図6参照)。このガスによりエアバッグ44が膨張を開始する。
また、エアバッグ44の展開速度を「低速」にするために、拘束部材72への通電を停止し続ける。このとき拘束部材72は、図5(A)に示すように、アンカー部材71の周りを囲んで略円環状となっていて、同アンカー部材71を把持し続ける。この把持により、連結手段が連結状態を維持し、アンカー部材71が拘束され続ける。
連結手段が連結状態にされているときにエアバッグ44が膨張を開始すると、ベルト56はエアバッグ44の膨張展開に伴い引っ張られる。このベルト56によってエアバッグ44の膨張展開が影響を受け、同エアバッグ44は膨張展開期間の前期と後期とで異なる態様にて膨張展開する。そのため、ここでは、エアバッグ44の膨張展開の態様を、前期と後期とに分けて説明する。
<膨張展開期間の前期>
図13に示すように、膨張展開期間の前期には、上記ガスによってエアバッグ44が膨張を開始し、エアバッグ44を結束していた結束テープ55(図8(B))が破断される。エアバッグ44が折り状態を解消しながら収納空間41内で車両前方へ膨張展開する。
エアバッグ44の外部に配置されているベルト56は、上記のように膨張展開するエアバッグ44によって前方へ引っ張られる。ベルト56には、上述したように第1冗長部58及び第2冗長部60を有する冗長部57が設定されている。このことから、エアバッグ44が膨張展開すると、各第1冗長部58の3つの折り片61が、保持部62によって重ね合わされた状態に保持されたまま前方へ引っ張られる。この段階では、各第2冗長部60は引き伸ばされるが、未だ緊張せずたるんだ状態となっている。そのため、ベルト56がエアバッグ44の膨張展開の妨げとなることはほとんどない。その結果、エアバッグ44は、タイミングt2以降、従来のサイドエアバッグ装置と同程度の展開速度V2で膨張展開を進行する。なお、展開速度V2は、それぞれのタイミングの間での展開速度を平均的な速度として表したものである。
<膨張展開期間の後期>
エアバッグ44の収納空間41での膨張展開が進行する過程で、そのエアバッグ44はサイドサポート部25を前方へ押圧するようになる。その後も、膨張展開が進行することで、タイミングt3には上記押圧によってサイドサポート部25が前方へ膨らみ始める(図14参照)。
この時点(タイミングt3)では、膨張展開するエアバッグ44によりベルト56が引っ張られて、各第2冗長部60が全て緊張する(たるみのない状態となる)。これに対し各第1冗長部58では、保持部62により各折り片61を折り重ねられた状態に保持されている。そのため、ベルト56は全体として緊張状態となる。そして、上記保持部62の保持しようとする力が、エアバッグ44の膨張展開の抵抗となる。この抵抗により、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部が消費され、タイミングt3以降、エアバッグ44の展開速度の低下が始まる。
一方、上記膨張が進行するに従い、エアバッグ44の一部がスリット42内に進入していく。エアバッグ44は、スリット42内に進入した後も膨張展開し続けようとする。そのため、エアバッグ44の膨張の進行に伴いサイドサポート部25が、図15に示すように破断予定部において破断される。すなわち、スリット42と縫合部分34との間におけるシートパッド27の薄肉部分が破断されるとともに、同縫合部分34における縫合状態が解除されて開口64が生ずる。エアバッグ44は破断により生じた上記開口64を拡大させつつ、その開口64を通じてシートバック24から飛び出す。このとき、サイドサポート部25において開口64よりも車内側の部分は、縫合部分36を支点として前方へ開く。また、サイドサポート部25において開口64よりも後ろ側の部分は、シートパッド27の側部に設けられた切欠き65を支点として後方へ開く。
縫合部分34等の破断に伴い生じた開口64から飛び出したエアバッグ44は、図16に示すようにシートバック24から前方へ膨張展開する。その後もエアバッグ44の膨張展開は続く。
ここで、ベルト56に第1冗長部58及び保持部62が複数組設けられていること、及び第1冗長部58毎に保持部62の保持強度が異なっていることから、タイミングt3〜t6の期間においては、保持強度の最も低い保持部62が最初に破断される。エアバッグ44の膨張展開のエネルギーがこの保持部62の破断に消費され、エアバッグ44の展開速度が低下する。
上記のように保持部62の破断された第1冗長部58では、3つの折り片61を折り重ねた状態に保持するものがなくなり、新たなたるみ部分を生ずる。しかし、エアバッグ44が引き続き膨張展開していることから、各折り片61の折り状態が解消されて第1冗長部58が引き伸ばされ、再びベルト56が緊張する。ベルト56では、残った保持部62が各第1冗長部58を折り重ねられた状態に保持しようとする。保持強度の2番目に低い保持部62の破断のためにエアバッグ44の膨張展開のエネルギーが消費され、エアバッグ44の展開速度が低下させられる。
以降、保持部62が保持強度の低いものから順に破断されていき、その破断毎にエアバッグ44の膨張展開のエネルギーが消費され、エアバッグ44の展開速度が低下させられる。その結果、タイミングt3〜t6の期間には、エアバッグ44は、上述した従来のサイドエアバッグ装置よりも遅い展開速度V1で膨張展開することとなる。なお、この展開速度V1は、上記展開速度V2と同様、それぞれのタイミングの間での展開速度を平均的な速度として表したものである。
エアバッグ44は、タイミングt6で図17に示すように膨張を完了する。この膨張展開したエアバッグ44が、乗員P、特に腰部Ppから胸部Ptにかけての広い箇所と、車室内に進入してくるボディサイド部21との間に介在し、ボディサイド部21を通じて乗員Pへ伝わる側方からの衝撃を緩和する。このときには、全ての第1冗長部58における保持部62が破断されて、エアバッグ44によってベルト56が緊張状態にされる。
このように、エアバッグ44はタイミングt3以降、展開速度を低下させているにも拘わらず、従来のサイドエアバッグ装置と同様のタイミングt6で膨張を完了させるようにしている。これは、エアバッグ44の膨張の開始時期を、従来のサイドエアバッグ装置における膨張開始時期よりも早めたことにより可能となったものである。
すなわち、エアバッグ44の膨張展開を特定のタイミングt6で終了させるという条件のもとでは、エアバッグ44の膨張展開に関わることのできる時間(展開時間)は、膨張展開の開始時期に応じて異なってくる。開始時期が早められると、それに伴って膨張展開時間が長くなる。図12に示すように、実際の側突が発生した直後のタイミングt5を膨張展開の開始時期とすると、タイミングt5〜t6の期間が展開時間T2となる。これに対し、側突を予測し、実際の側突よりも前のタイミングt2を膨張展開の開始時期とすると、タイミングt2〜t6の期間が展開時間T1となる。両展開時間T1,T2の差分(=T1−T2)だけ、膨張展開に要する時間に余裕が生じ、展開速度を低下させることが可能となる。
この点を考慮し、第1実施形態では、エアバッグ44がサイドサポート部25を前方へ膨らませ始めた後、車両用シート22の外部で膨張展開して膨張を完了するまでの期間(タイミングt3〜t6)にわたり、エアバッグ44の展開速度が、側突後にインフレータ48の作動を開始させたときの展開速度V2よりも低下させられる。この展開速度の低下により、膨張展開するエアバッグ44が反力として乗員Pに与えるエネルギーが低下する。
なお、エアバッグ44が車両用シート22の内部で膨張展開するとき、より詳細には、サイドサポート部25を前方へ膨らませ始めるまでの期間(タイミングt2〜t3)には、上述した展開速度の低下が行われない。この期間には、エアバッグ44の膨張展開が、側突後にインフレータ48の作動を開始させたときと同様の展開速度V2で素早く行われて、上記タイミングt3〜t6での膨張展開に備えられる。この期間(タイミングt2〜t3)には、上述したようにサイドサポート部25が膨らませられないため、上記のようにエアバッグ44が素早く膨張展開してもサイドサポート部25によって乗員が押されることはない。
また、図12では、実際の側突の発生時(タイミングt4)よりも前のタイミングt3でエアバッグ44の展開速度がV2からV1に切り替えられる場合を例に採って説明したが、同タイミングt4よりも後に展開速度が切替えられてもよい。ただし、乗員Pの身体の一部がエアバッグ44の膨張展開する領域に位置している場合に、膨張展開するエアバッグ44が反力として乗員Pに与えるエネルギーを小さくする観点からは、この切替えタイミングは、タイミングt6よりも前であって、できるだけ早い方がよい。具体的には、切替えタイミングは、タイミングt5よりも前が好ましく、タイミングt4よりも前がより好ましい。第1実施形態のように、側突が発生する前のタイミングt3から遅い展開速度V1でエアバッグ44を膨張展開させ始めることが最も好ましい。エアバッグ44が乗員Pを拘束するよりも前に、エアバッグ44の展開速度を確実に遅くすることができる。
状況(II):着座姿勢が「正規姿勢」であり、かつ側突速度が「中・高速」である場合
この場合、図19のタイミングt4での側突に先立ちタイミングt1で側突が予測されると、インフレータ48の作動開始時期を「早期」にし、エアバッグ44の展開速度を「通常」にする。
より詳しくは、インフレータ48の作動開始時期を「早期」にするために、上述した状況(I)と同様、実際の側突の発生(タイミングt4)よりも前のタイミングt2でインフレータ48に着火指令信号を出力する。この着火指令信号によりインフレータ48で着火が行われ、高温高圧のガスが生成・噴出される。このガスによりエアバッグ44が膨張を開始する。
また、エアバッグ44の展開速度を「通常」にするために、拘束部材72への通電を実行する。この通電により、拘束部材72が図5(B)に示すように上記アンカー部材71の周りで略円弧状に変形する。この変形により、拘束部材72のアンカー部材71を把持する力が弱まり、連結手段は、上記拘束部材72によるアンカー部材71の連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。この連結解除状態では、アンカー部材71が拘束部材72による把持から開放されるため、ベルト56は、一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となり、エアバッグ44の膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このため、エアバッグ44はガスの供給開始直後には、収納空間41で膨張展開する。エアバッグ44は車両用シート22を破断させ、一部を収納空間41に残した状態で同車両用シート22の外部へ飛び出す。エアバッグ44は、乗員拘束領域Z1(図2参照)において、同車両用シート22から前方へ向けて膨張展開する。この膨張展開したエアバッグ44は乗員Pを直接押して拘束する。
その結果、エアバッグ44は図19において特性線L1で示すように、タイミングt2以降、従来のサイドエアバッグ装置と同程度の速い展開速度V2で膨張展開する。エアバッグ44は、側突を検出してからインフレータ48を作動させてエアバッグ44の膨張展開を開始させた場合よりも早いタイミングt6Aで膨張展開を終了する。
状況(III ):着座姿勢が「正規姿勢」であり、かつ側突速度が「低速」である場合
この場合、インフレータ48の作動開始時期を「通常」にし、エアバッグ44の展開速度を「通常」にする。
より詳しくは、インフレータ48の作動開始時期を「通常」にするために、図20に示すように側突の予測の有無に関係なく、側突の発生が衝撃センサ81によってタイミングt4で検出されると、その直後のタイミングt5でインフレータ48に着火指令信号を出力する。この着火指令信号によりインフレータ48で着火が行われ、高温高圧のガスが生成・噴出される。このガスによりエアバッグ44が膨張を開始する。
また、エアバッグ44の展開速度を「通常」にするために、上述した状況(II)と同様、拘束部材72への通電を実行する。この通電により拘束部材72が変形し、連結手段が、上記拘束部材72によるアンカー部材71の連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。ベルト56は、一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となり、エアバッグ44の膨張展開を妨げて、展開速度を低下させる機能を発揮しなくなる。
このため、エアバッグ44はガスの供給開始直後には、収納空間41で膨張展開する。エアバッグ44は車両用シート22を破断させ、一部を収納空間41に残した状態で同車両用シート22の外部へ飛び出す。エアバッグ44は、乗員拘束領域Z1(図2参照)において、同車両用シート22から前方へ向けて膨張展開する。この膨張展開したエアバッグ44は乗員Pを直接押して拘束する。
その結果、エアバッグ44は、図20において特性線L1で示すように、タイミングt5以降、従来のサイドエアバッグ装置と同程度の速い展開速度V2で膨張展開し、従来のサイドエアバッグ装置と同様にタイミングt6で膨張展開を終了する。
上記のように、乗員Pが「正規姿勢」で着座していて側突速度が「低速」である場合に、インフレータ48の作動開始時期を「通常」にするのは、次の点を考慮したものである。
ガスにより膨張展開するエアバッグ44の内圧は時間の経過とともに変化する。内圧は、エアバッグ44の膨張展開の初期には上昇し、膨張展開の完了時に最大となり、その後に下降に転ずる特性を示す。エアバッグ44による乗員の拘束は、内圧が最大となったときに行われることが望ましい。
一方、側突の発生後、エアバッグ44によって乗員Pを拘束する望ましい拘束タイミングは、図21に示すように車両と側突対象物との相対速度(側突速度)に応じて異なる。この望ましい拘束タイミングは、側突速度が速いとき(例えば、高速時)には早いタイミングt11となり、側突速度が遅いときには遅いタイミングt12となる。
また、インフレータ48の作動開始時期が早められると、図21において、特性線L3で示すように、エアバッグ44の膨張展開の期間が早い側へシフトする。これに伴い、エアバッグ44の内圧PIが最大値PImax となる時期も早くなる。
従って、側突速度が低速であるときにインフレータ48の作動開始時期が早められると、エアバッグ44の内圧PIが、その側突速度に対応した拘束タイミング(タイミングt12)よりも早く最大値PImax になるおそれがある。この場合には、内圧PIが最大値PImax よりも低い内圧PI1となったエアバッグ44によって乗員Pを拘束することとなり、乗員Pの保護性能が充分に発揮されない懸念がある。
そこで、第1実施形態では上記のように、乗員Pが正規姿勢で着座しており、車両と側突対象物との側突直前の側突速度が低速であると、インフレータ48の作動開始時期の変更が禁止される。ここでの正規姿勢は、前述したように、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1になく、かつ乗員Pが車両用シート22の正規位置に着座しているときの乗員Pの着座姿勢である。そして、この場合、インフレータ48の作動開始時期は、車両の側突が衝撃センサ81によって検出された場合のインフレータ48の作動開始時期(タイミングt5)と同じとなる。これに伴い、エアバッグ44の膨張展開の期間も、車両の側突が衝撃センサ81によって検出された場合と同じになる。その結果、エアバッグ44の内圧PIは、図21において特性線L4で示すように、車両の側突が衝撃センサ81によって検出された場合と同様に変化する。その結果、エアバッグ44の内圧PIが最大値PImax となるタイミングが、低速時の理想的な拘束タイミング(タイミングt12)に近づく。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)車両の側方の状況を監視するとともに、エアバッグ44の乗員拘束領域Z1における乗員Pの身体の一部の有無を検出する。側突が予測され、かつ乗員Pの身体の一部がエアバッグ44の乗員拘束領域Z1にあることが検出されること(状況(I))を実行条件とする。そして、この実行条件が満たされた状況(I)になると、インフレータ48の作動開始時期を、衝撃センサ81による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める。さらに、車両用シート22の外部では、側突後にインフレータ48の作動を開始させたときの展開速度V2よりも低い展開速度V1にてエアバッグ44を膨張展開させるようにしている。そのため、膨張展開するエアバッグ44が反力として乗員Pに与えるエネルギーを低下させ、乗員Pを好適に拘束して乗員保護性能の向上を図ることができる。
また、乗員Pが正規姿勢で着座しているとき(状況(II),(III ))には、側突後にインフレータ48の作動を開始させたときと同様に速い展開速度V2にてエアバッグ44を膨張展開させるようにしている。そのため、正規姿勢で着座している乗員Pについては、速く膨張展開するエアバッグ44によって確実に衝撃から保護することができる。
(2)上記状況(I)での効果は、エアバッグ44が車両用シート22から飛び出た後の期間を上記膨張展開期間の後期とした場合であっても十分に得られる。第1実施形態では、さらにエアバッグ44が車両用シート22内で膨張し、同車両用シート22を前方へ膨らませ始めてから同車両用シート22の外部へ出るまでの期間についても、上記膨張展開期間の後期に含ませている。そのため、エアバッグ44が車両用シート22を介して乗員Pを間接的に押圧するときにも、そのサイドサポート部25を介して乗員Pに与えるエネルギーを低下させ、乗員Pを一層好適に拘束して、乗員保護性能のさらなる向上を図ることができる。
(3)上記状況(I)における膨張展開期間の前期には、エアバッグ44の膨張展開を、側突後にインフレータ48の作動を開始させたときと同様の展開速度V2で行わせるようにしている。そのため、車両用シート22の内部ではエアバッグ44を素早く膨張展開させ、上述した車両用シート22外部でのエアバッグ44の膨張展開に備えることができる。なお、膨張展開期間の前期には、車両用シート22がエアバッグ44によっては前方へ膨らませられない。このため、エアバッグ44が車両用シート22を通じて乗員Pを間接的に押す現象は起こらず、上記のようにエアバッグ44が素早く膨張展開させられても、乗員保護性能の低下につながるような問題は生じない。
(4)車両(自車)と側突対象物との側突直前の相対速度(側突速度)を検出する。乗員Pが正規姿勢で着座している状況で側突が予測され、かつ検出された側突速度が中・高速であるとき(状況(II))には、インフレータ48の作動開始時期を、従来のサイドエアバッグ装置におけるインフレータ48の作動開始時期よりも早めている(図19参照)。そのため、エアバッグ44による乗員Pの拘束をより早い時期から開始させ、乗員保護性能の向上を図ることができる。
(5)車両(自車)と側突対象物との側突直前の相対速度(側突速度)を検出するとともに、車両用シート22における乗員Pの着座位置を検出する。側突が予測されるときに、乗員Pが正規姿勢で着座していることが検出され、かつ側突速度が低速である場合には、インフレータ48の作動開始時期の変更を禁止し、車両の側突が衝撃センサ81によって検出された場合と同じにすることで、エアバッグ44の膨張展開の期間を、車両の側突が検出された場合と同じにしている(図20、図21参照)。
そのため、エアバッグ44の内圧PIが最大値PImax となる時期を、低い側突速度に対応した望ましい拘束タイミング(タイミングt12)に近づけることが可能となる。側突速度の低いときであっても、エアバッグ44の内圧PIが高いときに乗員Pを適正に拘束することができる。
(6)エアバッグ44が収納用形態にあるときにはたるんだ状態となる冗長部57を有するベルト56を長尺部材として用い、その一方の端部56Aを車両用シート(サイドフレーム部28)に固定している。また、アンカー部材71及び拘束部材72を備える連結手段を設け、この連結手段により、ベルト56の他方の端部56Bを車両用シート(サイドフレーム部28)に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成している。さらに、冗長部57の第1冗長部58毎に保持部62を設け、この保持部62により、第1冗長部58を折り重ねられた状態に保持し、エアバッグ44の膨張展開に伴い上記保持を解除するように構成している。そのため、上記状況(I)では、連結手段を連結状態に保持することで、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部を、保持部62による保持の解除(破断)に消費させ、エアバッグ44の展開速度を低速(展開速度V1)にすることができる。また、上記状況(II),(III )では、連結手段を連結解除状態に切り替えることで、ベルト56がエアバッグ44の膨張展開の妨げとならないようにし、エアバッグ44の展開速度を通常(展開速度V2)にすることができる。
(7)第1冗長部58及び保持部62の組み合わせを複数用い、第1冗長部58毎に保持部62の保持強度を異ならせている。そのため、エアバッグ44の膨張に伴い、保持強度の低い保持部62を有する第1冗長部58から順に、その第1冗長部58による保持を解除させることができる。各第1冗長部58において保持部62による保持を解除させる毎にエアバッグ44の膨張展開のエネルギーを消費させて、エアバッグ44の展開速度を所定の期間(時間)にわたり低下させ続けることが可能となる。
(8)ベルト56をエアバッグ44の外部に配置している。そのため、ベルト56によって、エアバッグ44の車幅方向の膨張を規制し、同方向への過剰な膨張を抑制することができる。
第1実施形態は、次のように変更されて実施されてもよい。
(a)エアバッグ44が車両用シート22の外部で膨張展開する期間においてのみ展開速度を低下させるようにしてもよい。この場合、エアバッグ44が収納空間41から車両用シート22の外部へ出る直前になっても、第2冗長部60が未だたるんだ状態になっていてもよい。
また、エアバッグ44が車両用シート22の内部(収納空間41)で膨張展開する期間についても展開速度を低下させるようにしてもよい。この場合、車両用シート22の内部における速い展開速度V2での膨張展開を実現するための第2冗長部60を割愛してもよい。
(b)各第1冗長部58における保持部を、縫製糸とは異なる手段によって形成してもよい。例えば、接着剤を用い、この接着剤によって各第1冗長部58における隣合う折り片61を相互に接着してもよい。このようにしても、各第1冗長部58を折り重ねられた状態に保持することができる。
(c)保持部62を、スナップフィット、スナップボタン、スナップホック等、スナップ式の一対の締結部品によって構成してもよい。この場合、両締結部品を、第1冗長部58において相対向する折り片61に設ける。このようにすると、両締結部品を相互に結合させることにより、第1冗長部58が折り重ねられた状態に保持される。また、エアバッグ44の膨張展開に伴い、両締結部品が分離されることにより、上記保持が解除される。
(d)ベルト56における冗長部57の数、各冗長部57における第1冗長部58の数を変更してもよい。
(e)全ての第1冗長部58について、保持部62の保持強度が相互に異なっていなくてもよい。複数の第1冗長部58を複数のグループに分け、グループ毎に保持部62の保持強度を異ならせてもよい。また、全ての第1冗長部58について、保持部62の保持強度を同一としてもよい。
(f)保持部62の保持強度を第1冗長部58間で異ならせる場合、保持強度の高低と、第1冗長部58の位置との間に要求される関係は特にない。従って、どの位置の第1冗長部58において保持部62の保持強度を高くし、どの位置の第1冗長部58において保持部62の保持強度を低くするかは、任意に設定してもよい。
(g)ベルト56の端部56Bを車両用シート22に連結する連結手段を、第1実施形態とは異なる構成によって実現してもよい。その一例を図22(A),(B)に示す。この変形例では、連結手段は、アンカー部材71及び拘束部材72を備えて構成されている。アンカー部材71は、略四角箱状をなしており、ベルト56の端部56Bに固定されている。アンカー部材71の相対向する側壁には係止孔91がそれぞれ設けられ、また、アンカー部材71の底壁には連通孔92が設けられている。拘束部材72は、通電に伴い変形する形状記憶合金によって形成されている。拘束部材72の大部分はアンカー部材71内に配置されおり、一部分が上記連通孔92において上記底壁を貫通し、ベルト56の端部56Aに固定されている。拘束部材72は、アンカー部材71内で2つの係止片93に分かれている。
拘束部材72に通電がなされないときには、図22(A)に示すように、各係止片93が屈曲状態となって、対向する係止孔91内に入り込んでいる。この係止孔91に入り込んだ係止片93によって、アンカー部材71が拘束部材72に連結される。連結手段は、端部56Bが、アンカー部材71、拘束部材72、端部56A、ボルト53及びナット63を介してサイドフレーム部28に連結された状態(連結状態)となる。ベルト56の端部56Aは、常に車両用シート(サイドフレーム部28)に固定されていることから、この連結状態では、ベルト56がその両方の端部56A,56Bにおいて車両用シート22に固定された状態となる。
また、拘束部材72に通電されたときには、図22(B)に示すように、各係止片93がアンカー部材71の内側へ折れ曲がり、それまで入り込んでいた係止孔91から抜け出る。この変形により、拘束部材72のアンカー部材71に係止する力が消失し、連結手段は、上記拘束部材72によるアンカー部材71の連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。この連結解除状態では、ベルト56は、一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となる。
そして、上記連結手段では、制御装置84により拘束部材72に対する通電が制御されることで、上記連結状態及び連結解除状態が切り替えられる。
(h)連結手段を、第1実施形態及び上記(g)とは異なる構成によって実現してもよい。その一例を図23(A),(B)に示す。この変形例では、連結手段は、ピン94及びアクチュエータを備えている。ベルト56の端部56Bには、ピン94の周りに緩く巻き付けられてなる巻付け部96が形成されている。図23(A)中の太い破線は、巻付け部96を形成するための縫製糸による縫合部97を示している。ピン94の両端部は巻付け部96から露出している。一方、車両用シート22、例えばサイドフレーム部28等には一対の軸受98,98が設けられている。そして、上記ピン94の両端部がこれらの軸受98,98に軸方向への移動可能に支持されている。
アクチュエータは、巻付け部96からピン94を押し出すためのものであり、ここでは、マイクロガスジェネレータ(以下「MGG」という)95が用いられている。MGG95は、シリンダ95Aと、そのシリンダ95Aに摺動可能に収容されたピストン95Bとを備え、所定の駆動信号の入力に応じ点火してガスを発生し、ピストン95Bをシリンダ95Aから突出させるアクチュエータである。そして、MGG95においてシリンダ95Aから突出するピストン95Bを利用し、そのピストン95Bによってピン94を押圧し、巻付け部96からピン94を押し出すようにしている。
上記構成を有する連結手段にあって、MGG95が作動していないとき(ピストン95Bが後退しているとき)には、ピン94は、その大部分が巻付け部96内に位置し、両端部において両軸受98に支持されている。この支持により、端部56Bは、ピン94、及び軸受98を介して車両用シート22(サイドフレーム部28)に連結された状態(連結状態)となる。ベルト56の端部56Aは、常に車両用シート(サイドフレーム部28)に固定されていることから、この連結状態では、ベルト56がその両方の端部56A,56Bにおいて車両用シート22に固定された状態となる。
また、MGG95が駆動信号の入力に応じて点火してガスを発生すると、ピストン95Bがシリンダ95Aから突出してピン94を叩き、これを巻付け部96から押し出す。この押し出しにより、ピン94の端部56Bを軸受98に支持する力が消失し、連結手段は、上記ピン94による端部56Bの連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。この連結解除状態では、ベルト56は、一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となる。
そして、上記連結手段では、制御装置84によりMGG95に対する駆動信号の出力が制御されることで、上記連結状態及び連結解除状態が切り替えられる。
なお、上記MGG95として、ガスによりピストン95Bをシリンダ95Aから飛び出させる構成を有するものを用い、このMGG95を連結手段としてもよい。この場合、ピストン95Bとして細長いもの、すなわち、図23(A)におけるピン94をピストン95Bに一体にしたものを用いる。ピストン95Bを巻付け部96に挿通し、軸受98によって軸方向への移動可能に支持する。なお、この場合、軸受98は巻付け部96の両側に配置されてもよいし、巻付け部96を挟んでMGG95の反対側(図23(A)の右側)にのみ配置されてもよい。
上記のように構成された連結手段にあって、MGG95が作動していないときには、ピストン95Bの一部が巻付け部96内に位置し、軸受98によって支持される。この支持により、端部56Bは、ピストン95B及び軸受98を介して車両用シート22(サイドフレーム部28)に連結された状態となる。すなわち、連結手段が連結状態となり、ベルト56がその両方の端部56A,56Bにおいて車両用シート22に固定される。
また、MGG95が駆動信号の入力に応じて点火してガスを発生すると、ピストン95Bがそのガスによりシリンダ95Aから飛び出して巻付け部96及び軸受98から抜け出る。ピストン95Bの端部56Bを軸受98に支持する力が消失する。連結手段は、上記ピン94による端部56Bの連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となり、ベルト56が一方の端部56Aにおいてのみ車両用シート22に固定された状態となる。
そして、上記連結手段では、制御装置84によりMGG95に対する駆動信号の出力が制御されることで、上記連結状態及び連結解除状態が切り替えられる。
(i)各第1冗長部58における保持部62の延びる方向を変更してもよい。図24及び図25はその一例を示している。この変形例では、各第1冗長部58における3つの折り片61がベルト56の長さ方向(図24及び図25の左右方向)に縫合されることによって保持部62が形成されている。そして、エアバッグ44の膨張展開期間の後期には、各保持部62がエアバッグ44の膨張展開の進行に伴い、車両後側から前側へ向けて破断されていく。エアバッグ44の膨張展開のエネルギーが、この保持部62の破断に消費され、展開速度が低下させられる。
そのほか、図示はしないが、保持部62の延びる方向を、ベルト56の長さ方向に斜めに交差する方向としてもよい。このようにしても第1実施形態と同様の効果が期待できる。
なお、図示はしないが、図24及び図25において、ベルト56の長さ方向に隣合う保持部62が相互につながっていてもよい。
(j)ベルト56の一方の端部56Aをサイドフレーム部28に代えてエアバッグ44の後部に固定してもよい。また、ベルト56の他方の端部56Bを、一方の端部56Aを介さずサイドフレーム部28に直接固定してもよい。
(k)乗員Pが車両用シート22の正規位置に着座しているが、腕をドアのアームレストに乗せている場合、第1実施形態では、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1にあると判断されて、状況(I)として扱われる。状況(I)では、上述したように、側突速度に拘わらず、インフレータ48の作動開始時期が「早期」され、エアバッグ44の展開速度が「低速」にされる。
しかし、この場合には、膨張展開するエアバッグ44が反力として乗員Pの腕に与えるエネルギーが高くてもほとんど問題がなく、むしろエアバッグ44によって腕を乗員拘束領域Z1から速く押し出した方が、エアバッグ44をスムーズに膨張展開させるうえで有効である。
そこで、上記のように腕のみが乗員拘束領域Z1にあることを検出した場合には、その検出を無効化し、すなわち、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1において検出されなかったとして扱い、乗員Pが正規姿勢で着座していると判断するようにしてもよい。
(l)第1実施形態では、乗員検出手段及び着座位置検出手段として乗員検出用カメラ83を用いたが、これに代え、又は加え、他の検出手段を用いてもよい。例えば、赤外線センサ、荷重分布センサ、重量センサ等を用い、車両用シート22に着座する乗員Pの重量、シートバック24にかかる乗員Pの荷重分布、車両用シート22に着座したときのその車両用シート22に対する乗員Pの身体各部の位置等の情報を検知してもよい。
また、乗員拘束領域Z1に乗員Pの身体の一部があるのか、乗員P以外の単なる干渉物があるのかを区別するために、サーモグラフィ装置により、赤外線を用いて対象物の表面温度を検知してもよい。また、同様の目的のために、においセンサにより乗員拘束領域Z1におけるにおいを検出してもよい。
(m)乗員Pが正規姿勢で着座しているときには、側突速度が低速であっても、中・高速の場合と同様に、エアバッグ44の作動開始時期を早期にしてもよい。
(n)ベルト56として、膨張展開を完了したエアバッグ44の周長よりも若干短い長さを有するものを用いる。そして、エアバッグ44が膨張展開を完了したときにベルト56を分離させてもよい。例えば、ベルト56に対し、その幅方向に沿ってミシン目を入れる。そして、エアバッグ44が膨張展開を完了してベルト56が緊張状態となったときに、このミシン目においてベルト56が切断されるようにする。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図26〜図28を参照して説明する。
所定の実行条件が成立した場合に、インフレータ48の作動開始時期を衝撃センサ81による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早めることについては前述したが、第2実施形態では、この早める時期として、第1実施形態での時期に加え、それよりもさらに早い時期を設定している。ここで、変更後の2つの時期を区別するために、前者を「早期」といい、後者を「最早期」というものとする。因みに、第2実施形態では、「早期」として、側突の発生タイミングの2ミリ秒程度前のタイミングを想定し、「最早期」として、側突の発生タイミングの3〜4ミリ秒程度前のタイミングを想定している。ただし、これらの数値は一例に過ぎず、適宜に変更可能である。
そして、側突の予測時に側突速度が高速であるときには、制御装置84は乗員Pの着座姿勢とは無関係に、すなわち特定姿勢であっても正規姿勢であっても、インフレータ48の作動開始時期を「最早期」にしている。
図26は、制御装置84による制御内容の概略を示す図であり、第1実施形態での図11に対応している。図26の上記図11との違いは、次の2点(網掛け部分参照)である。1つは、第1実施形態における状況(I)中、側突速度が高速である場合にインフレータ48の作動開始時期を「最早期」にしている点である。もう1つは、状況(II)中、側突速度が高速である場合にインフレータ48の作動開始時期を「最早期」にしている点である。ここでは、前者を、状況(IV)といい、後者を状況(V)というものとする。
次に、図27及び図28を参照しながら、上記状況(IV),(V)における制御装置84による制御の内容について説明する。
状況(IV):着座姿勢が「特定姿勢」であり、かつ側突速度が「高速」である場合
この場合、図27のタイミングt4での側突に先立ちタイミングt1で側突が予測されると、インフレータ48の作動開始時期を「最早期」にし、エアバッグ44の展開速度を「低速」にする。
より詳しくは、インフレータ48の作動開始時期を「最早期」にするために、実際の側突の発生(タイミングt4)よりも前であり、しかも同作動開始時期を「早期」にした場合よりも前のタイミングt10でインフレータ48に着火指令信号を出力する。
また、エアバッグ44の展開速度を「低速」にするために、拘束部材72への通電を停止し続ける。このとき拘束部材72がアンカー部材71を把持し続けて、連結手段の連結状態が維持される。
そのため、膨張度は図27において実線の特性線L1で示すように変化する。図27中、二点鎖線の特性線L1は、前述した状況(I)での膨張度の時間変化である。両特性線L1から判るように、状況(IV)では、膨張度は状況(I)と同じ傾向で変化するものの、全体が早い側へシフトした特性を示す。具体的には、タイミングt10にエアバッグ44の膨張展開が開始される。タイミングt10以後、エアバッグ44がサイドサポート部25を前方へ膨らませ始めるタイミングt30までの期間は、エアバッグ44は速い展開速度V2で膨張展開する。このタイミングt30は、状況(I)において、エアバッグ44がサイドサポート部25を前方へ膨らませ始めるタイミングt3よりも前である。
タイミングt30の後、エアバッグ44が膨張展開を完了するタイミングt60までの期間は、エアバッグ44は遅い展開速度V1で膨張展開する。このタイミングt60は、状況(I)において、エアバッグ44が膨張展開を完了するタイミングt6よりも前である。
状況(V):着座姿勢が「正規姿勢」であり、かつ側突速度が「高速」である場合
この場合、図28のタイミングt4での側突に先立ちタイミングt1で側突が予測されると、インフレータ48の作動開始時期を「最早期」にし、エアバッグ44の展開速度を「通常」にする。
より詳しくは、インフレータ48の作動開始時期を「最早期」にするために、実際の側突の発生(タイミングt4)よりも前であり、しかも同作動開始時期を「早期」にした場合よりも前のタイミングt10でインフレータ48に着火指令信号を出力する。
また、エアバッグ44の展開速度を「通常」にするために、拘束部材72に通電する。この通電により拘束部材72が変形し、連結手段が、上記拘束部材72によるアンカー部材71の連結状態(拘束)が解除された連結解除状態となる。
そのため、膨張度は図28において実線の特性線L1で示すように変化する。図28中、二点鎖線の特性線L1は、前述した状況(II)での膨張度の時間変化である。両特性線L1から判るように、状況(V)では、膨張度は状況(II)と同じ傾向で変化するものの、全体が早い側へシフトした特性を示す。具体的には、タイミングt10にエアバッグ44の膨張展開が開始される。タイミングt10以後、エアバッグ44が膨張展開を完了するタイミングt60Aまでの期間は、エアバッグ44は速い展開速度V2で膨張展開する。このタイミングt60Aは、状況(II)において、エアバッグ44が膨張展開を完了するタイミングt6Aよりも前である。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。
従って、第2実施形態によっても、第1実施形態における上記(1)〜(8)と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
(9)側突が予測されるときに、車両と側突対象物との側突直前の相対速度が高速であると、非高速(中・低速)である場合よりも、インフレータ48の作動開始時期が早められる。この作動開始時期の変更は、乗員Pの身体の一部が乗員拘束領域Z1にあってもなくても行われる。
そして、上記のようにインフレータ48の作動開始時期が早められることで、展開速度が低下された場合であっても低下されない場合であっても、エアバッグ44の膨張展開の期間が早い側へシフトする。これに伴い、エアバッグ44による乗員Pの拘束がより早い時期から開始されることとなり、この点からも乗員保護性能が向上する。
なお、第2実施形態は、上述した(a)〜(n)と同様に変更されて実施されてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図29(A),(B)を参照して説明する。
第3実施形態は、ベルト56をエアバッグ44の内部に配置している点において、ベルト56をエアバッグ44の外部に配置している第1実施形態と異なっている。
このベルト56は、膨張展開を完了したエアバッグ44において、その後端部と前端部とを結ぶ長さと同程度の長さを有している。ベルト56の後部は、エアバッグ44内であって、インフレータアセンブリ47の周りに巻き付けられている。ベルト56の後端部には、リテーナ49のボルト53が挿通されており、同後端部がボルト53及びナット63によってサイドフレーム部28に固定されている。ベルト56の前端部は、縫合、接着等の手段によって、エアバッグ44内の前端部に連結されている。
ベルト56の長さ方向についての中間部分には、エアバッグ44が収納用形態にあるときにたるんだ状態となる冗長部57が形成されている。冗長部57は、1つ以上(図29(B)では3つ)の第1冗長部58を有している。各第1冗長部58は、ベルト56の長さ方向に略直交する方向(図29(B)において紙面と略直交する方向)に延びる折り線に沿って同ベルト56を折り重ねることによって形成されている。各第1冗長部58は、保持部62によって折り重ねられた状態に保持されている。ここでは、各保持部62は、3つの折り片61を、縫製糸によってベルト56の長さ方向に略直交する方向に縫合することによって形成されている。各第1冗長部58では3つの折り片61が、他の第1冗長部58とは異なる保持強度で縫合されている。こうした縫合により、保持強度は第1冗長部58毎に異なっている。
そして、上述した複数の第1冗長部58、及び第1冗長部58毎に設けられた保持部62によって展開速度低下手段が構成されている。この展開速度低下手段では、ベルト56の素材、長さ、幅や、第1冗長部58の数、保持強度等が、上述した条件(i),(ii)を満たすように設定されている。
上記以外の構成(連結手段を含む)は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の部材、箇所等については同一の符号を付して説明を省略する。
上記第3実施形態では、ベルト56の配置箇所が第1実施形態とは異なるものの、膨張展開期間の後期において、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部が保持部62の破断に消費され、エアバッグ44の展開速度が展開速度V2よりも低下させられる。
従って、第3実施形態によっても、第1実施形態における上記(1)〜(7)と同様の効果が得られる。
なお、第3実施形態は、上述した(a)〜(n)と同様に変更されて実施されてもよい。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について、図30(A)を参照して説明する。
第4実施形態では、展開速度低下手段が第1実施形態とは異なる構成によって実現されている。
展開速度低下手段は、長尺部材として、布帛、テープ等によって形成された複数本のベルト56を備えている。各ベルト56は、膨張展開を完了したエアバッグ44を取り囲むことのできる長さよりも若干短く形成されている。この長さは、収納用形態のエアバッグ44を取り囲むために必要な長さよりも長い。ただし、各ベルト56の長さは、ベルト56間で異なっている。そして、各ベルト56は、収納用形態にされたエアバッグ44の外部において、そのエアバッグ44を略水平方向に取り囲んだ状態で配置されている。各ベルト56の両端部は、上述したサイドフレーム部28に固定されている。
各ベルト56について、収納用形態の上記エアバッグ44の取り囲みに関わらない余剰部分はたるませられている。この余剰部分の長さはベルト56毎に異なっている。なお、図30(A)では、説明の便宜上、各ベルト56の余剰部分が伸ばされた状態で図示されている。
各ベルト56には、同ベルト56の他の箇所よりも低い強度を有し、同他の箇所よりも破断しやすい分離予定部101が設けられている。ここでの強度は、破断に耐え得る強度を指す。分離予定部101は、ベルト56の長さ方向に略直交する方向(図30(A)の上下方向)に沿って入れられたミシン目によって構成されている。すなわち、分離予定部101は、それぞれ所定の長さを有する複数本の切り込みを、所定間隔おきにベルト56に入れることによって形成されている。こうした分離予定部101は、切り込みの入れられた箇所と、その隣の切り込みの入れられていない箇所とを1つの単位として、この単位を何回か繰り返すことによって形成されている。各ベルト56では、分離予定部101の強度がベルト56間で互いに同一となるようにミシン目が入れられている。
そして、展開速度低下手段では、各ベルト56の長さ、分離予定部101の数、強度等が次の条件を満たすように設定されている。
条件3:エアバッグ44の上記膨張展開期間の前期には、全てのベルト56が緊張状態とならず、エアバッグ44の膨張展開の妨げとならないこと。
条件4:エアバッグ44の上記膨張展開期間の後期には、少なくとも1つのベルト56が緊張状態となり、エアバッグ44の膨張展開の妨げとなって展開速度を低下させ、従来のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグと同程度のタイミングで膨張展開を完了させること。
なお、第4実施形態では第1実施形態とは異なり、ベルト56に第1冗長部58や保持部62は設けられていない。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の部材、箇所等については同一の符号を付して説明を省略する。
上記第4実施形態では、エアバッグ44が収納用形態にあるときには、全てのベルト56の余剰部分がたるんだ状態となっている。
エアバッグ44の膨張展開期間の後期には、そのエアバッグ44の膨張展開に伴い全てのベルト56が引っ張られる。この引っ張りにより、長さの最も短いベルト56が最初に緊張し、エアバッグ44の膨張展開を妨げようとする。ここで、各ベルト56では、分離予定部101において他の箇所よりも強度が低くされており、同ベルト56にエアバッグ44の張力等の外力が加わった場合に分離予定部101においてベルト56が破断されやすくなっている。
そのため、上記ベルト56が緊張した状態からさらにエアバッグ44が膨張展開し続けようとすると、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーが分離予定部101の破断に消費されて、エアバッグ44の展開速度が低下させられる。そして、上記のようにベルト56が分離予定部101において破断されて分離されると、そのベルト56によるエアバッグ44の膨張展開を妨げようとする力がなくなる。
特に、第4実施形態では、展開速度低下手段として、上記のように分離予定部101を有し、かつ長さの異なるベルト56を複数本用いている。そのため、エアバッグ44の膨張に伴い、長さの短いベルト56から順に、その分離予定部101において同ベルト56が破断される。膨張展開期間の後期には、分離予定部101が破断される毎にエアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部が消費されて、エアバッグ44の展開速度が展開速度V2よりも低下させられる。
従って、第4実施形態によっても、第1実施形態における上記(1)〜(5),(7),(8)と同様の効果が得られる。なお、上記(6)については、これに相当する次の(6A)の効果が得られる。
(6A)長尺部材としてベルト56を用い、その両端部を車両用シート22に固定している。また、ベルト56の途中に、エアバッグ44の膨張展開に伴い分離される分離予定部101を設定している。そのため、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部を、分離予定部101の分離(破断)に消費させ、エアバッグ44の展開速度を確実に低下させることができる。
第4実施形態は、上述した(a),(g),(h),(j)〜(m)と同様に変更されて実施されてもよい。そのほかにも、第4実施形態は次のように変更されて実施されてもよい。
(o)分離予定部101を上記ミシン目とは異なる手段によって構成してもよい。例えば、ベルト56を複数のベルト片によって構成し、隣り合うベルト片を、上記(c)で説明したようなスナップ式の一対の締結部品によって分離可能に連結してもよい。この場合、エアバッグ44の膨張展開に伴い両締結部品が分離される。エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部がこの分離に消費され、エアバッグ44の展開速度が低下させられる。
(p)各ベルト56における分離予定部101の数を変更してもよい。
(q)ベルト56の長さをベルト56間で異ならせる場合、そのベルト56の長さと、ベルト56の位置との間に要求される関係は特にない。従って、エアバッグモジュール43のどの位置に、どの長さのベルト56を配置するかは任意に設定可能である。
(r)各分離予定部101の強度は、1単位の長さについて、切り込みの入れられていない箇所の占める割合によって異なってくる。切り込みの入れられていない箇所の割合が多くなるに従い、強度が高くなる。
このことを利用して、図30(B)に示すように、切り込みの入れられていない箇所の占める割合をベルト56毎に異ならせることにより、分離予定部101の強度をベルト56間で異ならせてもよい。
この場合、全てのベルト56について、分離予定部101の強度が相互に異ならせられてもよいし、そうでなくてもよい。後者の場合、複数のベルト56を複数のグループに分け、グループ毎に分離予定部101の強度を異ならせてもよい。
なお、分離予定部101の強度は、ベルト56の長さが長くなるに従い高くなるように設定されることが望ましい。このようにすれば、エアバッグ44の膨張展開が進行するに従い、長さの短いベルト56から順に、分離予定部101においてベルト56を分離させやすくすることができる。
(s)各ベルト56における分離予定部101の延びる方向を変更してもよい。例えば、図示はしないが、ベルト56に斜めに交差する方向としてもよい。
(t)上記と同様の構成を有するベルト56を、第3実施形態と同様にエアバッグ44の内部に配置してもよい。
(第5実施形態)
次に、本発明を具体化した第5実施形態について、図6を参照して説明する。
第5実施形態では、展開速度低下手段が第1及び第2実施形態とは異なる構成によって実現されている。
すなわち、展開速度低下手段は、長尺部材として、伸縮性を有する布帛、テープ等によって形成された少なくとも1本のベルト56(図6では二点鎖線にて図示)によって構成されている。このベルト56の自然状態(伸張していない状態)での長さは、収納用形態のエアバッグ44を取り囲むために必要な長さよりも長い。また、同ベルト56の伸張状態での長さは、膨張展開を完了したエアバッグ44を取り囲むことのできる長さである。そして、第5実施形態では、上記ベルト56として、エアバッグ44の膨張展開期間の前期には自然状態を維持し、後期には伸張される長さを有するものが採用されている。
ベルト56は、収納用形態にされたエアバッグ44の外部において、そのエアバッグ44を略水平方向に取り囲んだ状態で配置されている。ベルト56の両端部は、サイドフレーム部28に固定されている。ベルト56について、収納用形態の上記エアバッグ44の取り囲みに関わらない余剰部分は、たるませられている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の部材、箇所等については同一の符号を付して説明を省略する。
上記第5実施形態では、エアバッグ44の膨張展開期間の前期には、ベルト56がたるんだ状態となっている。そのため、ベルト56がエアバッグ44の膨張展開の妨げとなることはほとんどない。
エアバッグ44の膨張展開期間の後期には、それまでたるんでいたベルト56が、膨張展開するエアバッグ44によって引っ張られて、たるみのない状態(緊張状態)となる。このベルト56が伸縮性を有する素材によって形成されていることから、さらにエアバッグ44が膨張展開すると、その膨張展開がベルト56を伸張させることにより行われる。ベルト56には弾性復元力があり、この弾性復元力はベルト56が伸張するに従い増大する。エアバッグ44の膨張展開のエネルギーがベルト56の伸張に消費されてエアバッグ44の展開速度が低下させられる。
従って、第5実施形態によっても、第1及び第2実施形態における上記(1)〜(5),(8),(9)と同様の効果が得られる。なお、上記(6)については、これに相当する次の(6B)の効果が得られる。
(6B)長尺部材として、伸縮性を有する素材により形成されたベルト56を用い、その両端部を車両用シート22(サイドフレーム部28)に固定している。そのため、エアバッグ44の膨張展開のエネルギーの一部を、ベルト56の伸張に消費させ、エアバッグ44の展開速度を確実に低下させることができる。
第5実施形態は、上述した(a),(g),(h),(j)〜(m),(t)と同様に変更されて実施されてもよい。そのほかにも、第4実施形態は次のように変更されて実施されてもよい。
(u)ベルト56は、1本に限らず複数本用いられてもよい。
(第6実施形態)
次に、本発明を具体化した第6実施形態について、図31(A),(B)を参照して説明する。
一般に、サイドエアバッグ装置では、インフレータ48からのガスがエアバッグ44の内部に充填されて内圧が上昇することで、同エアバッグ44が膨張展開する。内圧が速く上昇することでエアバッグ44の展開速度が速くなる。上記内圧は、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44内に供給されるガスの供給量が多くなるに従い速く上昇する。
そこで、第6実施形態では、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44内に供給されるガスの供給量を可変としている。そのために、展開速度低下手段として、以下の構成を採用している。
リテーナ49の下端部には、第1実施形態での窓部52に代え、複数の透孔102が設けられている。透孔102は、インフレータ48のガス噴出口51(図6参照)から噴出されたガスの通路として機能するものである。これらの透孔102は、リテーナ49の周方向については、少なくとも車両前方側となる箇所に設けられている。また、上記複数の透孔102は、少なくとも同リテーナ49の長さ方向については、互いに異なる複数箇所(図31(A),(B)では2箇所)に位置している。ここでは、複数の透孔102を区別するために、上段に位置するものを透孔102Uといい、下段に位置するものを透孔102Lというものとする。
上記リテーナ49の下端部には、有底円筒状をなす可動部材103が同リテーナ49の長さ方向へ移動可能に装着されている。この可動部材103は、初期状態では、図31(A)に示す位置(非制限位置)に保持されている。この非制限位置では、可動部材103は上記透孔102U,102Lのいずれについても塞いでいない。そのため、可動部材103は、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44に供給されるガスの供給量を制限しない。ここでのガスの供給量は、単位時間当たりにインフレータ48からエアバッグ44に供給されるガスの量を意味する。
上記可動部材103には、通電により作動し、かつ同可動部材103を図31(B)に示す位置(制限位置)まで移動させるためのアクチュエータ104が駆動連結されている。この制限位置では、可動部材103は下段の透孔102Lのみを塞ぎ、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44に供給されるガスの供給量を制限する。
上述した制御装置84は、エアバッグ44の膨張展開期間の前期には、アクチュエータ104を作動させず、可動部材103を図31(A)に示す非制限位置に保持し、同膨張展開期間の後期にはアクチュエータ104を作動させて、可動部材103を図31(B)に示す制限位置へ移動(前進)させる。
そして、上記可動部材103、アクチュエータ104及び制御装置84によって展開速度低下手段が構成されている。
上記の構成によれば、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44内に供給されるガスの供給量は、可動部材103の位置に応じて異なる。これに応じて、エアバッグ44の展開速度も異なってくる。インフレータ48から多くの量のガスがエアバッグ44に供給されれば、同エアバッグ44は速い展開速度で膨張展開する。これとは逆に、インフレータ48から少ない量のガスがエアバッグ44に供給されれば、同エアバッグ44は遅い展開速度で膨張展開する。
上記第6実施形態では、エアバッグ44の膨張展開期間の前期には、可動部材103が図31(A)に示す非制限位置に保持される。インフレータ48から噴出されたガスが可動部材103によって制限されることなく、エアバッグ44に供給される。そのため、エアバッグ44にガスが速く充填されて内圧が速く上昇する。エアバッグ44は早い展開速度V2で膨張展開する。
これに対し、膨張展開期間の後期には、可動部材103が図31(B)に示す制限位置へ移動させられる。インフレータ48から噴出されたガスが可動部材103によって制限され、エアバッグ44に供給されるガスの量が少なくなる。エアバッグ44の内圧の上昇が遅くなり、それに伴いエアバッグ44が遅い展開速度V1にて膨張展開するようになる。
従って、第6実施形態によっても、第1及び第2実施形態における上記(1)〜(5),(9)と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
(10)インフレータ48から噴出されてエアバッグ44に供給されるガスの供給量を可変とする可動部材103を用いている。そのため、アクチュエータ104によって可動部材103を、非制限位置及び制限位置間で移動させることによりガス供給量を変更し、エアバッグ44を遅い展開速度V1で膨張させたり、速い展開速度V2で膨張展開させたりすることができる。
なお、第6実施形態は、上述した(a),(k)〜(m)と同様に変更されて実施されてもよい。そのほかにも、第6実施形態は次のように変更されて実施されてもよい。
(v)インフレータアセンブリ47としてリテーナ49を用いない構造に変更してもよい。この場合には、有底円筒状をなす可動部材103をインフレータ48の下端部に対し、同インフレータ48の長さ方向への移動可能に装着する。この可動部材103は、初期状態では、インフレータ48のガス噴出口51を塞がない位置に保持される。そのため、可動部材103は、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44に供給されるガスの供給量を制限しない。そして、エアバッグ44の膨張展開期間の後期には、アクチュエータ104によって可動部材103を、ガス噴出口51の一部を塞ぐ位置へ移動させる。この位置では、インフレータ48から噴出されてエアバッグ44に供給されるガスの供給量が制限される。このため、上記第6実施形態と同様の効果が得られる。
なお、上述した第1〜第6実施形態において示された展開速度低下手段は適宜組み合わされて用いられてもよい。
本発明を具体化した第1実施形態において、サイドエアバッグ装置が適用される車両用シートの概略側面図。 車両用シート及びボディサイド部の位置関係を説明する概略平面図。 シートバックにおける車外側の側部の内部構造を示す部分平断面図。 図3におけるサイドフレーム部及びエアバッグモジュールを示す部分平断面図。 ベルトの端部をサイドフレーム部に連結する連結手段を説明するための図であり、(A)は連結状態にされた連結手段を示す部分断面図、(B)は連結解除状態にされた連結手段を示す部分断面図。 エアバッグが展開させられた状態のエアバッグモジュールと乗員との位置関係を示す側面図。 展開状態のエアバッグと、その蛇腹折りに際し設定される折り線との関係を示す側面図。 (A)は図7の状態からエアバッグが蛇腹折りされた状態を示す側面図、(B)はエアバッグが収納用形態にされたエアバッグモジュールを示す側面図。 (A)は図4におけるX部を拡大して示す平断面図、(B)は上記(A)における所定の第1冗長部を拡大して示す部分平断面図。 図9(A)における10−10線に沿った断面構造を示す断面図。 側突の状況(着座姿勢・側突速度)と、制御装置による状況毎の制御内容との関係を示す制御構造図。 状況(I)におけるエアバッグの膨張度の時間変化を示す特性図。 シートバックにおける車外側の側部について、状況(I)におけるエアバッグの膨張初期の状態を示す部分平断面図。 図13の状態から膨張展開するエアバッグによってサイドサポート部が前方へ膨らませられた状態を示す部分平断面図。 図14の状態からさらに破断予定部においてシートバックが破断された状態を示す部分平断面図。 図2におけるA部について、車両用シートの外部でエアバッグが膨張展開する途中の状態を示す部分平面図。 図16の状態から、エアバッグが膨張展開を完了した状態を示す部分平面図。 図14に対応する図であり、状況(II),(III )におけるエアバッグの膨張初期の状態を示す部分平断面図。 図12に対応する図であり、状況(II)におけるエアバッグの膨張度の時間変化を示す特性図。 図12に対応する図であり、状況(III )におけるエアバッグの膨張度の時間変化を示す特性図。 エアバッグの内圧の時間変化を示す特性図。 図5の連結手段の変形例を示す図であり、(A)は連結状態にされた連結手段を示す部分断面図、(B)は連結解除状態にされた連結手段を示す部分断面図。 連結手段の変形例を示す図であり、(A)は連結状態にされた連結手段を示す部分断面図、(B)は(A)の側断面図。 ベルトにおける保持部の変形例を示す図であり、上記図10に対応したベルトの断面構造を示す側断面図。 図24における25−25線に沿った断面構造を示す断面図。 本発明を具体化した第2実施形態において、側突の状況(着座姿勢・側突速度)と、制御装置による状況毎の制御内容との関係を示す制御構造図。 第2実施形態において、状況(IV)におけるエアバッグの膨張度の時間変化を示す特性図。 第2実施形態において、状況(V)におけるエアバッグの膨張度の時間変化を示す特性図。 本発明を具体化した第3実施形態を示す図であり、(A)はシートバックの収納空間に組み込まれたエアバッグモジュールを示す平断面図、(B)は上記(A)におけるY部を拡大して示す平断面図。 本発明を具体化した第4実施形態を示す図であり、(A)はシートバックの収納空間に組み込まれるエアバッグモジュールを示す側面図、(B)は上記(A)におけるZ部の変形例を拡大して示す部分側面図。 本発明を具体化した第6実施形態を示す図であり、(A)は可動部材が非制限位置に保持された状態を示す一部破断側面図、(B)は可動部材が制限位置へ移動させられた状態を示す一部破断側面図。
符号の説明
21…ボディサイド部、22…車両用シート、44…エアバッグ、48…インフレータ、56…ベルト(長尺部材)、56A,56B…端部、57…冗長部、58…第1冗長部、60…第2冗長部、62…保持部、71…アンカー部材(連結手段の一部)、72…拘束部材(連結手段の一部)、81…衝撃センサ(側突検出手段)、82…側突予測用センサ(側突予測手段の一部、側突速度検出手段)、83…乗員検出用カメラ(乗員検出手段、着座位置検出手段)、84…制御装置(インフレータ制御手段、側突予測手段の一部、作動開始時期変更手段、展開速度低下手段の一部、変更禁止手段)、94…ピン(連結手段の一部)、95…アクチュエータ(連結手段の一部)、101…分離予定部、103…可動部材、P…乗員、V1,V2…展開速度、Z1…乗員拘束領域。

Claims (6)

  1. インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、
    前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の側突を予測する側突予測手段と、
    前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、
    前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段と
    を備え
    前記展開速度低下手段は、
    前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となる冗長部を有するとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、
    前記冗長部をたるんだ状態に保持し、かつ前記エアバッグの膨張展開に伴い保持を解除する保持部と、
    前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段と
    を備え、
    前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
  2. インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、
    前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の側突を予測する側突予測手段と、
    前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、
    前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段と
    を備え、
    前記展開速度低下手段は、
    前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となる冗長部を有するとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材を備え、
    前記冗長部は、保持部によりたるんだ状態に保持され、かつ前記エアバッグの膨張展開に伴い前記保持部による保持が解除される第1冗長部と、前記保持部による保持が解除される前に前記エアバッグの膨張展開に伴い引き伸ばされる第2冗長部とからなり、
    さらに、前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段を設け、
    前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
  3. インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、
    前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の側突を予測する側突予測手段と、
    前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、
    前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段と
    を備え、
    前記展開速度低下手段は、
    前記エアバッグの外部に配置されて、自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、かつ前記エアバッグが前記収納用形態にあるときにはたるんだ状態となり、膨張展開するエアバッグにより緊張させられるとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、
    前記長尺部材の長さ方向についての途中に設けられ、前記エアバッグの膨張展開に伴い分離される分離予定部と、
    前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段と
    を備え、
    前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
  4. インフレータと、車両の側突を検出する側突検出手段と、前記側突検出手段による側突の検出に応じて前記インフレータを作動させてガスを噴出させるインフレータ制御手段と、折り畳まれることにより収納用形態にされて車両用シート内に収納及び固定され、前記インフレータからのガスにより、車両のボディサイド部及び車両用シート間の乗員拘束領域で膨張展開するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、
    前記乗員拘束領域における乗員の身体の一部の有無を検出する乗員検出手段と、
    前記車両の側突を予測する側突予測手段と、
    前記側突予測手段により側突が予測され、かつ前記乗員検出手段により身体の一部が検出されることを実行条件とし、同実行条件の成立時には、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、前記側突検出手段による側突の検出に応じた作動開始時期よりも早める作動開始時期変更手段と、
    前記実行条件の成立時には、前記エアバッグの展開速度を、前記側突検出手段による側突検出に応じて行われるエアバッグの展開の展開速度よりも低下させる展開速度低下手段と
    を備え、
    前記展開速度低下手段は、
    前記エアバッグの外部に配置されて、伸縮性を有する素材により形成され、かつ自身の一端部において前記車両用シート又は前記エアバッグに固定され、膨張展開するエアバッグにより伸張させられるとともに、前記収納用形態にされたエアバッグを取り囲んだ状態で配置される長尺部材と、
    前記長尺部材の他端部を前記車両用シートに直接又は間接に連結する連結状態、及びその連結を解除する連結解除状態を切り替え可能に構成された連結手段と
    を備え、
    前記エアバッグの膨張展開に際し、同エアバッグの展開速度を低下させるときには前記連結手段を前記連結状態に保持し、同展開速度を低下させないときには前記連結手段を前記連結解除状態に切り替えることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
  5. 前記車両と側突対象物との側突直前の相対速度を検出する側突速度検出手段をさらに備え、
    前記作動開始時期変更手段は、前記側突予測手段による側突の予測時に前記側突速度検出手段の検出結果が高速であるときには、前記インフレータ制御手段による前記インフレータの作動開始時期を、同検出結果が非高速であるときよりも早める請求項1〜4のいずれか1つに記載のサイドエアバッグ装置。
  6. 前記車両と側突対象物との側突直前の相対速度を検出する側突速度検出手段と、
    前記車両用シートにおける前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出手段と、
    前記側突予測手段による側突の予測時に、前記着座位置検出手段により乗員が正規位置に着座していることが検出され、かつ前記側突速度検出手段の検出結果が低速であるときには、前記作動開始時期変更手段による前記インフレータの作動開始時期の変更を禁止する変更禁止手段と
    をさらに備える請求項1〜5のいずれか1つに記載のサイドエアバッグ装置。
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