JP4806551B2 - 発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、予備発泡粒子、発泡成形品及び食品包装体 - Google Patents
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Description
カップ麺の包装容器として通常用いているような粒子径が小さい樹脂粒子であると、より顕著に粒子内部まで架橋が進行する。このような粒子の発泡能力を維持するには、未反応分のスチレンモノマーなど溶剤となり得る成分がなければ、良好な発泡能力を有しない。しかしながら、溶剤成分を多く含んだものは、食品を内包する容器としては不向きである。
しかしながら、前記製造方法によって製造された発泡性ポリスチレン系重合体粒子は、該発泡性ポリスチレン系重合体粒子を用いて得られた発泡成形品の予備発泡粒子同士の間隙を塞ぐのには効果があるものの、上述したような、油分や黄色色素が発泡成形容器に形成された毛細管を通じて外部に滲み出してくるという問題点に対しては、油分への耐性が不足しているために十分な解決をもたらすものではなかった。
該樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた時の表層厚みが3〜100μmの範囲であり、且つテトラヒドロフラン不溶ゲル分が該樹脂粒子全体量に対して10〜40質量%の範囲であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。
また本発明は、前記本発明に係る予備発泡粒子を発泡成形させて得られたことを特徴とする発泡成形品を提供する。
更に本発明の発泡成形品は外観に優れ、表面の発泡粒子間の空隙が少ない為に表面印刷性に優れている。
(1)樹脂粒子1を25℃、常圧下でTHFに浸漬して飽和膨潤化し(図1(a)参照)、
(2)次いで、飽和膨潤化した樹脂粒子2をTHFから分離し(図1(b)参照)、
(3)次いで、分離した樹脂粒子2をメチルメタクリレート(以下、MMAと記す。)中に浸漬し(図1(c)参照)、飽和膨潤化した樹脂粒子2内部のTHFをMMAで置換し(図1(d)参照)、
(4)次いで、MMAを重合せしめてポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと記す。)固化体3とし、樹脂粒子を膨潤状態で該PMMA固化体3中に固定し(図1(e)参照)、
(5)次いで、樹脂粒子の中心を通る面に沿って前記PMMA固化体3を切断し(図1(f)参照)、
(6)次いで、該切断面4を観察して樹脂粒子の表層厚さを計測すること(図1(g)参照)、によって実施することが望ましい。
図2に示す通り、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、前記(1)〜(6)の工程を順次行って処理することで、表層5がPMMA固化体3の切断面に残り、それを拡大観察して厚みを測定することが可能である。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子を製造するためには、公知の核重合法(シード重合法)を使用する。本発明で使用する種粒子としては、従来から知られているスチレン系樹脂粒子の製造方法より得られたものが使用できる。例えば、前記スチレン系単量体に架橋性単量体を加えた上で、水中にて懸濁重合させてスチレン系樹脂種粒子を製造する方法、又はスチレン系樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機からストランド状、又は略球状に押出して所定長さ毎に切断し、スチレン系樹脂種粒子を製造する方法などが挙げられる。尚、前記スチレン系樹脂粒子の重量平均分子量は発泡成形性、物性の問題から、15万〜40万が好ましく、25万〜35万がより好ましい。
重合反応中の成長種粒子を少量、重合容器内から取出して水性媒体と分離した後、成長種粒子表面の水分をガーゼ等で除去して測定試料とする。
そして、測定試料から0.08gを精秤し、トルエン24mL中に溶解する。
この溶解液にウイス試薬10mL、5質量%ヨウ化カリウム水溶液30mL、および1質量%でんぷん水溶液約30mLを入れ、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定して試料滴定数(mL)を求める。なお、ウイス試薬は氷酢酸2Lにヨウ素8.7gおよび三塩化ヨウ素7.9gを溶解することで作製する。
一方、試料を溶解することなく前記と同様にして滴定を行い、ブランク滴定数(mL)を求める。
そして成長種粒子中のスチレン系単量体の含有量を次式により算出する。
スチレン系単量体含有量(質量%)=0.1322×(ブランク滴定数−試料滴定数)/測定試料質量(g)
続いて、スチレン系単量体量を成長粒子質量より差引いた量を成長種粒子中のスチレン系樹脂の量とし、成長粒子中の含有量(質量%)を次式により算出する。
スチレン系樹脂含有量(質量%)=100×(測定試料質量−スチレン系単量体量)/測定試料質量
従って、油分を含んだ食品やカレー粉などの色素を含むものを長期間に亘って発泡成形品内に収納し、あるいは、界面活性剤を含む液体などを発泡成形品内に収納した場合にあっても、発泡粒子同士の熱融着界面が油分、色素あるいは界面活性剤などによって侵されるようなことはなく、よって、発泡粒子同士の熱融着界面を通じて油分や色素、界面活性剤を含んだ液体などが発泡成形品の外面に滲出るという問題は解決できる。更には、外観も美麗で印刷性にも優れ、強度等にも優れた発泡成形体が得られる。
攪拌装置を備えた5Lのオートクレーブ内に、イオン交換水2.0L、平均粒子径が0.3mmで且つ重量平均分子量が28万のポリスチレン種粒子を1600g、ピロリン酸マグネシウムを20g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1g供給して攪拌し、分散液を作製した。
この重合途中で成長種粒子中のスチレン系樹脂の割合を測定した。その結果、成長粒子中の樹脂の最少割合は88%であった。
(a)得られた発泡性スチレン系樹脂粒子より、直径0.3〜0.4mmのものを選別し、1.00g精秤してTHF100mlに浸漬させる。
(b)浸漬後、25℃、大気圧条件下で24時間放置し、THFに飽和膨潤させた。
(c)24時間後、80メッシュの金網を用いて濾過し、膨潤樹脂粒子を得た。
(d)密閉可能な外径17mm、長さ105mm、容量10mlの市販の試験管中に上記の膨潤樹脂粒子を膨潤した状態で、該膨潤樹脂粒子2g、MMA3g、2,2アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.003gを加え、膨潤樹脂粒子をMMAに浸漬させた。
(e)上記のMMA浸漬物を密閉状態で40℃の恒温槽にて20時間加熱した。
(f)加熱後、冷水にて冷却し、試験管から重合途中のPMMAを変形しないように取出した。
(g)得られた重合途中のPMMAをカッターナイフにて、内部に固定された樹脂粒子の中心を通る面に沿ってスライスした。
(h)スライスしたものを70℃のオーブンにて2時間再加熱した。
(i)再加熱後、PMMA固化体内の樹脂粒子の表層厚みを電子顕微鏡にて測定した。
(j)10箇所測定した数値の平均値を表層厚み(μm)とした。
この測定の結果、実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表層厚みは15μmであった。
THF不溶ゲル分は、以下の条件で測定される値とする。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の測定試料W1(1.00g±0.02gで精秤する)をTHF100ml中、25℃、常圧下で24時間浸漬させる。浸漬後80メッシュの金網を用いて濾過し、残渣を80℃、−60cmHgで2時間減圧乾燥する。乾燥後デシケータ内で室温まで自然冷却し、乾燥残渣の質量W2を測定する。
前記の測定値から下記式より、THF不溶ゲル分を算出する。
THF不溶ゲル分(質量%)=100×W2/W1
この測定の結果、実施例1の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のTHF不溶ゲル分は32質量%であった。
まず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を次の条件で発泡成形し、発泡成形容器を作製した。
発泡性スチレン系樹脂粒子1.0kgにステアリン酸亜鉛(粉砕品 平均最大長20μm)3gを高速流動型混合機内で2分間攪拌した。次にポリエチレングリコール1gを供給して、さらに2分間攪拌しステアリン酸亜鉛で被覆した。その後冷暗所で3日間保管した。
しかる後、前記発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡機に供給して水蒸気を用いて嵩密度0.1g/cm3に予備発泡させて、予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子を常温にて1日保管し乾燥させた。
次に、前記予備発泡粒子を発泡成形機内の成形型内に供給、充填し、予備発泡粒子を0.20MPaの水蒸気を用いて6秒間に亘って加熱、発泡させて、内容積が450cm3で且つ肉厚が2mmのカップ状の発泡成形容器を得た。なおカップ状の発泡成形容器は、平面円形状の底面部の外周縁から一定高さの周壁部を上方における斜め外方に向かって突設してなるものであった。
得られた発泡成形容器の発泡粒子間の融着率(成形品融着率)は、次の方法で測定した。
前記発泡成形容器の側壁を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子どうしの界面で破断している粒子の数(b)とを数え、式[(a)/((a)+(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とした。下記の評価方法で評価した。
◎・・・融着率80%以上であり、成形品融着率が極めて良好である。
○・・・融着率50%以上、80%未満であり、成形品融着率が良好である。
×・・・融着率50%未満であり、成形品融着率が不良である。
得られた発泡成形容器(内容積450cm3)内に、市販の即席麺(カレー味)に用いられている、カレー粉を含む調味料及びかやくを容器の8分目(容積360cm3)まで入れ、市販されている食品用ラップフィルムで容器全体を包装し、この包装容器を60℃に保たれたオーブンに入れて、包装容器外面にカレー油脂分が滲み出した時間を測定した。
油分滲出し防止性を下記の評価方法で評価した。
◎・・・48時間経過後、カレー油脂分の滲み出しがなく、油分滲出し防止性は極めて良好である。
○・・・24時間以上48時間未満にカレー油脂分の滲み出しがあり、油分滲出し防止性は良好である。
×・・・24時間未満でカレー油脂分の滲み出しがあり、油分滲出し防止性は不良である。
これらの結果を表1に記す。
スチレン単量体溶液を2.0時間で連続的に供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
スチレン単量体溶液を0.5時間で連続的に供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ポリスチレン種粒子を1720g、ジビニルベンゼンを1.0gベンゾイルパーオキサイド1.3g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.3gを280gのスチレン単量体に溶解しスチレン溶液を作製した事、スチレン溶液を1.5時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ポリスチレン種粒子を1200g、ジビニルベンゼンを2.8gベンゾイルパーオキサイド3.8g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.8gを800gのスチレン単量体に溶解しスチレン溶液を作製した事、スチレン溶液を2.0時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ポリスチレン種粒子を1050g、ジビニルベンゼンを3.3gベンゾイルパーオキサイド4.4g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.95gを950gのスチレン単量体に溶解しスチレン溶液を作製した事、スチレン溶液を3.0時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ジビニルベンゼンを用いない事以外は、実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
スチレン溶液を4時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ポリスチレン種粒子を1800g、ジビニルベンゼンを0.7g、ベンゾイルパーオキサイド1.0g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート0.2gを200gのスチレン単量体に溶解しスチレン溶液を作製した事、スチレン溶液を1.5時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
ポリスチレン種粒子を1050g、ジビニルベンゼンを3.3gベンゾイルパーオキサイド4.6g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.0gを950gのスチレン単量体に溶解しスチレン溶液を作製した事、スチレン溶液を1.0時間で供給した事以外は実施例1と同様の手順で行った。結果を表1に記す。
一方、架橋性単量体を用いなかった比較例1は、得られた発泡成形容器の油分滲出し防止性が不良であった。
また、表層厚みが1μmと本発明における表層厚みの範囲未満となった比較例2と3は、やはり発泡成形容器の油分滲出し防止性が不良であった。
さらに、表層厚みが110μmと本発明における表層厚みの範囲より厚くなった比較例4は、成形品融着率及び油分滲出し防止性ともに不良であった。
Claims (5)
- ポリスチレン系樹脂粒子の表面に、架橋性単量体とスチレン系単量体を重合させて形成された表層が設けられ、これらに易揮発性発泡剤が含浸されてなる発泡成形用の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
該樹脂粒子をテトラヒドロフランに飽和膨潤させた時の表層厚みが3〜100μmの範囲であり、且つテトラヒドロフラン不溶ゲル分が該樹脂粒子全体量に対して10〜40質量%の範囲であることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子。 - スチレン系樹脂からなる種粒子100質量部を水性媒体中に分散させた後、この分散液中に前記種粒子100質量部に対し15〜25質量部のスチレン系単量体、および0.03〜1.0質量部の架橋性単量体を添加して、前記種粒子に吸収、重合させてスチレン系樹脂粒子を得た後に、易揮発性発泡剤を含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法であって、重合途中での成長粒子中におけるスチレン系樹脂の割合を80〜96質量%の範囲として請求項1に記載された発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
- 請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られたことを特徴とする予備発泡粒子。
- 請求項3に記載の予備発泡粒子を発泡成形させて得られたことを特徴とする発泡成形品。
- 請求項4に記載された発泡成形品からなる容器内に、油性食品又は食用油脂と色素とを含む食品が包装されてなる食品包装体。
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