JP4771063B2 - 改質コーヒー及びコーヒー豆の焙煎方法 - Google Patents

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Description

本発明は、健康促進成分の含量を増量した改質コーヒー及び前記改質コーヒーを得るための焙煎方法に関する。
コーヒー製品は、独特の風味を有し、現代社会におけるストレス等を紛わせ、リラックスするため等に、嗜好品として愛好されている。一方、従来のコーヒー製品の多量摂取は心血管系疾患リスクを高めるという懸念があった(例えば、非特許文献1参照。)。
また、上述の懸念やカフェインの刺激を避けるため等からデカフェネーテッド・コーヒー(decaffeinated coffee;以下、単にデカフェという。)が従来から広く消費されている。しかし、旨味成分、香り成分が、水抽出法等任意のカフェイン抽出工程で損失してしまい、デカフェ製品は風味が劣るのが欠点であった。
一方、焙煎コーヒー豆中に香気、風味成分として微量に含まれていることが知られているメーラード反応産物とは、アミノ酸とグルコース、フラクトースなどの還元糖が焙煎により反応してできるメラノイジンと呼ばれる褐色の物質であり、例えば、グルコースとアラニンに水を加え溶解後、加熱反応させることにより得られるものを例示することができる。
前記メーラード反応産物と同様に、焙煎コーヒー中にはビタミンB3(ニコチン酸とニコチン酸アミド)が含まれていることが知られ、ビタミンB3欠乏症(ペラグラ)に有効であることからコーヒー中の含量についても研究されてきた(例えば非特許文献2〜4参照。)。
上記ビタミンB3の生理作用は補酵素NADとしての作用であり、エネルギーを産生する代謝経路の活性化である。上記ビタミンとしてのニコチン酸は一般用医薬品として市販されていて、それには、糖質・脂質代謝を促進する作用が表示されている。一方、医療用医薬品として承認されたニコチン酸は高脂血症治療薬であり、その薬理学的特徴は脂質代謝の改善、特に血中HDL−C濃度を上昇して高脂血症と糖尿病の予防及び治療に有効なことである(例えば、非特許文献5参照。)。ニコチン酸のHDL−C上昇作用は既存の医薬品のなかでは最も強力である。
ニコチン酸は副作用として、その投与を続けると一度低下した血中脂質濃度が反動で急激に上昇する現象(以下、単にリバウンド現象という。)が知られている。図12に、実施例の項で後述するようにウイスター系雄性ラットに経口投与して得られたニコチン酸のリバウンド現象を示すグラフを表す。
同図から明らかなように、ニコチン酸を投与した系では、一旦低下した血中脂質濃度が反動で、投与量5mg/kgでは1時間後、10〜20mg/kgでは2時間後、50mg/kgでは4時間後から急激に上昇し、投与しなかった場合の血中濃度をはるかに上回ってしまっている。
なお、上述と同様な結果が、ヒトについても確認されている。
医療用医薬品としてのニコチン酸の副作用を減弱するため、ニコチン酸をモデルとして開発されたアシピモックス(商品名、イタリア・ファルマシア社製/現ファイザー社製)が開発され(例えば、非特許文献6参照。)、欧州を中心に高脂血症治療に使われている(日米では未承認である。)。
上述の高脂血症のうち血中総コレステロールが高値を示す患者の薬物治療では、スタチン系薬剤を用いるのが効果的で且つ一般的である。しかし、スタチン系薬剤の欠点はHDL−Cを上昇させる効果がほとんどないことである。最近になって、スタチン系薬剤とニコチン酸を併用すると、それぞれ単独で用いたときよりも強くHDL−Cが上昇するとの報告が相次いでいる(例えば、非特許文献13〜15参照。)。特に、低量のニコチン酸を併用する方法(非特許文献13)は、安全で長期投与が可能であり、ニコチン酸に特有のリバウンド現象発生が少なく、効果的である。
すなわち、血中総コレステロール濃度を低く抑えると同時に、HDL−C濃度を高値に制御すれば、糖尿病や動脈硬化を予防し、かつそれらの生活習慣病を原因とする致死性の心血管系疾患や脳梗塞に発展する危険率を低下することができると考えられている。表1に、コレステロール低下作用を有する薬物と、HDL−Cを上昇させる薬物の例を示す。
一方、ごく最近になって、コーヒーには2型糖尿病の発症を予防する効果があることが疫学的に証明された(例えば、非特許文献7〜11参照。)。しかし、効果が発現するメカニズムは全く不明とされている(特に、非特許文献9〜11参照。)。
コーヒーに含まれているニコチン酸やニコチン酸アミドについて、高脂血症、肥満、または糖尿病を予防するとの報告はなかったが、焙煎したコーヒーに含まれている化合物のなかには、上記医薬品として知られているニコチン酸、ニコチン酸アミドと同様な成分が含まれている。
しかしながら、焙煎コーヒーでもフレンチとイタリアン以外の製品には、ニコチン酸が十分に含まれているとはいえなかった(例えば、非特許文献12参照。)。
また、従来の焙煎されたコーヒー市販品には、上述のようにメーラード反応産物が微量含まれることは知られているが、カフェインを含有しており、コーヒー本来の香り、風味の主成分であるが、多飲を避けなければならない。糖尿病予防に適した増量した含有割合で、ニコチン酸とメーラード反応産物とを同時に豊富化した製品を得ることはできなかった。ましてや、従来のコーヒー製品が有する心血管系疾患リスクを抑え、かつ糖尿病予防効果を有する安全な改質コーヒーはなかった。
J. Nutr.134: 2381〜2386 (2004) アグリック・バイオロ・ケム(Agric. Biol. Chem.) 49(12), 3467〜3471, 1985 ニュートリショナル・アンド・トキシコロジカル・コンセクェンス・オブ・フード・プロセシング (Nutritional and Toxicological Consequence of Food Processing), 49〜59, M. Friedman, Plenum Press, New York, 1991編 Eur. J.Med. Chem. 15: pp 157〜163 (1980) Arch. Int.Med. 2004; 164, 697-705 Clin.Pharmacol. Ther. (1980) Vol. 28, Number 6, 790〜795 ランセット(Lancet)2002, 360:1477〜1478 ランセット(Lancet)2003, 361:702〜704 アネルズ・オブ・インターナル・メディシン(Annals of Internal Medicine), 2004; 140: 1〜8 ジャーナル・オブ・インターナル・メディシン(Journal of Internal Medicine), 2004; 255: 89〜95 ジャマー(JAMA.)2004;291:1213〜1219 Anal.Sci., 20, 325〜328 (2004) Am. HeartJ. 2002:143, 514〜8 Am. J.Cardiol. 2004:93, 307〜12 Am. J.Cardiol. 2004:94, 306〜11
本発明の目的は、カフェイン量を相対的に減量するとともに、健康促進成分であるニコチン酸とメーラード反応産物とを増量した割合で含むコーヒー製品を生産することにある。
詳しくは、本発明の目的は、糖尿病を予防し、心血管系疾患リスクを抑える改質コーヒー及びそれを得るための焙煎方法を提供することにある。
コーヒー生豆からニコチン酸を多く含む製品を作るには220℃に達する高温がよいが、メーラード反応産物は揮発性が高いとされているので比較的低温が好ましいとも考えられるが定かではなかった。そこで、本発明者らは、焙煎時間と温度について種々検討し、ニコチン酸とメーラード反応産物を同時に含有量を上昇しうることを見出し、糖尿病等の予防に適した、両化合物を好ましい割合で含有する改質コーヒーを実現した。
さらに、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、焙煎コーヒー豆に含まれているメーラード反応産物が体内に吸収されると肝代謝によって血中脂質を低下する成分に変換されること、この代謝産物がニコチン酸類の有するリバウンド現象を防ぎ、かつ血中脂質を低下させることを見出した。これらの知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
(1)焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する改質コーヒー
一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。
(一般式B1〜B3中、R11〜R13、R21〜R24 及び31〜R34はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R21はアルデヒド基であってよい。)
(2)前記メーラード反応産物の含有量が30mg以上である、前記(1)項に記載の改質コーヒー。
)前記焙煎コーヒー豆から得られるコーヒー抽出液を乾燥して得られ、前記(1)又は(2)項に記載の改質コーヒー、
焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、200〜230℃で15〜25分間焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法、
(一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
(一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、180〜200℃で25〜40分間焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法、
(一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
(一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、下記式1の関係で表わされる温度Y及び時間Xで焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法、
式1
X=240−Y
ただし、Yは180〜220℃であり、Xは20〜60分である。
(一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
(一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
)Yが180〜200℃であり、Xが40〜60分である、前記記載の製造方法
(8)前記(4)〜(7)のいずれか1項記載の製造方法によって得られた焙煎コーヒー豆
下記(d)〜(f)の各焙煎コーヒー豆を混合してなり、下記(a)〜(c)の成分を焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して増量させたことを特徴とする、改質コーヒー、
(a)クロロゲン酸
(b)クロロゲン酸ラクト
(c)下記一般式Aで表わされる少なくとも1のニコチン酸化合物及び下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1のメーラード反応産物
(d)コーヒー原料生豆を、180〜220℃で1〜6分間焙煎したコーヒー豆
(e)コーヒー原料生豆を、190〜225℃で7〜14分間焙煎したコーヒー豆
(f)コーヒー原料生豆を、200〜230℃で15〜30分間焙煎したコーヒー豆
(一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
(一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
10前記改質コーヒー抽出液150ml当りの、前記クロロゲン酸の含有量が30mg以上、前記ニコチン酸化合物の含有量が3mg以上且つ前記メーラード反応産物の含有量が10mg以上である、前記(9)項記載の改質コーヒー、及び
11前記改質コーヒーの抽出液150ml当りの、前記クロロゲン酸ラクトンの含有量が1mg以上である、前記又は(10)項記載の改質コーヒー
を提供するものである。
本発明の改質コーヒーとは、ニコチン酸及びメーラード反応産物を豊富に含有する焙煎コーヒー豆から得られたコーヒーであり、好ましくは、焙煎豆10g当りニコチン酸を3mg以上(より好ましくは4mg以上)且つメーラード反応産物を10mg以上(より好ましくは30mg以上、さらに好ましくは50mg以上)含有するものである。
本発明の焙煎方法によれば、ニコチン酸及びメーラード反応産物を豊富に含有した焙煎コーヒーができる。
本発明の焙煎方法により得られた改質コーヒーは、メーラード反応産物の肝代謝物による遅効性血中脂質濃度低下効果がニコチン酸による即効性血中脂質濃度低下効果を補完することにより、ニコチン酸のリバウンド現象を防止し、持続的な血中脂質濃度低下を達成することができ、HDL−Cを上昇する効果も有する。これにより、コーヒーを飲用するという生活習慣を活用して、長期の生活期間において、2型糖尿病と動脈硬化の発症を防ぐことができる。
さらに、本発明の改質コーヒーは、日常生活において飲用すれば、カフェインの過剰摂取の影響を減らし、従来のコーヒーにおいて多飲によって亢進するといわれている血圧上昇リスクを低減でき、心血管系疾患、心臓病のリスクを相対的に減らすことができる。
本発明の改質コーヒーは、2型糖尿病予防効果は1日に1杯ないしは数杯で、従来のコーヒー7〜10杯分に相当するものとできる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、広く、多くの人に嗜好品として愛好されているコーヒーについての焙煎方法とそれより得られた改質コーヒーに関するものであり、前記コーヒーの焙煎方法を工夫することによって、それ自体の医薬効能の知られている含有成分を増量できることは極めて好ましいことである。
本発明に使用するコーヒー生豆の種類は特に制限はないが、前述のようにニコチン酸に変換するトリゴネリンを生豆100g中に300mg以上を含有するのが好ましく、より好ましくは、トリゴネリンを生豆100g中に400mg以上含有するものである。例えば、インドネシア種、ブラジル種、コロンビア種等のものを挙げることができ、好ましくは、インドネシア種、又はブラジル種である。複数の種類をブレンドした豆を用いてもよい。
図3を参照して、本発明における焙煎条件について説明する。
同図は、実施例の項で後述するように、コーヒー生豆(ブラジル種)を180〜220℃で焙煎し、10分ごとに測定したニコチン酸含量を、トリゴネリン含量に対する割合(%)として表わした結果を示す図である。
図3から明らかなように、ニコチン酸の最大含量は温度依存的であり、ある温度Y℃でニコチン酸の最大割合に達するまでの時間X(分)の関係について実験を重ねた結果、下記式1を導き出すことができた。
式1
X=240−Y
ただし、Yは180〜230℃である。
本発明におけるコーヒー生豆の焙煎時間は、上記180〜230℃の範囲で最大量(焙煎豆10g当り2〜5mg)のニコチン酸を生成する時間であり、式1から、本発明により好ましい焙煎時間は温度に逆比例する関数であり、例えば、180〜220℃の範囲で20〜60分間であり、180〜200℃の範囲で40〜60分間である。
例えば、式1の比例定数は1であることから、180℃で焙煎を開始し、一定速度で温度を上昇させ、220℃で焙煎終了とするときは、40分を要して焙煎すればニコチン酸生成量を最大にすることができる。
また、図3から明らかなように、180℃以下でのニコチン酸生成量は微量であり、血中脂質低下作用を発現するには好ましくない。また、この温度ではニコチン酸生成量増加のためには、時間を要するのでいったん産生したメーラード反応産物が揮発してしまう。
例えば、図5−1は、実施例の項で後述するように、焙煎温度200℃におけるメーラード反応産物生成量の時間変化を示す図であるが、メーラード反応産物生成量は20〜30分で最大となり、それ以後は減少してしまう。
さらに、230℃を超えるとコーヒー豆の炭化が進行するようになり、時間をかけると味を損なってしまう。
したがって、本発明において、焙煎温度は180℃〜230℃で15〜60分間であり、好ましくは、200℃〜230℃で15〜25分間もしくは180〜200℃で25〜40分間であり、さらに好ましくは200℃〜220℃で15〜25分間である。
上述の本発明の焙煎条件下であれば、焙煎豆10g当りニコチン酸を3mg以上且つメーラード反応産物を10mg以上(好ましくは、30mg以上)含有する焙煎コーヒー豆を製造することができる。
本発明における焙煎は、コーヒー豆に熱を均一かつ一定にかけるため、乾式焙煎が好ましい。
上述のような焙煎のため、コーヒー豆全体を均一に上記焙煎温度に一時で昇温することは難しい。そこで、上述のような焙煎の前に、例えば、100〜150℃で余熱を行うことが好ましい。余熱時間は、5〜20分間が好ましいが、少量のコーヒー豆の場合(例えば、数百g程度)、5分間以内でよい。
以下に、コーヒーの糖尿病発症等の予防効果と関連する化合物の具体例を示すが、本発明における焙煎コーヒー豆は、少なくとも1種のA類化合物(ニコチン酸化合物)及び少なくとも1種のB類化合物(メーラード反応産物)を通常レベルより、より高濃度で含むものであるが、下記の例に限定されるものではない。
本発明により、2型糖尿病の発症等を予防する化合物は、コーヒー焙煎工程で生成されるか、あるいは産生された化合物に由来している。具体的には、焙煎コーヒー中に含まれている少なくとも1種のA類化合物(ニコチン酸化合物)と少なくとも1種のB類化合物(メーラード反応産物)、焙煎コーヒーには含まれていないが、本発明の改質コーヒー飲用後、代謝反応によって体内で生成する少なくとも1種のC類化合物である。
焙煎コーヒーのメーラード反応産物中の有効成分であるB類化合物の典型例として、これまで15種類が知られており、詳細には、B-1類、B-2類、及びB-3類化合物が挙げられるが、これらは代謝反応によってそれぞれ、血中脂質低下作用を有するC-1類、C-2類、及びC-3類化合物となる。B類化合物、C類化合物の中で好ましいものは、それぞれ、B-1類化合物、C-1類化合物である。
本発明において、血中脂質低下作用の観点から好ましい化合物は、上記式中、ニコチン酸(1a)、2,5-ジメチルピラジン(2c)又はピロール-2-アルデヒド(3a)であり、より好ましくは、ニコチン酸(1a)又は2,5-ジメチルピラジン(2c)である。
本発明の改質コーヒーは、少なくとも1つのニコチン酸化合物と少なくとも1つのメーラード反応産物を含有するので、メーラード反応産物の肝代謝物による遅効性脂質濃度低下効果がニコチン酸による即効性脂質濃度低下効果を補完する。
本発明の改質コーヒーにおける、ニコチン酸:メーラード反応産物の含有モル比は、好ましくはニコチン酸1に対してメーラード反応産物3以上であり、より好ましくはニコチン酸1に対してメーラード反応産物5以上であり、さらに好ましくは1:10〜1:20である。さらに原料の焙煎豆の種類や焙煎条件によってはニコチン酸が微小量(ほとんど0)に対してメーラード反応産物100mg以上/焙煎豆10gとすることもできる。
ここで、ニコチン酸の量に対し、メーラード反応産物の量を3倍以上にするのは、実施例の項で後述するようにニコチン酸のリバウンド現象を、メーラード反応産物肝代謝物により防ぐためである。その結果、血中脂質の低濃度を維持することができる。
本発明において、焙煎したコーヒー豆を挽く方法については特に制限はなく、挽き豆の粗さについても何ら制限はなく、さらにその豆からの抽出方法についても何ら制限はない。このような挽き豆粉末をそのままブレンドコーヒーのブレンド成分として用いてもよい。
コーヒー抽出液は焙煎コーヒー豆の挽き豆粉末を任意の温度の水で抽出したものである。特に、メーラード反応産物の回収率を向上させるためには挽き豆粉末から超臨界抽出法により抽出してもよい。同様な観点から、カラム濃縮法、液滴交流分配抽出法等任意の方法を用いてもよい。
コーヒー抽出液を、何の加工もせずにブラックコーヒーとしてそのまま飲用に供してもよく、乳原料、糖類、香料などを添加した如何なる種類のコーヒーとしてもよい。
コーヒー抽出液は減圧濃縮し、凍結乾燥又はスプレードライ等により、粉末とすることもできる。そのような粉末コーヒーの例として、ボトルまたは缶に詰めたインスタントコーヒー等が挙げられる。
コーヒー味の糖尿病等予防効果を有する、このような粉末コーヒーは、コーヒー、牛乳、清涼飲料水、パン、ビスケット等任意の飲食品に、各飲食品の特性、目的に応じ、製造工程で、また飲食時に適宜、添加して使用できる。
血中遊離脂肪酸濃度を低下し、HDL−Cを確実に上昇させる観点から、コーヒーを飲用したとき、A類化合物及びB類化合物の1日総量が50mg以上が好ましく、より好ましくは50〜150mgであるが、発明の効果を損なわない限り150mgを越えた高含有量としてもよい。具体的には、コーヒー1杯当りニコチン酸を5mg以上、メーラード反応産物を50mg以上含むのが好ましい。
本明細書において、コーヒー1杯とは、約100〜150mlであり、それに必要な焙煎豆粉末は10〜20gであるが、これより少なくても多くてもよい。
本発明の改質コーヒーの摂取量は、A類化合物及びB類化合物の総和が1日当り50〜150mgであることが好ましい。これをニコチン酸の臨床最大用量である1日3g(Arch.
Int. Med. 2004; 164, 697-705参照。)に比較すれば60分の1〜20分の1に相当する十分に安全な含有量であるといえる。また、臨床最小用量である1日50mg(Am. Heart J. 2002:143, 514-8参照。)と比較しても、血中遊離脂肪酸濃度を低下し、HDL−Cを確実に上昇させる量であるといえる。
なお、ニコチン酸類医薬品について、従来から、薬理学量の化合物を長期に亘って服用するとき、1日投与量が過剰になれば副作用を発症する危険率が上昇する(ニコチン酸による顔面紅潮、リバウンド現象等)ことが知られている。これを防ぐために必要な情報を製品の直接の容器に記載することは、消費者の安全を保証するだけでなく、製品を飲用する目的を確実に実現するために好ましい。
本発明の改質コーヒーの摂取量は、ニコチン酸成分(A類化合物)として1日当り5mg以上が好ましく、より好ましくは5〜15mgであるが、発明の効果を損なわない限り15mgを越えた高含有量としてもよい。さらにB類化合物との総和として50mg以上が好ましく、より好ましくは50〜150mgであるが、本発明の効果を損なわない限り、150mgを越えた高含有量としてもよい。
従来のコーヒーでは、糖尿病リスクの低下を期待して多飲すれば(例えば、1日800mL以上)、心血管系疾患リスクが高まることが示されている(J.Nutr.134:2381−2386,2004)。
糖尿病を予防すれば、やがては心血管系疾患リスクをも低下することが知られているので、従来のコーヒー多飲に起因する心血管系疾患の原因物質は、糖尿病を予防する成分とは異なるもの(例えば、カフェインなど)と考えられる。
従来のコーヒーでは、標準的なカフェイン量に対するメーラード反応産物量はモル比で0.3〜0.6倍であるが、本発明の改質コーヒーは2倍以上とすることができ、好ましくは3〜5倍またはそれ以上とすることができる。
したがって、本発明の改質コーヒーは、長期にわたって日常的に摂取すれば、心血管系疾患リスクを抑え、かつ糖尿病の発症を予防することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲においていう、一定のカフェイン量とは、焙煎コーヒー豆中の標準的なカフェイン量であり、焙煎コーヒー豆10g中に90〜150mgの範囲にある値である。
次に、本発明においてコーヒー中の成分が糖尿病の発症を予防する仕組みについて説明する。
上記のように、コーヒー生豆に含有するトリゴネリンは焙煎によりニコチン酸に変換し、ニコチン酸として体内に吸収される。一方、本発明において、コーヒー生豆に含有する炭水化物、脂肪及びタンパク質は焙煎によりメーラード反応を起こし、得られた反応産物が体内に吸収され、肝代謝を受け、その肝代謝産物が血中脂質濃度を低下することにより糖尿病の発病を予防する。
図1に、本発明において、ニコチン酸結合タンパク質HM74を膜受容体とする血中脂質低下作用の分子メカニズムを示す。
図1に示したように、ニコチン酸(前記A類化合物)及びメーラード反応産物の肝代謝物(前記C類化合物)は、脂肪組織を構成している脂肪細胞の膜に存在する受容体HM74に結合する(一部は公知である)。この時、前記C類化合物はC1〜C3の区別によらず、大なり小なりHM74受容体に結合するリガンドである。
リガンドが結合したHM74はGタンパク質を活性化し、次いでアデニルサイクラーゼ(Ac)を不活化する。それによりcAMPとPKAの生合成が抑制され、ホルモン作動性リパーゼのリン酸化が阻害される。最終的に中性脂肪の加水分解速度が低下し、その結果、脂肪組織から血中に放出される遊離脂肪酸及びトリグリセリドが減少する。図1には示さないが、血中遊離脂肪酸の低下は肝におけるLDL合成を抑制し、HDL−C合成を亢進することにより、BMI(ボディー・マス・インデックス)過剰の個体では全身における糖質・脂質代謝が改善される。
血中脂質(遊離脂肪酸を含む。)低下と2型糖尿病治療・予防の関係は、秦葭哉編「高トリグリセライド血症ハンドブック」pp148-160, 医薬ジャーナル社(1998)、M.Lavezzari,et.al.,J.Int.Med.Res.17:373-380(1989),P.Tornvall,et.al.,J.Int.Med.230:415-421(1991)等に詳しく記載されている。
次に、本発明の改質コーヒーとコレステロール低下薬治療との組合せによる健康促進方法について説明する。
前記HM74受容体に結合する化合物は、スタチン系薬剤と併用することによって、スタチン系薬剤単独では認められない効果として、血中HDL−C濃度を上昇させる(Am. Heart J. 2002:143, 514〜8、Am. J. Cardiol. 2004:93, 307〜12、Am. J. Cardiol. 2004:94, 306〜11等参照。)。
表1を用いて前述したように、HDL−Cが標準値より低い患者群に対する、高脂血症の薬物治療では表1中のIとIIの薬物の組み合わせによって、血中総コレステロール値を低下させ、HDL−Cを上昇させる効果に期待が寄せられ、臨床試験が行われている。
そこで、この組合せに準じて、本発明の改質コーヒーは、患者に対する薬物治療を目的とするのではなく、例えば、基本的には健康であるかまたは健康診断で血中総コレステロール値だけが若干高値であるために、Iの薬物を単独で服用している健康人に適用することができる。表2に、2剤併用による薬物治療と、本発明の改質コーヒーによる健康促進法の対比を示した。
HM74受容体リガンドを多量に含む本発明の改質コーヒーを摂取することによって、これらの健康人は健康促進を図ることができるものである。この場合、Iの薬剤を服用している者が、本発明の改質コーヒーを摂取すれば、HDL−C上昇効果が強く発現するようになる。また、Iの薬剤を服用していない健康人であっても、コレステロールを多量に含む食品の摂取を制限することなどの健康管理を行っていれば、本発明の改質コーヒーを摂取することによって、HDL−C上昇効果が強く発現するようになる。つまり、健康人が、本発明の改質コーヒーを摂取することによって、高脂血症患者における2剤併用療法と同質の健康促進効果が、安全に達成できるようになる。
本発明をこのような用途に用いる場合、ニコチン酸としての1日摂取量が50mg以上となるように添加すれば、併用医薬品による治療効果に加えて、HDL−Cを上昇する相乗効果が得られることになる。
次に、本発明の改質コーヒーの別の態様としての焙煎時間差ブレンドコーヒーについて説明する。
従来のコーヒー焙煎法として、主に浅煎り、中煎り、深煎りが知られている。これら焙煎度に応じて含有成分が異なるか、または同じ成分であっても含有量が大きく異なり、焙煎条件が異なるコーヒー豆にはそれぞれ異なる薬理活性成分が含まれている。従来のブレンドコーヒーは品種、産地、積出港などが異なる生豆を適当な割合で混合し焙煎して製造していて、異なる焙煎条件のコーヒー豆をブレンドすることは行なわれておらず、従来のブレンドコーヒーはそれら薬理活性成分の一部を含むが、他の成分は少ないか全く含まれていなかった。
本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、糖尿病予防等の健康を促進する下記(a)〜(c)のいずれかの成分を、焙煎条件を変えて焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して増量させた複数の焙煎コーヒー豆から選ばれる少なくとも2種を混合してなる。
(a)クロロゲン酸
(b)クロロゲン酸ラクトン、及び
(c)少なくとも1つのニコチン酸化合物及び少なくとも1つのメーラード反応産物
本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、焙煎条件を変えて焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して上記(a)の成分を増量させた焙煎コーヒー豆、上記(b)の成分を増量させた焙煎コーヒー豆及び上記(c)の成分を増量させた焙煎コーヒー豆を混合してなることが好ましい。
上記(a)〜(c)のいずれかの成分を、挽き豆中の一定のカフェイン量に対して増量させた少なくとも2種の挽き豆粉末をブレンドしたものでもよいし、上記増量させた少なくとも2種のコーヒー抽出液をブレンドしたものでもよい。原料豆は、品種、産地などが同じでもよいし、異なっていてもよい。
本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、焙煎によって消失する成分と、焙煎によって新たに産生する成分の両方を任意の割合で含有させることができるので、従来のブレンド方法や一回の焙煎では得られない多成分を同時に含有させることができる。
例えば、コーヒー抽出液150ml当りクロロゲン酸を30mg以上、ニコチン酸化合物を3mg以上且つメーラード反応産物を10mg以上とすることもでき、さらにクロロゲン酸ラクトンを1mg以上とすることもできる。
本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、下記(d)〜(f)の焙煎コーヒー豆少なくとも2種を混合してなることが好ましい。
(d)コーヒー原料生豆を、180〜220℃で1〜6分間焙煎(以下、単に浅煎りということもある。)したコーヒー豆、好ましくは180〜210℃で1〜5分間焙煎したコーヒー豆、
(e)コーヒー原料生豆を、190〜225℃で7〜14分間焙煎(以下、単に中煎りということもある。)したコーヒー豆、好ましくは215〜225℃で10〜14分間焙煎したコーヒー豆、及び
(f)コーヒー原料生豆を、200〜230℃で15〜30分間焙煎(以下、単に深煎りということもある。)したコーヒー豆、好ましくは220〜230℃で20〜30分間焙煎したコーヒー豆。
上記(d)の浅煎り条件では、クロロゲン酸、上記(e)の中煎り条件では、クロロゲン酸ラクトンが、上記(f)の深煎り条件ではニコチン酸とメーラード反応産物がそれぞれ、焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して、増量する。
例えば、上記(d)及び(f)の焙煎コーヒー豆をブレンドすると、クロロゲン酸、少なくとも1つのニコチン酸化合物及び少なくとも1つのメーラード反応産物の含有量が、それぞれ、焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して、増量することができ、さらに上記(e)の中煎りコーヒー豆をブレンドすると、クロロゲン酸ラクトンの含有量も、焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して、増量することができる。
ブレンド比は特に制限はないが、上記各成分の含有比の観点から、浅煎り:中煎り:深煎り=0.5〜1.5:2.5〜3.5:1.5〜2.5が好ましい。
糖尿病予防等の健康を促進する多数の成分を同時に飲用することは、各成分の単なる相加効果ではなく、後述するような相乗効果となって発現することが期待される。そのためには、薬理学的作用点の異なる有用成分をできるだけ多種類含む製品が好ましい。
本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、多成分を同時に含有するので、それらの相乗効果と相互作用を発現することができる。
ここで、薬理学的に知られている相乗効果について説明すると、同じ薬効を示すものの、互いに作用点が異なる2つの薬物を同時に用いると、そのときの薬効の強さはそれぞれ単独で用いたときの強さの和を超えて発現する。このような相乗効果は臨床では広く応用されている。例えば、食後の過血糖を抑制するアカルボースと、インシュリン分泌を促進するスルフォニルウレア薬はやや難治性の糖尿病にしばしば応用されている。
クロロゲン酸の薬理作用として、グルコースの消化管吸収が遅くなることが動物実験で知られている(M.F. McCarty. A chlorogenic acid-induced increase in GLP-1
production may mediate the impact of heavy coffee consumption on diabetes risk.
Med. Hypotheses 64:848-853, 2005)。
クロロゲン酸ラクトンのインシュリン感受性の亢進についてはJ. Shearer, et al., Quinides of roasted coffee enhance insulin action in conscious rats. J. Nutr. 133:3529-3532 (2003).に記載されている。
クロロゲン酸のグルコース吸収抑制作用とクロロゲン酸ラクトンのインシュリン感受性亢進作用は、薬理学的作用点が明らかにかつ十分に異なり、かつそれらの薬効が互いに補完的である。即ち、グルコース吸収抑制は食後血糖値の上昇を抑制するのに応じて、インシュリン感受性亢進が同時に起これば、僅かに上昇した血糖値を抑制するのに充分なはずである。
また、ニコチン酸のリバウンド現象をメーラード反応産物が解消する相互作用は上述のとおりである。
したがって、本発明の焙煎時間差ブレンドコーヒーは、糖尿病予防効果が相乗的に増強されると考えられる。
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〈1〉焙煎したコーヒー豆に含まれているニコチン酸のHPLC分析法
コーヒー製品の香りのもととなるメーラード反応産物を焙煎温度200℃で生産するものとし、次に、生豆中のトリゴネリンがニコチン酸に熱変換する最適な焙煎時間を、式1を用いて40分間と定めた。この条件でコーヒー生豆200g(ブラジル種)を焙煎し、コーヒーミルで20秒間粉砕した。得られた粉末の10gを熱湯30mlで浸煎した。3000回転で5分間遠心分離し、上澄液1mlをSep-Pak PlusCl8(商品名、ウォーターズ社製)に注入し、3mlのアセトニトリル/精製水(7/93)で溶出した。溶出液の5μlをHPLCにより分析した。実験条件は次の通りである。送液ポンプ(商品名BIP-1/日本分光社製)、多波長紫外線吸収検出器(商品名MULTI-320/日本分光社製)、データ解析マイクロコンピューター(商品名Vectra386/20N/ヒューレットパッカード社製)、分析カラム(商品名Capcell PakC18ACR/資生堂社製)を用い、移動層溶媒(アセトニトリル/pH2.0リン酸緩衝液(6/94))を流速(1ml/分)で送液した。
図2はその結果得られたクロマトグラムである。図中、縦軸のAUは、吸光度単位である。
図2中、ピークP1はニコチン酸を示している。このピークが示すUV吸収スペクトルは、ニコチン酸標準品のものと完全に一致していた。検量線法により破線を底辺として定量分析を行うと、試料とした焙煎コーヒー豆10g(焙煎したコーヒー豆の質量で1カップ相当量)中のニコチン酸含量は3.28mgであった。
この含有量のコーヒーならば数杯でビタミンとしてのニコチン酸1日必要量に相当するものであった。また、高脂血症治療薬としての1日投与量(下限として1日ll4mg)に達するには30杯が必要であるが、少量でも健康食品としてその予防的作用を期待できる。
さらに疫学調査で、コーヒー1日7杯飲むと糖尿病発症リスクに統計学的に有意な低下が認められているが、上記図2のコーヒー7杯分のニコチン酸量を計算すると26mgであり、これは高脂血症治療に用いられる1日量の24%に相当しているので、糖尿病予防効果を十分に期待できる。
〈2〉任意の焙煎温度でニコチン酸産生量を最大にする焙煎時間
上述の〈1〉項のHPLC法と同様な実験操作によって、アグリック・バイオロ・ケム (Agric. Biol. Chem) 49(12), 3467〜3471, 1985、及びニュートリショナル・アンド・トキシコロジカル・コンセクェンス・オブ・フード・プロセシング (Nutritional and Toxicological Consequence of Food Processing), 49〜59, M. Friedman, Plenum Press, New York, 1991編に記載の焙煎方法に倣って、焙煎温度を180〜220℃の間で10℃毎に設定し、焙煎時間10分おきにニコチン酸含量を測定した。
図3は、それによって得られた、縦軸に生豆中のトリゴネリン含量1gに対する焙煎コーヒー中のニコチン酸の含量(mg)、横軸に焙煎時間をとった両者の関係を示すグラフである。
図3から明らかなように、ニコチン酸の最大含量は温度依存的であり、ある温度Y℃でニコチン酸の最大割合に達するまでの時間X(分)の関係を示す経験式として前記式1を図3から導き出すことができた。
〈3−1〉メーラード反応産物の生成に好適な焙煎条件
200℃で20分間焙煎したコーヒー豆20g(ブラジル種)を、100mlの熱水で抽出した試料を、500MHzのNMR装置で測定した。結果を図4−1に示す。図中、2.2〜2.5ppmのシグナル群はメーラード反応産物由来であり、例えば、B類化合物に共通する構造N=C-CH3の一重線(シングレット)の集合を含む。図4−2は、コーヒー水溶液を重クロロホルム(CDCl3)で抽出して測定したスペクトルである。図4−3は、図4−2のスペクトルの2.0〜2.5ppmの範囲の部分拡大図である。
図4−1から明らかなように、B類化合物のうち、ピロール−2−アルデヒドに由来するシグナルが確認できた。ピロール−2−アルデヒドの含量はNMRスペクトルで容易に測定できるが、その他の化合物の定量分析は事実上不可能であった。そこで、これらの化合物に共通する部分構造であるN=C-CH3に注目し、NMRスペクトルによる定量分析を行った。
B類化合物の標準品を購入し、各0.5mgを1.Omlのコーヒー水溶液に添加して500MHzのNMRを測定した。N=C-CH3のシグナルはすべて2.2〜2.5ppmの範囲に観察された。
図4−2及び図4−3から明らかなように、共存する主成分カフェインのメチル基と比較すると、おおよその含量を予測できるが、積分値を用いて計算すると、焙煎豆10gあたり14mgの含量であった。
また、上記CDCl3NMR測定後に、測定サンプルを放置し、CDCl3を揮発させたカフェイン(無臭)及びメーラード反応産物の混合物は、コーヒー特有の香りがした(被験者4人)。一方、上述のコーヒー水溶液を重クロロホルム(CDCl3)で抽出した後の水層は、コーヒーの香りはなかった。
さらに、上述の200℃で20分間焙煎したコーヒー豆から抽出したブラックコーヒーは、フルーティーな芳香に富み、苦味は皆無で、酸味もほとんど感じられなかった。コーヒー特有の香りは200℃以上で焙煎したとき、または200℃で20分以上焙煎したとき次第に増してきた。その結果、220℃で20〜25分程度が香り、風味とも良好であった。一方、230℃で25分以上になると、外観に焦げ目がつき、苦味と酸味が加わり好ましくなかった。
〈3−2〉焙煎コーヒー豆熱水中のニコチン酸とカフェインのNMR定量分析
香り、風味とも良好であった220℃で20分間焙煎した場合について説明する。
220℃で20分間焙煎したブラジル種のコーヒー豆10gを、冷却後コーヒーミルで20秒間粉砕し、熱水90mlを加えてよく攪拌し、その10mlを遠沈管にとり、3000rpmで5分間遠心分離した。液面の浮遊物を除き、上澄液の約0.5mlをNMR測定管にとり、1%HCl水溶液の1μlを添加して、500MHzのNMRスペクトルを測定した。図4−4はその結果を示すスペクトルである。図4−5は、図4−4のスペクトルの9ppm付近の部分拡大図である。図4−5中、トリゴネリン(一重線pt)とニコチン酸(一重線pn)の2位プロトンに基づく一重線がそれぞれ9.06ppmと8.95ppmに観察された。この試料に50μgのニコチン酸を添加し、得られたピーク面積の積分値と図4−4の積分値の比を計算し、焙煎コーヒー豆10g当りのニコチン酸量を算出すると、3.28mgであった。
さらに、図4−4中、8.95ppmのニコチン酸2位プロトンの積分値と3.22ppmのカフェインのメチル基プロトンの積分値の比から計算すると、この焙煎コーヒー豆10g当たりのカフェイン量は147mgであった。
〈3−3〉焙煎コーヒー豆熱水抽出液中のメーラード反応産物のNMR定量分析
図4−4の2.2〜2.5ppmに観察される一重線の集合は、前述のとおり、メーラード反応産物に共通している部分構造(例えば、窒素原子に隣接するメチル基(N=C−CH))のシグナル群である。図4−4の測定に用いた試料に、0.5mlの重クロロホルムを加え、振動式ミキサーで1分間攪拌し、3000rpmで5分間遠心分離し、重クロロホルム層を分離して、再度NMR測定管に入れ、500MHzのNMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルの2.2〜2.5ppmに観察されるシグナル群の積分値を、カフェインのメチル基シグナルの積分値と比較して計算したところ、焙煎コーヒー豆10g中のメーラード反応産物の含有量は、52mgであった。この値を〈3−2〉項のニコチン酸含量と比較すると、15倍に相当する。したがって、このコーヒーを飲用すれば、ニコチン酸リバウンド現象を予防することができる。
〈3−4〉カフェイン含量に対するメーラード反応産物含量モル比(従来コーヒーとの比較)
図4−6 a)は、図4−4に示したNMRスペクトルの2.2〜3.5ppmの部分拡大図である。図4−6 b)は、ブラジル産コーヒー豆を原料とする従来市販の焙煎コーヒーを熱水抽出して得た溶液のNMRスペクトル(2.2〜3.5ppm)である。
図4−6 a)及び図4−6 b)中、S1、S1’は、前述のとおり、2.2〜2.4ppmに観察されるメーラード反応産物由来のシグナル群(例えば、メーラード反応産物の窒素原子に隣接するメチル基の一重線の集合)を表し、S2、S2’、S3、S3’はカフェインの2つのメチル基のシグナルである。
S2またはS3のシグナル強度とS1のシグナル強度の比(従来市販の焙煎コーヒーについてS2’またはS3’のシグナル強度とS1’のシグナル強度の比)は、カフェイン対メーラード反応産物の含有量のモル比(メチル基のモル比)に相当している。
従来市販の焙煎コーヒーについての図4−6 b)では、その比は約1:0.8である。一方、本発明についての図4−6 a)では約1:3である。
カフェイン含量は焙煎によって変化しないので、図4−6 a)の本発明の改質コーヒーの方がメーラード反応産物を相対的に多く含んでいて、その差は3.9倍である。カフェインに対するメーラード反応産物の含量が相対的に大きいコーヒーを飲用すれば、カフェインの摂取量を少なく抑えながら、多量のメーラード反応産物を摂取できることとなる。
すなわち、本発明の改質コーヒーは人体へのカフェインの影響を少なくし、これに比べてニコチン酸とメーラード反応産物による好ましい作用を増強することができる。
〈3−5〉凍結乾燥により得られた粉末コーヒーの成分含有量
〈3−2〉項において得られた焙煎コーヒー豆10gを粉砕し、熱水90mLで抽出して得た抽出液を凍結乾燥し、改めて熱水90mlに溶解した。その約0.5mlをNMR測定管に取り、500MHzで測定した。〈3−2〉及び〈3−3〉項に従って、ニコチン酸とメーラード反応産物の含有量を計算したところ、それぞれ3.00mg及び7.8mgであった。
〈3−6〉焙煎時間とメーラード反応産物含量の相関
次に、200℃の焙煎温度における焙煎時間の影響を知るために、焙煎を開始してから5分置きに前述と同様な操作により熱水抽出し、NMRを測定し、カフェインのシグナル強度に対するメーラード反応産物由来のシグナル強度(2.2〜2.5ppmの領域)の比を求めて焙煎時間との関係を図5−1に示す。
図5−1から明らかなように、生豆には2.2〜2.5ppmの領域のシグナルはほとんど観察されなかった。200℃で焙煎するとメーラード反応産物に基づくシグナル群が検出されるようになり、200℃におけるメーラード反応産物の産生量は20〜30分で最大となることがわかった。図3を参照すると、200℃におけるニコチン酸の最大産生時間は40分であるが、図5−1から判断するとこの時間でメーラード反応産物はむしろ減少することになる。
〈3−7〉各成分(カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン、ニコチン酸、メーラード反応産物)含有量と焙煎時間との相関
さらに、焙煎開始後3、5、10、15、20、25、30分に焙煎中のコーヒー豆5粒ずつを抜き取って、前述と同様な操作により熱水抽出し、500MHzのNMRスペクトルを測定した。各時間のスペクトルについて、カフェインの基準シグナルをメチル基に由来する3.28ppmの一重線とし、トリゴネリンは、2位のプロトンに由来する9.06ppmの一重線、クロロゲン酸は、6位プロトンに由来する6.75ppmの二重線、ショ糖はグルコース1位プロトンに由来する5.32ppmの二重線、クロロゲン酸ラクトンはメトキシ基プロトンに由来する4.48ppmの一重線、ニコチン酸は2位のプロトンに由来する8.95ppmの一重線、メーラード反応産物は、N=C−CH3基に由来する2.37ppmの一重線を用いて、各シグナル高のカフェインシグナル高に対する百分率を求めた。結果を図5−2に示す。
図5−2から明らかなように、生豆中の成分は時間とともに減少するが、変わって新たに産生する成分がある。具体的には、減少する成分は、トリゴネリン、クロロゲン酸、及びショ糖であり、産生する成分はクロロゲン酸ラクトン、ニコチン酸、及びメーラード反応産物である。中煎りする焙煎10分程度でショ糖は10分の1以下に減少し、メーラード反応が進行していることを示している。クロロゲン酸とトリゴネリンは既に半減し、代わりに中煎りに相当する焙煎10分程度でクロロゲン酸ラクトンが産生していることが分かる。なお、浅煎りに相当する焙煎開始後3、5分は香りは甘く柔らかであり、中煎りに相当する焙煎10分程度は香りはふくよかで芳醇であった。
したがって、浅煎り、中煎り、深煎りコーヒーをブレンドすれば、例えば、焙煎5分、10分及び20分の焙煎豆をブレンドすれば、クロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン、ニコチン酸及びメーラード反応産物量が焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して、増量した割合の改質コーヒーとすることができる。
〈4〉メーラード反応産物の肝代謝
メーラード反応産物の肝代謝反応(1)
下記式2で表わされる、メーラード反応産物の1種であるモノメチルピラジンの肝代謝を確認するため、以下の実験を行った。
4週齢で体重150gのウイスター系雄性ラットに生理食塩水に溶解したモノメチルピラジン7.5mg(50mg/kg)を経口投与したのち、24時間尿を採取した。その5μlを注入型マイクロシリンジ(商品名EXS-ODS、草野科学社製)に取り、pH2.0に調製したアセトニトリル/リン酸緩衝液(7/93)の100μlを用いてHPLC装置に注入した(仕様及び実験条件は前記と同様である)。図6は、得られた尿中代謝物のクロマトグラムである。図6中、ピークP1は投与したモノメチルピラジンであり、ピークP2は代謝物のピラジンカルボン酸である。検量線法を用いて定量したところ、尿中回収率は22.8%、その約90%が代謝物であった。
すなわち、コーヒーに含まれているメーラード反応産物であるモノメチルピラジンは、肝代謝によって、血中脂質低下作用を有するC類化合物に変換された。
メーラード反応産物の肝代謝反応(2)
下記式3で表わされる、メーラード反応産物の1種であるピロールアルデヒドの肝代謝を確認するため、以下の実験を行った。
4週齢で体重150gのウイスター系雄性ラットに生理食塩水に溶解したピロール-2-アルデヒド7.5mg(50mg/kg)を経口投与し、24時間尿を採取した。その5μlを注人型マイクロシリンジ(商品名EXS-ODS、草野科学社製)に取り、HPLC装置のインジェクターに接続した。次に、pH2.0に調製したアセトニトリル/リン酸緩衝液(7/93)の100μlを、注入型マイクロシリンジを介してHPLC装置に注入した。装置及び実験条件は前記と同様である。図7中、ピーク2は得られた尿中代謝物のクロマトグラムである。図7中、ピーク1は投与した代謝物のピロール-2-カルボン酸である。投与したピロール-2-アルデヒドのピーク(約20分)は検出されなかった。尿中回収率はほぼ定量的であり、投与した全量が代謝されていた。
すなわち、コーヒーに含まれているメーラード反応産物であるピロール-2-アルデヒドは、肝代謝によって、血中脂質低下作用を有するC類化合物に高い効率で変換された。
メーラード反応産物の肝代謝反応(3)
下記式4で表わされる、メーラード反応産物の1種である2,5-ジメチルピラジンの肝代謝を確認するため、以下の実験を行った。
50mg/kgの2,5-ジメチルピラジンを投与したラットの24時間尿を採取して、代謝産物の5-メチルピラジン-2-カルボン酸の***量を測定した。HPLC装置の仕様及び実験条件は前記と同様である。
図8は、得られた2,5-ジメチルピラジンを投与したラットの尿中代謝物のクロマトグラフである。図8中、Plは投与した2,5-ジメチルピラジンであり、P2はその肝代謝物の5-メチルピラジン-2-カルボン酸である。
図8から明らかなように尿中には投与した化合物のピークP1の他に、代謝産物のピークP2が観察された。すなわち、コーヒーに含まれているメーラード反応産物である2,5−ジメチルピラジンは、肝代謝によって、血中脂質低下作用を有するC類化合物に変換された。
〈5〉メーラード反応産物の肝代謝物による血中脂質低下作用
メーラード反応産物の1種である2,5-ジメチルピラジン7.5mg(50mg/kg)を体重150gのウイスター系雄性ラットに投与した実験を例示する。上記式4で表わされる、肝代謝の時間推移を観察するため、投与前及び投与後1時間ごとに尾静脈から採血し、2,5-ジメチルピラジン(2,5-DMP)と代謝産物である5-メチルピラジン-2-カルボン酸(5-MPCA)の血中濃度を測定した。
すなわち、1回に10μlを採取し、遠心分離法によって血漿を分離し、その5μlを注入型マイクロシリンジ(商品名EXS-ODS、草野科学社製)に注入した。注入型マイクロシリンジをHPLC装置のインジェクターに接続し、pH2.0に調製したアセトニトリル/リン酸緩衝液(7/93)の100μlを注入した。HPLC装置の仕様及び実験条件は前記と同様である。
図9は検量線法を用いて定量して得た血中濃度の時間推移を示す。図中、◆は2,5-ジメチルピラジンについてであり、■は、5-メチルピラジン-2-カルボン酸についてである。
図9から明らかなように投与した化合物のピークに続いて、代謝産物のピークが遅れて観察されることがわかった。すなわち、この遅れが遅効性(ニコチン酸類に比べて)の血中脂質濃度低下効果をもたらし、ニコチン酸類の即効性効果を補完する。
さらに、4週齢のウイスター系雄性ラットを用いて下記の実験を行った。対照群には生理食塩水を投与した。試験群には5-メチルピラジン-2-カルボン酸(5-MPCA)50mg/kgを生理食塩水に溶解して投与した。投与開始直前と投与後1、2、4、6時間に各6匹を断頭採血し、血液を採取した。常法に従って血漿を分離し、遊離脂肪酸測定キットを用いて遊離脂肪酸(FFA)の血中濃度を測定した。結果を図10に示す。すなわち、図10は、5-メチルピラジンカルボン酸がラット血中遊離脂肪酸濃度に及ぼす効果を示す図である。
図10から明らかなように、最も重要な特徴は、ニコチン酸と比較して血中遊離脂肪酸濃度のリバウンド現象が観察されなかったことである。コーヒーを飲んだときには2,5-ジメチルピラジンが肝代謝を受けて、5-MPCAになってから効果が出る。
〈6〉メーラード反応産物の肝代謝物による血中脂質低下作用
ニコチン酸をシードとする医薬開発で、ピラジンカルボン酸N-オキシド類が血中脂質低下作用を示すことが古くから知られている(例えば、Eur. J. Med. Chem. l5: pp l57〜163(1980)参照。)。それらのうちで最も強い作用を示したアシピモックスが高脂血症治療薬(イタリア・ファルマシア社製/現ファイザー社製)として開発された。開発過程の中で、遊離塩基の作用は弱いとされてきた。
本実施例で、ニコチン酸、アシピモックス、並びにメーラード反応産物の肝代謝物であるピラジンカルボン酸及び5-メチルピラジン-2-カルボン酸を同時に実験して作用の比較を行った。
上記4種の化合物について、50mg/kgを各群5匹のウイスター系雄性ラットに投与した。
投与1時間後に断頭採血し、血中遊離脂肪酸と血中トリグリセリド濃度を常法に従って測定した。結果を図11のグラフに示す。
図11から明らかなように、生理食塩水投与群に比べて、化合物投与群ではいずれも有意差のある血中脂質低下を示したが、化合物間での効果に有意差はなく、どの化合物もほぼ等しい効果を示し、血中脂質は対照群の50%以下まで低下した。
〈7〉メーラード反応産物によるニコチン酸のリバウンド現象発現の防止(1)
前記〈6〉項に記載と同様な操作によって各量のニコチン酸を体重150gのウイスター系雄性ラットに経口投与し(対照、5、10、20、50mg/kg)、尾静脈から採血し、血中遊離脂肪酸濃度の時間推移を測定した。
図12は、上記操作から得られた、ニコチン酸による投与量依存的リバウンド現象を示すグラフである。
図12から明らかなように5mg/kg〜50mg/kgのいずれの投与量においても投与30分後の血中遊離脂肪酸濃度は0.5mEq/L以下にまで抑制された。その後リバウンド現象が認められるまでの時間は、投与量によって異なっていた。5mg/kgでは1時間後、10mg/kgでは2時間後、20mg/kgでは2〜3時間後、50mg/kgでは4時間後であった。このようにニコチン酸リバウンド現象の発現時間は投与量依存的で、投与量と時間の間には正の相関が成立していた。
この結果は、血中遊離脂肪酸濃度に見られるニコチン酸のリバウンド現象は、ニコチン酸の血中半減期が短いために発現することを示している。すなわち、ニコチン酸を単独で服用した場合、一旦上昇したニコチン酸血中濃度が低下してくると、それまで抑制されていた血中遊離脂肪酸濃度が急激に反転上昇するのである。
〈8〉メーラード反応産物によるニコチン酸のリバウンド現象発現の防止(2)
前記〈6〉項に記載と同様な操作によって体重150gのウイスター系雄性ラットにニコチン酸10mg/kgを単独で又は前記2,5-DMP100mg/kgと併用して経口投与し、血中遊離脂肪酸濃度の時間推移を測定した。
図13は、ニコチン酸10mg/kg単独でまたは前記2,5-DMP100mg/kgと併用したときの血中遊離脂肪酸の時間変化を示すグラフである。グラフ中、各点は実験回数6回の平均値で示している。
図13から明らかなように、ニコチン酸の単独投与群で、投与1時間でリバウンド現象が発現した固体と1時間では発現しない固体とが混在し、個体差が見られたが2時間後にはすべての固体でリバウンド現象が観察された。これに対し、併用群では、投与30分後から4時間まで血中遊離脂肪酸の低値が持続していた。即ち、2,5-DMPの併用によってリバウンド現象はほぼ完全に抑制され、ニコチン酸と2,5-DMP代謝産物である5-MPCAの薬理作用が相加的に発現し続けていた。
したがって、本発明の改質コーヒー中のメーラード反応産物は血中脂質低下効果を有する対応の各肝代謝産物に変換されるので、本発明の改質コーヒーを摂取したときには、リバウンド現象なしで、ニコチン酸由来の早急な血中脂質低下効果とともに、メーラード反応産物の肝代謝産物に由来する遅効性の血中脂質低下効果が得られる。
図1は、脂肪細胞におけるHM74リガンドの作用と細胞内情報伝達経路である。 図2は、焙煎したコーヒー豆に含まれているニコチン酸のクロマトグラムを示す図である。 図3は、180〜220℃の範囲で、ニコチン酸生成量と焙煎時間の関係を10分毎に測定した結果を示すグラフである。 図4−1は、メーラード反応産物の定量分析に用いたコーヒー水溶液のNMRスペクトルを示す図である。 図4−2は、メーラード反応産物の定量分析に用いたコーヒークロロホルム溶液のNMRスペクトルを示す図である。 図4−3は、図4−2のスペクトルの2.0〜2.5ppmの範囲の部分拡大図である。 図4−4は、メーラード反応産物の定量分析に用いたコーヒー水溶液のNMRスペクトルを示す図である。 図4−5は、図4−4のスペクトルの9ppm付近の部分拡大図である。 図4−6 a)は、図4−4に示したNMRスペクトルの2.2〜3.5ppmの部分拡大図である。図4−6 b)は、ブラジル産コーヒー豆を原料とする従来市販の焙煎コーヒーを熱水抽出して得た溶液のNMRスペクトル(2.2〜3.5ppm)である。 図5−1は、焙煎温度200℃におけるメーラード反応産物生成量の時間変化を示す図である。 図5−2は、焙煎温度200℃における、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン、ニコチン酸、メーラード反応産物、ショ糖の時間変化を示す図である。 図6は、モノメチルピラジンを投与したラット尿中代謝物のクロマトグラムを示す図である。 図7は、ピロール-2-アルデヒドを投与したラットの尿中代謝物のクロマトグラムを示す図である。 図8は、2,5-ジメチルピラジンを投与したラットの尿中代謝物のクロマトグラフを示す図である。 図9は、2,5-ジメチルピラジンを投与したラット血中の2,5-ジメチルピラジンとその肝代謝物である5-メチルピラジンカルボン酸の血中濃度-時間曲線を示す図である。 図10は、5-メチルピラジンカルボン酸を投与したラットの血中遊離脂肪酸濃度-時間曲線を示す図である。 図11は、ニコチン酸とピラジンカルボン酸類が脂質代謝に及ぼす効果を示す図である。 図12は、上記操作から得られた、ニコチン酸による投与量依存的リバウンド現象を示すグラフである。 図13は、ニコチン酸10mg/kg単独でまたは前記2,5-DMP100mg/kgと併用したときの血中遊離脂肪酸の時間変化を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する改質コーヒー。
    (一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
    (一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
  2. 前記メーラード反応産物の含有量が30mg以上である、請求項1に記載の改質コーヒー。
  3. 前記焙煎コーヒー豆から得られるコーヒー抽出液を乾燥して得られ請求項1又は2に記載の改質コーヒー。
  4. 焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、200〜230℃で15〜25分間焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法。
    (一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
    (一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
  5. 焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、180〜200℃で25〜40分間焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法。
    (一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
    (一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
  6. 焙煎コーヒー豆10g当り下記一般式Aで表わされる少なくとも1種のニコチン酸化合物を3mg以上且つ下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1種のメーラード反応産物を10mg以上含有する焙煎コーヒー豆の製造方法であって、コーヒー原料生豆を、下記式1の関係で表わされる温度Y及び時間Xで焙煎する工程を含んでなり、前記コーヒー原料生豆が、生豆100g当りトリゴネリン300mg以上を含有することを特徴とする、焙煎コーヒー豆の製造方法。
    式1
    X=240−Y
    ただし、Yは180〜220℃であり、Xは20〜60分である。
    (一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
    (一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
  7. Yが180〜200℃であり、Xが40〜60分である、請求項記載の製造方法。
  8. 請求項のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた焙煎コーヒー豆
  9. 下記(d)〜(f)の各焙煎コーヒー豆を混合してなり、下記(a)〜(c)の成分を焙煎コーヒー豆中の一定のカフェイン量に対して増量させたことを特徴とする、改質コーヒー。
    (a)クロロゲン酸
    (b)クロロゲン酸ラクト
    (c)下記一般式Aで表わされる少なくとも1のニコチン酸化合物及び下記一般式B1〜B3のいずれかで表わされる少なくとも1のメーラード反応産物
    (d)コーヒー原料生豆を、180〜220℃で1〜6分間焙煎したコーヒー豆
    (e)コーヒー原料生豆を、190〜225℃で7〜14分間焙煎したコーヒー豆
    (f)コーヒー原料生豆を、200〜230℃で15〜30分間焙煎したコーヒー豆
    (一般式A中、Xは水酸基、アミノ基又はメトキシ基を表す。)
    (一般式B1〜B3中、R 11 〜R 13 、R 21 〜R 24 及びR 31 〜R 34 はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。ただし、R 21 はアルデヒド基であってよい。)
  10. 前記改質コーヒー抽出液150ml当りの、前記クロロゲン酸の含有量が30mg以上、前記ニコチン酸化合物の含有量が3mg以上且つ前記メーラード反応産物の含有量が10mg以上である、請求項9記載の改質コーヒー。
  11. 前記改質コーヒーの抽出液150ml当りの、前記クロロゲン酸ラクトンの含有量が1mg以上である、請求項9又は10記載の改質コーヒー。
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