JP4765282B2 - 水系リチウム二次電池用負極活物質及びその製造方法、並びに水系リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
具体的には、正極活物質としては、例えばLiCoO2、LiNiO2、及びLiMn2O4等が用いられており、これらの活物質は、金属Liに対して3.5〜4.3Vの電位範囲で使用される。また、負極活物質としては炭素材料等が用いられており、1〜0.1V程度の電位範囲で使用される。非水系のリチウム二次電池においては、このような正極活物質と負極活物質とを組み合わせて、単セルにおいて3〜4V級の高い起電力を発揮できる。
即ち、非水系のリチウム二次電池は、電解液として有機溶媒等の非水系電解液を含有しているため、常に引火や爆発の危険性を有している。過充電状態や高温環境下にさらされた状態においては、特にその危険性が高い。
二次電池は、エネルギーを電気化学的に蓄え放出する装置であるため、電気化学的に蓄えたエネルギーが、例えば正極と負極との短絡等の何らかのきっかけで、急激に熱エネルギーに変換されてしまったときに、内部に可燃性の有機溶媒がある場合には、引火、爆発を引き起こすおこすおそれがある。
このような問題は、特に電気自動車やハイブリッド車等のように大型の電池を必要とする用途においては致命的である。また、自動車用電源として用いると、使用温度や充放電サイクルの面でも過酷な条件で使用されることとなり、引火や爆発の危険性がより高くなると考えられている。
そのため、非水系のリチウム二次電池においては、その製造工程において徹底したドライ環境を維持する必要があり、水分を完全に除去するために特殊な設備と多大な労力を要している。そのため、製造コストが高くなってしまうという問題がある。この観点からも、特に電気自動車用の二次電池をにらんだ将来の量産化に対応し難いという問題があった。
即ち、水系リチウム二次電池は、電解液に有機溶媒を含有していないため、基本的には燃えることはない。また、製造工程においてドライ環境を必要としないため、製造にかかるコストを大幅に減少することができる。さらに、一般的に水溶液電解液は非水系電解液に比べて導電性が高いため、水系リチウム二次電池は、非水系のリチウム二次電池に比べて内部抵抗が低くなるという利点がある。
しかしその反面、水系リチウム二次電池は、水の電気分解反応が起こらない電位範囲での使用が求められるため、非水系のリチウム二次電池と比較して起電力が小さくなる。
また、電解液としては、中性からアルカリ性の電解液を用いることが望まれている。活物質として主として用いられるLi含有酸化物は、一般に酸性の水溶液中における安定性に乏しく、また、酸性電解液中の多量のH+イオンは、純粋なLi+イオンのロッキングチェア反応を阻害するおそれがあるからである。
該負極活物質は、リチウムバナジウム酸化物γ−LiV 2 O 5 を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池用負極活物質にある(請求項1)。
即ち、上記水系リチウム二次電池用負極活物質の主成分であるリチウムバナジウム酸化物LiV2O5は、そのバナジウム(V)の価数が4.5価となっており、従来負極活物質として用いられていたLiV3O8等のようにVが5価となる酸化物に比べて価数が低い。このように、上記水系リチウム二次電池用負極活物質は、従来用いられていたリチウムバナジウム酸化物よりもバナジウムの価数の低いLiV2O5を主成分とするため、水系リチウム二次電池用の負極活物質として好適な電位範囲に多くの容量を発揮できると推定される。
リチウム源と、バナジウム源とを、焼成後にLiV2O5となるような化学量論比にしたがって混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を還元雰囲気下で温度400〜900℃にて加熱して焼成物を得る焼成工程と、
上記焼成物をCO2ガス中で温度500℃〜800℃にて加熱してγ−LiV 2 O 5 を主成分とする水系リチウム二次電池用負極活物質を得る熱処理工程とを有することを特徴とする水系リチウム二次電池用負極活物質の製造方法にある(請求項2)。
上記混合工程においては、リチウム源と、バナジウム源とを焼成後にLiV2O5となるような化学量論比にしたがって混合して混合物を得る。
このように、上記焼成工程において還元雰囲気で上記混合物を上記特定の温度範囲で加熱し、上記熱処理工程においてはCO2ガス中で上記焼成物を上記特定の温度範囲で加熱することにより、上記熱処理工程において上記焼成物を穏やかな酸化条件下で加熱することができる。その結果、LiV2O5を主成分とする上記水系リチウム二次電池用負極活物質を得ることができる。
ここで、LiV2O5の合成に必要な酸素は、上記リチウム源、バナジウム源、及びCO2ガスの分解等により得ることができる。上記リチウム源、バナジウム源としては、例えばリチウム又はバナジウムの酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩等がある。
そのため、本発明の製造方法により得られる上記水系リチウム二次電池用負極活物質は、優れた放電容量を発揮できると共に、充放電サイクル特性に優れたものとなる。
上記負極は、上記第1の発明の上記水系リチウム二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする水系リチウム二次電池にある(請求項3)。
上記負極は、上記第2の発明の製造方法によって得られる上記水系リチウム二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする水系リチウム二次電池にある(請求項4)。
また、上記第4の発明の水系リチウム二次電池においては、上記第2の発明の製造方法によって得られる水系リチウム二次電池用正極活物質を負極に含有している。
即ち、上記第3及び上記第4の発明の水系リチウム二次電池は、LiV2O5を主成分とする上記負極活物質を負極に含有している。
上記水系リチウム二次電池用負極活物質は、リチウムバナジウム酸化物LiV2O5を主成分とする。
該リチウムバナジウム酸化物LiV2O5は、例えばγ型、ε型、δ型等の相からなるものがある。
この場合には、上記水系リチウム二次電池用負極活物質の電位が水系リチウム二次電池の活物質としてより好適なものとなり、放電容量をより向上させることができる。またこの場合には、例えば中性〜アルカリ性水溶液における上記水系リチウム二次電池用負極活物質の安定性がより向上し、リチウムの挿入・脱離反応という可逆的な反応をより安定に行うことができる。そのためこの場合には、充放電サイクル特性をより向上させることができる。
上記混合工程においては、リチウム源と、バナジウム源とを、焼成後にLiV2O5となるような化学量論比にしたがって混合して混合物を得る。上記リチウム源及び上記バナジウム源の内少なくとも一方は、酸化物である。
上記バナジウム源としては、例えば五酸化バナジウム(V2O5)、三二酸化バナジウム(V2O3)、二酸化バナジウム(VO2)、酸化バナジウム(VO)、及び酸化硫酸バナジウム(VOSO4)等がある。上記バナジウム源としては、これらの化合物から選ばれる1種以上を用いることができる。
上記焼成工程における加熱温度が400℃未満の場合には、リチウム源とバナジウム源との反応が充分に進行しないおそれがある。一方、900℃を超える場合には、粒成長が著しく、電池材料に適さなくなるおそれがある。
上記熱処理工程における加熱温度が500℃未満の場合には、酸化が充分に進行しないおそれがある。一方、800℃を超える場合には、著しい粒成長が起こり、電池材料に適さなくおそれがある。
上記水系リチウム二次電池においては、例えば、リチウムを吸蔵・放出する正極及び負極と、これらの間に狭装されるセパレータと、正極及び負極間でリチウムを移動させる水溶液電解液等を主要構成要素として構成することができる。
上記負極は、リチウムバナジウム酸化物LiV2O5を主成分とする上記水系リチウム二次電池用負極活物質を含有する。負極は、例えば上記水系リチウム二次電池用負極活物質に導電材及び結着材を混合し、必要に応じて適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを成形し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
導電材は、負極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質粉末状体の1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。
これら活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
正極活物質としては、上記負極活物質よりもリチウムの吸蔵・脱離電位が高い物質を主成分とするものを用いることができる。
具体的には、上記正極活物質としては、例えばオリビン構造のリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、Li(Ni,Co)O2、Li(Ni,Co,Mn)O2、及びLi(Ni,Mn)O2等がある。
このようなリチウム塩としては、例えばLiNO3、LiOH、LiCl、及びLi2S等がある。これらのリチウム塩は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
上記水溶液電解液のpHが6未満の場合には、上記水系リチウム二次電池用負極活物質の上記主成分が不安定となり、電池の容量や充放電サイクル特性が劣化するおそれがある。一方、pHが10を超える場合には、水の電気分解電位、即ち水素発生電位及び酸素発生電位がそれぞれ2.21V及び3.44Vまで低下する。そのため、正極や負極で酸素や水素が発生し易くなるおそれがある。
次に、本発明の実施例につき、図1及び図2を用いて説明する。
本例は、水系リチウム二次電池用の負極活物質を作製すると共に、該負極活物質を用いて水系リチウム二次電池を作製し、その放電容量及び充放電サイクル特性を評価する例である。
図1に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池1は、正極2と、負極3と、リチウム塩を水に溶解してなる水溶液電解液とを有する。負極3は、上記のごとく、γ−LiV2O5を主成分とする水系リチウム二次電池用負極活物質を含有する。
また、正極2は、γ−LiV2O5よりもリチウムの吸蔵・脱離電位が低い物質であるオリビン構造のLiFePO4を主成分とする正極活物質を含有する。水溶液電解液は、リチウム塩としてのLiNO3を水に溶解してなる。
水系リチウム二次電池の作製にあたっては、まず、下記のようにして、水系リチウム二次電池用負極活物質を作製した。
本例の水系リチウム二次電池用負極活物質の製造方法においては、混合工程と、焼成工程と、熱処理工程とを行う。
混合工程においては、リチウム源と、バナジウム源とを、焼成後にLiV2O5となるような化学量論比にしたがって混合して混合物を得る。焼成工程においては、混合物を還元雰囲気下で温度600℃にて加熱して焼成物を得る。熱処理工程においては、焼成物をCO2ガス中で温度680℃にて加熱してγ−LiV2O5を主成分とする水系リチウム二次電池用負極活物質を得る。
次に、焼成物を自動乳鉢で20分間混合し、CO2ガス中において、温度680℃で20時間焼成した(熱処理工程)。このようにして、γ−LiV2O5を合成し、これを水系リチウム二次電池用負極活物質とした。
即ち、まず、原料として、シュウ酸鉄・二水和物(FeC2O4・2H2O)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)、及び水酸化リチウム(LiOH・H2O)を準備した。これらの原料をLiFePO4となるような化学量論比、即ち、FeC2O4・2H2Oと(NH4)2HPO4とLiOH・H2Oとをモル比で1:1:1となるように混合し、自動乳鉢を用いて30分間混合した。
このようにして、オリビン構造のLiFePO4を合成し、これを正極活物質とした。
具体的には、まず、負極活物質としてのγ−LiV2O5を70重量部、導電剤としてのカーボンブラックを25重量部、及び結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5重量部混合し、負極合材を作製した。
また、正極活物質としてのLiFePO4を70重量部、導電剤としてのカーボンブラックを25重量部、及び結着材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を5重量部混合し、正極合材を作製した。
正極2及び負極3は、厚さ25μmのセルロース系のセパレータ4を介して、電池ケース11内に配置した。
次に、電池ケース11の開口部に封口板12を配置し、電池ケース11の端部をかしめ加工することにより、電池ケース11を密封して、水系リチウム二次電池1を作製した。これを電池Eとする。
即ち、まず、炭酸リチウム(Li2CO3)と、五酸化バナジウム(V2O5)とを準備した。これらをLiV3O8となるような化学量論比、即ちLi2CO3とV2O5とをモル比で1:3となるように混合し、自動乳鉢で20分間混合した。次いで、混合物をアルゴン気流中で、700℃まで昇温させて12時間保持した。その後、炉冷し、LiV3O8を作製した。これを電池Cの負極活物質とする。
さらに、上記電池Eの場合と同様にして、コインセル用の電池ケースを準備し、該電池ケース内に正極及び負極を形成すると共に、ガスケットを配置し、水溶液電解液を適量注入し含浸させた後、電池ケース11密封して、水系リチウム二次電池を作製した。これを電池Cとする。
即ち、電池Cは、負極活物質としてLiV3O8を含有する点を除いては、上記電池Eと同様のものである。
充放電サイクル試験は、各電池について、温度60℃の条件下で、電流密度0.5mA/cm2の定電流にて電池電圧1.4Vまで充電し、その後電流密度0.5mA/cm2の定電流にて電池電圧0.1Vまで放電する充放電を1サイクルとし、このサイクルを30サイクル繰り返すことにより行った。各充放電サイクルにおいては、1.4Vまで充電した後、及び0.1Vまで放電した後に、充電休止時間及び放電休止時間をそれぞれ1分間ずつ設けた。そして、各サイクル毎に、各電池(電池E及び電池C)の放電容量を測定した。その結果を図2に示す。
また、図2において、横軸はサイクル数(回)を示し、縦軸は放電容量(mAh/g)を示すものである。同図には、負極活物質としてγ−LiV2O5を用いて構成した電池を電池Eとし、LiV3O8を用いて構成した電池を電池Cとして表した。
2 正極
3 負極
Claims (4)
- リチウム塩を水に溶解してなるpH6〜10の水溶液電解液を有する水系リチウム二次電池用の負極活物質であって、
該負極活物質は、リチウムバナジウム酸化物γ−LiV 2 O 5 を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池用負極活物質。 - リチウム塩を水に溶解してなるpH6〜10の水溶液電解液を有する水系リチウム二次電池用の負極活物質の製造方法であって、
リチウム源と、バナジウム源とを、焼成後にLiV 2 O 5 となるような化学量論比にしたがって混合して混合物を得る混合工程と、
上記混合物を還元雰囲気下で温度400〜900℃にて加熱して焼成物を得る焼成工程と、
上記焼成物をCO 2 ガス中で温度500℃〜800℃にて加熱してγ−LiV 2 O 5 を主成分とする水系リチウム二次電池用負極活物質を得る熱処理工程とを有することを特徴とする水系リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。 - 正極と、負極と、リチウム塩を水に溶解してなるpH6〜10の水溶液電解液とを有する水系リチウム二次電池において、
上記負極は、請求項1に記載の上記水系リチウム二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする水系リチウム二次電池。 - 正極と、負極と、リチウム塩を水に溶解してなるpH6〜10の水溶液電解液とを有する水系リチウム二次電池において、
上記負極は、請求項2に記載の製造方法によって得られる上記水系リチウム二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする水系リチウム二次電池。
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