JP4862357B2 - 負極活物質及び水系リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
具体的には、正極活物質としては、例えばLiCoO2、LiNiO2、及びLiMn2O4等が用いられており、これらの活物質は、金属Liに対して3.5〜4.3Vの電位範囲で使用されている。また、負極活物質としては炭素材料等が用いられており、1〜0.1V程度の電位範囲で使用されている。非水系のリチウム二次電池においては、このような正極活物質と負極活物質とを組み合わせて、単セルにおいて3〜4V級の高い起電力を発揮できる。
即ち、非水系のリチウム二次電池は、電解液として有機溶媒等の非水系電解液を含有しているため、常に引火や爆発の危険性を有している。過充電状態や高温環境下にさらされた状態においては、特にその危険性が高い。
二次電池は、エネルギーを電気化学的に蓄え放出する装置であるため、電気化学的に蓄えたエネルギーが、例えば正極と負極との短絡等の何らかのきっかけで、急激に熱エネルギーに変換されてしまったときに、内部に可燃性の有機溶媒がある場合には、引火、爆発を引き起こすおこすおそれがある。
このような問題は、特に電気自動車やハイブリッド車等のように大型の電池を必要とする用途においては致命的であると考えられている。また、自動車用電源として用いると、使用温度や充放電サイクルの面でも過酷な条件で使用されることとなり、引火や爆発の危険性がより高くなると考えられている。
水の電気分解電圧から計算すると、起電力は1.2V程度が限界であるが、現実には電気分解してガスが発生するには過電圧が必要であるため、2V程度が限界であると予想される。
また、電解液としては、中性からアルカリ性の電解液を用いることが望まれている。活物質として主として用いられる酸化物系の電極材料は、一般に酸性の水溶液中における安定性に乏しく、また、酸性電解液中の多量のH+イオンは、Li+イオンの純粋なロッキングチェア反応を阻害するおそれがあるからである。
また、水系リチウム二次電池においては、非水系のリチウム二次電池に比べて電位幅が小さいため、少しでもエネルギー密度を小さくするために、正極、負極ともに平坦な電位曲線をもつことが望まれる。
一方、負極活物質としては、Li−Mn酸化物、VO2、LiV3O8等が提案されている(特許文献1〜3参照)。
該負極活物質は、基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物を主成分とすることを特徴とする負極活物質にある(請求項1)。
上記負極活物質は、基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池にある(請求項2)。
そのため、上記水系リチウム二次電池は、上記負極活物質が有する特性を生かして、高い放電容量を発揮することができると共に、充放電を繰り返しても高い放電容量を維持することができる。
本発明において、上記負極活物質は、基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物を主成分とする。なお、上述の「基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表される」とは、その化学量論組成のものだけでなく、Li等の一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含むことを意味する。
上記基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物は、ナシコン型の結晶構造を有する。その結晶構造は、例えばX線回折測定(XRD)により得られるXRDパターンによって確認することができる。
上記負極は、上記基本組成式で表されるリチウム複合酸化物を主成分とする上記負極活物質を含有する。負極は、例えば上記負極活物質に導電材及び結着材を混合し、必要に応じて適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、例えばステンレス鋼(SUS)メッシュ、アルミニウム箔、ニッケル箔等からなる負極集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮することにより形成することができる。また、負極としては、上記負極合材をペレット状にプレス成形して得られるペレット電極等を用いることもできる。
これら活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
正極活物質としては、上記基本組成式で表される上記リチウム複合酸化物よりも高電位でLiの挿入・脱離が起こる物質を用いることができる。このような物質は、サイクリックボルタンメトリー測定によって調べることができる。具体的には、例えば次のようにして調べることができる。
この場合には、上記リチウム−マンガン複合酸化物の高い酸化還元電位を生かして、上記水系リチウム二次電池の電池電圧をより高くすることができ、より高い起電力を実現できる。
この場合には、LiFePO4の優れたサイクル特性を生かして、上記水系リチウム二次電池の充放サイクル特性をより一層向上させることができる。即ち、充放電を繰り返したときにおける上記水系リチウム二次電池の放電容量の低下をより一層抑制することができる。
なお、上述の「〜を基本組成とする」とは、その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造におけるLi、Fe、Mn等のサイトの一部を他の元素で置換したものも含むことを意味する。さらに、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含むことを意味する。
上記リチウム塩としては、例えばLiNO3、LiOH、LiCl、及びLi2S等がある。これらのリチウム塩は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用することもできる。
上記水溶液電解液のpHが6未満の場合には、上記基本組成式で表される上記リチウム複合酸化物が不安定になるおそれがある。一方、pHが10を超える場合には、水の電気分解電位、即ち水素発生電位及び酸素発生電位がそれぞれ2.21V及び3.44V程度まで低下する。そのため、正極活物質の種類によっては、正極で酸素が発生し易くなるおそれがある。
上記水系リチウム二次電池は、例えば上記正極と上記負極との間に上記セパレータを狭装してなる電極体を、所定の形状の電池ケースに収納し、上記正極集電体及び上記負極集電体を、リード線を介して正極外部端子及び負極外部端に電気的に接続し、上記電極体に上記水溶液電解液を含浸させて、電池ケースを密閉することにより作製することができる。
次に、本発明の実施例につき、図1及び図2を用いて説明する。
本例は、リチウム複合酸化物(Li3Fe2(PO4)3)を合成し、その活物質としての適性を調べる例である。即ち、本例においては、リチウム複合酸化物(Li3Fe2(PO4)3)を作製し、これを活物質として用いて試験用のリチウム二次電池を作製し、その電位と容量との関係を調べる。
即ち、まず、Li源としてのLi2CO3と、Fe源としてのFeO(OH)と、PO4源としてのNF4H2PO4とを準備し、Li源とFe源とPO4源とを、Li:Fe:PO4がモル比で3:2:3となるような割合で混合した。混合はボールミルで10時間行った。その後、大気中で温度300℃で6時間仮焼した。次いで、自動乳鉢で1時間混合し、さらに大気中で、温度900℃で24時間焼成することにより、ナシコン構造を有するLi3Fe2(PO4)3を得た。これを試料E1とする。
具体的には、まず、上記試料E1を70重量部、導電剤としてのカーボンブラックを25重量部、及び結着材としてのポリエチレンテレフタレートを5重量部混合し、電極合材を作製した。この電極合材10mgをφ10mmのペレットに成形し、これを試験用電極とした。次いで、試験用電極の対極として金属リチウムを準備し、試験用電極と対極とを厚さ25μmのポリエチレン製のセパレータを介してCR2016型コインセル用の電池ケース内に配置した。さらに電池ケースの端部にガスケットを配置した。
このように、試料E1は、過電圧を考慮した、水の電気分解が起こらない電位範囲において、大きな容量を示すことができる。よって、水系リチウム二次電池用の負極活物質として好適であることがわかる。また、同図より知られるごとく、試料E1は、水素ガス発生電位(2.2V)よりも少しだけ大きな電位(約2.7V)に平坦な電位曲線を示す。そのため、試料E1を主成分とする負極活物質を用いることにより、正極活物質との電位差を大きくすることができる。そのため、高い起電力の水系リチウム二次電池を構成することができる。
本例は、実施例1において作製したLi3Fe2(PO4)3(試料E1)を負極活物質として用いた水系リチウム二次電池を作製し、その充放電サイクル特性を評価する例である。
図2に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池1は、正極活物質を含有する正極2と、負極活物質を含有する負極3と、リチウム塩を水に溶解してなる水溶液電解液とを有する。負極活物質は、実施例1において作製した試料E1(Li3Fe2(PO4)3)を主成分とする。
また、正極2は、正極活物質としてLiMn2O4を含有する。また、水系リチウム二次電池1は、水溶液電解液として、LiNO3の飽和水溶液を含有する。
まず、以下のようにして正極活物質としてのスピネル構造のLiMn2O4を合成する。
即ち、まず、Li源としてのLiOHと、Mn源としてのMnCO3とを準備し、LiとMnとのモル比がそれぞれ1.05:2.0となるような混合比で、Li源とMn源とを混合した。混合は、自動乳鉢を用いて1時間行った。
混合後、O2雰囲気中で温度800℃にて12時間焼成した。これにより、スピネル構造のLiMn2O4(マンガンスピネル)を得た。なお、LiMn2O4の合成においては、得られるLiMn2O4においてはLiとMnとのモル比は1:2であるのに対して、上記のごとくLiとMnとのモル比が1.05:2.0となるようにLi源とMn源とを混合している。これは、Liが高温で昇華しやすいことを考慮して配合を行ったためである。
また、負極活物質としては、実施例1と同様にして試料E1(Li3Fe2(PO4)3)を作製した。
具体的には、まず、負極活物質としての試料E1を70重量部、導電剤としてのカーボンブラックを25重量部、及び結着材としてのポリエチレンテレフタレートを5重量部混合し、負極合材を作製した。この負極合材10mgをφ10mmのペレットに成形し、これを負極とした。
また、正極活物質としてのLiMn2O4を70重量部、導電剤としてのカーボンブラックを25重量部、及び結着材としてのポリロエチレンテレフタレートを5重量部混合し、正極合材を作製した。この正極合材13mgをφ10mmのペレットに成形し、これを正極とした。
次いで、電池ケース11内にガスケット5を配置し、さらに電池ケース11内に水溶液電解液を適量注入し含浸させた。本例においては、水溶液電解液としては、濃度3mol/LのLiNO3飽和水溶液(pH≒7)を用いた。
次に、電池ケース11の開口部に封口板12を配置し、電池ケース11の端部をかしめ加工することにより、電池ケース11を密封して、水系リチウム二次電池1を作製した。これを電池E1とする。
充放電サイクル試験は、各電池(電池E1及び電池C1)を、温度60℃の条件下で、電流密度0.5mA/cm2の定電流で、電池電圧1.7Vまで充電し、その後、電流密度0.5mA/cm2の定電流で電池電圧0.6Vまで放電する充放電を1サイクルとし、このサイクルを50サイクル繰り返すことにより行った。各充放電サイクルにおいては、充電休止時間及び放電休止時間をそれぞれ1分間ずつ設けた。そして各サイクル毎に各電池の放電容量を調べた。
したがって、負極活物質として、Li3Fe2(PO4)3を用いることにより、大容量で、充放電サイクル特性に優れた水系リチウム二次電池を構成できることがわかる。
本例は、水系リチウム二次電池のバリエーションとして、巻回式電極を有する18650型の円筒形状の電池を作製する例である。
図4に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池6は、円筒型であり、正極61、負極62、セパレータ63、ガスケット64、及び電池ケース7等よりなっている。電池ケース7は、18650型の円筒形状の電池ケースであり、キャップ71及び外装缶72よりなる。電池ケース7内には、シート状の正極61及び負極62が、これらの間に挟んだセパレータ63と共に捲回した状態で配置されており、捲回式の電極が形成されている。
正極61及び負極62には、それぞれ正極集電リード611及び負極集電リード621が熔接により設けられている。正極集電リード611は、キャップ71側に配置された正極集電タブ612に熔接により接続されている。また、負極集電リード621は、外装缶72の底に配置された負極集電タブ622に熔接により接続されている。
また、水溶液電解液としては、飽和濃度の硝酸リチウム水溶液(pH≒7)を用いており、該水溶液電解液は電池ケース7内に注入されている。
なお、正極活物質及び負極活物質の付着量は、片面当たり、それぞれ7mg/cm2程度とした。
2 正極
3 負極
4 セパレータ
Claims (5)
- 電解液としてリチウム塩を水に溶解してなる水溶液電解液を含有する水系リチウム二次電池に用いられる負極活物質であって、
該負極活物質は、基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物を主成分とすることを特徴とする負極活物質。 - 正極活物質を含有する正極と、負極活物質を含有する負極と、リチウム塩を水に溶解してなる水溶液電解液とを有する水系リチウム二次電池において、
上記負極活物質は、基本組成式Li3Fe2(PO4)3で表されるリチウム複合酸化物を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池。 - 請求項2において、上記水溶液電解液のpHは、6〜10であることを特徴とする水系リチウム二次電池。
- 請求項2又は3において、上記正極活物質は、LiMn2O4を基本組成とするスピネル構造のリチウム−マンガン複合酸化物を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池。
- 請求項2又は3において、上記正極活物質は、LiFePO4を基本組成とするオリビン構造の鉄リン酸リチウム化合物を主成分とすることを特徴とする水系リチウム二次電池。
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