JP4763899B2 - ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂およびその製造法 - Google Patents

ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂およびその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、食品包装容器、ブリスターパック、一般容器ケース、シート、フィルムなどに使用される、透明で高衝撃性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物およびその連続的重合または塊状、懸濁重合製造方法に関するものであって、詳しくは、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンから構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合体ブロック部(B)から成る特定のスチレン−ブタジエンブロック共重合の存在下に、芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物とをグラフト共重合して得られる透明性ならびに実用強度、とりわけ耐衝撃性に優れた、換言すれば少ないゴム分で相当の耐衝撃性を発現する高いゴム効率を有すゴム変性共重合樹脂組成物およびゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂として現在広く用いられているが、ゴム質が含まれるためにそのポリスチレンの有する透明性は全く失われ、その用途が制限されるものであった。従来、これら耐衝撃性スチレン系樹脂の特性を改良する方法として、特公昭61−50488号、特開昭59−20334号、特開昭60−203618号などにより、ポリブタジエンの溶液粘度、ミクロ構造、分岐構造などの特性を特定する方法が提案されている。しかしこれらの方法について詳細に検討してみると、確かに従来のポリブタジエンを用いた場合に比べ光沢は改良されるが、耐衝撃性ついては実用的に満足のゆくものは得られていない。一方、特公昭42−17492号、特公昭48−18594号、特開昭61−143415号、特開昭63−48317号、特開昭63−165413号、特開平3−68612号などでは、スチレン系樹脂と親和性を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体を使用する方法が提案されている。これらの方法によると、得られる樹脂の光沢は改良されるが耐衝撃性が著しく低下することが多く、耐衝撃性と光沢のバランスが不十分であり、耐衝撃性の低下をいかに抑えるかが大きな課題として残っていた。
【0003】
さらに一方、一般にスチレン−ブタジエンブロック共重合体としては、線状ブロック構造のものや放射状枝分かれブロック構造のものなど種々のものが知られており、これらスチレン−ブタジエンブロック共重合体は、その特性として透明性に著しく優れており、一般にスチレン含有率が多くなるに従い、ゴム質状から樹脂状に変化する。しかしながら、このようなスチレン−ブタジエンブロック共重合体は、剛性、強度の実用物性において劣るという欠点があり、従来においては、かかる欠点を解消するためにポリスチレンを配合することが行われている。しかし、スチレン−ブタジエンブロック共重合体にポリスチレンを配合することは、剛性において改善されるが、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の優れた特性である透明性が損なわれるなどの問題点がある。そのため従来より耐衝撃性と透明性とを合わせ持つ熱可塑性樹脂として、例えば特開昭52−124095号公報、特開昭62−169812号公報、特開昭62−151415号公報には、ゴム質重合体の存在下でスチレンモノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を一種あるいはそれ以上の混合溶液をグラフト共重合させる方法が多数開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらに開示された技術においては、得られた熱可塑性樹脂は透明であり引張り特性における高い伸びを示しているが、アイゾット衝撃強度に見られるように、ゴム補強の効果はいまだ不十分である。すなわち、透明性、伸びは改良されてもアイゾッド衝撃強度をはじめとする衝撃強度は改良されていない。
【0005】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、透明性を有し、かつ衝撃強度、流動性等実用物性に優れたゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物および製造方法について鋭意検討した結果、ゴム補強透明樹脂を得るための芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の混合物とのグラフト共重合に最適な、特に混合物と強い親和性を有する特定の構造のスチレン−ブタジエンブロック共重合体構造を見出し、これによりゴム補強透明樹脂の衝撃強度が著しく改善され、さらに透明性も改良されることが分かり、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、従来より一般的に用いられているクリアーカット型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、即ちスチレンブロックとブタジエンブロックの間に、スチレン単位とブタジエン単位がランダム共重合した部分ないしはスチレン単位とブタジエン単位が組成の傾斜を伴いながら共重合した部分を実質的に含まないスチレン−ブタジエンブロック共重合体や、スチレンブロックとブタジエンブロックの間の構造がスチレンとブタジエンの組成の傾斜構造ないしはそれに相当する構造を有するようなスチレン−ブタジエンブロック共重合体のようではなく、スチレンとブタジエンのランダム共重合体より成るブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合ブロック部(B)から成るブロック共重合体である。
【0007】
さらに詳しくは、(イ)スチレン5重量%〜30重量%とブタジエン70重量%〜95重量%から成るブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン95重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜5重量%から成るスチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)から成り、(ロ)ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)のガラス転移点が−80〜−35℃の範囲にあり、(ハ)該共重合ゴム中における、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合が好ましくは15〜90重量%で、スチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)の占める重量割合が好ましくは85〜10重量%であり、(ニ)ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニル結合の割合が好ましくは8.0〜20.0重量%であり、(ホ)25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が好ましくは20〜50センチポイズの範囲にあり、(ヘ)スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し好ましくは62重量%以上であり、(ト)該ゴムのプロトンNMRスペクトルにおいて、6.88〜7.3ppmのケミカルシフトのピークの強度をM、6.3〜6.88ppmのケミカルシフトのピークの強度をNとするとき、下記式で定義されるRが好ましくは0.13以上であり、
Figure 0004763899
(チ)該共重合体ゴムのカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度をZとするとき、下記式で定義されるPが好ましくは0.1〜0.2の範囲にある
Figure 0004763899
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの存在下に、芳香族ビニル系化合物および一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を共重合して得た、共重合ゴム相を分散粒子として含有する芳香族ビニル系共重合樹脂において、該共重合ゴム3〜20重量部と、該ゴム状重合体と実質的に同等の屈折率を有し、一種以上の芳香族ビニル系化合物20〜80重量%と一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物20〜80重量%から成る芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体97〜80重量部とから構成され、該ゴム状重合体が該芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中に分散した平均粒子径0.3〜2.1μmの粒子であり、かつ該分散粒子のガラス転移点が好ましくは−75〜−30℃の範囲にある、透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明を構成するゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂は、特定のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の存在下で、芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物が重合あるいは芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物と必要とあらばそれらと共重合しうる1種あるいは2種以上の化合物が共重合した芳香族ビニル系共重合体として得られたものである。
ここで芳香族ビニル系化合物としては、例えばスチレンの他、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2、4ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンのような核アルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−1、4−クロルスチレン、2、4ジブロモスチレン等のような核ハロゲン化スチレン、ビニルナフタレン等、従来ゴム改質スチレン系樹脂用として知られているスチレン系化合物の1種または2種以上の混合物が用いられるが、代表的なものは、スチレンの単独もしくは、その一部をスチレン以外の上記ビニル芳香族単独体で置き換えた化合物である。
好ましい芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられ、特に好ましくはスチレンが挙げられる。
【0009】
また(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸パルミチン、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸パルミチン、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ステアリルなどが挙げられ、これらの2種以上の混合物として用いてもよい。好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチルなどが挙げられ、特に好ましくはメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが挙げられる。
【0010】
また本発明のゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂成分中に粒子状に分散するゴム状重合体としては、スチレンとブタジエンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合体ブロック部(B)から成るブロック共重合体に特定される。従来より一般的に用いられているクリアーカット型スチレン−ブタジエンブロック共重合体や、スチレンブロック部とブタジエンブロック部を有し、さらにスチレンブロック部とブタジエンブロック部の間の構造がポリマー鎖に沿ってスチレンとブタジエンの組成の傾斜構造ないしはそれに相当する構造を有するようなスチレン−ブタジエンブロック共重合体では、本発明の効果は得られない。ここでスチレンとブタジエンのランダム共重合体ブロック部(A)とは、スチレンとブタジエンの結合様式がポリマー鎖に沿ってランダムに均一に分布した構造の共重合体ブロック部をいう。
【0011】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンとブタジエンのランダム共重合体より成るブロック部(A)および/あるいは、スチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合ブロック部(B)中、あるいはスチレンとブタジエンのランダム共重合体より成るブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合ブロック部(B)の境界部や(A)および/あるいは(B)の両末端の一部にブタジエンブロック部を有することもでき、また同様通常のスチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴムを併用することもできる。
【0012】
また、本発明の芳香族ビニル系共重合樹脂を構成する、芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物と共重合可能な化合物とは、例えばアクリロニトリル、メタクリルニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニルや、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、フェニルマレイミドなどのマレイミド、酢酸ビニル、ジビニルベンゼン等であり、芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物との混合物として用いられる。
【0013】
本発明のゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物の製造においては必要に応じて有機溶剤を用いることが出来る。有機溶剤としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アセトン、イソプロピルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、特に芳香族炭化水素類、例えばトルエン、エチルベンゼン単独または2種以上の混合物の使用が好ましく、さらに、ゴム状重合体の溶解を損なわない範囲で、他の溶剤、例えば脂肪族炭化水素類、ジアルキルケトン類を芳香族炭化水素類と併用することもできる。ゴム状重合体は、芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物または芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物とそれらと共重合しうる単量体、ないしは溶剤との混合物中に溶解される。有機溶剤を使うと重合液中の単量体濃度および生成した共重合体濃度が低くなるので、重合速度が制御の容易な程度にまで低くなって重合反応の暴走を防止することができるうえに、重合液の粘度が下がって重合液の均一な混合、さらには重合液の移動が容易になり製造プロセスとしての操作性が向上する。
【0014】
しかしながら、重合液中の有機溶剤濃度が高くなる過ぎると、重合速度が低すぎて生産性が低下し、さらにゴム状重合体を分散相に反転させる場合には重合の過程でゴム状重合体粒子が凝集しやすく樹脂の透明性が低下してしまい好ましくない。また、溶剤の回収エネルギーが大となり経済性も劣ってくる。従って反応槽での有機溶剤の濃度は重合液の総量100重量部に対し通常5〜50重量部の範囲で使用される。溶剤は比較的高粘度となる重合転化率となってから添加してもよく、重合前から添加しておいてもよい。重合前から添加しておくほうが、品質の均一性、重合温度制御の点で好ましい。
単量体を重合する場合に、重合開始剤不存在下に110〜190℃の温度範囲で重合してもよいし、重合開始剤としてラジカルを発生する有機過酸化物を用いて50〜180℃、好ましくは90〜150℃の温度範囲で重合することができるが、過酸化物を存在させて重合させることが好ましい。
【0015】
本発明においては前記のように重合開始剤を用いることが出来る。使用される有機過酸化物は、2、2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2、2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート等のパーオキシケタール類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2、4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピパレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2ーエチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3、5、5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3、3、5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2、5−ジメチルヘキサン2、5−ジハイドロパーオキサイド、1、1、3、3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2塩基酸のポリアシルパーオキサイド類、2塩基酸とポリオールとのポリパーオキシエステル類が挙げられ、開始剤を1種または2種以上を使用できる。しかしながら、有機過酸化物の使用が、高いグラフト効率が得られ易いので好ましい。その使用量については、特に制限はないが、モノマー混合物100重量部に対して0.001〜5.0重量部がよい。
【0016】
また、重合に際して、連鎖移動剤、例えばメルカプタン類、α−メチルスチレンリニアダイマー、モノテルペノイド系分子量調節剤(タービノーレン)、また酸化防止剤として、ヒンダードフェノール類、ヒンダードビスフェノール類、ヒンダードトリスフェノール類等、例えば2、6−ジ−t−ブチルー4ーメチルフェノール、ステアリル−β−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用してもよい。
【0017】
また、上記各重合法で得られた樹脂には、既知の酸化防止剤、例えば2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)4、6−ジメチルフェノール、2、2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4、4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート、トリス(ジ−ノニルヘニル)ホスファイトやカルシウム、錫などの無機安定剤;既知の紫外線吸収剤、例えばp−tert−ブチルフェニルサリシレート、2、2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノヘン、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾチアゾール;既知の滑剤、例えばパラフィンワックス、ステアリン酸、硬化油、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、n−ブチルステアレート、ケトンワックス、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド;既知の難燃剤、例えば酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛、トリクレジルホスフェート、塩素化パラフィン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモブタン、テトラブロモビスフェノールA;既知の帯電防止剤、例えばステアロアミドプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチルアンモニウムニトレート;既知の着色剤、例えば酸化チタン、カーボンブラック、その他の無機あるいは有機顔料、既知の充填剤、例えば炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、カーボン繊維、補強用エラストマーとしてMBS、SBR,SBS,SIS,あるいはそれらの水添物等を必要に応じて添加することができるが、これらに限られるものではない。さらにこれらの添加剤を樹脂に配合する際に添加剤を単独で配合してもよいし複数の種類の添加剤を配合してもよい。さらに他の樹脂とブレンドして成形に供することもできる。また、これらの添加剤は、重合プロセスの途中段階で添加してもよい。またシート、フィルムなどの製品表面の特性を改質するためにスチレン系樹脂やアクリル樹脂などで用いられている改質剤を塗布することができる。
【0018】
そして、本発明においては、連鎖移動剤の種類や使用量および添加時期を変えることにより、マトリックス樹脂の分子量を制御することができる。また、連鎖移動剤の種類や使用量および添加時期の他、攪拌条件を変えることにより、ゴム分散粒子の粒子径を制御することができる。また、透明性を維持させるために、重合過程で生成するポリマー組成を変化させないような方法が用いられる。例えば、重合途中に必要に応じて単量体を添加する方法や、連続的に追後添加するなどの方法が用いられる。
【0019】
本発明の樹脂組成物に使用されるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムは、(イ)スチレン5重量%〜30重量%とブタジエン70重量%〜95重量%から成るブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン95重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜5重量%から成るスチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)から成り、(ロ)ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)のガラス転移点が−80〜−35℃の範囲にあり、(ハ)該共重合ゴム中における、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合が好ましくは15〜90重量%、スチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)の占める重量割合が好ましくは85〜10重量%であり、(ニ)ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニル結合の割合が好ましくは8.0〜20.0重量%であり、(ホ)25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が好ましくは20〜50センチポイズの範囲にあり、(ヘ)スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し好ましくは62重量%以上であり、(ト)該ゴムのプロトンNMRスペクトルにおいて、6.88〜7.3ppmのケミカルシフトのピークの強度をM、6.3〜6.88ppmのケミカルシフトのピークの強度をNとするとき、下記式で定義されるRが好ましくは0.13以上であり、
Figure 0004763899
(チ)該共重合体ゴムのカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度をZとするとき、下記式で定義されるPが好ましくは0.1〜0.2の範囲にある。
Figure 0004763899
【0020】
さらに好ましくは、該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムは、(イ)スチレン5重量%〜25重量%とブタジエン75重量%〜95重量%から成るブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン98重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜2重量%から成るスチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)から成り、(ロ)ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)のガラス転移点が−75〜−40℃の範囲にあり、(ハ)該共重合ゴム中における、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合が、好ましくは60〜85重量%、スチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)の占める重量割合が好ましくは40〜15重量%であり、(ニ)ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニル結合の割合が、好ましくは10.0〜17.0重量%であり、(ホ)25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が、好ましくは25〜40センチポイズの範囲にあり、(ヘ)スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し、好ましくは62重量%以上であり、(ト)該ゴムのプロトンNMRスペクトルにおいて、6.88〜7.3ppmのケミカルシフトのピークの強度をM、6.3〜6.88ppmのケミカルシフトのピークの強度をNとするとき、下記式で定義されるRが、好ましくは0.19以上であり、
Figure 0004763899
(チ)該共重合体ゴムのカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度をZとするとき、下記式で定義されるPが、好ましくは0.1〜0.2の範囲にある。
Figure 0004763899
【0021】
本発明の樹脂組成物に使用されるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレンとブタジエンのランダム共重合体ブロック部(A)は、スチレン5〜30重量%とブタジエン70〜95重量%からなることが必要であり、さらに該ランダム共重合体Aのガラス転移点は−80〜−35℃の範囲にあることが必要である。これが、ゴム補強透明樹脂を得るための芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の混合化合物とのグラフト共重合に最適な、特に混合化合物と強い親和性を有する特定の構造である。そして、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレンとブタジエンのランダム共重合体ブロック部(A)が、スチレン5〜25重量%とブタジエン75〜95重量%からなり、また該ランダム共重合体Aのガラス転移点が−75〜−40℃の範囲にあると、芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物との混合化合物と一層強い親和性を有する特定の構造となり、その結果、ゴム補強透明樹脂の透明性、衝撃強度等の物性バランスが更に優れるようになり、好ましい。
【0022】
また、本発明の共重合ゴムにおけるブロック部(B)はスチレン単独重合体、あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体から成る。そしてその単量体組成はスチレン95重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜5重量%である。更に好ましくはブロック部(B)は、スチレン98重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜2重量%から構成されるスチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体から成る。
本発明の共重合ゴムにおいて、ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニルの結合割合は、20重量%を超えるとゴム粒子の形態や粒子径が不揃いになり耐衝撃性が劣り、8重量%未満ではゴム形態が不揃いになり耐衝撃性が劣る。また、本発明の共重合ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液の粘度は、20センチポイズ以下では耐衝撃性が劣り、50センチポイズを超える場合は、分散ゴム粒子の粒子径が不揃いになり、得られる樹脂の光沢が劣る。
【0023】
また本発明においては、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し62重量%以上であることが好ましい。スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴム連鎖中のスチレン単位数が1の短連鎖部分は、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムをオゾン分解(日本ゴム協会誌、54(9)564(1981))して得た成分のGPC(検知部に吸光波長254nmに設定した紫外吸光光度計検知器を使用)において、各カウント数に対応する分子量を標準ポリスチレンおよびポリスチレンオリゴマーを用いて作成した検量線から求められ、スチレンの1量体に対応する成分をいう。またスチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部とは、スチレンの1量体に対応する成分からスチレン30量体に対応する成分(酸化による分解生成物は水酸基やブタジエン残基を有するので、スチレン30量体は分子量4000の酸化分解生成物に対応するものとして扱う)までの部分をいう。
【0024】
そしてブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖の、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対する割合とは、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムをオゾン分解して得た成分のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、スチレン単位数が1〜30個の範囲にある全ピーク面積に対するスチレン単位数が1個の短連鎖のピーク面積の割合をいう。この割合が62重量%以上であると、ゴム補強透明樹脂を得るための芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の混合物とスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムとのグラフト共重合を行う際に、該混合物と該共重合体ゴムが一層強い親和性を有するようになり、その結果、透明性、衝撃強度、流動性等の実用物性に一層優れたゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂が得られるようになり、好ましい。
【0025】
本発明においては、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムのプロトンNMRスペクトルにおいて、6.88〜7.3ppmのケミカルシフトのピークの強度をM、6.3〜6.88ppmのケミカルシフトのピークの強度をNとするとき、下記式で定義されるRが0.13以上であることが好ましく、Rが0.19以上であると、更に好ましい。
Figure 0004763899
スチレンとブタジエンからなる共重合体のプロトンNMRスペクトルにおいて、共重合体を構成しているスチレンユニットに由来するベンゼン環のプロトンのピークは6.3〜7.3ppmに現れ、その中の6.3〜6.88ppmのケミカルシフトは、ポリマー鎖に沿ってスチレンユニットが複数連なったブロックスチレンユニットに由来するベンゼン環のオルト位のプロトンのピークであり、また6.88〜7.3ppmのケミカルシフトは、ポリマー鎖に沿ってスチレンユニットが不連続に結合した非ブロックスチレンユニットに由来するベンゼン環のオルト、メタ、パラ位のプロトンと、ブロックスチレンユニットに由来するベンゼン環のメタ、パラ位のプロトンが重なったものであると言われている(J.Polym.Sci.,vol.38,p.73-90(1959)、J.Polym.Sci.Part A-1,vol.9,p.315-362(1971)、工化,74巻,2号,p.287-295(1971)、Polym.,vol.25,p.1011-1019(1984)、等に記載)。
【0026】
そして6.88〜7.3ppmのケミカルシフトのピークの強度をM、6.3〜6.88ppmのケミカルシフトのピークの強度をNとするとき、共重合体中の非ブロックスチレンユニットのモル数をS1、ブロックスチレンユニットのモル数をS2とすると、下記式が成立し、
Figure 0004763899
これより、共重合体を構成している全スチレンユニット数の中の非ブロックスチレンユニット数の割合をRとすると、
R=S1/(S1+S2)=(2*M−3*N)/(2*M+2*N)
となる。
即ちRは、本発明においてスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴム中のスチレンユニットの結合様式を表す指標となり、これが0.13以上であると、ゴム補強透明樹脂を得るための芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の混合物とスチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴムとのグラフト共重合を行う際に、該混合物と該共重合体ゴムが更に強い親和性を有するようになり、透明性、衝撃強度、流動性等実用物性に優れたゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂が得られるようになる。またRが0.19以上の場合は、該混合物と該共重合体ゴムがなお一層強い親和性を有するようになり、衝撃強度が一段と優れたゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂が得られるようになる。なお、該ゴムのプロトンNMRスペクトルは、重クロロホルム、四塩化炭素、重テトラヒドロフラン等の重溶媒を用いて、公知の方法で測定される。
【0027】
本発明のスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムのカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度をZとするとき、下記式で定義されるPが0.1〜0.2であることが好ましい。
Figure 0004763899
スチレンとブタジエンからなる共重合体のカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークは、主にシス−1,4−ブタジエンユニットとスチレンユニットの2連鎖におけるシス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素及びシス−1,4−ブタジエンユニットと1,2ビニルユニットの2連鎖におけるシス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素の重なったもの、27〜28ppmのケミカルシフトのピークは、主に1,4−ブタジエンユニットとシス−1,4−ブタジエンユニットの2連鎖におけるシス−1,4−ブタジエンユニットの1位の炭素及びシス−1,4−ブタジエンユニットと1,4−ブタジエンユニットの2連鎖におけるシス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素の重なったもの、30〜31ppmのケミカルシフトのピークは、主にトランス−1,4−ブタジエンユニットとスチレンユニットの2連鎖におけるトランス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素及びトランス−1,4−ブタジエンユニットと1,2ビニルユニットの2連鎖におけるトランス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素の重なったもの、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークは、主に1,4−ブタジエンユニットとトランス−1,4−ブタジエンユニットの2連鎖におけるトランス−1,4−ブタジエンユニットの1位の炭素及びトランス−1,4−ブタジエンユニットと1,4−ブタジエンユニットの2連鎖におけるトランス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素の重なったもの、と帰属されている(Macromolecules,vol.22,p.1753-1756(1989)、等に記載)。
【0028】
そして本発明においては、該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムにおける1,2ビニルユニットの割合は比較的少ないことから、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークは、主にシス−1,4−ブタジエンユニットとスチレンユニットの2連鎖におけるシス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素に由来し、30〜31ppmのケミカルシフトのピークは、主にトランス−1,4−ブタジエンユニットとスチレンユニットの2連鎖におけるトランス−1,4−ブタジエンユニットの4位の炭素に由来すると見なすことができる。
その結果、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度をZとするとき、上記式で定義されるP値は本発明では、スチレンとブタジエンからなる共重合体におけるスチレンユニットと1,4-ブタジエンユニットの2連鎖の量の、1,4-ブタジエンユニットと1,4-ブタジエンユニットの2連鎖の量に対する割合を反映した値と見なしている。
【0029】
即ち本発明のP値は、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)におけるスチレンユニットと1,4ブタジエンユニットの結合様式を表す指標となる。このP値が0.1〜0.2の範囲にあると、ゴム補強透明樹脂を得るための芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の混合物とスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムとのグラフト共重合を行う際に、該混合物と該共重合体ゴムが特に強い親和性を有するようになり、透明性や衝撃強度がなお一層優れたゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂が得られるようになる。該ゴムのカーボンNMRスペクトルは、重クロロホルム、四塩化炭素、重テトラヒドロフラン等の溶媒を用いて、公知の方法で測定される。
【0030】
本発明の樹脂組成物に使用されるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムは、上記特性を有するスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムが得られる方法であれば特に制限はないが、好ましくは、炭化水素溶媒中において有機リチウム系触媒を用いた、通常のリビングアニオン重合法により製造される。
上記スチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴムを、有機リチウム系触媒を用い、炭化水素溶媒中において製造する場合、有機リチウム系触媒としては、たとえば、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、リチウムナフタレン等が用いられ、好ましくは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等が用いられる。
【0031】
炭化水素溶媒としてはペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、n−デカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
また極性物質を重合系に共存させて製造してもよい。極性物質としてはトリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルホスホルアミド、トリフェニルホスフィン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、カリウムブトキシド、ナトリウムブトキシド等が挙げられ、好ましくはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラヒドロフラン等が用いられる。
【0032】
本発明で用いられるスチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴムは、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレンーブタジエンランダム共重合体ブロック部(B)から成る。このようなスチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴムをリビングアニオン重合法で製造する方法としては、例えば、有機リチウム系触媒の存在する炭化水素溶媒中に、ブタジエンとスチレンの混合物を、設定された重合温度における該モノマーの重合速度よりも遅い重合速度で供給して重合する方法(例えば特公昭38−2394号公報等に記載の方法)を応用することが挙げられる。即ち、所望のブタジエンとスチレンの組成比を有するモノマー混合物を重合速度以下の速度で供給しながら重合し、次いで必要ならば、ブタジエンとスチレンの組成比の異なるモノマー混合物を重合速度以下の速度で供給し、更に必要ならば、この操作を1回以上繰り返すことによって、本発明のブロック共重合体ゴムにおけるブロック部(A)を重合し、引き続いてスチレンモノマー単独、或いは所望のブタジエンとスチレンの組成比を有するモノマー混合物を供給してブロック部(B)を重合できる。
【0033】
また、有機リチウム系触媒を含む重合系に極性物質を添加する方法(例えば特公昭36−15386号公報等に記載の方法)を応用することも、リビングアニオン重合法による製造方法として挙げることができる。即ち、有機リチウム系触媒と極性物質を含有する重合系に、所望のブタジエンとスチレンの組成比を有するモノマー混合物を重合させ、その後に必要ならばブタジエンとスチレンの組成比の異なるモノマー混合物を加えて重合し、更に必要ならばこの操作を1回以上繰り返すことによって、本発明のブロック共重合体ゴムにおけるブロック部(A)を重合し、引き続いてスチレンモノマー単独、或いは所望のブタジエンとスチレンの組成比を有するモノマー混合物を供給してブロック部(B)を重合できる。更にまた、これらの方法の組み合わせによる方法も可能である。
【0034】
また本発明において、該スチレンーブタジエン系ブロック共重合体ゴム中における、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合は好ましくは15〜90重量%であり、更に好ましくは15〜85重量%である。そしてブロック部(A)の占める重量割合は60〜85%の範囲にあるとなお好ましい。該共重合体ゴム中におけるブロック部(A)の占める重量割合が15重量%未満の場合、ゴム補強透明樹脂のゴム粒子径が小さくなり、衝撃強度が低下して、透明性と衝撃強度のバランスが劣るようになる。また該共重合体ゴム中におけるブロック部(A)の占める重量割合が90重量%を超える場合も、ゴム補強透明樹脂中の分散ゴム粒子と連続相との界面の接着性が下がるため、やはり衝撃強度が低下し、透明性と衝撃強度のバランスが劣るようになる。
【0035】
本発明におけるゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂は、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエンランダム共重合体ブロック部(B)から成るスチレンブタジエン系共重合体ゴムを3〜20重量部と、該ゴム状重合体と実質的に同等の屈折率を有し、一種以上の芳香族ビニル系化合物20〜80重量%と一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物20〜80重量%から成る芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体97〜80重量部とから構成される。好ましくは、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)とスチレン単独重合体あるいは大部分がスチレンより構成されるスチレン−ブタジエン共重合体ブロック部(B)から成るスチレンブタジエン系共重合体ゴムを5〜15重量部と、該ゴム状重合体と実質的に同等の屈折率を有し、一種以上の芳香族ビニル系化合物40〜65重量%と一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物35〜60重量%から成る芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体85〜95重量部とから構成されることが望ましい。
【0036】
本発明におけるゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物において、連続相を構成する芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、屈折率が該共重合体ゴムと実質的に同等である。屈折率を該共重合体ゴムと実質的に同等とするには、使用する該共重合体ゴムの化学組成に応じて該共重合体の芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合を制御する方法が用いられる。例えば該共重合体ゴムに含まれるスチレン構造単位の割合をX%、ポリスチレンの屈折率をnPS、ポリブタジエンの屈折率をnPB、該共重合体に含まれるスチレン系単量体構造単位の割合をY%、スチレン系単量体構造単位の屈折率をnS、(メタ)アクリル酸アルキルエステル構造単位の屈折率をnMとしたとき、下記の式I、式II、式IIIを満足させればよい。
|n1−n2|≦0.01 式I
n1=nPS×X÷100+nPB×(100−X)÷100 式II
n2=nS×Y÷100+nM×(100−Y)÷100 式III
式Iにおいてn1はゴム状重合体の屈折率であり、n2は共重合体の屈折率である。式II及び式IIIにおけるnPS、nPB、nS、nMの値は、用いる単量体の種類に基づいて、例えばポリマーハンドブック(Fourth Edition,VI/571)のような文献に記載されたものを用いることができる。また該共重合体ゴムに含まれるスチレン構造単位の割合X%、および該共重合体に含まれるスチレン系単量体構造単位の割合Y%は、体積分率、重量分率、モル分率のいずれでも構わず、いずれかの場合に式Iが満たされていればよい。この中でも好ましくは、体積分率或いは重量分率が用いられ、特に好ましくは重量分率が用いられる。
このように式I、式II、式IIIから、該共重合体の芳香族ビニル系化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合を求めることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物に由来するゴム状重合体の分散粒子の平均径は0.3〜2.1μmの範囲にあり、好ましくは、ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物に由来するゴム状重合体の分散粒子の平均径は、0.5〜1.0μmの範囲である。平均粒子径が2.1μmを超えると外観が不良となり、0.3μm未満では耐衝撃性が低下し好ましくない。ここでいう平均粒子径とは、LS−230(米国コールター社の分散粒子径測定機の商標)により、ジメチルホルムアミドを分散剤として測定し、体積平均値を求める。粒子径分布状態は特に制限はなく、単峰分布である分布状態、双山分布を有する分布状態であればよい。
また本発明のゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物に由来するゴム状重合体の分散粒子のガラス転移点は−75〜−30℃の範囲にあることが好ましく、−70〜−35℃の範囲にあると一層好ましい。該分散粒子のガラス転移点が−75〜−30℃の範囲にあると、得られるゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂は優れた耐衝撃性を示すようになる。該分散粒子のガラス転移点の測定方法は特に制限はないが、DSCや動的粘弾性等の公知の方法で測定され、好ましくはDSC等が用いられる。
【0038】
得られた樹脂組成物は、射出成形や押出成形によって各種成形品を成形することができる。さらに、Tダイシート押出機、キャスト加工装置、二軸延伸加工機、インフレーション加工装置を用いて、シートやフィルムに成形することができる。得られた成形品は、その優れた透明性、耐衝撃性を利用して、カバー類、ケース類、日用雑貨などに使用される。特にスチレン系樹脂シート、フィルム用素材として有用であり、食品包装容器、日用雑貨包装用、ラミネーションシートフィルムとして好適に使用できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の、ゴム状重合体を分散粒子として含有するゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂は、従来から公知の方法で製造することができる。すなわち、ゴム状重合体を芳香族ビニル系化合物および(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、必要に応じ重合溶媒、重合開始剤からなる原料溶液に溶解し、通常用いられるラジカル系触媒の存在下、非存在下において、その原料を攪拌機付き反応器に供給し重合を行う。重合温度はゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の流動性、生産性、反応器の除熱能力等を考慮して決定することができる。重合終了後、未反応単量体、重合溶媒などを除去するため、真空下で処理を行い、ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂を得る。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、実施例および比較例において示すデータは、下記方法に従って測定した。
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの分子量分布は、GPC法により、次の条件で測定した。
溶媒(移動相):THF、脱気装置:ERMA社製ERC−3310、ポンプ:日本分光社製PU−980,流速1.0ml/min、オートサンプラ:東ソー社製AS−8020、カラムオーブン:日立製作所製L−5030、設定温度40℃、カラム構成:東ソー社製TSKgurdcolumn MP(×L)6.0mmID×4.0cm 1本、および東ソー社製TSK−GEL MULTIPORE HXL−M 7.8mmID×30.0cm 2本、計3本、検出器:RI 日立製作所製L−3350、データ処理:SIC480データステーション。
【0041】
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムのプロトンNMRスペクトルは、ゴム20mgを1mlの重クロロホルムに溶解して、日本電子製JNM−α500 FT−NMRを用いて次の条件で測定した。
パルス幅=5.90μs(45°)、データポイント=16384、繰り返し時間=7.0480秒、ADコンバーター=32Kビット、積算回数=512、サンプル管=5mmφ、測定温度=24℃
得られたプロトンNMRスペクトルから、6.88〜7.3ppmのピーク(面積をMとする)と6.3〜6.88ppmのピーク(面積をNとする)をピーク分離して、各ピークの面積M及びNを求め、下記式で定義されるRを算出した。
Figure 0004763899
【0042】
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムのカーボンNMRスペクトルは、ゴム100mgを1mlの重クロロホルムに溶解させて、Bruker製ACP250FT−NMRを用いて次の条件で測定した。
モード=INVGATE、パルス幅=2.3μs(45°)、データポイント=32k、繰り返し時間=6.049秒、ADコンバーター=32Kビット、積算回数=1万、サンプル管=5mmφ、測定温度=24℃
得られたカーボンNMRスペクトルにおいて、24.5〜25.5ppmのケミカルシフトのピークの強度(面積値)をW、27〜28ppmのケミカルシフトのピークの強度(面積値)をX、30〜31ppmのケミカルシフトのピークの強度(面積値)をY、32.5〜33ppmのケミカルシフトのピークの強度(面積値)をZとして、下記式で定義されるPを求めた。
Figure 0004763899
【0043】
ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖の、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体に対する割合は、次のように求めた。
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴム連鎖中のスチレン単位数が1個の短連鎖スチレン部分は、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムをオゾン分解(日本ゴム協会誌、54(9)564(1981))して得た成分のGPC(検知部に吸光波長254nmに設定した紫外吸光光度計検知器を使用)において、各カウント数に対応する分子量を標準ポリスチレンおよびポリスチレンオリゴマーを用いて作成した検量線から求め、スチレンの1量体に対応する成分を求めた。さらに、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部分は、スチレンの1量体に対応する成分からスチレン30量体に対応する成分(酸化による分解生成物は水酸基やブタジエン残基を有するので、スチレン30量体は分子量4000の酸化分解生成物に対応するものとして扱った)までの部分(以後これを短連鎖スチレン部分と呼ぶ)とした。そして、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムをオゾン分解して得た成分のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、スチレン単位数が1〜30個の範囲にある全ピーク面積に対するスチレン単位数が1個の短連鎖のピーク面積の割合を、ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部に存在するスチレン単位数が1の短連鎖の、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体に対する割合とした。
【0044】
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムをオゾン分解して得た成分のゲルパーミエーションクロマトグラムは次の条件で得た。
溶媒(移動相):THF、脱気装置:ERMA社製ERC−3310、ポンプ:日本分光社製PU−980,流速0.5ml/min、オートサンプラ:東ソー社製AS−8020、カラムオーブン:日立製作所製L−5030、設定温度40℃、カラム構成:東ソー社製TSK−GEL G3000HXL 7.8mmID×30.0cm1本、および東ソー社製TSK−GEL G2000HXL 7.8mmID×30.0cm1本、および東ソー社製TSK−GEL G1000HXL 7.8mmID×30.0cm4本、計6本、検出器:UV 日本分光UV−970(波長254nm,D2ランプ使用)、データ処理:SIC480データステーション。
【0045】
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムにおける、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ブロック部(A)のガラス転移点は、セイコー電子工業社製DSC装置「DSC−200」およびTAステーション「SSC−5000」を使用し、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを試料に用いて、次の条件で測定した。
室温から、ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで昇温し、その温度で約10分間保持し、20〜25℃/分の冷却速度でポリブタジエンのガラス転移温度マイナスアルファの温度まで冷却し、その温度で約10分間保持した後、再度ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで10℃/分の昇温速度で昇温し(n=1)、その温度で約10分間保持し、20〜25℃/分の冷却速度でポリブタジエンのガラス転移温度マイナスアルファの温度まで冷却し、その温度で約10分間保持した後、再度ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで10℃/分の昇温速度で昇温し(n=2)、2度の測定結果の平均値を記録した。
【0046】
また、ゴム変性芳香族ビニル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体中に分散した軟質分散粒子のガラス転移点は、ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂試料a(約1gを精秤)をアセトン/メチルエチルケトンの4/6(体積比)混合溶剤30ccに分散し、不溶分を遠心分離法にて分離して乾燥したものを、セイコー電子工業社製DSC装置「DSC−200」およびTAステーション「SSC−5000」を使用し、次の条件で測定した。
室温から、ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで昇温し、その温度で約10分間保持し、20〜25℃/分の冷却速度でポリブタジエンのガラス転移温度マイナスアルファの温度まで冷却し、その温度で約10分間保持した後、再度ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで10℃/分の昇温速度で昇温し(n=1)、その温度で約10分間保持し、20〜25℃/分の冷却速度でポリブタジエンのガラス転移温度マイナスアルファの温度まで冷却し、その温度で約10分間保持した後、再度ポリスチレンの融点プラスアルファの温度まで10℃/分の昇温速度で昇温し(n=2)、2度の測定結果の平均値を記録した。
【0047】
また、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムのミクロ構造、特にブタジエン部のビニル結合含有量とスチレン含有率は、赤外分光分析法(Hampton,Anal.Chem.,21,923(1949))により、また、スチレン溶液粘度は、オストワルド粘度計により測定した。
ゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物のグラフト率は試料S1(約1gを精秤)をアセトン/メチルエチルケトンの4/6(体積比)混合溶剤30ccに分散し、不溶分を遠心分離法にて分離して乾燥し、不溶分の重量(S2)を精秤し次の式1で求める。但しS3は試料S1中のゴム状状重合体の含有率を示す。
{式1} グラフト率(g)=[(S2/S1)−S3]/S3×100
膨潤指数は、試料S4(約1gを精秤)をトルエン30ccに投入し、1時間攪拌して溶解させた後、遠心分離して上澄みを除去し、残存した膨潤物の重量(S5)を精秤し、続いて残存した膨潤物を真空乾燥して得られる乾燥固形分の重量(S6)を精秤した結果より、下記式2により決定される特性値である。
{式2} 膨潤指数=S5/S6
【0048】
表面光沢、全光線透過率および曇価はJIS−K7105、シャルピー衝撃強度はJIS K−7111(ノッチ付き)、曲げ弾性率および曲げ応力はJISK−7203、引張り強度、引張り弾性率および伸びはJIS K−7113、および高温化における流動性はJIS K−7210に準拠して測定した。同様、落錘衝撃強度は、厚さ2mmの平板を射出成形機により成形し、落錘グラフィックインパクトテスター(東洋精機製作所の計装化落錘衝撃試験機の商標)を用いて、高さ62cmより質量6.5kgの重鎮をホルダー(径40mm)に固定した試験片平面上に自然落下させ、重鎮下部に設けてあるストライカー(径12.7mm)によって試験片を完全破壊または貫通させ、この時に要した全エネルギー(全吸収エネルギーと称す)を測定した。また、ゴム変性スチレン系共重合樹脂組成物中のポリブタジエンゴム成分量は、二重結合に塩化ヨウ素を付加して測定するハロゲン付加法により求めた。
【0049】
【実施例1】
該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(A)は、US3、094、512をはじめとするスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法の条件が大略利用される。
具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・撹拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において水分含量10ppm以下に脱水しテトラヒドロフラン150ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレン8.75kg/hと、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエン35kg/hを同時に4時間フィードし重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で55kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100重量部に対して0.08重量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
【0050】
次に、安定剤として2,4、-ビス[(オクチルチオ)メチル]ーOークレゾールをポリマーに対し0.2%の割合で添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレンーブタジエン系ブロック共重体ゴムを得た。このスチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表1、2に示す。
【0051】
【実施例2】
該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(A)は、US3、094、512をはじめとするスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法の条件が大略利用される。
具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・撹拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において水分含量10ppm以下に脱水しテトラヒドロフラン150ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレン3.89kg/hと、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエン35kg/hを同時に4時間フィードし重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で75kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100重量部に対して0.08重量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
【0052】
次に、安定剤として2,4、-ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾールをポリマーに対し0.2%の割合で添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレンーブタジエン系ブロック共重体ゴムを得た。このスチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表1、2に示す。
【0053】
【実施例3】
該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(A)は、US3、094、512をはじめとするスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法の条件が大略利用される。
具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・撹拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において水分含量10ppm以下に脱水しテトラヒドロフラン150ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレン15kg/hと、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエン35kg/hを同時に4時間フィードし重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で30kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100重量部に対して0.08重量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
【0054】
次に、安定剤として2,4、-ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾールをポリマーに対し0.2%の割合で添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレンーブタジエン系ブロック共重体ゴムを得た。このスチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表1、2に示す。
【0055】
【実施例4】
該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(A)ブロック部は、US3、094、512をはじめとするスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法、すなわち、ある条件下において重合速度>スチレン−ブタジエン混合モノマー供給速度である関係が成立する製造条件が大略利用される。
具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・撹拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において水分含量10ppm以下に脱水しN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン40ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレン6.18kg/hと、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエン35kg/hを同時に4時間フィードし重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で68.28kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100重量部に対して0.08重量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
【0056】
次に、安定剤として2,4、-ビス[(オクチルチオ)メチル]ーOークレゾールをポリマーに対し0.2%の割合で添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレンーブタジエン系ブロック共重体ゴムを得た。このスチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.017重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表3、4に示す。
【0057】
【実施例5】
該スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するスチレン−ブタジエンランダム共重合体(A)ブロック部は、US3、094、512をはじめとするスチレン−ブタジエン系ランダム共重合体ゴムの製造方法、すなわち、ある条件下において重合速度>スチレン−ブタジエン混合モノマー供給速度である関係が成立する製造条件が大略利用される。
具体的な実施方法は、内容積1000Lのジャケット・コイル・撹拌機付きステンレス製重合槽を、水分含量10ppm以下に脱水したシクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において水分含量10ppm以下に脱水しテトラヒドロフラン100ppmを含むシクロヘキサン540kgを重合槽に仕込み、内温80℃に昇温後、n−ブチルリチウム10wt%のシクロヘキサン溶液を0.8kg添加した。次に、内温80℃一定の条件下で、水分含量10ppm以下に脱水したスチレン3kg/hと、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエン35kg/hを同時に4時間フィードし重合した。その後、水分含量10ppm以下に脱水したスチレンを80℃で81kg添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で10分間重合し、仕込んだスチレンを全て重合させた。その後、重合溶液を次の反応槽へ移送し、水を重合体100重量部に対して0.08重量部加えて重合を停止した後、次の反応槽に移行する間に炭酸ガスを加え中和した。
【0058】
次に、安定剤として2,4、-ビス[(オクチルチオ)メチル]ーOークレゾールをポリマーに対し0.2%の割合で添加してからスチームストリッピングにより溶媒を除去し、100℃の熱ロールにて乾燥してスチレンーブタジエン系ブロック共重体ゴムを得た。このスチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.017重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表3、4に示す。
【0059】
【比較例1】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本ゼオン社製NS−316S)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表5,6に示す。
【0060】
【比較例2】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本ゼオン社製NS−312S)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表5,6に示す。
【0061】
【比較例3】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本エラストマー社製670A)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.015重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表5,6に示す。
【0062】
【比較例4】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本ゼオン社製NS−316S)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.017重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表7,8に示す。
【0063】
【比較例5】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本ゼオン社製NS−312S)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.017重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表7,8に示す。
【0064】
【比較例6】
スチレンーブタジエンブロック共重合体ゴム(日本エラストマー社製670A)7.9重量%をスチレンモノマー46.6重量%、メタクリル酸メチル32.5重量%、アクリル酸ブチル4.6重量%とエチルベンゼン8.4重量%に溶解した溶液100重量部と1、1ービス(tertーブチルパーオキシル)3、3、5ートリメチルシクロヘキサン0.017重量部からなる溶液を第1重合機に連続的に送入し、125℃の重合温度で攪拌重合反応した後、引き続きプラグフロー型反応器に連続的に全量装入して重合した。その後重合率85%まで重合し、その溶液をベント式押出機に供給して230℃、減圧下で揮発性成分を除去しダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種分析値および固体物性評価結果を表7,8に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004763899
【0066】
【表2】
Figure 0004763899
【0067】
【表3】
Figure 0004763899
【0068】
【表4】
Figure 0004763899
【0069】
【表5】
Figure 0004763899
【0070】
【表6】
Figure 0004763899
【0071】
【表7】
Figure 0004763899
【0072】
【表8】
Figure 0004763899
【0073】
【発明の効果】
スチレンとブタジエンのランダム共重合体ブロック部と主としてスチレン重合体ブロック部から構成されるスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる特定の性質を有するゴム状重合体を用いて得られるゴム変性芳香族ビニル樹脂組成物は、良好な透明性を有し、実用物性、特にシャルピー衝撃強度や落錘衝撃強度が著しく向上する。成形加工性、剛性とのバランスにも優れ、成形加工、シート加工、発泡成形などに好適である。またその製造方法を提供するものであり、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (10)

  1. スチレン5〜30重量%とブタジエン70〜95重量%とを連続的に一定比率で供給し重合した後、更に、スチレン95〜100重量%とブタジエン0〜5重量%を添加して重合することにより、ブタジエンを70〜95重量%含有し、ガラス転移点が−80〜−35℃であるスチレンとブタジエンのランダム共重合体からなるブロック部(A)と、スチレンを95〜100重量%含有するスチレン単独重合体又はスチレンとブタジエンのランダム共重合体からなるブロック部(B)とで構成されるスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを得る工程と、
    前記スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの存在下で、スチレン20〜80重量%と、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル合計で20〜80重量%とを共重合する工程と、を有し、
    前記スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを3〜20重量%含有し、該共重合体ゴム相を分散粒子として含み、前記分散粒子の平均粒子径が0.3〜2.1μmである芳香族ビニル系共重合体樹脂を得ることを特徴とする透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物の製造方法。
  2. 芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中に分散した分散粒子のガラス転移点が−75〜−30℃の範囲にある、請求項1記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の製造方法。
  3. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムが、
    (1)ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニル結合の割合が8.0〜20.0重量%であり、
    (2)25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が20〜50センチポイズの範囲にある請求項1、2のいずれかに記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の製造方法。
  4. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴム中における、
    ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合が15〜90重量%、
    スチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)の占める重量割合が85〜10重量%の範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の製造方法。
  5. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し62重量%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂の製造方法。
  6. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの存在下に芳香族ビニル系化合物および一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を共重合して得た、共重合ゴム相を分散粒子として含有する芳香族ビニル系共重合樹脂において、
    (a)上記スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムの重量割合が3〜20重量%で、
    (b)該ゴムが、
    (1)スチレン5重量%〜30重量%とブタジエン70重量%〜95重量%とから成り、ランダムに均一に分布した構造のブタジエンとスチレンのスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体(A)と、
    スチレン95重量%〜100重量%とブタジエン0重量%〜5重量%とから成るスチレン単独重合体あるいは、ランダムに均一に分布した構造のブタジエンとスチレンのスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体(B)と、から成り、
    (2)ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)のガラス転移点が−80〜−35℃の範囲にあり、かつ
    (c)芳香族ビニル系化合物および一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物からなる芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量割合が97〜80重量%であり、
    (d)該芳香族ビニル系化合物および一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物からなる該共重合体の組成割合が、一種以上の芳香族ビニル系化合物20〜80重量%と一種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物20〜80重量%から成り、かつ、
    (e)上記芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体中に分散した分散粒子の平均粒子径が0.3〜2.1μmの粒子であり、
    (f)上記芳香族ビニル系化合物がスチレンであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物がメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルの混合物であることを特徴とする透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物。
  7. 芳香族ビニル系化合物−(メタ)アクリル酸エステル共重合体中に分散した分散粒子のガラス転移点が−75〜−30℃の範囲にある請求項6記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物。
  8. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムが、
    (1)ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2ビニル結合の割合が8.0〜20.0重量%であり、
    (2)25℃における5重量%スチレン溶液の粘度が20〜50センチポイズの範囲にある請求項6、7のいずれか1項に記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物。
  9. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴム中における、
    ブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)の占める重量割合が15〜90重量%、
    スチレン単独重合体あるいはブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(B)の占める重量割合が85〜10重量%の範囲にある請求項6〜8のいずれか1項に記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物。
  10. スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体ゴムを構成するブタジエンとスチレンのランダム共重合体ブロック部(A)に存在するスチレン単位数が1の短連鎖が、スチレン単位数が1〜30個の範囲の短連鎖スチレン重合体部に対し62重量%以上である請求項6〜9のいずれか1項に記載の透明なゴム変性芳香族ビニル系共重合樹脂組成物。
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