JP4754419B2 - プラズマ異常放電診断方法、プラズマ異常放電診断システム及びコンピュータプログラム - Google Patents

プラズマ異常放電診断方法、プラズマ異常放電診断システム及びコンピュータプログラム Download PDF

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Description

本発明は、プラズマの異常放電を診断する方法、プラズマ異常放電診断システム及びコンピュータプログラムに関する。
プラズマを利用して、半導体ウエハやフラットディスプレイパネル等の基板に薄膜の形成、エッチング、表面の改質等の処理を行うプラズマ処理装置が用いられている。プラズマ処理装置では、チャンバ内に処理ガスを導入し且つチャンバ内に高周波電力を印加することによって処理ガスからプラズマを発生させ、該プラズマによって基板にプラズマ処理を施す。プラズマは不安定で、半導体製造工程のように多種の元素を扱う場合には、どのような状態にあるのかを計測することが難しい。
プラズマ処理装置のチャンバ内に高周波電力を印加するとき種々の要因によって、例えばアーキングなどの異常放電が発生することがある。この異常放電は、基板やチャンバ内に配置された構成部品にダメージを与える。例えば、基板としての半導体ウエハの表面にクラックやノッチ等を発生させ、あるいは構成部品を焼損させる。また、プラズマ異常放電はチャンバ内の構成部品、例えば、上部電極に付着したデポジット等を剥離させてパーティクルを発生させる。
プラズマ異常放電による半導体ウエハや構成部品の損傷、及びパーティクルの発生を防止するために、異常放電を早期に検出し、該異常放電が検出されたときにはプラズマ処理装置の動作を停止する必要がある。従来、異常放電を早期に検出する方法として、例えば、チャンバ内の電極に接続された給電棒の電流値をモニタする方法や、該電極からの高周波電圧の反射波をモニタする方法等があるが、これらの方法は感度が悪く、特に、微小な異常放電を検出することができない。
そこで、近年、異常放電時のAE(Acoustic Emission)事象を検出する方法が開発されている。この方法では、異常放電時のエネルギー放出に起因して超音波を検出する超音波センサを用いる。
この方法を用いる装置として、チャンバの外壁に複数の超音波センサを備え、該センサによって異常放電時のエネルギー放出に起因する超音波を検出する装置や、半導体ウエハを載置する載置台としてのサセプタ又は載置された半導体ウエハの周辺に配されたフォーカスリングに当接する複数の音響プローブと、該音響プローブを伝播する超音波を検出する超音波検出部とを備え、これにより上記超音波を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
超音波センサは異常放電時のエネルギー放出に起因する超音波だけでなく、プラズマ処理装置のゲートバルブの開閉等に起因する機械的振動によるノイズも信号として検出する。そのため、超音波センサが異常放電に起因する超音波を検出したのか、機械的振動によるノイズを検出したのかを区別する必要がある。
プラズマ異常放電を検出する技術として、例えば特許文献2の技術は、プラズマ処理装置に取り付けた超音波センサと、超音波センサの超音波検出出力を処理して異常放電を検知する処理手段とを少なくとも備えたプラズマ処理装置の異常放電検出装置の処理手段に、相対的に低周波数側の信号のみを透過する第1のフィルタと、相対的に高周波数側の信号のみを透過する第2のフィルタとの少なくとも2つのフィルタを設ける。
また、特許文献3の技術は、プラズマ処理装置に超音波センサと電位プローブとを備え、電位プローブで電位変動を検出し、さらに、超音波センサで超音波を検出する。そして、電位変動が検出されたタイミングと同じタイミングで超音波が検出されたと判別した場合に、異常放電が発生したと判別する。
特開2003−100714号公報 特開2003−173896号公報 特開2006−128304号公報
異常放電に起因する超音波と機械的振動によるノイズの周波数分布が異なることを想定して、それらを区別するために超音波センサによって検出された信号の周波数解析が有効と考えられていた。
しかし、特許文献2のように、時系列データを異なる帯域のフィルターに入力し、それぞれのフィルター出力の最大振幅の比によって、そのデータの違いを検出する方法においては、バルブの開閉等の装置操作による音響か、あるいは装置の周りの環境音が同様の周波数帯域、振幅を有する場合にはプラズマの異常放電を識別できない。
近年、本発明者による実験により、異常放電に起因する超音波の周波数分布がプラズマ処理装置における異常放電発生箇所によって変化することが明らかになった。プラズマ処理装置ごとに、異常放電に起因する超音波の周波数分布が異なることも予想されている。
また、プラズマ処理装置に備えられた超音波センサなどの時系列データについて、正常なプラズマの状態と異常放電状態とで、確率密度及びパワースペクトルが同じになる場合がある。したがって、プラズマ処理装置に備えられた超音波センサなどの時系列データから、周波数パワースペクトルを推定し、スペクトル形状について正常時と比較しても、そのパワースペクトル上に特徴的な差異が無い場合があり、異常放電を識別できない。このように、従来の時系列データ解析では、明瞭にかつ定量的に時系列データ間の違いを示すことが出来ない場合が多々ある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマ処理装置に多くのセンサを備える必要がなく、精度の高いプラズマ異常放電診断方法及びプラズマ異常放電診断システムを提供することである。
本発明の第1の観点に係るプラズマ異常放電診断方法は、
プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップで取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出ステップと、
前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出ステップで算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定ステップと、
を備えることを特徴とする。
特に、前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される並進誤差であって、
前記決定論性算出ステップは、
前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込みステップと、
前記埋め込みステップで算出された埋め込みベクトルのうち、ある埋め込みベクトルについて所定の数の最も近接するベクトルを抽出する最近接ベクトル抽出ステップと、
前記最近接ベクトル抽出ステップで抽出した所定の数の最も近接するベクトルの分散である並進誤差を算出する並進誤差算出ステップと、
を含み、
前記異常放電判定ステップは、
前記プラズマ発生中に、前記並進誤差算出ステップで算出された並進誤差が前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
又は、前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される順列エントロピーであって、
前記決定論性算出ステップは、
前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込みステップと、
前記埋め込みステップで算出された所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルについて、前記埋め込みベクトルの要素の大小関係が有する順序と同じ順序の度数を累計し、前記所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルの数に対する相対実現度数として算出する実現度数算出ステップと、
前記埋め込みベクトルの次元の数の順序からなる全ての順列を確率変数とし、前記実現度数算出ステップで算出された前記相対実現度数を確率分布とするエントロピーである順列エントロピーを算出する順列エントロピー算出ステップと、
を含み、
前記異常放電判定ステップは、
前記プラズマ発生中に、前記順列エントロピー算出ステップで算出された順列エントロピーが前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
なお、前記プラズマの状態に伴って変動する時系列データが、AE(Acoustic Emission)センサ、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ、又はラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブから得られるプラズマセンサの時系列データのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
好ましくは、前記埋め込みベクトルの次元が6以上であることを特徴とする。
さらに、前記最近接ベクトル抽出ステップは、前記ある埋め込みベクトルについて4以上の最も近接するベクトルを抽出し、
前記並進誤差算出ステップは、前記4以上の最も近接するベクトルのうちの4つの最も近接するベクトルの軌道について、5単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差を算出し、
前記異常放電判定ステップは、前記4つの最も近接するベクトルの軌道について、前記単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差が0.1以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
好ましくは、前記順列エントロピー算出ステップは、完全ランダム過程の順列エントロピーを上限値として正規化した順列エントロピーを算出し、
前記異常放電判定ステップは、前記正規化した順列エントロピーが0.8以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
本発明の第2の観点に係るプラズマ異常放電診断システムは、
プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段で取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出手段と、
前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出手段で算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定手段と、
を備えることを特徴とする。
特に、前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される並進誤差であって、
前記決定論性算出手段は、
前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込み手段と、
前記埋め込み手段で算出された埋め込みベクトルのうち、ある埋め込みベクトルについて所定の数の最も近接するベクトルを抽出する最近接ベクトル抽出手段と、
前記最近接ベクトル抽出手段で抽出した所定の数の最も近接するベクトルの分散である並進誤差を算出する並進誤差算出手段と、
を含み、
前記異常放電判定手段は、
前記プラズマ発生中に、前記並進誤差算出手段で算出された並進誤差が前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
又は、前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される順列エントロピーであって、
前記決定論性算出手段は、
前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込み手段と、
前記埋め込み手段で算出された所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルについて、前記埋め込みベクトルの要素の大小関係が有する順序と同じ順序の度数を累計し、前記所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルの数に対する相対実現度数として算出する実現度数算出手段と、
前記埋め込みベクトルの次元の数の順序からなる全ての順列を確率変数とし、前記実現度数算出手段で算出された前記相対実現度数を確率分布とするエントロピーである順列エントロピーを算出する順列エントロピー算出手段と、
を含み、
前記異常放電判定手段は、
前記プラズマ発生中に、前記順列エントロピー算出ステップで算出された順列エントロピーが前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
なお、前記プラズマの状態に伴って変動する時系列データが、AE(Acoustic Emission)センサ、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ、又はラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブから得られるプラズマセンサの時系列データのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする。
好ましくは、前記埋め込みベクトルの次元が6以上であることを特徴とする。
さらに、前記最近接ベクトル抽出手段は、前記ある埋め込みベクトルについて4以上の最も近接するベクトルを抽出し、
前記並進誤差算出手段は、前記4以上の最も近接するベクトルのうちの4つの最も近接するベクトルの軌道について、5単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差を算出し、
前記異常放電判定手段は、前記4つの最も近接するベクトルの軌道について、前記単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差が0.1以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
ことを特徴とする。
好ましくは、前記順列エントロピー算出手段は、完全ランダム過程の順列エントロピーを上限値として正規化した順列エントロピーを算出し、
前記異常放電判定手段は、前記正規化した順列エントロピーが0.8以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態と判定する、
ことを特徴とする。
本発明の第3の観点に係るコンピュータプログラムは、
プラズマの異常放電を診断するために、コンピュータを、
プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段で取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出手段と、
前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出手段で算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定手段、
として機能させることを特徴とする。
本発明のプラズマ異常放電診断方法及びプラズマ異常放電診断システムによれば、一見して異なる時系列データでパワースペクトルが同じになるようなデータでも、時系列データの背後にある決定論的構造を定量化し、時間遅れ座標変換により時系列データから位相空間における軌道を再構成することによって、プラズマが正常時と異常放電時の時系列データの違いを定量的に表現できる。そして、比較的少ないデータ数でも精度の高いプラズマ異常放電診断ができる。また、設備毎に多くのセンサを設置する必要がない。
(実施の形態1)
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。半導体製造装置などのプラズマ処理装置を診断の対象としたプラズマ異常放電診断システムを例にして以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ異常放電診断システム1の論理的な構成を示すブロック図である。プラズマ異常放電診断システム1は、AE(Acoustic Emission:音響放出)センサ3、データ取得部21、埋込ベクトル生成部22、近接ベクトル抽出部23、並進誤差演算部24、中央値演算・平均処理部25、データ保持部5、異常放電判定部26、表示処理部27、表示装置7、プリンタ装置8などから構成される。データ保持部5には、プラズマ異常放電診断の対象となる設備の状態を表す収集時系列データ51、埋め込みベクトルデータ52、最近接ベクトルデータ53及び並進誤差データ54が記憶保持される。プラズマ異常診断システム1は、プラズマ処理装置2において、プラズマが異常放電しているかどうかを診断する。
ここで、並進誤差とそれが決定論性を表す指標となることを説明する。Waylandらの時系列解析アルゴリズム(R. Wayland, D. Bromley, D. Pickett, and A. Passamante, Physical Review Letters, Vol. 70, pp. 580-582, 1993.)を用いると、複雑な変動においてどの程度決定論的側面が認められるか定量的に評価できる。
時系列データ{r(ti)}(i=0,...,N−1)から、ある時刻tiにおける埋め込みベクトル
r(ti)={r(ti),r(ti−Δt),...,r(ti−(n−1)Δt)}
を生成する。右肩の添え字は転置行列を表す。nは適当な埋め込み次元である。Δtは、例えば、相互情報量から選択された適当な時差である。
埋め込みベクトルの集合から、ある埋込ベクトルr(t0)のK個の最近接ベクトルを抽出する。ベクトル間距離はユークリッド距離で測る。K個の最近接ベクトルをr(tj) (j =0,...,K)と書く。r(tj)の各々について、TΔtだけ時間が経過した後のベクトルはr(tj+TΔt)である。このとき、時間の経過(時間推進ステップ)TΔtに伴う埋め込みベクトルの軌道の変化は、
v(tj)=r(tj+TΔt)− r(tj) (1)
によって近似的に与えられる。時間発展の様子が決定論的に見えるならば、近接ベクトルの各軌道群の近接した部分は、TΔt後に近接した部分に移されるであろう。したがって、v(tj)の方向の分散は、観測された時間発展がどの程度決定論的に見えるかを定量的に評価する指標となる。v(tj)の方向の分散は次式で与えられる。




Etransは並進誤差(translation error)と呼ばれる。r(t0)の選択から生じるEtransの誤差を抑えるために、無作為に選択したM 個のr(t0)に関するEtransの中央値を求める操作をQ 回繰り返し、Q 個の中央値の平均値でEtransを評価する。時系列データの決定論的側面が増加するにつれてEtrans→0となる。時系列データが白色ノイズならば、差分ベクトルv(tj)は一様等方に分布するから、中央値としてのEtransは1に近い値となる。時系列データが強い線形相関をもつ確率過程ならば、自己相関のために近接軌道群の方向がある程度揃うので、Etransは1よりも小さい値をとる。
数値実験によると、Etrans >0.5である。0.1<Etrans<0.5の範囲では、確率過程である場合もあるし、また、観測ノイズに汚染された決定論的時系列であることもあり得る。Etrans <0.1ならば、確率過程では説明できず、決定論的側面は十分に認められる。
本実施の形態では、並進誤差Etransがプラズマの状態を示す時系列データの決定論性を表す指標となることを利用して、プラズマの異常放電状態を診断する。プラズマが正常な状態におけるAEセンサの時系列データは様々な外乱によって不規則に変動し、確率論的であると考えられる。プラズマが異常放電状態のときは、異常放電によって音響放出が支配され決定論的であると考えられるので、並進誤差が所定のしきい値以下の小さい値になったときに、プラズマが異常放電状態になったと判定する。
図1に戻って、プラズマ異常放電診断システム1の各部の作用を説明する。データ取得部21は、診断対象の設備の状態を示す時系列データを収集し、データ保持部5に収集時系列データ51として記憶する。時系列データとしてはAEセンサのデータ以外に、例えば、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ又はプラズマセンサなどのデータである。プラズマセンサは、例えば、ラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブ等から構成される。これらのセンサで検出する値は、プラズマが異常放電状態のときに変化すると考えられる。プラズマの状態を示す時系列データは各種のセンサ(図示せず)から、適当な周期でサンプリングして入力される。
埋込ベクトル生成部22は、収集時系列データ51から前述の埋め込みベクトルr(ti)を生成する。埋め込みベクトルの次元nと時差Δtは、時系列データの特性に合わせて予め設定しておく。埋込ベクトル生成部22は、生成した埋め込みベクトルの集合をデータ保持部5に記憶する(埋め込みベクトルデータ52)。
近接ベクトル抽出部23は、埋め込みベクトルの集合から任意の埋め込みベクトルr(t0)を選択し、埋め込みベクトルの集合から選択された埋め込みベクトルr(t0)に最も近接するK個の埋め込みベクトル(最近接ベクトル)r(tj)(j=0,1,...,K)を抽出する。無作為に選択したM個の埋め込みベクトルについて、最近接ベクトルを抽出し、データ保持部5に記憶する(最近接ベクトルデータ53)。近接ベクトルの数Kと選択数Mは、並進誤差演算の統計誤差を抑えるために時系列データの性質に合わせて予め設定する。さらに、M個の埋め込みベクトルの無作為選択と、それらの最近接ベクトル抽出をQ回繰り返す。
並進誤差演算部24は、最近接ベクトルの組からそれらの方向の分散である並進誤差Etransを計算する。無作為に選択されたM個の埋め込みベクトルの最近接ベクトルについて並進誤差Etransを計算する。さらに、Q回のM個の埋め込みベクトルの最近接ベクトルの組について、並進誤差Etransを計算し、それらの値をデータ保持部5に記憶する(並進誤差データ54)。
中央値演算・平均処理部25は、1回ごとのM個の並進誤差の中央値を求め、Q回の繰り返しそれぞれの中央値の平均を算出する。並進誤差の平均値は異常放電判定部26に入力される。異常放電判定部26では、所定のしきい値と並進誤差の平均値を比較し、並進誤差の平均値がしきい値以下になった場合に、プラズマが異常放電状態であると判定する。
表示処理部27は、例えば、並進誤差の平均値の推移、及びプラズマ異常放電判定結果を表示装置7に表示する。また、同時にプリンタ装置8に印字出力する。表示処理部27では、時系列データ、並進誤差を合わせて表示させてもよい。プラズマが異常放電状態であると判断された場合は、ライトを点滅させたり、ブザーを鳴動させるなどの警報表示を行ってもよい。
図2は、プラズマ異常放電診断システム1の物理的な構成の一例を示すブロック図である。図1に示す本発明のプラズマ異常放電診断システム1は、ハードウェアとしては図2に示すように、制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画面表示部15、印字出力部16、送受信部17、AEセンサ3、表示装置7及びプリンタ装置8から構成される。制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画面表示部15、印字出力部16及び送受信部17はいずれも内部バス10を介して制御部11に接続されている。
制御部11はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部13に記憶されているプログラムに従って、データ取得部21、埋込ベクトル生成部22、近接ベクトル抽出部23、並進誤差演算部24、中央値演算・平均処理部25、異常放電判定部26及び表示処理部27の処理を実行する。データ取得部21、埋込ベクトル生成部22、近接ベクトル抽出部23、並進誤差演算部24、中央値演算・平均処理部25、異常放電判定部26及び表示処理部27は、制御部11とその上で実行されるプログラムで実現される。
主記憶部12はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、制御部11の作業領域として用いられる。データ保持部5は、主記憶部12の一部に記憶領域の構造体として記憶保持される。
外部記憶部13は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理を制御部11に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、制御部11の指示に従って、このプログラムのデータを制御部11に供給し、制御部11から供給されたデータを記憶する。例えば、時系列データは、外部記憶部13に格納されている場合がある。
操作部14は、オペレータがプラズマ異常放電診断システム1に指令を与えるために、キースイッチ、ジョグダイヤル、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイス等と、それらを内部バス10に接続するインターフェース装置を備える。操作部14を介して、プラズマ異常放電判定条件の入力、時系列データの入力、プラズマ異常放電診断の開始などの指令が入力され、制御部11に供給される。その他、埋め込み次元n、時差Δt、近接ベクトルの個数K、埋め込みベクトルの選択数M及び繰り返し演算数Q等が、操作部14から入力されて設定される。
表示装置7は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、操作部14から入力された指令に応じた制御部11の命令によって、時系列データ、並進誤差の推移、プラズマ異常放電診断結果などを表示する。画面表示部15は、表示装置7に表示する画面のデータを、表示装置7を駆動する信号に変換する。
印字出力部16は、プリンタ装置8と接続するシリアルインタフェース、パラレルインターフェース又はLAN(Local Area Network)インターフェース等から構成されている。制御部11は印字出力部16を介して、プリンタ装置8へ印刷する画像データを出力する。
送受信部17は、モデム又は網終端装置、及びそれらと接続するシリアルインタフェース又はLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。制御部11は、送受信部17を介して、各センサから時系列データを入力する。時系列データは、図示しない他のサーバ等に格納されている場合がある。その場合、制御部11は送受信部17を介して、ネットワーク(図示せず)を経由して、サーバ等から時系列データを受信する。
図3は、プラズマ処理装置2を診断の対象とする場合のプラズマ異常放電診断システム1の構成の例を示す図である。プラズマ処理装置2にプラズマ異常放電診断システムのAEセンサが装着されている。プラズマ処理装置2は、例えば、エッチング処理を半導体ウエハに施す半導体製造装置の一種である。
プラズマ処理装置2は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の円筒型チャンバ41を有する。チャンバ41内には、エッチング処理を施す半導体ウエハWが収容される。チャンバ41内のサセプタ(図示せず)に高周波電源42が給電棒45及び整合器43を介して接続されている。高周波電源42は、所定の高周波電力をサセプタに供給する。チャンバ41には処理ガス供給部(図示せず)からの処理ガス導入管(配管)44が接続されている。
半導体ウエハをプラズマエッチング処理するには、半導体ウエハをチャンバに収容したのち、チャンバ41内をほぼ真空状態になるまで減圧する。処理ガス導入管(配管)44を経由して、処理ガス(例えば、所定の流量比率のC48ガス、O2ガス及びArガスから成る混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ41内に導入し、チャンバ41内の圧力を所定値にする。そしてチャンバ41内に高周波電力を印加すると、導入された処理ガスはプラズマ化する。プラズマにより生成されるラジカルやイオンは、フォーカスリング(図示せず)によって半導体ウエハの表面に収束され、半導体ウエハの表面を物理的又は化学的にエッチングする。
AEセンサ3は、例えば、給電棒45(の固定用治具)に装着される。プラズマ異常放電診断システム1は、AEセンサ3から入力される信号をある周期でサンプリングして収集し、時系列データとする。プラズマの状態を示す時系列データとして、前述の圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ又はラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブ等から構成されるプラズマセンサなどを用いる場合、センサはそれぞれプラズマ処理装置2のしかるべき場所に装着される。例えば、圧力センサや温度センサはプラズマ中又はプラズマの近傍に装着される。また、電流センサや電圧センサはプラズマを発生させる回路に接続される。
プラズマ処理装置2が定常運転しているとすると、AEセンサその他の時系列データは正常な場合に確率論的であると考えられる。したがって、AEセンサの時系列データから算出される並進誤差が、あるしきい値以下になったときに、プラズマ処理装置2がプラズマ異常放電したと判断できる。
つぎに、プラズマ異常放電診断システム1の動作について説明する。なお、上述のように、プラズマ異常放電診断システム1の動作は、制御部11が主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画面表示部15、印字出力部16及び送受信部17と協働して行う。
図4は、並進誤差を用いるプラズマ異常放電診断の動作の一例を示すフローチャートである。まず、診断対象となるプラズマの状態を示す時系列データを入力する(ステップA1)。図3のプラズマ処理装置2の例でいえば、AEセンサ3から入力される信号をある周期でサンプリングして収集し、時系列データとする。
収集された時系列データから、設定されている埋め込み次元nと時差Δtで、埋め込みベクトルr(t)を生成する(ステップA2)。埋め込みベクトルの集合から任意の埋め込みベクトルr(t0)を選択し、最近接ベクトルr(tj) (j=0,...,K)を抽出する(ステップA3)。無作為に選択したM個の埋め込みベクトルについて最近接ベクトルを抽出し、さらに、M個の埋め込みベクトルの無作為選択とそれらの最近接ベクトル抽出をQ回繰り返す。
無作為に選択されたM個の埋め込みベクトルの最近接ベクトルについて並進誤差Etransを計算し、さらに、Q回のM個の埋め込みベクトルの最近接ベクトルの組について、並進誤差を計算する(ステップA4)。そして、M個の埋め込みベクトルの最近接ベクトルについて並進誤差Etransの中央値を求め、M個の並進誤差の組の中央値についてQ回の平均値を求める(ステップA5)。
並進誤差の平均値からプラズマ異常放電を判定する(ステップA6)。現在の判定値(並進誤差の平均値)がしきい値以下のとき(ステップA6;Yes)、プラズマが異常放電状態であると判定し、プラズマが異常放電であることを表示装置7に表示する(ステップA7)。また、同時にプリンタ装置8に印字出力してもよい。判定値がしきい値より大きい場合は(ステップA6;No)、プラズマ異常放電とは判定せずプラズマ異常放電であることを表示しない。なお、判定値が正常な値からプラズマ異常放電判定のしきい値に近づく傾向にある場合に、点検整備を促す警報を表示するようにしてもよい。
(実施例1)
図5は、プラズマ処理装置2のAEセンサの時系列データの例を示すグラフである。図5のAはプラズマ異常放電モードにある信号の部分(Active領域)を、Sは正常な状態の信号(Silent領域)の部分を示す。両者のパワースペクトルには、例えばある周波数のスペクトルが大きいとか、小さいといった特徴的な違いは見られない。パワースペクトルによる解析では、プラズマが異常放電状態か正常かを明瞭に識別することは難しい。
図6は、プラズマ処理装置2のAEセンサデータの並進誤差の例を示すグラフである。埋め込み次元を横軸に並進誤差を縦軸にとって、埋め込み次元を変えて図5のAEセンサの信号について並進誤差を計算した結果を示す。図6のAのグラフは図5のA(Active領域)の部分の信号に対応し、図6のSのグラフは図5のS(Silent領域)の部分の信号に対応する。図6の並進誤差はいずれも、埋め込みベクトルについて4個の最近接ベクトルをとり、その第4近接までの軌道について、5ステップの時間推進ステップにおいて計算したものである。
埋め込み次元が4以下の範囲では、Active領域における並進誤差(図6のA)が0.1以上であるが、埋め込み次元が6以上では、Active領域における並進誤差は0.1以下である。埋め込み次元が6以上では、Active領域及びSilent領域いずれも並進誤差がほぼ一定の値となり、しきい値を0.1として両者の違いを明瞭に識別できる。並進誤差によるプラズマ異常放電診断では、埋め込み次元を6以上にとることが適当である。また、第4近接以上までの軌道について、5ステップ以上の時間推進ステップで並進誤差を推定することが望ましい。
本発明のプラズマ異常放電診断方法及びプラズマ異常放電診断システム1によれば、一見して異なる時系列データでパワースペクトルが同じになるようなデータでも、時系列データの背後にある決定論的構造を定量化し、時間遅れ座標変換により時系列データから位相空間における軌道を再構成することによって、正常時とプラズマ異常放電時の時系列データの違いを定量的に表現できる。そして、比較的少ないデータ数でも精度の高いプラズマ異常放電診断ができる。
(実施の形態2)
次に、決定論性を表す値として順列エントロピーを用いる場合のプラズマ異常放電診断システム1について説明する。図7は、本発明の実施の形態2に係るプラズマ異常放電診断システム1の論理的な構成を示すブロック図である。
プラズマ異常放電診断システム1は、AEセンサ3、データ取得部21、埋込ベクトル生成部22、実現度数演算部28、順列エントロピー演算部29、平均処理部30、データ保持部5、異常放電判定部26、表示処理部27、表示装置7、プリンタ装置8などから構成される。データ保持部5には、プラズマ異常放電診断の対象となる設備の状態を表す収集時系列データ51、埋め込みベクトルデータ52、順列実現度数データ55及び順列エントロピーデータ56が記憶保持される。
ここで、順列エントロピーとそれが決定論性を表す指標となることを説明する。BandtとPompeによって導入された順列エントロピー(C. Bandt and B. Pompe, Physical Review Letters, Vol.88, pp. 174102-1 - 174102-4, 2002.)は、無限長の時系列におけるKolmogorov-Sinai エントロピーと漸近的に等価な量であるが、順列エントロピーは次のように定義される。
所定の時間における時系列データから、ある次元nと時差Δtの埋め込みベクトルr(ti)をすべて生成する。各埋め込みベクトルについて、埋め込みベクトルの要素の大小関係で昇順又は降順で要素に番号をつける。要素の昇順又は降順の番号の配列は、要素数の番号の順列である。所定の時間の全ての埋め込みベクトルについて、同じ昇順又は降順の順列を有する埋め込みベクトルの個数を集計する。集計された個数は、埋め込みベクトルがその順序を有する順列を実現する度数(実現度数)である。次元nと時差Δtの全ての埋め込みベクトルの数に対する実現度数を相対実現度数とする。相対実現度数の和は1である。なお、埋め込みベクトルの時差Δtは1であってもよい。Δt=1の場合は、埋め込みベクトルr(ti)は時系列データの連続するn個の要素から構成される。
埋め込みベクトルの要素の大小関係の順序は、埋め込みベクトルの次元の数の順序からなる順列である。埋め込みベクトルの次元の数nについて、1からnまでのn個の数の順列の集合をΠ、順列の集合の要素(ある順列)をπとする。所定の時間の時系列データの個数をN、埋め込み次元をn、時差をΔtとすると、所定の時間の時系列データから生成される埋め込みベクトルの数はN−(n−1)Δtである。ある順列の実現度数をm(π)と書くと、ある順列πの相対実現度数p(π)は次の式(4)で表される。

相対実現度数p(π)は,時間変動の複雑さを粗視化してパターンに分類していることに等しい。相対実現度数p(π)を順列πの実現確率とみなし、情報エントロピーを計算すると、元の時系列の複雑さ(決定論性)を定量的に評価できる。埋め込みベクトルの次元の数の順列πを確率変数とし、相対実現度数p(π)を確率分布とするエントロピーを順列エントロピーという。順列エントロピーは次の式(5)で定義される。


但し、p(π)=0の項は算入しない。
順列エントロピーによって元の時系列の複雑さ(決定論性)を定量的に評価できる。最も単純な挙動は単調過程である。単調増加過程または単調減少過程では、順列エントロピーは最小となる。一方、最も複雑な挙動は完全ランダム過程である。この場合、可能なすべてのパターンが実現されるから、順列エントロピーは最大となる。
πは埋め込み次元nの順列であり、順列の集合Πはn!個の要素(順列)を含むから、式(5)の定義によって、0≦H(n)≦logn!である。下限は単調増加過程あるいは単調減少過程に対応する。上限は完全ランダム過程を表す。
BandtとPompeは、H(n)がnに対して線形に増加することに着目し、次の式(6)で定義される量を導入した。

h(n)をlogn!で規格化し、次の式(7)で定義されるエントロピーを利用すると便利である。


0 ≦ h*(n) ≦ 1が成り立つ。時系列データの決定論的側面が増加するにつれてh*(n)→0となる。時系列データが白色ノイズならば、h*(n)は1に近い値となる。
本実施の形態では、順列エントロピーH(n)あるいはH(n)を正規化したh*(n)が診断対象のプラズマの状態を示す時系列データの決定論性を表す指標となることを利用して、プラズマの異常放電を診断する。プラズマが正常な状態におけるAEセンサの時系列データは様々な外乱によって不規則に変動し、確率論的であると考えられる。プラズマが異常放電状態のときは、異常放電によって音響放出が支配され決定論的であると考えられるので、順列エントロピーが所定のしきい値以下の小さい値になったときに、プラズマが異常放電状態になったと判定する。
図7に戻って、プラズマ異常放電診断システム1の各部の作用を説明する。データ取得部21は、診断対象の設備の状態を示す時系列データを収集し、データ保持部5に収集時系列データ51として記憶する。時系列データとしてはAEセンサのデータ以外に、例えば、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ又はプラズマセンサなどのデータである。プラズマセンサは、例えば、ラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブ等から構成される。これらのセンサで検出する値は、プラズマが異常放電状態のときに変化すると考えられる。プラズマの状態を示す時系列データは各種のセンサ(図示せず)から、適当な周期でサンプリングして入力される。
埋込ベクトル生成部22は、時系列データから前述の埋め込みベクトルr(ti)を生成する。埋め込みベクトルの次元nと時差Δtは、時系列データの特性に合わせて予め設定しておく。埋込ベクトル生成部22は、生成した埋め込みベクトルの集合をデータ保持部5に記憶する(埋め込みベクトルデータ52)。
実現度数演算部28は、埋め込みベクトルの要素の大小関係で要素に順序をつけ、所定の時間の全ての埋め込みベクトルについて、同じ順序を有する埋め込みベクトルの個数を集計する。集計された順列の実現度数をデータ保持部5に記憶する(順列実現度数データ55)。
順列エントロピー演算部29は、順列実現度数データ55から相対実現度数に変換し、順列エントロピーを計算する。さらに、式(7)のh*(n)を計算する。順列エントロピーH(n)又はh*(n)をデータ保持部5に記憶する(順列エントロピーデータ56)。
平均処理部30は、複数の所定の時間の時系列データから計算された順列エントロピーH(n)又はh*(n)を平均する。順列エントロピーH(n)又はh*(n)の移動平均としてもよい。所定の時間の時系列データが充分長い場合は、平均処理はなくてもよい。
順列エントロピーH(n)又はh*(n)の平均値は異常放電判定部26に入力される。異常放電判定部26では、所定のしきい値と順列エントロピーH(n)又はh*(n)の平均値を比較し、順列エントロピーH(n)又はh*(n)の平均値がしきい値以下である場合に、プラズマが異常放電状態であると判定する。
表示処理部27は、例えば、順列エントロピーH(n)又はh*(n)の平均値の推移、及びプラズマ異常放電判定結果を表示装置7に表示する。また、同時にプリンタ装置8に印字出力する。表示処理部27では、時系列データ、順列エントロピーH(n)又はh*(n)を合わせて表示させてもよい。プラズマが異常放電状態であると判断された場合は、ライトを点滅させたり、ブザーを鳴動させるなどの警報表示を行ってもよい。
実施の形態2においても、プラズマ異常放電診断システム1の物理的構成は実施の形態1と同様である。プラズマ異常放電診断システム1は、例えば、図2の物理的な構成のブロック図で示される。データ取得部21、埋込ベクトル生成部22、実現度数演算部28、順列エントロピー演算部29、平均処理部30、異常放電判定部26及び表示処理部27は、制御部11とその上で実行されるプログラムで実現される。
実施の形態2のプラズマ異常放電診断システム1についても、例えば図3のプラズマ処理装置2を診断の対象とする場合として、プラズマ異常放電診断システム1の構成が示される。プラズマ処理装置2の音響放射を検出するAEセンサ3がプラズマ異常放電診断システム1に装着されている。プラズマ異常放電診断システム1は、AEセンサ3から入力される信号をある周期でサンプリングして収集し、時系列データとする。
プラズマ処理装置2が定常運転しているとすると、AEセンサ3の信号の時系列データは正常な場合に確率論的であると考えられる。したがって、音響信号の時系列データから算出される順列エントロピーが、あるしきい値以下の場合に、プラズマが異常放電状態でると判断できる。
つぎに、決定論性を表す値として順列エントロピーを用いる場合のプラズマ異常放電診断システム1の動作について説明する。なお、前述のように、プラズマ異常放電診断システム1の動作は、制御部11が主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画面表示部15、印字出力部16及び送受信部17と協働して行う。
図8は、順列エントロピーを用いるプラズマ異常放電診断の動作の一例を示すフローチャートである。まず、診断対象となる設備の状態を示す時系列データを入力する(ステップB1)。図3のプラズマ処理装置2の例でいえば、AEセンサ3から入力される音響信号をある周期でサンプリングして収集し、時系列データとする。
収集された時系列データから、設定されている埋め込み次元nと時差Δtで、埋め込みベクトルr(t)を生成する(ステップB2)。埋め込みベクトルの要素の大小関係で要素に順序をつけ、所定の時間の全ての埋め込みベクトルについて、同じ順序を有する埋め込みベクトルの個数を実現度数として集計する(ステップB3)。
順列の実現度数から相対実現度数に変換し、順列エントロピーを計算する(ステップB4)。さらに、式(7)のh*(n)を計算する。そして、複数の所定の時間の時系列データから計算された順列エントロピーH(n)又はh*(n)を平均する(ステップB5)。前述のとおり、平均処理は省略してもよい。
順列エントロピーH(n)又はh*(n)の平均値からプラズマ異常放電を判定する(ステップB6)。現在の判定値(並進誤差の平均値)がしきい値以下のとき(ステップB6;Yes)、プラズマが異常放電状態であると判定し、プラズマが異常放電状態であることを表示装置7に表示する(ステップB7)。また、同時にプリンタ装置8に印字出力してもよい。判定値がしきい値より大きい場合は(ステップB6;No)、プラズマ異常放電とは判定せずプラズマ異常放電であることを表示しない。なお、判定値が正常な値からプラズマ異常放電判定のしきい値に近づく傾向にある場合に、点検整備を促す警報を表示するようにしてもよい。
(実施例2)
図9は、プラズマ処理装置2のAEセンサデータの順列エントロピーの例を示すグラフである。埋め込み次元を横軸に、正規化された順列エントロピーh*(n)を縦軸にとって、図5のAEセンサの信号について順列エントロピーを計算した結果を示す。図9のAのグラフは図5のA(Active領域)の部分の信号に対応する正規化された順列エントロピーh*(n)、図9のSのグラフは図5のS(Silent領域)の部分の信号に対応する正規化された順列エントロピーh*(n)である。
埋め込み次元が小さい範囲では、AとSの違いは小さいが、埋め込み次元が4から8の範囲ではAとSの違いは明らかである。適当なしきい値を設定して、順列エントロピーH(n)又はh*(n)がしきい値より大きい場合は正常、順列エントロピーH(n)又はh*(n)がしきい値以下の場合はプラズマが異常放電状態であると判断することができる。この例では、埋め込み次元を6又は7にすることが望ましい。その場合、正規化された順列エントロピーが0.8以下の場合にプラズマが異常放電状態であると判断できる。
図9において、埋め込み次元が9以上の範囲でAとSの差が小さくなり、両者とも小さい値になっているのは、所定の時間の時系列データに対して埋め込み次元が大きく、埋め込みベクトルの数が充分とれないためである。埋め込み次元又は時差を大きくする場合は、生成される埋め込みベクトルの数が相対的に少なくなり、発生しうる順列の数(n!)が多くなるので、所定の時間を長くとって時系列データの数を充分大きくする必要がある。
本発明のプラズマ異常放電診断方法及びプラズマ異常放電診断システム1によれば、一見して異なる時系列データでパワースペクトルが同じになるようなデータでも、時系列データの背後にある決定論的構造を定量化し、時間遅れ座標変換により時系列データから位相空間における軌道を再構成することによって、正常時とプラズマ異常放電時の時系列データの違いを定量的に表現できる。そして、比較的少ないデータ数でも精度の高いプラズマ異常放電診断ができる。
以上説明したとおり、本発明のプラズマ異常放電診断システム1によれば、例えば図3のプラズマ処理装置2などのように、1つのAEセンサ3の出力から時系列データを入力して解析することにより、プラズマ異常放電診断を行うことができる。また、設備の動作状態においてプラズマ異常放電診断を行うことができる。
その他、前記のハードウエア構成は一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
制御部11、主記憶部12、外部記憶部13、操作部14、画面表示部15、印字出力部16、送受信部17、内部バス10などから構成されるプラズマ異常放電診断処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するプラズマ異常放電診断システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでプラズマ異常放電診断システム1を構成してもよい。
また、プラズマ異常放電診断システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
本発明の実施の形態1に係るプラズマ異常放電診断システムの論理的な構成を示すブロック図である。 プラズマ異常放電診断システムの物理的な構成の一例を示すブロック図である。 プラズマ処理装置とプラズマ異常放電診断システムの構成の例を示す図である。 並進誤差を用いるプラズマ異常放電診断の動作の一例を示すフローチャートである。 プラズマ処理装置のAEセンサの時系列データの例を示すグラフである。 プラズマ処理装置のAEセンサデータの並進誤差の例を示すグラフである。 本発明の実施の形態2に係るプラズマ異常放電診断システムの論理的な構成を示すブロック図である。 順列エントロピーを用いるプラズマ異常放電診断の動作の一例を示すフローチャートである。 プラズマ処理装置のAEセンサデータの順列エントロピーの例を示すグラフである。
符号の説明
1 プラズマ異常放電診断システム
2 プラズマ処理装置
3 AEセンサ
5 データ保持部
7 表示装置
8 プリンタ装置
10 内部バス
11 制御部
12 主記憶部
13 外部記憶部
14 操作部
15 画面表示部
16 印字出力部
17 送受信部
21 データ取得部
22 埋込ベクトル生成部
23 近接ベクトル抽出部
24 並進誤差演算部
25 中央値演算・平均処理部
26 異常放電判定部
27 表示処理部
28 実現度数演算部
29 順列エントロピー演算部
30 平均処理部
51 収集時系列データ
52 埋め込みベクトルデータ
53 最近接ベクトルデータ
54 並進誤差データ
55 順列実現度数データ
56 順列エントロピーデータ

Claims (15)

  1. プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得ステップと、
    前記データ取得ステップで取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出ステップと、
    前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出ステップで算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定ステップと、
    を備えることを特徴とするプラズマ異常放電診断方法。
  2. 前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される並進誤差であって、
    前記決定論性算出ステップは、
    前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込みステップと、
    前記埋め込みステップで算出された埋め込みベクトルのうち、ある埋め込みベクトルについて所定の数の最も近接するベクトルを抽出する最近接ベクトル抽出ステップと、
    前記最近接ベクトル抽出ステップで抽出した所定の数の最も近接するベクトルの分散である並進誤差を算出する並進誤差算出ステップと、
    を含み、
    前記異常放電判定ステップは、
    前記プラズマ発生中に、前記並進誤差算出ステップで算出された並進誤差が前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  3. 前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される順列エントロピーであって、
    前記決定論性算出ステップは、
    前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込みステップと、
    前記埋め込みステップで算出された所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルについて、前記埋め込みベクトルの要素の大小関係が有する順序と同じ順序の度数を累計し、前記所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルの数に対する相対実現度数として算出する実現度数算出ステップと、
    前記埋め込みベクトルの次元の数の順序からなる全ての順列を確率変数とし、前記実現度数算出ステップで算出された前記相対実現度数を確率分布とするエントロピーである順列エントロピーを算出する順列エントロピー算出ステップと、
    を含み、
    前記異常放電判定ステップは、
    前記プラズマ発生中に、前記順列エントロピー算出ステップで算出された順列エントロピーが前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  4. 前記プラズマの状態に伴って変動する時系列データが、AE(Acoustic Emission)センサ、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ、又はラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブから得られるプラズマセンサの時系列データのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  5. 前記埋め込みベクトルの次元が6以上であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  6. 前記最近接ベクトル抽出ステップは、前記ある埋め込みベクトルについて4以上の最も近接するベクトルを抽出し、
    前記並進誤差算出ステップは、前記4以上の最も近接するベクトルのうちの4つの最も近接するベクトルの軌道について、5単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差を算出し、
    前記異常放電判定ステップは、前記4つの最も近接するベクトルの軌道について、前記単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差が0.1以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  7. 前記順列エントロピー算出ステップは、完全ランダム過程の順列エントロピーを上限値として正規化した順列エントロピーを算出し、
    前記異常放電判定ステップは、前記正規化した順列エントロピーが0.8以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項3に記載のプラズマ異常放電診断方法。
  8. プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得手段と、
    前記データ取得手段で取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出手段と、
    前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出手段で算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定手段と、
    を備えることを特徴とするプラズマ異常放電診断システム。
  9. 前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される並進誤差であって、
    前記決定論性算出手段は、
    前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込み手段と、
    前記埋め込み手段で算出された埋め込みベクトルのうち、ある埋め込みベクトルについて所定の数の最も近接するベクトルを抽出する最近接ベクトル抽出手段と、
    前記最近接ベクトル抽出手段で抽出した所定の数の最も近接するベクトルの分散である並進誤差を算出する並進誤差算出手段と、
    を含み、
    前記異常放電判定手段は、
    前記プラズマ発生中に、前記並進誤差算出手段で算出された並進誤差が前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  10. 前記決定論性を表す値が、前記時系列データから算出される順列エントロピーであって、
    前記決定論性算出手段は、
    前記時系列データからある次元の埋め込みベクトルを算出する埋め込み手段と、
    前記埋め込み手段で算出された所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルについて、前記埋め込みベクトルの要素の大小関係が有する順序と同じ順序の度数を累計し、前記所定の時間における前記時系列データから算出されるすべての前記埋め込みベクトルの数に対する相対実現度数として算出する実現度数算出手段と、
    前記埋め込みベクトルの次元の数の順序からなる全ての順列を確率変数とし、前記実現度数算出手段で算出された前記相対実現度数を確率分布とするエントロピーである順列エントロピーを算出する順列エントロピー算出手段と、
    を含み、
    前記異常放電判定手段は、
    前記プラズマ発生中に、前記順列エントロピー算出ステップで算出された順列エントロピーが前記所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  11. 前記プラズマの状態に伴って変動する時系列データが、AE(Acoustic Emission)センサ、圧力センサ、温度センサ、パーティクルセンサ、電流センサ、電圧センサ、超音波センサ、ガス分析器、振動センサ、発光量センサ、電磁波センサ、又はラングミュアプローブ若しくはプラズマ吸収プローブから得られるプラズマセンサの時系列データのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  12. 前記埋め込みベクトルの次元が6以上であることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  13. 前記最近接ベクトル抽出手段は、前記ある埋め込みベクトルについて4以上の最も近接するベクトルを抽出し、
    前記並進誤差算出手段は、前記4以上の最も近接するベクトルのうちの4つの最も近接するベクトルの軌道について、5単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差を算出し、
    前記異常放電判定手段は、前記4つの最も近接するベクトルの軌道について、前記単位の時差の時間の経過に伴う埋め込みベクトルの軌道の変化において推定された並進誤差が0.1以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態であると判定する、
    ことを特徴とする請求項12に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  14. 前記順列エントロピー算出手段は、完全ランダム過程の順列エントロピーを上限値として正規化した順列エントロピーを算出し、
    前記異常放電判定手段は、前記正規化した順列エントロピーが0.8以下であって、プラズマ発生中であるならば、前記プラズマが異常放電状態と判定する、
    ことを特徴とする請求項10に記載のプラズマ異常放電診断システム。
  15. プラズマの異常放電を診断するために、コンピュータを、
    プラズマの状態に伴って変動する時系列データを取得するデータ取得手段と、
    前記データ取得手段で取得した時系列データから、前記プラズマにおける前記時系列データが決定論的であるか確率論的であるかの指標となる決定論性を表す値を算出する決定論性算出手段と、
    前記プラズマ発生中に、前記決定論性算出手段で算出された決定論性を表す値が、所定のしきい値以下の場合に、前記プラズマが異常放電状態であると判定する異常放電判定手段、
    として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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