JP4751603B2 - ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造、化学工業、食品産業、火力または原子力発電設備等の分野で広く用いられている表面清浄度および耐食性に優れたステンレス鋼の製造方法およびステンレス鋼管の製造方法に関する。なお、前記の「ステンレス鋼」とは、ここでは、主としてステンレス鋼製の鋼材(ステンレス鋼材)を指すが、これに限らず、前記ステンレス鋼材に加工される前の中間成品も含めた、冷間材としての「ステンレス鋼」をいう。
鋼管、鋼板を始めとするステンレス鋼材は、高強度を有し、耐食性に優れていることから、半導体製造、化学工業、食品産業、火力または原子力発電設備等の産業分野で、設備、装置類の構成部材として広く使用されている。特に、ステンレス鋼製の鋼管(以下、「ステンレス鋼管」という)は、例えば、原子力発電設備等に設けられる給水加熱器の伝熱管等として多用されており、通常は、小径かつ長尺管として用いられる場合が多い。
しかし、高耐食性を備えるステンレス鋼であっても、その表面にフッ化物、塩化物等のハロゲン化合物や、燐酸塩、硫酸塩等が付着すると、表面清浄度が低下し、耐食性が必ずしも十分ではなくなる。特にステンレス鋼管の場合は、管内面の付着物は除去されにくく、その部分が腐食して金属イオンが溶出する場合もある。
また、例えば、ステンレス鋼管の冷間加工時に、その内外表面に潤滑剤として塗布した炭素や炭素化合物(潤滑油)が、その後の洗浄(脱脂)処理で完全には除去されず、一部が残留した場合、そのままの状態で熱処理すると、管の表面からの炭素の侵入拡散によって炭素濃度が上昇し、浸炭が発生することがある。
表面に浸炭が発生した鋼管は、溶接などの熱影響により鋭敏化しやすく、粒界腐食が発生するおそれがある。すなわち、溶接時における熱影響によって、あるいは、装置に組み込まれ長時間の使用による熱影響によって、粒界にCrカーバイドが析出し、その付近(粒界隣接部)にCr欠乏層が出現して耐食性が著しく劣化するので、その部分で優先的に腐食が進行する。
このようなステンレス鋼が本来有している優れた耐食性の発現が阻害されるのを防止するために、従来は、ステンレス鋼管を例にとると、管表面の付着物を洗浄により除去する方法が主として採られてきた。すなわち、洗浄に用いる薬品の成分管理、洗浄液の頻繁な更新、洗浄処理時間と回数の増加、付着物の除去等の確認、付着物の分析および付着量の把握、腐食試験の実施等である。しかし、この方法(付着物の洗浄除去)には作業のバラツキ、確認作業での抜け(見落とし)があり、費用と労力を要するだけではなく、信頼性の面でも不安があった。
切削・研削加工により表面の平滑性と清浄度を高めて耐食性を確保する方法も考えられるが、切削・研削加工は、能率が悪く、切粉が排出することから歩留も悪く、結果として製造コストが上昇する。
ステンレス鋼の耐食性を向上させる方法として、例えば、特許文献1には、ステンレス鋼材の表面処理方法が提案されている。この方法は、(i)冷間加工したステンレス鋼材を用意し、(ii)水溶性無機珪酸塩を含む水溶液に浸漬し、または、浸漬して電解洗浄を行い、(iii)次いで酸化性雰囲気で焼鈍し、(iv)その後酸洗または酸洗後軽度の冷間加工を行う各工程を備えた方法で、(ii)の工程でステンレス鋼材表面に付着した珪酸塩(一部は酸化物として付着)が、焼鈍により生じる酸化スケールの生長を抑制してステンレス鋼材表面および粒界のCr濃度低下の程度を少なくし、ステンレス鋼材の耐食性が改善される、としている。
この方法は、ステンレス鋼材表面および粒界のCr濃度の低下の抑制には有効であると思われる。しかし、前述した表面清浄度の低下に起因し、ステンレス鋼が本来有している優れた耐食性の発現が阻害されることに対する対策については何の提案もなされていない。
特開平7−150399号公報
本発明は、ステンレス鋼またはステンレス鋼管が本来有している優れた耐食性が、前述したような表面清浄度の低下により損なわれるのを防止し、半導体製造、化学工業、食品産業、火力または原子力発電設備等の産業分野で、設備、装置類の構成部材として広く適用し得る、表面清浄度および耐食性に優れたステンレス鋼またはステンレス鋼管の製造方法、特に、原子力発電設備等に設けられる給水加熱器の伝熱管等、小径かつ長尺管として好適なステンレス鋼管の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者は、上記の課題を解決するため、ステンレス鋼またはステンレス鋼管の表面に機械研削または電解研磨を施すことにより、表面の清浄度を向上させる方法について検討した。その結果、ステンレス鋼管について、その表面の塩化物や硫化物、あるいは潤滑剤として塗布した潤滑油等の付着物を、鋼管を脱脂液(アルカリ脱脂液を使用)に浸漬する洗浄作業に加えて、機械研削または電解研磨を実施することにより除去し、その後熱処理することにより、管表面の清浄性を高め、耐食性を向上させ得ることを見いだした。
本発明は、この知見に基づいてなされたもので、下記(2)のステンレス鋼管の製造方法を要旨としている。下記(1)のステンレス鋼の製造方法は参考の発明である。
(1)ステンレス素鋼を冷間加工し、脱脂を行った後、熱処理を行うステンレス鋼の製造方法であって、前記脱脂工程が、
(a)浸漬による第1脱脂工程と
(b)機械研削による第2脱脂工程
とからなるステンレス鋼の製造方法。
前記(1)のステンレス鋼の製造方法において、冷間加工を油潤滑により行うこととすれば、表面粗さの劣化がなく、望ましい。
ここで、「ステンレス鋼」とは、前述のように、主として、鋼管、鋼板を始めとするステンレス鋼材を指すが、これに限らず、前記ステンレス鋼材に加工される前の中間成品も含めた、冷間材としての「ステンレス鋼」をいう。なお、「ステンレス素鋼」とは、熱間工程で得られた、冷間加工に供される素材である。
(2)ステンレス鋼素管を冷間加工し、脱脂を行った後、熱処理を行うステンレス鋼管の製造方法であって、前記脱脂工程が、
(a)浸漬による第1脱脂工程と
(b)管の表面を砥粒を用いたブラスト処理で研削する第2脱脂工程
とからなるステンレス鋼管の製造方法。
前記(2)のステンレス鋼管の製造方法において、冷間加工を油潤滑により行うこととすれば、表面粗さの劣化がなく、望ましい。
前記の「ステンレス鋼素管」とは、熱間製管で得られた、冷間加工に供される素材である。
なお、本発明の方法は、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼などクロムを含むステンレス鋼に適用することができ、それ以外のNi基合金等にも適用可能である。
本発明のステンレス鋼の製造方法またはステンレス鋼管の製造方法によれば、表面清浄度および耐食性に優れたステンレス鋼またはステンレス鋼管、特に製造の対象が管内面の洗浄作業が困難な小径かつ長尺の伝熱管であっても、優れた表面清浄度および耐食性を有する伝熱管を製造することができる。
本発明のステンレス鋼の製造方法(前記(1)の方法)は、『ステンレス素鋼を冷間加工し、脱脂を行った後、熱処理を行うステンレス鋼の製造方法であって、前記脱脂工程が、
(a)浸漬による第1脱脂工程と
(b)機械研削または電解研磨による第2脱脂工程
とからなるステンレス鋼の製造方法』である。ここで、脱脂工程を、「第1脱脂工程」、「第2脱脂工程」と呼称して区別したのは、脱脂をこの順に行う(すなわち、第1脱脂工程を実施した後、第2脱脂工程を実施する)ことを明示するためである。
一方、前記(2)のステンレス鋼管の製造方法は、ステンレス鋼のうち特に「ステンレス鋼管」を製造の対象とする方法であり、『ステンレス鋼素管を冷間加工し、脱脂を行った後、熱処理を行うステンレス鋼管の製造方法であって、前記脱脂工程が、
(a)浸漬による第1脱脂工程と
(b)機械研削または電解研磨による第2脱脂工程
とからなるステンレス鋼管の製造方法』である。
ここで、ステンレス鋼の一般的な製造工程を、以下に概説する。
〔溶解、精錬工程〕
この工程では、電気炉にて溶解した溶鋼または高炉の溶銑を精錬炉に投入して、脱硫、脱りん、脱炭処理を行った後、製品の成分規定内に納めるべく合金元素の添加を行い、脱酸処理を行う。ステンレス鋼やNi基合金の精錬では、一般にAOD炉またはVOD炉単独もしくはAOD炉後にVOD炉を組み合わせて処理が行われる。特に、高純度フェライト系ステンレス鋼などの窒素含有量を極力低く押さえることが必要な鋼種には、VOD炉での処理を行う。さらに、キャビティ対策、偏析や析出物軽減等の目的で二次溶解を組み合わせるものもある。
この電気炉や高炉での溶解の原料として、スクラップを用いる方法や鉄鉱石を原料として得られる溶融銑鉄を用いる方法、およびそれらを組み合わせて用いる方法がある。
スクラップを用いる方法では、製品に比較的近い組成を有するスクラップを原料として使用することで、追加投入する合金原料の投入量を削減でき、成分調整が容易という利点がある。しかし、一般的にスクラップには不純物の混入が避けられず、その不純物は精錬工程での除去が難しく、純度の高い高価な合金原料を用いて溶解し製品の不純物量を下げる必要がある。
一方、溶銑を用いる方法では、溶銑は鉄鉱石を高温で還元したものであるため、炭素を多く含むものの合金元素や不純物の含有量は少なく、製品の純度が高い。そのため、一般に耐食性や熱間加工性などの材料特性上好ましくないP、S、Cu等の不純物の含有量を低く押さえることができる。また、高純度フェライト系ステンレス鋼の製造において、スクラップからのNiの混入も防止できる。原子力関係で使用される鋼材に対しては、放射線汚染上有害なCoを極少に低減できるので、この溶銑を用いる方法は有効である。
さらに、電気炉での溶解と比べて、高炉では大量に溶解することが可能なため、低コストでの溶解が可能である。
しかし、溶銑を用いた場合は、成分調整のための合金原料の投入量が増えるため、鉄以外の合金元素の含有量が多い高合金の製造には向かない。
〔造塊、素材製造工程〕
精錬工程で製造された溶鋼をステンレス鋼鋳片に造塊する方法として、鋼塊法や連続鋳造法がある。鋼塊法や連続鋳造法で製造された鋳片は、圧延や鍛造によりスラブ、ブルーム、ビレット等の次工程の鋼管や鋼板等を製造する素材に加工される。なお、連続鋳造法では、湾曲型連続鋳造機、垂直型連続鋳造機や水平型連続鋳造機等の装置を用いて、横断面が矩形の鋳片(スラブ、ブルーム)や丸形の鋳片(ビレット)を製造することができる。また、鋼板や鋼管の製造には連続鋳造で得られた鋳片(スラブやビレット)をそのまま素材として用いてもよい。
鋳片を圧延または鍛造して得られる素材は、鋳片の鋳造組織である巨大結晶が破壊されて、微細な圧延組織になっているため、その後の鋼板や鋼管製造工程での加工割れ等のトラブルが少ない。また、連続鋳造法は鋼塊法と比べて歩留まりが高く、連続鋳造素材をそのまま鋼板や鋼管製造用の素材として用いる場合は、圧延や鍛造工程が省略されるのでより経済的効果が大きい。
〔鋼板製造工程〕
前記の造塊、素材製造工程で得られた素材を厚板圧延機やホットストリップミルを用いて熱間圧延し、板状又はコイル状のステンレス鋼板とする。得られた熱間圧延鋼板は、その後、熱処理を施され、酸洗され、場合によりさらに冷間圧延されることもある。
〔鋼管製造工程〕
前記造塊、素材製造工程で得られた素材を用いたステンレス鋼管の製造方法としては、継目無製管方法として知られる、熱間でプレスピアシングミル、傾斜圧延穿孔ミルを用いて素材の中心部を穿孔した後、マンドレルミル、プラグミル、アッセルミル、ピルガミルで管を延伸し、サイザー、レデューサーで定径や絞り圧延を行う傾斜圧延方式の熱間製管法や、エアハルトプッシュベンチ製管法、ユジーンセジュルネ製管法、マンドレル鍛造等のプレス方式の熱間製管法が挙げられる。熱間製管の後に、さらに抽伸や圧延といった冷間加工を組み合わせて冷間仕上げステンレス鋼管を得ることもある。
また、継目無製管方法以外に、鋼板製造で得られた熱間圧延コイルや冷間圧延コイルなどを用いて造管、溶接し、ステンレス溶接鋼管を得る場合もある。
〔熱処理、精整、検査工程〕
前記工程を経て製造されたステンレス鋼板や鋼管は、必要に応じて軟化や固溶化のための熱処理や、酸洗、ショットブラスト、表面研磨等の精整処理が行われた後、非破壊検査や寸法検査等の検査工程を経て製品となる。
以下では、本発明の特徴部分である、熱間加工後の、前記(1)のステンレス鋼の製造方法について主に説明し、必要に応じて(2)のステンレス鋼管の製造方法について述べる。
(1)のステンレス鋼の製造方法を工程順に整理すると、以下のとおりである。なお、この工程順は、前記(2)のステンレス鋼管の製造方法においても、(イ)でステンレス素鋼としてステンレス鋼素管を用いることを除いては、同じである。
(イ)ステンレス素鋼を冷間加工する
(ロ)浸漬による第1脱脂を行う
(ハ)機械研削または電解研磨による第2脱脂を行う
(ニ)熱処理を行う。
すなわち、このステンレス鋼の製造方法は、〔冷間加工〕→〔浸漬脱脂〕→〔機械研削による脱脂〕→〔熱処理〕、または〔冷間加工〕→〔浸漬脱脂〕→〔電解研磨による脱脂〕→〔熱処理〕の概略工程を有するステンレス鋼の製造方法である。なお、前記の「浸漬脱脂」とは、被処理物を、例えば、アルカリ液等の脱脂液に浸漬することにより行う脱脂である。
図1は、ステンレス鋼が特にステンレス鋼管の場合で、前記(2)のステンレス鋼管の製造方法を適用した一般的なステンレス鋼管の製管工程例を示す図である。同図の(a)は従来方式の工程例、(b)は比較のための工程例、(c)は本発明の製造方法を適用した工程例である。
図1(c)において、破線で囲んだ部分が本発明で規定する前記(イ)〜(ニ)の工程に該当する。すなわち、図中の破線内に示した(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の工程が、それぞれ本発明で規定する前記(イ)、(ロ)、(ハ)および(ニ)の工程に対応する。なお、図中に示した(ロ)の工程の「脱脂」は、浸漬脱脂を意味する。
図1(c)に示すように、熱間製管で得られたステンレス鋼素管は、化成皮膜潤滑処理または油潤滑処理を施された後、(イ)〜(ニ)の工程で、冷間加工、脱脂および熱処理を施され、必要に応じ「酸洗」処理された後、「精整」、「検査」の各工程で、常法によって曲がり矯正、切断、管端仕上げ等の「精整」や、「検査」が行われる。さらに、必要に応じ、Uベンド加工と精整検査が行われる。
これに対して、図1(a)の従来方式の工程例では、前述した本発明の規定に対応する工程が、〔冷間加工〕→〔脱脂〕→〔熱処理〕であり、機械研削による脱脂の工程は含まれていない。また、前掲の特許文献1でも、(i)冷間加工したステンレス鋼材を用意し、(ii)水溶性無機珪酸塩を含む水溶液に浸漬し(脱脂も兼ねる)、(iii)酸化性雰囲気で焼鈍する、という、〔冷間加工〕→〔脱脂〕→〔熱処理〕の工程は記載されているが、機械研削(または電解研磨)による脱脂については、何も記載されていない。
以下に、本発明のステンレス鋼の製造方法で規定する(イ)〜(ニ)の工程について、詳細に説明する。
前記(イ)の工程は、「ステンレス素鋼を冷間加工する」工程である。
熱間工程で得られたステンレス素鋼の表面は、スケールの生成に起因して表面粗さが粗く、かつ粗さのばらつきも大きい。表面にはスケール生成に伴う脱Cr層があり、特に粒界部分ではこの脱Cr層が深くまで達している。スケールを除去した後のステンレス素鋼の表面は、結晶粒界が酸洗による脱スケールの際の腐食によって溝状に掘られた状態になっている。この溝は、全面に網目状に存在し、熱間加工時に高温にさらされた時間、加工度や雰囲気にも依存するが、通常は、数μm〜数十μm程度に達しており、潤滑剤や汚染物が溜まりやすい形状になっている。
このステンレス鋼に冷間加工を施すと、表面は、高い面圧の下での工具との接触で潰され、延伸される時に、摩擦力でせん断変形を受け、溝状部分は擦り潰されるように変形し、溝状に開口した部分は密着される。すなわち、溝に溜まっていた潤滑剤や汚れは搾り出されてしまい、かつ表面の粗さも改善される。これは加工度が高いほど顕著である。このように耐食性が特に要求される用途向けのステンレス鋼は、表面平滑性と清浄度を高めた冷間加工品でなければならない。
前記の脱Cr層を酸洗除去した後の粗い表面は、切削・研削加工によっても平滑にすることは可能である。しかし、冷間加工に比べて能率が悪く、切粉が排出することから歩留も悪く、コストが嵩む結果となる。したがって、本発明のステンレス鋼の製造方法では、冷間加工が必須の工程である。
冷間加工は少なくとも1回実施し、新生面の創出と粗さの改善を行う。冷間加工時の断面減少率は20%以上とすることが望ましい。さらに望ましくは、40%以上である。これによって、新生面が創出され、脱Cr層が押し潰され、平均化されて表層部分のCr濃度が正常化し、かつ表面粗さの改善により潤滑剤や汚れ等が除去される。
加工方法は特に限定されない。ステンレス鋼管を製造する場合であれば、引抜き、圧延のいずれでもよく、引抜きと圧延を組み合わせてもよい。引抜きは、内面に工具を用いる芯金引きとする。空引きの場合は、内面における新生面の生成が不十分であるため、望ましくない。
良好な新生面を得るには、断面減少率を大きく取れる圧延を少なくとも1回実施するのが望ましい。
なお、冷間加工前に潤滑処理を施すが、化成皮膜潤滑処理または油潤滑処理により行う。化成皮膜潤滑処理は、化学反応により化成皮膜を形成させて潤滑性を付与する潤滑方法で、エッチング(腐食)により表面粗さが劣化し、また、潤滑膜(化成皮膜)の除去が困難で、冷間加工後に「酸洗」による脱皮膜処理が必要になるという問題がある。一方、油潤滑処理の場合は、潤滑剤(油)が管表面に物理的に付着しているだけなので、冷間加工後に行う浸漬脱脂により潤滑剤はほとんど除去される。したがって、冷間加工前に油潤滑処理を行うのが望ましく、複数回の冷間加工を行う場合は、少なくとも最終のパスでは、油潤滑処理を行って加工することが望ましい。
前記(ロ)の工程は、「浸漬による第1脱脂を行う」工程である。
冷間加工した後のステンレス鋼には、潤滑剤が付着しており、これをそのまま熱処理すると浸炭を起こし、品質上の問題が生じる。この潤滑剤を除去するために、先ず浸漬による脱脂を行う。「浸漬による脱脂」とは、脱脂液に浸漬することにより行う脱脂で、通常用いられている方法で行えばよい。浸漬脱脂には、アルカリ液の他、有機溶剤などの溶液を用いることができる。浸漬脱脂を行う際には、用いる溶液によっては加温してもよい。
前記(イ)の冷間加工に際して、化成皮膜潤滑処理を行った場合には、浸漬脱脂後、さらに酸洗が必要となる。しかしながら、酸洗処理を行うと、結晶粒界が特に浸食され、表面粗さが劣化するので、極力避けることが望ましい。油潤滑処理を行った場合は、潤滑剤は物理的に付着しているだけで、浸漬脱脂でほとんど除去されるので、酸洗は必要とされない。
前記(ハ)の工程は、「機械研削または電解研磨による第2脱脂を行う」工程である。
このような処理を行うのは、冷間加工を行い、浸漬脱脂した後のステンレス鋼の表面では、脱脂剤(油潤滑処理に用いた潤滑油)が見かけ上は除去されていると判断されても、僅かではあるが残存(付着)しており、加熱すると残留付着物から炭化水素その他の腐食性のガスが発生するからである。特に、ステンレス鋼管の場合は、次に述べるように、管の内面付着物の除去が困難で、配管として使用する際に、管内面の腐食や、管内を通過する物質に対する汚染が生じ易い。
金属の加工時に用いる潤滑油は一般的に油脂を主成分とし、極圧添加剤としてF、Cl、S、P等の化合物を含んでいる。付着物は管の内外面に存在しているが、熱処理時には、外面の付着物から発生するガスは炉内に飛散して薄まり、さらに連続的に供給される雰囲気ガスで希釈されるので影響は少ない。しかし、内面の付着物から発生したガスは管内に滞留し、管内の内容積に対して無視できない量になる。
本発明の第2脱脂工程、すなわち前記(ハ)の工程を行わずに、油潤滑処理を施して冷間加工を行った後のステンレス鋼管を、(ロ)の工程の浸漬による脱脂を行った後直ぐに、雰囲気ガスとして水素を使用する従来の水素炉で熱処理(光輝熱処理)した際の管内のガスを採取し、分析した。その結果、管内を十分に水素で置換した後に被処理材を炉内に装入して熱処理をしても、炭化水素、CO、CO2、N2、O2を主体とするガスが合わせて6〜10体積%(残部は、雰囲気ガスのH2)含まれていることが判明した。炭化水素、CO、CO2は、脱脂後の残留付着物から発生したガスであり、N2、O2は装入前の管内に存在していた空気に由来するものと考えられる。また、微量ではあるが、潤滑油中の極圧添加剤に含まれるF、Cl、S等を含有するガスが残留付着物から発生し、管内に滞留することも確認された。なお、これらの成分は、配管または伝熱管として使用された際には、管内通過物質に対する“汚染”という観点からは、微量でも問題となる成分である。
さらに、このような残留付着物からのガスの発生は、200℃を超えると認められ、300℃を超えるとその発生量が次第に減少し、500℃以上では殆ど発生しなくなることが判明した。
これらのガス(前記の炭化水素やCO)が管内に滞留したまま熱処理を続けると、ガスのC(炭素)活量が高まり、例えばステンレス鋼のC活量より高くなると浸炭が生じるおそれがある。
また、フッ化物、塩化物等のハロゲン元素は、冷間加工時にステンレス鋼管表面と反応して、常温から300℃程度の範囲でガス化し、また凝縮する鉄、Niのハロゲン化合物として存在しているケースが多い。この鉄、Niのハロゲン化合物は熱処理時にガス化し、管の外表面のものは前述のように飛散希薄化するが、管内表面でガス化したものは管内に滞留し、冷却時に管の内面に再付着する。再付着したものは濃縮されており、大気中でも錆を発生させるなどの悪影響を及ぼす。
したがって、本発明では、冷間加工((イ)の工程)した後、浸漬脱脂((ロ)の工程)後の熱処理((ニ)の工程)前に、特に管の内面に残存する付着物を機械的に取り除く機械研削または電解研磨による第2の脱脂((ハ)の工程)を行う。
その方法として、砥粒による研削、フェルトまたはスポンジクリーニングなどが適用できる。その際、研磨に使用する研磨ベルト、砥石などの研磨剤と、クーラント等の冷却材には、前述のようなガスの発生源となるものは含まれないことが望ましい。
研磨剤には、研磨ベルト、砥石のように砥粒を固め保持するためにバインダーが用いられるが、これらの研磨剤で研磨した場合、表面が研削されると同時に、表面へのバインダーの摺り込みが生じる。通常、バインダーには樹脂が用いられる場合が多く、C源になり得るので、ブラスト法のように、砥粒と圧縮空気(エアー)のみを用いる方法が望ましい。
砥粒としては、通常、サンド(砂)、アルミナ、ジルコニア等を用いるのがよい。これらには、ハロゲン元素、C源、Zn、Sn、Cu等の低融点金属が含まれていないことが望ましい。例えば、砂を用いる場合、処理の対象がステンレス鋼であれば、塩素分を極力含まない川砂を用いる。海砂は塩素を多量に含むので、望ましくない。
エアーにも圧縮機に使用する潤滑剤が混入する恐れがあるので、フィルターリングし、油分等が含まれない状態にしておくことが望ましい。
フェルトまたはスポンジクリーニングは、汚れをふき取る使い方としては効果がある。しかし、表面に強く押し付け、それによる発熱が大きい使い方をした場合は、熱で炭化したものが鋼表面に付着する危険性がある。また、フェルトやスポンジは、汚れの除去を確認する目的でも用いる。
クーラント(冷却材)や汚れ取りに有機溶剤を用いると、それがガス発生源となるので、有機溶剤は極力用いないのがよい。冷却用や、汚れを取り除く洗浄用の溶媒として、純水は用いても差し支えないが、水道水は塩素を含むので望ましくない。
小径かつ長尺のステンレス鋼管を多量に処理する場合であっても、砥粒としてサンド等を用いるブラスト法が適している。既に(ロ)の工程で、浸漬による第1脱脂を実施した後なので、管の内表面全体に砥粒が行きわたるようにして表面を僅かに研削するだけで、表面に残留する付着物を除去できる。このため、数十秒間のブラストで十分な除去効果が得られる。管内における流量の安定化に要する時間も含めて2分間程度のブラストでよい。したがって、この場合のブラスト前後の内径変化(肉厚減少)は極めて小さく、計測の誤差範囲内である。
なお、本発明の方法によりステンレス鋼管、特に、小径で長尺の鋼管を製造する場合、管内面の表面粗さが大きな影響を及ぼす。すなわち、表面粗さが大きいと、凹部分には潤滑剤等の汚れが溜まりやすく、これを浸漬脱脂により洗浄除去することが困難であり、機械研削による脱脂の際も、凹部分に砥粒が届くまでにその周辺を多量に研削することが必要になる。そのため、一定の清浄度を得るのに要する時間と労力が極めて大きくなる。したがって、特に、小径で長尺のステンレス鋼管を製造する場合は、前記(イ)の工程で、断面減少率を大きくとれる冷間加工を行って、内表面の平滑度を高めておくことが重要である。
浸漬脱脂後に行う第2脱脂には、機械研削による脱脂の代わりに電解研磨による脱脂を行ってもよい。電解研磨とは、ステンレス鋼を陽極として、電解研磨液を介して直流電流を流し、鋼表面を溶解させることにより研磨効果を得る方法である。電解研磨によっても鋼表面が研削されるので、機械研削を行った場合と同様の効果が得られる。
電解研磨液は、通常使用されている硝酸ナトリウム(NaNO3)等を用いればよい。電解研磨時の電流密度および電解時間は、ステンレス鋼表面に残存する付着物の量、除去の難易性にもよるが、通常は、0.1〜0.5A/cm2で、30〜500秒間通電するのがよい。
前記(ニ)の工程は、「熱処理を行う」工程である。
熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、通常は、大気と燃焼ガスを使用する大気炉熱処理を行うのがよい。すなわち、大気雰囲気炉を熱処理炉として使用し、この熱処理炉内に、例えば燃料であるLNGの燃焼排ガスを通過させる方法で、熱処理コストを低下させることができる。しかし、この場合は、浸炭を防止するために、ステンレス鋼のC活量よりも雰囲気ガスのC活量を下げておくことが必要である。そのためには、燃料ガスを完全燃焼させて雰囲気ガス中の一酸化炭素濃度を低減するのがよい。通常は、燃焼用空気の供給量を理論空気量以上としておけば問題ない。
雰囲気ガスとして水素を主成分とする水素炉での熱処理(光輝熱処理)でもよい。このような雰囲気ガスを使用するのは、ステンレス鋼の表面酸化を抑えるためで、水素のみでもよいし、水素に、例えば、He、Ar等の不活性ガスを混合してもよい。ただ、不活性ガスは高価なので、通常は積極的には添加しない。
窒素は、安価なガスであり、水素に混合して用いることは可能であるが、ステンレス鋼管の窒素含有レベルによっては、母材への浸透(窒化)または脱窒を生じる。したがって、その混合割合は、母材の窒素レベルに応じて0〜10体積%の範囲で調整するのがよい。なお、水素を主成分とする雰囲気ガスを用いる場合、不可避的に混入する不純物ガスは許容される。
雰囲気ガスについては、ステンレス鋼またはステンレス鋼管の製造上の制約、製品の用途等に応じて、前記各種のガスから適宜選択して使用すればよい。
以上述べたように、本発明のステンレス鋼の製造方法またはステンレス鋼管の製造方法は、〔冷間加工〕→〔浸漬脱脂〕→〔機械研削または電解研磨による脱脂〕→〔熱処理〕の工程を有するステンレス鋼管の製造方法である。これに対して、従来方式の工程例は、〔冷間加工〕→〔脱脂〕→〔熱処理〕であり、〔機械研削または電解研磨による脱脂〕の工程は含まれていない。
一方、従来において、熱処理後に脱スケールを実施する場合がある。これを、図1(b)に比較例として示した。すなわち、〔冷間加工〕→〔脱脂〕→〔熱処理〕の後に、〔メカニカルデスケール〕の工程を有する方式で、機械研削手段を用いることから、形式的には、本発明のステンレス鋼の製造方法またはステンレス鋼管の製造方法は、比較例における〔熱処理〕と〔機械研削(メカニカルデスケール)〕とを入れ替えただけとも見ることができる。
しかし、以下の点において、前記比較例の方法と本発明の方法とは根本的に相違している。
第1に、比較例の方法によれば、浸漬脱脂後にステンレス鋼またはステンレス鋼管表面に残留する付着物は、熱処理の際に500℃未満でガス化し、ガス化生成した成分が均熱時にステンレス鋼母材内に拡散侵入する。そのため、ガス化成分が拡散侵入した部分を除去するに要する研磨時間は膨大であり、また、拡散深さの把握ができず、その部分を除去し得たか否かの確認は極めて難しい。これに対し、本発明の方法では、浸漬脱脂で除去できなかった僅かの付着物を除去するだけなので、前述したように、短時間の処理で目的が達せられる。
第2に、比較例の方法では、前記のガス化成分の侵入部分を除去するために研削代を大きくせざるを得ないので、管の内径が大きくなり肉厚が減少し、公差に入らない場合も起こり得る。本発明の方法では、短時間の処理なので寸法変化は僅少である。
第3に、比較例の方法では、〔熱処理〕後、〔メカニカルデスケール〕を実施するまでに、待機等で時間が空いた場合、母材内へ拡散侵入したガス成分が例えばハロゲン化合物であると、腐食がすみやかに進行するので、腐食深さの保証が難しく、不合格とせざるを得ない。本発明の方法では、熱処理で付着物が分解ガス化する前に除去するので、このような問題は生じない。
このように、本発明の方法で得られたステンレス鋼またはステンレス鋼管は、表面清浄度に優れ、したがって耐食性に優れている。このステンレス鋼またはステンレス鋼管は、浸漬脱脂後に、必要最小限の機械研削または電解研磨による脱脂を行うので、例えば、機械研削として砥粒をブラストした場合でも、表面の加工歪層を極少とし、かつ、塩化物、硫化物等の付着量をも極少とすることが可能である。
表面に加工歪層があると、鋭敏化が加速され、転位密度が高く割れやすいことは公知であり、また、塩化物、硫化物がステンレス鋼またはステンレス鋼管の応力腐食割れ(SCC)を加速する作用があることもよく知られているが、本発明の方法で得られたステンレス鋼またはステンレス鋼管は、これら悪影響を及ぼす要因を僅少に抑え、耐応力腐食割れ性に極めて優れた性質を有することも大きな特徴である。
溶解、精錬工程および造塊、素材製造工程を経て得られたSUS304L(オーステナイト系ステンレス鋼)を素材とする継目無製管方法で得られたステンレス鋼素管を用いて、前記図1(c)に例示した熱間製管後の製管工程に準じた工程でステンレス鋼管を製造し、機械研削または電解研磨(以下、「機械研削等」という)による肉厚減少量、表面粗さ、表面加工歪み層深さ、カーバイド析出(10%蓚酸による腐食試験)および付着物(塩化物、硫化物)量を調査した。なお、前記製造した管の寸法は、外径16mm、厚さ1.2mm、長さ14〜20mである。
評価方法は次のとおりである。
〔機械研削等による肉厚減少量〕
製造した管の3箇所(長さ方向に両端と中央の部位)で肉厚減少量を測定し、その平均値が2/100mm以下の場合「○印(良好)」、2/100mmを超える場合「×印(不良)」とした。
〔表面粗さ〕
管の内面3箇所の表面粗さを中心線平均粗さRa(μm)で表示し、その平均値が0.5μm以下であれば「◎印(極めて良好)」、0.5μm超え1μm以下であれば「○印(良好)」、1μm超えであれば「△印(良)」とした。
〔表面加工歪み層深さ〕
表面加工歪み層深さとは、浸漬脱脂後に行う機械研削等による材料表面の加工歪層の厚さで、ステンレス鋼管の横断面のミクロ観察でスベリ線が見られる結晶粒のうち最深部にある結晶粒の深さである。スベリ線が無いかもしくは前記最深部にある結晶粒の深さが3/100mm以下であれば「○印(良好)」、3/100mm超えであれば「×印(不良)」とした。
〔カーバイド析出(10%蓚酸による腐食試験)〕
冷間加工後に熱処理を施した前記ステンレス鋼管のそれぞれについて、長さ方向に5mの等間隔で試験片を採取し、625℃×2時間の鋭敏化処理を行って、粒界にCrカーバイドを析出させ、粒界隣接部にCr欠乏層(領域)を生じさせた後、10%蓚酸による腐食試験を実施した。試験は、JIS G 0571(ステンレス鋼の10%しゅう酸エッチ試験方法)に規定される方法に準じて行った。
前記試験において、いずれの結晶粒においても粒界に溝状組織が認められなければ「◎印(極めて良好)」、溝状組織が認められた場合であっても、いずれの結晶粒においても溝状組織が粒界の5%以下でしか認められなければ「○印(良好)」、溝状組織が粒界の5%を超える部分に認められる結晶粒が1個でもあれば「×印(不良)」とした。
〔付着物量(塩化物および硫化物量)〕
管内に純水を封入し、内面の付着物を溶出させた後、封入水中のClイオン、SO4イオンの濃度をイオンクロマトグラフィーにより求め、封入水量と管内の表面積から単位表面積当たりの塩化物量(mg/m2)、および硫化物量(mg/m2)を算出した。塩化物および硫化物の合計量が1mg/m2以下であれば「○印(良好)」、1mg/m2超えであれば「×印(不良)」とした。
製管条件を表1に、調査結果を表2に示す。
Figure 0004751603
Figure 0004751603
表1において、「脱脂方法」の欄の「アルカリ」とは、アルカリ液に浸漬して脱脂し、その後温水で洗浄する処理を、「アルカリ→酸洗」とは、アルカリ液に浸漬して脱脂し、その後温水で洗浄する処理をした後、酸洗し、次いで水洗する処理を意味する。
機械研削では、いずれも0.4MPa(ゲージ圧)のクリーンエアーを使用した。「機械研削または電解研磨」の「種類」の欄で、例えば、「ブラスト/1分」とは、ブラストの噴射時間が1分であることを、「往復研磨/10回」とは、ペーパー等による研磨を10回往復させて行ったことを、「クリーニング/5回」とは、フェルト等によるクリーニングを5回行ったことを表す。
「電解研磨」は、電解研磨液にNaNO3(温度20℃)を用い、電流密度0.3A/cm2の直流電流を120秒間通電することにより行った。
また、「熱処理」の「雰囲気ガス」の欄の「水素」は、H2が実質的に100体積%であることを意味する。
表1および表2から明らかなように、浸漬脱脂後、熱処理前に機械研削等を行った本発明例1〜6、および本発明例8〜11では、機械研削等による肉厚減少量をはじめ、調査した全項目について良好であった。本発明例7で表面粗さRaがやや大きかったが、これは冷間加工前の潤滑処理で化成皮膜潤滑処理を行ったためで、これ以外の機械研削等による肉厚減少量、表面加工歪み層深さ、10%蓚酸による腐食試験および付着物(塩化物、硫化物)量では、良好な結果が得られた。
これに対して、浸漬脱脂後、熱処理前に機械研削等を行わなかった従来例12〜14のうち、冷間加工前に化成皮膜潤滑処理を行った従来例12では、表面粗さRaが劣り、10%蓚酸による腐食試験でも良好な結果は得られなかった。また、油潤滑処理を行った従来例13および14では、管内残留付着物の除去が十分ではなかったため、管内に付着物が認められた。
一方、浸漬脱脂後に、機械研削を行ったが、本発明で規定する「熱処理前」ではなく、「熱処理→酸洗後」または「熱処理後」に行った比較例15、17、18では、いずれも表面加工歪み層深さが不良で、冷間加工前に化成皮膜潤滑処理を行った比較例15では、付着物(塩化物、硫化物)量を除き、総じて良好な結果が得られなかった。比較例16はフェルトクリーニングであることから、切削力がなく浸炭部の除去がなされず、10%蓚酸腐食試験が不良であった。比較例18で付着物(塩化物、硫化物)量が不良だったのは、海砂を用いたブラスト処理(機械研削)を熱処理後に行ったことに起因して、海砂に含まれる塩素が塩化物として付着し残留したためである。
なお、この実施例は、SUS304Lを素材とするステンレス鋼管についての調査結果であるが、これ以外のオーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼などクロムを含むステンレス鋼、さらにはNi基合金についても、同様の結果が得られた。
本発明のステンレス鋼の製造方法またはステンレス鋼管の製造方法は、半導体製造、化学工業、食品産業、火力または原子力発電設備等の産業分野で、設備、装置類の構成部材として広く適用し得る、表面清浄度および耐食性に優れたステンレス鋼またはステンレス鋼管の製造、特に、原子力発電設備等に設けられる給水加熱器の伝熱管等、小径かつ長尺管として用いられるステンレス鋼管の製造に好適に利用することができる。
本発明のステンレス鋼管の製造方法を適用した一般的なステンレス鋼管の熱間製管後の製管工程例を示す図で、(a)は従来方式の工程例、(b)は比較のための工程例、(c)は本発明の製造方法を適用した工程例である。

Claims (2)

  1. ステンレス鋼素管を冷間加工し、脱脂を行った後、熱処理を行うステンレス鋼管の製造方法であって、前記脱脂工程が、
    (1)浸漬による第1脱脂工程と
    (2)管の表面を砥粒を用いたブラスト処理で研削する第2脱脂工程
    とからなることを特徴とするステンレス鋼管の製造方法。
  2. 冷間加工を油潤滑により行うことを特徴とする請求項に記載のステンレス鋼管の製造方法。
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