本発明者らは、トナーの定着性,帯電安定性,現像・転写性等について鋭意検討したところ、下記式(1)又は(2)又は(3)で表される構造を有するユニットAを少なくとも部分構造として含む共重合体(以下、単に「共重合体」と呼ぶこともある)を含有させることによって、定着性の優れたナーであっても帯電特性が安定し、現像性に優れたトナーを提供できることを見出したものである。
(式中、R1〜4は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、R5は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A1はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
(式中、R6〜9は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、また、隣接する同士が5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよく、R10は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A2はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
(式中、R11〜16は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、また、隣接する同士が5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよく、R10は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A3はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
上記共重合体の最も特徴的な点は、前記式(1)又は(2)又は(3)に示されるようにスルホン酸エステル基を有することにある。すなわち、従来から提案されているスルホン酸基を有する樹脂に対して、スルホン酸エステル基を有していることによって、その帯電発現効果を向上させることが可能となる。その結果、この樹脂を含有するトナーは初期からの摩擦帯電における立ち上がり特性に優れる。この理由は明確ではないが、スルホン酸エステル基はスルホン酸基に比べて疎水性が高く、空気中の水分子の影響を受けずに電子吸引特性が機能する点にあると推測している。また、スルホン酸塩のようなアニオン状態とは分子レベルでの摩擦機構に違いがあるものと考えられ、得られるトナー表面の電気抵抗値に対する影響も無視できない。さらに、水系媒体中での造粒工程を有する製法によって生成されるトナーにおいては、スルホン酸基或いはスルホン酸塩基を有する樹脂では、造粒性に影響を与える場合があり、トナー中への含有量が制限される場合があったのに対し、スルホン酸エステル基を有する樹脂では造粒性に与える影響が大幅に軽減されることが分かった。また一方で、スルホン酸エステル基を有するユニットAが多すぎる場合には、トナーの現像・転写性を損なう場合があることが分かった。このため、ユニットAが特定の割合で存在しているときに帯電付与効果が発揮される。
加えて、上記共重合体の特徴的な点は、カルボキシル基を有するユニットBを含有することである。トナー粒子を製造する過程で予め本発明の共重合体を含有させておき、該共重合体が製造されるトナー粒子の表面に局在するような条件で、トナー粒子を製造する方法において、該共重合体をトナー粒子表面に局在させるためには、該共重合体に酸価を付与することが重要であることが見出された。
さらに、理由は定かではないが、カルボキシル基を有するユニットBを含む前記共重合体は、トナー粒子表面に局在することができるだけでなく、そのトナー粒子を含むトナーの摩擦帯電の耐久前後における安定性を向上させ得ることを見出した。なお、カルボキシル基を含有するユニットBにおけるカルボキシル基はカルボキシレートアニオンになっていてもよい。
加えて、上記共重合体の特徴的な点は、芳香族ビニルモノマー由来のユニットCを有することにある。上記のような共重合体をトナー表面近傍に局在させる場合、該共重合体のガラス転移点が低い場合にはトナーの保存安定性が悪化してブロッキング現象を引き起こし、特に、高温環境下において、現像器内や現像部材への融着を引き起こすことや、さらに、トナー同士が融着し、流動性の低下を引き起こす恐れがある。また、バインダー樹脂に対する相溶性の制御が必須となる。本発明者が鋭意検討を行った結果、芳香族ビニルモノマー由来のユニットCを有することによって、ユニットA及びBの帯電発現効果を阻害することなく、トナーのバインダー樹脂に対する相溶性の制御が可能となる上、樹脂のガラス転移点を好適な範囲で設計できることを見出した。加えて、ランダム共重合性を保持したまま分子量の制御が容易となり、分子中でのユニットAの不均一な分布を防止することができる。以上のような理由から、結果として得られるトナーの定着性を損なうことなく帯電特性を安定化することが可能となる。
次に、上記共重合体における各ユニットの含有割合について述べる。本発明においては、前記一般式(1)で表されるユニットAは共重合体を形成するその他(ユニットA以外の全て)のユニットに対して、ユニット数基準(モル基準)で、
ユニットA:ユニットA以外の全てのユニット=1:99〜15:85
の割合で含有されており、3:97〜12:88であることがより好ましい。ユニットAが少なすぎる場合には、帯電性が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合には現像・転写性が低下する場合がある。尚、本発明において、ユニットとは、共重合体の重合に用いられ、共重合体を構成する単量体に由来する構成単位のことである。
また、上記共重合体においては、ユニットBは共重合体を形成するその他(ユニットB以外の全て)のユニットに対して、ユニット数基準(モル基準)で、
ユニットB:ユニットB以外の全てのユニット=0.05:99.95〜8.00:92.00
であり、より好ましくは0.5:99.5〜6.0:94.0である。ユニットBの割合が0.05より少ない場合には、トナー表面における上記共重合体の存在量が不十分となる場合や、耐久後において帯電性が安定しない場合がある。逆に、ユニットBの割合が8.00:92.00より多い場合には、トナー中での上記共重合体の分散状態に影響を与えたり、トナーの帯電性が環境(温度・湿度)の変化によって左右される場合がある。以上の理由により、ユニットBが上記の特定の割合で共存していることが好ましい。
更に、芳香族ビニルモノマー由来のユニットCの割合が少なすぎる場合には、該樹脂のTgが低くなり、トナーの保存安定性や耐久安定性が低下する場合があり、加えてバインダー樹脂との相溶性が著しく悪くなりトナー表面近傍に存在する該樹脂の存在量が極端に少なくなり(または多くなり)、該樹脂を含有させる効果が十分に発現されない場合がある。そのため、ユニットCは共重合体を形成するその他(ユニットC以外の全て)のユニットに対して、ユニット数基準(モル基準)で、
ユニットC:ユニットC以外の全てのユニット=30.0:70.0〜98.0:2.0
を満たすことが特に好ましく、50.0:50.0〜98.0:2.0を満たすことが更に好ましい。
上記共重合体の合成方法としては特に限定されないが、好ましい方法としては、少なくとも下記一般式(4)で表されるモノマーとカルボキシル基を有するモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー成分を共重合する方法である。
(式中、R18は水素原子又はメチル基を表し、Bは下記式(5)又は(6)又は(7)で表される。)
(式中、R19〜22は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、R23は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A4はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
(式中、R24〜27は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、また、隣接する同士が5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよく、R28は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A5はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
(式中、R29〜34は独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、アルコキシ基を表し、また、隣接する同士が5員環又は6員環の芳香族環を形成していてもよく、R35は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基を表し、A6はアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合、エーテル結合を表す。)
上記式(4)で表されるモノマーの合成方法としては、公知の方法が利用できる。例えば、前記式(5)又は(6)又は(7)の構造を有するアミンやアルコールを反応性のアクリレート等(例えば、アクリル酸クロライドや無水メタクリル酸、イソシアネートオキシエチルメタクリレート等)と結合させる方法である。
また、上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、特に制限はないが、具体的に挙げるとすればアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニル等であり、特にアクリル酸、メタクリル酸を用いるのが好ましい。また、芳香族ビニルモノマーとしては、具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられるが、特にスチレンを用いるのが最も一般的で好ましい。
上記共重合体の物性を、トナー性能やトナー製法に合わせて制御するために、下記式(8)で表されるモノマー((メタ)アクリル酸エステル)を共重合させることが好ましい。上記共重合体が(メタ)アクリル酸エステルユニットを有することによって、バインダー樹脂やワックスとの相溶性を微調整することが可能であり、ガラス転移点の調整も容易となる。また溶媒への溶解性を改良することも可能となり、さらに、ランダム共重合性をより高めることができスルホン酸エステルユニットの分子中への均一分布が促進される。
これらのモノマー混合比としては、ユニットCの含有割合を考慮すれば、
式(8)で表されるモノマー:芳香族ビニルモノマー=99.1:0.1〜40.0:60.0
が好ましい。
(式中、R36は水素原子又はメチル基を表し、R37は置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基を表し、置換基としては水酸基、メトキシ基、エトキシ基、アセチル基、アミノ基である。)
上記の式(8)の構造を有する化合物の具体例を挙げると、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、などのアクリル酸エステル類などを挙げることができる。
上記共重合樹脂には、溶媒への溶解性やバインダー樹脂との相溶性、ワックス類との相溶性等を考慮して、他のモノマーを構成成分として共重合してもよい。共重合してもよいモノマーは公知のものから任意に選択できるが、具体的に挙げると、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエスエル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸誘導体などを挙げることができる。
上記したようなモノマー成分を共重合するに際して用いることのできる重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等様々なものが使用できる。
使用できる過酸化物系重合開始剤としては、有機系としては、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられ、無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられ、具体的には、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート等が挙げられる。また、使用できるアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が例示される。
なお、必要に応じてこれら重合開始剤を2種以上同時に用いることもできる。
この際使用される重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対し0.1〜20質量部であることが好ましい。
また、その重合法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等いずれの方法を用いることも可能であり、特に限定するものではない。
本発明においては、前記共重合体の分子量が小さすぎる場合には、スリーブやキャリアといった部材を汚染しやすいということに加え、スルホン酸ユニットやスルホン酸エステルユニットの帯電特性に悪影響を与える場合がある。逆に分子量が大きすぎる場合には、トナーの定着性を損なう恐れがあるだけでなく、前記共重合体のトナー中での存在状態が安定せず、均一な帯電特性が発現されない場合がある。以上の観点から、前記共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより算出した重量平均分子量が2000〜200000であることが好ましい。より好ましい範囲としては、重量平均分子量が5000〜100000である。
また帯電特性や定着性の観点から、前記共重合体の分子量分布は狭いことが好ましい。好ましい分子量分布の範囲は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnにおいて、Mw/Mnが1.0〜6.0であり、より好ましくは、1.0〜4.0である。
尚、GPCによる分子量の測定は、以下の様にして行えばよい。
前記共重合体をTHF(テトラヒドロフラン)に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定する。尚、サンプル調製は、共重合体の濃度が0.4〜0.6質量%になるようにTHFの量を調整する。
装置 :高速GPC HLC8120 GPC(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、
805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量 :0.10ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
前記したように、トナーの定着性を損なわずに効果を発揮するために、前記共重合体のガラス転移点(Tg)を制御することが好ましく、示差走査熱量計(DSC)により測定されるTgが45℃〜90℃の範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は50℃〜85℃である。
トナー製法への対応や結着樹脂との相溶性の改良、さらには水系媒体中でトナー粒子を製造する場合におけるトナー表面近傍への前記共重合体の局在化のために、前記共重合体が特定の酸価を有していることが好ましい。ただし、酸価が高すぎる場合には、ユニットAの帯電特性を阻害することがあり好ましくない。前記共重合体の好ましい酸価の範囲は3.0〜40.0mgKOH/gであり、より好ましくは5.0〜30.0mgKOH/gである。
尚、本発明における酸価は以下の方法により求められる。
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤する。このときの重量をW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う(たとえば、京都電子株式会社の電位差滴定測定装置AT−400(winworkstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
本発明のトナーは、前記共重合体を含有することによって効果を発揮するが、その含有量は特に限定されない。好適な範囲としては結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜10質量部である。
本発明において使用される結着樹脂としては特に制限はない。例えば、スチレン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等がトナー特性の上で望ましい。
本発明のトナーのTHFに可溶な樹脂成分のGPCにより算出したピーク分子量は、3000〜80000の範囲であることが好ましく、3000より小さいと帯電性に問題が生じる場合があり、80000よりも大きいと低温定着化が困難となる。尚、ピーク分子量の測定方法は前記した樹脂の分子量の測定方法と同様である。
本発明のトナーは、ワックスを含有することが好ましい。トナー中にワックスを含有させることにより、低温定着性と耐オフセット性にすぐれ、且つ表面平滑性が優れた定着画像を得ることができる定着性に優れたトナーを得ることができる。
トナー中にワックスを含有させた場合、定着時、溶融されたワックスは、その表面張力によって転写材と定着部材との間において離型剤として作用し、耐オフセット性能を著しく向上させるだけでなく、定着時のトナーの溶融化を加速させることによって低温定着性をも向上させることができる。このようなワックスの作用をトナー中で効果的に発現させるためには、ワックスの融点が非常に重要となる。すなわち、定着性の優れたトナーにおいては、示差走査熱量計により測定されるトナーのDSC曲線において、昇温時に見られる融解ピークの温度が重要となる。この融解ピークの温度が高すぎる場合には、低温時での離型作用が発現せず、十分な耐オフセット性が得られないだけでなく、低温定着性能も望めない。逆に低すぎる場合には、トナーの溶融粘度が低くなりすぎてしまうために、高温側での離型作用が発現せず、十分な耐オフセット性が得られず、定着部材への巻きつきや張り付きといった現象まで引き起こされる。以上のような理由から、好ましいトナーのDSC曲線において、昇温時に見られる融解ピークの温度の範囲は、45℃〜130℃であり、より好ましくは50℃〜110℃、さらに好ましくは50℃〜90℃である。
本発明のトナーに用いられるワックスは、結着樹脂100質量部に対して0.5〜30質量部の範囲の含有量であることが好ましい。含有量が0.5質量部未満では前記した耐オフセット性に対する改善効果が充分でなく、30質量部を超えてしまうと長期間の保存性が低下すると共に、他のトナー材料の分散性が悪くなる上に、トナー表面近傍に存在するワックスの量が増加してしまい、本発明の特徴である帯電特性を阻害する場合やトナーの流動性の低下や画像特性の低下につながることがある。
本発明のトナーに使用可能なワックスとしては、前記のような範囲で融解ピークを有しているものから選ばれればよく、特に制限はないが、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス等が挙げられる。
前述したように、定着性に優れたトナーとする場合、トナーのガラス転移点も制御することが好ましい。つまり、トナーのガラス転移点が高すぎる場合には、低温定着性能は得られない。しかしながら、トナーのガラス転移点の低温化によって、溶融温度は低くなるものの、低すぎる場合にはトナーの保存安定性が悪化してブロッキング現象を引き起こす恐れがあるだけでなく、特に、高温環境下において、現像器内への融着を起こしてしまい、トナー同士が融着し、流動性の低下を引き起こす。さらには、結果的に帯電性能が低下するため、現像時のトナー飛散やカブリの発生を生じてしまう。以上のような理由から、トナーのDSC曲線より求められるガラス転移点は45〜70℃の範囲が好ましく、より好ましくは50〜70℃の範囲である。
本発明において、前述のワックスの融解ピーク及びトナーの軟化点温度及びガラス転移点は、例えば示差走査熱量測定(DSC)装置(M−DSC TAインストルメンツ社製)を用いて測定することができる。測定方法は、アルミパンに試料約6mg精秤し、リファレンスパンとして空のアルミパンを用い、窒素雰囲気下、モジュレーション振幅±0.6℃、周波数1/分で測定する。昇温時のリバーシングヒートフロー曲線からガラス転移点を中点法により求める。融解ピークは、上記測定で得られたヒートフロー曲線より求める。
本発明のトナーにおいて、摩擦帯電特性を補助するために、他の荷電制御剤を含有させることも可能であるが、好ましくは含有させない方がよい。含有させることが可能な荷電制御剤として具体的には、ネガ系制御剤としては、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の金属化合物;スルホン酸、カルボン酸を側鎖にもつ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリークスアレーン等が好ましい。ポジ系制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
本発明のトナーは、着色剤を含有している。黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3,7,10,12,13,14,15,17,23,24,60,62,74,75,83,93,94,95,99,100,101,104,108,109,110,111,117,123,128,129,138,139,147,148,150,166,168,169,177,179,180,181,183,185,191:1,191,192,193,199が好適に用いられる。染料系としては、例えば、C.l.solvent Yellow33,56,79,82,93,112,162,163、C.I.disperse Yellow42.64.201.211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し1乃至20質量部となる様に添加して用いられる。
さらに本発明のトナーは磁性体を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が挙げられる。
本発明に用いられる磁性体は、より好ましくは、表面改質された磁性体が好ましく、ポリマー溶解懸濁法や懸濁重合法の如き製法によって製造される重合法トナーに用いる場合には、重合阻害のない物質である表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
これらの磁性体は平均粒子が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部、特に好ましくは40〜150質量部となる様に含有させるのが良い。
796kA/m(10kエルステッド)印加での磁気特性が保磁力(Hc)1.59〜23.9kA/m(20〜300エルステッド)、飽和磁化(σs)50〜200emu/g、残留磁化(σr)2〜20emu/gの磁性体が好ましい。
本発明のトナーにおいて、高画質化のため、より微小な潜像ドットを忠実に現像するためには、トナーの重量平均粒径が3.0〜9.0μmであることが好ましく、4.0〜6.5μmであることがより好ましい。重量平均粒径が3.0μm未満のトナーにおいては、転写効率の低下から感光体上の転写残トナーが多くなり、感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなる。さらに、トナー全体の表面積が増えることに加え、粉体としての流動性及び撹拌性が低下することから、カブリや転写性が低下する傾向があり、削れや融着以外にも画像の不均一ムラ等が生じやすくなる。また、トナーの重量平均粒径が9.0μmを超える超える場合には、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなり、ドットの再現性が低下する傾向にある。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型またはコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能である。本発明においては、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピュータ(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調整する。たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出し、それより重量平均粒径(D4)を測定する。
本発明のトナーの平均円形度は、0.955以上であることが好ましい。特に好ましくは平均円形度が0.970以上である。平均円形度が高いトナーは転写性に非常に優れている。これはトナー粒子と感光体との接触面積が小さく、鏡像力やファンデルワールス力等に起因するトナー粒子の感光体への付着力が低下するためと考えられる。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではフロー式粒子像測定装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度を下式により求め、さらに下式で示すように測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−3000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000の範囲を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満、・・・、0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割し、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の値との誤差は、非常に少なく、実質的に無視できる程度であり、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこの様な算出法を用いても良い。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像測定装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像測定装置に導入し、トータルカウントモードで3000個のトナー粒子を計測して、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像測定装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
本発明における「円形度」とは、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、トナー形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
一般にトナー形状が不定形であるものは、トナー凸部、又は、凹部での帯電均一性が低く、さらに、不定形でもあるために静電潜像担持体とトナーとの接触面積が増加することにより、トナー付着力が高くなり、結果として転写残トナーの増加を招く。
本発明のトナーの製造方法としては特に限定されず公知の製法が用いられる。具体的には、特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報、特開昭59−61842号公報に記載されている懸濁重合法を用いて直接、トナー粒子を製造する方法;マイクロカプセル製法のような界面重合法でトナー粒子を製造する方法;コアセルベーション法によるトナー化;特開昭62−106473号公報や特開昭63−186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る会合重合法によりトナー粒子を得る方法;単分散を特徴とする分散重合法によりトナー粒子を製造する方法;非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後、水中でトナー化するポリマー溶解(溶融)懸濁法;乳化分散法によりトナー粒子を得る方法;さらに加圧ニーダーやエクストルーダー、或いはメディア分散機等を用いてトナー成分を混練、均一に分散せしめた後、冷却し、混練物を機械的又はジェット気流下でターゲットに衝突させて所望のトナー粒径に微粉砕し、更に分級工程を経て粒度分布をシャープにせしめてトナー粒子を製造する粉砕法;さらに粉砕法で得られたトナーを溶媒中で加熱等により球形化処理しトナー粒子を得る方法が挙げられる。
しかしながら、本発明の効果がより顕著に表れるのはポリマー溶解(溶融)懸濁法または懸濁重合法である。その理由としては、水性媒体中で造粒させる工程(造粒工程)において、前記共重合体を効果的にトナー粒子表面近傍に局在させることが可能であるからである。以下に各懸濁法について説明する。
ポリマー溶解(溶融)懸濁法によるトナー粒子の製造方法においては、まず、有機媒体に結着樹脂、共重合体及び着色剤を溶解混合または分散させるか、又は熱により溶融状態となった樹脂に共重合体及び着色剤を溶解混合または分散させる。更にワックスや必要に応じた他の添加剤とともに、撹拌機等によって均一に溶解混合または分散させ、トナー形成用の液状混合物を作製する。その場合、予め着色剤、ワックス、他の添加剤を溶融混練したものを添加してもよい。こうして得られた液状混合物を、分散安定化剤を含有する分散媒体(好ましくは水系媒体)中に添加し、撹拌装置として高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用してトナー粒子径まで分散懸濁させる(造粒工程)。そして、バインダーを溶解するために有機溶媒を用いた場合には、加熱、または減圧により有機溶媒を除去し、さらにメタノール、エタノール、1−プロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン等の溶媒を添加することによって有機溶媒を完全に除去させ、トナー粒子を得ることができる。
懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法においては、まず、結着樹脂を構成する重合性単量体中に着色剤を撹拌機等によって均一に溶解混合または分散させる。特に着色剤が顔料である場合には、分散機により処理し顔料分散ペーストとすることが好ましい。これを重合性単量体、共重合体及び重合開始剤、更にワックスや必要に応じた他の添加剤とともに、撹拌機等によって均一に溶解混合または分散させ、単量体組成物を作製する。こうして得られた単量体組成物を、分散安定化剤を含有する分散媒体(好ましくは水系媒体)中に添加し、撹拌装置として高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用してトナー粒子径まで微分散させる(造粒工程)。そして、重合工程において微分散された単量体組成物を光や熱により重合反応させ、トナー粒子を得ることができる。
ポリマー溶解(溶融)懸濁法に用いることのできる有機媒体は、トナーバインダーに応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコール、モノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサンテトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド等の硫黄・窒素含有有機化合物類等から選ばれる。
有機媒体に顔料組成物を分散させる方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、有機媒体中に必要に応じて樹脂、顔料分散剤を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を徐々に加え十分に溶媒になじませる。さらにボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで顔料を安定に微分散、すなわち均一な微粒子状に分散することができる。
ポリマー溶解(溶融)懸濁法に使用される結着樹脂としての樹脂は特に制限はない。例えば、スチレン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等がトナー特性の上で望ましい。
懸濁重合法において好適に用いることができる重合性単量体は、付加重合系単量体あるいは縮合重合系単量体である。好ましくは、付加重合系単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビリニデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸誘導体などを挙げることができる。
前記の製造方法において用いることのできる分散媒体としては、結着樹脂、有機媒体、単量体および共重合体の分散媒体に対する溶解性から決められるものであるが、水系のものが好ましい。水系の分散媒体としては、例えば水;メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;エチルエーテル、エチレングリコール等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄、窒素含有有機化合物類等から選ばれるが、水またはアルコール類であることが特に好ましい。またこれらの溶媒を2種類以上混合して用いることもできる。分散媒体に対する液状混合物又は単量体組成物の濃度は、分散媒体に対して1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜65質量%である。
水系の分散媒体を使用する場合に用いることのできる分散安定化剤としては、公知のものが使用可能である。具体例には、無機化合物として、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機化合物として、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等を水相に分散させて使用できる。分散安定化剤の濃度は液状混合物又は単量体組成物100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましい。
懸濁重合法を用いた本発明のトナーに用いる重合開始剤としては公知の重合開始剤を挙げることができる。具体的には、前記共重合体の製法で列挙したものが用いられる。
また、懸濁重合法によりトナーを製造する場合に用いる連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を挙げることができる。
本発明のトナーは、トナー粒子の表面に無機微粉体を有することが好ましい。
無機微粉体は、トナーの流動性改良及び帯電均一化のためにトナー粒子に添加、混合され、添加された無機微粉体はトナー粒子の表面に均一に付着した状態で存在する。
本発明における無機微粉体は、個数平均1次粒径4〜80nmであることが好ましい。無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合、或いは80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には、良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、トナー飛散等の問題を避けられないことがある。無機微粉体の個数平均一次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、一次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、凝集体の現像、像担持体或いは現像担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなる。トナー粒子の帯電分布をより均一とするためには無機微粉体の個数平均1次粒径は6〜35nmであることがより好ましい。
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー粒子表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数平均粒径を求めることで得られる。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、アルミナ、チタニアから選ばれる無機微粉体またはその複酸化物などが使用できる。複酸化物としては、例えば、ケイ酸アルミニウム微粉体やチタン酸ストロンチウム微粉体等が挙げられる。また、ケイ酸微粉体として、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。表面及びケイ酸微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
個数平均1次粒径が4〜80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。添加量が0.1質量部未満ではその効果が十分ではなく、5.0質量部以上では定着性が悪くなることがある。
本発明における無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、トナー飛散が起こり易くなる。
無機微粉体を疎水化処理する疎水化処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物の如き処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
その中でも、上記シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体を疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものを磁性トナー粒子に用いると、高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
また、本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、1次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは1次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の球形に近い無機微粒子又は有機微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。具体的には、例えば、球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
さらに、本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、あるいは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機および/または無機微粒子を現像性向上剤として少量用いる事もできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
また、本発明のトナーはキャリアと混合して二成分系現像剤として用いることもできるし、トナーのみからなる一成分系現像剤として用いることもできる。特に、帯電の立ち上がり特性が重要となる非磁性一成分系現像剤として用いる場合に、より顕著にその効果を発揮するものである。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。磁性キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等を微粒子化したものが使用できるが、磁性微粒子を樹脂中に分散させた磁性微粒子分散型樹脂キャリアを用いることで、より好ましく本発明の帯電特性を達成することができる。
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解若しくは懸濁させて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着させる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、例えばシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂等が挙げられる。これらは単独或いは複数で用いる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.1〜30質量%(好ましくは0.5〜20質量%)が好ましい。これらキャリアの平均粒径は10〜100μm、さらには20〜70μmであることが好ましい。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は、現像剤中のトナー濃度として2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部はすべて質量部を示す。
スルホン酸エステル基含有共重合体の製造例
以下に示す方法によりスルホン酸エステル基含有共重合体Aの合成を行った。
<共重合体Aの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸メチルエステル 8.0部
・スチレン 75.0部
・アクリル酸 4.0部
・2−エチルヘキシルアクリレート 13.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Aを得た。
<共重合体Bの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にテトラヒドロフラン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸エチルエステル 15.0部
・スチレン 70.0部
・アクリル酸 2.0部
・2−エチルヘキシルアクリレート 13.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Bを得た。
<共重合体Cの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にテトラヒドロフラン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−ベンゼンスルホン酸メチルエステル 15.0部
・スチレン 73.0部
・メタクリル酸 2.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Cを得た。
<共重合体Dの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−メタクリルアミド−5−メトキシ−ベンゼンスルホン酸メチルエステル
10.0部
・スチレン 78.0部
・メタクリル酸 2.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤としてパーブチルI(日本油脂株式会社製)を5.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Dを得た。
<共重合体Eの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−メタクリルアミド−5−メトキシ−ベンゼンスルホン酸メチルエステル
20.0部
・スチレン 69.0部
・メタクリル酸 1.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤としてパーブチルI(日本油脂株式会社製)を5.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Eを得た。
<共重合体Fの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸メチルエステル 35.0部
・スチレン 48.0部
・アクリル酸 4.0部
・2−エチルヘキシルアクリレート 13.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Fを得た。
<共重合体Gの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にテトラヒドロフラン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−ベンゼンスルホン酸メチルエステル 15.0部
・スチレン 75.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Gを得た。
<共重合体Hの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にテトラヒドロフラン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−ベンゼンスルホン酸メチルエステル 15.0部
・スチレン 67.0部
・メタクリル酸 8.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Hを得た。
<共重合体Iの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にテトラヒドロフラン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
次に、以下のモノマーを混合し、モノマー混合液を調製した。
<モノマー組成、混合比>
・2−アクリルアミド−ベンゼンスルホン酸メチルエステル 15.0部
・メチルメタクリレート 73.0部
・メタクリル酸 2.0部
・n−ブチルアクリレート 10.0部
このモノマー混合液に、さらに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を1.0部混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し、10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下、50℃で乾燥した。得られた固形物を粉砕し、共重合体Iを得た。
以上作製した共重合体A〜Iにつき、各モノマーの混合比と1H−NMR及び13C−NMR及び元素分析の結果より計算された組成比をモル%で表したものを表1に示し、前記した方法により分子量、Tg、酸価を測定した結果を表2に示す。
1 H−NMR、 13 C−NMR
日本電子製FT−NMR JNM−EX400(使用溶媒 重クロロホルム)
元素分析
カルロエルバ社製元素分析装置EA−1108(C量、O量、S量及びN量を算出)
実施例1
顔料分散ペーストの作製:
・スチレンモノマー 80部
・Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3) 13部
上記材料を容器中でよくプレミックスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約4時間分散し、顔料分散ペーストを作製した。
トナー粒子の作製:
イオン交換水1150部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液390部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて11,000rpmにて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液58部を添加し、Ca3(PO4)2を含む分散媒体を得た。
・上記顔料分散ペースト 46.5部
・スチレンモノマー 38.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・エステルワックス 13.0部
(主成分C19H39COOC20H41、融点68.6℃)
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA共重合体、酸価15mgKOH/g、Mw18000)
・共重合体A 1.0部
これらを60℃に加温し、溶解・分散して単量体混合物とした。さらに60℃に保持しながら、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.0部を加えて溶解し、単量体組成物を調製した。前記ホモミキサーの2リットルフラスコ中で調製した上記分散媒体に、上記単量体組成物を投入した。60℃で、窒素雰囲気としたTKホモミキサーを用いて10000rpmで20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ60℃で5時間反応させた後、80℃で5時間撹拌し、重合を終了させた。室温まで冷却させた後、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解し、濾過・水洗・乾燥することによりトナー粒子を得た。さらに得られたトナー粒子を分級して、2〜10μmを選択し、トナー粒子を調製した。
トナーの作製:
得られたトナー粒子の100部に対して、ヘキサメチルジシラザンで表面を処理した後、シリコーンオイルで処理した個数平均1次粒径9nm、BET比表面積180m2/gの疎水性シリカ微粉体1部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合・外添してトナー1を得た。
実施例2
実施例1において、共重合体Aを1.0部用いるかわりに共重合体Bを1.5部用いた以外は同様にしてトナー2を得た。
実施例3
実施例1において、共重合体Aを1.0部用いるかわりに共重合体Cを1.5部用いた以外は同様にしてトナー3を得た。
実施例4
顔料分散ペーストの作製:
・スチレンモノマー 80部
・カーボンブラック 13部
上記材料を容器中でよくプレミックスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約4時間分散し、顔料分散ペーストを作製した。
イオン交換水1200部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液350部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて11,000rpmにて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液52部を添加し、Ca3(PO4)2を含む分散媒体を得た。
・上記顔料分散ペースト 46.5部
・スチレンモノマー 35.0部
・n−ブチルアクリレート 25.0部
・脂肪族ワックス 10.0部
(Mw1850、Mw/Mn1.27、融点78.6℃)
・飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA共重合体、酸価15mgKOH/g、Mw18000)
・共重合体D 1.5部
これらを60℃に加温し、溶解・分散して単量体混合物とした。さらに60℃に保持しながら、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5部を加えて溶解し、単量体組成物を調製した。
前記ホモミキサーの2リットルフラスコ中で調製した上記分散媒体に、上記単量体組成物を投入した。60℃で、窒素雰囲気としたTKホモミキサーを用いて10000rpmで20分間撹拌し、単量体組成物を造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ60℃で5時間反応させた後、80℃で5時間撹拌し、重合を終了させた。室温まで冷却させた後、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解し、濾過・水洗・乾燥することによりトナー粒子を得た。さらに得られたトナー粒子を分級して、2〜10μmを選択し、トナー粒子を調製した。さらに、実施例1と同様にして、トナー粒子に疎水性シリカ微粉体を外添しトナー4を得た。
実施例5
実施例4において、共重合体Dを1.5部用いたかわりに共重合体Eを3.0部用いた以外は同様にして、トナー5を得た。
実施例6
トナー組成物混合液の作製:
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物/テレフタル酸誘導体の共重合ポリエステル樹脂
(Tg62℃、軟化点102℃、Mw21000) 100.0部
・Cuフタロシアニン(Pigment Blue 15:3) 5.0部
・脂肪族ワックス 8.0部
(Mw1850、Mw/Mn1.27、融点78.6℃)
・共重合体A 1.0部
・酢酸エチル 100.0部
上記材料を容器中でよくプレミックスした後に、それを20℃以下に保ったままビーズミルで約4時間分散し、トナー組成物混合液を作製した。
トナー粒子の作製:
イオン交換水240部に0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液78部を投入し、60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて11,000rpmにて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液12部を添加し、Ca3(PO4)2を含む分散媒体を得た。さらに、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製)1.0部を添加し10分間撹拌した。
前記ホモミキサーのフラスコ中で調製した上記分散媒体を30℃に調整し、撹拌している中に、30℃に調整したトナー組成物混合液180部を投入し、1分間撹拌した後停止してトナー組成物分散懸濁液を得た。得られたトナー組成物分散懸濁液を撹拌しながら40℃一定で、局排装置により懸濁液面上の気相を強制更新して、17時間そのままに保ち溶媒を除去した。室温まで冷却させた後、塩酸を加えてCa3(PO4)2を溶解し、濾過・水洗・乾燥することによりトナー粒子を得た。さらに得られたトナー粒子を分級して、2〜10μmを選択し、トナー粒子を調製した。さらに、実施例1と同様にして、トナー粒子に疎水性シリカ微粉体を外添しトナー6を得た。
実施例7
実施例6において、共重合体Aを1.0部用いたかわりに共重合体Dを1.5部用いた以外は同様にして、トナー7を得た。
比較例1
実施例1において、共重合体Aのかわりに共重合体Fを用いた以外は同様にして、トナー8を得た。
比較例2
実施例3において、共重合体Cのかわりに共重合体Gを用いた以外は同様にして、トナー9を得た。
比較例3
実施例3において、共重合体Cを1.5部用いたかわりに共重合体Hを0.5部用いた以外は同様にして、トナー10を得た。
比較例4
実施例3において、共重合体Cのかわりに共重合体Iを用いた以外は同様にして、トナー11を得た。
以上のトナー1〜11に関し、前記した方法によって体積平均粒径及び円形度の測定を行い、さらにDSCの測定を行った。その結果を表3に示す。
表3に示されるように、比較例1〜4のトナー8〜11においては、平均粒径が若干大きいものとなった。特に比較例1及び4のものは、共重合体F及びIのモノマー溶液への溶解性が低いためと考察される粗紛が多く観察された。また、比較例3では、粗紛、微紛共に多く粒度が非常にブロードであった上に、凝集塊が多数確認された。
さらに、以上の実施例1〜7、比較例1〜4のトナー1〜11につき以下の通りに定着性試験及び画出し評価を行った。その結果を表4に示す。
・定着性試験方法
各トナーと、シリコーン樹脂で表面コートしたフェライトキャリア(体積平均粒径42μm)とを、トナー濃度が6質量%になるようにそれぞれ混合し、二成分現像剤を調製した。市販のフルカラーデジタル複写機(CLC700,キヤノン製)の改造機を使用し、転写紙(80g/m2)上に未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を形成した。市販のフルカラーレーザービームプリンター(LBP−2040,キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度が調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。常温常湿(23.5℃、60%RH)下、プロセススピードを180mm/sに設定し、120℃〜220℃の範囲で設定温度を5℃おきに変化させながら、各温度で上記トナー画像の定着を行った。低温オフセットが観察されなくなった温度以上の定着画像を50g/cm2の加重を欠けたシルボン紙で摺擦し、摺擦前後の濃度低下率が5%以下となる定着温度を定着性の低温側開始点とし、グロス最大値となる点を高温側終了点とした。高温オフセット、或いは、受像紙の巻きつきが発生した場合には、上記と同じ温度を高温側終了点とした。
定着画像のグロスの測定は、グロス測定機マイクロ−トリ−グロス(Gardner社製)を用い、測定角度60°にて行った。
・画出し試験方法
市販のフルカラーレーザービームプリンター(LBP−2040,キヤノン製)を用いて、必要に応じて逐次トナーを補給しながら、常温常湿(23.5℃、60%RH)下、単色モードで16枚/分(A4サイズ紙)のプリント速度で5000枚の画出しを行い、画像濃度と同時にトナー担持体上のトナー帯電量を測定した。また、5000枚の画出し後にトナー担持体を取り外し、トナーを拭き取った後に表面の汚染状態を顕微鏡により観察し、以下の基準で判定を行った。
A:特に汚染は見られない
B:若干の付着物もしくは融着物が見られる
C:著しい付着物もしくは融着物が見られる
表4から示す結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1〜7のものは(トナー1〜7)定着試験において、耐オフセット性及び低温定着性において良好な結果を示し、巻きつき等も見られず、十分な定着の温度領域を有することが分かった。また、画出し試験においても、初期から良好な帯電特性を有しており、5000枚プリントアウト後も維持できることが確認された。その結果、耐久を通して画像濃度も良好な値で安定していた。また、トナー担持体表面における汚染も見られなかった。
一方、比較例1のものは(トナー8)、定着試験においては良好な結果を示したものの、耐久後の帯電量及び画像濃度の低下が見られた。トナー担持体表面に、トナーが融着したものと見られる汚染が確認されたことから、これが原因となったものと推測される。また、比較例2のトナー9においては、定着試験においては良好な結果を示したものの、画出し試験において初期の帯電量が低く(帯電の立ち上がり特性が遅く)、初期の画像濃度が低いものとなった。逆に、比較例3のトナー10においては、耐久後における帯電量が低いものとなり、耐久後の画像濃度が低いものとなった。比較例4のトナー11においては、定着試験において、175℃で巻きつきが発生してしまった。また画出し試験において、帯電量、画像濃度共に低く、さらに、トナー担持体表面に、トナーが融着したものと見られる汚染と共に、0.1〜2.0μmの微紛が多量に付着していた。
<二成分現像剤の評価>
上記で得られたトナー1〜7と、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(平均粒径35μm)とを、それぞれトナー濃度が7.0質量%になるように混合し二成分現像剤を作製した。作製した二成分現像剤各450gを高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し初期混合による帯電をリセットした。それらをカラー複写機CLC−5100(キヤノン製)の現像器ユニットに仕込み、予備回転なしに画像面積比率25%のA4画像出力を行った。帯電立ち上がり特性の低いトナーでは初期(1〜10枚)の出力画像において白地部にかぶりが生じ、トナーの飛び散りによるライン画像の乱れが観察されるが、本発明のトナー1〜7を用いた場合にはかぶりもなく細線再現性に優れた画像が得られた。また、画像面積比率7%のA4画像を5千枚連続したのちに前記と同様のA4画像を観察したところ、画像濃度も初期と同様に安定しており、かぶりや細線の再現性は初期と同レベルを維持していた。
実施例8
下記の材料の混合物をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。
・スチレン−アクリル酸ブチル−ジビニルベンゼン共重合体 85.0部
(Tg58℃、Mn8000、Mw120000)
・トナー用樹脂A 15.0部
・磁性酸化鉄(平均粒径0.18μm) 100.0部
・ポリメチンワックス 5.0部
(Mw:1850、Mw/Mn:1.27、融点:78.6℃)
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。得られた微粉砕物を分級して、トナー粒子を得た。さらに、トナー1の製造例と同様にして、トナー粒子に疎水性シリカ微粉体を外添しトナー12を得た。
得られたトナー12は、体積平均粒径6.85μm、平均円形度0.962、さらに、DSCにおいてTg57.6℃、融解メインピーク74.0℃であった。
実施例9
トナー12の製造例において、トナー用樹脂Aを15部用いた代わりに、トナー用樹脂Cを30部用いた以外は同様にして、トナー13を得た。
得られたトナー13は、体積平均粒径6.88μm、平均円形度0.964、さらに、DSCにおいてTg57.4℃、融解メインピーク74.2℃であった。
・画出し試験方法
市販のフルカラーレーザービームプリンター(LBP−930,キヤノン製)を用いて、必要に応じて逐次トナーを補給しながら、常温常湿(23.5℃、60%RH)下、5000枚の画出しを行い、画像濃度と同時にトナー担持体上のトナー帯電量を測定した。
その結果、トナー12及び13は、共に初期から耐久後にわたって画像濃度は1.47〜1.50で安定しており、良好な画像が得られた。また、帯電量も共に初期から耐久後にかけて−25.0μC/g〜−30.0μC/gを維持しており、良好な安定性を示した。以上の結果より本発明のトナー12及び13は実用上優れていることが確認された。