JP4731957B2 - 熱電材料 - Google Patents
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この中で、熱電変換を用いた発電は、比較的低品質の熱においても直接電気に変換することが可能であるため、現状の未利用の廃熱を回収できる技術であり、最近のエネルギー問題や環境問題の深刻化に伴い、熱電変換に対する期待度はますます大きくなっている。
この熱電変換とは、異なる2種の金属やp型半導体とn型半導体等の熱電変換材料(熱電材料)に温度差を与えると、両端に熱起電力が発生するゼーベック効果を利用して、熱エネルギーを直接電力に変換する技術であり、モーターやタービン等の可動部がまったくなく、また、老廃物もないという優れた特徴を有している。
Z=α2/(κ・ρ)
α:ゼーベック係数
κ:熱伝導率
ρ:比抵抗
すなわち、ゼーベック係数が大きく、熱伝導率と比抵抗が小さいことが必要である。ここで、ゼーベック係数は物性値であるため、材料によって決まってしまうが、熱伝導率と比抵抗は、材料の微細組織や配向性によっても大きく変化させることが可能なため、熱伝導率や比抵抗を小さくするための結晶組織制御方法が検討されている。
例えば、特許第03493654号公報には、AxB2Oy(A:Na必須,Ca、Sr、Ba、Bi、Y、 B:Co必須、Mn、Fe、Cu、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有する熱電素子材料が記載されている。特に、NaCo2O4系熱電素子材料は、水酸化コバルト又は酸化コバルトの板状粒子とナトリウム金属塩とを混合し、これを前記水酸化コバルト又は酸化コバルト粒子が一方向に配向するように成形し、この成形体を焼成して緻密化させることによりC軸方向が配向した焼結体が作製される、という内容の熱電素子材料及びその製造方法が提案されている。
さらに、特許第03443640号公報には、V族元素とVI族元素からそれぞれ選択した一種以上の元素の組み合わせを主成分とする熱電材料若しくは金属と半金属系材料の組み合わせを主成分とする熱電材料又はこれらに酸化物、炭化物、窒化物若しくはこれらの混合物を添加した熱電材料の直流通電加圧による焼結に際し、100〜15000Aの可変電流範囲で通電するとともに、磁束密度0.1T≦H≦2.0T(T:テスラ)の範囲で磁場をかけながら焼結し、焼結体組織の電気的配向性を得ることを特徴とする熱電材料の製造方法が提案されている。
特開2004−119413号公報には、熱電微粒子を溶媒中に分散し、その分散液を磁場中で成形し、さらに、磁場中で焼結することにより、配向熱電材料を形成する方法が提案されている。
また、特許文献3により提案された方法によると、磁場中において焼結を行うことにより電気的配向性を得ているのみであり、磁場強度が小さいため、結晶そのものを配向することができず、かえって電気抵抗や熱伝導率等の物理的特性の異方性を減少又は消失させてしまっていた。
このため、結晶組織の配向度を大きくし、ある方向における熱伝導率や比抵抗を小さくするための結晶組織制御方法という目的では用いることができないのが現状である。
このような現状に鑑み、結晶組織を制御することにより、十分に小さい熱伝導率が得られる熱電材料が切望されていた。
まず、図4に基づいて従来における熱電材料の構成を説明する。図4は、多結晶体の熱電材料1における断面の一部を模式的に示したものである。
一般的に、従来における熱電材料1は、単一の化合物から構成されており、既述の通り、様々な結晶組織制御方法を用いて結晶組織を制御しても、その熱伝導率を小さくすることは困難であった。
このように、複数の化合物で熱電材料20が構成されることにより、熱が伝わりにくくなり、熱伝導率を小さくすることが可能になる。
前述した通り、熱電特性の性能評価に用いられる性能指数Zは、下記の式で表される。
Z=α2/(κ・ρ)
α:ゼーベック係数
κ:熱伝導率
ρ:比抵抗
すなわち、ゼーベック係数が大きく、熱伝導率と比抵抗が小さいことが必要であり、熱伝導率を小さくすることにより、材料の熱電特性を向上することが可能になる。
また、それぞれの化合物2、3、4を構成する元素が共通のものを含む場合、あるいは、それぞれの化合物2、3、4を構成する元素が同一である場合は、複数の化合物で構成される場合でも、不純物元素の拡散等を防止する工程が減少する、あるいは、削減することが可能になるため、熱電材料20の製造が容易になるという利点を有する。
また、酸化物材料は一般的に熱伝導率が小さい材料が多く、化合物2、3、4が、酸化物を含有することが好ましい。また、全ての化合物2、3、4を酸化物より構成することは、より好ましい。ここで、酸化物の層状化合物は、その層の積層方向に熱伝導率が小さいことが多く、この性質を利用することにより、複数の化合物から構成されることによる熱伝導率の減少と、酸化物の層状化合物による熱伝導率の減少の相乗効果により、さらに熱伝導率の小さい熱電材料を製造することが可能である。
ここで、熱伝導率は、材料の微細組織や配向性によっても大きく変化させることが可能なため、従来、熱伝導率を小さくするための結晶組織制御方法が検討されてきた。
例えば、多結晶体を構成する微粒子を一定の方向に配向させることにより、ある任意の方向で熱伝導率を小さくしようとする試みがなされてきた。
図5に、熱電材料を構成する微粒子(熱電微粒子5)が一定方向に配向した様子を概念図として示した。
例えば微粒子の磁化率の異方性を利用して配向熱電材料を製造することが可能である。すなわち、熱電材料を構成する微粒子が、任意の方向には磁化率:χが小さく、他の任意の方向においては磁化率が大きく、その両方向の磁化率の差:Δχが大きい場合、磁場を用いることにより、配向熱電材料を製造することが可能になる。
H2≫2kT/Δχ
k:ボルツマン定数
T:絶対温度
Δχ:磁化率の異方性
の関係を満たすような磁場強度の場合に、磁化率の大きい方向を磁場印加方向に配向させることが可能になる。しかしながら、熱電材料は一般的には強磁性体ではないので、その配向のためには、非常に大きい磁場強度を必要とし、十分な配向が行えないため、熱伝導率の減少は十分なものではなかった。
このように、熱電材料30が、複数の化合物6、7から構成されることにより、熱が伝わりにくくなり、熱伝導率を小さくすることが可能になる。
また、この場合も、それぞれの化合物6、7を構成する元素が異なる場合は、全く異なった化合物により熱電材料30が構成されるため、熱伝導率の減少が期待でき、それにより材料の熱電特性を向上することができる。
また、それぞれの化合物6、7を構成する元素が共通のものを含む場合、あるいは、それぞれの化合物6、7を構成する元素が同一である場合は、複数の化合物で構成される場合でも、不純物元素の拡散等を防止する工程が減少する、あるいは、削減することが可能になるため、熱電材料30の製造が容易になるという利点を有する。
例えば、特定の方向において比抵抗を小さくすることができれば、その他の物理定数が一緒であってもその方向における性能指数Zは大きくなり、その方向で優れた熱電特性が得られることになる。
また、熱伝導率の小さい方向を利用して、一端を高温とし、他端を低温とすることにより、両端での温度差を大きく取ることが可能になり、それによって取り出せる電力を向上することが可能になるわけである。その意味からも、前記記載の熱電材料を構成する微粒子として、複数の化合物として共に、酸化物の層状化合物を選択することは好ましい。
このように、熱電材料を構成する微粒子8自体が、複数の化合物9、10、11から構成される場合も、熱電材料が、熱が伝わりにくくなり、熱伝導率を小さくすることが可能になる。
また、この場合も、それぞれの化合物9、10、11を構成する元素が異なる場合は、全く異なった化合物により熱電微粒子8が構成されるため、熱伝導率の減少が期待でき、それにより材料の熱電特性を向上させることができる。
また、それぞれの化合物9、10、11を構成する元素が共通のものを含む場合、あるいは、それぞれの化合物9、10、11を構成する元素が同一である場合は、熱電微粒子8の製造が容易になるという利点を有する。
Na0.7CoO2粉末にNaCo2O4粉末を5wt%添加し、十分に混合した後、純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を電気炉にて、920°Cで12時間空気中にて焼結を行った(試料1)。
これに対し、Na0.7CoO2粉末のみを純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、同様に、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を同様に、電気炉にて、920°Cで12時間空気中にて焼結を行った(試料2)。
両試料の熱伝導率を評価した結果、複数の化合物により構成されている試料1の熱伝導率の方が小さかった。
CaMnO3粉末にCa2MnO4粉末を5wt%添加し、十分に混合した後、純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を電気炉にて、1300°Cで40時間空気中にて焼結を行った(試料3)。
これに対し、CaMnO3粉末のみを純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、同様に、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を同様に、電気炉にて、1300°Cで40時間空気中にて焼結を行った(試料4)。
両試料の熱伝導率を評価した結果、複数の化合物により構成されている試料3の熱伝導率の方が小さかった。
CaMnO3粉末にCa2MnO4粉末とCa3Mn2O7をそれぞれ2.5wt%ずつ添加し、十分に混合した後、純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を電気炉にて、1300°Cで40時間空気中にて焼結を行った(試料5)。
これに対し、CaMnO3粉末のみを純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、同様に、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を同様に、電気炉にて、1300°Cで40時間空気中にて焼結を行った(試料6)。
両試料の熱伝導率を評価した結果、複数の化合物により構成されている試料5の熱伝導率の方が小さかった。
Na0.7CoO2粉末にFe3O4粉末を5wt%添加し、十分に混合した後、純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を電気炉にて、920°Cで12時間空気中にて焼結を行った(試料7)。
これに対し、Na0.7CoO2粉末のみを純水に分散させた後、超伝導マグネットを用いて10T(テスラ)の磁場を印加しながら成形した結果、同様に、1軸方向に配向した成形体が形成できた。この成形体を同様に、電気炉にて、920°Cで12時間空気中にて焼結を行った(試料8)。
両試料の熱伝導率を評価した結果、複数の化合物により構成されている試料7の熱伝導率の方が小さかった。
5 熱電微粒子
8 熱電微粒子
Claims (4)
- 複数の化合物より構成される熱電材料において、
前記複数の化合物は、それぞれ同一の元素で構成され、かつ、すべての前記化合物が酸化物により構成されることを特徴とする熱電材料。 - 請求項1に記載の熱電材料において、
前記複数の化合物はそれぞれ複数の微粒子により構成され、前記複数の微粒子の成形体を緻密化したことを特徴とする熱電材料。 - 請求項2に記載の熱電材料において、
前記複数の微粒子はそれぞれ、一定の方向に配向していることを特徴とする熱電材料。 - 請求項1乃至3のうちの何れか1つに記載の熱電材料において、
熱エネルギーを電力に変換するのに用いられることを特徴とする熱電材料。
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