JP4728710B2 - 加工性に優れる熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れる熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は加工性に優れる熱延鋼板およびその製造方法に関するものであり、特に加工性が劣る440MPa級超のグレードであっても優れた加工性を発現させるC断面に均一なミクロ組織を圧延方向にも持続的に有している加工性に優れる熱延鋼板およびそのような均一なミクロ組織を有する加工性に優れる熱延鋼板の製造方法に関する。
自動車、家電、容器、産業機械、建材等の素材として広範囲に使用されている薄鋼板は、その製品形状を得るために様々な加工を受ける。この加工の際に発生する割れ、形状不良等の不具合は歩留まり落ちや手入れによる工程増等を引起し、生産性の低下を招くために好ましくない。従って、これら不具合の解消に対する需要家の要求は厳しく、改善のために素材面からの試みとして打抜き、曲げ、張出し、絞り、伸びフランジ等に代表される加工性の指標となる均一伸び、局部伸び、ランクフォード値等の向上がなされてきた。
一方、近年の地球温暖化問題を背景とした環境対策の必要性から自動車産業をはじめとする幅広い分野で温室効果ガス等削減のため更なる省エネルギー化が要求されている。例えば、自動車の燃費改善施策の一つとして車体軽量化を目的に自動車用鋼板の薄肉化すなわち高強度鋼板の適用が進められている。しかしながら、高強度鋼板の適用拡大に伴って生産現場では加工割れに加えて加工性の指標の1つである形状凍結性に係る「反り」、「ねじれ」等の形状不良が多発するようになりその対策に苦慮するようになった。これら「反り」、「ねじれ」等の形状不良対策としては、これまでの均一伸び、局部伸び、ランクフォード値等の加工性の指標の向上では十分ではなく、今までとは違ったまったく新しい対策が必要とされている。
形状不良を改善する技術としてスプリングバックや壁そりを低減するために板厚最表面における板面と平行な{100}面の反射X線強度比が3.0以上で、鋼板の板厚中心層における板面と平行な{111}面の反射X線強度比が4.5以上である冷延鋼板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、当該技術はスプリングバックや壁そりを低減できるもの「ねじれ」については何ら言及していない。また、製品出荷単位であるコイルの平均値としてスプリングバックや壁そりを低減できるものの、コイル長手、幅方向の面全体として評価すると均質な材料特性が得られているとは限らず、そのためある頻度で割れ、形状不良等の不具合が発生する危険性がある。
一方、熱間圧延において仕上げ圧延直前または仕上げ圧延中に被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、仕上圧延後0.1秒超〜1.0秒未満で一次冷却し、一次冷却後の鋼帯の幅方向および長手方向温度の最高値と最低値の差を60℃以内とすることでコイル内の幅方向及び長手方向の引張強さの変動が平均値の±8%以内とする技術がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、当該技術はコイル内の引張強さの変動を小さくするものの、材料の加工性に関わる「反り」、「ねじれ」等の形状不良そのものを改善する技術ではない。
また、ブレス成形性に優れ且つコイル内でのプレス成形性の変動が少ない冷延鋼板を製造するために、熱間圧延条件及びその後の冷却、巻取条件を最適化することが提案されていて、熱間圧延条件としては、仕上圧延機最終スタンドにおける材料温度が、粗バーの先端部から後端部に至るまで粗バー全体及び/又は幅方向エッジ部を誘導加熱装置で加熱することが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、これらの誘導加熱装置による加熱技術は、圧延方向や幅方向の温度分布を調整し、熱延鋼板の材質を均質化し、加工性を改善しようとするものであるが、この技術も板厚方向の温度分布を均一化する技術ではなく、材料の加工性に関わる「反り」、「ねじれ」等の形状不良そのものを改善する技術でもない。
特開2001−64750号公報 特開2001−164322号公報 特開2001−115213号公報
そこで、本発明は、加工性に優れる熱延鋼板およびその製造方法を提供する。すなわち、本発明は、加工性、特に形状凍結性に係る「反り」、「ねじれ」等の形状不良の大幅な改善効果を発現させるC断面に均一なミクロ組織を圧延方向にも持続的に有している熱延鋼板およびその熱延鋼板を安価に安定して製造できる方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、工業的規模で生産できる製造プロセスを念頭において加工性、特に形状凍結性に係る「反り」、「ねじれ」等の形状不良に係る加工性に優れる熱延鋼板を得るべく鋭意研究を重ねた。その結果、加工後の「反り」、「ねじれ」等の形状不良を解消するためには、圧延方向、幅方向および板厚方向の硬度、粒径、析出物の分布の不均一さを改善することが必要であり、そのためには、特に板厚方向の温度分布の調整が重要であることを見出して本発明を完成した。
本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1) 質量%にて、
C =0.001〜0.4%、
Si=0.001〜5%、
Mn=0.1〜5%、
P ≦0.1%、
S ≦0.03%、
Al=0.001〜3%、
N ≦0.01%、
を含有し残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成の鋼板であって、その断面の硬度分布が標準偏差σ≦5であり、鋼板の断面のミクロ組織単位径分布が標準偏差σ≦2.5μmであることを特徴とする加工性に優れる熱延鋼板。
) 鋼板が、さらに質量%にて、
Nb=0.01〜0.3%、
Ti=0.01〜0.3%、
Mo=0.05〜1%、
V =0.02〜1%、
Cr=0.01〜1%、
Cu=0.2〜1.2%、
の一種または二種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
) 鋼板が、析出物を含み且つ鋼板断面におけるその析出物径分布が標準偏差σ≦2nmであることを特徴とする上記()に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
) 鋼板が、さらに、質量%にて、
Ca=0.0005〜0.005%、
REM=0.0005〜0.02%、
の一種または二種を含有することを特徴とする上記(1)ないし)のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
) 鋼板が、さらに、質量%にて、
B =0.0002〜0.002%
を含有することを特徴とする上記(1)ないし()のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
) 鋼板が、さらに質量%にて、
Ni=0.1〜0.6%、
を含有することを特徴とする上記(1)ないし()のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
(7) 上記(1)、(2)、(4)、(5)、(6)のいずれか1項に記載の成分を有する熱延鋼板を得るための熱間圧延する際に、鋼板断面における仕上げ温度FTが標準偏差σ≦7℃であり、FT〜FT+20℃での圧下率が25%以上であることを特徴とする加工性に優れる熱延鋼板の製造方法。
本発明は、加工性、特に、加工性の1つの指標となる形状凍結性に優れる熱延鋼板およびその製造方法が提供でき、これらの鋼板を用いることにより厳しい加工精度が要求される部品でも容易に形状不良なしで成形できるだけでなく、安定した均質な材料特性を得ることができるという顕著な効果を奏するため、本発明は、工業的価値が高い発明であると言える。
以下に、本発明に至った基礎的研究結果について説明する。
本発明者らは、需要家での加工の際に発生する割れ、形状不良等の不具合、特に「反り」、「ねじれ」等の形状不良を解消するべく鋭意研究を重ねた結果、これら不具合の発生原因が介在物等の不純物であるものを除けば当該断面におけるミクロ組織、結晶粒径、析出物径等の統計的な不均一さに起因していることを突き止めた。さらに、コイル長手、幅方向の不均一さが改善されると強度、伸びといった一般的な材質変動は減少するが、面外の曲げ曲げ戻し加工により生ずる内部応力差により発生する「ねじれ」を解消するためには板厚方向を含めたコイルのC断面およびL断面での硬度、粒径、析出物分布の不均一を改善することが必要であると考えるに至った。即ち、特許文献1で開示があるように単に仕上げ圧延直前または仕上げ圧延中に被圧延材を加熱して最高値と最低値の差を小さくしたり、或は、被圧延材(粗バー)の幅方向及び圧延方向の温度を調整しただけでは、「反り」、「ねじれ」等の形状不良を解消することはできない。つまり、従来技術では幅方向及び圧延方向の温度を均一化するように誘導加熱装置で加熱している。しかし、このような加熱では被圧延材の表層部と中央部とでは温度差が生じていて、板厚方向の温度分布が均一化していない。このため、仕上圧延された鋼板の表層部と中央部とでは熱延鋼板の材質特性が異なり、熱延鋼板の加工によって「反り」、「ねじれ」等の形状不良が生じることを避けることができないものと考えられる。「反り」、「ねじれ」等の形状不良を解消するためには、特に板厚方向の温度制御が重要であり、板厚方向の温度制御により板厚方向の硬度、粒径、析出物分布の不均一さが改善された加工性に優れる薄鋼板が得られることを知見したのである。
本発明者が実験により知見した熱延鋼板(薄鋼板の各製造工程での温度等の製造条件とコイルのC断面およびL断面での硬度、ミクロ組織、結晶粒径、析出物径等の統計的分布と「反り」、「ねじれ」等の形状不良の関係について説明する。
スラブ片を1219℃に再加熱し、仕上げ圧延温度の狙い温度を850℃として粗圧延後、得られた粗バー(板厚30mm)を板厚3.2mmまで仕上げ圧延を行いランナウトテーブルにて冷却した後に100℃以下の温度で巻き取った。その際、粗圧延機と仕上げ圧延機の間に設置されたトランスバース型誘導加熱装置を用いて、粗バーの圧延方向、板幅方向、板厚方向に温度制御した水準と誘導加熱装置を用いない水準を設けて比較した。トランスバース型誘導加熱装置によって、粗バーの圧延方向、板幅方向の加熱は従来と同様に行なうことができ、また、板厚方向の温度のバラツキを小さくするため周波数の異なる加熱装置を複数配置して必要な厚み方向加熱パターンが得られるように各々の加熱量の配分を変更しして板厚方向の加熱温度パターンを操作することでその温度分布の均一化を行なった。図1および図2は、ある長手位置における仕上げ圧延機出側での温度のC断面温度分布例を示す図である。即ち、図1および図2は誘導加熱を行なわなかった場合と、誘導加熱により温度制御を行なった場合の夫々について、(a)は仕上げ圧延機出側での温度のC断面温度分布例を示し、(b)はA−A’位置での板幅方向の温度分布を示し、(c)はB−B’位置での板厚方向の温度分布位置での板厚方向の温度分布を示す図である。誘導加熱を用いなかった場合は、図1(b)に示すように、板幅方向の温度分布は両エッジ部の温度が低くなり、そして、図1(c)に示すように、板厚方向の温度分布は中央部の温度が高い温度分布状態を示していた。これに対して、誘導加熱を用いて温度制御した場合には、図2(b)および(c)に示すように、圧延方向や板幅方向のみならず、板厚方向の温度のバラツキが小さくなり、温度分布が均一化していることがわかる。
このようにして得られた板厚3.2mmでコイル長600mの熱延コイルの長手方向のコイル圧延フロントから100mごとに等間隔で7箇所切り板サンプルを採取し、C断面硬度測定、ミクロ組織観察等および「ねじれ」評価試験に供した。
「ねじれ」評価試験では、図3に示すプレス形状品にて評価を行った。上記にて採取した切り板サンプルより、プレス成形品の長手方向が板幅方向と平行になるようにブランクを切り出し、プレス試験に供した後に「ねじれ」量を評価するために非接触型三次元形状測定器により成形パネル外面を測定し、金型CADデータとの寸法誤差を評価した。
また、プレス成形品左右のエッジより5mm内側の断面座標値から各断面のウエブ面の角度を算出し、その角度差をθwとして「ねじれ」量の評価値と定義した。
この角度差θwが小さいほど「ねじれ」が少なくプレス品形状が良好であることを意味する。プレス品の組み付け精度等を考慮すると、組み付け後の形状不良を発生させないためにはθwが0.5°以下が必要であると考えられる。
図4に硬度(Hv)の標準偏差σと角度差θwの関係を示す。誘導加熱装置等を適用して鋼板の板厚方向をも含めて温度のバラツキを小さくすることで硬度(Hv)の標準偏差σが5以下となり、「ねじれ」量の評価値である角度差θwはプレス品形状が良好な0.5以下となることが判明した。
そのメカニズムは明らかではないが、板厚方向に硬度の不均一が存在すると、曲げR部もしくは曲げ曲げ戻し加工を受ける縦壁部において板厚方向の各幅、長手位置で塑性変形の不均一が生じ、その結果内部応力にも不均一が発生し、板幅方向に長い加工品においては「ねじれ」が生じるものと推定される。従ってこの「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するためには、その断面の硬度分布を標準偏差(○印の線)σ≦5にすることが必要なのである。これよりも大きくなると、板厚方向の各幅、長手位置で塑性変形の不均一が大きくなって「ねじれ」の許容限度を超えるために、急激に鋼板加工後の形状凍結性が劣化し、形状不良発生率が大きく悪化するためである。また、硬度分布の標準偏差σは小さいほうが好ましいが(理論的には0であることが好ましい)、現実の工業的操業では標準偏差σの下限を1程度とするのが現実的である。
硬度測定は上記コイル長手方向の各箇所サンプルから切り出し、幅方向C断面の幅のDSエッジ、1/4W、1/2W、3/4WおよびWSエッジの各位置より切出した試料をC断面に研磨し、ナイタール試薬を用いてエッチングし、表層、板厚の1/8t、1/4t、3/8t、1/2t、5/8t、3/4t、うら表層における硬度測定をJIS Z 2244に記載の方法にて試験荷重を1〜5gfとしてビッカース硬度をそれぞれ10点以上測定した。なお、第二相として二種類以上のミクロ組織が存在する場合は各々の測定を行う。
さらに、鋼板の断面のミクロ組織単位径分布も前記「ねじれ」発生に影響を及ぼすと考えられるため、鋼板の断面のミクロ組織単位径分布を調査したところ、図3の(●印の線)で示したように、標準偏差σ≦2.5μmでは、θwがさらに小さくなりプレス品形状性がさらに向上する効果が認められた。
これはミクロ組織単位径分布が板厚方向にバラツキが小さくなることによってさらに内部応力が均一となるためであり、従ってミクロ組織単位分布の標準偏差σ≦2.5μmが好ましい範囲と考えられる。
ミクロ組織およびミクロ組織単位径分布の測定は、硬度を測定した同一サンプルより行う。ここでミクロ組織単位径分布(以下単に組織単位径分布と言うことがある)とは、ミクロ組織がフェライト単相もしくはフェライトと硬質第二相を含むミクロ組織の場合はフェライトと第二相の結晶粒径分布を指し、連続冷却変態組織(Zw)のように結晶粒界が光学顕微鏡観察で明確に識別できないような場合はパケット径分布を指す。前者のミクロ組織がフェライト単相もしくはフェライトと硬質第二相を含むミクロ組織の場合は上記のナイタール試薬を用いてエッチングし、そのまま光学顕微鏡を用い200〜500倍の倍率で観察されたおもて表層、板厚の1/8t、1/4t、3/8t、1/2t、5/8t、3/4t、うら表層における視野の写真にて行った。すなわち、ミクロ組織単位径(以下単に組織単位径と言うことがある)は、この場合、フェライト結晶粒径および/または第二相粒径である。従って、結晶粒径の測定はJIS G 0552記載の切断法を用いた。
一方、後者の連続冷却変態組織(Zw)のようにナイタール試薬を用いたエッチングでの光学顕微鏡観察では粒径が判別しにくい組織においては、ミクロ組織単位径分布とはパケット径分布のことである。
パケットとは、γ→α変態を経る際にオーステナイト粒が多くの方位が異なる組織単位に分割された組織単位である。ナイタール試薬を用いたエッチングでの光学顕微鏡観察ではパケット境界が判別しにくいのでEBSP−OIMを用いてパケット径分布を測定する。
EBSP−OIM(Electron Back Scatter Diffraction Pattern−Orientation Image Microscopy)法は走査型電子顕微鏡内で高傾斜した試料に電子線を照射し、後方散乱して形成された菊池パターンを高感度カメラで撮影し、コンピュータ画像処理する事により照射点の結晶方位を短時間で測定する装置およびソフトウエアで構成されている。EBSP法ではバルク試料表面の微細構造並びに結晶方位の定量的解析ができ、分析エリアはSEMで観察できる領域で、SEMの分解能にもよるが、最小20nmの分解能で分析できる。
解析は数時間かけて、分析したい領域を等間隔のグリッド状に数万点マッピングして行う。多結晶材料では試料内の結晶方位分布や結晶粒の大きさを見ることができる。本発明おいては、その各パケットの方位差を15°としてマッピングした画像よりパケット径分布を求める。また、粒内に存在している析出物径分布を測定するために三次元アトムプローブ法を用いた。測定条件は試料位置温度約70K、プローブ全電圧10〜15kV、パルス比25%である。各試料の粒界、粒内それぞれ三回測定してその平均値を代表値とした。測定値よりバックグラウンドノイズ等を除去する。
また、Nb、Ti、Mo、V、Cr、Cu等の成分を含有し、ミクロ組織に析出物が含まれる場合には、析出物分布が板厚方向に均一であることが内部応力を均一にするために重要であると推定され、その析出物径分布が標準偏差σ≦2nmであることが好ましい。これは、析出物が転位移動の障害となり、フランリード機構等の作用により転位増殖等による加工硬化が起こるが、析出物径分布が板厚方向に均一でないと加工硬化の不均一が板厚方向に生じ「ねじれ」の原因となるためと推測される。析出物径分布の標準偏差σは小さいほうが好ましいが(理論的には0であることが好ましい)、現実の工業的操業では標準偏差σの下限を1程度とするのが現実的である。この粒内に存在している析出物径分布を測定するために三次元アトムプローブ法を用いた。測定条件は試料位置温度約70K、プローブ全電圧10〜15kV、パルス比25%である。各試料の粒界、粒内それぞれ三回測定してその平均値を代表値とした。測定値よりバックグラウンドノイズ等を除去する。
以上のように、板厚方向、板幅方向および長手方向の硬度分布の標準偏差を小さくし、好ましくはミクロ組織単位径分布や析出物径分布が板厚方向に均一になれば、「ねじれ」に代表される形状不良が抑制できる鋼板が得られるが、熱間圧延に際して粗圧延機と仕上げ圧延機の間に設置された誘導加熱装置等を用いて板厚方向を含め温度のバラツキを小さくすることが好ましい態様である。
なお、上記のように本発明において「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するためには、鋼板の硬度、好ましくはミクロ組織単位径分布や析出物分布が板厚方向に均一にすれば良く、必ずしもミクロ組織構成を限定する必要はない。通常の鋼が呈するフェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト、残留オーステナイト組織等において本発明範囲の断面の硬度分布が得られていれば、本発明の効果は得られる。ただし、特定のミクロ組織で構成されると、例えばフェライト相と硬質第二相を主にマルテンサイトとする複合組織等においては、張り出し性等を高めることができるし、例えば連続冷却変態組織等の均一なミクロ組織等においては、伸びフランジ性等を高めることができる。また、或る特定のサイズの析出物を含有させることにより、強度を向上させることもできる。
ここで連続冷却変態組織(Zw)とは日本鉄鋼協会基礎研究会ベイナイト調査研究部会/編;低炭素鋼のベイナイト組織と変態挙動に関する最近の研究−ベイナイト調査研究部会最終報告書−(1994年 日本鉄鋼協会)に記載されているように拡散的機構により生成するポリゴナルフェライトやパーライトを含むミクロ組織と無拡散でせん断的機構により生成するマルテンサイトの中間段階にある変態組織と定義されるミクロ組織である。すなわち、連続冷却変態組織(Zw)とは光学顕微鏡観察組織として上記参考文献125〜127項にあるようにそのミクロ組織は主にBainitic ferrite(α°B)、Granular bainitic ferrite(αB)、Quasi−polygonal ferrite(αq)から構成され、さらに少量の残留オーステナイト(γr)、Martensite−austenite(MA)を含むミクロ組織であると定義されている。
続いて、本発明の化学成分の限定理由について説明する。
C:強化元素として有効であり、0.001%以上必要であるが、加工性、溶接性から0.4%未満が好ましい。
Si、Mn:強化元素であり、Siは0.001%以上、Mnは0.1%以上必要である。但し、溶接性からはそれぞれ5%以下、5%以下がよい。但し、成形性の点からはSiが好ましく2.5%以下、焼き入れ性、化成処理性の点からはMnが好ましく3%以下が好ましい。
Pは、不純物であり低いほど望ましく、0.1%超含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすので、0.1%以下とする。ただし、穴拡げ性や溶接性を考慮すると0.02%以下が望ましい。
Sは、熱間圧延時の割れを引き起こすばかりでなく、多すぎると穴拡げ性を劣化させるA系介在物を生成するので極力低減させるべきであるが、0.03%以下ならば許容できる範囲である。ただし、ある程度の穴拡げ性を必要とする場合は0.01%以下が、さらに高い穴拡げが要求される場合は、0.003%以下が望ましい。
Alは、溶鋼脱酸のために0.001%以上添加。加工性への悪影響が少ない強化元素なので3%まで添加可。
Nは、溶接性から0.01%以下。但し、時効から0.006%以下が望ましい。
Nb、Ti、Mo、V、Cr,Cu:強度を付与するために一種または二種以上を添加してもよい。但し、それぞれ0.01%、0.01%、0.05%、0.02%、0.01%、0.2%未満では効果が不十分であり、0.3%、0.3%、1%、1%、1%、1.2%を超えて添加すると効果が飽和する。
CaおよびREMは、破壊の起点となり、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、0.0005%未満添加してもその効果がなく、Caならば0.005%超、REMならば0.02%超添加してもその効果が飽和するのでCa=0.0005〜0.005%、REM=0.0005〜0.02%添加することが望ましい。
Bは、焼き入れ性を向上させる効果があるので必要に応じ添加する。ただし、0.0002%未満ではその効果を得るために不十分であり、0.002%超添加すると効果が飽和する。よって、Bの添加は、0.0002%以上、0.002%以下とする。
Ni:強度を付与するためにNiの固溶強化元素として添加してもよい。ただし、それぞれ、0.1%未満ではその効果を得ることができない。また、0.6%を超え添加してもその効果は飽和する。
次に、本発明の製造方法の限定理由について、以下に詳細に述べる。
本発明は、鋳造後、熱間圧延後冷却ままもしくは熱間圧延後に熱延鋼板を冷間圧延さらに/または焼鈍すること、或るいは得られた熱延鋼板または冷延もしくは焼鈍後の鋼板に別途表面処理を施すことによっても得られる。
本発明において熱間圧延に先行する製造方法は特に限定するものではない。すなわち、高炉、転炉や電炉等による溶製に引き続き、各種の2次精練で目的の成分含有量になるように成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造、インゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造すればよい。原料にはスクラップを使用しても構わない。連続鋳造よって得たスラブの場合には高温鋳片のまま熱間圧延機に直送してもよいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱間圧延してもよい。
スラブ再加熱温度については特に制限はないが、1400℃以上であると、スケールオフ量が多量になり歩留まりが低下するので、再加熱温度は1400℃未満が望ましい。また、1000℃未満の加熱ではスケジュール上操業効率を著しく損なうため、スラブ再加熱温度は1000℃以上が望ましい。さらには、1100℃未満の加熱ではスケールオフ量が少なくスラブ表層の介在物をスケールと共に後のデスケーリングによって除去できなくなる可能性があるため、スラブ再加熱温度は1100℃以上が望ましい。スラブ加熱時間については特に定めないが、Nb等の析出強化元素を添加している場合その炭窒化物の溶解を十分に進行させるためには当該温度に達してから30分以上保持することが望ましい。ただし、鋳造後の鋳片を高温のまま直送して圧延する場合にこの限りではない。
本発明において、その「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するという目的のために鋼板のミクロ組織構成を特に限定する必要はないので、スラブ再加熱に続く粗圧延および仕上げ圧延の条件は特に限定するものではない。ただし、仕上げ圧延終了温度をAr3変態点温度以上とすることが望ましい。仕上げ圧延終了温度はAr3変態点温度未満であると得られた製品コイルのミクロ組織に加工組織が残留し、伸びが劣化する恐れがある。
ここでAr3変態点温度とは、例えば以下の計算式により鋼成分との関係で簡易的に示される。すなわち
Ar3=910−310×%C+25×%Si−80×%Mn−15×%Cr−20×%Cu−80×%Mo−55×%Ni
さらに、より優れた形状凍結性を得るためには組織単位分布が標準偏差σ≦2.5μmであることが必要であるが、そのためにγ→α変態時のα核生成を均一化する必要があり、核生成サイトとしての特定の温度域で均質なひずみの導入が望ましいので、その仕上げ圧延中において仕上げ圧延終了温度FT以上FT+20℃以下における合計圧下率25%以上の圧延を行うことが好ましい。
仕上げ圧延終了温度FTの上限は特に設けないが、Ar3変態点温度+200℃超を得るためには加熱炉温度または粗圧延終了から仕上げ圧延開始までの間または/および仕上げ圧延中での粗バーまたは圧延材の加熱は設備的に負荷が大きいので、その上限はAr3変態点温度+200℃以下が望ましい。また、粗圧延と仕上げ圧延の間にシートバーを接合し、連続的に仕上げ圧延をしてもよい。その際に粗バーを一旦コイル状に巻き、必要に応じて保温機能を有するカバーに格納し、再度巻き戻してから接合を行ってもよい。
なお、本発明においては特に仕上げ圧延終了温度を圧延方向、板幅方向、板厚方向において温度バラツキを小さく制御することが重要であり、温度バラツキとして標準偏差≦7℃にすることが必要である。そのためには、粗圧延機と仕上げ圧延機の間、もしくは仕上げ圧延機のスタンド間で圧延方向、板幅方向、板厚方向に温度制御できる加熱装置を設置することが好ましい。加熱装置の方式としては、ガス加熱、通電加熱、誘導加熱等の様々な加熱手段が考えられるが、圧延方向、板幅方向、板厚方向に温度のバラツキを小さく制御可能であれば手段は限定する必要はない。但し、工業的に温度の制御応答性が良い誘導加熱方式が好ましいが、誘導加熱方式でも板幅方向でシフト可能な複数のトランスバース型誘導加熱を設置すれば、板幅に応じて板幅方向の温度分布を任意にコントロールできるのでより好ましい。さらにトランスバース型誘導加熱と共に板幅全体加熱に優れるソレノイド型誘導加熱との組み合わせが最も好ましい。
前記加熱装置を用いて温度制御する場合には、加熱装置による加熱量の制御が必要であるが、粗バー内部の温度は実測できないため、予め加熱炉に装入スラブ温度、スラブ在炉時間、加熱炉雰囲気温度、加熱炉抽出温度、さらにテーブルローラーの搬送時間等の実績データを用いて、粗バーが加熱装置に到着時の圧延方向、板幅方向、板厚方向の温度分布を推定して加熱装置による加熱量を制御すれば良い。
例えば、以下のように制御する。
誘導加熱装置(トランスバース型誘導加熱装置)の特性として、コイルに交流電流を通じると、その内側に鋼板磁場を生ずる。そして、この中に置かれている導電体には、電磁誘導作用により磁束と直角の円周方向にコイル電流と反対の向きの渦電流が起こり、そのジュール熱によって導電体は加熱される。渦電流はコイル内側の表面に最も強く発生し、内側に向かって指数関数的に低減する(この現象を表皮効果という)。したがって、周波数が小さいほど電流浸透深さが大きくなり、厚み方向に均一な加熱パターンが得られ、逆に、周波数が大きいほど電流浸透深さが小さくなり、厚み方向に表層をピークとした過加熱の小さな加熱パターンが得られることが知られている。よって、トランスバース型誘導加熱装置によって、粗バーの圧延方向、板幅方向の加熱は従来と同様に行なうことができ、また、板厚方向の加熱は、トランスバース型誘導加熱装置の周波数変更によって浸透深さを可変化して板厚方向の加熱温度パターンを操作することでその温度分布の均一化を行なうことができる。なお、この場合、周波数変更可変型の誘導加熱装置を用いることが好ましいが、コンデンサーの調整によって周波数変更を行ってもよい。また、周波数の異なるインダクターを複数配置して必要な厚み方向加熱パターンが得られるように夫々の加熱量の配分を変更してもよい。または、被加熱材とのエアーギャップを変更すると周波数が変動するためエアーギャップを変更して所望の周波数および加熱パターンを得てもよい。
本発明において、その「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するという目的のために鋼板のミクロ組織構成を特に限定する必要はないので、仕上げ圧延を終了した後、巻取温度にて巻取るまでの冷却工程については特に定めないが、所望のミクロ組織構成(従来知られているような例えばフェライト+マルテンサイト)を得るために巻き取り温度制御や冷却熱履歴制御を行なう。但し、仕上げ圧延温度の温度バラツキを小さくすることにより達成できる鋼板の断面の硬さ分布や組織単位分布の均一性を維持するために巻き取り温度を±20℃、冷却履歴変更温度を±20℃とする必要がある。
冷却速度の上限は特に限定しないが、熱ひずみによる板そりが懸念されることから、300℃/s以下とすることが望ましい。さらに、あまりにもこの冷却速度が早いと冷却終了温度を制御できず、オーバーシュートして所定の巻取温度以下まで過冷却されてしまう可能性があるので、ここでの冷却速度は150℃/s以下が望ましい。また、冷却速度の下限は特に定めないが、空冷であっても構わない。
ただし、鋼板の強度を析出強化により担保するために析出強化元素を添加し、さらに「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するためには、その析出物径分布が標準偏差σ≦2nmであることが必要であるので巻取温度を525〜575℃とする。
熱間圧延工程終了後は必要に応じて酸洗し、その後インラインまたはオフラインで圧下率10%以下のスキンパスまたは圧下率40%程度までの冷間圧延を施しても構わない。
なお、鋼板形状の矯正や可動転位導入による延性の向上のためには0.1%以上2%以下のスキンパス圧延を施すことが望ましい。
次に、冷延鋼板として最終製品にする場合であるが、「ねじれ」に代表される形状不良の抑制効果を得るためには、熱間圧延工程での仕上げ温度の標準偏差がσ≦7℃であることが必要である。これは、熱延鋼板での断面の硬度分布の標準偏差が小さいことで冷延後の硬度分布の標準偏差も改善され、結果として「ねじれ」に代表される形状不良の抑制が可能となるためである。また、さらに良好な形状凍結性を得るためには熱間圧延工程において仕上げ圧延温度〜仕上げ圧延温度+20℃の温度域で合計圧下率25%以上の圧延を行うことで、冷延後でも断面の組織単位径分布の標準偏差が改善されるためである。
また、仕上げ圧延終了温度(FT)はAr3変態点温度未満で終了しても差し支えないが、その場合は、圧延前もしくは圧延中に析出したフェライトに強い加工組織が残留するため、続く巻取処理または加熱処理により回復、再結晶させることが望ましい。
酸洗後に冷間圧延を行う場合の条件は「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するという目的のために特に限定する必要はない。ただし、続けて焼鈍を行う場合には回復再結晶を促進させるためにその合計圧下率は40%以上が望ましい。
冷間圧延された鋼板の熱処理は、連続焼鈍工程を前提としている。その焼鈍条件は「ねじれ」に代表される形状不良を抑制するという目的のために鋼板のミクロ組織構成を特に限定する必要はないので、特に限定する必要はなく回復温度以上で構わないが、回復温度未満の場合には加工組織が残留し成形性を著しく劣化させるので、熱処理の下限温度は回復温度以上が望ましい。さらに熱間圧延後、もしく冷間圧延後に得られた鋼板を焼鈍する場合に、前記熱間圧延での形状不良に優れた特性を損なわないようにするために、均熱帯の温度の標準偏差を10℃以下にすることが好ましい。
また、この温度域での保持時間は、5秒未満では、伸び等に有害なセメンタイトが完全に再固溶するのに不十分であり、一方、150秒超の熱処理を行ってもその効果が飽和するばかりでなく生産性を低下させるので、保持時間は5〜150秒間とする。
その後の冷却条件については特に限定しないが、ミクロ組織を制御するために必要に応じて以下の冷却または任意温度での保持および冷却を行ってもよい。冷却工程の終了温度の下限については特に限定しないが、水冷もしくはミストで冷却する場合、コイルが長時間水濡れの状態にあると錆による外観不良が懸念されるため、50℃以上が望ましい。
熱延鋼板、冷延鋼板、焼鈍工程終了後の鋼板に表面処理を施しても良く、めっき種、樹脂皮膜種類、めっき方法、被覆方法を限定する必要はない。溶融亜鉛めっきの場合には、必要に応じて合金化処理してもよい。さらにその後、必要に応じてスキンパス圧延を実施する。
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。
表1に示す化学成分を有する鋼種の鋼を溶製してスラブ片に鋳造した。鋳造スラブ片を粗圧延して薄鋼板に熱間圧延した。熱間圧延では、粗圧延機と仕上圧延機との間にトランスバース型誘導加熱装置を配置して粗バーを加熱して仕上圧延を実施した。なお、粗バーの両エッジ部を加熱するためにエッジヒータを用いた。粗バーの加熱は、仕上圧延機出側の鋼板の幅方向、圧延方向、板厚方向の温度分布が均一化するように行った。トランスバース型誘導加熱装置の加熱条件は、周波数の異なる加熱装置を複数配置して可能な範囲で必要な厚み方向加熱パターンが得られるように各々の加熱配分を変更した。
仕上圧延した後、ランアウトテ−ブル(ROT)で冷却して巻き取ってコイルとした。コイルとした薄鋼板の一部に冷間圧延または冷間圧延と焼鈍を施した。
仕上圧延後の冷却では冷却パターン(AおよびB)を選択して冷却を行なった。Aパターンの冷却(CR1)は、水冷を行い、Bパターンの冷却(CR2)は、冷却履歴変更温度まで空冷を行い、その後水冷を行なった。Aパターンの冷却では、ミクロ組織が連続冷却変態組織(Zw)となり、Bパターンの冷却では、ミクロ組織がフェライト(F)とマルテンサイト(M)組織となった。
また、比較例として、誘導加熱を行わないで薄鋼板の製造を実施した。
熱間圧延の条件を表2に示す。得られた薄鋼板について、断面の硬度分布の標準偏差σ、組織単位径分布の標準偏差σおよび析出物径分布の標準偏差σを測定した。その結果を表3に、そして、薄鋼板の特性及び、得られた薄鋼板にプレス加工を施して、「反り」、「ねじれ」等の形状不良について調査した。その結果を表4に記載した。
表2から表4に示すように、均熱加熱装置により粗バーの加熱制御を行なって、仕上圧延機出側で圧延方向、板幅方向および板厚方向の温度差を均一化するようにして得られた薄鋼板の硬度分布の標準偏差σ(硬度偏差σ)が5以下の要件を満足する発明例(鋼番A1、B、C1D、E1〜E4)は、いずれも「ねじれ」、「反り」評価が良好(θw≦0.5:◎または○)であった。また、加熱制御をし、さらに仕上圧延温度偏差を7度以下、仕上圧延圧下率を25%以下以上にと圧延条件を制御して、組織単位径分布の標準偏差σ(組織単位径偏差σ)を2.5μm以下とした発明例(鋼番A1、B、C1、D)は、特に優れた「ねじれ」、「反り」評価(θw≦0.4:◎)となった。また、仕上圧延温度偏差を7度以下、仕上圧延後の巻取温度を制御して析出物径の制御を行なって析出物径分布の標準偏差σ(析出物径偏差σ)を2nm以下とした発明例(鋼番E1、E2)では、優れた「ねじれ」、「反り」評価(θw≦0.4:◎)となった。しかし、析出物径の制御を行なわなかった発明例(鋼番E3、E4)に於いても、良好な「ねじれ」、「反り」評価(0.4<θw≦0.5:○)となった。
これに対して、加熱制御を行なわなかった比較例では、硬度分布の標準偏差σ(硬度偏差σ)が5超となっていて「ねじれ」、「反り」評価(0.5<θw:×)が劣っていた。
さらに、記載は省略するが冷延鋼板や、熱延鋼板や冷延鋼板に亜鉛めっきした薄鋼板についても同様の結果が得られ、本発明の効果が検証された。
Figure 0004728710
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Figure 0004728710
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粗バー加熱装置を用いない場合の仕上圧延機出側の鋼板C断面での温度分布を示す図で、(a)はC断面での温度分布、(b)は板幅方向の温度分布、(c)は板厚方向の温度分布を示す図である。 粗バー均熱加熱装置を用いた場合の仕上圧延機出側の鋼板C断面での温度分布を示す図で、(a)はC断面での温度分布、(b)は板幅方向の温度分布、(c)は板厚方向の温度分布を示す図である。 「ねじれ」を評価するプレス品の寸法を示す図である。 「ねじれ」の評価値であるθwと硬度の標準偏差との関係を示す図である。

Claims (7)

  1. 質量%にて、
    C =0.001〜0.4%、
    Si=0.001〜5%、
    Mn=0.1〜5%、
    P ≦0.1%、
    S ≦0.03%、
    Al=0.001〜3%、
    N ≦0.01%、
    を含有し残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成の鋼板であって、その断面の硬度分布が標準偏差σ≦5であり、鋼板の断面のミクロ組織単位径分布が標準偏差σ≦2.5μmであることを特徴とする加工性に優れる熱延鋼板。
  2. 鋼板が、さらに質量%にて、
    Nb=0.01〜0.3%、
    Ti=0.01〜0.3%、
    Mo=0.05〜1%、
    V =0.02〜1%、
    Cr=0.01〜1%、
    Cu=0.2〜1.2%、
    の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
  3. 鋼板が、析出物を含み且つ鋼板断面におけるその析出物径分布が標準偏差σ≦2nmであることを特徴とする請求項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
  4. 鋼板が、さらに、質量%にて、
    Ca=0.0005〜0.005%、
    REM=0.0005〜0.02%、
    の一種または二種を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
  5. 鋼板が、さらに、質量%にて、
    B =0.0002〜0.002%
    を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
  6. 鋼板が、さらに質量%にて、
    Ni=0.1〜0.6%、
    含有することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の加工性に優れる熱延鋼板。
  7. 請求項1、2、4、5、6のいずれか1項に記載の成分を有する熱延鋼板を得るための熱間圧延する際に、鋼板断面における仕上げ温度FTが標準偏差σ≦7℃であり、FT〜FT+20℃での圧下率が25%以上であることを特徴とする加工性に優れる熱延鋼板の製造方法。
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