JP7056631B2 - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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[1]鋼組成は、質量%で、C:0.07~0.20%、Si:0.1~2.0%、Mn:2.0~3.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.005~0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、面積率で、フェライト:60%以下、焼戻しマルテンサイト:40%以上を有し、かつ焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[2]前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:1~10%を有することを特徴とする[1]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]さらに、鋼組成として、質量%で、Cr:0.005~1.0%、Mo:0.005~0.5%、V:0.005~0.5%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[4]さらに、鋼組成として、質量%で、Ti:0.005~0.5%、Nb:0.005~0.5%、B:0.0003~0.005%、Ni:0.005~1.0%、Cu:0.005~1.0%以下から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[5]さらに、鋼組成として、質量%で、Ca:0.001~0.005%、REM:0.001~0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[6][1]、[3]~[5]のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、
20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、
平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、
溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[7]前記溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、前記冷却工程前に460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有する[6]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
ない限り、「質量%」を意味する。
C:0.07~0.20%
Cはフェライト以外の相を生成しやすくし、また、NbやTiなどと合金化合物を形成するため、強度向上に必要な元素である。Cが0.07%未満では、製造条件の最適化を図っても、所望の強度を確保できない。一方、Cが0.20%を超えるとマルテンサイトの増加によって加工性が低下する場合がある。好ましくは、0.10~1.8%とする。
Siはフェライト生成元素であり、また、固溶強化元素でもある。したがって、強度と延性のバランスの向上に寄与する。この効果を得るために、Siは0.1%以上とすることが必要である。一方、Siが2.0%を超えると、めっき付着、密着性の低下および表面性状の劣化を引き起こす場合がある。好ましくは、0.1~1.5%とする。
Mnはマルテンサイトの生成元素であり、また、固溶強化元素でもある。また、残留オーステナイト安定化に寄与する。これらの効果を得るために、Mnは2.0%以上とすることが必要である。一方、Mnが3.5%を超えると第2相中のマルテンサイト分率が増加し、加工性が低下する場合がある。好ましくは、2.0~3.0%とする。
Pは、鋼の強化に有効な元素である。しかしながら、Pが0.05%を超えると合金化速度を大幅に遅延させる。また、0.05%を超えて過剰に含有させると、粒界偏析により脆化を引き起こし、衝突特性を劣化させる場合がある。好ましくは、0.01%以下とする。下限については、特に規定しないが、溶製の経済性から、0.0005%以上が好ましい。
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、S量は極力低い方がよいが、製造コストの面からSは0.05%以下とする。好ましくは、0.01%以下とする。下限については、特に規定しないが、溶製の経済性から、0.0001%以上が好ましい。
Alは脱酸剤として作用し、また、固溶強化元素でもある。Sol.Alが0.005%未満ではこれらの効果は得られない。一方、Sol.Alが0.1%を超えると製鋼時におけるスラブ品質を劣化させる。好ましくは、0.005~0.01%とする。
Cr、Mo、Vは焼き入れ性を上げ、鋼の強化に有効な元素である。その効果は、それぞれ0.005%以上で得られる。一方、Cr:1.0%、Mo:0.5%、V:0.5%を超えて過剰に添加すると、上記の効果が飽和し、さらに原料コストが増加する。また、第2相分率が過大となり加工性が低下する場合がある。
Ti、Nbは鋼の析出強化に有効で、その効果はそれぞれ0.005%以上で得られ、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、それぞれが0.5%を超えると所望の加工性が得られない場合がある。
Bはオーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制することで焼入れ性の向上に寄与するので、必要に応じて添加することができる。その効果は、0.0003%以上で得られる。しかし、0.005%を超えると所望の加工性が得られない場合がある。
Ni、Cuは鋼の強化に有効な元素であり、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。これらの効果を得るためには,それぞれ0.005%以上含有することが好ましい。一方、Ni、Cuともに1.0%を超えると、所望の加工性が得られない場合がある。
Ca、REMは、いずれも硫化物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Ca、REMの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。一方、Ca、REMのそれぞれの含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼし特性が低下するおそれがある。
フェライトの面積率:60%以下
フェライトの面積率が60%を超えると、980MPa以上のTSと衝突特性を両立することが困難となる。したがって、フェライトの面積率は60%以下とする。好ましくは40%以下とする。下限は特に規定しないが、10%以上が好ましい。一方、フェライトの減少によって延性が低下する場合があるため、より好ましくは15%超えとする。
焼戻しマルテンサイトは、耐衝撃性および加工性を向上させるのに有効である。焼戻しマルテンサイトの面積率が40%未満では、こうした効果を十分に得られない。耐衝撃性と加工性の両立のための好ましい焼戻しマルテンサイト量は、50~80%とする。
残留オーステナイトは加工性を大きく低下させることなく衝突特性を向上させるのに有効である。残留オーステナイトの面積率が1%未満ではこうした効果を得られない場合がある。一方、残留オーステナイトの面積率が10%を超えると、加工性が低下する場合がある。
焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差を20以下とすることでTSを980以上に保ちつつ、高い衝突特性が得られる。このメカニズムは明らかではないが、次のように考えられる。衝突特性劣化の原因となる衝突時の破断は割れの発生および進展が起点となる。そのうち割れの進展は高硬度差領域でのボイドの生成・連結によって加速すると考えられる。したがって、焼戻しマルテンサイトの硬度の標準偏差を所定の範囲に制御し、マルテンサイトの加工硬化能を残しつつ高硬度差領域を減少させることで、TSが980MPa以上で高い加工性および衝突特性が得られる。したがって、これらの効果を得るために焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下とする。
本発明の高強度鋼板の製造方法は、上記の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有する。また、溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有してもよい。
仕上げ圧延温度が850℃未満の場合、フェライトが圧延方向に伸長した組織となるとともにセメンタイト等の炭化物のアスペクト比が大きくなり、加工性が低下する。一方、950℃を超えると結晶粒が粗大化し、本発明の鋼組織が得られない。したがって、仕上げ圧延温度は850~950℃とする。
巻取温度が600℃を超えた場合、熱延板中の炭化物が粗大化し、このような粗大化した炭化物は焼鈍時の均熱中に溶けきらないため、必要強度を得ることができない場合がある。
冷間圧延の圧下率が20%以下では、フェライトの再結晶が促進されず、未再結晶フェライトが残存し、加工性が低下する場合がある。
焼鈍温度が750℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、過剰なフェライトが生成して本発明の鋼組織が得られない。好ましくは750~900℃とする。また、保持時間が30秒未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、過剰なフェライトが生成して本発明の鋼組織が得られない。なお、上限は600秒以下が好ましい。
平均冷却速度が3℃/s未満では、冷却中にフェライトやベイナイトが過度に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、平均冷却速度は3℃/s以上とする。
冷却停止温度が300℃超えでは焼戻しマルテンサイトの生成が不十分であり、本発明の鋼組織が得られない。一方、150℃未満では焼戻しマルテンサイトが過剰になり、オートテンパードマルテンサイトの生成が不十分となる場合がある。好ましくは150~250℃とする。
300℃未満ではベイナイトの生成およびマルテンサイトの焼戻しが不十分となり本発明の鋼組織および加工性が得られない。一方、500℃を超えるとフェライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。好ましくは350~450℃とする。また、保持時間が20秒未満ではベイナイト変態が不十分になり、本発明の鋼組織が得られない。好ましくは30~500秒とする。
溶融亜鉛めっき後、460~600℃で合金化処理を施す。合金化処理温度が460℃より低い場合は合金化が進行せず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られない。一方、合金化処理温度が600℃より高い場合、フェライトの結晶粒が粗大化し、所望の強度の確保が困難となる。好ましくは480~560℃とする。
200~400℃の温度域における平均冷却速度が5℃/s未満では、冷却中の焼戻しが過剰となり、加工硬化能の低下によって衝突特性が低下する場合がある。一方、20℃/sを超える冷却速度では、冷却中の焼戻しが不十分となり、焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度のバラツキが大きくなることによって衝突特性が低下する場合がある。なお、溶融亜鉛めっき工程において合金化処理を施す場合、合金化処理を施した後に冷却を施す。
冷間圧延、焼鈍、溶融亜鉛めっきが施される。
お、表1中、Nは不可避的不純物である。
キンパス圧延を施した後、上記した手法にしたがい、フェライト(F)、焼戻しマルテンサイト(TM)、および残留オーステナイト(RA)の面積率をそれぞれ求めた。
焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度Hvは以下のように測定した。圧延方向に対して平行方向の断面を有し幅が10mm、長さ(圧延方向)が15mmの試験片を採取し、該断面について地鉄鋼板の板厚方向においての表面から板厚1/4位置において焼戻しマルテンサイトをランダムに選出しビッカース硬度測定を行った。荷重は20gで20点以上測定した。ただし、圧痕の大きさよりも小さい粒径の場合は、ナノインデンテーションや微小硬度試験を使用して測定し、ビッカース硬さに換算したものを用いてもかまわない。その場合、測定精度を高めるために100点以上測定を行った。次に、測定したビッカース硬度の最大値と最小値の2点を除き、下記の数1に示す式より標準偏差σを求め、ビッカース硬度Hvのバラつきを判断した。
圧延方向に対して直角方向にJIS5号引張試験片(JIS Z2201)を採取し、歪速度が10-3/sとするJIS Z2241の規定に準拠した引張試験を行い、引張強度(TS)および延性(El)を求めた。なお、TSが980MPa以上、Elが10%以上を合格とした。
焼鈍後のコイル幅中央部より150mm×150mmの試験片を3枚採取し、JFST 1001(鉄連規格)に準拠して穴拡げ試験を3回行ってその平均の穴拡げ率λ(%)を求め、伸びフランジ性を評価した。λが40%以上、の場合に加工性が良好と評価した。
曲げ試験はドイツ自動車工業会で規定されたVDA規格(VDA238-100)に基づき、以下の測定条件で評価を行った。
試験方法:ロール支持、ポンチ押し込み。
ロール径:φ30mm
ポンチ先端R:0.4mm
ロール間距離:(板厚×2)+0.5 mm
ストローク速度:20mm/min
試験片サイズ:60mm×60mm
曲げ方向:圧延直角方向
曲げ試験で得られるストローク-荷重曲線において、荷重最大時からその後の最大荷重の20%時までの曲げ角度(αVDA)をVDA基準でストロークから角度を算出することによって求めた。αVDAが90°以上で衝突特性が良好と評価した。
Claims (7)
- 鋼組成は、質量%で、C:0.07~0.20%、Si:0.1~2.0%、Mn:2.0~3.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.005~0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、面積率で、フェライト:15%超60%以下、焼戻しマルテンサイト:40%以上、フェライトおよび焼戻しマルテンサイトの合計:85%以上を有し、かつ焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - 前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:1~10%を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、鋼組成として、質量%で、Cr:0.005~1.0%、Mo:0.005~0.5%、V:0.005~0.5%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、鋼組成として、質量%で、Ti:0.005~0.5%、Nb:0.005~0.5%、B:0.0003~0.005%、Ni:0.005~1.0%、Cu:0.005~1.0%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有し、前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:3~10%を有することを特徴とする請求項1または3に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、鋼組成として、質量%で、Ca:0.001~0.005%、REM:0.001~0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1、3~5のいずれか一項に記載の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、
20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、
平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、
溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、前記冷却工程前に460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有する請求項6に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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