JP7056631B2 - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用鋼板としての用途に好適な、加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
地球環境保全の観点から、CO排出量を削減すべく、自動車車体の強度を維持しつつ、その軽量化を図り、自動車の燃費を改善することが自動車業界においては常に重要な課題となっている。自動車車体の強度を維持しつつその軽量化を図るためには、自動車部品用素材となる鋼板の高強度化により鋼板を薄肉化することが有効である。一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス加工やバーリング加工等によって成形される。このため、自動車部品用素材として用いられる高強度鋼板には所望の強度を有することに加えて、優れた成形性が要求される。
近年、自動車車体において引張強度(TS)が980MPa超級の高強度鋼板の適用が拡大しつつある。リヤサイドメンバーやフロントサイドメンバーなどの三次元的に複雑な部材は、張り出し部およびフランジ部を有する。このため、所望の強度を有することに加え、延性および伸びフランジ性も必要となる。また、これらの部材は走行中に万一衝突した場合、潰れて衝突エネルギーを吸収することで乗員の安全を確保することが求められる。しかしながら、980MPa超級の高強度鋼板は軸圧潰時に部材破断を引き起こしやすく、安定的に衝突エネルギー吸収能を発揮できないという課題がある。そのため、エネルギー吸収部材には980MPa級以上の高強度鋼板の適用は未だされておらず、軽量化によって環境保全に寄与する余地がある。したがって、エネルギー吸収部材に加工性および衝突特性を具えた高強度鋼板の適用が必要である。
このような要求に対して、例えば、特許文献1では、成形性および耐衝撃性に優れたTSが1180MPa級の高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関する技術が開示されている。また、特許文献2では、耐衝撃性および曲げ加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関する技術が開示されている。
特開2012-31462号公報 特開2015-117403号公報
しかしながら、特許文献1では伸びや伸びフランジ性などの成形性は優れているものの、衝突特性については検討されていない。また、特許文献2では、加工性および耐衝撃性について検討されているが、耐部材破断という観点で衝突特性を検討していない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、自動車のエネルギー吸収部材用の高強度鋼板として好適な、引張強度(TS)が980MPa以上であり、加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋼板の鋼組成、組織および製造方法の観点から鋭意研究を重ねた結果、以下のことを見出した。
特定の鋼組成において、面積率で、フェライト:60%以下、焼戻しマルテンサイト:40%以上であり、かつ焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度のバラツキが標準偏差で20以下とすることにより、TSが980MPa以上で加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが分かった。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]鋼組成は、質量%で、C:0.07~0.20%、Si:0.1~2.0%、Mn:2.0~3.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.005~0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
鋼組織は、面積率で、フェライト:60%以下、焼戻しマルテンサイト:40%以上を有し、かつ焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[2]前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:1~10%を有することを特徴とする[1]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]さらに、鋼組成として、質量%で、Cr:0.005~1.0%、Mo:0.005~0.5%、V:0.005~0.5%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[4]さらに、鋼組成として、質量%で、Ti:0.005~0.5%、Nb:0.005~0.5%、B:0.0003~0.005%、Ni:0.005~1.0%、Cu:0.005~1.0%以下から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[5]さらに、鋼組成として、質量%で、Ca:0.001~0.005%、REM:0.001~0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
[6][1]、[3]~[5]のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、
20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、
平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、
溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、
前記溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[7]前記溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、前記冷却工程前に460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有する[6]に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、自動車のエネルギー吸収部材用の高強度鋼板として好適な、引張強度(TS)が980MPa以上であり、加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
以下に、本発明の詳細を説明する。なお、成分元素の含有量を表す「%」は、特に断ら
ない限り、「質量%」を意味する。
1)鋼組成
C:0.07~0.20%
Cはフェライト以外の相を生成しやすくし、また、NbやTiなどと合金化合物を形成するため、強度向上に必要な元素である。Cが0.07%未満では、製造条件の最適化を図っても、所望の強度を確保できない。一方、Cが0.20%を超えるとマルテンサイトの増加によって加工性が低下する場合がある。好ましくは、0.10~1.8%とする。
Si:0.1~2.0%
Siはフェライト生成元素であり、また、固溶強化元素でもある。したがって、強度と延性のバランスの向上に寄与する。この効果を得るために、Siは0.1%以上とすることが必要である。一方、Siが2.0%を超えると、めっき付着、密着性の低下および表面性状の劣化を引き起こす場合がある。好ましくは、0.1~1.5%とする。
Mn:2.0~3.5%
Mnはマルテンサイトの生成元素であり、また、固溶強化元素でもある。また、残留オーステナイト安定化に寄与する。これらの効果を得るために、Mnは2.0%以上とすることが必要である。一方、Mnが3.5%を超えると第2相中のマルテンサイト分率が増加し、加工性が低下する場合がある。好ましくは、2.0~3.0%とする。
P:0.05%以下
Pは、鋼の強化に有効な元素である。しかしながら、Pが0.05%を超えると合金化速度を大幅に遅延させる。また、0.05%を超えて過剰に含有させると、粒界偏析により脆化を引き起こし、衝突特性を劣化させる場合がある。好ましくは、0.01%以下とする。下限については、特に規定しないが、溶製の経済性から、0.0005%以上が好ましい。
S:0.05%以下
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。したがって、S量は極力低い方がよいが、製造コストの面からSは0.05%以下とする。好ましくは、0.01%以下とする。下限については、特に規定しないが、溶製の経済性から、0.0001%以上が好ましい。
Sol.Al:0.005~0.1%
Alは脱酸剤として作用し、また、固溶強化元素でもある。Sol.Alが0.005%未満ではこれらの効果は得られない。一方、Sol.Alが0.1%を超えると製鋼時におけるスラブ品質を劣化させる。好ましくは、0.005~0.01%とする。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記鋼組成に加えて、さらに、下記のCr、Mo、Vから選ばれる1種または2種以上の元素を含有することができる。
Cr:0.005~1.0%、Mo:0.005~0.5%、V:0.005~0.5%
Cr、Mo、Vは焼き入れ性を上げ、鋼の強化に有効な元素である。その効果は、それぞれ0.005%以上で得られる。一方、Cr:1.0%、Mo:0.5%、V:0.5%を超えて過剰に添加すると、上記の効果が飽和し、さらに原料コストが増加する。また、第2相分率が過大となり加工性が低下する場合がある。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記鋼組成に加えて、さらに、下記のTi、Nb、B、Ni、Cuから選ばれる1種または2種以上の元素を含有することができる。
Ti:0.005~0.5%、Nb:0.005~0.5%
Ti、Nbは鋼の析出強化に有効で、その効果はそれぞれ0.005%以上で得られ、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。しかし、それぞれが0.5%を超えると所望の加工性が得られない場合がある。
B:0.0003~0.005%
Bはオーステナイト粒界からのフェライトの生成・成長を抑制することで焼入れ性の向上に寄与するので、必要に応じて添加することができる。その効果は、0.0003%以上で得られる。しかし、0.005%を超えると所望の加工性が得られない場合がある。
Ni:0.005~1.0%、Cu:0.005~1.0%
Ni、Cuは鋼の強化に有効な元素であり、本発明で規定した範囲内であれば鋼の強化に使用して差し支えない。これらの効果を得るためには,それぞれ0.005%以上含有することが好ましい。一方、Ni、Cuともに1.0%を超えると、所望の加工性が得られない場合がある。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記鋼組成に加えて、さらに、下記のCa、REMから選ばれる1種または2種の元素を含有することができる。
Ca:0.001~0.005%、REM:0.001~0.005%
Ca、REMは、いずれも硫化物の形態制御により加工性を改善させるのに有効な元素である。こうした効果を得るには、Ca、REMの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。一方、Ca、REMのそれぞれの含有量が0.005%を超えると、鋼の清浄度に悪影響を及ぼし特性が低下するおそれがある。
なお、残部はFeおよび不可避不純物である。また、上記任意成分を下限値未満で含む場合、下限値未満で含まれる任意成分は不可避的不純物として含まれるものとする。
2)鋼組織
フェライトの面積率:60%以下
フェライトの面積率が60%を超えると、980MPa以上のTSと衝突特性を両立することが困難となる。したがって、フェライトの面積率は60%以下とする。好ましくは40%以下とする。下限は特に規定しないが、10%以上が好ましい。一方、フェライトの減少によって延性が低下する場合があるため、より好ましくは15%超えとする。
焼戻しマルテンサイトの面積率:40%以上
焼戻しマルテンサイトは、耐衝撃性および加工性を向上させるのに有効である。焼戻しマルテンサイトの面積率が40%未満では、こうした効果を十分に得られない。耐衝撃性と加工性の両立のための好ましい焼戻しマルテンサイト量は、50~80%とする。
残留オーステナイトの面積率:1~10%(好適条件)
残留オーステナイトは加工性を大きく低下させることなく衝突特性を向上させるのに有効である。残留オーステナイトの面積率が1%未満ではこうした効果を得られない場合がある。一方、残留オーステナイトの面積率が10%を超えると、加工性が低下する場合がある。
焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下
焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差を20以下とすることでTSを980以上に保ちつつ、高い衝突特性が得られる。このメカニズムは明らかではないが、次のように考えられる。衝突特性劣化の原因となる衝突時の破断は割れの発生および進展が起点となる。そのうち割れの進展は高硬度差領域でのボイドの生成・連結によって加速すると考えられる。したがって、焼戻しマルテンサイトの硬度の標準偏差を所定の範囲に制御し、マルテンサイトの加工硬化能を残しつつ高硬度差領域を減少させることで、TSが980MPa以上で高い加工性および衝突特性が得られる。したがって、これらの効果を得るために焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下とする。
フェライト、焼戻しマルテンサイト、残留オーステナイト以外のその他の組織として、フレッシュマルテンサイトやベイナイト、パーライトを含む場合もあるが、上記の鋼組織の条件を満たしていれば、本発明の目的は達成されるが、これらの総和は15%以下であることが好ましい。
ここで、フェライト、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイトの面積率とは、観察面積に占める各組織の面積の割合のことである。各組織の面積率は、鋼板の板厚断面を研磨後、3質量%ナイタールで腐食し、板厚1/4位置をSEM(走査型電子顕微鏡)で1500倍の倍率で3視野撮影し、得られた画像データからMedia Cybernetics社製のImage-Proを用いて各相の面積率を求め、3視野の面積率の平均値を各相の面積率とした。前記画像データにおいて、フェライトは黒色、焼戻しマルテンサイトは微細な方位の揃っていない炭化物を含む明灰色として区別できる。また、残留オーステナイトの体積率とは、板厚1/4面におけるbcc鉄の(200)、(211)、(220)面のX線回折積分強度に対するfcc鉄の(200)、(220)、(311)面のX線回折積分強度の割合である。
また、焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差の求め方は、後述する実施例の測定方法により求めることができる。
3)製造条件
本発明の高強度鋼板の製造方法は、上記の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有する。また、溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有してもよい。
まず、熱間圧延工程の条件について説明する。
仕上げ圧延温度:850~950℃
仕上げ圧延温度が850℃未満の場合、フェライトが圧延方向に伸長した組織となるとともにセメンタイト等の炭化物のアスペクト比が大きくなり、加工性が低下する。一方、950℃を超えると結晶粒が粗大化し、本発明の鋼組織が得られない。したがって、仕上げ圧延温度は850~950℃とする。
巻取温度:600℃以下
巻取温度が600℃を超えた場合、熱延板中の炭化物が粗大化し、このような粗大化した炭化物は焼鈍時の均熱中に溶けきらないため、必要強度を得ることができない場合がある。
熱間圧延工程により得られた熱延板を通常公知の方法で酸洗、脱脂などの予備処理を行った後に、必要に応じて冷間圧延を施す。冷間圧延を施す際の冷間圧延工程の条件について説明する。
冷間圧延の圧下率:20%超え
冷間圧延の圧下率が20%以下では、フェライトの再結晶が促進されず、未再結晶フェライトが残存し、加工性が低下する場合がある。
次に、冷間圧延工程により得られた冷延板を焼鈍する際の焼鈍工程の条件について説明する。
焼鈍温度:750℃以上、保持時間:30秒以上
焼鈍温度が750℃未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、過剰なフェライトが生成して本発明の鋼組織が得られない。好ましくは750~900℃とする。また、保持時間が30秒未満では、オーステナイトの生成が不十分となり、過剰なフェライトが生成して本発明の鋼組織が得られない。なお、上限は600秒以下が好ましい。
焼鈍工程後、焼入れ焼戻しを施す。焼入れ焼戻し工程の条件について説明する。
焼鈍後の平均冷却速度:3℃/s以上
平均冷却速度が3℃/s未満では、冷却中にフェライトやベイナイトが過度に生成して本発明の鋼組織が得られない。したがって、平均冷却速度は3℃/s以上とする。
冷却停止温度:150~300℃
冷却停止温度が300℃超えでは焼戻しマルテンサイトの生成が不十分であり、本発明の鋼組織が得られない。一方、150℃未満では焼戻しマルテンサイトが過剰になり、オートテンパードマルテンサイトの生成が不十分となる場合がある。好ましくは150~250℃とする。
焼戻し温度:300~500℃、保持時間:20秒以上
300℃未満ではベイナイトの生成およびマルテンサイトの焼戻しが不十分となり本発明の鋼組織および加工性が得られない。一方、500℃を超えるとフェライトが過剰に生成して本発明の鋼組織が得られない。好ましくは350~450℃とする。また、保持時間が20秒未満ではベイナイト変態が不十分になり、本発明の鋼組織が得られない。好ましくは30~500秒とする。
次に、溶融亜鉛めっき工程の条件について説明する。
溶融亜鉛めっき工程は、上記により得られた鋼板を440℃以上500℃以下の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬し、その後、ガスワイピングなどによってめっき付着量を調整して行うことが好ましい。
溶融亜鉛めっきを施した後、必要に応じて合金化処理を施す合金化工程を有していてもよい。合金化工程の条件について説明する。
合金化処理温度:460~600℃(好適条件)
溶融亜鉛めっき後、460~600℃で合金化処理を施す。合金化処理温度が460℃より低い場合は合金化が進行せず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られない。一方、合金化処理温度が600℃より高い場合、フェライトの結晶粒が粗大化し、所望の強度の確保が困難となる。好ましくは480~560℃とする。
次に、溶融亜鉛めっき工程後に冷却を施す。冷却工程の条件について説明する。
200~400℃の温度域における平均冷却速度:5~20℃/s
200~400℃の温度域における平均冷却速度が5℃/s未満では、冷却中の焼戻しが過剰となり、加工硬化能の低下によって衝突特性が低下する場合がある。一方、20℃/sを超える冷却速度では、冷却中の焼戻しが不十分となり、焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度のバラツキが大きくなることによって衝突特性が低下する場合がある。なお、溶融亜鉛めっき工程において合金化処理を施す場合、合金化処理を施した後に冷却を施す。
また、溶融亜鉛めっき工程を施した後の鋼板には、形状矯正や表面粗度の調整などを目的に、調質圧延を行うことができる。ただし、調質圧延は調圧率が0.5%を超えると表層硬化により曲げ性が劣化することがあるため、調圧率は0.5%以下にすることが好ましい。より好ましくは0.3%以下である。また、樹脂や油脂コーティングなどの各種塗装処理を施すこともできる。
その他の製造方法の条件は、特に限定しないが、以下の条件で行うのが好ましい。
スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましく、造塊法、薄スラブ鋳造法により製造することもできる。スラブを熱間圧延するには、スラブをいったん室温まで冷却し、その後再加熱して熱間圧延を行ってもよい。また、スラブを室温まで冷却せずに加熱炉に装入して熱間圧延を行うこともできる。あるいは、わずかの保熱を行った後に直ちに熱間圧延する省エネルギープロセスも適用できる。スラブを加熱する場合は、圧延荷重の増大防止や、炭化物が溶解するため、1100℃以上に加熱することが好ましい。また、スケールロスの増大を防止するため、スラブの加熱温度は1300℃以下とすることが好ましい。
スラブを熱間圧延する時は、スラブの加熱温度を低くしたときに圧延時のトラブルを防止する観点から、粗圧延後の粗バーを加熱することもできる。また、粗バー同士を接合し、仕上げ圧延を連続的に行う、いわゆる連続圧延プロセスを適用できる。また、圧延荷重の低減や形状・材質の均一化のために、仕上げ圧延の全パスあるいは一部のパスで摩擦係数が0.10~0.25となる潤滑圧延を行うことが好ましい。
巻取り後の鋼板は、スケールを酸洗などにより除去してもよい。酸洗後、上記の条件で
冷間圧延、焼鈍、溶融亜鉛めっきが施される。
表1に示す鋼組成の鋼を真空溶解炉により溶製し、分塊圧延して鋼スラブとした。な
お、表1中、Nは不可避的不純物である。
Figure 0007056631000001
これらの鋼スラブを加熱し、粗圧延、仕上げ圧延、巻取りを施し熱延板とした。次いで、冷間圧延を施し冷延板とし、得られた冷延板を焼鈍に供した。熱延条件、冷延条件および焼鈍条件は、表2に示すとおりである。表2に示す条件で作製した鋼板を、めっき浴中に浸漬し、めっき付着量20~80g/mの溶融亜鉛めっき層を形成させた。また、一部については、溶融亜鉛めっき層形成後に合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。めっき処理後、冷却を行った。
Figure 0007056631000002
得られた溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、圧下率0.3%のス
キンパス圧延を施した後、上記した手法にしたがい、フェライト(F)、焼戻しマルテンサイト(TM)、および残留オーステナイト(RA)の面積率をそれぞれ求めた。
また、以下の試験方法にしたがい、ビッカース硬度Hvのばらつき、引張特性、加工性(穴広げ性)および衝突特性を求めた。
<硬度試験>
焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度Hvは以下のように測定した。圧延方向に対して平行方向の断面を有し幅が10mm、長さ(圧延方向)が15mmの試験片を採取し、該断面について地鉄鋼板の板厚方向においての表面から板厚1/4位置において焼戻しマルテンサイトをランダムに選出しビッカース硬度測定を行った。荷重は20gで20点以上測定した。ただし、圧痕の大きさよりも小さい粒径の場合は、ナノインデンテーションや微小硬度試験を使用して測定し、ビッカース硬さに換算したものを用いてもかまわない。その場合、測定精度を高めるために100点以上測定を行った。次に、測定したビッカース硬度の最大値と最小値の2点を除き、下記の数1に示す式より標準偏差σを求め、ビッカース硬度Hvのバラつきを判断した。
Figure 0007056631000003
<引張試験>
圧延方向に対して直角方向にJIS5号引張試験片(JIS Z2201)を採取し、歪速度が10-3/sとするJIS Z2241の規定に準拠した引張試験を行い、引張強度(TS)および延性(El)を求めた。なお、TSが980MPa以上、Elが10%以上を合格とした。
<穴拡げ試験>
焼鈍後のコイル幅中央部より150mm×150mmの試験片を3枚採取し、JFST 1001(鉄連規格)に準拠して穴拡げ試験を3回行ってその平均の穴拡げ率λ(%)を求め、伸びフランジ性を評価した。λが40%以上、の場合に加工性が良好と評価した。
<曲げ試験>
曲げ試験はドイツ自動車工業会で規定されたVDA規格(VDA238-100)に基づき、以下の測定条件で評価を行った。
試験方法:ロール支持、ポンチ押し込み。
ロール径:φ30mm
ポンチ先端R:0.4mm
ロール間距離:(板厚×2)+0.5 mm
ストローク速度:20mm/min
試験片サイズ:60mm×60mm
曲げ方向:圧延直角方向
曲げ試験で得られるストローク-荷重曲線において、荷重最大時からその後の最大荷重の20%時までの曲げ角度(αVDA)をVDA基準でストロークから角度を算出することによって求めた。αVDAが90°以上で衝突特性が良好と評価した。
結果を表3に示す。
Figure 0007056631000004
いずれの発明例も、TSが980MPa以上であり、加工性および衝突特性に優れていることが確認できる。
したがって、本発明によれば、TSが980MPa以上であり、加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明は、自動車の軽量化に寄与し、自動車車体の高性能化に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
本発明によれば、TSが980MPa以上で加工性および衝突特性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を自動車用部品用途に使用すると、自動車の軽量化に寄与し、自動車車体の高性能化に大きく寄与することができる。

Claims (7)

  1. 鋼組成は、質量%で、C:0.07~0.20%、Si:0.1~2.0%、Mn:2.0~3.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.005~0.1%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    鋼組織は、面積率で、フェライト:15%超60%以下、焼戻しマルテンサイト:40%以上、フェライトおよび焼戻しマルテンサイトの合計:85%以上を有し、かつ焼戻しマルテンサイトのビッカース硬度の標準偏差が20以下であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:1~10%を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. さらに、鋼組成として、質量%で、Cr:0.005~1.0%、Mo:0.005~0.5%、V:0.005~0.5%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. さらに、鋼組成として、質量%で、Ti:0.005~0.5%、Nb:0.005~0.5%、B:0.0003~0.005%、Ni:0.005~1.0%、Cu:0.005~1.0%から選ばれる1種または2種以上の元素を含有し、前記鋼組織は、さらに、面積率で残留オーステナイト:3~10%を有することを特徴とする請求項1または3に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. さらに、鋼組成として、質量%で、Ca:0.001~0.005%、REM:0.001~0.005%から選ばれる1種または2種の元素を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 請求項1、3~5のいずれか一項に記載の鋼組成を有する鋼スラブに、仕上げ圧延温度を850~950℃として熱間圧延を施し、600℃以下の巻取温度で巻取る熱間圧延工程と、
    20%超えの圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
    750℃以上の焼鈍温度まで加熱し、30秒以上保持する焼鈍工程と、
    平均冷却速度3℃/s以上で150~300℃の冷却停止温度域まで冷却した後、300~500℃の焼戻し温度で20秒以上保持する焼入れ焼戻し工程と、
    溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛めっき工程と、
    前記溶融亜鉛めっき工程後に、200~400℃の温度域において平均冷却速度5~20℃/sで冷却を施す冷却工程とを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  7. 前記溶融亜鉛めっき工程において、溶融亜鉛めっきを施した後、前記冷却工程前に460~600℃の温度域で合金化処理を施す合金化工程を有する請求項6に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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