しかしながら、上述した従来の構成、即ち、ムービングマグネット型の場合では、電磁石式のアクチュエータの駆動方式として、上下に間隔をおいて同軸上に二つのコイルを配し、その空芯部にマグネットを取設した軸部材を挿通配置し、コイルへの通電によってコイルと磁石との間に生じる電磁力により、マグネット付きの軸部材を軸方向に往復動させる。
そのため、減衰力を確保する、即ち、電磁力を確保するためには、磁石の外径を大きくする必要があり、アクチュエータの小型化、軽量化が困難である。また、磁石の外径が大きくなると、走行時における振動により磁石が損壊しやすいという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、磁石の損傷を抑制しつつ電磁力を確保することができる防振装置、その防振装置を備える防振装置ユニット及びその防振装置の製造方法を提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1記載の防振装置は、第1取付具と、筒状の第2取付具と、前記第2取付具と前記第1取付具とを連結しゴム状弾性材からなる防振基体と、前記防振基体に対向して配設されるゴム壁と、前記ゴム壁と前記防振基体との間に形成される第1液室と、前記第1液室にオリフィスを介して連通される第2液室とを備えると共に、車体に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に固着され、少なくとも一部に磁性体を備える固定子と、前記固定子に沿って1軸方向に往復動作可能に配設され、前記固定子の磁性体に対応する位置に円筒状の磁極部が形成された可動子と、前記可動子の磁極部に巻回され、電流が流れることで励磁されるコイルとを備え、前記コイルに電流が流され励磁されることで発生する起磁力により、前記可動子が前記固定子に対して往復動作することで前記第1液室の室壁の一部をなす前記ゴム壁を振動させて、前記第1液室の圧力を制御する。
この請求項1記載の防振装置によれば、コイルに電流が流れると、コイルが励磁されて磁極部に起磁力が生じ、その起磁力の作用により可動子が固定子に対して1の方向に動作する。コイルに流れる電流の方向を変えると、磁極部に発生する起磁力の向きが変わり、1の方向に対して反対方向に可動子が動作する。また、車体にベース部材が取り付けられるので、コイルに流れる電流の方向を調整することで、ゴム壁を振動させて、第1液室の圧力を制御させるように可動子を往復動作させることができる。
請求項2記載の防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記固定子に対して往復動作する前記可動子の動作方向が前記第1液室に入力される振動の振動方向と平行に設定されている。
請求項3記載の防振装置は、請求項1又は2に記載の防振装置において、前記可動子と前記ゴム壁との間に介在して前記可動子の往復動作を前記ゴム壁に伝達する伝達部材を備え、前記伝達部材の前記ゴム壁側端部は、前記固定子の軸心方向と直交する第1の方向に張り出す張出部を備え、前記張出部の張出寸法は、前記第1液室の前記第1の方向に沿う平面の幅寸法よりも大きく、かつ、前記ゴム壁に埋設されるオリフィス形成金具の内径寸法よりも小さく設定されている。
請求項4記載の防振装置は、請求項1から3のいずれかに記載の防振装置において、前記可動子の磁極部は、少なくとも一対の磁石を備え、前記一対の磁石は、前記固定子の軸心方向に異なる磁極が並んで形成されると共に、前記第1の方向に磁極の並びを逆にして配設され、前記一対の磁石の間に発生する起磁力と、前記コイルが励磁されることで発生する起磁力との組み合わせにより前記可動子が前記固定子に対して往復動作して前記第1液室の圧力を制御する。
請求項5記載の防振装置は、請求項4記載の防振装置において、前記可動子の磁極部は、前記第1の方向において前記固定子を挟むよう形成され、前記一対の磁石は、前記第1の方向線上に磁極の並びを逆にして配設されている。
請求項6記載の防振装置は、請求項1から5のいずれかに記載の防振装置において、前記可動子と前記固定子とを連結すると共に、弾性材から構成される連結部材を備え、前記連結部材により前記可動子と前記固定子とが連結された状態で、前記可動子と前記ベース部材との間に隙間が形成される。
請求項7記載の防振装置は、請求項6記載の防振装置において、前記連結部材は、板バネで構成され、前記可動子の往復動作方向における前記可動子の両端に配設されている。
請求項8記載の防振装置は、請求項6又は7に記載の防振装置において、前記可動子は、前記可動子の往復動作方向の両端面に、前記可動子の外縁部分から前記固定子の前記連結部材の取り付け位置に対応する位置まで立設される側壁と、前記側壁に前記連結部材を固定するために設けられ、前記固定子の軸心に対して面対称に配置されるネジ部とを備え、前記連結部材は、前記固定子と前記側壁のネジ部とに螺着されることで固定される。
請求項9記載の防振装置は、請求項8記載の防振装置において、前記連結部材は、同一形状の環状部を2つ有しており、2つの前記環状部は、前記固定子に螺着される部分において一体に連接されている。
請求項10記載の防振装置は、請求項8又は9に記載の防振装置において、前記連結部材が前記固定子と前記側壁のネジ部とに固定された状態において、前記連結部材と前記側壁との間には、前記コイルに電流が流されていない状態から前記コイルに電流が流されて、前記固定子の軸心方向のうちいずれか一方へ前記可動子が動作した場合の動作距離より広い隙間が形成される。
請求項11記載の防振装置は、請求項6から10のいずれかに記載の防振装置において、前記固定子と前記ベース部材との間に挟持され、前記可動子と前記ベース部材との間の隙間に対応する厚みで構成された挟持部材を備え、前記固定子は、前記磁性体が備えられた軸部と、前記軸部の軸径より小径となる小径部とが形成されており、前記挟持部材は、前記固定子が前記ベース部材に固着される場合には、前記軸部と前記小径部とにより形成される前記固定子の段差面と、前記ベース部材との間に挟持される。
請求項12記載の防振装置は、請求項4又は5に記載の防振装置において、前記固定子と前記可動子との対向面を連結すると共に、少なくとも一部が弾性材で構成された第2連結部材を備え、前記第2連結部材により前記可動子と前記固定子とが連結された状態で、前記可動子と前記ベース部材との間に隙間が形成される。
請求項13記載の防振装置は、請求項12記載の防振装置において、前記第2連結部材は、前記第1の方向において前記固定子を挟んで形成された前記可動子の磁極部のうち、一方の前記磁極部と前記固定子とを連結する第3連結部材と、他方の前記磁極部と前記固定子とを連結する第4連結部材とを備え、前記第3連結部材と前記第4連結部材とは、前記固定子の軸心方向視において、前記固定子の軸心に対して点対称に配設されている。
請求項14記載の防振装置は、請求項12記載の防振装置において、前記第2連結部材は、前記固定子の軸心方向において、前記固定子の磁性体の長さ又は前記可動子の磁極部の長さのうちの短い方の長さ以上に形成されると共に、前記軸心方向視において、前記固定子の磁性体の全外壁を囲むよう形成されている。
請求項15記載の防振装置は、請求項12から14のいずれかに記載の防振装置において、前記一対の磁石は、前記第1の方向において前記固定子を挟んで形成された前記可動子の磁極部のうち、一方の前記磁極部の前記固定子と対向する面に一方の前記磁石が配設されると共に、他方の前記磁極部の前記固定子と対向する面に他方の磁石が配設され、前記第2連結部材は、前記固定子の磁性体に連結されゴム状弾性材からなる弾性部材と、前記弾性部材に連結され樹脂材料からなる樹脂部材とを備えており、前記固定子の磁性体に前記弾性部材が連結されると共に、前記弾性部材に前記樹脂部材が連結され、前記弾性部材と前記樹脂部材とが前記固定子に対して一体に連結された状態で、前記樹脂部材が前記一対の磁石間に圧入されて組み付けられている。
請求項16記載の防振装置は、請求項15記載の防振装置において、前記固定子の磁性体は円柱状に形成されると共に、前記樹脂部材は円柱状に形成された前記磁性体の外周を囲むよう筒状に形成され、前記固定子の軸心と前記樹脂部材の軸心とが同一軸心上にあり、前記一対の磁石は、前記固定子の軸心方向視において、前記樹脂部材との当接面が円弧状に形成されると共に、前記樹脂部材の外周の曲率半径は、前記一対の磁石の円弧の曲率半径以上に形成されている。
請求項17記載の防振装置は、請求項1から16のいずれかに記載の防振装置において、前記可動子と前記ベース部材とを連結すると共に、ゴム状弾性材から構成される第5連結部材を備えている。
請求項18記載の防振装置は、請求項1から17のいずれかに記載の防振装置において、前記コイルは、前記ベース部材に対して固定されると共に、前記ベース部材に固定された状態で前記可動子との間に、前記固定子の軸心方向における前記可動子の可動範囲より広い可動許容範囲を有する大きさに形成されている。
請求項19記載の防振装置ユニットは、請求項1から18のいずれかに記載の防振装置と、前記防振装置が取り付けられた前記車体に生じる振動に基づく情報を検出する振動情報検出手段と、前記振動情報検出手段により検出された情報に応じて少なくとも前記コイルに流れる電流の方向を制御する制御手段とを備え、前記車体に生じる振動が減衰する方向に前記可動子を往復動作させ得るように構成されている。
請求項20記載の防振装置ユニットは、請求項19記載の防振装置ユニットにおいて、エンジンの回転情報を検出する回転情報検出手段を備え、前記制御手段は、少なくとも前記コイルに流れる電流の方向と前記コイルへの通電時間との関係が定められた出力パターンを予め記憶する記憶手段と、前記振動情報検出手段により検出された振動情報と、前記回転情報検出手段により検出された回転情報とに基づき、前記記憶手段から対応する出力パターンを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された出力パターンに応じて前記コイルに出力を行う出力手段とを備えている。
この請求項20記載の防振装置ユニットによれば、回転情報検出手段により検出されたエンジンの回転情報と、振動情報検出手段により検出された防振装置の振動情報に基づき、選択手段により記憶手段から対応する出力パターンが選択される。その選択された出力パターンに応じて、出力手段によりコイルに出力が行われる。よって、制御手段は、車体に生じる振動の振動情報に基づきコイルに流れる電流を制御できるので、実際の状態に応じて可動子を動作させることができる。
請求項21記載の防振装置の製造方法は、車体に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に固着され、少なくとも一部の外周部に磁性体を備える固定子と、前記固定子の軸心方向において前記固定子の磁性体に対応する位置に配設されると共に前記軸心方向に対して直交する第1の方向において前記固定子を挟むように形成される磁極部と、前記固定子を挟むように形成された磁極部のうち一方の前記磁極部の固定子と対向する面に一方の磁石が配設されると共に他方の前記磁極部の前記固定子と対向する面に他方の磁石が配設される一対の磁石とを有し、前記固定子に沿って1軸方向に往復動作可能に配設された可動子と、前記可動子の磁極部に巻回され、電流が流れることで励磁されるコイルと、前記固定子の磁性体に連結されゴム状弾性材からなる弾性部材と前記弾性部材に連結され樹脂材料からなる樹脂部材とを有し、前記可動子と前記ベース部材との間に隙間が形成されるように、前記固定子の磁性体と前記可動子の磁極部とを連結する第2連結部材とを備えた防振装置の製造方法であり、前記固定子の磁性体と前記樹脂部材との間に前記弾性部材を加硫接着して、前記磁性体と前記樹脂部材との間が前記弾性部材により連結された第1組付体を形成する連結工程と、前記連結工程により形成された前記第1組付体を、前記樹脂部材が前記可動子の一対の磁石と当接するように前記一対の磁石間に圧入して、前記樹脂部材と前記磁石とが固着された第2組付体を形成する圧入工程と、前記圧入工程により形成された前記第2組付体の前記固定子を前記ベース部材に対して螺着して、前記固定子が前記ベース部材に固着された第3組付体を形成する固着工程とを備えている。
この請求項21記載の防振装置の製造方法によれば、固定子の磁性体と樹脂部材との間に弾性部材が加硫接着されることで、弾性部材と樹脂部材とが固定子に一体に連結された第1組付体が形成される。その第1組付体は、可動子の磁石に樹脂部材が当接するように磁石間に圧入されることで、樹脂部材と可動子の磁石とが固着された第2組付体が形成される。その第2組付体の固定子とベース部材とが螺着されることで、固定子がベース部材に固着された第3組付体が形成される。
請求項22記載の防振装置の製造方法は、請求項21記載の防振装置の製造方法において、前記連結工程において前記弾性部材が加硫接着される前記固定子の磁性体と前記樹脂部材とは、前記固定子の磁性体が円柱状に形成されると共に、円柱状に形成された前記磁性体の外周を囲むように前記樹脂部材が筒状に形成され、前記連結工程は、前記固定子の軸心と前記樹脂部材の軸心とが同一線上となるように、前記固定子の磁性体と前記樹脂部材とを前記弾性部材により連結し、前記圧入工程により前記樹脂部材が圧入された場合に、筒状に形成された前記樹脂部材と当接する前記一対の磁石は、前記固定子の軸心方向視において、前記樹脂部材との当接面が円弧状に形成されると共に、前記圧入工程により前記一対の磁石間に圧入される前記樹脂部材の外周の曲率半径は、前記一対の磁石の円弧の曲率半径以上になる。
ここで、請求項1から22のいずれかにおいて、固定子の軸心方向は、可動子が固定子に対して1の方向に往復動作するよう構成されているので、可動子の往復動作方向と同一方向となる。
請求項1記載の防振装置によれば、コイルに流れる電流の方向を変えることで可動子の動作方向を変えることができるので、車両走行時の振動により変化する第1液室の液圧を制御して車体に生じる振動を減衰させることができるという効果がある。
また、磁極部が円筒状に構成されているので、減衰力を確保する、即ち、電磁力を確保するためには、磁極部を軸方向に大きくすれば良く、磁極部の外径を大きくする必要がない。これにより、走行時の上下振動に対する磁極部の耐久性を確保して、磁石の損傷を抑制しつつ電磁力の増大を図ることができるという効果がある。
また、コイルに流れる電流値の大きさやコイルを通電する時間を、コイルに流れる電流の方向と合わせて調整すれば、可動子の動作方向や動作速度などを容易に調整することができるので、防振装置の防振効果を向上することができるという効果がある。
また、可動子、固定子、コイル、連結部材が予めベース部材に取り付けられた状態となるので、ベース部材を車体に取り付けるだけで防振装置の取り付け工程が終わる。よって、防振装置の取り付け工程を簡略化することができるという効果がある。
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、固定子に対して往復動作する可動子の動作方向が第1液室に入力される振動の振動方向と平行に設定されているので、車両走行時の振動が入力された第1液室の液圧を可動子が効率良く制御できるという効果がある。
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1又は2に記載の防振装置の奏する効果に加え、可動子とゴム壁との間に介在する伝達部材のゴム壁側端部は、固定子の軸心方向と直交する第1の方向に張り出す張出部を備えると共に、その張出部の張出寸法は、第1液室の第1の方向に沿う平面の幅寸法よりも大きく設定されている。ここで、第1液室の液圧変化には、第1液室の第1の方向に沿う平面が大きな影響を及ぼすので、上記構成にすることにより、第1液室の液圧変化を確実に制御できるという効果がある。
また、張出部の張出寸法がゴム壁に埋設されるオリフィス形成金具の内径寸法よりも小さく設定されているので、張出部とオリフィス形成金具との間に介在されるゴム壁の有効長さを確保して、ゴム壁のひずみを抑制しつつ、その破断を防止することができるという効果がある。
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、磁極部に少なくとも一対の磁石が備えられ、その磁石は、第1の方向(固定子の軸心方向に対して直交する方向)に磁極の並びを逆にして配設されているので、一対の磁石の間に起磁力が発生する。また、その一対の磁石は、固定子の軸心方向に異なる磁極が並んでいるので、発生する起磁力の向きが相反する方向となる。よって、コイルが励磁されることで発生する起磁力を、磁石間で発生する起磁力と同じ方向にすれば可動子を動作させる駆動力を大きくすることができると共に、磁石間で発生する起磁力と反対方向にすれば駆動力を相殺することができる。従って、コイルに流れる電流の方向を変更して2つの起磁力の組み合わせを変更することにより、可動子の往復動作をスムーズに行うことができるという効果がある。
請求項5記載の防振装置によれば、請求項4記載の防振装置の奏する効果に加え、磁極部が第1の方向(固定子の軸心方向に対して直交する方向)において固定子を挟むよう形成され、一対の磁石が第1の方向線上に磁極の並びを逆にして配設されているので、磁極部間の距離と一対の磁石間の距離とがそれぞれ短くなる。よって、発生する各起磁力が大きくなり駆動力が大きくなるので、防振装置を小型化できるという効果がある。
請求項6記載の防振装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、連結部材により可動子と固定子とが連結された状態で、可動子とベース部材との間に隙間が形成されるので、可動子がベース部材に対して浮いた状態となる。よって、可動子が往復動作する場合に干渉する抵抗力(摩擦)が少なくなる。従って、可動子を効率よく動作させることができるという効果がある。
請求項7記載の防振装置によれば、請求項6記載の防振装置の奏する効果に加え、連結部材が板バネで構成され、可動子の往復動作方向の両端に配設されているので、防振装置の往復動作方向の厚みが厚くなることを低減することができる。よって、防振装置自体が大規模化することを低減することができるという効果がある。
また、可動子の両端に連結部材が配設されているので、往復動作方向の2箇所で可動子と固定子とを連結している。よって、1箇所で可動子と固定子とを連結する場合に比較して、可動子の動作方向のずれを低減することができる。よって、さらに正確に且つ効率よく可動子を動作させると共に、故障の発生を低減することができるという効果がある。
請求項8記載の防振装置によれば、請求項6又は7に記載の防振装置の奏する効果に加え、連結部材は、固定子と側壁のネジ部とにそれぞれ螺着されることで固定される。また、その固定子とネジ部とは、可動子の往復動作方向における位置が略同等であると共に、ネジ部が固定子の軸心に対して面対称に配置されているので、固定子とネジ部とが略直線上に位置する。よって、連結部材に作用する力の支点が直線上に等間隔に位置するので、連結部材の一部に極端に力がかかることを低減でき、連結部材が破損してしまうことを低減することができるという効果がある。
請求項9記載の防振装置によれば、請求項8記載の防振装置の奏する効果に加え、同一形状の2つの環状部が一体に連接されて連結部材が形成されているので、連結部材が複数の部材から形成される場合と比較して、組み付けの作業性を向上することができるという効果がある。
請求項10記載の防振装置によれば、請求項8又は9に記載の防振装置の奏する効果に加え、連結部材と側壁との間に、コイルに電流が流されていない状態からコイルに電流が流されて、固定子の軸心方向のうちいずれか一方へ可動子が動作した場合の動作距離より広い隙間が形成されているので、可動子が往復動作をしたとしても、可動子が板バネと接触して動作の妨げになることを低減することができる。よって、可動子をスムーズに動作させることができるという効果がある。
請求項11記載の防振装置によれば、請求項6から10のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、固定子がベース部材に固着される場合には、軸部と小径部とに形成される固定子の段差面とベース部材との間に挟持部材が挟持される。即ち、挟持部材の厚みによりベース部材と固定子の磁極部(ベース部材に対する可動子)の位置を決めることができる。よって、製作される防振装置毎に固定子の固着位置の誤差が少なくなるので、防振装置による防振効果の信頼性を向上することができるという効果がある。
請求項12記載の防振装置によれば、請求項4又は5に記載の防振装置の奏する効果に加え、可動子と固定子との対向面が少なくとも一部が弾性材で構成された第2連結部材により連結されるので、可動子と固定子との間に異物(粉塵など)が侵入することを低減できる。可動子と固定子との間に異物が侵入すると、その異物が可動子の動作抵抗となり、動作不良となったり故障の原因となる。しかし、本発明では、可動子と固定子との対向面を第2連結部材により連結することで、可動子と固定子との間に異物が侵入することを低減できるので、動作不良の発生や故障の発生を低減することができるという効果がある。
さらに、可動子と固定子との対向面が第2連結部材により連結されると、固定子の軸心方向に対して直交する方向における可動子と固定子との間の隙間が、その軸心方向と略直交する方向における第2連結部材の厚みとなり、略一定の距離を維持することができる。可動子は、固定子に対して往復動作するので、可動子が軸心方向からずれて斜め方向に動作すると、可動子と固定子とが衝突して故障の原因となったり正確な防振を行えない場合がある。しかし、第2連結部材により可動子と固定子との対向面を連結することにより、可動子と固定子との間の隙間を一定に維持できるので、可動子が斜め方向に動作することを低減でき、故障の発生を低減できると共に正確な防振を行うことができるという効果がある。
請求項13記載の防振装置によれば、請求項12記載の防振装置の奏する効果に加え、固定子の軸心方向視において、第3連結部材と第4連結部材とが固定子の軸心に対して点対称に配設されているので、第3及び第4連結部材による可動子の支持を固定子の周方向に均一とすることができる。よって、可動子が軸心方向に対して斜め方向にずれて動作することを低減でき、可動子と固定子とが衝突して故障することを低減できると共に、正確な防振を行うことができるという効果がある。
また、可動子と固定子との対向面を連結する第2連結部材を、固定子の軸心方向視において、固定子の全外壁を囲んでいないので、配設される第2連結部材を少なくすることができる。よって、防振装置を軽量化できると共に、製作コストを低減することができるという効果がある。
請求項14記載の防振装置によれば、請求項12記載の防振装置の奏する効果に加え、固定子の軸心方向において、固定子の磁性体の長さ又は可動子の磁極部の長さのうちの短い方の長さ以上に第2連結部材が形成されているので、可動子の磁性体と固定子の磁極部との軸心方向における対向面(隙間)が第2連結部材により埋められる。また、固定子の軸心方向視において、固定子の磁性体の全外壁を囲むように第2連結部材が形成されているので、軸心方向に対して直交する第1の方向における固定子の磁性体と可動子の磁極部との対向面も第2連結部材により埋められる。即ち、固定子の磁性体と可動子の磁極部との対向面は、第2連結部材により埋められ隙間が形成されないので、固定子の磁性体と可動子の磁極部との間に異物が侵入することを確実に防止することができるという効果がある。
また、第2連結部材が固定子の全外壁を囲むように形成されているので、固定子の所定位置にのみ第2連結部材を形成する場合と比較して、固定子の軸心方向視における第2連結部材の位置調整をしなくて良い。軸心方向視における第2連結部材の位置は、可動子を固定子に対してスムーズに往復動作させるために、固定子の軸心方向視において、軸心に対して点対称に配設することが好ましい。これは、可動子が軸心方向からずれて動作することを低減するためである。しかし、固定子の軸心方向視において、軸心に対して第2連結部材を点対称に配設することは、その第2連結部材の位置調整の作業が困難となり複雑な製作工程となってしまう。本発明では、固定子の磁性体の全外壁を第2連結部材が囲むので、固定子の周方向のどの位置においても、第2連結部材を軸心に対して点対称にすることができる。よって、可動子をスムーズに効率良く動作させることができると共に、固定子の磁性体と可動子の磁極部との対向面を第2連結部材により連結する製作工程を簡略化することができるという効果がある。
請求項15記載の防振装置によれば、請求項12から14のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、樹脂部材と弾性部材とが固定子に一体に連結され、その固定子に一体に連結された樹脂部材が一対の磁石間に圧入されて防振装置が組み付けられる。ゴム状の弾性材による連結方法の1つには加硫接着があるが、加硫接着は樹脂や金属に比べて磁石との接着が困難である。そのため、固定子の磁性体と一対の磁石とを弾性部材により直接加硫接着しようとした場合、接着不良による不良品の発生率が高くなる。しかし、固定子の磁極部と樹脂部材との間を弾性部材により連結するので、接着不良による不良品の発生を低減しつつ、加硫接着により固定子の磁極部と樹脂部材とを接着することができるという効果がある。
また、固定子の磁性体と可動子の磁石とを直接加硫接着する場合には、固定子と可動子とを配置可能な金型が必要となるので、その金型が大型になると共にその構造が複雑となり、金型製作のコストが高くなってしまう。しかし、固定子の磁性体と樹脂部材とが加硫接着されるので、固定子と樹脂部材とを配置可能な金型でよくなり、固定子と可動子とを配置する金型に比べて小規模にできると共に構造を簡略化できる。よって、金型製作のコストを低減することができるという効果がある。
また、樹脂部材と弾性部材とを固定子に一体に連結した後に、樹脂部材を磁石間に圧入することで組み付けられるので、単純な組み付け工程により防振装置の組み付けを行うことができるという効果がある。
また、磁極部の固定子と対向する面に、一対の磁石がそれぞれ配設されているので、一対の磁石間の距離が短くなる。磁石の磁力は、その磁石間の距離が短くなることに比例して大きくなるので、磁極部の固定子と対向する面に配設することで、磁石間に生じる磁力を大きくすることができるという効果がある。
請求項16記載の防振装置によれば、請求項15記載の防振装置の奏する効果に加え、樹脂部材の外周の曲率半径が一対の磁石の円弧の曲率半径以上に形成されている。例えば、樹脂部材の外周の曲率半径より磁石の円弧の曲率半径の方が大きいと、樹脂部材を一対の磁石間に圧入しても樹脂部材と一対の磁石とを固着できない。また、樹脂部材と磁石との当接面が平面で形成されていると、樹脂部材を磁石間に圧入する際に、固定子が傾いた状態で圧入されたり、圧入位置がずれてしまうこともある。
しかし、樹脂部材の外周の曲率半径が一対の磁石の円弧の曲率半径以上に形成されているので、樹脂部材を磁石間に圧入する場合に、樹脂部材は、磁石の円弧に沿って圧入されることとなり、固定子が傾いたり圧入位置がずれてしまうことを低減できると共に、樹脂部材と一対の磁石とを確実に固着することができるという効果がある。
また、円柱状に形成された固定子の軸心と、筒状に形成された樹脂部材の軸心とが同一軸心上にあるので、圧入する際の固定子の回転方向を位置決めしなくて良い。よって、固定子の圧入位置を正確に位置決めしなくても圧入作業が行えるので、製作工程を簡略化できるという効果がある。
また、固定子の磁石が円弧状に形成されているので、磁石が平板で形成されているものと比較して、小スペースで大きな磁石を配設することができる。よって、磁石の磁力を確保しつつ小規模化が図れるという効果がある。
請求項17記載の防振装置によれば、請求項1から16のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、第5連結部材が可動子とベース部材とを連結し、そのベース部材が車体に取り付けられるので、可動子を質量部材とすることができ、従来の防振装置と同様の構成となる。即ち、重りとなる質量部材を別に設けなくても良い。よって、防振装置自体が大きくなることを低減することができると共に製作コストを低減することができるという効果がある。
また、固定子がベース部材に固定されると共に、第5連結部材により可動子がベース部材に保持されるので、固定子と可動子との位置関係がずれることを低減することができる。可動子は、固定子に対して往復動作するので、斜め方向に可動子が動作すると、可動子と固定子とが衝突して故障の原因となったり、正確な防振を行えないことがある。しかし、可動子をベース部材に対して保持することで、上記弊害の発生を低減することができるという効果がある。
また、第5連結部材を備えると、可動子が往復動作するための抵抗力が増すが、可動子をベース部材に確実に保持することができる。この構成では、可動子を効率良く動作させつつ、可動子の動作方向がずれないように、請求項6記載の連結部材及び請求項12記載の第2連結部材と第5連結部材との弾性力などが選定される。よって、正確にかつ効率良く可動子を動作させると共に、故障の発生を低減することができるという効果がある。
請求項18記載の防振装置によれば、請求項1から17のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、コイルがベース部材に固定されているので、可動子が往復動作したとしても、コイルに接続される電線が切断されることを低減することができるという効果がある。
また、コイルの大きさは、可動子の可動範囲より可動許容範囲が大きくなるよう形成されているので、可動子がコイルに接触することがない。よって、防振装置の故障を低減することができるという効果がある。
請求項19記載の防振装置ユニットによれば、振動情報検出手段により検出された防振装置の振動に基づく情報に応じて、少なくともコイルに流れる電流の方向が決定される。よって、制御手段により防振装置の振動状態に応じて可動子の動作方向を調整できるので、正確な防振を行うことができるという効果がある。
請求項20記載の防振装置ユニットによれば、請求項19記載の防振装置ユニットの奏する効果に加え、防振装置の振動情報とエンジンの回転情報とに基づきコイルに流れる電流を制御手段が制御し、実際の状態に応じて可動子を動作させることができるので、防振効果をさらに向上させることができるという効果がある。
請求項21記載の防振装置の製造方法は、連結工程において、固定子の磁性体と樹脂部材とに弾性部材を加硫接着して磁性体と樹脂部材との連結を行う。加硫接着は、樹脂や金属に比べて磁石との接着が困難であるので、固定子の磁性体と磁石とを弾性部材により直接加硫接着しようとした場合、接着不良による不良品の発生率が高くなる。本発明の連結工程は、固定子の磁極部と樹脂部材との間を弾性部材により加硫接着するので、磁極部と樹脂部材とを確実に連結をすることができ、接着不良による不良品の発生を低減することができるという効果がある。
また、固定子の磁性体と可動子の磁石とを直接加硫接着する場合には、固定子と可動子とを配置可能な金型が必要となるので、その金型が大型になると共にその構造が複雑となり、金型製作のコストが高くなってしまう。しかし、固定子の磁性体と樹脂部材とが加硫接着されるので、固定子と樹脂部材とを配置可能な金型でよくなり、固定子と可動子とを配置する金型に比べて小規模にできると共に構造を簡略化できる。よって、連結工程により用いられる金型製作のコストを低減することができるという効果がある。
さらに、樹脂部材と弾性部材とを固定子に一体に連結した後に、樹脂部材を一対の磁石間に圧入することで、樹脂部材と可動子の磁極部との固着が行えるので、防振装置の製作工程の1つを、単純な圧入工程とすることができるという効果がある。
請求項22記載の防振装置の製造方法は、請求項21記載の防振装置の製造方法の奏する効果に加え、樹脂部材の外周の曲率半径が一対の磁石の円弧の曲率半径以上に形成されている。例えば、樹脂部材の外周の曲率半径より磁石の円弧の曲率半径の方が大きいと、樹脂部材を一対の磁石間に圧入しても樹脂部材と一対の磁石とを固着できない。また、、樹脂部材と磁石との当接面が平面で形成されていると、樹脂部材を磁石間に圧入する際に、固定子が傾いた状態で圧入されたり、圧入位置がずれてしまうこともある。
しかし、樹脂部材の外周の曲率半径を一対の磁石の円弧の曲率半径以上に形成されているので、樹脂部材を磁石間に圧入する場合に、樹脂部材は、磁石の円弧に沿って圧入されることとなり、固定子が傾いたり圧入位置がずれてしまうことを低減できると共に、樹脂部材と一対の磁石とを確実に固着することができる。よって、圧入工程により不良品の発生を低減することができるという効果がある。
また、円柱状に形成された固定子の軸心と、筒状に形成された樹脂部材の軸心とが同一軸心上にあるので、圧入する際の固定子の回転方向を位置決めしなくて良い。よって、固定子の圧入位置を正確に位置決めしなくても圧入を行えるので、圧入工程を簡略化できるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の1実施例におけるアクチュエータ1の取り付け状態を概略的に示した斜視図である。
なお、本実施例では、本発明の適用対象のアクチュエータ1として、FF型自動車(以下「自動車」と略す)のエンジン10を支持するフレーム13に取り付けられたアクチュエータ1について説明する。
まず、アクチュエータ1の取り付け状態について説明する。アクチュエータ1の周辺には、自動車の駆動力を発生するエンジン10と、そのエンジン10にボルト11a,11b,11cにより取り付けられる取り付け金具11と、その取り付け金具11にボルト12aにより取り付けられるエンジンマウント12と、そのエンジンマウント12がボルト12b,12c,12d,12eにより取り付けられるフレーム13と、そのフレーム13に配設される加速度センサ14とが備えられている。アクチュエータ1は、ボルト1a,1bによりフレーム13に取り付けられる。
なお、加速度センサ14は、フレーム13が振動する場合の加速度を計測するものであり、アクチュエータ1は、その加速度センサ14により計測される加速度に基づきフレーム13の振動を減衰させるものである。この加速度センサ14は、アクチュエータ1の近傍に配設されており正確な防振を行うことができるよう構成されている。
また、エンジンマウント12は、例えば、エンジン10を支持固定しつつ、そのエンジン10から発生する振動をフレーム13へ伝達させないよう構成された液封入式の防振装置である。即ち、エンジンマウント12は、エンジン10により発生した振動をフレーム13へ伝わることを防振している。このエンジンマウント12は、エンジン12側に取り付けられる第1取付具501と、フレーム13側に取り付けられる筒状の第2取付具502と、第1取付具501と第2取付具502とを連結しゴム状弾性材から構成される防振基体503とを主に備えて構成されている。なお、エンジンマウント12の詳細については後述する(図9参照)。
次に、図2及び図3を参照して、アクチュエータ1の詳細な構造について説明する。図2は、アクチュエータ1の外観を示した斜視図である。図3は、図2のIII−III線におけるアクチュエータ1とフレーム13との断面図である。
アクチュエータ1は、フレーム13にボルト1a,1bにより取り付けられるベース板20と、そのベース板20に基端部(図3の紙面視下側)がナット21により螺着され、ベース板20に対して固定される略円柱状の固定子22と、その固定子22の軸心方向A(図3における上下方向)における略中間部に固着される磁性体部23と、固定子22の外周を囲むと共に固定子22の軸心方向Aに往復動作可能な可動子24と、可動子24の一部であり固定子22を挟んでその固定子22側に相対的に突出した磁極部25と、その磁極部25を巻回すると共にベース板20に固定されるコイル26と、可動子24及びベース板20の間を連結する連結部27とを備えている。
磁性体部23は、電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略円盤状の金属23aを積層して構成されている。可動子24は、同様に電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略環状(磁極部25を形成する相対的に突出した突出部を備える)の金属24aを積層して構成されている。
連結部27は、ゴム状弾性材料から構成され、可動子24の4つの側壁のうち対向する2つの側壁とベース板20とをそれぞれ加硫接着により連結している。なお、本実施例では、連結部27を可動子24の2つの対向する側壁とベース板20とを連結するものとしたが、可動子24のベース板20との対向面全てを連結するものとしても良い。また、防振を行うために必要となる弾性力に応じて、材質(例えば、ゴム硬度)および大きさ(例えば、厚み及び幅)を変えるものとしても良い。
可動子24の磁極部25の先端(固定子22の磁性体部23との対向面)には、円弧状の一対の永久磁石28が配設されている。永久磁石28の磁極(S極およびN極)は、固定子22の軸心方向Aに隣り合って異極をなして構成されている(図6又は図7参照)。
図3の紙面視左側の永久磁石28は、ベース板20側の磁性体部23と対向する面側がN極となると共にその反対面側(磁極部25側)がS極となる永久磁石28aと、ベース板20から離れた方(図3の紙面視上側)の磁性体部23と対向する面側がS極となると共にその反対面側(磁極部25側)がN極となる永久磁極28bとを備えている。
一方、図3の紙面視右側の永久磁石28は、ベース板20側の磁性体部23と対向する面側がS極となると共に反対面側(磁極部25側)がN極となる磁極28bと、ベース板20から離れた方(図3の紙面視上側)の磁性体部23と対向する面側がN極となる共に反対面側(磁極部25側)がS極となる永久磁極28aとを備えている。
よって、軸心方向Aに対して直交する方向(図3の矢印B方向)において対向配設された永久磁石28は、その矢印B方向に磁極が逆になるよう配設されている。従って、一対の永久磁石28の間には、上下で相反する方向の起磁力が発生する。なお、このように永久磁石28が配設されると、磁性体部23及び磁極部25は、永久磁石28のN極と対向する側がN極に帯磁すると共に永久磁石28のS極と対向する側がS極に帯磁する(図6又は図7参照)。
図3の紙面視左右に配設されたコイル26は互いに電気的に導通しており、一方向の電流が流される。また、コイル26は磁極部25を巻回しているので、コイル26に電流が流されるとコイル26の周りに磁界が形成され、その結果、一対の永久磁石28間を磁束が通り起磁力が発生する。なお、コイル26は、ベース材20に固定されているので、可動子24が往復動作したとしても、コイル26に結線された配線が断線することを低減できる。
また、コイル26は、軸心方向Aにおいて可動子24の動作許容範囲t1(図3参照)を有する大きさに形成されている。これは、コイル26がベース板20に固定されているのに対して、可動子24が軸心方向Aに動作するためであり、その可動子24の動作範囲t2(図3参照)を確保するための空間である。
ここで、図4を参照して、コイル26に接続される電気回路図について説明する。図4は、アクチュエータ1の電気的な接続を示した電気回路図である。なお、アクチュエータ1は、概略的に示されており、コイル26が簡易的な導線で示されている。
制御部30は、コイル26に流される電流の方向を制御するものである。制御部30には、演算装置であるCPU31と、CPU31により実行される各種の制御プログラムや固定値データが記憶されたROM32と、そのROM32内に記憶される制御プログラムの実行に際して各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM23とが搭載されている。
また、制御部30の入力側には、加速度センサ14とエンジン回転数検出センサ40とが接続されている。加速度センサ14からは、フレーム13が振動した場合の加速度が検出されその信号が入力される。エンジン回転数検出センサ40からは、エンジン10の回転数が検出されその信号が入力される。
制御部30の出力側には、コイル26に電流を流すアンプ41が接続されている。アンプ41は、制御部30からの指示を受信すると、その指示に応じて電流の方向を変えたり、通電の切り替え(オン/オフ)を行ったりするものである。
なお、ROM32には、アンプ41への出力パターンが設定されたテーブルが予め記憶されている。このテーブルは、エンジン回転数検出センサ40から入力されるエンジン回転数と、加速度センサ14から入力される加速度とに応じた出力パターンが設定されている。また、アンプ41への出力は、コイル26に流れる電流の方向や通電時間などの情報である。
アンプ41は、コイル26の両端と接続されており、コイル26に電流を流すものである。また、制御部30からの指示に応じて、コイル26へ流れる電流をオン/オフ(通電時間の調整)したり、電流の流れる方向を変更したりする。
また、図4には、白抜き矢印が示されており、その白抜き矢印の方向が一対の永久磁石28間に発生する起磁力の向きを示している。即ち、永久磁石28の間は、永久磁石28aから永久磁極28bの方向へ起磁力が発生するので、その方向は図4の紙面視上下で相反する方向にある(図4上側に右側から左側への起磁力が発生し、図4下側に左側から右側への起磁力が発生する)。
次に、図5〜図7を参照して、制御部30により制御されるアクチュエータ1の動作について説明する。図5は、制御部30のCPU31により実行されるメイン処理を示したフローチャートである。図6は、コイル26に電流を正方向に流した場合のアクチュエータ1の作用を示した説明図である。図7は、コイル26に電流を負方向に流した場合のアクチュエータ1の作用を示した説明図である。
なお、図6及び図7のコイル26の断面において、「×」と「・」が示されているが、これは電流の流れる方向を示している。即ち、図6であれば、紙面垂直方向奥側を通り下側方向に電流が流されている。本実施例では、この場合を正方向に電流が流されているものとする。一方、図7であれば、下側から紙面垂直方向奥側を通り上側方向に電流が流され、負方向に電流が流されているものとする。また、磁極部25の断面における「×」と「・」は、コイル26に電流が流された場合に発生する磁束の向きを示している。即ち、図6であれば、左側から紙面垂直方向奥側(及び図示しない紙面垂直方向手前側)の可動子24を通り右側へ流れ、右側から永久磁石28間を通り左側に磁束が流れる。一方、図7であれば、右側から紙面垂直方向奥側(及び図示しない垂直方向手前側)の可動子24を通り左側へ流れ、左側から永久磁石28間を通り右側に磁束が流れる。
図5に示したメイン処理は、電源投入時のリセットにより起動される。電源投入とは、図示しないキーが操作されてACC(各装置への電源供給が行われた)状態にされた場合と、ONされてエンジン10が始動開始した場合の両方の状態を意味する。電源が投入されると、電源投入に伴う初期設定処理(図示せず)を実行する。この初期設定処理において、ROM32に記憶された情報(プログラムや出力パターンのテーブルなど)が読み出され、RAM33に記憶される。
メイン処理は、まず、エンジン10が始動しているか否かを判別する(S101)。エンジン10が始動していなければ(S101:No)、自動車が停止していることになりエンジン10による振動がフレーム13に伝わらないので、フレーム13の振動を防振するためのS102〜S104の処理を行わずにS105の処理へ移行する。
一方、S101の処理でエンジン10が始動していると判別すると(S101:Yes)、エンジン回転数検出センサ40と加速度センサ14とからの情報を取得する(S102)。加速度センサ14からの情報は、フレーム13が振動した場合の加速度が入力される。エンジン回転数検出センサ40からの情報は、エンジン10の回転数が入力される。
S102の処理で各入力情報(エンジン回転数と加速度)の取得が終わると、その取得された入力情報に応じた出力パターンが選択される。この出力パターンの選択は、上述したROM32に予め記憶された出力パターンのテーブルから適宜選択される。
その後、出力パターンに基づきアンプ41に指示をし(S104)、その他の処理を実行する(S105)。その他の処理は、自動車を走行させるための各処理などであるが、アクチュエータ1の制御ではないため詳細な説明は省略する。
ここで、S104の処理でアンプ41へ指示がなされ、アンプ41がコイル26に正方向または負方向に電流を流した場合のアクチュエータ1の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
図6に示すように、コイル26に正方向の電流を流すと、コイル26の周りに2点鎖線矢印の方向に磁界が発生し、その結果永久磁石28の間を磁束が通り、起磁力が矢印C方向に発生する。この場合、上側の永久磁石28の起磁力の向き(図6上側の白抜き矢印、右側から左側方向)と、コイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図6矢印C)とが同一方向となり、磁束が合成されて起磁力が強まる。
一方、下側の永久磁石28の起磁力の向き(図6下側の白抜き矢印、左側から右側方向)とコイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図6矢印C)とが反対になって、両者の起磁力が相殺されて弱まる。その結果、固定子22が上側の永久磁石28間に引きつけられる力が働き、固定子22が固定されていることから可動子24へ下向きの力(図6黒塗りの矢印)が作用し、可動子24が下方向に動作する。
図7に示すように、コイル26に負方向の電流を流すと、コイル26の周りに2点鎖線矢印の方向に磁界が発生し、その結果永久磁石28の間を磁束が通り、起磁力が矢印D方向に発生する。この場合、下側の永久磁石28の起磁力の向き(図7下側の白抜き矢印、左側から右側方向)と、コイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図7矢印D)とが同一方向となり、磁束が合成されて起磁力が強まる。
一方、上側の永久磁石28の起磁力の向き(図7上側の白抜き矢印、右側から左側方向)とコイル26に電流が流されることで発生する起磁力の向き(図7矢印D)とが反対になって、両者の起磁力が相殺されて弱まる。その結果、固定子22が図7下側の永久磁石28間に引きつけられる力が働き、固定子22が固定されていることから可動子24に上向きへの力(図7黒塗りの矢印)が作用し、可動子24が上方向に動作する。
以上、説明したように、コイル26に流れる電流の向きを変更することで、可動子24を上下(1軸)方向に往復動作させることができる。また、制御装置30により、可動子24の動作方向が制御される。即ち、制御部30は、加速度センサ14により検出された加速度からフレーム13の振動した方向や振動の大きさを知ることができ、そのフレーム13の振動を相殺する方向に可動子24を動作させることができる。よって、フレーム13の振動に応じて防振することができる。従って、自動車の車内に振動が伝わることを低減でき、運転者に不快感を与えることを低減することができる。
また、フレーム13の振動に基づく入力だけでなく、エンジン回転数検出センサ40からエンジン10の回転数が入力され、その回転数とフレーム13の振動とに基づき、可動子24の動作を制御している。これにより、エンジン10の回転数に対応して発生する振動を予測可能となるので、正確な防振を行うことができる。
特に、フレーム13に伝達される共振周波数が歪んだ波形(正弦波でない波形)である場合では、1方向のみ動作するアクチュエータや制御部を備えない防振装置では、正確に防振することが困難となる。しかし、アクチュエータ1が往復動作方向に動作可能であると共に、エンジン回転数検出センサ40及び加速度センサ14の入力に応じて往復動作を制御部40で制御できるので、共振周波数が歪んだ波形であったとしても、その振動を防振することができる。さらに、可動子24の動作を電流値の大きさに応じて変化させることができるので、ソレノイドなどを用いるアクチュエータと比較して、滑らかな動作をさせることができる。
また、可動子24が重りの代わりとなるので、別に質量部材を備える必要がない。さらに、一対の永久磁石28が軸心方向Aに異なる磁極が隣り合って配設されると共に、矢印B方向に磁極が逆になるよう配設され、コイル26に電流を流すことでその一対の永久磁石28の間に起磁力を発生させる構成であるので、複数のコイルや永久磁石を備えなくても可動子24を往復動作させることができる。よって、アクチュエータ1自体を小規模化できると共に製作コストを低減することができる。
また、可動子24、固定子22、コイル26、連結部27が予めベース板20に取り付けられた状態となるので、ベース板20をフレーム13に取り付けるだけでアクチュエータ1の取り付け工程が終わる。よって、アクチュエータ1の取り付け工程を簡略化することができる。
次に、図8から図10を参照して、第2実施例のアクチュエータ101について説明する。第1実施例のアクチュエータ1は、ベース板20に連結部27を介して可動子24が取り付けられる構成としたが、これに対して、第2実施例のアクチュエータ101は、固定子122に板バネ152を介して可動子124が連結される構成となっている。なお、第1実施例と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図8は、第2実施例の防振装置100の外観を示した図であり、図8(a)は、上面図であり、図8(b)は、正面図であり、図8(c)は、下面図である。
図8(a)に示すように、下部筒金具521及び上部筒金具522は円形状に構成され、上部筒金具522が上部筒金具522より大径の下部筒金具521に圧入固定されている。なお、かかる圧入固定時において、上部筒金具522の軸心は下部筒金具521の軸心と同一軸心上に配置される。
また、上部筒金具522が下部筒金具521に圧入された状態では、張出部521dに穿設された貫通孔521eを結ぶ仮想線上に第1取付具501の軸心が配置される。
図8(b)に示すように、アクチュエータ101(図10参照)は、下部筒金具521及び上部筒金具522により覆われている。これにより、アクチュエータ101の耐熱性を高めることができると共に、粉塵などの侵入を低減することができる。従って、可動子124と固定子122との間に粉塵などが侵入することを低減できるので、粉塵などにより可動子124の動作不良が起きることを低減することができる。
なお、本実施例における第1取付具501及び防振基体503は、それら第1取付具501及び防振基体503の外面が露出した状態で構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、金属材料や樹脂材料等により構成されるケース部材を第1取付具501及び防振基体503に覆設しても良い。これにより、エンジン10からの熱を遮断することができるので、第1取付具501及び防振基体503の耐熱性の向上を図ることができる。また、エンジン10からオイルが漏出した場合に、そのオイルが第1取付具501及び防振基体503に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
図8(c)に示すように、上部筒金具522が下部筒金具521に圧入された状態では、鍔部120bに穿設された貫通孔102cを結ぶ仮想線上に固定子122の軸心、即ち、アクチュエータ101の軸心が配置されている。
図9は、第2実施例のアクチュエータ101の外観を示した図であり、図9(a)は、上面図であり、図9(b)は、正面図である。
図9(a)に示すように、アクチュエータ101は、ベース板120と、そのベース板120に固定される固定子122と、その固定子122に固着される磁性体部123と、固定子122の軸心Oに沿う方向(図10参照)に往復動作する可動子124と、その可動子124の一部であり固定子122を挟んでその固定子122側に相対的に突出した磁極部125と、その磁極部125の周りに巻回されると共にベース板120に固定されるコイル126と、可動子124と固定子122との間を連結する板バネ152とを主に備えている。
固定子122は、磁性体部123が固着される軸部122aと、その軸部122aより小径に形成されると共に固定子122の両先端部に形成される小径部122b,122cとで構成されている。よって、固定子122は、軸部122aと小径部122b,122cとの径の差により段差面122b1,122c1(図10参照)が形成される。
固定子122は、小径部122c(及び段差面122c1)がベース板120側(図10の下側)になると共に、小径部122b(及び段差面122b1)がベース板120側に対して反対側(図10の上側)になるようベース板120に固定されている。また、小径部122b,122cは、板バネ152をナット121b,121cにより挟持するためのネジ溝が螺刻されている。さらに、小径部122cは、板バネ152を挟持するだけでなく、ベース板120にも螺着されるので、そのベース板120に螺着するのに必要な長さ分、小径部122bより長く形成されている。
可動子124は、図9(a)に示す上面視において略四角形に形成されており、磁性体部123に向かって磁極部125が突出して形成されている。また、磁極部125の磁性体部123との対向面には、第1実施例と同様に、軸心方向Eに異極(永久磁石128a(S極),128b(N極))をなすと共に軸心方向Eと略直交する方向に異極(永久磁石128a(S極),128b(N極))をなすよう永久磁石128がそれぞれ配設されている(図10参照)。なお、可動子124には、ベース板120の貫通孔120c,120cを結ぶ直線方向(図9(a)の左右方向)外方に突起した突起部124a(図9(b)参照)が形成されると共に、四隅が面取りされた面取り部124b(図9(b)参照)が形成されている。
図9(b)に示すように、可動子124の上下方向(図9(b)上下方向)における外縁部分には、その上下方向両側にそれぞれ立設された側壁150が備えられている。上下方向両側の側壁150は、可動子124の突起部124aから上下方向に突設した突設部151と、面取り部124bの一部を囲むように対向する側壁150方向に延びた延設部153とを備えている。突設部151は、一端側が突設部151よりも小径の小径部151aを備えている。また、小径部151aは、板バネ152及び皿部材516をナット155により挟持するためのネジ溝が螺刻されている(図10参照)。なお、突設部151は、固定子122の軸心に対して面対称に配置されているので、図9(a)に示す上面視において、固定子122と突設部151(小径部151a)とが略直線上に位置している。
延設部153は、可動子124と上下方向両側の側壁150とを一体に固定するために、一方の側壁150の延設部153(図9(b)上側の側壁150)にネジ154を挿通する挿通孔(図示せず)が形成されると共に、他方の側壁150の延設部153(図9(b)下側の側壁150)にネジ154が螺着されるネジ溝(図示せず)が螺刻されている。よって、上下方向両側の側壁150は、ネジ154が一方の延設部153の挿通孔に挿通され、他方の延設部153のネジ溝に螺着されることで、可動子124を挟んだ状態で強固に固定される。また、上下方向両側の側壁150は、可動子124の面取り部124bが形成された4箇所(可動子124の四隅)において固定されている。なお、挿通孔が形成された延設部153(図9(b)上側の側壁150)には、ネジ154の頭部を収納可能な凹状の座ぐり部153aが形成されている。よって、ネジ154の頭部が側壁150の端面から板バネ152方向に突出して、板バネ152に干渉することを防止している。
図9(b)に示すように、可動子124の往復動作方向の両端には、板バネ152が配設されている。また、図9(a)に示すように、板バネ152は、2つの略環状を有して一体に構成されている。その環状は、固定子122の軸心方向E視において、側壁150の外縁に沿った形状の外縁部152aと、その外縁部152aから固定子122方向に湾曲して延設された湾曲部152bとで構成されている。図9(a)右側の湾曲部152bと、図9(a)左側の湾曲部152bとは、固定子122に螺着される連接部152c(図9(b)参照)で一体に連接されている。板バネ152は、環状に形成されているので、軸心方向E(図10参照)視において可動子124の全体を閉塞する平板状の板バネを用いる場合と比較して、板バネ152の重量を軽量化することができる。また、板バネ152が一体に形成されているので、複数の板バネを取り付ける場合と比較して、組み付け作業を簡略化することができる。
また、ベース板120側の反対側(図10上側)に配設される板バネ152は、固定子122の段差面122b1とナット121bとの間に挟持されると共に、突設部151の段差面とナット155(皿部材516)との間に挟持されて固定されている。なお、突設部151の段差面と板バネ152との間には、中空状に形成された中空部材156が挟持されており、板バネ152の軸心方向Eにおける位置が水平となるように構成されている(図10参照)。
板バネ152の固定は、具体的には、小径部122bに板バネ152のネジ孔(図示せず)を挿通し、その後、小径部122bにナット121bを螺着する。また、小径部151aに中空部材156、板バネ152、そして皿部材516の順に挿通し、その後、小径部122bにナット155を螺着する。よって、板バネ152と側壁150との間には、中空部材156の厚み分の隙間t4が形成される。
ベース板120側(図9(b)の下側)の板バネ152は、ベース板120側の反対側に配設された板バネ152と同様に、突設部151の段差面とナット155との挟持により固定される。
図10は、第2実施例における防振装置100の断面図である。上述したように、エンジンマウント12は、エンジン10(図1参照)を支持固定しつつ、そのエンジン10により発生した振動をフレーム13(図1参照)へ伝わることを防振するためのものであり、エンジン10側(図10上側)に取り付けられる第1取付具501とフレーム13に取り付けられる第2取付具502とをゴム状弾性材からなる防振基体503を介して連結し、第2取付具502内に防振基体503と対向して円板状のゴム壁505を設け、防振基体503とゴム壁505との間を第1液室504として形成している。この第1液室504は、これとは別に設けたダイヤフラム507が室壁の一部をなす第2液室506とオリフィス508により連通接続せしめられている。
そして、第1液室504の室壁の一部をなすゴム壁505には、加振手段としてのアクチュエータ101が第1液室504とは反対側(図10下側)から連結されており、ゴム壁505を加振変位させることにより第1液室504の圧力を制御するように設けられている。なお、アクチュエータ101は、後述のように第2取付具502及び皿部材516に固定されて設けられる。
第1取付具501は、上下方向(図10上下方向)の略中央部に外方へ張り出したフランジ501aを有し、そのフランジ501aの上面にまで防振基体503と一体のゴム層503aが加硫接着手段により装設されている。第1取付具501には、その軸心Oの上方に開口するねじ孔501bを有し、そのねじ孔501bに連結ボルト(図示せず)が螺合されることによりエンジン10に連結されるようになっている。なお、第1取付具501のフランジ501aの上にストッパ金具を装着する場合もある。
第2取付具502は、下部筒金具521と上部筒金具522とからなる。下部筒金具521は、加振手段であるアクチュエータ101(ベース板120)を保持する張出部521dに下部側筒部521a及び傾斜部521bを介して大径の上端側筒部521cが連続して形成されており、この上端側筒部521cに上部筒金具522の下部が圧入固定されている。そして、上部筒金具522の内方において、後述のように第1液室504、第2液室506及びオリフィス508等が組み込み構成されている。
なお、第2取付具502は、後述する筒状金具510及びダイヤフラム507等を介して防振基体503に連結される。
防振基体503は、底部側が中空の円錐台形状に形成されてなり、その上端部に第1取付具501が下部側を埋設した状態に加硫接着されている。
防振基体503の下端部には、第1液室504の外周壁を構成する筒状金具510のテーパ状の上部510a、即ち、図10に示したように上方に向かって漸次拡開したテーパ状をなす上部510aが加硫接着されており、筒状の下部510bが下方のゴム壁505の部分にまで延び、第1液室504の外周壁をなしている。
筒状金具510の外方には、その筒状金具510を囲む比較的薄肉のゴム膜よりなり、かつ、軸心O方向(図10上下方向)の中央部が内方に膨出したくびれ形状をなすダイヤフラム507が配設されている。このダイヤフラム507の上端部及び下端部には、それぞれ筒状の補強金具571,572が加硫接着されている。また、図10に示すように、上端部の補強金具571の外周面及び下端部の補強金具572の内周面に、それぞれダイヤフラム507と一体の薄いゴム層571a,572aが加硫接着され装設されている。上端部の補強金具571は、筒状金具510の上端部510a1の外周に圧入手段により嵌着固定されると共に、この筒状金具510の上端部510a1が、補強金具571と共に第2取付具502の上部筒金具522の上端部に嵌着固定されている。
また、ゴム壁505の外周部には、径方向外方に向かって開口した周方向の凹溝状をなす環状のオリフィス形成金具511が加硫接着されている。このオリフィス形成金具511の上面及び下面にはゴム壁505と一体の薄いゴム層505a,505bが設けられている。このオリフィス形成金具511は、その外周にダイヤフラム507の下端部の補強金具572がゴム層572aを介して嵌着されると共に、補強金具572と共に上部筒金具522の下部内周に嵌着固定されて、一体的に組み付けられており、この状態において、オリフィス形成金具511の部分の上面に筒状金具510の下端がシール状態を保持するように接した状態に保持されている。
特に、上部筒金具522の内周面には、シール用ゴム層522aが加硫接着されており、そのシール用ゴム層522aを介してダイヤフラム507の上端部及び下端部の補強金具571,572がそれぞれ嵌着されている。
こうして組み付けられることにより、筒状金具510とダイヤフラム507との間が第2液室506として形成され、ダイヤフラム507と上部筒金具522との間が空気室513として形成されている。さらに、オリフィス形成金具511の凹溝部分が、連通部508a,508bにより第1液室504と第2液室506とを連通させるオリフィス508として形成されている。
そして、上述した組み付け状態において、上部筒金具522の下部が、第2取付具502の下部筒金具521の上端側筒部521cに圧入固定されて組み立てられる。
ゴム壁505の軸心O中央部には、上端が外方へ向けて張り出す張出部515aを備える略T字状の伝達部材515が埋設され、その伝達部材515の軸心Oに穿設される連結孔515bに連結ボルト517が螺合されることで、皿部材516を介してアクチュエータ101が支持される。
皿部材516は、軸心方向E視において円形の深皿状部材であり、その中心には、連結ボルト517を挿通するための第1挿通孔が穿設されると共に、周縁部には、小径部151aを挿通するための第2挿通孔が穿設されている。そして、第1挿通孔に連結ボルト517を挿通すると共に、第2挿通孔が小径部151aに挿通させつつナット155で挟持することで、皿部材516を介してアクチュエータ101がエンジンマウント12に支持される。
なお、上述したように、固定子122の軸心方向Eにおいて、板バネ152の固定位置が水平になると共に、軸心方向Eと直交する方向において、固定子122と突設部151とが直線上に等間隔に位置するので、板バネ152が弾性変形した場合に、その弾性力が作用する支点が等間隔となる。よって、板バネ152の一部分にのみ極端に力がかかることがないので、板バネ152の破損を低減することができる。
ここで、可動子124とベース板120との位置関係について説明する。図10に示すように、可動子124とベース板120との間には、隙間t3が形成されている。この隙間t3は、ナット121cの厚みと略同等に形成されている。
固定子122とベース板120との固定は、板バネ152により固定子122と可動子124とを連結した後に、ベース板120のネジ孔(図示せず)に固定子122の小径部122cを挿通し、その小径部122cにナット121aを螺着することで行われる。ナット121aの螺着は、ナット121cがベース板120に当接する位置までナット121aを締め付けることで行われる。
よって、板バネ152が固定子122の段差面122b1,122c1とが当接するよう固定されるので、固定子122と可動子124との軸心方向Eにおける固定位置が決められ、ナット121cがベース板120と当接するよう固定されるので、固定子122とベース板120との軸心方向Eにおける位置が決められる。従って、固定子122と可動子124との位置およびベース板120と可動子124との位置(隙間t3)が、組み付け工程において製品毎にばらつくことを低減できるので、大量に生産された場合であっても、製品の信頼性が低下することを防止できる。
次に、板バネ152の動作について説明する。可動子124が固定子122の軸心方向Eに往復動作すると、その動作に伴って板バネ152が軸心方向Eに弾性変形する。なお、図10に示すように、コイル126に電流が流されていない状態からコイル126に電流が流されて、可動子124が軸心方向Eのうちいずれか一方へ動作した場合の動作距離t5より、側壁150と板バネ152との間に形成される隙間t4の方が広く構成されている。よって、可動子124が往復動作して、板バネ152が弾性変形した場合に、側壁150が板バネ152と接触することがない。また、第1実施例で説明したように、コイル126と可動子124との間に形成される可動許容範囲t1と可動子124の可動範囲t2とは、t2<t1の関係となるので、可動子124がコイル126に接触することもない。よって、可動子124の動作をスムーズに行うことができる。
以上、説明したように、第2実施例のアクチュエータ101は、可動子124と固定子122とが板バネ152により連結されており、可動子124とベース板120との間に隙間t3が形成されているので、可動子124が往復動作をする場合に干渉する抵抗(摩擦)が少なくなる。よって、可動子124を効率良くスムーズに動作させることができる。
また、可動子124の振動は、皿部材516及び伝達部材515を介して、第1液室504に伝達される。これにより、エンジン10(図1参照)の振動により第1液室504の液圧が変化した場合に、その第1液室504の液圧変化に応じて可動子124を動作させて第1液室504の液圧を制御することができる。その結果、エンジン10の振動を低減することができ、運転者に不快感を与えることを低減することができる。
また、図10に示すように、永久磁石128は、その長手方向が軸心方向Eに沿う円筒状に構成されているので、減衰力を確保する、即ち、電磁力を確保するためには、永久磁石128を軸心方向Eに大きくすれば良く、永久磁石128の外径を大きくする必要がない。これにより、エンジン10から入力される上下方向(図10上下方向)の振動に対する永久磁石128の耐久性を確保して、永久磁石128の損傷を抑制しつつ電磁力の増大を図ることができる。
なお、張出部515aの軸心Oと直交する方向(図10左右方向)の張出寸法t6は、第1液室504の軸心Oと直交する平面の幅寸法t8よりも大きく設定されている。ここで、第1液室504の液圧変化には、第1液室504の軸心Oと直交する平面が大きな影響を及ぼす。そのため、上記構成にすることにより、第1液室504の液圧変化を確実に制御することができる。
また、張出部515aの張出寸法t6は、オリフィス形成金具511の内径寸法t7よりも小さく設定されている。これにより、張出部515aとオリフィス形成金具511との間に介在されるゴム壁505の有効長さを確保できるので、ゴム壁505のひずみを抑制して、ゴム壁505の破断を防止することができる。
更に、張出部515aの張出寸法t6は、第1液室504の軸心Oと直交する方向の幅寸法Wの0.5倍以上かつ0.8倍以下の範囲内に設定することが望ましい。
ここで、張出部515aの張出寸法t6は、第1液室504の軸心Oと直交する方向の幅寸法Wの0.5倍以上に設定することで、軸心方向Eのストロークを確保することを不要とする。
即ち、張出寸法t6が幅寸法Wの0.5倍よりも小さく設定されている場合には、第1液室504の液圧を制御するための軸心方向Eのストロークを多く確保する必要が生じる。これに対し、上記構成では、軸心方向Eのストロークを多く確保することが不要となるので、アクチュエータ101の小型化及び軽量化を図り、その分、防振装置100全体として小型化及び軽量化を図ることができる。
また、ゴム壁505内に埋設される張出部505aの量が大きくなるので、その分、ゴム壁505全体の剛性を確保することができる。その結果、オリフィス508を介して第1及び第2液室504,506を連通させることで共振効果を確保する場合に、ゴム壁505が下方へ押出されることを抑制して、共振効果を効率良く確保することができる。
一方、張出寸法t6は、幅寸法Wの0.8倍以下に設定することで、一定量のストロークを確保することができる。即ち、張出寸法t6が幅寸法Wの0.8倍よりも大きく設定されている場合には、第1液室504の液圧を制御するための軸心方向Eのストロークが小さくなり、可動子124の往復動作に対して高い精度が要求される。これに対し、上記構成では、一定量のストロークを確保することができるので、可動子124の対する精度が不要となり、可動子124の製作コストの低減を図り、その分、アクチュエータ101の製作コストの低減を図ることができる。
同様に、一定量のストロークを確保することができるので、アクチュエータ101の振動を決定する加速度センサ14及びエンジン回転数検出センサ40に対する高い精度が不要となり、加速度センサ14及びエンジン回転数検出センサ40の部品コストの低減を図り、その分、防振装置100全体として製作コストの低減を図ることができる。
なお、第2実施例の加速度センサ14は、エンジンマウント12及びフレーム13(図1参照)の内のどちらか一方又は両方に取り付けられる。
加速度センサ14がエンジンマウント12に取り付けられた場合には、エンジン10から入力される振動を直接検出することができるので、エンジン10の振動数を精度良く検出することができる。
一方、加速度センサ14がフレーム13に取り付けられた場合には、フレーム13に伝わる振動を検出することができる、即ち、運転者に伝わる振動を検出することができる。
また、アクチュエータ101は、可動子124の動作方向(図10上下方向)と第1液室504に入力される振動の振動方向とが同一となるようにエンジンマウント12に取り付けられるので、エンジン10の振動により変化した第1液室504の液圧を効率良く制御することができる。
更に、伝達部材515は、その軸心が第1取付具501の軸心と同一軸心上に配置されているので、伝達部材515を介して伝達されるアクチュエータ101の振動により第1取付具501を介して入力されるエンジン10の振動を効率良く減衰することができる。
また、板バネ152は、可動子124の往復動作方向の対向する端面に配設されているので、例えば、一方側のみに板バネ152を配設する場合と比較して、可動子124が往復動作方向から斜め方向にずれて動作することを低減することができる。よって、可動子124が固定子122と衝突して、アクチュエータ101が破損してしまうことを低減することができる。
次に、図11を参照して、第3実施例について説明する。第1実施例は、可動子24とベース板20との間が連結部27により連結されるよう構成し、第2実施例は、可動子124と固定子122とが板バネ152により連結されるよう構成した。これに対して、第3実施例のアクチュエータ201は、可動子124と固定子122とが板バネ152により連結されると共に可動子124とベース板120とがゴム弾性材から構成された連結部227により連結されている。なお、第3実施例のアクチュエータ201は、連結部227の構成が第2実施例のアクチュエータ101に追加された構成であるので、同一部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11は、第3実施例のアクチュエータ201の縦断面を示した断面図である。図示するように、ベース板120側(図11下側)の中空部材156とナット155との間には、板バネ152及びプレート252が挟持されている。プレート252は、側壁150の外方向(図11の左右方向)に延びて形成されており、その先端部とベース板120とがゴム状弾性材からなる連結部227により連結されている。
また、図示しないが、プレート252は、突設部151が備えられた側壁150の長手方向(図11紙面垂直視方向)において、その側壁150の長さと略同等に形成されている。また、連結部227は、プレート252の長手方向の長さと略同等に形成されている。よって、可動子124とベース板120とは、4辺からなる側壁150のうち対向する2辺を連結部227により連結しているので、安定して可動子124を保持することができる。
また、連結部227を備えると、可動子124が往復動作する場合の抵抗力が大きくなってしまう。そのため、第3実施例では、可動子124が効率よく往復動作できると共に、可動子124を安定して保持できるように、板バネ152及び連結部227の弾性力が予め選定されている。
なお、プレート252を側壁150の4辺に対応するよう形成すると共に、その4辺に連結部227を備えるものとしても良い。この構成とすれば、可動子124とベース板120とが4辺により連結されるので、可動子124をさらに安定して保持することができる。
以上、説明したように、第3実施例のアクチュエータ201は、板バネ152により可動子124と固定子122とを連結するだけでなく、連結部227により可動子124とベース板120とを連結している。上述したように、第2実施例の板バネ152を備えるアクチュエータ101は、可動子124を効率良く動作させることができる。さらに、連結部227を備えているので、可動子124を効率良く動作させることができると共に、可動子124をベース板120に対して確実に保持することができる。また、連結部227を備えることにより、可動子124を確実に保持できるので、可動子124が傾くことを低減して正確な防振を行うことができる。
次に、図12から図14を参照して、第4実施例のアクチュエータ301について説明する。第1実施例のアクチュエータ1は、ベース板20に連結部27を介して可動子24が連結される構成としたが、これに対して、第4実施例のアクチュエータ301は、固定子322に連結部352を介して可動子324が連結される構成となっている。なお、第1実施例と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、図12及び図13を参照して、アクチュエータ301の構造について説明する。図12は、第4実施例のアクチュエータ301の外観を示した図であり、図12(a)は、上面図であり、図12(b)は、正面図である。図13は、第4実施例における防振装置300の断面図である。
アクチュエータ301は、フレーム13に螺着されるベース板320と、そのベース板320に固着される固定子322と、その固定子322に固着される磁性体部323と、固定子322の軸心方向E(図13参照)に往復動作する可動子324と、その可動子324の一部であり固定子322を挟んでその固定子322側に相対的に突出した磁極部325と、その磁極部325を巻回すると共にベース板320に固定されるコイル326と、可動子324の磁極部325と固定子322の磁性体部323との当接面を連結する連結部352とを主に備えている。なお、アクチュエータ301は、ベース板320と可動子324との間に、隙間t3が形成されるように構成されている(図12(b)参照)。
固定子322は、略円柱状に形成されており、磁性体部323は、第1実施例と同様に電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略円盤状の金属が積層されている。よって、磁性体部323も固定子322同様に略円柱状に構成されており、その軸心は、固定子322の軸心と同一軸心上に位置している。
連結部352は、固定子322の磁性体部323に連結され、ゴム状弾性材からなる弾性部352aと、その弾性部352aの外周面に連結され、樹脂材からなる樹脂部352bとを備えている。連結部352は、図13に示すように、固定子322の軸心方向Eにおいて、磁性体部323の長さと略同等の長さに形成されている。また、連結部352は、固定子322の軸心方向E視において、磁性体部323の全外周を囲むように形成されている。また、弾性部352a及び樹脂部352bは、固定子322の磁性体部323の径方向の厚みが略均一に形成されている。よって、連結部352の軸心は、固定子322の軸心と同一軸心上となる。即ち、固定子322,磁性体部323,連結部352は、径方向の厚みが全てが略均一に形成されている。
なお、第4実施例のアクチュエータ301は、固定子322の磁性体部323と樹脂部352bとの連結を、弾性部352aが加硫接着されることで行われる。この磁性体部323と樹脂部325bとの連結工程は、磁性体部323が固着された状態の固定子322と樹脂部352bとを、専用に製作された金型内に所定間隔を空けて配置し、磁性体部323と樹脂部352bとの隙間に半生状(又は液状)のゴム状弾性材を流し込み、冷却することで連結が行われる。
可動子324は、上面視(図12(a)紙面垂直視)略四角形に形成されており、磁性体部323に向かって磁極部325が突出されている。磁極部325の磁性体部323との対向面には、第1実施例と同様に、軸心方向Eに異極(永久磁石328a(S極),328b(N極))をなすと共に軸心方向Eと略直交する方向に異極(永久磁石328a(S極),328b(N極))をなすよう永久磁石328がそれぞれ配設されている。
また、永久磁石328は、樹脂部352bとの当接面が円弧状に形成されているので、連結部352は、固定子322の磁性体部323と可動子324の磁極部325との対向面を隙間なく連結している。よって、磁性体部323と磁極部325との間に異物が侵入することがないので、対向面内に異物が侵入することで、可動子324が動作不良を起こしたり、故障したりすることを防止できる。さらに、永久磁石328は、円弧状に形成されることにより、平板の永久磁石を配設した場合と比較して、小スペースで大きな永久磁石を配設することができる。よって、永久磁石328の磁力を確保しつつ小規模化を図ることができる。
次に、図14を参照して、アクチュエータ301の製造工程について説明する。図14は、アクチュエータ301の製造工程を説明する図であり、図14(a)は、固定子322に連結部352が一体に連結された状態を示した斜視図であり、図14(b)は、固定子322と可動子324との圧入工程を説明するための図であり、図14(c)は、固定子322とベース材320との固着工程を説明するための図である。
まず、アクチュエータ301の製造工程は、固定子322と連結部352とを一体に連結する連結工程を行う。この連結工程は、上述したように、例えば、加硫接着により行われる。この固定子322と連結部352とが一体に連結された状態が、図14(a)の状態である。なお、連結部352の樹脂部352bの外径は、図14(b)に示すようにL1であり、その曲率半径は、R1(図示せず)となる。
次に、連結部352が一体に連結された固定子322を、可動子324の磁極部325間に圧入する圧入工程について説明する。可動子324は、予め、電磁鋼板等の磁性金属よりなる多数の略環状(磁極部325を形成する相対的に突出した突出部を備える)の金属を積層し、その磁極部325の対向する面にそれぞれ永久磁石328を配設する。なお、対向配置された永久磁石328の円弧により形成される内径は、図14(b)に示すようにL2であり、その曲率半径はR2(図示せず)となる。
ここで、樹脂部352bの直径L1(曲率半径R1)と永久磁石328間の直径L2(曲率半径R2)とは、略同等に形成されており、固定子322を可動子324に圧入した場合、樹脂部352aの外周面と永久磁石328の対向面とがそれぞれ当接する。なお、圧入工程では、樹脂部352bと永久磁石328とを固着するので、直径L2の方が直径L1より若干小さくなるよう構成されている。
圧入工程としては、例えば、圧入機(図示せず)のベース側に可動子324をセットし、圧入機の圧入側に連結部352が一体に連結された固定子322をセットする。圧入機のベース側は、対向する永久磁石328間の空間内に突起した凸部が形成されており、圧入された固定子322が凸部に当接して、軸心方向Eの位置調整が行われる。よって、一般的な圧入機を使用することで、固定子322と可動子324との固着を行えるので、固定子322の磁性体部323と可動子324の磁極部325との間をゴム状弾性材により加硫接着する場合と比較して、製作工程を簡略化することができる。また、固定子322の磁性体部323と可動子324の磁極部325との間をゴム状弾性材により加硫接着する場合には、金型の構造が複雑になると共に大型になり、金型の製作コストが高くなってしまうが、上述した圧入工程により固着を行うので、大型で且つ複雑な構造の金型が必要なくなり、製作コストを低減することができる。
なお、上述したように、固定子322,磁性体部323,連結部352が、固定子322の軸心から径方向に全てが略均一に形成されているので、圧入工程において、固定子322の周方向の位置決めをする必要がない。従って、後述する樹脂部352bを可動子324の磁極部325間に圧入する際の圧入工程を簡略化することができる。
次に、樹脂部352bと永久磁石328とが固着された状態の固定子322をベース材320に固着する固着工程について説明する。固着工程は、固定子322の先端をベース材320の本体部320aの中心部に穿設された孔に挿通し、ナット321を螺着することで行われる。この際、ベース材320と可動子324との間には、軸心方向Eにおいて、隙間t3(図12(b)参照)が形成される。なお、固定子322とベース材320との固着工程の前後の工程で、コイル326をベース材320への固定が行われる。
以上の工程により、アクチュエータ301が製作される。
以上、説明したように、第4実施例のアクチュエータ301は、可動子324の磁極部325と固定子322の磁性体部323との対向面が連結部352により連結されており、可動子324とベース板320との間に隙間t3が形成されているので、可動子324が往復動作をする場合に干渉する抵抗(摩擦)が少なくなる。よって、可動子324を効率良くスムーズに動作させることができるので、エンジン10の振動により第1液室504の液圧が変化した場合に、その第1液室504の液圧変化に応じて可動子124をスムーズに動作させて第1液室504の液圧を制御することができる。従って、エンジン10の振動を低減することができ、運転者に不快感を与えることを低減することができる。
また、連結部352により、固定子322の磁性体部323と可動子324の磁極部325との対向面の間に隙間が形成されないので、その隙間内に異物が侵入して可動子324の動作不良や故障などが発生することを防止することができる。
次に、図15を参照して、第5実施例について説明する。第1実施例は、可動子24とベース材20との間が連結部27により連結されるよう構成し、第4実施例は、可動子324の磁極部325と固定子322の磁性体部323との対向面を連結部352により連結されるよう構成した。これに対して、第5実施例のアクチュエータ401は、可動子324の磁極部325と固定子322の磁性体部323との対向面を連結部352により連結されると共に、可動子324とベース板320とがゴム弾性材から構成された連結部427により連結されている。なお、第5実施例のアクチュエータ401は、連結部427の構成が第4実施例のアクチュエータ301に追加された構成であるので、同一部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図15は、第5実施例のアクチュエータ401の断面を示した縦断面図である。図示するように、ベース材320と可動子324とは、ゴム状弾性材からなる連結部427により連結されている。
また、図示しないが、連結部427は、可動子324の長手方向(図15紙面垂直視方向)において略同等の長さに形成されている。よって、可動子324とベース板320との連結を、4辺からなる可動子324の対向する2辺を連結部427により連結しているので、安定して可動子324を保持することができる。
なお、可動子324の4辺に対応するよう連結部427を形成するものとしても良い。この構成とすれば、可動子324をさらに安定して保持することができる。
以上、説明したように、第5実施例のアクチュエータ401は、連結部352により可動子324の磁極部325と固定子322の磁性体部323とを連結するだけでなく、連結部427により可動子324とベース板320とを連結している。よって、可動子324を効率良く動作させることができると共に、可動子324をベース材320に対して確実に保持することができる。また、連結部227を備えることにより、可動子124を確実に保持できるので、可動子124が傾くことを低減して正確な防振を行うことができる。
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
また、他の変形例として、例えば、上記各実施例では、アクチュエータ1,101,201,301,401をエンジン10を支持するフレーム13に取り付けるものとしたが、フレーム13以外にアクチュエータ1,101,201,301,401を取り付けるものとしても良い。例えば、運転者が着座する座席を支持する支持体にアクチュエータを取り付け、振動が座席に伝わることを低減するものとしても良いし、ハンドルを支持する支持体にアクチュエータを取り付け、振動がハンドルに伝わることを低減するものとしても良い。また、車両のドアにアクチュエータを取り付け、振動が座席に伝わることを低減するものとしても良い。
また、上記各実施例では、コイル26,126,326をベース板20,120,320に取り付けられ固定されるものとしたが、コイル26,126,326を可動子24,124,324に取り付けて、可動子24,124,324と一緒に動作するよう構成しても良い。この場合、可動子24,124,324の質量が必要なときにコイル26,126,326の質量が合算されるため、アクチュエータ1,101,201,301,401が大規模化することを防止することができる。また、コイル26,126,326が可動子24,124,324に取り付けられ一緒に動作する場合には、コイル26,126,326を磁極部25,125,325の周りに直接巻き付ける構成としても良い。
また、上記各実施例では、加速度センサ14により検出される加速度と、エンジン回転数検出センサ40により検出されるエンジン10の回転数とに基づき出力パターンを選択するものとしたが、加速度から他の情報を設定し、回転数から他の情報を設定し、複数の情報から出力パターンを選択するものとしても良い。
また、上記各実施例では、固定子22,,122,322の軸心方向A,Eと略直交する方向の断面が略四角形になるよう構成したが、その断面は、円形であっても良いし、多角形であっても良い。即ち、固定子22,122,322と可動子24,124,324との配置関係を変更しない限り、可動子24,124,324の外形形状は如何なる形状であっても良い。
また、上記第4及び第5実施例では、固定子322の周方向の全てを連結部352が囲むよう構成したが、可動子324の磁極部325に対応した部分にのみ連結部を配設するものとしても良い。この構成とすれば、固定子322の周方向の全てを連結部352により囲まなくても、固定子322の軸心方向E視において、固定子322の軸心に対して点対称に連結部が配設される。よって、連結部が固定子322の軸心に対して点対称に配設されているので、可動子324の連結部による支持を固定子322の周方向に略均一とすることができる。従って、可動子324が軸心方向Eに対して斜め方向にずれて動作することを低減でき、可動子324と固定子322とが衝突して故障することを低減できると共に、正確な防振を行うことができる。さらに、連結部を固定子322の軸心方向E視において、固定子322の軸心に対して点対称に配設すると、可動子324を固定子322に対して保持するための弾性力、及び、可動子324が固定子322に対して動作するための弾性力の作用点が、固定子322の軸心に対して点対称となる。ここで、例えば、連結部の弾性力の作用点が固定子322の軸心に対して点対称以外(非対称)となると、固定子322の軸心方向E視において、2つの連結部の弾性力が作用する作用点と軸心とを通る線が一直線上にならない。そのため、可動子324が動作すると、軸心方向Eに対して斜め方向にずれて動作してしまい、可動子324と固定子322とが衝突して故障の原因となったり正確な防振を行えない場合がある。しかし、連結部の弾性力の作用点が軸心に対して点対称に位置すると(即ち、軸心方向E視において、2つの連結部の弾性力が作用する作用点と軸心とが一直線上にある)、軸心に対して斜め方向に可動子が動作することを低減でき、故障の発生を低減できると共に正確な防振を行うことができる。
また、上記第1実施例では、FF型自動車のエンジン10を支持するフレーム13にアクチュエータ1を取り付けるものとしたが、FR型自動車、RR型自動車またはMR型自動車などのエンジンを支持するフレームに取り付けるものとしても良い。即ち、振動を抑える目的であれば、自動車の仕様(例えば、外形、駆動方式およびエンジンの配置位置)の違いに関係なく、アクチュエータ1を取り付けることができる。
ここで、本実施例において、請求項20記載の防振装置ユニットの選択手段としては図5のS103の処理が該当し、請求項20記載の防振装置ユニットの出力手段としては図5のS104の処理が該当する。
以下に防振装置及び防振装置ユニットの変形例を示す。振動体を支持する支持部材に取り付けられるベース部材と、そのベース部材に固着され、少なくとも一部に磁性体を備える固定子と、その固定子に沿って1軸方向に往復動作可能に配設され、前記固定子の磁性体に対応する位置に磁極部が形成された可動子と、その可動子と前記ベース部材とを連結すると共に、ゴム状弾性材から構成される連結部材と、前記可動子の磁極部に巻回され、電流が流れることで励磁されるコイルとを備え、前記コイルに電流が流され励磁されることで発生する起磁力により、前記可動子が固定子に対して往復動作して前記振動体の振動を減衰することを特徴とする防振装置A1。
防振装置A1において、前記可動子の磁極部は、少なくとも一対の磁石を備え、それら各磁石は、前記可動子の往復動作方向に異なる磁極が並んで形成されると共に、前記往復動作方向と略直交する第1の方向に磁極の並びを逆にして配設され、前記一対の磁石の間に発生する起磁力と、前記コイルが励磁されることで発生する起磁力との組み合わせにより前記可動子が固定子に対して往復動作して前記振動体の振動を減衰することを特徴とする防振装置A2。
防振装置A2において、前記可動子の磁極部は、前記第1の方向において前記固定子を挟むよう形成され、前記一対の磁石は、前記第1の方向線上に磁極の並びを逆にして配設されていることを特徴とする防振装置A3。
防振装置A1からA3のいずれかに記載の防振装置と、その防振装置が取り付けられた支持体の振動に基づく情報を検出する振動情報検出手段と、その振動情報検出手段により検出された情報に応じて少なくとも前記コイルに流れる電流の方向を制御する制御手段とを備え、前記支持体の振動が減衰する方向に前記可動子を往復動作させ得るように構成されていることを特徴とする防振装置ユニットB1。
防振装置ユニットB1において、前記振動体は、回転駆動をするエンジンであり、そのエンジンの回転情報を検出する回転情報検出手段を備え、前記制御手段は、少なくとも前記コイルに流れる電流の方向とそのコイルへの通電時間との関係が定められた出力パターンを予め記憶する記憶手段と、前記振動情報検出手段により検出された振動情報と、前記回転情報検出手段により検出された回転情報とに基づき、前記記憶手段から対応する出力パターンを選択する選択手段と、その選択手段により選択された出力パターンに応じて前記コイルに出力を行う出力手段とを備えていることを特徴とする防振装置ユニットB2。