JP4721485B2 - 顔料ベースインク及び染料ベースインク用のブリード抑制溶媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に、インクジェット用インクに関し、より詳細には、ブリード抑制(bleed control)が改善されたインクジェットインクに関する。
【0002】
【従来の技術】
新技術によるインク開発研究において、考慮すべき最も重要なパラメータの1つは、しばしば、"K/C抑制"(K/C control)又は"K/Cブリード"(K/C bleed)と呼ばれる、黒色とカラーインクとの間のブリード抑制である。着色剤として自己分散性顔料を用いる場合、別個の分散剤分子を使用する顔料に較べ、ブリード抑制が比較的不十分になりがちである。これらのインクでは、ブラックインクは顔料を含み、一方、カラーインクは、1つまたはより多くの適当な水溶性染料(シアン、イエロー、マゼンタ)を含む。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
たとえ自己分散性顔料が負の電荷を有し、且つカラーインクが低pHであるにも関わらず、自己分散性顔料を使用したインクのブリードを抑制することが、何故困難であるか、という疑問が生じるであろう。この疑問に対する解答は、ブリードを低減し得る溶媒を発明するに当たり大変重要である。Cabot Corp.から入手できるような自己分散性顔料は、顔料表面に共有結合している負に帯電した基を有する。理論的には、2つの負に帯電したブラック自己分散性顔料粒子の近くにあるカチオン由来の正電荷、又は低pHカラーインク由来のプロトンの何れかが静電ポテンシャルを低下させて、顔料粒子を密集させることにより集塊化させるのであろう。所望される程度には、これは明らかに自己分散性顔料に対しては起こらず、そしてそれらは用紙上に同一の強度では衝突しない。いずれの特定理論にも同意することなく、それらの相互衝突は、集塊化に至らないと思われる。換言すれば、それらの衝突には、2つの衝突粒子が互いに跳ね返って離れるという点において、事実上弾力性がある。これは、H. Matrickらの米国特許第5,500,082号に開示されたような、別個の分散剤を使用する顔料ベースインクとは対照をなすものである。このような分散剤分子は、突きだしている大きな"触手(tentacles)"(長鎖炭素)を有し、これは衝突の際に"互いに突き刺す"チャンスをより多く有する。
【0004】
それ故、改善されたブリード抑制を呈するような自己分散性顔料含有のインクを提供する必要がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ブリードを減少することを助ける2種類の溶媒が、自己分散性顔料含有のインクを調合する際に用いられる。その2種類とは、有機エステル及び、ある種のジオールとトリオールである。
【0006】
ここに開示される溶媒は、正に帯電したカラーインクで静電ポテンシャルが減少される時に相互衝突をうまく起こさせることにより、自己分散性顔料の集塊化を助ける。このメカニズムの詳細は、未だ解明されていない。これらの溶媒は、インクの誘電率を変化させることで、顔料粒子自体の反発ポテンシャルを低減させ得るのであろう。
【0007】
【発明の好ましい実施形態】
本発明によれば、自己分散性顔料含有のブラック(K)インクと、水溶性染料含有のカラー(CYM - シアン、イエロー、マゼンタ)インクとの間のブリード抑制は、ブラックインク調合物に有機エステル、ジオール類及びトリオール類からなる群から選ばれた少なくとも1つの溶剤を導入することによって改善される。
【0008】
1. 有機エステル
本発明の実施において、式R-COOR'を有する非界面活性剤有機エステルを好適に用いることがでる。式中、R及びR'は、それぞれ、水素、アルカン、アルケン、アルキン、アルコキシ、カルボキシレート、及びそれらの混合物であり、直鎖及び分枝鎖の両構造のもの、さらに全ての立体異性体も包含される。エステル基(-COOR')の例には、クエン酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、グルコン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、セバシン酸、ラウリン酸、グルタル酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びそれらの混合物からなる群から選択された酸の残基がある。R及びR'基の炭素原子の数は、1〜5の範囲にある。本発明の実施に有効な有機エステルは、溶媒であって界面活性剤ではない。
【0009】
前述の非界面活性剤有機エステルの例には、クエン酸トリエチル及びクエン酸アセチルトリエチル(acetyl triethyl citrate)があり、これらのエステルは、Morflex Inc.から、Citroflex 2、Citroflex 1、Citroflex A1、Citroflex A2という商標名で市販されている。
【0010】
本発明の実施に使用される有機エステルの濃度は、インク組成物の、約0.5〜7重量%、好ましくは、約2〜4重量%の範囲内、そして最も好ましくは、約3重量%である。
【0011】
2. ジオール及びトリオール
幾つかのジオールとトリオールをテストした結果、それらは、ブラックとカラー間のブリードにおいて十分な改善を示した。これらのジオールは、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、1,2-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、及び1,2,-ヘキサンジオールである。トリオールは、3-メチル-1,3,5-ペンタントリオールである。
【0012】
本発明の実施に使用される、1,2-オクタンジオール以外のジオール/トリオールの濃度範囲は、インク組成物の、約0.1〜10重量%、好ましくは、約1〜7重量%、最も好ましくは、約2〜5重量%の範囲内である。1,2-オクタンジオールの濃度範囲は、インク組成物の、約0.25〜1重量%の範囲内、好ましくは、約0.5重量%である。
【0013】
ブラックとカラーインク間のブリード低減には、全てのジオールが有効であるのではない。そのようなジオールの例には、3-ヘキシン-2,5-ジオール、及び2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールが含まれる。
【0014】
3. インク組成物−ブラックインク
本発明のブラックインクは、顔料とビヒクルを含有する。特に、本発明のブラックインクは、上で議論したエステルまたはジオール/トリオール添加剤に加えて、約5〜50重量%、好ましくは、約10〜25重量%の水混和性有機共溶媒と、約0.05〜10重量%、好ましくは、約0.5〜10重量%の顔料と、約0.005〜50重量%、好ましくは、約0.1〜10重量%、より好ましくは、約0.5〜5重量%の耐久性ラテックスポリマーと、約0.005〜50重量%、好ましくは、約0.1〜10重量%、より好ましくは、約0.5〜5重量%のプライマーラテックスポリマーと、水とを含む。以下に説明するように、インクに対するその他の成分及び添加剤を存在させてもよい。
【0015】
3A. 自己分散性顔料
1つの実施態様において、インクに用いられる着色剤は自己分散性顔料である。本発明の実施における使用に適する前述の顔料は、インクジェット印刷用として知られる全ての化学的に修飾された水分散型の顔料を含む。これらの化学的修飾は、全ての有機顔料を包含する顔料前駆体に水分散性を付与する。
【0016】
自己分散性又は水溶性のためには、本明細書に記載の顔料を、少なくとも1つの芳香基又はC1-C12アルキル基と、少なくとも1つのイオン基又はイオン化型(ionizable)基とから成る、1つ又はより多くの有機基の付加によって修飾される。イオン化可能基は、水性媒体において自己のイオン基を形成する基である。イオン基は、アニオンでもカチオンであってもよい。芳香基は、さらに置換されるか又は置換されなくてもよい。例としては、フェニル又はナフチル基があり、イオン基は、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸、カルボン酸、アンモニウム、第四級アンモニウム、又はホスホニウムの基である。
【0017】
選択されるプロセスに基づき、顔料は、特性として、アニオンあるいはカチオンのいずれでもあり得る。市販品としては、アニオン発色団は、通常、ナトリウム又はカルシウムのカチオンと結合され、カチオン発色団は、通常、塩化物又は硫酸塩のアニオンと結合される。
【0018】
修飾のために、1つの好ましい方法は、少なくとも1つの酸性官能基含有のアリールジアゾニウム塩によるカーボンブラック顔料の処理である。アリールジアゾニウム塩の例としては、スルフィン酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフチレンスルホン酸、アミノフェニルホウ素酸、アミノフェニルホスホン酸及びメタニル酸から作製されたものが含まれる。
【0019】
アンモニウム、第四級アンモニウムの基、第四級ホスホニウムの基、及びプロトン化アミン基は、上述したものと同じ有機基に付着させることのできるカチオン基の諸例を代表するものである。
【0020】
修飾されたカーボンブラック顔料並びに官能基化した基を付着させる方法の論議については、米国特許第5,707,432号、第5,630,868号、第5,571,311号、及び第5,554,739号が引用される。
【0021】
以下の水不溶性顔料は、発明の実施に有用である。しかし、このリストは発明を限定しようとするものではない。次の顔料は、Cabotから入手可能である:Monarch® 1400、Monarch® 1300、Monarch® 1100、Monarch® 1000、Monarch® 900、Monarch® 880、 Monarch® 800、及びMonarch® 700。次の顔料は、Ciba-Geigyから入手可能である:Igralite® Rubine 4BL。次の顔料は、Columbianから入手可能である:Raven 7000、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、及びRaven 3500。次の顔料はDegussaから入手可能である:Color Black FW 200、Color Black FW 2、Color Black FW 2V、Color Black FW 1、Color Black FW 18、Color Black S 160、Color Black S 170、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4、Printex U、Printex V、Printex 140U、及びPrintex 140V。次の顔料は、DuPontから入手可能である:Tipure® R-101。次の顔料は、Hoechstから入手可能である:Permanent Rubine F6B。次の顔料は、Sun Chemicalから入手可能である:LHD9303 Black。
【0022】
自己分散性顔料も、Cab-O-Jet® 200及びCab-O-Jet® 300としてCabotから市販されている。
【0023】
本発明における他の実施態様においては、ブラック顔料は、インク組成物中で分散剤の助けにより分散される。このようなブラック顔料は、アニオン官能性を有する分散剤、例えば、S. C. Johnson Polymerから市販のJoncrylポリマー等で分散される任意のブラック顔料を包含する。勿論、アニイオン電荷を呈するその他の任意の分散剤も本発明の実施に当って使用することができる。ブラック顔料とアニオン分散剤についてのより完全な論議に関しては、米国特許第5,181,045号及び第5,785,743号を参照されたい。
【0024】
3B. ラテックスポリマー
耐汚れ堅牢性を得るのにラテックスポリマーを利用するインクジェットインクが近年開発された。このようなラテックスポリマーの例は、例えば、米国特許出願第09/120,270号及び米国特許出願第09/120,046号(いずれも1998年7月21日出願)に開示されている。
【0025】
本発明の実施に用いられる前述のラテックスポリマーには二種類ある。第1の種類は、"耐久性コア/セル"(durable core/shell)ポリマーと呼ばれるもので、下記式で与えられる。
【0026】
【化1】
[(A)m(B)n(C)p(D)q(E)r]x (I)
【0027】
式中、A、B、C、D、及びEは、次のような官能基を表す:
A = 改善された耐久性を有する塗膜形成特性(film-forming properties)に寄与する少なくとも1つの疎水性成分であり、この成分は固体状態へと単一重合(homopolymerized)される時、−150℃及び+25℃間の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する部分(moieties)から選択され;
B = 前記ポリマー(I)の疎水性成分のTgを調節するのに用いられる少なくとも1つの疎水性溶媒バリヤーの部分であり、これは固体状態へと単一重合される時、+25℃を超える(Tg)を有し;
C = 広範囲にわたる種類の水溶性モノマーから選択される少なくとも1つの親水性成分であり(任意);
D = 少なくとも1つのUV吸収体であり(任意);
E = 少なくとも1つの高極性(highly polar)官能基を有する少なくとも1つの部分であって(任意);
m=5〜95重量%;
n=5〜95重量%;
p=0〜60重量%;
q=0〜50重量%;
r=0〜40重量%;
m+n+p+q+r=100重量%;且つ
x=1〜100,000、である。
【0028】
好ましくは、ポリマー(群)(I)の最終的なTgは、約−25℃〜+110℃の範囲内であり、好ましくは、約−15℃〜+90℃の範囲内であり、最も好ましくは、約−10℃〜+75℃の範囲内である。
【0029】
ポリマー(I)の分子量(重量平均)は、約1,000と2,000,000の間、好ましくは、約5,000と500,000の間であり、そして最も好ましくは、約10,000と70,000の間である。
【0030】
C部分か又はE部分の何れかが、親水性部分もしくは高極性部分の何れかを有するポリマーを生成するために、ポリマー中に存在しなければならない。あるいは、C又はE、又は両方の部分の存在又は不存在の何れかに於いて、ポリマー(I)と共に1つ又はより多くの界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤(群)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は両性イオン性であってよい。
【0031】
第2の種類のラテックスポリマーは、"プライマーコア/セル"(primer core/shell)ポリマーと呼ばれるもので、これも親水性部分と疎水性部分を有し、且つ下式(II)で与えられる次の一般的構造を有するものである。
【0032】
【化2】
[(A)m(B)n(C)p(E)r]y (II)
【0033】
式中、A、B、C、及びEは、上述のような部分(moieties)であり、式(II)のm、n、p及びrは、次の通りである:
m=0〜90重量%、好ましくは、10〜60重量%、より好ましくは、15〜50重量%;
n=0〜90重量%、好ましくは、10〜60重量%、より好ましくは、15〜50重量%;
p=0〜90重量%、好ましくは、10〜60重量%、より好ましくは、15〜50重量%;
r=0.01〜100重量%、好ましくは、0.01〜60重量%、より好ましくは、1〜40重量%であり;
m+n+p+r=100重量%であって;かつ
y=1〜100,000、好ましくは、10〜10,000、そして、より好ましくは、100〜1,000、で表され、好ましくは、mあるいはnが0(ゼロ)でない。
【0034】
プライマーコア/セルポリマーのTgは、約−100℃〜+100℃、好ましくは、約−25℃〜+25℃、そしてより好ましくは、約0〜+25℃の範囲内である。
【0035】
ポリマー(II)の分子量(重量平均)は、約100〜2,000,000、好ましくは、約1,000〜500,000、そして最も好ましくは、約5,000〜300,000の間である。
【0036】
耐久性及びプライマーコア/セルポリマーは、顔料着色剤と共に用いられ、それらを水性ベースのインク中に分散させる。
【0037】
3C. ビヒクル
ビヒクルは、1つ又はより多くの共溶媒と水とを含む。共溶媒は、インクジェット印刷に通常採用される1つ又はより多くの有機性水混和性溶媒を包含する。本発明の実施に使用される共溶媒の種類としては、これらに限定するものではないが、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリ(グリコール)エーテル、カプロラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、及び長鎖アルコールを包含する。本発明の実施に用いられる化合物の例としては、これらに限定するものではないが、炭素数が30又はそれより少ない第一級脂肪族アルコール、炭素数が30又はそれより少ない第一級芳香族アルコール、炭素数が30又はそれより少ない第二級脂肪族アルコール、炭素数が30又はそれより少ない第二級芳香族アルコール、炭素数が30又はそれより少ない1,2-アルコール、炭素数が30又はそれより少ない1,3-アルコール、炭素数が30又はそれより少ない1,ω-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテルのより高分子の同族体、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテルのより高分子の同族体、N-アルキルカプロラクタム、非置換カプロラクタム、置換ホルムアミド、非置換ホルムアミド、置換アセトアミド、及び非置換アセトアミドがある。本発明の実施において好ましく用いられる共溶媒の具体例としては、これらに限定するものではないが、N-メチルピロリドン、1,5-ペンタンジオール、2-ピロリドン、ジエチレングリコール、1,3,5-(2-メチル)-ペンタントリオール、テトラメチレンスルホン、3-メトキシ-3-メチルブタノール、グリセロール、及び1,2-アルキルジオールがある。
【0038】
インクのバランスは水、及び特定の用途のためにインクの諸特性を最適化するのに用いられる、インクジェットインクに通常添加されるその他の添加剤である。例えば、熟練した当業者に周知のように、殺生物剤をインク組成物に使用して微生物の成長を阻害することができ、EDTAのような金属イオン封鎖剤を含有させて重金属不純物の有害な影響を排除することができ、さらに緩衝液を使用してインクのpHを調整することもできる。粘度調整剤及び他のアクリル又は非アクリル系ポリマーなどのその他の既知添加剤を添加して、インク組成物の種々の特性を所望の通りに改善することもできる。全ての成分の純度は、インクジェット用インクとして通常の市販品の製造に用いられるものである。
【0039】
顔料をベースとした染料のpHは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はトリエタノールアミンで、やや塩基性の値、例えば、約8.5に調整することができる。
【0040】
4. インク組成物−カラーインク
本発明のカラーインクは、少なくとも1つの水混和性染料とビヒクルとを含む。特に、本発明のカラーインクは、直接染料、酸性染料、及び塩基性染料などの、アニオン染料を包含する。アニオン染料の例には、これらに限定するものではないが、Food Black 2、Direct Black 19、Acid Blue 9、Direct Blue 199、Direct Red 227、及びAcid Yellow 23が包含される。カチオン染料の例としては、これらに限定するものではないが、Basic Blue 3、Basic Violet 7、Basic Yellow 13、及びBasic Yellow 51がある。染料の濃度は、好ましくは、約0.1〜7重量%の範囲内である。約0.1重量%未満だと、許容できない明度のインクになり、一方、約7重量%を超えると、インクジェットペン中のオリフィスが閉塞する結果となる。より好ましくは、染料は、インクジェットインク組成物の約0.1〜4重量%の範囲内で存在する。染料の混合物を用いることもできる。
【0041】
少なくとも1つの水混和性染料を含有するインクジェットインク用のビヒクル及び添加剤(類)は、顔料ベースのインクに使用されるものと同じである。
【0042】
【実施例】
実施例1 有機エステル
ブラックインクは、下記成分で調合された:
6重量% 2-ピロリドン
7重量% 3-ヘキシン-2,5-ジオール
3.5重量% クエン酸トリエチル
3.8重量% LEG-1(Liponicsから入手可能な、リポニック・エチレングリコール)
3重量% (アクリル酸ヘキシル)40(メタクリル酸メチル)40(メチルポリエチレングリコール(mw=2000)メタクリル酸塩)20から成る、耐久性ラテックスポリマーQX25A
1重量% (メタクリル酸メチル)32(アクリル酸ヘキシル)46(メチルポリエチレングリコール(mw=350)メタクリル酸塩)12(アクリル酸)10から成る、プライマーラテックスポリマーQX26B
3重量% 顔料(p-アミノ安息香酸(PABA)及びアミノドデカン酸(ADDA)で処理されたMonarch 700)
バランス 水
インクのpHは、水酸化カリウムを使って8.5に調整した。
【0043】
カラーインク(シアン、イエロー、及びマゼンタ)は水溶性染料を含有し、且つ特許品の開発組成物で構成した。
【0044】
比較例1
クエン酸トリエチルをブラックインクから省いたことを除き、実施例1のCYMKインクを調合した。
【0045】
実施例1と比較例1間の結果
両方のCYMKインクセットをGilbert Bond紙とChampion Data Copy紙上に印刷した。ブリード抑制試験のためにヒューレットーパッカード社で開発した一組のパターン印刷を使用した。ブリード抑制試験に当っては、種々の隣接パターンの組合せで印刷した。
【0046】
実施例1のインクは、比較例1のインクよりも良好なブラック−カラー間のブリード抑制を示すことが観察された。さらに、実施例1のインクは、比較例1のインクより長期間及び短期間デキャップ(decap)が優れていた。実施例1のインクは、良好な始動性と印刷適性を示した。
【0047】
実施例2 ジオール
ブラックインクを、下記成分で調合した:
6重量% 2-ピロリドン
7重量% 3-ヘキシン-2,5-ジオール
3重量% 2-メチル-2,4-ペンタンジオール
3.8重量% LEG-1
3重量% 耐久性ラテックスポリマーQX25A(実施例1と同じ)
1重量% プライマーラテックスポリマーQX26B(実施例1と同じ)
3重量% 顔料(実施例1と同じ)
バランス 水
インクのpHは、水酸化カリウムを使って8.5に調整した。
【0048】
カラーインク(シアン、イエロー、及びマゼンタ)は、水溶性染料を含有し、且つ商標名を有する開発組成物で構成した。
【0049】
比較例2
2-メチル-2,4-ペンタンジオールをブラックインクから省いたことを除き、実施例2のCYMKインクを調合した。
【0050】
実施例2と比較例2間の結果
両方のCYMKインクセットをGilbert Bond紙とChampion Data Copy紙上に印刷した。ブリード抑制試験のためにヒューレットーパッカード社で開発した一組のパターン印刷を使用した。ブリード抑制試験に当っては、種々の隣接パターンの組合せで印刷した。
【0051】
実施例2のインクは、比較例2のインクよりも良好なブラック−カラー間のブリード抑制を示すことが観察された。さらに、実施例2のインクは、比較例2のインクより長期間及び短期間デキャップが優れていた。実施例2のインクは、良好な始動性と印刷適性を示した。
【0052】
実施例3 ジオール
ブラックインクを、下記成分で調合した:
6重量% 2-ピロリドン
7重量% 3-ヘキシン-2,5-ジオール
0.5重量% 1,2-オクタンジオール
3.8重量% LEG-1
3重量% 耐久性ラテックスポリマーQX25A(実施例1と同じ)
1重量% プライマーラテックスポリマーQX26B(実施例1と同じ)
3重量% 顔料(実施例1と同じ)
バランス 水
インクのpHは、水酸化カリウムを使って8.5に調整した。
【0053】
カラーインク(シアン、イエロー、及びマゼンタ)は、水溶性染料を含有し、且つ特許品の開発組成物で構成した。
【0054】
比較例3
1,2-オクタンジオールをブラックインクから省いたことを除き、実施例3のCYMKインクを調合した。
【0055】
実施例3と比較例3間の結果
両方のCYMKインクセットをGilbert Bond紙とChampion Data Copy紙上に印刷した。ブリード抑制試験のためにヒューレットーパッカード社で開発した一組のパターン印刷を使用した。ブリード抑制試験に当っては、種々の隣接パターンの組合せで印刷した。
【0056】
実施例3のインクは、比較例3のインクよりも良好なブラック−カラー間ブリード抑制を示すことが観察された。さらに、実施例3のインクは、比較例3のインクより長期間及び短期間デキャップが優れていた。しかしながら、実施例3のインクは、1,2-オクタンジオールを1重量%より大きいより高い濃度レベルで使用した時は、フェザリング(feathering)を呈した。
【0057】
【発明の効果】
本明細書に開示されたように、有機エステル及びジオール/トリオールは、ブラックとカラーインク間のブリード抑制のために、インクジェットインクに使用されることが期待される。
【0058】
以上、ブラックとカラーインク間のブリード抑制のために、有機エステル及びジオール/トリオールが添加されたインクジェットインク組成物が開示された。自明な変更並びに修正を実行することができ、且つかかる変更並びに修正の全ては、本発明の請求の範囲内に帰属するものと考えられるということは、当業者には明らかであろう。
【0059】
以下に本発明及びその好ましい実施の態様を要約して示す。
1. 少なくとも1つの水溶性染料ベースのインクと組合されたインクジェット印刷用インクジェットインク組成物において、このインクジェットインク組成物が、自己分散性顔料とビヒクルを含み、さらに、有機エステル、ジオール、及びトリオールから成る群から選択される少なくとも1つの溶媒を顔料ベースのインクと水溶性染料ベースのインクとの間のブリードを減少するために有効な量に於いて存在させて含有する、インクジェットインク組成物。
2. 前記有機エステルが、式R-COOR'(式中、R及びR'は、それぞれ、水素、アルカン、アルケン、アルキン、アルコキシ、カルボキシレート、及びそれらの混合物であり、直鎖及び分枝鎖の両構造のもの、さらに全ての立体異性体のものも包含され、且つR及びR'は、それぞれ、1から5個の炭素原子を含む)である、上記1に記載のインクジェットインク組成物。
3. 前記-COOR'基が、クエン酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、グルコン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、セバシン酸、ラウリン酸、グルタル酸、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される酸の残基である、上記2に記載のインクジェットインク組成物。
4. 前記有機エステルが、クエン酸トリエチル、及びクエン酸アセチルトリエチルから成る群から選択される少なくとも1つのエステルを含む、上記3に記載のインクジェットインク組成物。
5. 前記有機エステルの前記インクジェットインク中の濃度が、約0.5から7重量%の範囲である、上記2に記載のインクジェットインク組成物。
6. 前記ジオールが、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,2,-ヘキサンジオールから成る群から選択される少なくとも1つのジオールからなる、且つ前記トリオールが、本質的に、3-メチル-1,3,5-ペンタントリオールからなる、上記1に記載のインクジェットインク組成物。
7. 1,2-オクタンジオール以外の、前記ジオール又は前記トリオールの前記インクジェットインク中の濃度が、約0.1から10重量%の範囲であり、且つ前記1,2-オクタンジオールの濃度が、約0.25から1重量%の範囲である、上記6に記載のインクジェットインク組成物。
8. 前記インクジェットインク組成物がさらに、下記式:
【化3】
(a) [(A)m(B)n(C)p(D)q(E)r]x (I)
式中、A、B、C、D、及びEは、次のような官能性を示す:
A = 改善された耐久性を有する塗膜形成特性(film-forming properties)に寄与する少なくとも1つの疎水性成分であり、この成分は固相に単一重合(homopolymerized)される時、−150℃及び+25℃間の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する部分から選択され;
B = 前記ポリマー(I)の疎水性成分のTgを調節するのに用いられる少なくとも1つの疎水性溶媒バリヤーの部分であり、これは固相に単一重合される時、+25℃を超える(Tg)を有し;
C = 広範囲にわたる種類の水溶性モノマーから選択される少なくとも1つの親水性成分であり(任意);
D = 少なくとも1つのUV吸収体であり(任意);
E = 少なくとも1つの高極性(highly polar)官能基を有する少なくとも1つの部分であって(任意);
m=5〜95重量%;
n=5〜95重量%;
p=0〜60重量%;
q=0〜50重量%;
r=0〜40重量%;
m+n+p+q+r=100重量%;かつ
x=1〜100,000、;及び
【化4】
(b) [(A)m(B)n(C)p(E)r]y (II)
式中、A、B、C、及びEは、上述と同じであり、式(II)のm、n、p及びrは、次の通りである:
m=0〜90重量%;
n=0〜90重量%;
p=0〜90重量%;
r=0.01〜100重量%;
m+n+p+r=100重量%であって;かつ
y=1〜100,000、からなる群から選択された、少なくとも1つのラテックスポリマーを含有する、上記1に記載のインクジェットインク組成物。
9. 自己分散性顔料とビヒクルとを含む顔料ベースのインクと、水溶性染料ベースのインクとの間のブリードを軽減する方法であって、前記自己分散性顔料含有の前記インクジェットインクに、上記1に記載の有機エステル、ジオール、及びトリオールから成る群から選択される前記溶媒の前記有効量を添加することを含む方法。
Claims (4)
- 少なくとも1つの水溶性染料ベースのインク及び顔料ベースのインクを含有するインクジェット印刷用インクジェットインクセットであって、前記顔料ベースのインクが自己分散性顔料とビヒクルを含み、さらに、前記顔料ベースのインクがクエン酸トリエチル及びクエン酸アセチルトリエチルからなる群より選択される溶媒を顔料ベースインクと水溶性染料ベースインクとの間のブリードを減少するために有効な量に於いて含む、インクジェットインクセット。
- 前記溶媒の前記インクジェットインク中濃度が、0.5〜7重量%の範囲である、請求項1に記載のインクジェットインクセット。
- 前記インクジェットインクセットがさらに、下記式:
【化3】
(a) [(A)m(B)n(C)p(D)q(E)r]x (I)
式中、A、B、C、D、及びEは、次のような官能性を示す:
A = 改善された耐久性を有する塗膜を形成する特性に寄与する少なくとも1つの疎水性成分であり、該成分は固相に単一重合(homopolymerized)される時、−150℃〜+25℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する部分から選択され;
B = 前記ポリマー(I)の疎水性成分のTgを調節するのに用いられる少なくとも1つの疎水性溶媒バリヤーの部分であり、固相に単一重合される時、+25℃を超える(Tg)を有し;
C = 広範な種類の水溶性モノマーから選択される少なくとも1つの親水性成分であり(任意);
D = 少なくとも1つのUV吸収体であり(任意);
E = 少なくとも1つの高極性(highly polar)官能基を有する少なくとも1つの部分であって(任意);
m=5〜95重量%;
n=5〜95重量%;
p=0〜60重量%;
q=0〜50重量%;
r=0〜40重量%;
m+n+p+q+r=100重量%;かつ
x=1〜100,000、;及び
【化4】
(b) [(A)m(B)n(C)p(E)r]y (II)
式中、A、B、C、及びEは、上述と同じものであり、式(II)のm、n、p及びrは、次の通りである:
m=0〜90重量%;
n=0〜90重量%;
p=0〜90重量%;
r=0.01〜100重量%;
m+n+p+r=100重量%であって;かつ
y=1〜100,000、
から成る群から選択される少なくとも1つのラテックスポリマーを含有する、請求項1に記載のインクジェットインクセット。 - 自己分散性顔料とビヒクルとを含む顔料ベースのインクジェットインクと、水溶性染料ベースのインクジェットインクとの間のブリードを軽減する方法であって、前記自己分散性顔料含有の前記顔料ベースのインクジェットインクに、クエン酸トリエチル及びクエン酸アセチルトリエチルからなる群より選択される溶媒を、顔料ベースインクジェットインクと水溶性染料ベースインクジェットインクとの間のブリードを減少するために有効な量に於いて添加することを含む、方法。
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