JP6611076B2 - インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
融点が30℃以上80℃未満の炭素数が7〜10の難水溶性の1,2−アルカンジオールは、例えば、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、4,4−ジメチル−1,2−ペンタンジオール、5−メチル−1,2−ヘキサンジオール、4−メチル−1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。「難水溶性」とは、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、1.0g未満であることを意味する。融点が30℃以上80℃未満の炭素数が7〜10の難水溶性の1,2−アルカンジオールの機能の一つとしては、界面活性効果である。すなわち、インク組成物とインク低吸収性または非吸収性の記録媒体との界面張力を適度に低下させることで、液滴と記録媒体との接触面積が大きくなる。これにより、記録媒体に対する液滴の定着性を高めることが挙げられる。他の機能の一つとしては、液滴の流動抑制効果である。すなわち、炭素数7以上の1,2−アルカンジオールは、炭素数7以上という特徴に起因して、粘度が高い液体又は固体である。これにより、記録媒体上にインク組成物の液滴が付着した後、当該液滴が流動しにくくなるので、凝集むらや、筋むらの発生を低減でき、記録媒体に対する定着性を高めることが挙げられる。
融点が80℃以上の水溶性の対称型両末端アルカンジオールとしては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールが挙げられる。なお、炭素数8以上の対称型両末端アルカンジオールは80℃以上と推測される。水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、分枝鎖を有していても良い。なお、本明細書中、「対称型両末端アルカンジオール」とは、両水酸基から等距離にある面を対称面とする、両末端アルカンジオールを意味する。また、「水溶性」とは、20℃での、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、10.0g以上であることを意味する。融点が80℃以上の水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、記録媒体上において常温で固化することから、低吸収性又は非吸収性の記録媒体へのインク組成物の乾燥性(タック性)及び定着性を高める機能を有する。
インク組成物は重量平均分子量2万以上のカルボキシル基含有樹脂を含み、重量平均分子量が2万以上12万以下のオキサゾリン基含有樹脂を含むことが好ましい。カルボキシル基含有樹脂とは、構造骨格中にカルボキシル基を有する化合物のことをいう。オキサゾリン基含有樹脂とは、構造骨格中にオキサゾリン基を有する化合物のことをいう。
なお、式(2)中、KOH中和酸価の値は、56.1である。
インク組成物は、有機アミンを含むことが好ましい。有機アミンとしては、特願2011−229474の段落0180記載の有機アミンを用いることができる。ただし、高揮発性溶剤を避けて作業環境に良好なインク組成物を提供する観点からは、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3,5‐トリアジン‐1,3,5(2H,4H,6H)‐トリエタノールが好ましい。
本実施形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含有する。インク低吸収性または非吸収性の記録媒体等を用いた場合であっても、インク組成物の液滴が記録媒体上で濡れ広がりやすくなり、液滴の定着性が良好なものになるので、凝集むらの発生や、筋むらの発生を低減できる。
色材としては、染料および顔料のいずれの色材も使用することができるが、耐光性や耐水性の観点から顔料を好適に使用できる。また、色材は、顔料およびその顔料をインク中に分散させることが可能な下記分散剤を含んでなることが好ましく、アニオン性とした分散液に含まれることが好ましい。
インク組成物は、構成モノマーとして疎水性モノマー及び親水性モノマーを含む共重合樹脂、オキシエチルアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、およびフルオレン骨格含有樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなることが好ましく、より好ましくは、オキシエチルアクリレート系樹脂およびフルオレン骨格含有樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなる。これら樹脂分散剤は、顔料に吸着して分散性を向上させる。
本発明によるインクジェット記録用インク組成物は、上記した成分に加えて、主溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
また、本発明によるインク組成物は、臭気や毒性が低い溶剤として、引火点が100℃以下の揮発性溶剤を含有することができる。例えば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、2−メチル−1,3−プロパンジオールが挙げられ、特に、対称型両末端アルカンジオールを12.0%以上含有させた場合の析出を抑制して、0℃以下の低温貯蔵安定性を向上させる観点で、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールが好ましい。ただし、インク組成物は、融点が30℃未満の溶剤を実質的に含まないことが好ましく、具体的には、1%以上含まないことが好ましい。インク組成物が高揮発性溶剤を含まないことにより、作業環境に臭気や毒性をもたらさない環境対応型のインク組成物を提供できる。
インク組成物は、顔料及び顔料分散剤を含む顔料分散液を製造した後に、この顔料分散液と、水と、界面活性剤と、融点が30℃以上80℃未満の炭素数が7〜10の難水溶性の1,2−アルカンジオールと、融点が80℃以上の水溶性の対称型両末端アルカンジオールとを混合して、十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径および異物を除去するためにろ過を行って目的のインク組成物を得ることができる。本発明の重要性は、分散液の製造法にも及ぶ。
本実施形態に係るインク組成物は、低吸収性又は非吸収性の記録媒体に好ましく用いられる。「低吸収性又は非吸収性記録媒体」とは、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体のことをいい、少なくとも被記録面がこの性質を備えていればよい。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
次に、本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置について説明する。本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、複数のノズル孔からなるノズル列を備えたヘッドを有する。本実施形態に係るインクジェット記録装置について、図1〜図2を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法であって、記録媒体に対しノズル孔から上述したインク組成物を吐出する工程と、上述したインク組成物に含まれる対称型両末端アルカンジオールの融点よりも低い温度で記録媒体を加熱する工程と、を含む。以下、インクジェット記録装置1を用いたインクジェット記録方法について、具体的に説明する。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
表1に示す各成分を加圧ニーダーに仕込んだ。この仕込み成分を混練し(工程2)、10時間後に顔料混練物を得た。仕込み時および顔料混練後における固形分の含有量は、表2に示す通りであった。2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールは常温で固体である。混練開始時点ではIPAは揮発していないが、混練中に混練物が高温になるため、ほぼ完全に揮発している。表2には、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールを固形分と見做さず顔料および樹脂のみを固形分と見做した場合の固形分の含有量と、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールを固形分と見做した場合の固形分の含有量を併記している。なお、以後、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールは、DMHDと表記する場合がある。
カラーインク組成物は、上記のようにして得られた顔料分散液と表3〜5に記載の成分を混合・攪拌し、10μmのメンブレンフィルターでろ過することにより調製した。表3〜5に実施例及び比較例のカラーインク組成物の成分及びその含有量を示す。
表3〜5のようにして得られたカラーインク組成物をインクジェットプリンター(商品名「PX−G5100」、セイコーエプソン株式会社製)のインクカートリッジに充填した。
(式(3)中、画像解像度は単位面積あたりの解像度である。)
(式(4)中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数である。)
(フィルム)
上記プリンターを用いて、記録媒体としてポリエチレンテレフタレートシートルミラーS10(東レ株式会社製)およびMACtac社製の塩化ビニルシートのJT5829RにDuty100%のベタ画像を記録した。このようにして得られた記録物を80℃のホットプレートに載せて15分間の加熱乾燥を実施して、評価サンプルを得た。
評価サンプルを指で押して、べたつき感の有無と、評価サンプルに残った指紋の後を観察した。なお、結果がAの場合に限り、加熱乾燥時間を3分に変更して、評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表3〜5に示す。
AA:3分間の乾燥後に、べたつき感が無く、指紋の後がない。
A:15分間の乾燥後に、べたつき感が無く、指紋の後がない。しかし、3分間の乾燥後は、べたつき感は無いが、指紋の跡が有る。
B:15分間の乾燥後に、べたつき感は無いが、指紋の跡が有る
C:15分間の乾燥後に、べたつき感が有り、指紋の後が有る
学振型摩擦堅牢性試験機(AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER、TESTER SANGYO.,LTD製)を用いて、乾燥した布(金巾)に、500gの加重を掛けて、10回擦る毎に、定着性を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表3〜5に示す。
A:30回後でも、記録画像の剥離がみられない
B:10回後では、記録画像の剥離がみられないが、20回後では、記録画像の剥離がみられる
C:10回後で、記録画像の剥離がみられる
記録媒体自体に可撓性があるMACtac社製の塩化ビニルシートJT5829Rの評価サンプルだけを用いた。この印刷面を外側にして完全に折り曲げた後、元に戻してから、学振型摩擦堅牢性試験機(AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER、TESTER SANGYO.,LTD製)に装着した。次に、乾燥した布(金巾)に、500gの加重を掛けて、10回擦る毎に、屈曲定着性を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表3〜5に示す。
A:30回後でも、記録画像の剥離がみられない
B:10回後では、記録画像の剥離がみられないが、20回後では、記録画像の剥離がみられる
C:10回後で、記録画像の剥離がみられる
学振型摩擦堅牢性試験機(AB−301 COLOR FASTNESS RUBBING TESTER、TESTER SANGYO.,LTD製)を用いて、水を含ませた布(金巾)に、500gの加重を掛けて、10回擦る毎に、耐水性を評価した。評価基準は次の通りであり、評価結果を表3〜5に示す。
A:30回後でも、記録画像の剥離がみられない
B:10回後では、記録画像の剥離がみられないが、20回後では、記録画像の剥離がみられる
C:10回後で、記録画像の剥離がみられる
表3〜5のようにして得られたカラーインク組成物の粘度を振動型粘度計で測定してから、ガラス製のラボランスクリュー管瓶50ml容器に、30ml加えて蓋をして、60℃の恒温槽に放置した。1週間後に恒温槽からラボランスクリュー管瓶を取り出し、20℃環境下に1日放置した。その後、再び放置前と同様に、粘度を測定して下式に従い判定した。
式:粘度変化率(%)=(放置後粘度−放置前粘度)÷放置前粘度×100
A:粘度変化率が5%未満
B:実使用上の問題はないが、粘度変化率が5%以上10%未満である。
表3〜5に示すように、実施例1〜8に係るインク組成物によれば、融点が30℃以上80℃未満の溶剤よりも、融点が80℃以上の溶剤を多く含んでいるため、常温でのタック性、定着性に優れることが示された。比較例1〜12は、融点が30℃以上80℃未満の溶剤よりも、融点が80℃以上の溶剤を多く含んでいないため、フィルムにおいて、タック性、定着性、耐水性の面で実施例と比べて劣る結果となった。また、実施例3〜8において、オキサゾリン樹脂をさらに含有することで、耐水性が向上することが示された。
Claims (9)
- 水と、色材と、界面活性剤と、融点が30℃以上80℃未満の炭素数が7〜10の難水溶性の1,2−アルカンジオールと、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールと、を含み、
前記難水溶性の1,2−アルカンジオールは、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、4,4−ジメチル−1,2−ペンタンジオール、5−メチル−1,2−ヘキサンジオール、4−メチル−1,2−ヘキサンジオールのいずれかであり、
2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールと、前記難水溶性の1,2−アルカンジオールと、の重量比が3:1〜6:1である、
インク組成物。 - 2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールを3.0〜18.0質量%含む、請求項1に記載のインク組成物。
- 前記難水溶性の1,2−アルカンジオールを1.0〜3.0質量%含む、請求項1および請求項2のいずれかに記載のインク組成物。
- さらに、前記インク組成物は重量平均分子量2万以上のカルボキシル基含有樹脂を含み、重量平均分子量が2万以上12万以下のオキサゾリン基含有樹脂を含む、請求項1および請求項2のいずれかに記載のインク組成物。
- 前記オキサゾリン基含有樹脂の全質量中におけるオキサゾリン基のモル数(MA)と、前記カルボキシル基含有樹脂の全質量中におけるカルボキシル基のモル数(MB)と、の比(MA/MB)は、10以上40以下である、請求項4に記載のインク組成物。
- さらに、有機アミンを0.1〜3.0質量%含む、請求項4および請求項5のいずれかに記載のインク組成物。
- 前記界面活性剤として、オルガノシロキサンを0.1〜1.0質量%含む、請求項1〜6のいずれかに記載のインク組成物。
- さらに、融点が30℃未満の溶剤を1%以上含まない、請求項1〜7のいずれかに記載のインク組成物。
- 記録媒体に対しノズル孔から請求項1〜8のいずれかに記載のインク組成物を吐出する工程と、
前記対称型両末端アルカンジオールの融点よりも低い温度で記録媒体を加熱する工程と、
を含む、インクジェット記録方法。
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