JP4708290B2 - ポリエステル樹脂水分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる皮膜形成物 - Google Patents
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Description
融点50〜110℃、結晶融解熱量60J/g以上、降温結晶化温度30℃以上、および酸価20〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A);および
融点50℃未満および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b1)、融点を有さず、かつガラス転移点50℃以下および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b2)、またはそれらの混合物からなるポリエステル樹脂(B);
を、(A)/(B)=3/97〜50/50(質量比)の範囲で含有していることを特徴とするポリエステル樹脂水分散体に関する。
本発明においてポリエステル樹脂(A)は、融点が50〜110℃、好ましくは60〜100℃の範囲内である。融点が低すぎる場合には、水分散体を乾燥して得られる皮膜形成物の耐ブロッキング性発現に比較的長時間を要する。融点が高すぎる場合には、脂肪族成分を主とするポリエステル樹脂のときは安定な水分散体が得られず、また、芳香族成分を主とするポリエステル樹脂のときは、安定な水分散体を得るための組成においては結晶性が低く、乾燥して得られる形成物の耐ブロッキング性発現に比較的長時間を要するため好ましくない。
ポリエステル樹脂(b1)のガラス転移点は特に限定されず、通常は例えば−30〜−10℃である。
詳しくはポリエステル樹脂(b2)を、DSC(示差走査熱量)測定装置(パーキンエルマー社製 DSC7)で、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温測定したとき、吸熱ピークは現れない。なお、ピークとはその前後において接線の傾きが正または負で異なるときの頂点を指すものとする。
また例えば、酸成分としてコハク酸とセバシン酸を、グリコール成分として1,4−ブタンジオールを用いる場合においてコハク酸にセバシン酸を共重合すると融点および降温結晶化温度は低くなる。
(AC1)ドデカン二酸−エチレングリコール;
(AC2)セバシン酸−1,4−ブタンジオール;
(AC3)セバシン酸およびコハク酸−1,4−ブタンジオール。
皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性をより迅速に発現させる観点から、上記組み合わせ(AC1)が最も好ましい。
(BC1)テレフタル酸およびイソフタル酸−セバシン酸−1,4−ブタンジオール;
(BC2)テレフタル酸およびイソフタル酸−セバシン酸−エチレングリコールおよびネオペンチルグリコール。
ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)はカルボキシル基を有し、水分散体中、当該カルボキシル基の一部または全部が塩基性化合物で中和されている。その結果、カルボキシルアニオンが生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず安定に分散するため、界面活性剤を使用せずに分散安定性の良好なポリエステル樹脂水分散体が得られる。
本発明のポリエステル樹脂水分散体は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を混合したのち水分散体としてもよいが、両者を別々に水分散体としたのち、所定の割合で混合攪拌することのほうが、両成分の特徴を十分に引き出し、かつ、製造も容易である。すなわち、ポリエステル樹脂(A)の水分散体とポリエステル樹脂(B)の水分散体を混合することが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)を両親媒性有機溶剤に溶解させて溶液を得る。両親媒性有機溶剤は、親水性であり、かつ、それ自身が水と共沸する作用を有するものであり、好ましくは、アルコール、ケトン、エーテル、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有するものであり、特に沸点110℃以下のものが好ましい。
次に、ポリエステル樹脂(A)の両親媒性有機溶剤溶液と、水および前記の塩基性化合物とを混合することにより転相乳化をおこなう。このとき、混合の順序は特に限定されず、例えば、前記溶液を攪拌しておき、ここに水と塩基性化合物との混合液を少量ずつ添加してもよいし、塩基性化合物を加えた後、水を加えてもよい。
乳化の後、水分散体の保存安定性の観点から、両親媒性有機溶剤を溜去する。両親媒性有機溶剤は、水とともに共沸させることによって、系外へ溜去することができる。溜去の程度は所望の性能や安定性の観点から適宜決定すればよいが、ポリエステル樹脂(A)水分散体全体の0.5質量%以下にまで溜去することができる。有機溶剤の含有率はガスクロマトグラフィで定量することができる。
本発明の水分散体の粘度は、特に限定されないが、例えば、基材への塗布等を目的とする場合には、1〜100mPa・sの範囲にあれば良好である。また、水分散体の体積平均粒径も特に限定されないが、400nm以下であれば安定となるため好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
本発明の水分散体を基材表面にコートした後、分散媒体(水性媒体)を除去することによって、均一な皮膜を基材表面に密着させて形成できる。詳しくは、本発明の水分散体は、皮膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂皮膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の特性等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、90〜160℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分間が好ましく、10秒〜5分が特に好ましい。
なお、各種の特性については、以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量)測定装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温測定をおこない、200℃で3分間保ったのち、速度20℃/分で−40℃まで降温測定をおこなった。このとき得られた結晶に由来するピークのうち、昇温測定時のピークトップ温度(JIS K 7121で定義された融解ピーク温度Tpm)を融点とし、このときの吸熱量を融解熱量とし、降温測定時のピークトップ温度(JIS K 7121で定義された結晶化ピーク温度Tpc)を結晶化温度とした。また同様の測定をおこない、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温する過程で発現する吸熱側への変位の立ち上がりの温度(JIS K 7121で定義された補外ガラス転移開始温度Tig)をガラス転移点とした。
ポリエステル分散体を1g秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリエステル樹脂固形分濃度を求めた。
(5)ポリエステル樹脂水分散体の粘度
株式会社トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度30℃における水分散体の回転粘度を測定した。
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水分散体または水分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
株式会社堀場製作所製、ガラス電極式水素濃度計、pH METER F−21を用いて25℃で測定した。
(8)ポリエステル樹脂粒子の平均粒径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、体積平均粒子径を求めた。
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材(実施例ではポリエステル(PET)フィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ38μm))の厚みを予め測定しておき、水分散体を用いて基材上に樹脂皮膜を形成した後、この樹脂皮膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂皮膜の厚さとした。
PETフィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ38μm)に水分散体を卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、マイヤーバー装着)を用いてコートし、120℃の熱風オーブン中で1分乾燥して厚さ5μmの樹脂皮膜を形成した後、23℃の室温に取り出し、PETフィルムをコート面が接触するように重ね合わせてタックが消滅するまでの時間(秒)を測定した。15秒以下を実用上問題のない範囲、10秒以下を好ましい範囲と判定した。タックとは粘着性であり、重ね合わせたPETフィルムに50KPaの圧力をかけても接着しなくなったとき、タックが消滅したものと認定した。1時間でタックが消滅しないものを「消滅せず」とした。
(10)と同様にして樹脂皮膜を形成し、23℃の室温に1日間放置した後、コート面が接触するように重ねて、50KPaの圧力をかけて45℃で7日間静置した。その後、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い20℃の雰囲気で、剥離面の角度90度、剥離速度50mm/分、剥離幅25mmの剥離強度を測定した。0.1N/25mm以下を実用上問題のない範囲内、0.05N/25mm以下を好ましい範囲と判定した。
(10)と同様にして樹脂皮膜を形成し、23℃の室温に1日間放置した後、コート面が接触するように重ねて、ヒートプレス機にて、120℃、シール圧0.2MPa、10秒間圧着した。このサンプルを(11)と同様に剥離強度を測定した。3.0N/25mm以上を実用上問題のない範囲内、5.0N/25mm以上を好ましい範囲と判定した。
5℃の環境下で貯蔵したところ、1ヶ月以上たっても沈殿や層分離や固化が生じないものを「安定」と認定した。1ヶ月後、沈殿や層分離や固化が生じたものを「不安定」と認定した。
(ポリエステル樹脂「P−1」の製造例)
ドデカン二酸253.6g、エチレングリコール95.2g、トリメチロールプロパン0.7g、テトラ−n−ブチルチタネート0.11gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、235℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。3時間後に系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸10.4gを添加し、1.5時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂「P−1」を得た。
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−1」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−2」〜「P−5」を得た。
テレフタル酸78.6g、セバシン酸143.7g、1,4−ブタンジオール153.4g、テトラ−n−ブチルチタネート0.12gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、220℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。4時間の重合反応後に系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸8.7gを添加し、2時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂P−6を得た。
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−6」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−7」、「P−9」および「P−11」を得た。
テレフタル酸99.6g、イソフタル酸16.6g、セバシン酸60.6g、ネオペンチルグリコール59.3g、エチレングリコール38.4gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、250℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物0.13gを添加した後、系の温度を270℃にし、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。3時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ250℃になったところで無水トリメリット酸1.15gを添加し、2時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂P−8を得た。
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−8」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−10」および「P−12」を得た。
EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、BD:1,4−ブタンジオール、TMP:トリメチロールプロパン
EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、BD:1,4−ブタンジオール、TMP:トリメチロールプロパン
(ポリエステル樹脂水分散体「E−1」の製造)
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−1」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン27gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら680.3gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。さらに28%のアンモニア水2.6gを添加して攪拌した後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過を行い、ポリエステル樹脂水分散体「E−1」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
ポリエステル樹脂「P−2」を用い、トリエチルアミンを33gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−2」を得た。
ポリエステル樹脂「P−3」を用い、トリエチルアミンに代えて28%のアンモニア水を19gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行ってポリエステル樹脂水分散体「E−3」を得た。
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−4」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン35gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら680.3gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却したところ固化した。
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−5」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン35gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出が進むにつれて樹脂が凝集し均一な分散体は得られなかった。
ポリエステル樹脂「P−6」を用い、トリエチルアミンに代えて28%のアンモニア水を15gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−6」を得た。
2リットルのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂「P−7」を400gとメチルエチルケトンを600g投入し、約70℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2リットル)に前記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を18℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン38gを添加し、続いて100g/minの速度で18℃の蒸留水462gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に20℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水分散体を得た。次いで、得られたポリエステル樹脂水分散体800gを丸底フラスコに仕込み、これを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら284gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。さらに28%のアンモニア水2.1gを添加して攪拌した後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過をおこない、ポリエステル樹脂水分散体「E−7」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
それぞれポリエステル樹脂「P−8」、「P−9」、「P−11」および「P−12」を用いた以外はポリエステル樹脂水分散体「E−7」の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−8」、「E−9」、「E−11」および「E−12」を得た。
3リットルの3口丸底フラスコに水558.4g、イソプロピルアルコール135.0g、ポリエステル樹脂「P−10」300g、28質量%アンモニア水6.4gを採り、温浴に浸漬して攪拌しながら内温70℃に加熱した。1時間後、加熱攪拌を持続しながら系に水249.8gを加えた。次いでフラスコに冷却管を取り付け、油浴を85℃としてイソプロピルアルコールと水を共沸させて留出した。留出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。留出液の質量を測りながら249.8gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過を行い、ポリエステル樹脂水性分散体「E−10」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−13」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」30gと「E−7」70gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−14」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」5gと「E−8」95gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−15」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」40gと「E−8」60gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−16」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−2」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−2」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−17」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−3」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−3」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−18」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−11」を用い、「E−1」25gと「E−11」75gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−19」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−12」を用い、「E−1」27gと「E−12」73gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−20」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を単独で用いた。
ポリエステル樹脂(A)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を単独で用いた。
ポリエステル樹脂(B)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を単独で用いた。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」55gと「E−7」45gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−21」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」60gと「E−8」40gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−22」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−6」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−6」15gと「E−8」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−23」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−9」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−9」15gと「E−8」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−24」を得た。
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−10」を用い、「E−1」25gと「E−10」75gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−25」を得た。
比較例1、2では耐ブロッキング性の試験において本来の接着性に近い値ほどのブロキングが生じる。
比較例3では耐ブロッキング性は優れるものの、接着性が非常に低い。
比較例4、5ではポリエステル樹脂(A)の比率が50%をこえると接着性が劣ることが明確である。
比較例6、7では接着性は優れているがタック消滅時間が長く、耐ブロッキング性に欠ける。
比較例8ではポリエステル樹脂(B)のガラス転移点が50℃を超えると接着性が著しく低下することが明確である。
Claims (9)
- 融点50〜110℃、結晶融解熱量60J/g以上、降温結晶化温度30℃以上、および酸価20〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A);および
融点50℃未満および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b1)、融点を有さず、かつガラス転移点50℃以下および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b2)、またはそれらの混合物からなるポリエステル樹脂(B);
を、(A)/(B)=3/97〜50/50(質量比)の範囲で含有し、
前記ポリエステル樹脂(B)が多塩基酸、多価アルコールおよびヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される成分から構成され、少なくとも多塩基酸および多価アルコールを構成成分として含むことを特徴とするポリエステル樹脂水分散体。 - 多塩基酸が、飽和脂肪族ジカルボン酸および不飽和脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族多塩基酸、芳香族ジカルボン酸からなる芳香族多塩基酸、脂環族ジカルボン酸からなる脂環族多塩基酸、および3官能以上の多塩基酸からなる群から選択され、
多価アルコールが、脂肪族グリコール、脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール、および3官能以上の多価アルコールからなる群から選択され、
ヒドロキシカルボン酸が、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体からなる群から選択される請求項1に記載のポリエステル樹脂水分散体。
- 飽和脂肪族ジカルボン酸が、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、および水添ダイマー酸からなる群から選択され、
不飽和脂肪族ジカルボン酸が、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、およびダイマー酸からなる群から選択され、
芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびビフェニルジカルボン酸からなる群から選択され、
脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、無水2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、および無水テトラヒドロフタル酸からなる群から選択され、
3官能以上の多塩基酸が、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、および1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸からなる群から選択され、
脂肪族グリコールが、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、および2−エチル−2−ブチルプロパンジオールからなる群から選択され、
脂環族グリコールが1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、
エーテル結合含有グリコールが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、および2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンからなる群から選択され、
3官能以上の多価アルコールが、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールからなる群から選択される請求項2に記載のポリエステル樹脂水分散体。 - 3官能以上の多塩基酸の使用量が該ポリエステル樹脂を構成する全酸成分に対し10モル%以下であり、
3官能以上の多価アルコールの使用量が該ポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分に対し10モル%以下である請求項2に記載のポリエステル樹脂水分散体。 - ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)がカルボキシル基を有し、かつ、該カルボキシル基の一部または全部が塩基性化合物で中和されており、
水分散体のpHが6.6以上である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体。 - ポリエステル樹脂(A)が少なくとも脂肪族多塩基酸と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有し、
ポリエステル樹脂(B)が少なくとも芳香族多塩基酸と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体。 - ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分に占める脂肪族多塩基酸の割合が60モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(A)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合が80モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分に占める芳香族多塩基酸の割合が40モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(B)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合が80モル%以上である請求項6に記載のポリエステル樹脂水分散体。 - 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体をコートした後、分散媒体を除去してなる皮膜。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体の製造方法であって、ポリエステル樹脂(A)の水分散体とポリエステル樹脂(B)の水分散体を混合することを特徴とする製造方法。
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