JP4703869B2 - 熱可塑性樹脂積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面光沢、耐擦り傷性、耐候性、熱水や溶剤に対する耐性に優れ、かつ機械的強度や耐衝撃性にも優れた熱可塑性樹脂積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル系樹脂は、透明性、表面光沢、耐候性に優れ、比較的高い表面硬度を有することから、従来から、その特徴を活かし、様々な樹脂の表層材として用いられてきており、特に、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂やABS樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂との組合せによる積層体が広く使用されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、衝撃性、透明性、耐熱性に優れており、種々の用途に用いられている。例えば、押出し成形されたシートは、カーポート、看板、建築用グレージング材、各種車両用グレージング材、防音壁等の産業分野で広く使用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は単独では、耐候性、耐擦り傷性、耐溶剤性などの表面特性に劣り、これを改良する方法として種々の方法が提案されている。
【0004】
ポリカーボネートの耐候性を改良する手段としては、ポリカーボネート表面に紫外線吸収剤を含有するアクリル系樹脂で被覆する方法(特公昭47−19119号、特開昭55−59929、特開平2-175245号、特開平4−270652号)が提案されているが、この方法では耐候性は改善されるものの、耐溶剤性あるいは耐擦り傷性は改善されないままである。
【0005】
一方、ポリカーボネートの耐擦り傷性、耐溶剤性を改善する方法としては、オルガノシロキサン系、メラミン系などの熱硬化型樹脂あるいは多官能アクリル系の光硬化型樹脂をコーティングする方法が採用されているが、この方法では、コストの低減化や生産性の向上が困難である。
【0006】
ポリカーボネート同様、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、AAS樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂も耐衝撃性に優れており、機械的強度等の力学的特性と加工性のバランスに優れていることから、車両、家庭用品、雑貨、一般機器などの幅広い分野で使用されている。しかしながら、これらのゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム状重合体を含有するために表面硬度が低くて傷つきやすく、また表面の高級感にややかけるという欠点を有する。これらの表面特性を改善する手段としては、たとえばABS樹脂表面にアクリル系樹脂を被覆する方法が提案されている。
【0007】
特表平10−50258では、ABS樹脂とアクリル系樹脂との積層体を浴槽または洗面器などの衛生用品用シートに使用するにあたって、熱水−冷水耐性、アルコールに対する応力亀裂耐性を改善する方法が提案されているが、この方法でも、耐溶剤性に関しては満足いくものではなかった。
【0008】
また、ABSの表面特性を改善する手段として、表面を塗装したり、表面コーティングする方法もあるが、コストや生産性の点で問題が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、上記の従来の問題点を改良し、表面光沢、耐擦り傷性、耐候性、熱水や溶剤に対する耐性に優れ、かつ機械的強度や耐衝撃性にも優れた熱可塑性樹脂積層体を高生産性かつ低コストで提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有し、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、該鉛筆引掻き試験値がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層と、を有し、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲であり、前記重合体(a)は、(メタ)アクリレート系単量体(a1)と2−(ヒドロキシアルキル)アクリレート系単量体とを少なくとも含む単量体成分を重合した共重合体であり、前記熱可塑性樹脂(A)の有するラクトン環構造が、下記一般式(1)で表わされる構造であり、前記熱可塑性樹脂(B)は、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする熱可塑性樹脂積層体という構成を提案する。
【化2】
(上記式(1)中、R 1 、R 2 およびR 3 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基には酸素原子を含んでもよい。)
【0014】
さらに好ましくは、前記熱可塑性樹脂(A)がメタクリル酸メチル単量体単位を含有する熱可塑性樹脂積層体である。さらに具体的には、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みと前記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層の厚みの比が1/99〜50/50であるシート状の形態の熱可塑性樹脂積層体である上記構成を採用することで、表面光沢、耐擦り傷性、耐候性、熱水や溶剤に対する耐性に優れ、かつ機械的強度や耐衝撃性にも優れた熱可塑性樹脂積層体が得られ、またさらに共押出成形で高生産性かつ低コストで前記熱可塑性樹脂積層体が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂積層体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有し、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有する層と、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層が積層されてなるものである。より具体的には、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲である熱可塑性樹脂積層体である。以下、各層について各々説明する。
【0016】
<熱可塑性樹脂(A)を主成分として含有する層>
熱可塑性樹脂(A)は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂である。
前記ラクトン環構造は、具体的には、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
【0017】
【化3】
【0018】
(式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基には酸素原子を含んでもよい。)前記一般式(1)で表されるラクトン環構造を形成するためには、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)としては、例えば、(メタ)アクリレート系単量体(a1)および下記一般式(2)で表される構造単位を有するビニル単量体(a2)を含む単量体成分を重合して得られる重合体が好ましく挙げられる。
【0019】
【化4】
【0020】
(式(2)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
前記(メタ)アクリレート系単量体(a1)は、前記一般式(2)で表される、例えば2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル構造単位を有するビニル単量体以外の、いわゆる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であれば特に限定されない。例えば、アルキル基等を持つ脂肪族(メタ)アクリレートでもいいし、シクロヘキシル基等を持つ脂環式(メタ)アクリレートでもよいし、ベンジル基等を持つ芳香族(メタ)アクリレートでもよい。また、これらの基の中に所望の置換基あるいは官能基が導入されていてもいい。
【0021】
前記(メタ)アクリレート系単量体(a1)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂(A)の耐候性、表面光沢、透明性の点では、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルが好ましく、得られる熱可塑性樹脂(A)の表面硬度の点でより好ましくはメタクリル酸メチルがよい。また、シクロヘキシル基を持つ(メタ)アクリレートは、熱可塑性樹脂(A)に疎水性を付与しその結果、熱可塑性樹脂(A)の吸水率を低減でき、また熱可塑性樹脂(A)に耐候性を付与できる点で好ましい。また、芳香族基を持つ(メタ)アクリレートは、芳香環により、さらに得られる熱可塑性樹脂(A)の耐熱性の向上が図れる点で好ましい。
【0022】
単量体成分中、前記(メタ)アクリレート系単量体(a1)の割合は、特に制限されるものではないが、95〜10重量%が好ましく、90〜10重量%がより好ましい。さらに、良好な透明性、耐候性を保持させるためには、全単量体成分中、90〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは90〜60重量%、さらに好ましくは90〜70重量%であるのがよい。
【0023】
本発明においては、前記(メタ)アクリレート系単量体(a1)として、不飽和モノカルボン酸(a1’)を併用してもよい。不飽和モノカルボン酸(a1’)を併用することにより、ラクトン環構造とともにグルタル酸無水物環構造が導入された熱可塑性樹脂(A)を得ることができ、耐熱性や機械的強度をより向上させることができるので好ましい。不飽和モノカルボン酸(a1’)としては、例えば、(メタ)アクリル酸やクロトン酸、またはそれらの誘導体であるα−置換アクリル酸単量体等が例示できるが特に限定されない。好ましくは、(メタ)アクリル酸であり、さらに耐熱性の点ではメタクリル酸が好ましい。また、重合体(a)における前記(メタ)アクリレート系単量体(a1)由来のエステル基が加熱等の条件により、不飽和カルボン酸(a1’)と同等の構造となっていてもよい。また、不飽和カルボン酸(a1’)が持つカルボキシル基は、後述する環化縮合反応に支障がなければ、例えば、ナトリウム塩など金属塩等の塩の構造になっていてもいい。なお、単量体成分中、不飽和モノカルボン酸(a1’)の割合は、特に制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜設定すればよい。
【0024】
前記一般式(2)で表される構造単位を有するビニル単量体(a2)としては、例えば、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の誘導体が挙げられる。具体的には、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル系単量体が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸―t―ブチル等が挙げられ、この中でも特に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルと2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましい。さらに、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが、表面硬度、耐熱水性あるいは耐溶剤性の向上効果が高いことから、最も好ましい。なお、これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
単量体成分中、前記一般式(2)で表される構造単位を有するビニル単量体(a2)の割合は、特に制限されるものではないが、5〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは10〜40重量%であり、より好ましくは15〜35重量%である。ビニル単量体(a2)の割合が前記範囲より少ないと、環構造の量が少なくなるため、積層体の表面硬度が低くなったり、耐熱水性や耐溶剤性も低くなる場合がある。また、積層体の耐熱性が低くなる場合もある。一方、前記範囲より多いと、ラクトン環構造を形成する際に、架橋反応が起こってゲル化しやすくなり、流動性が低下し、溶融成形しにくくなる場合がある。また、未反応の水酸基が残りやすくなるため、得られた熱可塑性樹脂(A)を成形する時に、さらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生し、積層体に泡や、シルバーストリーク(表面の銀条模様等)が入りやすくなる場合がある。
【0026】
重合体(a)を得る際の単量体成分としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記(a1)および(a2)以外の重合性単量体を用いることも可能である。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等が挙げられる。なお、これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。重合体(a)を得る際の単量体成分として上記重合性単量体を併用する際には、これらの単量体の含有量は、単量体成分中、0〜30重量%以下が好ましく、より好ましくは0〜20重量%以下、さらに好ましくは0〜10重量%以下とするのがよい。物性等の点で、所定量以上用いると、(メタ)アクリレート系単量体由来の良好な物性である耐候性、表面光沢あるいは透明性等の物性が損なわれる場合がある。
【0027】
前記単量体成分を重合して前記重合体(a)を得る際の重合反応の方法としては、特に限定されないが、溶液重合または塊状重合が好ましい。欧州特許1008606号で示されているように、前記重合体(a)を環化縮合反応させて熱可塑性樹脂(A)を得る方法においては、溶液中で加熱処理することが好ましいことから、溶液重合が特に好ましい。なお、重合温度、重合時間は、使用する単量体成分の種類、比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度50〜150℃、重合時間0.5〜20時間であり、さらに好ましくは、重合温度80〜140℃、重合時間1〜20時間であるのがよい。
前記重合体(a)を得る際の重合反応において用いることのできる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、通常のラジカル重合反応で使用されるものを用いることができ、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフラン;等が挙げられる。特に、使用する溶剤の沸点が高すぎると、熱可塑性樹脂(A)中の残存揮発分が多くなることから、処理温度で重合体(a)を溶解しうるもので、沸点が50〜200℃のものが好ましく、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類等がさらに好ましく挙げられる。溶剤の量は、全量の5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜75重量%とするのがよい。5重量%より少ないと、重合体(a)の粘度が高くなって取り扱いにくくなり、一方、90重量%を超えると、揮発すべき溶剤が多すぎて生産性が低下してしまう。
【0028】
重合反応時には、必要に応じて、開始剤を添加してもよい。開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0029】
前記のようにして得られる重合体(a)の分子量については、特に制限されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(MW)が1,000〜1,000,000であることが好ましい。より好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは50,000〜300,000である。Mwが前記範囲より低いと、環構造をもつ熱可塑性樹脂(A)の機械的強度が低下して、脆くなる。一方、前記範囲より高いと、流動性が低下して成形しにくくなる。
【0030】
熱可塑性樹脂(A)は、前記重合体(a)を環化縮合反応させて環構造を形成させることによって得られる。前記環化縮合反応とは、加熱により、前記重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基(もしくはさらにカルボキシル基)が環化縮合してラクトン環構造を生じる反応であり、該環化縮合によってアルコールと水が副生する。このように環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与されると共に高い表面硬度、耐熱水性、耐溶剤性が付与される。
前記重合体(a)を環化縮合させてラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を得る方法としては、例えば、1)前記重合体(a)を押出機にて減圧下、加熱して環化縮合反応させる方法(Polym.Prepr.,8,1,576(1967)、2)前記重合体(a)の環化縮合反応を溶剤存在下で行い、かつ、該環化縮合反応の際に同時に脱揮を行う方法、3)特定の有機リン化合物を触媒として用い、前記重合体(a)を環化縮合させる方法(欧州特許1008606号)等がある。勿論、これらに限定されるものではなく、上記1)〜3)の方法のうち、複数の方法を採用してもよい。特に、環化縮合反応の反応率が高く、積層体に泡やシルバーストリークが入るのを抑制することができ、脱揮中の分子量低下による機械的強度の低下を抑えられる点からは、2)および3)を用いた方法が好ましい。
【0031】
本発明における熱可塑性樹脂(A)は、重量平均分子量が1,000〜1,000,000、さらに好ましくは5,000〜500,000、最も好ましくは50,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲より低いと、表面硬度、耐熱水性あるいは耐溶剤性が低下するばかりではなく、機械的強度が低下し、脆くなりやすいという問題があり、一方、前記範囲より高いと、流動性が低下して成形しにくくなるので、好ましくない。
【0032】
本発明における熱可塑性樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは115℃以上、さらに好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上である。ガラス転移温度が115℃未満であると耐熱水性が低下する。
【0033】
本発明における熱可塑性樹脂(A)のダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率は1.0%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以下であり、さらにより好ましくは0.3%以下である。
【0034】
本発明における熱可塑性樹脂(A)は、ラクトン環構造を有しており、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少量から求められる、ラクトン環構造の占める割合は、ラクトン環構造が5〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。なお、ラクトン環構造の占める割合は、具体的には、実施例で後述する方法で算出することができる。
本発明におけるラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)はそれ自体耐候性に優れたものであるが、屋外で使用する場合には、本発明のラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層が紫外線吸収機能を有する事が好ましい。具体的には、本発明のラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層に、紫外線吸収性および/または紫外線安定性を持たせることが好ましい。その方法としては、上記ラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を製造する時の単量体成分として紫外線吸収性単量体および/または紫外線安定性単量体を用いる方法や、紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を上記ラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)に配合する方法がある。またこれらは、本発明のラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の物性に支障がない限り、これらの方法を併用してもかまわない。また、上記紫外線吸収機能を持続させるためには、紫外線吸収性単量体と紫外線安定性単量体を併用することや、紫外線吸収剤と紫外線安定剤を併用する事が好ましい。また、紫外線吸収性単量体および/または紫外線安定性単量体と合わせて、紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を併用することも好ましい。
【0035】
上記、紫外線吸収性単量体の種類としては、ベンゾトリアゾール系化合物あるいはベンゾフェノン系化合物あるいはトリアジン系化合物と重合性不飽和基を有するアクリル系単量体が挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−5'−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3'−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどを用いることができる。また、ベンゾフェノン系化合物としは、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4'−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンなどを用いることができる。また、トリアジン系化合物としては、例えば,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジンなどを用いることができる。このような紫外線吸収性単量体を用いる場合には、全単量体の0.1〜25重量%共重合されることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%共重合されることが好ましい。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性、耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
【0036】
上記紫外線安定性単量体としては、ヒンダードアミン系化合物に重合性不飽和基が結合されたものを用いることができ、具体例としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。このような紫外線安定性単量体を用いる場合には、全単量体の0.1〜25重量%共重合されることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%共重合されることが好ましい。含有量が少ないと耐候性向上の寄与が低く、含有量が多すぎると耐熱水性、耐溶剤性が低下したり、黄変を引き起こす場合がある。
【0037】
上記、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、およびトリアゾール系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。さらに、ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。また、更に、トリアゾール系化合物としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて使用することができる。上記紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、ラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層中に0.01〜25重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
【0038】
本発明における熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層には、前記熱可塑性樹脂(A)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ他の各種添加剤や、他の熱可塑性樹脂を含有させておくことができる。但しその場合でも、本発明における熱可塑性樹脂(A)を含有する層において、熱可塑性樹脂(A)の占める割合は、50−100重量%の範囲が好ましく、75−100重量%の範囲がさらに好ましく、90−100重量%の範囲がより好ましい。
【0039】
上記添加剤としては、特に限定はないが、先に例示した紫外線吸収剤の他に、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ガラス繊維等の補強材;トリス(ジブロムプロピル)ホスフェート、四臭化エチレン、酸化アンチモン、ジンクボレート等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;等が挙げられる。これら添加剤の添加時期および添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜設定すればよい。
【0040】
本発明における熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層は、通常、フィルム状、シート状等に成形して形成すればよい。成形は150〜350℃で行うのが好ましく、より好ましくは200〜300℃であるが、耐熱性、流動性などの樹脂の性質に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。成形方法としては特に限定されず、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形等が挙げられる。フィルム状、シート状の積層体を得る場合、コスト削減、生産性向上および成形性向上を図る点で、熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層とともに共押出成形することが好ましい。
【0041】
<熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層>
本発明における熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層に使用できる熱可塑性樹脂(B)とは、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、AS(アクリロニトリルースチレン)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂が挙げることができ、これらの1種以上が使用できる。より好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン樹脂および塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂である。上記の熱可塑性樹脂でより好ましくは、上記鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)が、HB以下、さらに好ましくはB以下、さらに好ましくは2B以下の熱可塑性樹脂である。また、上記熱可塑性樹脂のアイゾット衝撃強度の好ましい範囲は、15kJ/m2以上、さらに好ましくは20kJ/m2以上、より好ましくは30kJ/m2以上である。
【0042】
なお上記の主成分という意味は、具体的には本発明における熱可塑性樹脂(B)から形成される層を100重量%とした時に、上記熱可塑性樹脂(B)の含有量が50−100重量%の範囲である。さらに好ましくは70−100重量%で、さらには80−100重量%、さらに好ましくは90−100重量%の範囲である。
【0043】
また、上記のゴム強化系スチレン系樹脂として具体的には、ABS(アクリロニトリルーブタジエン系ゴムースチレン)樹脂、AES(アクリロニトリルーエチレン・プロピレン系ゴムースチレン)樹脂、ACS(アクリロニトリルー塩素化ポリエチレンースチレン)樹脂およびAAS(アクリロニトリルーアクリル系ゴムースチレン)樹脂などが挙げられ、これらの1種以上が使用できる。
【0044】
さらにこの中で、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層との密着性の点で、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン系樹脂、AS樹脂および塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。さらには、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。また例えば、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂がブレンドされていてもよい。また透明性のある積層体を得るためには、ポリカーボネート樹脂、透明ABS樹脂の選択が好ましい。
【0045】
また本発明における熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層では、必要に応じ前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の説明部分で記載した、各種添加剤や他の熱可塑性樹脂を配合することもできる。但しその場合でも、上記のような主成分を意味する量になる様に配合することが好ましい。
【0046】
前記熱可塑性樹脂(B)には、必要に応じて、各種添加剤を含有させておくこともできる。添加剤としては、特に限定はないが、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ガラス繊維等の補強材;フェニルサリチレート、2(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;トリス(ジブロムプロピル)ホスフェート、四臭化エチレン、酸化アンチモン、ジンクボレート等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;等が挙げられる。これら添加剤の添加時期および添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜設定すればよい。
【0047】
本発明における熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層は、通常、フィルム状、シート状等に成形して形成すればよい。成形は150〜350℃で行うのが好ましく、より好ましくは200〜300℃であるが、耐熱性、流動性などの樹脂の性質に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。成形方法としては特に限定されず、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形等が挙げられる。フィルム状、シート状の積層体を得る場合、コスト削減、生産性向上および成形性向上を図る点で、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層とともに共押出成形することが好ましい。
【0048】
本発明における熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層は、必要に応じて、発泡シートとして用いることもできる。発泡体の密度は、0.05〜0.3g/cm3が好ましい。密度が0.05g/cm3未満であると、剛性が乏しくなり、一方、0.3g/cm3を超えると、シートが硬くなり成形性が低下する。
【0049】
<積層体>
本発明の積層体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有し、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、該鉛筆引掻き試験値がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層を有し、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲である事を特徴とする熱可塑性樹脂積層体である。
【0050】
さらに具体的には、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有するアクリル系熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂を1種以上含んだ熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層とを含み、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10から5000μmである熱可塑性樹脂積層体である。
【0051】
さらに具体的には、本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂(A)を含有する層と熱可塑性樹脂(B)を含有する層とを積層することによって得ることができる。このとき、両層の厚みの比率が、熱可塑性樹脂(A)からなる層の厚み(A’)/熱可塑性樹脂(B)からなる層の厚み(B’)=1/99〜50/50であることが重要である。両層の厚みを前記範囲とすることにより、耐候性、表面光沢、耐溶剤性や耐熱水性等の耐性と、機械的強度や耐衝撃性とを両立させることができるのである。
【0052】
本発明において、上記分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有する熱可塑性樹脂(A)層と、上記熱可塑性樹脂(B)層とを積層する方法としては、特に制限はなく、一般的な方法を採用することができる。例えば、少なくともいずれか一方をシートあるいはフィルムあるいは発泡体とし、これを加熱して圧着する方法、少なくともいずれか一方の面にあらかじめ接着剤樹脂を塗布しておき、加熱圧着する方法、押し出し機のダイ中において、上記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の樹脂と上記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層とを積層させてシートあるいはシート状のものを得る共押出成形法、上記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の樹脂をあらかじめ真空成形によって三次元の形状を付与した後、基材となる上記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層の樹脂を射出成形するインモールド成形法などが挙げられる。コスト削減と生産性向上のためには、共押出成形する方法、インモールド成形法が好ましい。特にシート状、フィルム状の積層体を得る際に、コスト、生産性の点で、共押出成形法が好ましい。
【0053】
また、上記インモールド成形する方法においては、所望の積層体の上記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と上記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層の厚みによっては、上記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層をあらかじめ真空成形によって三次元の形状を付与した後、上記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の樹脂をインモールド成形することもできる。
【0054】
本発明の積層体は、上記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層の片側の表面に熱可塑性樹脂(A)層を有していてもよいし、両側に有していてもよい。片側に熱可塑性樹脂(A)層を有している場合は、片方向からの紫外線等の光線、擦り傷応力、溶剤や熱水に対する耐性に優れた積層体が得られ、両側に熱可塑性樹脂(A)層を有している場合は、両方向からの紫外線等の光線、擦り傷応力、溶剤や熱水に対する耐性に優れた積層体が得られる。すなわち、本発明の積層体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有する特定構造の熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層によって、耐候性や高い表面硬度を発現させ、また熱水や溶剤に対する耐性をも発現させることができ、あわせて、熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層が本来持っている優れた機械的強度や耐衝撃性を積層体構造として保持させることができる。本発明の積層体は、用途に応じて適宜その積層形態を設定すればよい。
【0055】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂(A)層を主成分とする層と、上記特定の熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層のほかに、所望する特性に応じて、第三の層を有していてもよい。この場合、本発明の効果である耐候性や高い表面硬度や、溶剤や熱水に対する耐性を発揮させるには、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層を少なくとも片側の表面に配することが重要である。第三の層としては、例えば、熱可塑性樹脂(A)、特定の熱可塑性樹脂(B)またはその他の熱可塑性樹脂を用いた複合層や、その着色層や、フィラー等を含有させた補強層等が挙げられる。また所望の材質で印刷された層を任意の位置に有してもよい。上記印刷された層を有することで、本発明の積層体はさらに意匠性を保有させることもできる。そして、その印刷された層は、本発明の積層体の一部分にあってもよいし、前面にあってもよい。一部分である場合、本発明の積層体が透明積層体である場合に施工時の接着剤層を隠蔽するための印刷層や着色層であってもかまわない。
【0056】
本発明の積層体は、シート状の形態であることが、種々の形状を容易に成形できる点で好ましい。勿論、これに限定されるものではなく、筒状や容器状等の形態であってもよい。
【0057】
本発明の積層体をシートとして用いる場合は、使用される目的により適宜その厚みを設定することができ、例えばシート全体として0.25mm〜5cmの厚みが好ましい。より好ましい厚みは、0.5mmから4cmである。さらに好ましい厚みは、0.8mmから3.0cmである。より好ましくは、0.8mmから1cmである。また、フィルム状にして用いる場合には、フィルム全体として20〜250μmの厚みが好ましい。
【0058】
本発明の積層体においては、例えば透明性を有した積層体とする場合は、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された全光線透過率が80%以上、さらに好ましくは85%以上、最も好ましくは88%以上であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが80%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
さらに、上記の透明性を有した積層体とする場合においては、ASTM−D−1003に準じた方法で測定された曇価が5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下であることが好ましい。曇価は、透明性の目安であり、これが5%を越えると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できない場合がある。本発明の積層体においては、上記の透明性に合わせて、上記で説明した、耐候性、高い表面硬度(耐擦り傷性)、耐溶剤性、耐熱水等の物性を有することが好ましい形態である。また積層体の熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層があるので、さらに衝撃性等の強度物性も優れた透明積層体が得られ本発明の積層体の好ましい形態の一つとなる。
【0059】
本発明の積層体においては、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層を表層とした場合、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定による)がH以上であることが好ましく、さらに好ましくは2H以上、最も好ましくは3H以上である。Hより軟らかいと、傷がつきやすくなり、しいては外観が悪くなっていくことがある。上記鉛筆引掻き試験値は鉛筆硬度とも表現することができる。
【0060】
本発明の積層体は、耐候性、高い表面硬度(耐擦り傷性)、溶剤や熱水に対する耐性と、機械的強度や耐衝撃性とを兼ね備えたものであるので、例えば、カーポート、看板、建築用グレージング材、各種車両用グレージング材、自動車用内装部品、防音壁、浴槽用表層樹脂シート、洗面器などの衛生用品用シート、各種家庭用品用シート、熱成形用シート、脱塗装を目的とした熱成形用シートなどに好適に用いることができる。
【0061】
【実施例】
本発明の各実施例を、実施例および比較例として説明すれば以下の通りである。以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の各実施例および各比較例において、「部」の記載は、「重量部」を示す。
【0062】
なお、実施例における各分析は、以下のようにして行った。
【0063】
(重合反応率、重合体組成分析)
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC−14A)を用いて測定することにより求めた。
【0064】
(ダイナミックTG)
得られた重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1.33hPa、80℃、3時間以上)することにより揮発成分等を除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の条件で分析した。
【0065】
測定装置:Thermo Plus2 TG-8120 Dynamic TG ((株)リガク社製)
測定条件:試料量は5〜10mg、 昇温速度は10℃/min、 雰囲気は窒素フロー200ml/min、 方法は階段状等温制御法(60〜500℃間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
(脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合)
脱アルコール反応率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
【0066】
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。
【0067】
例として、後述の参考例1で得られる重合体においてラクトン環構造の占める割合を計算する。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体(A−1)中の含有率(重量比)は組成上20.1重量%であるから、(32/116)×20.1≒5.54重量%となる。他方、ダイナミックTG測定のよる実測重量減少率(X)は0.15重量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.15/5.54)≒0.973となるので、脱アルコール反応率は97.3%である。そして、重合体ではこの脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該重合体中における含有率(20.1重量%)に、脱アルコール反応率(97.3%=0.973)を乗じると、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合は19.6(20.1×0.973)重量%となる。
【0068】
(重量平均分子量)
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。
【0069】
(樹脂の着色度YI)
樹脂の着色度YIは、樹脂をクロロホルムに溶解させ、15重量%溶液を石英セルに入れ、JIS−K−7103に従い、色差計(日本電色工業社製、装置名:SZ−Σ90)を用いて、透過光で測定した。
【0070】
(樹脂の熱分析)
樹脂の熱分析は、DSC(リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
【0071】
(樹脂中のラクトン環構造の確認)
樹脂の骨格中にラクトン環構造があるかどうかは、赤外線吸収スペクトルおよび、13C−NMRにより確認した。なお、赤外線吸収スペクトルは、FTS−45赤外分光光度計(BIO−RAD製)を用い、13C−NMRは、FT−NMR UNITY plus400(Varian製)を用いて測定を行った。
【0072】
(積層体の透明度)
透明度の指標として、得られた積層体(厚み3.1mm)の全光線透過率を、ASTMD1003に従って、濁度計(日本電色工業社製、装置名:NDH−1001DP)を用いて測定した。
【0073】
(積層体の耐熱水性)
積層体を5cm×5cmに切り取り、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の面を90℃の熱水と接するようにし、100時間放置後、その外観を観察した。
(積層体の耐溶剤性)
積層体を5cm×5cmに切り取り、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の面をイソプロピルアルコール(IPA)あるいはキシレンと接するようにし、3日間放置後、その外観を観察した。
(積層体の耐擦り傷性)
熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層を表層とし、積層体の耐擦り傷性を、JIS−K−5400に準じ、鉛筆引掻き試験機(JIS−K―5401)を用いて、鉛筆引っ掻き試験値(鉛筆硬度)を測定した。
(積層体の耐候性)
JIS−A−1415に準じ、60℃で促進暴露試験を行った。具体的には、熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層側から、サンシャインカーボンアークランプを照射し、試験片の黄変度(YI)の経時変化を測定し、初期値からの差(ΔYI)で示した。
【0074】
[参考例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた30Lの反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部、メタクリル酸メチル40部、トルエン50部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。還流したところで、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.15部を加えて、還流下(100〜110℃)で溶液重合を行い、5時間かけて熟成を行った。重合の反応率は95.0%、重合体中の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(重量比)は20.1%であった。また、この重合体の重量平均分子量は150,000であった。
【0075】
得られた重合体成分100部に対して37.5部のメチルイソブチルケトン、および、重合体溶液100部に対して0.3部のリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製「Phoslex A−18」)を加え、窒素を通じつつ、還流下(95〜100℃)で5時間、環化縮合反応を行った。得られた反応溶液の一部を取り出し、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.70%の重量減少率を検知した。
【0076】
次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa、リアベント数1個とフォアベント数4個のベントタイプスクリュー2軸押出機(直径=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0Kg/時間の処理速度で導入し、該押出機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、透明な熱可塑性樹脂(A−1)のペレットを得た。
【0077】
このペレットの着色YIは0.7であった。得られたペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.15%の重量減少率を検知した。また、このペレットの重量平均分子量は165,000であり、ガラス転移温度は134℃であった。このペレットについて、赤外線吸収スペクトル分析および、13C−NMRスペクトル分析を行ったところ、樹脂の骨格中にラクトン環構造があることが確認された。
【0078】
[参考例2]
押出機内で環化縮合反応と脱揮を行う直前に、重合体100部に対して、紫外線吸収剤として、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール;<チバスペシャリィティケミカルズ社製「チヌビンP」>を0.1重量部添加した以外は、参考例1と同様にして、透明な熱可塑性樹脂(A−2)のペレットを得た。このペレットの着色度は、YIで0.8であった。得られたペレットについて、ダイナミックTG測定を行ったところ、0.15%の重量減少率を検知した。また、このペレットの重量平均分子量は165,000であり、ガラス転移温度は134℃であった。このペレットについて、赤外線吸収スペクトル分析および、13C−NMRスペクトル分析を行ったところ、樹脂の骨格中にラクトン環構造があることが確認された。
【0079】
[実施例1]
熱可塑性樹脂(B)として、鉛筆硬度が2B、アイゾット衝撃強度が83kJ/m2であるポリカーボネート樹脂(帝人化成製「パンライトL−1225」)を使用し、参考例1で得られた熱可塑性樹脂(A−1)と共に、以下の条件で共押し出しし、ポリカーボネート樹脂層の厚み3mm、熱可塑性樹脂(A−1)層の厚み0.1mmの積層シートを得た。このシートの表面硬度、耐候性試験、耐溶剤性、耐熱水性の各結果を表1に示す。なお、このシートの全光線透過率は88%であった。
【0080】
[押出機の条件]
ポリカーボネート樹脂側:スクリュー径φ50mm、バレル温度270℃
熱可塑性樹脂(A−1)側:スクリュー径φ20mm、バレル温度260℃
ダイ:温度260℃、幅1000mm
つや付き3本ロール温度:第1ロール125℃、第2ロール142℃、第3ロール118℃
引き取り速度:1.5m/min
[実施例2]
熱可塑性樹脂(A−1)の代わりに、(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層シートを得た。このシートの評価結果を表1に示す。なお、このシートの全光線透過率は88%であった。
【0081】
[比較例1]
実施例1で用いたポリカーボネート樹脂の単独シート(厚さ3.1mm)の評価結果を表1に示す。
【0082】
[比較例2]
熱可塑性樹脂(A−1)の代わりに、メタクリル系樹脂としてPMMA樹脂(住友化学製「スミペックスEX」)を用い、PMMA側の押出機のバレル温度を250℃に変更して、実施例1と同様にして、積層シートを得た。PMMA側が表層となるように評価した結果を表1に示す。なお、表中耐候性の物性でデルタYIのは、ΔYIの事である。
【0083】
【表1】
[実施例3]
熱可塑性樹脂(B)として、鉛筆硬度が2B、アイゾット衝撃強度が59kJ/m2であるABS樹脂(東レ製「トヨラック600」を使用し、参考例1で得られた熱可塑性樹脂(A−1)と共に共押し出しし、ABS樹脂層の厚み3mm、熱可塑性樹脂(A−1)層の厚み0.1mmの積層シートを得た。なお、共押出成形の際には、ABS樹脂側の押出機のバレル温度を250℃、熱可塑性樹脂(A−1)側の押出機のバレル温度を250℃、ダイの温度を250℃にして成形した。得られた積層シートの評価結果を表2に示す。
[実施例4]
熱可塑性樹脂(A−1)の代わりに、(A−2)を用いた以外は実施例3と同様にして、積層シートを得た。このシートの評価結果を表2に示す。
【0084】
[比較例3]
実施例3で用いたABS樹脂の単独シート(厚さ3.1mm)の評価結果を表2に示す。
[比較例4]
熱可塑性樹脂(A−1)の代わりに、比較例2で用いたPMMA樹脂を用いて、実施例3と同様にして、積層シートを得た。PMMA側が表層となるように評価した結果を表2に示す。なお、表中耐候性の物性でデルタYIのは、ΔYIの事である。
【0085】
【表2】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、耐候性や表面硬度(耐擦り傷性)に優れ、また熱水や溶剤に対する耐性に優れ、かつ、機械的強度や耐衝撃性にも優れた、熱可塑性樹脂積層体を提供することができる。その目的のために以下の構成を採用する。
【0087】
本発明は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有し、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、該鉛筆引掻き試験値がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層を有し、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲である事を特徴とする熱可塑性樹脂積層体である。
さらに好ましくは、前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン樹脂、および塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記の熱可塑性樹脂積層体である。
【0088】
また、同様に、本発明は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系の熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン樹脂および塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層を有し、前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲である事を特徴とする熱可塑性樹脂積層体である。
Claims (5)
- 分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を環化縮合反応させることにより形成されるラクトン環構造を有し、鉛筆引掻き試験値(JIS−K 5400に準じた測定)がH以上である熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、
該鉛筆引掻き試験値がH未満であり、かつアイゾット衝撃強度(ASTM−D−256に準じた測定、ノッチ付き、厚さ3.2mm)が10kJ/m2以上である熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層と、を有し、
前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みが10μmから5000μmの範囲であり、
前記重合体(a)は、(メタ)アクリレート系単量体(a1)と2−(ヒドロキシアルキル)アクリレート系単量体とを少なくとも含む単量体成分を重合した共重合体であり、
前記熱可塑性樹脂(A)の有するラクトン環構造が、下記一般式(1)で表わされる構造であり、
前記熱可塑性樹脂(B)は、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化系スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする熱可塑性樹脂積層体。 - 前記熱可塑性樹脂(A)がメタクリル酸メチル単量体単位を含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂積層体。
- 前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層の厚みと前記熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層の厚みの比が1/99〜50/50であるシート状の形態である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂積層体。
- 前記熱可塑性樹脂(A)が紫外線吸収機能を有する事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層体。
- 前記熱可塑性樹脂(A)を主成分とする層と、熱可塑性樹脂(B)を主成分とする層とを共押出成形する事により得られる請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層体。
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