圧力調理器、例えば圧力式炊飯器は、容器内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この容器内の被炊飯物を加熱すると共に容器内を昇圧して炊飯するもので、炊飯時は、容器内が高温で内圧が高くなっている。このため、炊飯時に容器の蓋体が不意に開放されると、熱湯及び加熱された米飯が外へ飛散して、ときに使用者に当たり火傷させる恐れがあるので、この種の炊飯器には、通常、蓋体ロック機構が設けられて、炊飯器の作動中に蓋体が不意に開放しないようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
図8は下記特許文献1に記載された圧力調理器の縦断面図であり、図9は図8の要部の拡大縦断面図である。
この圧力調理器50は、容器本体51と蓋体52とからなり、蓋体52は、ロック機構53により容器本体51の開口部51aに閉塞状態にロックされるようになっている。
このロック機構53は、蓋体カバー54に回動自在に軸着されたロックレバー55と、このロックレバー55の下端の突起部55aが係合される蓋体側面に形成された横穴52aと、ロックレバー55の上端の真下に形成された穴52bに嵌合する安全ゴム弁56と、この安全ゴム弁56の縦穴に挿入され上下動自在なフロート弁57とで構成されている。
この調理器50は、作動スイッチがオンされると、容器本体内の内圧が上昇する。この内圧上昇により、フロート弁57は上方へ移動し、ロックレバー55の一端を突き上げる。すると、ロックレバー55は軸58を中心として回転して、ロックレバー55の下端の突起部55aが、蓋体の側面の横穴52aから蓋体52の側面内側に突出して、ロックレバー55の突起部55aは容器本体の突起部(図示省略)と横並びに並ぶ。この横並びにより、蓋体を容器本体に対して回転させようとしても、ロックレバー55の突起部55aが容器本体の突起部の縁部と係止しており、蓋体と容器本体との嵌合を解除する方向の回転ができなくなり、蓋体52を容器本体51から外すことができなくなる。
したがって、この調理器は、容器本体内に内圧が掛かっている間は、容器本体と蓋体の嵌合が外れなくなるので安全性が確保される。
また、本願の出願人も、このような蓋体ロック機構を備えた炊飯器の特許を取得している(下記特許文献2、3参照)。
この炊飯器は、内鍋を収容しこの内鍋を加熱する熱源を有した炊飯器本体と、この炊飯器本体の一側に枢支して開閉自在とした蓋体と、前記内鍋の上方開口部を覆う中蓋と、前記蓋体の枢支側とは反対側に位置しこの蓋体を閉塞状態に保持するロック装置とを備え、前記ロック装置は、蓋体内に設けられ端部に掛止部を有し一部に係当片を有した係止板と、炊飯器本体の上部に設けられ前記係当片に係止するロック解除ボタンと、前記掛止部に掛止するストッパーとで構成し、前記蓋体の閉塞状態において、前記係止板は、内鍋内の圧力上昇によって前記中蓋が浮き上がるのに伴い掛止部が前記ストッパーに斜めに喰い込んで係止するようにしたものである。
この炊飯器によると、内鍋内の圧力上昇に伴って係止板の掛止部がストッパーに斜めに喰い込んで蓋体と炊飯器本体との掛止(ロック状態)が確実となり、不意に蓋体が開いて鍋内の被炊飯物が外へ飛び散ったりすることがなくなる。
実開平2−74658号公報(図3、図4、実用新案登録請求の範囲)
特許第2816112号公報(図1、図3、特許請求の範囲)
特許第2869389号公報(図1、図3、段落〔0024〕〜〔0035〕)
上記特許文献1〜3に記載された圧力調理器は、容器内の圧力が高くなると係止状態がより強固になり、作動中に蓋体が不意に開放されることがない。しかしながら、この種の圧力調理器においては、使用時に容器本体の開口部を蓋体で覆ってロックしたにも拘わらず確実にロックされず、例えば半ロック状態になっていることがある。その原因は、例えば使用者がロック状態を確認しないでスタート釦をオンし、或いはロック状態にした後に誤って解除ボタンを押してしまうような使用者の不注意によるものが大半となっている。
ところが、蓋体が半ロック状態になっていると、調理器が転倒したとき或いは調理器の作動中などに、不意に蓋体が開いて容器内の被調理物が外へ飛散してしまうことがある。特に、半ロック状態で炊飯等が開始されると、炊飯過程に伴って容器内の圧力が上昇し、蓋体が簡単に開いてしまい加熱された被調理物が外へ飛散して使用者に当たり火傷させる恐れがある。
このため、この種の圧力調理器にこのような半ロック状態を防止する機構を設ける必要がある。このような半ロック防止機構は、蓋体ロック機構と連携しこの機構を作動させるものとなるが、このような半ロック防止機構を設けようとすると、半ロック防止機構を構成する部品および蓋体ロック機構に連動させる部品等が必要になり、蓋体ロック機構と合わせると全体の部品数が増えるとともに、各部品間を連携させる可動機構も複雑になり、蓋体ロック機構および半ロック防止機構が部品の調整或いは経年変化等によりスムーズに作動しなくなることがある。また、炊飯中に鍋内圧力が上昇するために蓋体の内壁面が持ち上がる等して、半ロック防止機構の部品が蓋体ロック機構と蓋体内面との間に挟まり或いは他の部品等へ引っ掛かりその移動がブロックされることがある。
反面、近年はユーザのグルメ志向が高まり、これに応じて種々タイプの圧力調理器が開発・製品化されて広く普及してきており、この普及に伴い使用形態も様々なものとなり、通常の使用法と異なる使われ方がなされて、事故、故障等が発生している。このため、圧力調理器の安全基準は、更に高くなっておりより安全性を高めた製品作りがメーカーに要求されてきている。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、蓋体が半ロック状態になるのを未然に防止して安全性を高めた圧力調理器を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記半ロック機構の作動をスムーズにしてより安全性を高めた圧力調理器を提供することにある。
前記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の圧力調理器の発明は、被調理物を収納して加熱調理する容器と、前記容器の開口を覆う開閉自在な蓋体と、前記蓋体をロックする係止部材を有する蓋体ロック機構と、前記容器内の被調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段とを備えた圧力調理器において、
前記蓋体ロック機構は、前記係止部材に作用してロック度合いを強める半ロック防止機構を備え、前記半ロック防止機構は、前記係止部材を作動させる作動部材と、前記作動部材を駆動する駆動手段とからなり、前記作動部材は、前記駆動手段に連結されて作動する第1作動部材と、前記第1作動部材に分離自在に結合されて自身の移動がブロックされたときに該第1作動部材から切離される第2作動部材とで構成されていることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力調理器において、前記第2作動部材は、前記ブロックが解除された後に、元の位置に復帰する復帰手段が設けられていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の圧力調理器において、前記係止部材は、一端に係止爪および他端に当接片を有し前記蓋体に枢支されたロックレバーからなり、前記作動部材が前記ロックレバーの当接片に突き当たって作動させることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の圧力調理器において、前記制御手段は、前記圧力調理器の動作開始時および該動作開始時点からの所定時間内の所定のタイミングに前記駆動手段を駆動させることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の圧力調理器において、前記蓋体は、前記容器内の内圧を調整する圧力弁と、前記圧力弁を制御する圧力弁開放機構とを備え、前記駆動手段は前記圧力弁開放機構に連結されて、前記圧力弁開放機構は前記制御手段により作動されることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1に記載の圧力調理器において、前記容器および前記蓋体のいずれか一方に、温度検知手段を設け、前記制御手段は、前記温度検知手段の出力により前記駆動手段を駆動させることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1に記載の圧力調理器において、前記容器および前記蓋体のいずれか一方に、圧力検知手段を設け、前記制御手段は、前記圧力検知手段の出力により前記駆動手段を駆動させることを特徴とする。
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、半ロック防止機構を設けることにより、蓋体のロックを確実にできるので安全性の向上が図れる。また、半ロック防止機構を構成する作動部材は、第1、第2作動部材に分離結合されているので、第2作動部材の移動が、例えば、蓋体ロック機構の部材に挟持、引っ掛かり等し、或いは容器内の内圧上昇により蓋体が持ち上がり蓋体ロック機構に挟まる等の要因により、その移動がブロック、いわゆるフリーズされても、第2作動部材が第1作動部材と切離されて第1作動部材の移動は自由であるので、この作動部材を駆動する駆動手段に支障を及ぼすことがなくなる。特に、この駆動手段が他の機構を作動させるものに連結されている場合においても悪影響を生じることなく、他の機構を正常に動作させることができる。
請求項2の発明は、第2作動部材に復帰手段が設けられているので、第2作動部材は上述のブロックが解除された後に元の位置へ復帰され作動部材を自動的に正常な状態に戻すことができる。
請求項3の発明によれば、係止部材は、一端に係止爪および他端に当接片を有し蓋体に枢支されたロックレバーからなり、作動部材がロックレバーの当接片に突き当たって作動させるロックレバーの梃子作用を利用してロックレバーの係止爪を係止部に小さい力で簡単に食い込ませることができる。
請求項4の発明によれば、制御手段により、調理器の動作開始時やこの動作開始時点からの所定時間内に、すなわち、容器内の圧力が未だ上昇しない時間帯に、駆動手段を駆動させて、作動部材で係止部材を叩き又は押し当てて係止部材の係止爪を係止部に係止させるので、蓋体が半ロック状態になることがなくなり、調理中に蓋体が不意に開放されることを防ぐことができる。
請求項5の発明によれば、半ロック機構を駆動する駆動手段が圧力弁開放機構に連結されこの圧力弁開放機構が制御手段により制御されるので、簡単な機構で蓋体の半ロックを防止することができるとともに、この半ロック防止機構の作動部材が蓋体ロック機構の係止部材に挟持、係合等され、或いは容器内の内圧上昇に蓋体が持ち上がり蓋体ロック機構の部材に挟まる等により、その移動がブロック、いわゆるフリーズされても、作動部材を構成する第2作動部材が第1作動部材と切離されて第1作動部材の移動が自由になるので、圧力弁開放機構に何ら支障を及ぼすことがなく、圧力弁の開放を正常に行うことができるので安全性がより向上する。
また、駆動手段は、圧力弁開放機構の制御により圧力弁が作用することで駆動されるので、この圧力弁開放機構を構成する部品、例えば圧力弁に作用するプランジャ及び励磁コイルを共用することが可能になる。この部品の共用により、部品点数が少なく、組立て等が簡単になると共にコストを低減できる。
請求項6の発明によれば、容器および前記蓋体のいずれか一方に、温度検知手段を設け、この温度検知手段の出力により駆動手段を駆動させるので、調理器本体内の温度状態に応じて係止部材を作動させることができる。具体的には、調理器本体内の温度が低いとき、あるいは上昇初期及びその途中において、作動手段を作動させることにより、係止爪と係止部との係合度合いを大きくして蓋体の半ロックを未然に防止できる。
請求項7の発明によれば、容器および前記蓋体のいずれか一方に、圧力検知手段を設け、この圧力検知手段の出力により駆動手段を駆動させるので、調理器本体内の圧力状態に応じて係止部材を作動させることができる。具体的には、調理器本体内の圧力が低いとき、あるいは上昇初期及びその途中において、作動手段を作動させることにより、係止爪と係止部との係合度合いを大きくして蓋体の半ロックを未然に防止できる。
図1は本発明の一実施形態に係る圧力式炊飯器を中央部で切断した縦断面図、図2(a)は図1の炊飯器の蓋体外カバーを外した平面図、図2(b)は図2(a)のB部分の拡大平面図、図3は図2(a)をA−A線で切断し半ロック防止機構を説明する断面図である。
圧力式炊飯器1は、図1に示すように、被炊飯物が投入される鍋7と、上方にこの鍋7が収容される開口部及び内部にこの鍋7を加熱し被炊飯物を加熱する加熱手段(以下、ヒータという)5を有する炊飯器本体(以下、本体という)2と、この本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止するロック機構付蓋体10と、この蓋体10に装着されて鍋7内の内圧を調整する圧力弁16と、この圧力弁16を制御する圧力弁開放機構15と、各種の炊飯メニューを表示して選択する表示操作部8と、選択された炊飯メニューに基づいてヒータ5および圧力弁開放機構15を制御して鍋7内の被炊飯物を所定温度に加熱して調理する制御手段30(図4参照)を備えている。この制御手段30には、所定量の水分を米粒に吸水させる吸水工程、この吸水された米粒を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この米粒を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後にご飯を蒸らす蒸らし工程等を実行するプログラムが搭載されている。
以下、この炊飯器の構造及び蓋体ロック機構を説明する。
本体2は、図1に示すように、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケース3に収容される内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4は、その底部及び側部にヒータ5、底部4aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6が設けられている。ヒータ5には、環状に巻装した電磁誘導コイルが使用されている。また、本体2は、その正面に各種炊飯メニューを表示する表示パネル及びこの炊飯メニューを選択等する操作釦からなる表示操作部8が設けられている。鍋7は、水及び米とからなる所定量の被炊飯物が投入される比較的深底の容器からなり、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成され内部ケース4の内部に収容される。
蓋体10は、図1に示すように、鍋7の開口部を閉蓋する内蓋11と、本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構13により本体2に枢支され、他側が蓋体ロック機構22により本体に係止される。蓋体ロック機構22は、図1に示すように、略中間部が支軸230で枢支され、この支軸230から延びた第1、第2アーム23a、23bを有し、断面形状が略くの字状の係止部材(ロックレバーとも言う)23と、この係止部材23を内部ケース4に係止される方向へ付勢するバネ体(図示省略)とで構成されている。第1アーム23aには、先端に内部ケース4の係止部4cに係止される係止爪231が設けられている。この係止爪231は第1アーム23aに隣接させて複数個設けるのが好ましい。第2アーム23bは、先端が後述する半ロック防止機構の作動部材が差込まれる当接片232となっている。また、この当接片232の近傍には、解除ボタン24が装着されている。この構成によると、この解除ボタン24を押下げると、係止部材は、支軸230を中心にしてバネ体の付勢力に抗して回動され係止爪231が係止部4cから外れ蓋体10が開放される。
蓋体10には、炊飯中に圧力弁16を開放させる圧力弁開放機構15と、この圧力弁開放機構15に連動して作動する蓋体の半ロック防止機構Rとが設けられている。
圧力弁開放機構15は、圧力弁16と、この圧力弁16を開放するプランジャ機構17とを有し、圧力弁16は内蓋11に、プランジャ機構17は外蓋12にそれぞれ設けられている。
圧力弁16は、所定径の弁孔161が形成された弁座16aと、この弁孔161を塞ぐように弁座16a上に載置される所定の自重を有する金属製ボール16bと、このボール16bの移動を規制することで弁座16a上にボール16bを保持するカバー体16cとで構成されている。このカバー体16cには開口が形成され、この開口に弾性を有するシール部材162が装着されている。
プランジャ機構17は、図1、図2(b)に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ17aと、このシリンダ17a内を電磁コイルの励磁によりボール16bを移動させるロッド17bと、このロッド17bの先端に装着された作動桿17cと、シリンダ17aの一端部と作動桿17cとの間に設けられたバネ体17d(図2(b)参照)とで構成されている。作動桿17cの先端部は、シール部材162に結合され、このシール部材162は作動桿17cの移動によりボール方向へ撓みボールを押動させるようになっている。
この圧力弁開放機構15は、制御手段30により制御される。すなわち、プランジャ機構17は、制御手段30からの出力を受けていない通常状態の時は、ロッド17bがシリンダ17aから突出して弁孔161上のボール16bを弁孔の横方向へ押し、この弁孔161を強制的に開放する。また、プランジャ機構17は、制御手段30の出力を受けた時にはロッド17bがシリンダ17a内へ没入する。このときボール16bは、自重により弁孔161上に戻りこの弁孔を閉塞する。
このようにしてプランジャ機構17は、圧力弁開放機構15に連動して動作し、圧力弁16と圧力弁開放機構15とは炊飯工程中に加圧された鍋内の圧力を強制的に降下させるための圧力変更手段として用いられる。また、外蓋12には弁孔161を介して鍋内と大気とを連通し、鍋内の圧力や蒸気を大気中に逃がす蒸気口25が設けられている。さらに、この外蓋12には、安全弁26が設けられている。
半ロック防止機構Rは、図1、図2(b)及び図3に示すように、圧力弁開放機構15のプランジャ機構17に連結された第1作動部材19と、係止部材23の当接片232を押動する第2作動部材20とからなる作動部材18を有し、このうち第1作動部材19は、外蓋12のベース面12aにX方向へ移動可能な固定部材122で固定され、また第2作動部材20は、第1作動部材19と分離自在に連結されている。プランジャ17aは、固定部材121で固定されている。
第1作動部材19は、プランジャ機構17を囲む大きさの隙間を有する略U字状のフレームを有し、このU字状フレームの一方側辺19aには、先端部にコ字状の固定部191が形成され、この固定部の奥にロッド17bから突出する作動桿17cが挿通される開口が形成されている。バネ体17dはロッド17bに遊嵌されて、第1フレーム19aを外方向へ移動するように付勢している。また、コ字状の固定部191の対向辺には、一対の小突起190、190が形成されて、これらの小突起190、190に作動桿17cの先端部に設けたストッパー170が係止されるようになっている。
また、他の側辺19bには、側辺の両端から外方へ所定長さで突出した一対の腕片192、193が形成されている。各腕片192、193は、外方向の側面が第2作動部材20をガイドするガイド面となっている。また、このガイド面と反対方向の先端部には、バネ体21を係止する係止部19s、19sが設けられている。さらに、各腕片192、193間には、外方向へ突出した3本の突起片194が設けられている。これらの突起片194は、第2作動部材20をスムーズに移動させるガイド機能を果たしている。
第2作動部材20は、第1作動部材19の各腕片192、193の間隔と同じ長さからなるコ字状のフレームを有し、このフレームは、バネ体21により、正常時は第1作動部材へ接近するように付勢され、この第2作動部材20の移動がブロックされたときに、このバネ体21の付勢力に抗して第1作動部材19から切離されるようになっている。なお、このバネ体21は、ベース面12aに係止部19s、19sおよび係止突起200で固定されている。第2作動部材20は、フレームの両端にガイド片20a、20bが設けられ、これらのガイド片20a、20bは、各腕片192、193でガイドされる。また、この第2作動部材20は、フレームの中央部に各ガイド片20a、20bと反対方向へ突出した2個の突出片201、202が設けられている。
この半ロック防止機構Rは、圧力弁開放機構15に連結されているので、圧力弁開放機構を構成する部品、例えば圧力弁16に作用するシリンダ17a及び励磁コイルを共用することが可能になる。この部品の共用により、部品点数が少なく、組立て等が簡単になると共にコストを低減できる。
次に、図1〜図3を参照して、半ロック防止機構Rの動作を説明する。
蓋体10を閉じ炊飯スタート釦32を押す前は、図1、図2(b)に示すように、プランジャ機構17は、バネ体17dの蓄勢力により、ロッド17bがシリンダ17aから突出して弁孔161上のボール16bを弁孔の横方向に押して強制的に開放している。
次いで、炊飯スタート釦32を押すと、プランジャ機構17は、制御手段30の出力を受けて、ロッド17bがシリンダ17a内へ引き込まれる。このときボール16bは、自重により弁孔161上に戻りこの弁孔を閉塞する。
一方、このロッド17bがシリンダ17a内へ引き込まれると、このロッド17bが半ロック防止機構Rの作動部材18に連結されているので、第2作動部材20の各突出片201、202が当接片232を押動する。このとき、蓋体が図3(a)に示すように半掛かりになっていると、この作動部材18の押動により、各突出片201、202が係止部材23の当接片232の下方へ差し込まれて、この係止部材23が支軸230を中心に回動して梃子作用が働き、小さい押動で係止爪23aが係止部4cに深く係止されて半ロック状態が解消される(図3(b)参照)。
この半ロック防止機構Rは、秒単位で間歇的にプランジャ機構17を作動させて複数回にわたり行うのが好ましい。また、炊飯器1の動作開始時及び/又はこの動作開始時点からの所定時間内、すなわち、鍋7内の圧力が未だ上昇しない時間帯に、作動部材を作動させて係止部材を押動して係止部材の係止爪を炊飯器本体の係止部に喰い込ませる。これにより、蓋体が半ロック状態であっても炊飯工程の初期段階でこの半ロック状態が解消されるので、炊飯中に蓋体が不意に開放されることを防止できる。なお、作動部材の差し込みに代えて、叩くようにしてもよい。
ところが、この半ロック防止機構Rは、作動部材18で当接片231を押動しているときに、この作動部材18が当接片231に挟持されてブロック、いわゆるフリーズされることがある。このフリーズ現象は、作動部材18の先端が当接片231の隙間に挟まることによって発生し、或いは作動部材の先端部の角度或いは隙間等の設計誤差および経年変化によって発生することがある。さらに、炊飯中に鍋内の圧力が上昇することによって、蓋体が持ち上がって起ることもある。このようなフリーズ現象は、作動部材18は、第1、第2作動部材19、20に分離されているので、第2作動部材20が挟まっても、挟持力が小さいときはバネ体21の復帰力により第1作動部材19へ接近するように戻り、圧力弁開放機構15に何ら影響を与えることなくこの開放機構16を正常に作動される。しかし、この挟持力がバネ体の復帰力より強いときは、第2作動部材20がバネ体21の復帰力では戻らなくなる。この場合、第1作動部材20は、図3(c)に示すように、バネ体21の復帰力に抗して、すなわち、第1作動部材19は第2作動部材20を当接面232に挟持されたままにして第2作動部材20から切離される。この切離により、圧力弁開放機構は何ら影響を受けることなく正常な動作ができるようになる。
したがって、半ロック防止機構Rを設けることにより、蓋体の半ロックを防止することができ、この防止機構を圧力弁開放機構に連結しても、この連結によって開放機構の動作に支障を及ぼすことがなく安全性を高めることができる。安全性が確保される。
図4は、炊飯器を制御する制御手段のブロック図である。
制御手段30は、制御部31a、演算部31b、計時部31cおよび記憶部31dを有するマイクロコンピュータ31からなり、この制御手段の入力部311には炊飯スタート釦32、メニュー選択釦33、タイマ設定釦35および鍋底の温度を検出する温度センサ34が接続され、また、出力部312には、ヒータ(誘導コイル)5、圧力弁開放機構15、および表示手段36が接続されている。記憶部31dには、各種の炊飯メニューおよびこのメニューを実行するプログラムが収納されている。
次に、この炊飯器の炊飯メニューによる炊飯工程を、図5〜図7を参照して説明する。なお、図5は炊飯工程における温度―圧力の関係を示す特性図、図6、図7は炊飯フローチャート図である。
表示パネルには各種の炊飯メニューが表示されるが、以下には、白米・標準炊飯メニューについて説明する。
まず、ステップS101において、所定量の水と白米を収納した鍋7を内部ケース4内に収容し、蓋体10を閉めてロックする。次に、ステップS102において、表示操作部8の操作により炊飯メニューを選択して炊飯をスタートさせる。このときステップS103において、半ロック防止機構Rを作動させる。この作動は、制御手段30により、圧力弁開放機構15を作動させて、係止部材23の当接片232を押動して係止爪231を本体2の係止部4cに係止させる。蓋体がロックされるとステップS104において、ヒータ5へ高周波電流が印加され、鍋7に渦電流が発生してこの鍋が加熱され米粒の加熱が開始される。
次に、制御手段30により圧力弁開放機構15を作動させてボール16bを移動せしめ、ステップS105において弁孔161を開状態にし、ステップS106において吸水工程が実行される。この吸水工程の実行が開始されると、ステップS107において吸水タイマ(図示せず)が吸水時間T1の計時を開始し、次いでステップ108において鍋底温度センサ6により鍋底温度K1が計測される。この鍋底温度K1の計測は所定の温度に達するまで行われ、鍋底温度が所定値、例えば55℃に達したことをステップS109において確認すると、ステップS110において制御手段30によりヒータ5の放熱量を制御して米粒を所定温度に保持しつつ、吸水時間の計測が行われる。この吸水工程は、所定の吸水時間T1、例えば10分間継続される。
ステップS111において所定の吸水時間T1(10分間)が経過すると、ステップS112に進み立上加熱工程に移行する。この立上加熱工程では、短時間で沸騰状態になるようにヒータを全加熱(フルパワー加熱)するとともに、制御手段30により、圧力弁開放機構15を作動させてロッド17bを引き戻すことでボール16bにより弁孔161が閉鎖される。つまり、ステップS113において、ボール16bが自重により弁孔161上に転がって弁孔161を塞ぎ閉鎖状態となる。この状態においては、鍋7内の圧力は弁孔161を介してボール16bを押し上げ得る圧力値に上昇するまで昇圧される。したがって、このとき鍋7内の蒸気の圧力は、ボールの重さ及び弁孔の大きさを設定することにより適宜調節することができる。
この立上加熱工程では、ステップS114において、蒸気温度K2が蒸気温度センサ(図示省略)により計測される。そしてステップS115においてこの蒸気温度K2が所定温度、例えば75℃に達すると、米粒が沸騰現象を起こす温度になり、立上加熱工程が終了する。このときの鍋7内の圧力は、圧力弁により制御され、大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となる。そして、図6に示すように、ステップS116において沸騰維持工程が開始される。
沸騰維持工程に移行すると、鍋7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、米粒はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰するようになる。また、沸騰維持工程に入ると、ステップS117において直ちに制御手段30により圧力弁開放機構15を作動させてボール16bを移動させることで圧力弁16の開動作が行われる。またこの開動作の際には、ステップS118においてヒータの加熱を停止して、ステップS119において圧力弁の強制的開動作を所定時間、例えば4秒間継続する。この圧力弁の強制的開動作により、鍋7内の圧力が大気圧近傍まで低下する。
このように沸騰維持工程において、鍋7内の圧力を所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、鍋7内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋内に泡が発生し、この泡によって米粒が撹拌される。この結果、米粒が均一に加熱され、炊き上げられることになる。
圧力弁16を強制的に開放する所定時間は、1回目の圧力弁16の強制的開動作により鍋7内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。圧力弁13を強制的に大気圧に開放する時間をこのように設定することにより、最大限の撹拌エネルギーを得ることができるようにしている。また、圧力弁の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、ステップS120において圧力弁開放機構15を作動させて再び圧力弁を閉状態とし、ステップS121において、所定時間、ステップS122においては例えば28秒間再び加熱する。なお、この加熱時間(28秒間)は、鍋7内の圧力が前述の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は、予め実験的に求められる。
ステップS123においてこの圧力弁開放機構15による圧力弁の強制的開放は複数回、例えば6回繰り返される。なお、S121、S122に示す沸騰工程において時間が経過すると、鍋7内の残水量が減少し、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁の強制的な開放は沸騰維持工程の初期段階に集中させると効果的である。
圧力弁を複数回開放する操作を終えると、ステップS124において圧力弁開放機構15による圧力弁の強制的開放が停止され、圧力弁を閉状態とされる。そして、ステップS125においてヒータによる沸騰状態を継続し、ステップS126において鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS127において鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、鍋7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS128においてヒータによる加熱作用が停止される。続いて、蒸らし工程が開始され、ステップS129において先ず蒸らし工程1に移行され、蒸らし時間T2の計時が開始される。ステップS130において所定の蒸らし時間T2が所定時間、例えば4分経過すると、ステップS131において圧力弁開放機構18により圧力弁13が強制的に開放され、追炊き工程に移行される。この追炊き工程に入ると、加熱手段により再加熱して米の表面に付着した水を蒸発させると共に、ステップS132において追炊き(再加熱)時間T3の計測を行う。そして、ステップS133において所定の追炊き時間T3、例えば3分が経過すると、ヒータ5による加熱動作が停止され、蒸らし工程2に移行され、ステップS134において蒸らし時間T4が計時される。そして、ステップS135において蒸らし時間T4が所定時間、例えば5分経つと、ステップS136において炊飯が終了され、ステップS137において保温工程に移行され、標準炊飯工程が終了する。
なお、本実施例においては、作動部材18を駆動するための駆動手段として、圧力弁開放機構15に連結したが、この作動部材を駆動するための駆動機構を別に設けてもよい。また、制御手段30は、温度センサ6の出力により器内の温度状態に応じて半ロック防止機構を作動させてもよい。この構成によると、調理器内の温度が低いときあるいは上昇初期及びその途中において、作動手段を作動させることにより、係止爪と係止部との係合度合いを大きくして蓋体の半ロックを未然に防止することが可能になる。また、容器および蓋体のいずれか一方に、圧力検知手段を設け、制御手段はこの圧力検知手段の出力により半ロック防止機構を作動させてもよい。これにより、調理器本体内の圧力が低いときあるいは上昇初期及びその途中において、作動手段を作動させることにより、係止爪と係止部との係合度合いを大きくして蓋体の半ロックを未然に防止することが可能になる。