まず、図1に基づき、本発明の一例である炊飯器の構成について説明する。同図において、炊飯器の外郭をなす本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の底部開口を覆う底板4が設けられている。その際、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収納される。鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
前記内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の被炊飯物が加熱されるようになっている。
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ21が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ26が円環状に配置される。このコードヒータ26は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置して取り付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング27上に保持されると共に、コードヒータ26を上から覆うようにしてヒータリング27に取り付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板29を備えて、フランジヒータを構成している。この金属板29は、炊飯器本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板29の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ26と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ26が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
蓋体31は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋32と、蓋体31の内面である下面を形成する放熱板34と、外蓋32および放熱板34を結合させて蓋体31の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー35とを主たる構成要素としている。また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ36が設けられている。この蓋ヒータ36は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
前記上枠2の後方には、蓋体31と連結するヒンジ部38が設けられる。このヒンジ部38には、正面から見て左右方向に一対の孔(図示せず)が設けられていると共に、ねじりコイルバネなどで形成したヒンジバネ40が、その内部に収納される。一方、外蓋カバー35の後方にも、前記ヒンジ部38に設けた孔と対向するようにヒンジ受部としての外蓋カバーヒンジ孔(図示せず)が設けられる。そして、このヒンジ孔とヒンジ部38の孔に共通して、棒状のヒンジシャフト41を挿通することで、本体1と蓋体31がヒンジシャフト41を支点として開閉自在に軸支される。さらに、前記ヒンジバネ40の一端と他端が、外蓋カバー35と外枠2にそれぞれ引掛けられることで、蓋体31は常時開方向に付勢されている。
蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン46が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン46を押すと、蓋体31と本体1との係合が解除され、ヒンジバネ40によって蓋体31が自動的に開く構成となっている。
55は、放熱板34の外側すなわち下側に設けられる蓋体31の下部部材としての内蓋組立体である。この内蓋組立体55は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属性の内蓋56と、鍋11と内蓋56との間をシールするために、当該内蓋56の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる内蓋パッキンたる蓋パッキン57と、内釜の内圧力を調整する調圧部58とを備えている。環状に形成された蓋パッキン57は、蓋体31を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋56との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
前記放熱板34には、蓋体31の特に内蓋56の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ51による内蓋56の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ61が設けられていている。また、蓋体31の上面後方寄り部には、蓋体31の上面側から着脱可能な蒸気口(図示せず)が設けられる。蒸気口と前記調圧部58は蓋体31の内部で連通しており、これらの蒸気口や調圧部58により、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出するための蒸気排出機構が形成される。
ここで、図2や図3を参照しながら、調圧部58の構成をより詳しく説明する。前記調圧部58は、調圧用の調圧弁65と、調圧弁65を保持する調圧弁ホルダー組立体66と、調圧弁65を覆うドーム状の調圧弁カバー67とを備えて構成される。調圧弁65は耐食性に優れた材料で、ある程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレスからなるボールで形成される。
調圧弁ホルダー組立体66は、第1ホルダー68と、第2ホルダー69と、減圧支持部材に相当する第1調圧パッキン71と、第2調圧パッキン72と、鍋11内からの圧力が第1調圧パッキン71に直接加わらないように、この第1調圧パッキン71の下方にあって、加圧支持部材に相当する弁支持体73と、第1調圧パッキン71の下面に弁支持体73が当接する方向に、当該弁支持体73を付勢する弾性体としての調圧バネ74と、により構成される。弁支持体73には、鍋11内の加圧時にボール状の調圧弁65の下方に当接する連通孔70が設けられる。この連通孔70は、鍋11と内蓋56とを連通させる為のもので、連通孔70を通過する蒸気が、蒸気口から外気へ放出されるようになっている。また、第1ホルダー68と第2ホルダー69には、互いを嵌合する為の凸状の係合部75と凹状の被係合部76がそれぞれ設けられている。これらの第1ホルダー68と第2ホルダー69は、前記第1調圧パッキン71や弁支持体73などを保持する保持部材として、内蓋56に設けた孔77に装着される。第1ホルダー68は全体がキャップ状に形成され、その中央部に貫通孔68Aを有し、貫通孔68Aの周辺部68Bと第2ホルダー69の上端部69Aとにより、第1調圧パッキン71の基部を挟持するようになっている。また、第2ホルダー69は筒状で、その下側には内蓋56の孔77周辺の下面に当接するフランジ69Bが形成されると共に、フランジ69の上方外周には、リング状の前記第2調圧パッキン72を嵌合させる凹溝69Cが形成される。さらに、第2ホルダー69の内周側には、調圧バネ74の一端部を嵌め込むために、断面L字状の突片69dが形成される。
調圧弁ホルダー組立体66の組立に際しては、まず第2ホルダー69の凹溝69Cに調圧パッキン72を嵌め込んだものを、内蓋56に設けた孔77に差込み、第2ホルダー69の内周側で調圧バネ74を挟むようにして、弁支持体73を第2ホルダー69の上方から挿入する。次に、弁支持体73および第2ホルダー69の上端部69Aを覆うようにして、第1調圧パッキン71を弁支持体73に載置し、その状態から更に第1調圧パッキン71を挟む様にして、第1ホルダー68を上方から被せ、係合部75と被係合部76とを互いに嵌合させて、第2ホルダー69に第1ホルダー68を取り付ける。そして、図2や図3に示すように、調圧弁ホルダー組立体66を組立てた状態では、鍋11内部に第2ホルダー69の内側面と弁支持体73の下面が直接対向し、これらの第2ホルダー69や弁支持体73の上側に配置された第1調圧パッキン71は、鍋11内から直接圧力を受けずに済む構造になっている。
この様に組立てた調圧弁ホルダー組立66で調圧弁65を保持し、上方から調圧弁カバー67を被せることで調圧部58を構成する。この時、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67との取付けは爪嵌合でも良いし、ネジやリベットなどの止着部材を利用して止めてもよい。調圧弁カバー67は、調圧弁65の移動範囲を規制するためのもので、連通孔70から放出する蒸気を蒸気口に導く複数の孔(図示せず)が設けられている。また内蓋56は、調圧弁ホルダー組立66と調圧弁カバー67とで峡持されるので、内蓋56の孔77は露出しない。
弁支持体73の連通孔70の開口面積は、弁支持体73の下側に形成した脚部79の内側の、鍋11内から直接圧力を受ける面80の面積より小さくなっている。これにより、連通孔70の開口面積と調圧弁65との重量により、鍋11内の圧力を調整することができる。
調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11内圧を調節するソレノイド78が、蓋体31内部に設けられている。ソレノイド78の非通電状態では、その先端部を進出位置に保持し、調圧弁65を連通孔70から退避する一方、ソレノイド78の通電状態では、その先端部を退避させ、調圧弁65を連通孔70に自重で転動させ、連通孔70を塞いで鍋11内に圧力を投入する。
第1調圧パッキン71および第2調圧パッキン72は、何れもシリコーンゴム等の弾性部材で構成する。これにより、特に図3に示す鍋11内の減圧時には、第1調圧パッキン71の弾性変形により、調圧弁65が当該第1調圧パッキン71に密着し、第1調圧パッキン71における開口部すなわち孔71Aのシール性が向上する。
前記内蓋組立体55には、その他に鍋11内の圧力が何らかの要因で設定値以上である異常圧力に昇圧すると開弁して、鍋11の内圧を下げる安全弁62が設けられる。調圧部58および安全弁62は、内蓋56を外蓋カバー35の下側に取り付けたときに、蒸気口の入口側に臨んで設けられる。そして、内蓋56,蓋パッキン57,調圧部58および安全弁62は、内蓋組立体55の外周に設けたパッキンベース59で一体化され、外蓋カバー35内面に着脱可能に備えてある。この円環状のパッキンベース59は、内蓋56と蓋パッキン57とを装着するものであるが、ここには内蓋56の取付部と、蓋パッキン57の取付部の他に、外蓋カバー35への取付部と、使用者が内蓋組立体55を容易に着脱できるよう取手部をそれぞれ形成している。
81は、蓋体31を本体1に閉じた状態で、鍋11内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段81は、本体1の後部に設けた減圧駆動源としての減圧ポンプ82と、この減圧ポンプ82から本体1および蓋体31を経て、内蓋56に設けた孔83に至る管状の経路84とにより構成される。また、蓋体31の内部には、経路84の基端部を開閉する開閉手段としての電磁弁87と、この電磁弁87を収容する弁収容体88が設けられる。弁収容体88には、前記内蓋56の孔83の周囲に向けて放熱板34から下方に突出した筒状の減圧パッキン89が接続される。
そして、内蓋56を含む内蓋組立体55を蓋体31の下面に装着すると、減圧パッキン89が弾性変形しながら内蓋56の上面に密閉当接し、これにより孔83と減圧ポンプ82とを連通する経路84が形成される。また、内蓋組立体55を装着した状態で蓋体31を閉じると、蓋パッキン57が鍋11に密着して、調圧弁65が連通孔70を塞いでいれば、密閉した鍋11と電磁ポンプ82との間が経路84により連通する。この状態から減圧ポンプ82を起動させると、電磁弁87ひいては経路84が開放して、鍋11内の空気が経路84および減圧ポンプ82を通って本体1の外部に排出され、密閉した鍋11内の圧力が低下する。また、鍋11内の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合に、電磁弁87ひいては経路84を閉塞して、鍋11内を減圧状態に保っている。さらに、スローリークにより鍋11内の圧力が上昇した場合にも、電磁弁87ひいては経路84を開放し、減圧ポンプ82を起動させて、鍋11内を大気圧よりも低い状態に維持している。
この様な鍋11内が大気圧よりも低い状態では、弁支持体73を構成する脚部79の内側の空気が鍋11内に吸引され、それに伴い調圧弁65や、この調圧弁65を載置支持する弁支持体73が、調圧バネ74の付勢に抗して下降する。しかし、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも低い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの弁支持体73に代わって第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保され、減圧を継続して行なえる(図3参照)。
逆に炊飯時などにおいて、鍋11内を大気圧以上に加圧する時には、弁支持体脚79の内側が鍋11内から直接圧力を受けるため、調圧弁65の自重に抗して弁支持体73が上昇する。ここで、弁支持体73の開口部70が第1調圧パッキン71の孔71Aよりも高い位置に移動すると、調圧弁65はそれまでの第1調圧パッキン71に代わって弁支持体73に載置され、連通孔70を塞ぐと共に、弁支持体73に載置している調圧弁65も、弁支持体73と同様に上昇する。そして、弁支持体73は上昇後、第1調圧パッキン71に当接し、それにより第1調圧パッキン71の孔71Aを通過しようとする蒸気などを遮断して、鍋11内の密閉を保持できる(図2参照)。
再度図1に戻り、前記本体1の前部には操作パネル101が設けられている。この操作パネル101の内側には、時間や選択したメニューを表示するLCD102や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させたりする操作スイッチ103(図5参照)の他に、鍋11内の減圧状態を選択する減圧選択スイッチなどを配置した基板が配設される。操作パネル101にはボタン名などが表示され、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル101を蓋体31の正面側に設けてもよい。
111は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段111は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器112に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン113から発する風を放熱器112に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
冷却ファン113は、加熱制御手段111に取り付けられた放熱器112の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン113から発し、加熱制御手段111に取り付けられた放熱器112から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔(図示せず)が複数設けられている。加熱制御手段111は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段111や冷却ファン113と、温かな風を排出する孔114は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。さらに、本体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール116が設けられる。
次に制御系統について、図5を参照しながら説明する。同図において、111は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ21および蓋温度センサ61からの各温度情報を受けて、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ26と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ36とを各々制御すると共に、前述した減圧ポンプ82や電磁弁87を各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段111は、鍋温度センサ21の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ26が制御されて放熱板34ひいては内蓋56を温度管理するようになっている。加熱制御手段111は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、炊飯時に前記鍋11内の被炊飯物を炊飯加熱する炊飯制御手段118と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段119とをそれぞれ備えている。
ここでの保温制御手段119はタイマー手段120を備えており、保温動作が開始するとタイマー手段120を起動させて保温経過時間を計時し、この保温経過時間が予め設定した時間(例えば1時間)に達したら、鍋11内の圧力が加圧状態からほぼ大気圧に戻り、且つ鍋11内の温度が保温温度にまで低下した、いわゆる保温が安定する状態と判断するようになっている。また、加熱制御手段11はその他に、操作スイッチ103からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め記憶手段に記憶された所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御する予約炊飯コースを実行可能な予約炊飯制御手段121を備えている。なお、前記所定時間は、操作スイッチ103の例えば時間キーや分キーを操作することで、適宜変更することができる。
122は、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段111の出力側には、加熱制御手段111からの制御信号を受けて、放熱板34や内蓋56を加熱するように蓋ヒータ36を駆動させる蓋ヒータ駆動手段123と、コードヒータ26をオンにするコードヒータ駆動手段124と、ソレノイド78をオンまたはオフにするソレノイド駆動手段125と、減圧ポンプ82を駆動させるポンプ駆動手段126と、電磁弁89をオンまたはオフにする電磁弁駆動手段127と、前述したLCDやLEDからなる表示手段128を駆動させる表示駆動手段129が各々設けられる。前記炊飯制御手段118による炊飯時、および保温制御手段119による保温時には、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ26による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ36による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段118による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段119による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ21の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ26による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
特に前記コードヒータ26による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ26を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空間に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ26により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
さらに、本実施例における加熱制御手段111は、予約炊飯制御手段121による予約炊飯の待機時の炊飯が開始するまでの期間や、炊飯制御手段118が実質的な炊飯を開始するまでのひたし行程の期間や、保温制御手段119により前述した保温が安定する状態と判断した後で、鍋11内が大気圧より低くなるように、減圧ポンプ82や減圧状態保持用の電磁弁87を動作させる減圧制御手段130としての機能をも備えている。
次に、上記構成について、その作用を図5のタイミングチャートに基づき説明する。なお、この図5において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における圧力および温度の各推移を示し、以下、減圧選択スイッチの動作タイミングと、前記LCDによる減圧表示ランプの動作タイミングと、減圧ポンプ82の動作タイミングと、電磁弁87の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
先ず、予約炊飯時における動作を説明すると、操作スイッチ103の時間キーや分キーを操作することで、前記所定時間に相当する炊上がりの希望時刻を設定し、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れて、その後で操作スイッチ103の別な例えばタイマースイッチを操作すると、予約炊飯制御手段121による予約炊飯コースが設定(セット)され、予約炊飯の待機状態に移行する。この予約炊飯コースでは、所定時間に鍋11内の被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御手段118を制御するが、予約炊飯の待機状態から実質的に炊飯が開始する時点までの間に、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧(1atm=1013hPa)よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が制御される。
具体的には、予約炊飯コースがセットされると、減圧制御手段130は炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持する。
予約炊飯の待機中は、加熱制御手段111がソレノイド78をオン状態(通電状態)にしているため、調圧弁65が連通孔70を塞ぐ位置に転動されているが、鍋11内には僅かではあるが空気が侵入し(スローリーク)、鍋11内の圧力が電磁弁87の閉塞時点から次第に上昇する。減圧制御手段130は、一定時間が経過すると、再び減圧ポンプ82を駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。なお、実質的な炊飯が開始した後の動作は、後述する通常の炊飯動作と共通しているので、ここでは省略する。
こうして、予約炊飯コースが設定された後、炊飯が開始するまでの待機時間が長く設定された場合でも、鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、鍋11内で雑菌が増殖したり、被炊飯物である米や水の腐敗が起こるのを効果的に防止できる。よって、最終的には炊上がり時に食味のよいご飯を得ることができる。また、この実施例では、予約炊飯の待機中の全期間に渡って、圧力制御手段130が鍋11内の圧力を減圧する制御を行なっているが、例えば予約炊飯コースが設定された後、所定の時間(例えば2時間)が経過したら、鍋11に対する減圧制御を行なうようにしてもよい。このように、予約炊飯の待機中の一定時間だけ、鍋11の圧力を大気圧よりも低くすることで、例えば炊飯開始までの待機時間がさほど長くないのに、鍋11内への減圧制御が強制的に行なわれて、減圧ポンプ82や電磁弁87を動作させるのに無駄な電力を消費する懸念を解消できる。
次に、予約炊飯を行なわない通常の炊飯について、その動作を説明する。なお、前述した通り、予約炊飯コースにおける実質的な炊飯が開始した後の動作は、これから説明する通常炊飯の動作と共通している。
鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、炊飯制御手段118による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段118は、実質的な炊飯を開始する前に、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ26で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたしを行なう。このひたし中は、ソレノイド78がオン状態になる。
このひたし時にも、減圧制御手段130が動作して鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が制御される。具体的には、ひたし行程が開始すると、減圧制御手段130は実質的な炊飯が開始する直前まで減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、所定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を所定時間駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
こうして、ひたし時には鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、ひたし時に密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。
その後、所定時間のひたしが終了すると、炊飯制御手段118は実質的な炊飯動作を開始すると共に、減圧制御手段130による鍋11への減圧制御は中断し、減圧選択スイッチはオフになると共に、LCDによる減圧状態である旨の表示も停止する。併せて、減圧ポンプ82および電磁弁87は、その後の保温が安定した状態になるまでオフ状態となる。
炊飯行程に移行すると、炊飯制御手段118は加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被炊飯物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。沸騰加熱の途中で、炊飯制御手段118はソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を連通口70から退避させる。これにより、調圧部58は密閉せずに鍋11の内外を連通させた開放状態となり、鍋11はほぼ大気圧に維持される。なお、上述の蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ61からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ21と蓋温度センサ61とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段111は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ21または蓋温度センサ61が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を序止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段118は蓋ヒータ36による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋56の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ61の検知温度により管理される。また沸騰継続加熱に移行したら、炊飯制御手段118はソレノイド78を周期的にオン・オフさせる。この沸騰継続加熱では、操作スイッチ103により選択したメニューに応じて、ソレノイド78の通断電タイミングを変えるのが好ましい。これにより、鍋11に通じる調圧部58の密閉度を、選択したメニューに応じて最適なものに可変することができる。
そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、鍋11内の炊上がりを検知して、炊飯制御手段118による炊飯行程を終了し、保温制御手段119により保温行程に移行して、最初のむらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ61の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ36を通断電し、内蓋56への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段119による保温に移行する。
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ36により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ26でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ21や蓋温度センサ61が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
また、上記むらしにおける調圧部58の密閉度は、選択した炊飯メニューに応じて変えるが、むらし終了の所定時間前になったら、ソレノイド78をオフにして調圧部58の密閉度を下げ、炊飯終了時に蓋体31を開けるのに支障がない程度に減圧する。
一方、保温制御手段119は、炊飯行程が終了するとタイマー手段120による保温経過時間の計時を開始する。このとき減圧制御手段130は、当該保温経過時間が予め設定した時間になるまで、すなわち保温が安定する状態と判断されるまで、表示手段128のLCDを利用して、減圧表示を短時間繰り返し行なわせる。これにより利用者は、炊き上げ後、鍋11内が未だ減圧状態に移行していないことを理解できる。
その後、前述した保温経過時間が予め設定した時間に達すると、すなわち鍋11内で保温が安定する状態になると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が制御される。この減圧制御の具体的な動作は前述した通りであり、減圧制御手段130は少なくとも蓋体31が開けられて、減圧選択スイッチがオフするまで、当該減圧選択スイッチをオンにすると共に、鍋11内が減圧中であることを表示手段128のLCDに表示させる。これにより、使用者は鍋11内が減圧中であることを知ることができる。また、減圧制御手段130は、鍋11内から空気を排出するために、減圧ポンプ82を駆動させる信号をポンプ駆動手段126に出力すると共に、この減圧ポンプ82に同期して電磁弁87ひいては経路84を開放させる信号を電磁弁駆動手段127に出力する。その後、減圧制御手段130は減圧ポンプ82の駆動を停止させ、且つ電磁弁87ひいては経路84を閉じて、鍋11内を減圧状態に維持し、スローリークによる圧力上昇を考慮して、所定時間が経過すると、減圧制御手段130は再び減圧ポンプ82を所定時間駆動させると共に、電磁弁87ひいては経路84を開放させて、鍋11内から空気を排出する。その後は上述した動作が繰り返されて、減圧ポンプ82と電磁弁87が同時にオン,オフ制御され、鍋11内の圧力が所望の範囲内の値に維持される。
こうして、炊飯完了後の保温が安定する状態になると、鍋11内は減圧状態が維持される。また、この減圧時には、調圧弁65が第1調圧パッキン71に載置され、当該第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。そのため、鍋11内の保温温度を下げたり、鍋11内に蒸気を投入しなくても、保温時に密閉状態で鍋11内を減圧すれば、鍋11内の酸素濃度が下がると共に、被炊飯物の水分蒸発を防ぐことができ、メイラード反応や酸化を十分に抑制できる。よって、長期にわたって食味のよいご飯を得ることができる。
さらに、加熱制御手段111が、操作スイッチ103の例えばメニュー選択キーからの操作信号を受けて、複数の炊飯メニュー(例えば、白米,玄米,無洗米など)の中から、一つの炊飯メニューを選択でき、この選択した炊飯メニューに応じて、加熱コイル16,蓋ヒータ36,コードヒータ26などを独自に制御して、炊飯や保温を行なえる炊飯器にも、上述した減圧制御の手法を適用できる。その場合、選択した炊飯メニューによって、鍋11内の圧力や、減圧制御を行なう時間が異なるようにして、異なる減圧制御を行なえるようにするのが好ましい。例えば、鍋11内に投入する被炊飯物の含水率の違いにより、白米を被炊飯物とする白米メニューでは、鍋11内の圧力を0.8気圧(atm)となるように減圧制御し、玄米を被炊飯物とする玄米メニューでは、鍋11内の圧力を白米メニューよりも低い0.6気圧となるように減圧制御し、さらに無洗米を被炊飯物とする無洗米メニューでは、鍋11内の圧力を白米メニューよりも高く、玄米メニューよりも低い0.7気圧となるように減圧制御すれば、炊飯メニューに応じた最適な減圧制御を行なえる。なお、これらはあくまでも一例であって、別な炊飯メニューでは、それに応じた最適な減圧制御を採用すればよい。さらに、選択した炊飯メニューによっては、あえて減圧制御を行なわない構成としてもよい。
以上のように、本実施例によれば、鍋11と、この鍋11を覆う蓋体31と、蓋体31内に設けた調圧装置としての調圧部58と、鍋11内を大気圧未満まで減圧する減圧手段81とを備え、調圧部58は、鍋11内と外部との連通口(開口部70および孔71A)を開閉する移動可能な調圧弁65と、鍋11内の加圧時に調圧弁65を支持する加圧支持部材としての弁支持体73と、減圧時に調圧弁65を支持する減圧支持部材としての第1調圧パッキン71とを備えている。
この場合、鍋11内を大気圧以上に加圧した時には、弁支持体73が調圧弁65を支持して、調圧弁65が弁支持体73の連通孔70を閉塞する一方で、鍋11内を大気圧未満に減圧する時には、別な第1調圧パッキン71が調圧弁を保持するので、調圧部58内において、調圧弁65と弁支持体73若しくは第1調圧パッキン71とにより、鍋11内の圧力に応じた最適な密閉性を確保して、鍋11内を密閉に保つことができる。そのため、ひたし時などに密閉状態で鍋11内を減圧することができ、鍋11内において米に水を十分に吸水させることが可能になる。また、保温時に密閉状態で鍋11内を減圧すれば、鍋11内の酸素濃度が下がると共に、被炊飯物の水分蒸発を防ぐことができ、メイラード反応や酸化を十分に抑制できる。よって、鍋11内での吸水を促進させ、さらには炊き上がり後のご飯の黄変や酸化を防いで、食味のよいご飯を長期間得ることができる。
また本実施例では、加圧支持部材である弁支持体73が、鍋11内の加圧時に上昇して、この弁支持体73の開口部70を調圧弁65で塞ぐ一方で、弁支持体73が鍋11内の減圧時に下降して、第1調圧パッキン71の孔71Aを調圧弁65で塞ぐ構成となっている。
これにより、鍋11内の加圧または減圧に伴い、弁支持体73を確実に上下動させることができるので、調圧弁65と弁支持体73若しくは第1調圧パッキン71とによる密閉性がより確実に保たれ、効果的に鍋11内の密閉を確保できる。そのため、加圧および減圧が確実に行なわれ、加圧および減圧の何れにおいても、鍋11内を密閉に保つことができる。
また本実施例では、鍋11からの圧力が直接加わらない様に第1調圧パッキン71を設けている。つまり、第1調圧パッキン71は鍋11からの圧力による影響を受けないので、第1調圧パッキン71の変形による鍋11内の圧力漏れなどを防止でき、更に効果的に鍋11内の密閉を確保できる。そのため、加圧および減圧がより確実に行なわれ、加圧および減圧の何れにおいても、鍋11内を密閉に保つことができる。
また、本実施例における弁支持体73は、調圧弁58の載置面における開口部70の開口面積が、鍋11からの圧力を直接受ける面80の面積と異なり、当該面積よりも小さくなっている。これによって、調圧弁58の載置面における開口部70の開口面積と調圧弁58の重量とにより、鍋11内の圧力を調整することができる。
さらに、本実施例における第1調圧パッキン71は、例えばシリコーンゴムのような弾性部材で構成される。これにより、鍋11内の減圧時に調圧弁58が第1調圧パッキン71に支持されると、当該第1調圧パッキン71が弾性変形した状態で調圧弁58と接するので、調圧弁58と第1調圧パッキン71とのシール性が向上し、更に効果的に鍋11内の密閉を確保できる。そのため、加圧および減圧がより確実に行なわれ、加圧および減圧の何れにおいても、鍋11内を密閉に保つことができる。
次に、別な変形例を図7〜図16を参照して説明する。なお、上記実施例と同一部分には同一符号を付し、その共通する箇所の説明は重複するため極力省略する。
図7は、蓋開ボタン46周辺の断面図を表わしている。先ず、蓋体31と本体1との開閉構造について説明すると、蓋体31には係合部に相当するクランプ44が配置される。このクランプ44は、蓋体31の内部に設けたクランプシャフト45を中心として、外蓋カバー35に対し回転自在に軸支される。蓋開閉手段に相当する蓋開ボタン46は、使用者が操作できるように蓋体31の前方上面から露出状態に配設される。蓋体31の内部には、クランプ44の基端部44Aを蓋開ボタン46側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段(図示せず)が設けられ、これにより蓋開ボタン46を常時上方に押し上げる力が作用するようになっている。
クランプ44は、蓋開ボタン46に当接する基端部44Aの他に、外蓋カバー35の下面にあるクランプ用孔48から下方に突出する垂下部44Bと、クランプ44の実質的な先端部に相当し、垂下部44Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部44Cとにより構成される。クランプ44はステンレスなどの金属部品で形成し、係合部44Cは略L字状とする。そうすることで、クランプ44を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ受け50との係合を得られる。また、中央から左右の略均等位置に係合部44Cを設ける。これらの垂下部44Bや係合部44Cは、クランプ44の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ44の回転中心となるクランプシャフト45は、垂下部44Bの上端に沿うように配置され、係合部44Cは本体1の略前後方向に遥動する。
一方、上枠2に設けたヒンジ部38の略反対側に位置して、該上枠2の前方には係合受部に相当するクランプ受け50が配設されており、蓋体31を本体1側に閉じようとすると、クランプ付勢手段の付勢力により、クランプ44がクランプシャフト45を中心軸として回転し、当該クランプ受け50に係合することで、本体1に対し蓋体31を閉状態に保持するようになっている。クランプ受け50はステンレスなどの金属部品で形成する。そうすることで、クランプ受け50を合成樹脂で構成する場合と比べ、強度の強いクランプ44との係合を得られる。反対に蓋体31を開く場合には、蓋開ボタン46を押動操作し、クランプ44の基端部を下方に押下げてクランプ44を逆方向に回転させ、係合部44Cを本体1の前方に変位させて、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除する。上枠2のクランプ受け下方部は、クランプ44がクランプシャフト45を軸として回転動作する際に、ぶつからない深さを有することが必要である。また、クランプ44とクランプ受け50下方部の隙間は、通常時のクランプ44とクランプ受け50の係合量よりも大となる寸法関係としておく。更に、外蓋カバー35と上枠2の隙間よりも大となる寸法関係としておく。
なお、ここでは蓋体31側にある可動するクランプ44を係合部といい、本体1側にある固定したクランプ受け50を係合受部としているが、蓋体31に固定した係合部を設け、本体1に可動する係合受部を設けてもよい。
141は、蓋開ボタン46の裏(内)側部に取り付けられた基板である。この基板141には、前記減圧手段81が動作すると点灯作動する警報手段としてのLED142と、磁気検知素子としてのホール素子143がそれぞれ実装される。LED142は、別な図8に示すように、蓋開ボタン46の上面に対向して設けられており、またホール素子143は、蓋開ボタン46が押されていない状態では、外蓋32に設けた磁性体としてのマグネット144に対向して配設される。ホール素子143は、前記クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときに、マグネット144から離れることにより、その動作を検知して加熱制御手段111に検知信号を出力する検知手段として設けられる。なお、別なセンサにより同等の機能を有する検知手段を構成してもよい。
この例におけるLED142は、炊飯初期のひたしや保温の工程で減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときにのみ連続点灯すると共に、保温工程中に鍋11内が大気圧以下のときに、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとすると、ホール素子143からの検知出力を受けて所定時間点滅し、その後消灯する表示手段として設けられている。LED142に代わり、例えばLCDなどの他の表示手段を用いてもよいし、ブザーなどの報知手段を設けてもよい。この場合、報知手段も同様に工程や連動する構成としてよい。また図8において、146は前記実施例では図示されていなかった蒸気口である。
その他、前記蓋体31は、前述した蓋32,放熱板34,外蓋カバー35,および内蓋組立体55の他に、蓋体31としての外観品位を向上させるために、外蓋32の上面部を覆う三次元形状の金属蓋33を備えている。また、ここでは減圧手段81を構成する減圧ポンプ82を、本体1にではなく蓋体31の後部に備えている(図9参照)。なお、減圧ポンプ82以外の減圧手段81における各部の構成は、上記実施例と共通している。
蓋体31の内部構成について、上記実施例との相違点をさらに説明すると、調圧用ソレノイド78は、前述したように、調圧弁65を動かして蓋体31の密閉度即ち鍋11内圧を調節するものであり、電磁力により内部からプランジャー151を出没させて、調圧部58内にある調圧弁65を動かす構成となっている。また蓋体31の内部には、外蓋カバー35に向けてプランジャー151と共に可動する調圧フレーム152と、蓋体31内部を水密状態に保持するための可撓性調圧パッキン153が設けられる。図9にも示すように、これらの調圧用ソレノイド78や調圧フレーム152は、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された調圧収容部154に収容配置される。
調圧フレーム152は、図10や図11に示すように、調圧弁65に向けて突出した操作部としての調圧操作部161と、調圧用ソレノイド78を囲うようにして設けたフレーム部162と、調圧操作部161の略反対側に設けられた調圧フレームロック片163とを備えて構成される。
さらに、この変形例では、外蓋カバー35により蓋体31内に形成された別の開閉手段収容部171に、開閉用ソレノイド172が配置される。この開閉用ソレノイド172も、前記調圧用ソレノイド78と同様に、電磁力により内部からプランジャー173を出没させる構成となっている。また蓋体31の内部には、プランジャー173と共に可動し、開閉用ソレノイド172と共に調圧収容部154に収容配置される開閉フレーム175と、蓋体31内部を水密状態に保持するための可撓性開閉パッキン176(図13および図14参照)が設けられる。
一方、図13や図14に示すように、前記内蓋56には、前記調圧部58に対向する孔77とは別な開閉用孔181が設けられ、この開閉用孔181に臨んで上下動する開閉弁182を収容した弁開閉手段183が、内蓋56の上面側に装着される。したがって、この変形例では、調圧部58および安全弁62の他に、弁開閉手段183が内蓋56に設けられる。弁開閉手段183は、前述した開閉用孔181の上方にある開閉弁182と、開閉用孔181を開ける方向、すなわち上方に開閉弁182を付勢する付勢手段としての開閉弁バネ184とを備えている。また、開閉弁182の上部に臨んで、接触若しくは所定の隙間を有した状態で、蓋体31側に前記可撓性開閉パッキン176が配設される。可撓性開閉パッキン176は、外蓋カバー35に設けられた開閉用シャフト186の動作と連動するようになっている。
開閉用シャフト186と前記開閉用ソレノイド172のプランジャー173との間には、開閉フレーム175の前方に一体化して設けた腕片状の開閉用シャフト操作部188が配設される。この開閉用シャフト操作部188は、開閉用シャフト186の上部に対向してカム面188Aを形成しており、プランジャー173ひいてはこれに連動する開閉用シャフト操作部188が出没するのに伴い、開閉用シャフト186の上部が接するカム面188Aの位置が変わることで、開閉用シャフト186ひいては開閉弁182が上下動するようになっている。具体的には、図13に示す開閉用ソレノイド172の非通電状態では、開閉弁バネ184により開閉弁182が開閉用孔181から離れて、この開閉弁182および開閉用シャフト186が押し上がるように、プランジャー173および開閉用シャフト操作部188が進出位置に移動し、逆に図14に示す開閉用ソレノイド172の通電状態では、開閉弁バネ184の付勢に抗して、開閉用シャフト操作部188のカム面188Aが開閉用シャフト186ひいては開閉弁182を押下げ、それにより開閉弁182の下部が内蓋56の開閉用孔181を閉塞するように、プランジャー173および開閉用シャフト操作部188が後退位置に移動する。よって、開閉用ソレノイド172の通電状態では、蒸気口146に連通する開閉用孔181を開閉弁182が塞いで、鍋11内に圧力を投入できる状態にする。
先に説明したように、調圧用ソレノイド78の周辺において、調圧フレーム152の前方には、調圧弁65を動かすための調圧操作部161が設けられる一方で、調圧フレーム152の後方には、突出した調圧フレームロック片163が設けられる。これと同様に、開閉用ソレノイド172の周辺において、開閉フレーム175の前方には、カム面188Aを有する開閉用シャフト操作部188が設けられ、開閉フレーム175の後方には、突出した開閉フレームロック片189が設けられる。そして、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が後退位置にあるときには、クランプ44がクランプ受け50から係合解除する方向に動くのを規制するために、調圧フレームロック片163がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置されると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が後退位置にあるときにも、開閉フレームロック片189がクランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むように配置される。逆に、調圧用ソレノイド78のプランジャー151が進出位置にあるときには、調圧フレームロック片163がクランプ44の基端部44Aから離れると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173が進出位置にあるときにも、開閉フレームロック片189がクランプ44の基端部44Aから離れる。つまり、クランプ44の基端部44Aの下方に、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方またはどちらか一方が位置するときには、クランプ44の動作が規制され、クランプ44がクランプ受け50から係合解除できなくなるが、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れると、クランプ44の動作は規制されなくなり、蓋開ボタン46を押動操作すると、クランプ44がクランプ受け50から離脱して、蓋体31が開くようになっている。
電気的な接続について、前記実施例と異なる点を、図15に基づき説明する。加熱制御手段111は鍋温度センサ21や蓋温度センサ61からの温度検知信号や、操作スイッチ103からの操作信号の他に、前記蓋開ボタン46に設けたホール素子143や、蓋体31の開閉を検知する別なホール素子191からの検知信号を受け付けて、各部を制御するものである。ここで、蓋開閉検知手段であるホール素子191について説明すると、このホール素子191は例えば本体1の後方に設けられた磁性体であるマグネット(図示せず)に対向して、蓋体31の内部に取り付けられる。なお、同様の機能を発揮できれば、ホール素子191に代わり他のセンサを用いてもよい。
また、この変形例では、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が蓋体31の内部に設けられる関係で、これらのソレノイド78,172がソレノイド駆動手段125からの駆動信号を受けて、個々にオン,オフ駆動する。さらに、表示手段128として、前述したLED142も含まれる。
次に、加熱制御手段111が行なう各部の動作について、前記実施例と異なる点を、図16のタイミングチャートに基づき説明する。この図16において、最上段およびその次の段にある各グラフは、鍋11内における温度および圧力の各推移を示し、以下、調圧弁65(調圧用ソレノイド78)の動作タイミングと、開閉弁182(開閉用ソレノイド172)の動作タイミングとをそれぞれ示している(塗潰しの状態がオン)。
炊飯や保温が行なわれていない切状態において、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は共に非通電(オフ)状態にある。このとき、調圧用ソレノイド78のプランジャー151は進出位置にあって、連通孔70が開放するように調圧弁65が移動すると共に、開閉用ソレノイド172のプランジャー173も進出位置にあって、内蓋56の開閉用孔181が開放するように開閉弁96が上方に移動する。したがって、鍋11内は連通孔70および開閉用孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、クランプ44の動作は規制されず、蓋開ボタン46を押動操作すれば、クランプ44がクランプ受け50から離脱する。すなわち切状態では、蓋体31を自由に開閉することができる。
その後、鍋11内に被炊飯物である米および水を入れ、操作スイッチ103の例えば炊飯キーを操作すると、前述したような炊飯制御手段118による炊飯工程と、保温制御手段119による保温工程が連続して行なわれる。炊飯工程のひたし時において、減圧手段81の減圧ポンプ82と電磁弁87が作動すると共に、鍋11内が大気圧以下のときには、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が共に通電(オン)状態になって、調圧用ソレノイド78のプランジャー151と開閉用ソレノイド172のプランジャー173が各々後退位置に移動する。これにより、調圧弁65が第1調圧パッキン71の孔71Aを塞ぎ、開閉弁96が内蓋56の開閉用孔181を塞ぐので、鍋11内の密閉が確保される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44の回動が規制され、蓋開ボタン46を押動操作しようとしても、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31が開かないようになる。
その後、ひたしが終了して沸騰加熱に移行すると、炊飯制御手段118は減圧手段81の作動を停止し、且つ調圧用ソレノイド78をオフ状態にして、調圧弁65を連通口70から退避させる。これにより鍋11はほぼ大気圧に維持されるが、開閉用ソレノイド172は引き続きオン状態にあり、開閉フレームロック片189がクランプ44の基端部44Aの下方に位置して、蓋体31を開けることができないようになっている。
鍋11内の沸騰状態を検知すると、炊き上げ(沸騰継続加熱)とむらしが続けて行なわれるが、むらしの途中までは鍋11内を大気圧以上にするために、炊飯制御手段118は減圧手段81の作動を停止させつつ、調圧用ソレノイド78をオン状態にし、調圧弁65により連通口70を閉塞する。これにより、鍋11内と外部との連通は遮断される。また、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込むので、クランプ44とクランプ受け50との係合が二重にロックされ、蓋体31を開けることはできない。
むらしに移行すると、その後の保温開始直後に蓋体31が開けられることを考慮して、鍋11内を徐々に大気圧に戻す動作が行なわれる。そして炊飯制御手段118は、むらしの途中で調圧用ソレノイド78を先にオン状態からオフ状態に切り換えて、調圧弁65を連通口70から退避させ、その後で所定時間が経過してから、開閉用ソレノイド172をオン状態からオフ状態に切り換える。こうすれば、少なくとも連通口70を開放した後も、開閉用ソレノイド172がオフ状態になるまでは、蓋体31を開けることができなくなり、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防止できる。
むらしが終了して保温工程に移行した直後は、鍋11内が連通孔70および開閉用孔181を通して外部と連通し、大気圧に維持される。それと共に、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方から離れた位置にあるので、蓋体31を自由に開閉することができる。
その後、前記実施例でも説明したように、保温制御手段119は保温経過時間が予め設定した時間に達すると、減圧制御手段130により鍋11内の圧力が大気圧よりも低くなるように、減圧ポンプ82や電磁弁87が再び作動制御する。それと共に、鍋11内を密閉状態にするために、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。これにより、調圧フレームロック片163と開閉フレームロック片189の両方が、クランプ44の基端部44Aの下方に潜り込んで、クランプ44の回動が規制される。なお、こうした動作は、保温工程の所定時間後ではなく、保温工程で鍋11内が所定温度に到達したのを鍋温度センサ21が検出したときに、行なわれるようにしてもよい。
保温工程に移行すると、保温制御手段119は前記ホール素子143,191からの検知信号を受け付ける。すなわち、鍋11内を減圧状態にする減圧手段81の作動制御中であって、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172が同時にオンしている状態で、使用者が蓋体31を開けようと意図して蓋開ボタン46を押動操作しようとすると、クランプ44はその回動を規制されてはいるものの、蓋開ボタン46がクランプ44の弾性などにより若干下方に押し込まれ、ホール素子143がマグネット144から離れた位置に移動する。このときのホール素子143からの検知信号を保温制御手段119が受けると、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172は連動してオフ状態になり、双方のプランジャー151,173が進出して、連通口70および開閉用孔181を開放すると共に、クランプ44に対する回動規制も解除され、蓋開ボタン46を押し続けることで、蓋体31を開けることができるようになる。
その後、鍋11内から炊き上がったご飯を取り出すなどして、蓋体31を再度閉じると、今度は別なホール素子191が蓋体31の閉状態を検知し、その信号を保温制御手段119に送出する。これを受けて保温制御手段119は、所定時間後に再び減圧手段81を作動させ、且つ不用意に蓋体31が開かないように、調圧用ソレノイド78と開閉用ソレノイド172を同時にオン状態にする。
また、前記むらしや保温工程中において、減圧手段81が作動し、鍋11内が大気圧以下のときには、LED142を連続点灯させる制御信号を、加熱制御手段111が表示駆動手段129に送出する。これにより使用者は、鍋11内が減圧中であることにより、蓋体31と本体1が係合ロックされていることを直ぐに認識できる。また、蓋開ボタン46を押動操作しようと意図してから、実際に蓋体31を開放できるまでには、若干のタイムラグがあるので、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合を解除しようと意図したときの検知信号をホール素子143が出力すると、LED142が点滅動作に切り替わり、その後所定時間が経過したら、LED142を自動的に消灯させるようにすれば、何故直ぐに蓋体31が開かないのかを使用者に理解させることができる。
このように、本例では、鍋11を備えた本体1と、本体1を覆う開閉自在な蓋体31とを備え、蓋体31は、本体1に設けた係合受部としてのクランプ受け50に係脱可能な係合部たるクランプ44と、調圧部58と、弁開閉手段183とを備え、クランプ44をクランプ受け50に係合して、蓋体31を本体1に閉じている状態で、調圧部58は所定工程(むらしや保温)時に、また弁開閉手段183は鍋11内が大気圧以外の場合に、クランプ44をクランプ受け50との係合をロックするように可動する構成となっている。
すなわち、むらしや保温などの工程中に、鍋11内が大気圧以外であれば、調圧部58と弁開閉手段183とにより、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合が二重にロックされる。そのため、蓋体31を開けようとする意図しない操作が行なわれた場合であっても、蓋体31が開くことはなく、鍋11内の被炊飯物や蒸気,おねばなどの飛び散りを防いで、本体1やその周辺が汚れるのを防止することができる。
また本例では、炊飯工程終了の所定時間前になると、調圧部58と弁開閉手段183を作動させ、クランプ44とクランプ受け50との係合ロックを解除して、蓋体31が開くように構成している。
こうすると、特に炊飯工程終了の所定時間前に、鍋11内が大気圧になると、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合ロックが解除されるので、鍋11内の圧力で蓋体31が強制的に開くことがなく、鍋11内の被炊飯物や蒸気,おねばなどの飛び散りを確実に防いで、本体1やその周辺が汚れるのを確実に防止することができる。
この場合、クランプ44とクランプ受け50との係合ロックの解除は、調圧部58が先に作動し、次に弁開閉手段183が作動するようにするのが好ましい。つまり、調圧部58を作動させた後、暫くの間は弁開閉手段183によって、引き続き蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合がロックされているので、鍋11内が大気圧に戻りきらないうちに、不用意に蓋体31が開くのを防ぐことができる。
また本例では、保温工程で所定温度に到達するか、または保温工程の所定時間後に、クランプ44とクランプ受け50との係合をロックする構成となっている。
この場合、保温工程で所定温度に到達するか、または保温工程の所定時間後になると、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合がロックされるので、保温工程中で鍋11内が大気圧以外の状況で、不用意に蓋体31が開くのを防ぐことができる。
また本例では、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときの動作を、蓋開閉手段である蓋開ボタン46に設けた検知手段としてのホール素子143が検知すると、クランプ44とクランプ受け50との係合ロックを解除する構成となっている。
こうすると、保温工程中で鍋11内が大気圧以外の状況であっても、蓋体31のクランプ44と本体1のクランプ受け50との係合を解除しようと意図した時のみ、この係合ロックが解除されるので、保温工程中に何時でも蓋体31を開いて、炊き上がったご飯を鍋11内から取り出すことができる。
また本例では、鍋11を備えた本体1と、鍋11内を大気圧未満に減圧する減圧手段81と、本体1を覆う開閉自在な蓋体31と、減圧手段81が動作すると作動する警報手段としてのLED142を備えている。
この場合、蓋開ボタン46を押そうとした時に、LED142が作動していれば、減圧動作が行なわれていて蓋体31が直ぐには開かない状況を認識することができる。したがって、蓋開ボタン46を無理に押したり、蓋開ボタン46を何回も押したりするなどの操作が軽減され、蓋開ボタン46ひいては炊飯器の性能低下を改善できる。
また、ここでの蓋体31は、本体1に設けたクランプ受け50に係脱可能なクランプ44を備え、蓋開ボタン46を押してクランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときの動作を、検知手段としてのホール素子143が検知すると、クランプ44とクランプ受け50との係合が解除されるようになっている。こうすれば、クランプ44とクランプ受け50との係合を解除しようとしたときの動作をホール素子143が検知して、蓋体31を開けることが可能になる。
また、ここでは蓋開閉手段である蓋開ボタン46を備え、前記LED142が蓋開ボタン46に設けられている。こうすれば、蓋開ボタン46に設けたLED142が作動しているか否かによって、減圧動作が行なわれているか否かを直ちに認識できる。
また、警報手段はLED142のような表示手段またはブザーのような報知手段であることが好ましい。すなわち、蓋開ボタン46に設けた表示手段を見るだけで、減圧動作が行なわれているか否かを確認でき、また報知手段からの音を聴くだけで、減圧動作が行なわれているか否かを確認できる。
次に、本発明に特に関係する各部の構成と動作を、更に詳しく説明する。図17〜図21は、むらし以降の鍋11内のご飯温度と、鍋内の圧力との関係を示したものである。これらの各図において、むらし行程が終了してそれまでの炊飯行程が完了し、保温行程に移行すると、鍋11内のご飯温度は所定の温度に保温維持される。ここで減圧制御手段130は、鍋温度センサ21で検出される鍋11内のご飯温度が所定の温度に達するか、或いは前述のように保温経過時間が予め設定した時間になるか、或いは鍋11内のご飯温度が所定の温度に到達した後、所定の時間が経過すると、減圧制御手段130により減圧ポンプ82や電磁弁87を動作させて、鍋11内の圧力を大気圧未満に減圧する。
また減圧制御手段130は、減圧ポンプ82や電磁弁87が駆動した後、図18に示すように所定時間T2が経過するか、さもなければ図示しない圧力センサで検出した鍋11内の圧力が所定圧力値に達するか、或いは鍋11内の圧力が所定圧力値に達した後、所定の時間が経過したら、再度減圧ポンプ82や電磁弁87を動作させて、鍋11内の圧力を大気圧未満に減圧する。ここでの所定時間T2は、例えば3時間に設定される。
減圧制御手段130は、図17〜図21に示すように、鍋11内の温度や圧力などに関係なく、固定した所定時間に達するまで減圧ポンプ82や電磁弁87を駆動させる。このときの減圧ポンプ82や電磁弁87の駆動時間T1は、例えば2分に設定される。なお、鍋11内の圧力が所定の圧力値に達するまで、減圧ポンプ82や電磁弁87を駆動させてもよいし、鍋11内の圧力が所定の圧力値に達し、その後固定した所定時間に達するまで、減圧ポンプ82や電磁弁87を駆動させてもよい。
図17は、前記所定時間T2よりも短い時間に、蓋31の開閉が行なわれた場合の例を示したものである。同図に示すように、大気圧よりも低い状態で鍋11内を保温する動作は、ホール素子191が蓋体31の開状態を検知するまで継続する。蓋体31が開けられると、鍋11内は自ずと外気と同じ気圧(大気圧)になるが、このときにはホール素子191からの蓋開検知信号を受けて、減圧制御手段130が無駄な電力消費を避けるために、減圧ポンプ82や電磁弁87の駆動を停止する。その後、ホール素子191が蓋体31の閉状態を検知すると、減圧制御手段130は減圧ポンプ82や電磁弁87を動作させて、鍋11内の圧力を大気圧未満に減圧開始させる。
減圧ポンプ82や電磁弁87が一度駆動を開始し、そこから次回再び駆動を開始するまでの期間(T1+T2)を1サイクルとする。図18に示すように、蓋31が長時間開けられず、大気圧よりも低い状態での保温時間が長くなると、減圧ポンプ82や電磁弁87が数サイクル駆動を繰り返す。このままの状態を継続すると、鍋11は密閉状態にあり、またそこからのスローリークは微量であるため、減圧ポンプ82や電磁弁87が駆動する前に、鍋11内の圧力値は段々と低下する。つまり、鍋11内の圧力は所定の圧力値よりも低くなる。
そこで、この実施例では、こうした必要以上の圧力低下を回避するために、一定の時間である所定のサイクルの間、ホール素子191が蓋体31の開状態を検知しない場合には、減圧制御手段130が図19に示すように、減圧ポンプ82や電磁弁87が次に駆動するまでの所定時間を、それまでの初期設定の時間T2よりも延長して時間T2’に変更したり、図20に示すように、減圧ポンプ82や電磁弁87の駆動時間を、それまでの初期設定の時間T1よりも短くして時間T1’に変更したり、さもなければ図21に示すように、所定時間T2を延長して時間T2’にすると共に、駆動時間T1を短縮して時間T1’に変更し、駆動サイクルを可変する。この駆動サイクルの可変設定は、その後ホール素子191が蓋体31の開状態を検知するまで継続する。
このように本実施例では、保温中に所定時間T2が経過すると、減圧手段81を構成する減圧ポンプ82が、設定された所定の駆動時間T1で駆動する減圧制御手段130を備えた炊飯器において、減圧ポンプ82が所定時間駆動した後に、ホール素子191が蓋31の開状態を検知しない時には、次回の減圧ポンプ82が駆動するまでの所定時間T2,次回の減圧ポンプ82の駆動時間T1,またはこの駆動するまでの所定時間T2と駆動時間T1の両方を可変するように、減圧制御手段130を構成している。
そのようにすれば、保温中において、減圧ポンプ82は所定時間T2が経過すると所定の駆動時間T1だけ駆動し、それにより本体1ひいては鍋11内は大気圧未満の状態を維持するが、減圧ポンプ82が駆動時間T1の間駆動した後に、ホール素子191が蓋体31の開状態を検知しない場合には、減圧ポンプ82を頻繁に駆動しなくても、鍋11内が大気圧未満を維持できると判断して、次回の減圧ポンプ82が駆動するまでの所定時間T2,次回の減圧ポンプ82の駆動時間T1,またはこの駆動するまでの所定時間T2と駆動時間T1の両方を可変する。これにより、鍋11内を大気圧未満の状態に維持しつつ、電気消費量を低減化させると共に、減圧ポンプ82やそれに伴う電磁弁87の駆動時に発生する動作音を低減させることができ、炊飯器の静音化を達成できる。
なお、上記構成では、次回を含む所定回の減圧ポンプ82が駆動する時間T2を可変するようにしてもよい。
次に、鍋11と蓋パッキン57との密閉構造について、図22〜図26を参照しながら説明する。これらの各図において、蓋パッキン57には、鍋11の上側内面11Aをシールする第1のシール部57Aと、鍋11のフランジ部14の上面14Aをシールする第2のシール部57Bと、パッキンベース59に取付けられる取付部57Cが形成される。そして、取付部57Cの基端部は、内蓋56とパッキンベース59とにより挟持固定される一方で、取付部57Cの先端部には、第1のシール部57Aと第2のシール部57Bが異なる方向に連結される。すなわち、第1のシール部57A,第2のシール部57B,および取付部57Cは、一連の形状を保っており、蓋パッキン57として一部品で構成される。これらの第1のシール部57Aおよび第2のシール部57Bは、鍋11との密着性を高めるために、容易に弾性変形するようになっている。
なお、第1のシール部57Aと第2のシール部57Bを別部品で構成し、それぞれパッキンベース59との取付部を形成してもよい。この場合も、第1のシール部57Aを第2のシール部57Bよりも内側に形成するのが好ましい。
図22〜図24は、従来の炊飯器における鍋11と蓋パッキン57との密閉構造を示している。通常に蓋体31を閉じたときには、図22に示すように、第2のシール部57Bがフランジ部14の上面14Aに当接して、鍋11と蓋パッキン57とを密着する。また、鍋11内が大気圧よりも高い状態になると、鍋11の中央から周辺に向かう力が作用して、図23に示すように、第2のシール部57Bとフランジ部14のみならず、第1のシール部57Aが鍋11の上側内面11Aに当接して、引き続き鍋11と蓋パッキン57との密着性が確保される。
一方、減圧手段81の減圧ポンプ82が作動して、鍋11内が大気圧よりも低い状態になると、鍋11内には中央に向かう力が作用して、鍋11の上内側面11Aに臨んでいる第1のシール部57Aも、鍋11の中央に引き込まれる。ここで減圧手段81が故障するなどして、鍋11内の圧力が極めて低い状態になると、図24に示すように、第1のシール部57Aの鍋11中央への引き込み力が強く作用して、別な第2のシール部57Bが、やがてフランジ部14の内側を乗り越える(鍋11内に入り込む)。
こうした問題を解決する構造を、図25および図26に示す。ここでは、パッキンベース59の第2のシール部57Bに対向する部位に、突起としての凸部59Aを設けておく。この凸部59Aは、内蓋組立体55ひいては蓋体31の環状全周に配置してもよいし、局部的に配置してもよい。この凸部59Aと第2のシール部57Bの間には、蓋体31を閉じた状態で予め所定の隙間B1が形成されるようにする。また、この隙間B1を、本体1と、この本体1に対し開閉する蓋体31との間の隙間B2よりも大きく設定する。
隙間B1を隙間B2よりも大きくすれば、通常の蓋31を閉じる動作に影響はない。すなわち、蓋体31を閉じる際に、この蓋体31を下方に押し、クランプ44をクランプ受け50に係合することで、蓋体31と本体1との閉状態を維持する。この場合、蓋体31と本体1との間の隙間B2が、蓋体31を上方から押すことにより0になったとしても(すなわち、蓋体31と本体1がその周辺で当接状態になったとしても)、凸部59Aと第2のシール部57Bの間には隙間B1が形成されたままであり、パッキンベース59の凸部59Aが蓋パッキン57に先当りすることなく、クランプ44がクランプ受け50に係合する。
因みに、隙間B2が隙間B1よりも小さく設定すると、蓋体31を下方に押したときに、蓋体31と本体1との間に隙間を有した状態で、凸部59Aが第2のシール部57Bに先当りする。そこからクランプ44をクランプ受け50に係合するには、さらに蓋体31を下方へ押し込む必要があり、蓋31を閉じる際の力が余計に必要になって好ましくない。
そして、この好適な例では、減圧手段81の減圧ポンプ82が作動して、鍋11内が大気圧よりも低い状態になると、鍋11内には中央に向かう力が作用して、鍋11の上内側面11Aに臨んでいる第1のシール部57Aも、鍋11の中央に引き込まれる。ここで減圧手段81が故障するなどして、鍋11内の圧力が極めて低い状態になっても、図26に示すように、蓋パッキン57の第2のシール部57Bが、鍋11中央に引き込まれる途中で、鍋11のフランジ部14の上面14Aと、パッキンベース59から第2のシール部57Bに向けて突出した凸部59Aとの間に挟み込まれる。こうなると、第2のシール部57Bの動きが規制され、当該第2のシール部57Bがフランジ部14の内側を乗り越える(鍋11内に入り込む)ことはない。
以上のように、蓋31に設けられる蓋パッキン57が、鍋11の上側面である上側内面11Aをシールする第1のシール部57Aと、鍋11のフランジ部14の上面14Aをシールする第2のシール部57Bとを有するものにおいて、蓋体31に設けたパッキンベース59から第2のシール部57Bに向けて、鍋11内の圧力が大気圧未満で次第に低下する際に、この第2のシール部57Bの動きを規制する凸部59Aを設けている。
こうすると、本体1ひいては鍋11内が過度に大気圧未満に減圧された場合であっても、鍋11の中央に引き込まれようとする蓋パッキン57の第2のシール部57Bが、鍋11のフランジ部14と凸部59Aとの間に挟まれ、それ以上の動きを規制される。そのため、蓋パッキン57の第2のシール部57Bと、鍋11のフランジ部14との密閉性が従来のものよりも向上し、引き続きその密着性が安定して確保される。
また、この場合には凸部59Aと蓋パッキン57のシール部である例えば第2のシール部57Bとの間に、蓋体31と本体1との間の隙間B2よりも大きな隙間B1を形成しているので、蓋体31を完全に閉じる前に、凸部59Aが蓋パッキン57の第2のシール部57Bに先当たりしない。そのため、蓋体31を閉じる時の力が増大したり、蓋31が閉じないなどの問題を回避して、蓋体31の開閉をスムーズに行なうことができる。
さらにここでの炊飯器は、本体1内を所定圧まで変圧する変圧手段として、鍋11内を大気圧未満まで減圧する減圧手段81や、鍋11内の圧力を調整する調圧弁65を備えていることから、例えば減圧手段81の故障が原因で、鍋11内が過度に変圧すなわち大気圧未満に減圧された場合でも、蓋パッキン57と鍋11との密閉性は向上し、また安定した密閉性を確保できる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。実施例中における駆動時間T1や所定時間T2の設定値は一例に過ぎず、各炊飯器の仕様に合せて適宜変更してよい。さらに、減圧手段81としての構成も、本実施例のような減圧ポンプ82と、経路84と、電磁弁87とを組み合わせたものに限定されない。